説明

位置検出システム及びこれを用いた管理システム

【課題】電波強度を利用して人や物の位置を検出するに際して、それらの位置の検出精度を損なうことなく、親機の設置台数を削減したり、検出可能領域の拡大を図ることを可能にする。
【解決手段】予め定められた位置に設置され、電波を発信する複数の親機3a、3bと、複数の親機3a、3bからの電波を受信し、電波強度を検出する複数の子機2a、2bとを備え、検出した電波強度から親機及び子機間の距離を求めて子機2a、2bの位置を特定する位置検出システム1であって、複数の子機2a、2bは、子機間で電波を授受する子機間通信部22と、子機間通信部22で受信した電波強度を検出し、子機間の距離を算出する電波強度検出部23とを備え、位置検出システム1は、電波強度検出部23で算出した子機間の距離を補間的に用いて子機2a、2bの位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や物の位置を検出する位置検出システム、それを用いて人や物の移動状況を管理する管理システムに関し、特に、複数の親機から発信する電波を子機で受信し、その際の電波強度を利用して子機の位置を検出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人や物の位置を検出するための位置検出システムとして多くの技術が提案されている。その中でも、軌道衛星による測位システム(GPS)が代表的であり、車両の運転者に経路を案内するナビゲーションシステム等で広く活用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記GPSによる位置検出は、車両に限らず、配送途中の荷物や移動中の人の位置を検出する場合にも有用であるが、この方法には、GPS電波の受信環境が測位に大きく影響を及ぼすという欠点がある。このため、GPS電波が届かない屋内や障害物が多い場所では、一時的に利用できなくなったり、測位に誤差が生じるなどの問題が生じ、それらの場所での位置検出には、他の検出方法を用いる必要がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献2には、店舗内に陳列した商品の位置を管理するシステムとして、複数の受信機(親機)を予め定めた位置に設置するとともに、電波を発信する送信機(子機)を商品に貼着した位置検出システムが提案されている。この位置検出システムは、子機から発信した電波を複数の親機で受信するとともに、その際の受信強度に基づいて親機と子機の間の距離を求め、それによって、商品の位置を特定するように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−318381号公報
【特許文献2】特開2002−236166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の位置検出システムにおいては、商品に貼着された子機と2台の親機との間で三角形を形成して商品の位置を特定するため、商品の位置を求めるにあたり、子機が少なくとも2台以上の親機と通信し得ることが不可欠となる。
【0007】
そのため、親機の設置に際して、商品(子機)が店舗内の如何なる位置に載置されても、常に2台以上の親機との通信が確保されるように設置場所を定める必要がある。かかる条件を満たすためには、親機間の間隔を狭くしなければならず、多数の親機が必要になるという問題がある。その一方で、コスト削減の要望に応えるには、親機の設置台数を少なくすることが望ましく、結局のところ、親機の設置台数を少なくする反面、検出可能領域を狭く設定して特定の場所に限定して使用するという態様を採らざるを得なくなる。
【0008】
こうした問題は、店舗内の商品位置を検出する場合に限らず、屋内で人の位置を検出する場合等にも概ね同様に生じ、また、店舗規模が大きくなったり、人の移動範囲が広範になるほど顕著になる。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、電波強度を利用して人や物の位置を検出するに際して、それらの位置の検出精度を損なうことなく、親機の設置台数を削減したり、検出可能領域の拡大を図ることが可能な位置検出システム及び管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、予め定められた位置に設置され、電波を発信する複数の親機と、該複数の親機からの電波を受信し、電波強度を検出する複数の子機とを備え、該検出した電波強度から親機及び子機間の距離を求めて前記複数の子機の位置を特定する位置検出システムであって、前記複数の子機は、子機間で電波を授受する子機間通信部と、該子機間通信部で受信した電波強度を検出し、子機間の距離を算出する距離算出部とを備え、該位置検出システムは、前記距離算出部で算出した子機間の距離を補間的に用いて前記複数の子機の位置を特定することを特徴とする。
【0011】
そして、本発明によれば、距離算出部で算出した子機間の距離を補間的に用いて子機の位置を特定するため、その子機が2台以上の親機からの電波を直接受信できなくても、子機の位置を特定することができ、これにより、人や物の位置の検出精度を損なうことなく、親機の設置台数を削減したり、検出可能領域の拡大を図ることが可能になる。
【0012】
上記位置検出システムにおいて、前記複数の子機で、2台以上の前記親機の電波の送信エリア内に属する第1の子機と、単一の前記親機の電波の送信エリア内のみに属する第2の子機とが存在するときに、該位置検出システムが、前記第1の子機の位置と、該第1の子機から前記親機までの距離と、前記距離算出部で算出した子機間の距離とを用いて、前記第2の子機の位置を特定することができる。
【0013】
上記位置検出システムにおいて、移動可能に構成され、電波を発信する移動型親機をさらに備え、該位置検出システムが、前記複数の親機から発信する電波を前記移動型親機で受信して該移動型親機の位置を特定した後に、前記複数の親機のいずれかと該移動型親機とから発信する電波を前記複数の子機で受信して該複数の子機の位置を特定することができる。
【0014】
上記構成によれば、固定的に設置された親機の周辺に他の親機を増設して通信ネットワークエリアを拡大したのと同様の効果を得ることができるため、より広範な領域で子機の位置を検出することが可能になる。それに加え、移動型親機の位置を検出することによって、その所持者や移動型親機に随伴して移動する物の位置を検出することができるため、移動型親機を子機の1つとして併用することもできる。
【0015】
上記位置検出システムにおいて、前記複数の子機が、前記複数の親機のうち、該複数の親機から受信する電波の強度が最も高い親機を、情報を送信する送信先の親機として選択することができる。
【0016】
上記構成によれば、子機側において、通信に適した親機が自動的に選択設定されるため、子機が高速で移動するような場合でも通信の確実性を確保することができる。これにより、子機と親機の間の通信障害に起因して子機の位置が特定できなくなるのを防止することが可能になる。
【0017】
上記位置検出システムにおいて、前記複数の子機が、時刻情報を生成する時刻情報生成部を備え、該時刻情報生成部で生成した時刻情報を前記送信先として選択した親機に送信することができる。
【0018】
上記位置検出システムにおいて、前記複数の子機が、前記送信先の親機に情報を送信した時刻を示す情報を累積的に記憶する記憶部を備え、前記送信先の親機が変更された場合に、変更前の親機に情報を送信した時刻を示す情報を変更後の親機に送信することができる。
【0019】
上記位置検出システムにおいて、前記複数の子機の位置の変化に応じて前記複数の子機の位置を特定する頻度を変化させることができる。この構成によれば、子機において、必要なときに制限して通信処理を行うように設定することができるため、消費電力を低減することが可能になる。
【0020】
また、本発明は、管理システムであって、上記いずれかの位置検出システムを用いて、前記複数の子機と同伴して移動する人又は物の移動状況を管理することを特徴とする。
【0021】
上記管理システムにおいて、前記複数の子機と同伴して移動する人又は物が所定のエリア内に存在する場合に正常と判定し、前記エリア内から逸脱した場合に異常と判定することができる。
【0022】
上記管理システムにおいて、前記複数の子機と同伴して移動する人又は物が所定の制限領域に侵入又は接近したか否かを判別し、異常判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、電波強度を利用して人や物の位置を検出するに際して、それらの位置の検出精度を損なうことなく、親機の設置台数を削減したり、検出可能領域の拡大を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明にかかる位置検出システムの一実施の形態を示し、このシステム1は、大別して、無線通信機能を備えた複数の子機2a、2bと、定常的に電波を発信する複数の親機3a〜3cと、親機3a〜3cから送信される情報に基づいて子機2a、2bの位置を特定する中央装置4とから構成される。尚、図1においては、便宜上、子機の数を2つとしているが、3以上の子機を備えてもよい。また、このことは、親機においても同様であり、4以上の親機を備えてもよい。
【0026】
複数の子機2a、2bは、バッジ等の装身具に内蔵されたり、荷物等に貼着される小型の通信端末である。これら子機2a、2bは、いずれも同様の構成を有し、図2に示すように、電波受信部21、子機間通信部22、電波強度検出部23、情報送信部24、通信先選択部25、タイマ26及びメモリ27等を備える。
【0027】
電波受信部21は、親機3a〜3cの各々から発信される電波を受信するための受信機であり、子機間通信部22は、他の子機と通信するための無線通信装置である。尚、子機間通信部22には、子機間の通信が端末間の直接通信になることから、例えば、ZigBee(Koninklijke Philips Electronics N.V.の登録商標)等の短距離無線通信規格に準拠した通信装置を用いることが好ましい。
【0028】
電波強度検出部23は、受信した電波の強度を検出し、電波を発信した発信機までの間の距離を算出するためのものである。この電波強度検出部23では、電波受信部21で受信した電波の強度に基づき親機3a〜3cとの距離を算出するとともに、子機通信部22で受信した電波の強度に基づき他の子機との距離を算出する。
【0029】
情報送信部24は、子機2a、2bの内部で生成した情報を親機3a〜3cに送信するための無線通信装置である。この情報送信部24では、内部で生成した情報と各子機2a、2bに付された識別情報とを電波信号中に含ませて送信する。尚、情報送信部24は、上記の電波受信部21と合わせて単一の通信装置により構成してもよいし、電波受信部21とは別個の通信装置で構成してもよい。
【0030】
通信先選択部25は、電波強度検出部23で検出した電波の強度に基づき、情報送信部24から送信する情報の送信先を選択するものである。この通信先選択部25では、電波受信部21において複数の親機3a〜3cからの電波を受信しているときに、その中から受信強度の最も高い親機を選択し、通信先の親機として設定する。
【0031】
タイマ26は、年月日や時刻を計時するためのものである。また、メモリ27は、各種データを記憶するための記憶媒体であり、ROM及びRAMによって構成される。このメモリ27には、子機の動作を制御するための制御プログラムの他、電波強度検出部23で算出した距離情報やタイマ26で計時した時刻情報等が記憶される。
【0032】
図1に示す複数の親機3a〜3cは、予め定めた場所に固定的に設置される電波発信機であり、例えば、室内や通路の壁際等に設置される。これら親機3a〜3cは、いずれも同様の構成を有し、図2に示すように、電波発信部31、情報受信部32、電波強度検出部33、親機間通信部34及びメモリ35等を備える。
【0033】
電波発信部31は、電波を定常的に発信するための発信装置である。この電波発信部31では、各親機3a〜3cに付された識別情報に応じて電波信号を変調し、電波中に個々の親機を識別するための情報を含ませて発信する。
【0034】
情報受信部32は、子機2a、2bの情報送信部24から送信される情報を受信するための受信装置である。尚、情報受信部32は、上記の電波発信部31と単一の通信装置により構成してもよいし、別個の通信装置により構成してもよい。
【0035】
電波強度検出部33は、情報受信部32で受信する電波の強度を検出し、情報を発信した子機2a、2bとの距離を算出するものである。尚、本実施の形態においては、子機2a、2b側だけでなく、親機3a〜3c側でも、子機及び親機間の距離を算出するが、これは、各々で算出した距離を確認し合うことで距離の特定に正確を期すためである。従って、システム構成の簡略化を優先する場合には、親機3a〜3c側の電波強度検出部33を省略してもよい。
【0036】
親機間通信部34は、他の親機と通信するための通信装置である。親機同士の通信方式は、無線LAN及び有線LANのいずれであってもよく、親機間通信部34には、それらの通信方式に適合する通信装置を用いることができる。
【0037】
メモリ35は、各種データを記憶する記憶媒体であり、このメモリ35には、親機3a〜3cの動作制御のための制御プログラムや設定データ、子機2a、2bから受信したデータ等が記憶される。
【0038】
図1に示す中央装置4は、本システム1全体の動作を統括的に制御する制御装置であり、この中央装置4には、制御プログラムを実行するCPUや、親機及び子機の位置を表示する表示部(いずれも不図示)の他、位置算出部41が設けられる。この位置算出部41は、親機3a〜3cから送信される距離情報を集約し、子機2a、2bの位置を特定するためのものである。
【0039】
尚、中央装置4及び親機3a〜3c間の通信方式においても、無線LANと有線LANの双方を用いることができ、また、特開2004−336708号公報に記載の電力線通信方式を利用することもできる。
【0040】
次に、上記位置検出システム1を用いた位置検出方法について説明する。本方法では、子機2a、2bの位置を検出するにあたり、子機2a、2b内で作成した情報の送信先を設定する処理を行うため、先ずは、それについて図2及び図3を参照しながら説明する。
【0041】
A.送信先の設定処理
例えば、図3に示すエリアAに子機2aが位置していた場合、子機2aは、親機3aからの電波42と親機3bからの電波43との双方を、電波受信部21で受信することになる。その際、電波強度検出部23において、電波42、43を受信したときの受信強度を検出し、いずれの電波強度が高いかを判定する。
【0042】
ここでは、図3に示すように、親機3bまでの距離よりも親機3aまでの距離の方が短く、親機3a側からの電波42が強くなるため、その旨を通信先選択部25に通知し、通信先選択部25において、親機3aを情報の送信先として選択する。
【0043】
そして、送信先として選択した親機3aに対し、子機2aの識別情報とタイマ26によって計時される時刻情報とを送信する。それと併行して、時刻情報と、親機3aからの発信電波に含まれる識別情報(親機3aの識別情報)とをメモリ27に記憶し、いずれの親機と交信したかを日時を付して保持しておく。
【0044】
その後、子機2aが図3のエリアBまで移動したとすると、子機2aは、親機3bからの電波43と親機3cからの電波45を受信することになる。ここでは、親機3cとの距離が短くなるため、電波強度検出部23において、その旨を検出するとともに、通信先選択部25において、情報の送信先を親機3aから親機3cに変更する。
【0045】
そして、上記と同様、親機3cに対して、子機2aの識別情報と時刻情報を送信する。このとき、メモリ27に記憶された時刻情報や親機3aの識別情報も併せて送信し、親機3cに対し、以前に親機3aと交信した旨及びそのときの日時を伝達する。これにより、子機2a自身のみならず、親機側でも、子機2aの通信履歴を把握することができる。
【0046】
B.位置検出処理
続いて、図2、図4〜図7を参照しながら、子機2a、2bの位置検出処理について説明する。尚、図4において、子機2aが位置するエリアCは、親機3aの送信エリア46及び親機3bの送信エリア47の双方の範囲内であるものとし、また、子機2bが位置するエリアDは、親機3bの送信エリア47の範囲内ではあるが、親機3aの送信エリア46の範囲外であるものとする。ここで、「送信エリアの範囲外である」とは、距離的に電波が届かない場合の他、障害物等の影響で電波に乱れが生じ、正確に距離を割り出せない場合等も含むものである。
【0047】
B−1.子機2aの位置検出
子機2aの位置を検出するにあたっては、図6に示すように、先ず、上記の「A.送信先の設定処理」に従って、親機3a、3bのうちから、子機2aの内部で作成した情報を送信する親機を設定する(ステップS1)。ここでは、図5(a)に示すとおり、親機3bに比べて親機3aが近いため、親機3aを送信先の親機として設定する。
【0048】
次いで、子機2aにおいて、親機3a、3bから発信される電波を受信し、子機2aから親機3aまでの距離52と、子機2aから親機3bまでの距離53とを算出する(ステップS2、S3)。次に、子機2aの情報送信部24から親機3aの情報受信部32に向けて、子機2aの識別情報、時刻情報、親機3a、3bの識別情報及び距離52、53の情報を含む電波信号を送信し、各距離52、53を親機3aに伝達する(ステップS4)。尚、時刻情報、親機3a、3bの識別情報及び距離52、53の情報は、子機2aのメモリ27にも記憶され、子機2a側でも保持される。
【0049】
そして、親機3aから中央装置4に距離52、53を転送し(ステップS5)、中央装置4の位置算出部41(図1参照)において、子機2aの位置P3を算出する(ステップS6)。中央装置4には、親機3a、3bの設置位置P1、P2と、親機3a及び親機3b間の距離51とが予め登録されており、位置算出部41では、位置P1、P2及び距離51〜53を用いて子機2aの位置P3を特定する。
【0050】
B−2.子機2bの位置検出
子機2bの位置を検出するにあたっては、図7に示すように、先ず、子機2a、2bの各々において、内部で作成した情報の送信先を設定する(ステップS21、S22)。ここでは、図5(b)に示すように、子機2aは親機3aと近く、子機2bは親機3bと近いため、子機2aは、親機3aを送信先として設定し、子機2bは、親機3bを送信先として設定する。
【0051】
これ以後、子機2bの位置の検出処理に移行することになるが、図4に示すように、子機2bは、親機3bの送信エリア47内に属するのみであるため、親機3aからの電波を受信することができない。このため、子機2bと親機3aの間の距離を求めることができず、子機2bの位置を特定することが不可能となる。
【0052】
そこで、図7に示すように、先ずは、親機3a及び親機3bの両方の送信エリア46、47に属する子機2aの位置を特定する(ステップS23)。この処理は、先の図6に示す方法を用いて行うことができ、これにより、図5(b)に示す距離52及び位置P3を特定することができる。
【0053】
次いで、図7に示すように、子機2bにおいて、親機3bからの電波を受信し、親機3bとの間の距離55(図5(b)参照)を算出する(ステップS24)。次に、子機2bの情報送信部24から親機3bの情報受信部32に向けて、子機2bの識別情報、親機3bの識別情報及び距離55の情報を送信するとともに(ステップS25)、それらの情報を親機3bから中央装置4に転送する(ステップS26)。
【0054】
次いで、子機2aと子機2bの間において、子機間通信部22により子機同士の相互通信を行い、子機2aの電波強度検出部23において、その際の電波強度を検出する。そして、子機2a及び子機2bの間の距離54(図5(b)参照)を算出し、情報送信部24を介して、子機2a、2bの識別情報、時刻情報及び距離54の情報を親機3aに送信する(ステップS27)。次に、親機3aにおいて、子機2aから送信された情報を中央装置4に転送し(ステップS28)、距離54の情報を中央装置4に伝達する。
【0055】
こうして、距離54、55及び位置P3の情報(図5(b))が中央装置4に集約されると、中央装置4では、それらの情報と、親機3a及び親機3b間の距離51、子機2a及び親機3a間の距離52、親機3a、3bの位置P1、P2の情報とを用いて四角形を構成し、子機2bの位置P4を特定する(ステップS30)。
【0056】
尚、子機2a、2bの位置の検出は、原則として定期的に行うが、複数回の検出処理の結果、子機2a、2bの位置に変化が認められなければ、検出間隔(通信間隔)を段階的に伸張し、検出の頻度を下げていく。その後、子機2a、2bの位置に変化が認められれば、検出間隔を段階的に短縮して検出頻度を上げていき、子機2a、2bの位置を追従する。
【0057】
このような操作は、子機2a、2bの全体を一纏まりとして行ってもよいし、個々の子機2a、2bを対象に別個に行ってもよい。上記の操作を行うことにより、子機2a、2bにおいて、必要なときに限って通信処理を行うように設定することができるため、消費電力の低減を図ることができる。特に、子機2a、2bを電池作動させる場合には、電池残量の消費を抑制することができ、子機2a、2bの継続利用時間を長期化することが可能になる。
【0058】
以上のように、本実施の形態においては、複数の子機2a、2bのうち、親機3bの送信エリア内のみに属し、親機3aの送信エリア内に属さない子機2bが存在する場合に、子機間で相互通信を行い、子機2aを経由した子機2bから親機3aまでの電波経路を形成する。そして、子機間通信の際に受信した電波の強度から子機間の距離54を求めるとともに、その距離54を補間的に用いることで、子機2bの位置の特定に不足する距離分を補い、子機2bの位置を特定するようにしている。
【0059】
このため、子機2b自身が2台の親機3a、3bからの電波を直接受信できなくても、子機2bの位置を特定することができ、これにより、人や物の位置の検出精度を損なうことなく、親機の設置台数を削減したり、検出可能領域の拡大を図ることが可能になる。
【0060】
また、本実施の形態においては、子機間の距離54が中央装置4に伝達されるため、子機2aと子機2bの接近状態を把握することもできる。このため、例えば、「AさんはBさんの傍に居る」とか、「荷物Aは荷物Bの近くに載置されている」などのように、位置の検出と同時に目印を抽出することもでき、利便性を向上させることが可能になる。
【0061】
尚、本実施の形態においては、子機2bの位置の特定時に他の子機2aを利用するため、位置検出の対象となる子機の周辺に他の子機が存在することが必要となる。このため、本位置検出システム1は、人や物が複数で移動することが想定される場所での使用に適している。従って、本位置検出システム1を用いるに際しては、位置検出の対象領域と、人や物の集中度合い等とを照らし合わせ、本位置検出システム1と既存の位置検出システムを場所的に使い分けて適用することが好ましい。
【0062】
続いて、本発明にかかる位置検出システム1の他の実施形態について説明する。先の実施形態においては、親機3a、3bがいずれも所定の位置に固定的に設置された場合を例示したが、図8に示すように、親機3a、3bと同等の機能を有する通信装置を、子機2a、2bと同様に装身具内に設けたり、或いは、設置位置の変更や携帯が可能に構成し、移動型親機61として機能させることもできる。
【0063】
但し、移動型親機61は、親機3a、3b(以下、これらの親機を移動型親機61と区別するため、「固定型親機」という)と異なり、人や物の移動に伴って位置が変化するため、中央装置4において、予め位置を登録しておくことができない。
【0064】
そこで、移動型親機61を利用するに際しては、先ず、固定型親機3a、3bから発信する電波を移動型親機61で受信して移動型親機61の位置を特定し、その後に、子機2a、2bの位置の検出処理を開始する。
【0065】
その際、移動型親機61の位置は、移動型親機61と固定型親機3a、3bの間において、図5(a)及び図6に示した位置検出方法を利用することにより特定することができる。また、子機2a、2bの位置は、固定型親機3a、3bの一方と移動型親機61とで2台の親機を構成し、それらの親機と子機2a、2bとの間において、図5乃至図7に示した位置検出方法を利用することで特定することができる。
【0066】
上記実施の形態によれば、固定型親機3a、3bの周辺に他の親機を増設して通信ネットワークエリアを拡大したのと同様の効果を得ることができるため、より広範な領域で子機2a、2bの位置を検出することが可能になる。それに加え、移動型親機61の位置を検出することによって、その所持者や移動型親機61に随伴して移動する物の位置を検出することができるため、移動型親機61を子機の1つとして併用することもできる。
【0067】
続いて、上記の位置検出システム1の適用例について、図9乃至図13を参照しながら説明する。
【0068】
図9に示す適用例は、百貨店等で来店客の回遊を集計する管理システムに上記位置検出システム1を適用したものである。この管理システムでは、店舗A〜Fの周辺に複数の親機71〜73を設置するとともに、来店客にバッジ等の形で子機74、75を配布する。その上で、個々の子機74、75を識別しながら、その位置を適宜検出し、それによって、どの来店客がいずれの店舗に何時何分に立ち寄ったか等を管理する。
【0069】
上述のとおり、上記位置検出システム1では親機間の設置間隔を拡げることができるため、本管理システムでの親機の設置にあたっては、その設置台数を少なくすることができ、システムコストの大幅な削減を図ることができる。
【0070】
本管理システムにおいて、例えば、子機74、75を所持する2人の来店客が店舗A〜Fに立ち寄った場合、親機71、72及び子機74、75間の通信により子機74、75の位置が検出されるとともに、子機74、75の各々において、店舗A〜Fに立ち寄った時刻がメモリ27(図2参照)に逐次記憶されていく。このため、それらの情報を親機71〜73に送信し、中央装置4(図1参照)に転送すれば、各来店客が立ち寄った店舗は勿論のこと、店舗に立ち寄った時刻、店舗内に滞在した時間及び立ち寄った回数等も把握することができる。
【0071】
尚、来店客の回遊状況の管理システムは、来店客の居場所を探すためのものではないため、来店客が移動する都度、その位置と時刻を中央装置4に伝達する必要はない。このため、多数の親機のうちの幾つか(例えば、エレベータホールに設置する親機)をデータ集計用の親機として定めておき、その親機に子機74、75が近付いたときに、メモリ27内に蓄積した距離情報や時刻情報等を一括的に送信するようにしてもよい。
【0072】
図10に示す適用例は、食料品店等に陳列した商品の賞味期限を管理する管理システムに上記位置検出システム1を適用したものである。この管理システムでは、店舗内の所定の位置に親機71、72を設置するとともに、タグ等の形で商品に子機74、75を貼着し、商品の位置(陳列場所)と時刻情報を管理する。
【0073】
本管理システムでは、各々の商品に関する賞味期限を事前に設定しておき、その賞味期限の情報と、商品が陳列され始めてからの時間とを対比し、賞味期限が近付いている商品や賞味期限切れの商品の有無を検出する。尚、本管理システムにおいて、賞味期限が間近に迫っている商品や賞味期限切れの商品を検出した場合には、異常として判定して管理者等に通知するが、この異常判定の処理は、必ずしも中央装置4(図1参照)側で行う必要はなく、個々の親機71、72が行うこともできる。
【0074】
すなわち、賞味期限に関する情報を中央装置4から親機71、72に送信するなどして親機71、72側にも設定しておき、親機71、72内において、賞味期限の情報と、子機74、75から送信される時刻情報とを対比し、異常の有無を判定する。そして、異常が認められた場合には、親機から中央装置4に向けて異常判定信号を送信し、中央装置4において、商品ごとの異常の有無を一元的に管理する。この構成によれば、中央装置4で全ての商品に関する陳列時間を集中的に管理する必要がなくなるため、中央装置4側の負荷を軽減することが可能になる。
【0075】
尚、商品の陳列に際して、陳列場所を途中で変更することがあるが、本実施の形態においては、子機71、72のメモリ27に過去の時刻情報等が蓄積されるため、陳列場所の変更後に、新たな親機に対して、以前の親機との間で交わした情報が伝達される。このため、陳列場所が変更されても、時刻情報等が喪失することはなく、変更後の親機に引き継がれていく。従って、商品の陳列時間を正確に把握することができ、賞味期限を適切に管理することが可能になる。
【0076】
図11に示す適用例は、バスを利用した観光旅行で観光客の集合状態を管理する管理システムに上記位置検出システム1を適用したものである。この管理システムでは、バスに親機71を設置する一方で、添乗員に親機72を携帯させ、子機74、75を配布した観光客が所定の時間内に集合エリアに集まっているかを判別する。
【0077】
尚、本システムの場合、バス及び添乗員の位置が不定となるため、子機74、75の位置(観光客の位置)は、バス及び添乗員に対する相対的な位置(例えば、バスからどの方角に何m離れた位置に居るなど)となる。また、添乗員が携帯する親機72は、図8で示した移動型親機61となる。
【0078】
本管理システムにおいて、子機2a、2bが親機71、72の電波の送信エリア内に存在する場合には、各子機2a、2bの位置を検出した上で、観光客が集合エリア内に集まっていると判断できる。その際、観光客の集合状況を示す情報は、バス側の親機71に送信してもよいし、添乗員側の親機72に送信してもよい。
【0079】
一方、子機2a、2bが親機71、72の電波の送信エリアから逸脱し、子機2a、2bから親機71、72に対して何らの情報も送信されない場合には、親機71、72において、子機2a、2bを所持する観光客が集合場所に来ておらず、異常と判断することができる。
【0080】
図12に示す適用例は、特定の場所への入室を制限するセキュリティシステムに上記位置検出システム1を適用したものである。このシステムでは、薬品庫や役員室等の周辺に親機71、72を設け、それら親機71、72と複数の子機74、75との間で電波経路を構成して子機74、75の位置を検出する。
【0081】
上記システムにおいて、薬品庫等への入室を許可する者のグループを予め登録しておけば、薬品庫等への人の出入りを制限することができる。例えば、子機74の所持者が上記グループに属しておらず、その状態で薬品庫の近傍領域に侵入又は近付いたとすれば、即座にそれを察知して注意喚起や警告等の対処を採ることができる。
【0082】
図13に示す適用例は、学校等での人の所在を管理するシステムに上記位置検出システム1を適用したものである。このシステムでは、校内や通学路中の特定の場所に親機71、72を設けるとともに、児童に子機74、75を所持させることで、児童の位置を管理することができる。この際、例えば、児童の位置を時間と照らし合わせて監視することで、授業の出欠等の管理に役立てることができ、また、所定の時間内に集合場所まで移動したかを監視することにより、児童の点呼等に利用することもできる。
【0083】
さらに、本位置検出システム1は、物流用の倉庫での荷物の保管場所や搬入出を管理する場合、さらには、オフィスビル内で備品を管理する場合等にも適用することができ、様々な分野で広く活用することができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0085】
例えば、上記の実施形態においては、中央装置4に位置算出部41を設けるが、親機3a〜3cに位置算出部41を設け、親機3a〜3cが子機2a、2bの位置を特定してもよい。但し、その場合、距離等の情報は1箇所に集約しなければならないため、どの親機に情報を集約するかを事前に定めておく必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明にかかる位置検出システムの一実施の形態を示す全体構成図である。
【図2】親機及び子機の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】通信先の設定処理を説明する図である。
【図4】複数の子機の位置の一例を示す模式図である。
【図5】位置検出システムを用いた位置検出方法を説明する図である。
【図6】位置検出処理を説明するフローチャートである。
【図7】位置検出処理を説明するフローチャートである。
【図8】本発明にかかる位置検出システムの他の実施形態を示す全体構成図である。
【図9】本発明にかかる位置検出システムの適用例を示す図である。
【図10】本発明にかかる位置検出システムの適用例を示す図である。
【図11】本発明にかかる位置検出システムの適用例を示す図である。
【図12】本発明にかかる位置検出システムの適用例を示す図である。
【図13】本発明にかかる位置検出システムの適用例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 位置検出システム
2(2a、2b) 子機
3(3a〜3c) 親機
4 中央装置
21 電波受信部
22 子機間通信部
23 電波強度検出部
24 情報送信部
25 通信先選択部
26 タイマ
27 メモリ
31 電波発信部
32 情報受信部
33 電波強度検出部
34 親機間通信部
35 メモリ
41 位置算出部
42〜45 電波
46、47 電波の送信エリア
51〜55 距離
61 移動型親機
71〜73 親機
74、75 子機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた位置に設置され、電波を発信する複数の親機と、該複数の親機からの電波を受信し、電波強度を検出する複数の子機とを備え、該検出した電波強度から親機及び子機間の距離を求めて前記複数の子機の位置を特定する位置検出システムであって、
前記複数の子機は、子機間で電波を授受する子機間通信部と、該子機間通信部で受信した電波強度を検出し、子機間の距離を算出する距離算出部とを備え、
該位置検出システムは、前記距離算出部で算出した子機間の距離を補間的に用いて前記複数の子機の位置を特定することを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記複数の子機において、2台以上の前記親機の電波の送信エリア内に属する第1の子機と、単一の前記親機の電波の送信エリア内のみに属する第2の子機とが存在するときに、
該位置検出システムは、前記第1の子機の位置と、該第1の子機から前記親機までの距離と、前記距離算出部で算出した子機間の距離とを用いて、前記第2の子機の位置を特定することを特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
移動可能に構成され、電波を発信する移動型親機をさらに備え、
該位置検出システムは、前記複数の親機から発信する電波を前記移動型親機で受信して該移動型親機の位置を特定した後に、前記複数の親機のいずれかと該移動型親機とから発信する電波を前記複数の子機で受信して該複数の子機の位置を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記複数の子機は、前記複数の親機のうち、該複数の親機から受信する電波の強度が最も高い親機を、情報を送信する送信先の親機として選択することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記複数の子機は、時刻情報を生成する時刻情報生成部を備え、
該時刻情報生成部で生成した時刻情報を前記送信先として選択した親機に送信することを特徴とする請求項4に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記複数の子機は、前記送信先の親機に情報を送信した時刻を示す情報を累積的に記憶する記憶部を備え、
前記送信先の親機が変更された場合に、変更前の親機に情報を送信した時刻を示す情報を変更後の親機に送信することを特徴とする請求項5に記載の位置検出システム。
【請求項7】
前記複数の子機の位置の変化に応じて前記複数の子機の位置を特定する頻度を変化させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の位置検出システムを用いて、前記複数の子機と同伴して移動する人又は物の移動状況を管理することを特徴とする管理システム。
【請求項9】
前記複数の子機と同伴して移動する人又は物が所定のエリア内に存在する場合に正常と判定し、前記エリア内から逸脱した場合に異常と判定することを特徴とする請求項8に記載の管理システム。
【請求項10】
前記複数の子機と同伴して移動する人又は物が所定の制限領域に侵入又は接近したか否かを判別し、異常判定を行うことを特徴とする請求項8に記載の管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−229175(P2009−229175A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73247(P2008−73247)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(500096972)
【Fターム(参考)】