説明

位置測定制御方法

【課題】 本発明により、GPS や無線LAN を用いたシステムでは出来なかった、通信機を有しない物体の位置を測定することが可能となり、またカメラを用いたシステムでは困難であった死角や暗所の物体も、電波等の物体を透過して測定可能なセンサを用いる事で測定が可能とすることを目的とする。
【解決手段】 本発明は、複数の該距離測定用センサを制御する制御部とで構成され、該制御部が複数の該距離測定用センサから測定結果を収集する位置測定制御方法において、該制御部が測定開始を指示する制御信号に同じ識別信号を付加して、各々の該センサに同時或いは連続して送信し、各々のセンサは制御部からの該制御信号を受信し、距離測定を開始して、距離測定が終了すると、測定結果に、該制御部で付加されたと同じ識別信号を付加して制御部に返信する位置測定制御方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近年、物体の位置を測定する装置を用いて、カーナビゲーションシステム、室内用セキュリティシステム等の様々なアプリケーションが提案されており、本発明は、位置測定のための装置とその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
位置測定する装置の従来例として、複数のGPS 衛星を利用したGPS(Ground Positioning System)、ステレオカメラを用いて、室内外の物体の位置を把握するシステム、無線LAN やセルラシステムの複数のアクセスポイントと端末との距離から、端末の位置を把握する位置測定システムが挙げられる。
【0003】
GPS では、精度良く同期された信号が複数の衛星局から放射され、それらを地上局で受信して、到来時間差等を計算してそこから緯度・経度を計算する(特許文献1参照)。
【0004】
ステレオカメラを用いたシステムでは、複数の別の位置に設置されたカメラの画像の差分から撮像された物体の位置を測定する(特許文献2参照)。
【0005】
また、無線LAN を用いたシステムでは、複数のアクセスポイントと端末との距離を、通信時における伝搬時間の差などから求め、端末のアクセスポイントに対する相対位置を推定する(特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特表2004−515766号公報
【特許文献2】特許第3436074号公報
【特許文献3】特開2000−180186号公報
【特許文献4】特開2004−242122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景技術で説明したように、前述した例において、GPS および無線LAN を用いる方法では、位置を測定すべき物体は、通信装置を有する必要があり、あらゆる物体の位置を把握できるわけではない。
【0007】
また、カメラを用いたシステムでは、通信装置を有しない物体についても位置を把握する事が可能であるが、画像処理を行う関係上、暗所や死角にある物体については位置測定が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、対象物との距離を測定する距離測定用センサと、複数の該距離測定用センサを制御する制御部とで構成され、該制御部が複数の該距離測定用センサから測定結果を収集する位置測定制御方法において、該制御部が測定開始を指示する制御信号に同じ識別信号を付加して、各々の該センサに同時或いは連続して送信し、各々のセンサは制御部からの該制御信号を受信し、距離測定を開始して、距離測定が終了すると、測定結果に、該制御部で付加されたと同じ識別信号を付加して制御部に返信することを特徴とする。
(2)本発明は、さらに識別信号は時刻を基に生成したものである。
(3)本発明は、前記送信する制御信号の送信開始時間差が、対象物の許容最大移動速度および、各センサの距離測定精度から計算される許容時間差よりも短くなるように制御する。
(4)本発明は、前記各々のセンサの測定のタイミングが、検出対象物体の許容最大移動速度および各センサの距離測定精度から計算される許容時間差よりも短くなるようにあらかじめ送信タイミングを調整する。
(5)本発明は、前記制御部は、任意一つのセンサにテスト用の制御信号を送信し、前記センサ部はテスト用の制御信号を受信した後に距離測定を行わずに前記制御部に信号を返信し、制御部では、制御信号の送信開始の時刻と、センサ部から返信された信号を受信した時刻の差(処理遅延)を記憶する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、GPS や無線LAN を用いたシステムでは出来なかった、通信機を有しない物体の位置を測定することが可能となり、またカメラを用いたシステムでは困難であった死角や暗所の物体も、電波等の物体を透過して測定可能なセンサを用いる事で測定が可能となる。
【0010】
また、制御方法においては、センサ同士の同期などの処理を必要としないため、センサ部の消費電力・コスト・サイズ等を抑える事が可能であり、機器を増減も容易に行う事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照することにより、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
〔a〕本発明に係る実施形態の説明
第1の実施形態を示す図を図1、図2に示す。
【0013】
図1は、本発明を用いた位置測定システムの一例を示す。図2は制御部とセンサとのシーケンスの一例を示す。
【0014】
制御部1によって、複数の距離測定用センサ(1〜3)が制御されており、それぞれのセンサ(1〜3)が、計測対象物体までの距離を測定し、制御部においてそれぞれの距離測定結果から位置を計算する。
【0015】
たとえば図1に示すように、センサ#1,#2,#3(1〜3)の距離測定結果が、理想的にd1、 d2、 d3 と計測されたとして、センサの相対座標を(x1,y1,z1)、(x2,y2,z3)、(x3,y3,z3) のように決めると、物体の相対座標(x0,y0,z0) は、理想的には、
【0016】
【数1】

なる関係を満たし、これを数値的に求める事で、物体の座標を求めることができる。因みに、測定が理想的でない場合においても、数値的に物体の相対座標を推定する事は可能である。
【0017】
また、制御部とN番目の距離測定用センサとの制御信号のやりとりは、たとえば図2に示すように行われる。
【0018】
まず、制御部は、測定開始のリクエスト信号(Request) を送信する。リクエスト信号は、有線あるいは無線の伝送路を通じて伝送され、伝送路に応じた伝搬遅延(Transmission Delay(Forward))の後、センサに到達し、センサにおいては所要の準備等による処理遅延(Control Over Head(pre)) の後に測定が開始される。測定終了後は一定の処理時間(Control Over Head(post)) の後に、制御部へ結果データ信号(Result) を送信し、制御部には伝送路に起因する遅延(Transmission Delay(Backward)) の後に到達する。
【0019】
ここで、距離測定用のセンサは、センサから電磁波あるいは超音波、光、ソリッドウェーブ、重力波等を送信し、検出対象物体で反射・再放射されたものを受信し、センサからの送信時刻と受信時刻の時間差を測定する機能を持ち、当該時間差と電磁波、超音波、光、ソリッドウェーブ、重力波等の伝搬速度から、測定対象物体までの距離を計測するものを示しており、各センサは必ずしも同じセンサを用いなくても良い。
【0020】
図3は、図2に示した、制御部とセンサとのやりとりにおけるリクエスト信号及び結果データ信号の構造を表している。図に示すように、ある測定タイミングにおいては、すべてのセンサへのリクエスト信号に対して、同等の識別符号(ID) が付加される。
【0021】
該リクエスト信号を受信したセンサは、リクエストに従って、距離測定を行い、距離測定後に生成する結果データ信号に、リクエスト信号に含まれた識別符号と同等な符号を付与する。ここで、リクエスト信号と結果データ信号の識別符号は必ずしも同じものとは限らず、各センサからの結果データ信号を集めた際に、それらが同一の測定タイミングで行われた事が識別出来れば良い。
【0022】
このような処理を行う事により、制御部で各センサからの結果データ信号を受け取った際に、同様の識別符号を持つデータ同士が、同一の測定タイミングで行われた事がわかり、前述した位置推定処理を行う事ができる。
【0023】
図4は、図3に示した識別信号を、制御部における時刻から生成されるデータとしたものである。
【0024】
例えば、制御部における現在時刻が2004/9/19 21:21:00.000 であった場合、リクエスト信号に付加する識別信号を、“20040919212100000” とする。
【0025】
測定対象物体が移動する場合を考慮すると、距離測定は理想的には同時に行われる事が必要となる。
【0026】
ただし、各センサにおける測定開始タイミングが、物体の移動速度に対して十分小さければ、必ずしも同時でなくても、「同一のタイミング」と見なす事ができる。
【0027】
例えば、図5は、各センサにおいて、上記「同一のタイミング」で測定した場合のタイミングを表している。
【0028】
このとき、センサ#1〜#M へリクエスト信号を送る際の、最大の送信開始タイミング誤差をΔT(Total Transmit Time Difference) とおき、本システムの位置測定の精度をdresとし、測定対象物体の移動速度をv とすれば、ΔT は、
【0029】
【数2】

のような関係を満たせば良い。
【0030】
例えば、3つのセンサを用いて距離の測定を行う場合、同じセンサを用いてかつ、伝送路を等しく設定した場合、伝搬遅延と処理遅延は同じになり、例えば伝搬遅延を100ms、処理遅延を10ms とし、その測定精度は1m とする。このとき、測定する物体の移動速度が1m/s で、1 番目のセンサへ制御信号を送信する相対時刻を0ms、2 番目のセンサへ送信する相対時刻を10ms、3 番目のセンサへ送信する相対時刻を20ms、すなわち上記最大の送信開始タイミング誤差ΔT は20ms である。3つのセンサは上述したとおり、同じ伝搬遅延・処理遅延を有するので、それぞれのセンサが測定開始する時刻は、それぞれ110ms、120ms、130ms となり、測定開始時刻の最大20ms となる。従って、センサ#1〜センサ#3 すべてが測定する間に、測定対象となる物体は2cm 程度動くことになるが、測定精度1m に対して十分小さく、同時に測定した場合とほとんど変わらない結果が得られる。よって、上記「同一のタイミング」で測定したと考える事ができる。このとき、上記の式の右辺は1000ms であり、ΔTは、上記の数式2を満たしている。
【0031】
送信タイミングの誤差を十分短く調整したとしても、各センサでの実際の測定タイミングの最大誤差は図6に示す(Total gap of measurement start timing) ように異なる場合がある。この誤差は、制御部と各センサとの伝送距離の違いと各センサでの測定前の処理時間(図2でのControl Over Head(pre)) の違いによって発生する。
【0032】
例えば、センサを3つ用いて測定を行う場合、センサ#1〜#3の伝搬遅延がそれぞれ100ms、200ms、300msで、処理遅延がそれぞれ10ms,50ms,100msのとき、制御信号の相対送信時刻をそれぞれ0ms,10ms,20msとすると、センサ#1の測定開始相対時刻は110ms、センサ#2では260ms、センサ#3では420msとなり、上記測定開始タイミング差ΔTは、310msとなる。このとき、測定すべき物体の移動速度が10m/sだとすれば、上記タイミング差によって物体は最大3.1m動くことになってしまう。センサの精度が1mだとすると、この誤差は許容できないため、大きな問題となる。
【0033】
そこで、図7に示すように、リクエスト信号のタイミングを調整する事で、測定開始タイミングを上記で示した数式2で示される許容誤差ΔT以内にする。
【0034】
この処理により、各センサ部に異なる種類のセンサを採用した場合においても、測定の信頼性を高める事が可能となる。
【0035】
すなわち、前述した例で説明すれば、測定開始時刻を統一するため、制御信号を送信する相対時刻を、例えばセンサ#1では290ms、センサ#2では150ms、センサ#3では0msと設定する。これにより、測定開始相対時刻はすべてのセンサにおいて400msに統一され、測定開始タイミングをそろえ、誤差を少なくすることが可能になる。
【0036】
図8は制御部からテスト用リクエストを送信したシーケンスを示す。
【0037】
制御部は、テスト用のリクエストを送信し、センサは、距離測定以外の信号処理を行って、制御部へ信号を返す。制御部ではテスト用リクエスト送信からセンサからのテスト信号の返信までの時間を測定し、保存する。これにより、測定部ではリクエスト送信時から、測定結果受信までにかかる測定時間以外の処理時間を把握する事ができる。
【0038】
例えば、センサを3つ用いて測定を行う場合、センサ#1〜#3の伝搬遅延がそれぞれ100ms、200ms、300msで、処理遅延がそれぞれ20ms、40ms、60msだとする。
【0039】
このとき、制御部からテスト用のリクエスト信号を送信し、センサ部では上記処理遅延の後、返信にかかる時間を経てテスト信号を返信する。例えば、返信にかかる時間も処理遅延と同様であったとして、返信時にも送信時と同様の伝搬遅延を持つとすると、制御部がテスト用リクエスト信号を送信してから、テスト信号を返信するまでの時間はセンサ#1〜#3で、それぞれ240ms,480ms,720msとなり、測定時間以外の処理時間を把握することができる。
【0040】
また、このデータを例えば2で割って120ms,240ms,760msとし、さらに、この3つの値から三つのうちで最小の120msを引くと、その値は0ms,120ms,240msとなる。これらの値から、センサ#1〜#3までの送信相対時刻をそれぞれ240ms、120ms、0msと設定すれば、それぞれのセンサごとの測定開始タイミング差を最小にすることができる。このように、テスト用の機能を付加することで、伝搬遅延や処理遅延をある程度見積もる事が可能となり、より精度の高い測定が可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を用いた位置測定システムの一例を示す図である。
【図2】本発明を用いた制御部と各センサとのシーケンスを示す図である。
【図3】本発明のリクエストデータと結果データの第1のフォーマット例を示す図である。
【図4】本発明のリクエストデータと結果データの第2のフォーマット例を示す図である。
【図5】本発明の各センサにおいて、同一のタイミングで測定する場合のダイミングチャートを示す図である。
【図6】本発明の制御部から各センサへリクエストを送信する第1のダイミングチャートを示す図である。
【図7】本発明の制御部から各センサへリクエストを送信する第2のダイミングチャートを示す図である。
【図8】本発明のテスト用リクエストを用いた制御部と各センサとのシーケンスを示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 制御部(Controller)
2〜4 距離測定用センサ
5 対象物体(Target)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物との距離を測定する距離測定用センサと、複数の該距離測定用センサを制御する制御部とで構成され、該制御部が複数の該距離測定用センサから測定結果を収集する位置測定制御方法において、該制御部が測定開始を指示する制御信号に同じ識別信号を付加して、各々の該センサに同時或いは連続して送信し、各々のセンサは制御部からの該制御信号を受信し、距離測定を開始して、距離測定が終了すると、測定結果に、該制御部で付加されたと同じ識別信号を付加して制御部に返信することを特徴とする位置測定制御方法。
【請求項2】
前記請求項1記載の識別信号は時刻を基に生成したものであることを特徴とする位置測定制御方法。
【請求項3】
前記請求項1記載の前記送信する制御信号の送信開始時間差が、対象物の許容最大移動速度および、各センサの距離測定精度から計算される許容時間差よりも短くなるように制御することを特徴とする位置測定制御方法。
【請求項4】
前記請求項1記載の前記各々のセンサの測定のタイミングが、検出対象物体の許容最大移動速度および各センサの距離測定精度から計算される許容時間差よりも短くなるようにあらかじめ送信タイミングを調整することを特徴とする位置測定制御方法。
【請求項5】
前記請求項1記載の前記制御部は、任意一つのセンサにテスト用の制御信号を送信し、前記センサ部はテスト用の制御信号を受信した後に距離測定を行わずに前記制御部に信号を返信し、制御部では、制御信号の送信開始の時刻と、センサ部から返信された信号を受信した時刻の差(処理遅延)を記憶することを特徴とする位置測定制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−112816(P2006−112816A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297691(P2004−297691)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】