説明

位置登録装置および位置登録プログラム

【課題】位置情報を取得すべき要求を検出した地点が不明な場合であっても、要求を検出した地点を特定する。
【解決手段】位置登録装置は、イベントの発生を検出する検出部と、該位置登録装置の外部から位置の特定が可能な情報を取得することで位置を特定する位置特定部と、該位置登録装置の移動量を検出する移動検出部と、少なくとも検出された該イベントの発生以降に該移動検出部で検出された該移動情報を蓄積する記憶部と、該位置特定部により該位置登録装置の位置が特定されると、該記憶部に蓄積された該移動情報に基づき、該イベントの発生時点から該位置登録装置の位置の特定が可能な情報を該位置登録装置の外部から取得した時点までの該位置登録装置の移動量を特定し、該位置特定部で特定された該位置登録装置の位置と特定した該位置登録装置の移動量とから該イベントの発生時点の該位置登録装置の位置を特定する位置特定部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報を測定可能な位置登録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電波強度や全地球測位システム(GPS)など装置外部からの無線信号を利用して位置を測位する機能を有する携帯端末装置やカーナビゲーション装置等がある。これらの装置は、利用者に現在位置を提示したり、測位結果を他の情報に関連付けて提示したりすることが可能である。
【0003】
ところで、これらの装置は、測位機能を動作させると受信および演算処理を行うため、電力を消費する。この電力の消費を減少させるため、測位機能を間欠的に機能させる装置もある。これらの装置では、加速度センサ、地磁気センサ等を設けておき、外部からの無線電波を用いて測位した位置からどの程度移動したかを測定する機能を有する装置もある。このような装置は、測位機能が使用できなくなった場合、それまでに求めていた位置情報を加速度センサ、地磁気センサ等の情報から求めた移動量で補正することで、現在位置を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3651598号公報
【特許文献2】特開2005−257284号公報
【特許文献3】特開平9−89584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カメラで撮影した位置を特定する、RF−ID(Radio Frequency IDentification)の読取り位置を特定する等、イベント発生時点の装置の位置を特定したい場合がある。
【0006】
イベント発生に伴い位置を特定する装置の場合、イベント発生時点で電池切れ等により動作できないことを防止し、イベント発生時点で確実に動作ができるよう、イベント発生時点以外では、なるべく処理を行わないようにし消費電力を抑えておくことが望ましい。このような装置では、イベント発生と連動して測位を開始することが望ましい。しかし、イベント発生時点が屋内である場合や測位に必要な基地局が不足する場所である場合など、必ずしも装置外部からの信号を受信できない場合がある。このような場合、装置は装置外部からの電波による位置の特定ができない。
【0007】
従来の装置は、上記のように、イベントの発生前のいずれかの時点で位置を測定しておき、そこから継続的に移動量の測定を行わなければ、イベント発生時点の位置を特定できない。このため、従来の装置をイベント発生時に外部からの電波を受信して測位を開始する構成とした場合、イベント発生時に外部からの電波の受信ができなければ、イベント発生時点の位置を特定することができない問題があった。
【0008】
そこで、開示の位置登録装置は、継続的な測位を行っていないためにイベントの発生前のいずれかの時点における位置が不明であり、イベントの発生を検出したときにイベント発生時点の位置を特定できない場合であっても、イベント発生時点の位置を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の位置登録装置は、位置の特定が可能な情報を外部から取得することで位置登録装置の位置を特定する位置特定部と、位置登録装置の移動方向および移動量を含む移動情報を検出する移動検出部と、イベントの発生を検出する検出部と、少なくとも検出されたイベントの発生以降に移動検出部で検出された移動情報を蓄積する記憶部と、位置特定部により位置登録装置の位置が特定されると、記憶部に蓄積された移動情報に基づき、イベントの発生時点から位置登録装置の位置の特定が可能な情報を外部から取得した時点までの位置登録装置の移動方向および移動量を特定し、位置登録装置の位置を位置登録装置の移動方向および移動量で修正することで、イベントの発生時点での該位置登録装置の位置を特定する位置特定部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
開示の位置登録装置は、継続的な測位を行っていないためにイベントの発生前のいずれかの時点における位置が不明であり、イベントの発生を検出したときにイベント発生時点の位置を特定できない場合であっても、イベント発生時点の位置を特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本実施例の位置登録装置の機能ブロック図である。
【図2】図2はイベントテーブル31の例である。
【図3】図3は位置テーブル32の例である。
【図4】図4はイベント位置テーブル33の例である。
【図5】図5は位置登録装置10のハードウェア構成例である。
【図6】図6はイベント管理部21の処理のフローチャートである。
【図7】図7は測位制御部22の処理のフローチャートである。
【図8】図8は位置登録装置10と軸の関係を説明する図である。
【図9】図9は時系列の加速度データの例である。
【図10】図10は時系列の加速度データ51のグラフ515である。
【図11】図11は時系列の方向データの例である。
【図12】図12は時系列の方向データ61のグラフ615である。
【図13】図13は、受信信号強度の取得の説明図である。
【図14】図14は、受信信号強度の取得のシステム構成図である。
【図15】図15はアクセスポイントからの距離と電波強度の関係テーブル140である。
【図16】図16はアクセスポイントとアクセスポイントの絶対位置情報の関係テーブル145である。
【図17】図17は、絶対位置情報の一例である。
【図18】図18は位置特定部23の処理のフローチャートである。
【図19】図19は、図10の方向データ61に基づき、z軸から見た北方向の角度の時系列のグラフである。
【図20】図20は、位置登録装置10の軸と方位の関係を示す図である。
【図21】図21は、物品の位置を表示させた画面例である。
【図22】図22は、実施例2での測位制御部22の処理のフローチャートである。
【図23】図23は、実施例2での測位制御部22の処理のフローチャートである。
【図24】図24は、測位制御部22が絶対位置情報を継続して取得した場合の絶対位置情報の時系列データである。
【図25】図25は、時系列データ81から得られる絶対座標の変化を示すグラフ814である。
【図26】図26は、図23に対応する期間に検出された加速度データの波形である。
【図27】図27は実施例3のシステムの説明図である。
【図28】図28は読取情報の例である。
【図29】図29は設置場所情報の例である。
【図30】図30は、実施例3の位置登録装置200のハードウェア構成例である。
【図31】図31は、位置登録装置200の機能ブロックである。
【図32】図32は、実施例3の屋内環境の例である。
【図33】図33は位置登録装置200が物品231の無線ICタグを読み取った以降の加速度データのグラフ816の一例である。
【図34】図34は位置登録装置200が物品231の無線ICタグを読み取った以降の方向データのグラフ817の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)
[装置の機能]
図1は本実施例の位置登録装置の機能ブロック図である。位置登録装置10は測位機能により位置登録装置10の位置情報を取得可能な装置である。位置登録装置10は処理部20、記憶部30、イベント検出部40、移動検出部50および絶対位置特定部60を含む。
【0013】
測位に関する処理を実行する処理部20は、イベント管理部21、測位制御部22および位置特定部23を含む。処理部20は記憶部30、イベント検出部40、移動検出部50および絶対位置特定部60に接続する。
【0014】
記憶部30は、処理部20から受信したイベントに関する情報、測位に関する情報などを記憶する。記憶部30はイベントテーブル31、位置テーブル32、およびイベント位置テーブル33を含む。
【0015】
ここで、各テーブルについて説明する。
【0016】
[イベントテーブル31]
イベントテーブル31は、イベント情報を一時的に記憶するテーブルである。イベントとは、位置登録装置10が実行する処理のトリガとなる現象を指す。位置登録装置10は複数種類のイベントを処理可能であるものとする。イベントには位置情報の取得処理の実行を伴う測位イベントと位置情報の取得処理の実行を伴わないイベントがあるものとする。測位イベントは、例えば、画像データの取得、無線ICタグの読取り、バーコード情報の読取り、カメラ撮影、メール受信、メール送信等である。本実施例の測位イベントは、イベントが発生した時点での位置登録装置10の位置情報の取得処理の実行を伴うが、位置情報が即時には必要ではないイベントである。例えば棚卸において、棚卸対象に付加された無線ICタグを読み取った位置は即時に必要ではない。しかし、位置情報が分かれば、後に利用者は位置情報に基づき容易に棚卸対象を探すことができる。すなわち、位置情報は有用であるが、その位置情報を即時に利用者に提示するとは限らない。なお、本実施例の位置登録装置10は、利用者が保持して移動可能な端末、例えば携帯端末やカメラであるとする。
【0017】
図2はイベントテーブル31の例である。イベントテーブル31に格納されるイベント情報は、イベントを識別するためのイベント識別子(イベントID)311、イベント発生時刻312、イベント内容313の情報を含む。イベント情報は測位イベントか否かを示す属性情報314を含む場合もある。
【0018】
イベントID311は、イベントを識別するための情報である。本実施例では、イベントテーブル31は、イベントが検出された後、イベント発生位置が特定され、イベント内容313とイベント発生位置とが関連付けられてイベント位置テーブル33に記憶されるまでの間、イベント情報を記憶する。イベントテーブル31は、最初にイベントを検出した後、位置登録装置10の絶対位置が特定されるまでに複数のイベントを検出した場合、複数のイベントを記憶する。なお、本実施例の絶対位置とは、位置登録装置が位置の特定が可能な情報を外部から取得することで特定したの位置を示す。このとき、イベント識別子311は複数のイベントを識別するためにイベント情報に付与される。
【0019】
イベント発生時刻312はイベントが発生した時刻である。本実施例ではイベント検出部40がイベントを検出した時点に内部のクロックから取得した時刻がイベント発生時刻に該当する。
【0020】
イベント内容313は測位イベントの内容を識別する情報である。本実施例の測位イベントは無線ICタグの読取りとする。
【0021】
図2のイベントテーブル31の最初のレコードは、時刻11:00:00:000に識別子が001である無線ICタグ読取のイベントを検出したことを示す。
【0022】
[位置テーブル32]
位置テーブル32は、移動検出部50が検出した位置登録装置10の移動方向および移動距離を含む移動情報と、絶対位置特定部60が検出した絶対位置情報とを時系列で記憶するテーブルである。本実施例の移動情報は移動方向および移動距離を算出可能な加速度データと磁束密度データを含む。本実施例では少なくともイベント発生時刻以降に移動検出部50が検出した移動情報を蓄積する。なお、移動方向および移動距離をまとめて移動量という。
【0023】
図3は位置テーブル32の例である。位置テーブル32は、番号321、時刻322、センサ種別323、センサ値324の情報を含む。
【0024】
番号321は位置テーブル32の各移動情報および絶対位置情報のレコードを識別するための識別子である。時刻322は移動検出部50が加速度データ、磁束密度データを取得した時刻および絶対位置特定部60が絶対位置情報を取得した時刻である。
【0025】
センサ種別323は、各移動情報および絶対位置情報を検出したセンサの種別を特定するための情報である。移動検出部50は加速度センサ106により加速度を測定し、地磁気センサ107により磁束密度を測定する。絶対位置特定部60は、受信する無線電波の強度を検出する。絶対位置特定部60は、検出した無線電波の強度により絶対位置を算出する。センサ値324は、各センサの測定結果である。なお、表中の(m/s)は加速度の単位(m/s)を示す。
【0026】
[イベント位置テーブル33]
イベント位置テーブル33は、イベントと該イベントが発生時刻における位置登録装置10の位置とを関連付けたテーブルである。
【0027】
図4はイベント位置テーブル33の例である。
【0028】
イベントID331は、イベントテーブル31のイベントID311に対応しており、イベントを識別するための情報である。イベント内容332は、イベントテーブル31のイベント内容313に対応しており、イベントの内容を識別するための情報である。イベント発生時刻333は、イベントテーブル31のイベント発生時刻312に対応しており、イベントが発生した時刻を示す情報である。イベント発生位置334は、イベント発生時刻における位置登録装置10の絶対位置を示す情報である。誤差情報335は、イベント発生位置334を特定した際に発生する誤差の大きさを示す情報である。
【0029】
図1の位置登録装置10のイベント検出部40はイベントが発生したことを検出する。イベント検出部40はイベントが発生したことを示すイベント発生情報を処理部20に出力する。なお、イベント検出部40は測位イベントを検出した場合のみイベント発生情報を出力することも可能である。
【0030】
位置登録装置10の移動検出部50は位置登録装置10の移動を検出するためのセンサを機能させることにより、位置登録装置10の移動を特定することが可能な測位結果を取得する。移動検出部50が取得する測位結果を移動情報とする。測位イベントの発生を検出した時点の位置登録装置10の位置は不明である。移動検出部50は処理部20から測位開始指示を受けるとセンサを起動して、移動を検出する。移動検出部50は測位終了指示を受けるとセンサへの電力の供給を停止する。移動検出部50は取得した移動情報を処理部20に出力する。
【0031】
位置登録装置10の絶対位置特定部60は位置登録装置10の絶対位置を特定することが可能な測位結果を検出する。実施例1では位置特定可能な信号は複数のアクセスポイントから受信した電波強度である。絶対位置特定部60は、電波強度から絶対位置情報を算出する。また、絶対位置特定部60は処理部20から測位開始指示を受けると測位を開始し、測位終了指示を受けると測位を終了する。絶対位置特定部60は取得した測位結果を処理部20に出力する。
【0032】
処理部20のイベント管理部21はイベント情報の管理をする。イベント管理部21はイベント検出部40からイベント発生情報を受信すると、イベント情報を生成する。また、イベント管理部21は生成したイベント情報をイベントテーブル31に格納する。また、イベント管理部21は測位制御部22に測位を開始する指示を出力する。
【0033】
処理部20の測位制御部22は、位置登録装置10の測位処理を制御する。本実施例の測位処理は、移動検出部50による位置登録装置10の移動を算出するための移動情報の取得と絶対位置特定部60による位置登録装置10の絶対位置情報の取得の2種類がある。測位制御部22は、移動検出部50と絶対位置特定部60の動作を制御して測位する。具体的には、測位制御部22はイベント検出部40から測位開始の要求を受信すると、移動検出部50と絶対位置特定部60に測位開始の指示を出力する。なお、すでに移動検出部50と絶対位置特定部60が測位を開始している場合は、測位制御部22は測位開始の指示を出力しないようにすることも可能である。測位制御部22は移動検出部50から移動情報を、絶対位置特定部60から絶対位置情報を受信すると、絶対位置情報を記憶部30の位置テーブル32に格納する。測位制御部22は絶対位置特定部60から絶対位置情報を取得すると位置特定部23に位置特定の指示を出力する。
【0034】
なお、位置登録装置10は、省電力化のため、通常時において測位機能への電力の供給を行なわず、測位機能を停止させている。すなわち、測位機能を実現するための移動検出部50および絶対位置特定部60は通常時は停止している。位置登録装置10は測位処理を実行する場合に、移動検出部50および絶対位置特定部60を起動する。移動検出部50および絶対位置特定部60は、起動後、測位を開始する。ここで、測位制御部22は、絶対位置特定部60に絶対位置の測定を依頼するとともに、移動検出部50に移動情報の検出を依頼する。依頼された絶対位置特定部60および移動検出部50はそれぞれ測定および検出を開始する。移動検出部50は絶対位置特定部60よりも短時間で起動が完了し、位置登録装置10の移動情報を取得する。絶対位置特定部60は位置捕捉処理を開始してから位置捕捉まで時間がかかる。例えば、GPSによる測位を行う場合、所定の情報を含むフレームを受信する必要がある。装置が該フレームを受信するには数十秒の時間を要する。
【0035】
本実施例の位置登録装置10は、移動検出部50で検出した位置登録装置10の移動情報に基づき、位置捕捉までの時間の位置登録装置10の変位を特定する。
【0036】
位置特定部23は、絶対位置情報と位置テーブル32に蓄積された移動情報とから、イベント発生時刻における位置登録装置10の位置を特定する。例えば、位置登録装置10は、位置テーブル32に蓄積された移動情報に基づき、イベント発生時刻から位置登録装置10の位置の特定が可能な情報を外部から取得した時点までの位置登録装置10の移動方向および移動距離を含む移動量を特定し、位置登録装置10の位置を位置登録装置10の移動量で修正することで、イベント発生位置を特定する。
【0037】
また、位置特定部23は、特定した位置情報と併せて、イベント発生時刻における位置登録装置10の位置の誤差情報等を保存することも可能である。誤差情報を保存することにより、位置特定部23は、例えば、後に物品の位置を特定する際に、誤差情報と棚の配置情報を使ってイベント発生位置を補正したり、利用者に位置情報に誤差が含まれることを提示したりすることができる。
【0038】
予め、棚の配置情報や地図情報がある場合、位置特定部23はイベントが発生し得る位置にずらすことができる。例えば、位置特定部23が地図上の存在し得ない位置に位置登録装置10が存在すると特定した場合、イベント発生位置を地図上の存在し得る位置に変位させる。なお、イベントが発生し得る位置か否かを判別するための情報は、予め地図情報に関連づけられているものとする。
【0039】
[ハードウェア構成]
次に、位置登録装置10のハードウェアの構成について説明する。
【0040】
図5は、位置登録装置10のハードウェア構成の一例を示した図である。
【0041】
図5において、位置登録装置10は、CPU101、ROM102、RAM103、無線ICタグリーダー104、アンテナ105、加速度センサ106、地磁気センサ107、クロック108、入力部109、ディスプレイ110を有し、それぞれバスによって接続されている。
【0042】
CPU101は、位置登録装置10全体の動作を制御する中央演算処理装置である。本実施例では、CPU101は処理部20の一例である。なお、本実施例ではCPU101が全ての処理を行っているが、例えば、アナログ/デジタル変換を行う変換プロセッサ、画像出力を行う画像出力プロセッサ、信号の入力を検出する検出プロセッサ等のように個別のプロセッサが処理を実行することも可能である。
【0043】
ROM102(Read Only Memory)102は、不揮発性の記憶媒体であり、各種の制御動作をCPU101が行うための制御プログラムを格納する。ROM102には、CPU101が実行する制御プログラムや各種制御パラメータが予め格納されている。なお、CPU101は、ROM102ではなく、外部の半導体メモリ、CD−ROM等の記憶媒体から読み出して実行してもよい。
【0044】
RAM103(Random Access Memory)は、CPU101が制御プログラムを実行する際に使用する一時記憶領域である。CPU101はROM102に格納されている制御プログラムをRAM103読み出して、制御プログラムの実行を開始する。RAM103は記憶部20の一例である。
【0045】
無線ICタグリーダー104は、無線ICタグに格納された情報を読み取るためのリーダである。無線ICタグリーダー104はイベント検出部40の一例である。なお、無線ICタグは棚卸の対象の物品に予め付加されているものとする。
【0046】
アンテナ105は無線電波の送受信を行う。アンテナ105とCPU101の組み合わせは絶対位置特定部60の一例である。位置登録装置10は、アンテナ105を介して外部のサーバとデータ通信が可能であるものとする。
【0047】
加速度センサ106は、位置登録装置10の加速度を検出する。一般的に、加速度センサは機械式、光学式、半導体式の3種に分類され、半導体式の場合、静電容量型、ピエゾ抵抗型、ガス温度分布型等がある。加速度センサ106は、例えば、検出した加速度を特定するための電圧を出力する。なお、本実施例の加速度センサ106は3軸方向のそれぞれの加速度を示す電圧をそれぞれ出力する。CPU101は加速度センサ106から出力された各軸方向の電圧値に基づき各軸方向の加速度データを特定する。
【0048】
地磁気センサ107は、「位置登録装置10が外部から受ける磁界」を検出する。本実施例の地磁気センサ107は例えば地磁気を検出する。地磁気センサ107は、例えば、検出した地磁気を特定可能にするための電圧を出力する。なお、地磁気センサ107は磁束密度の大きさを示す情報を出力してもよい。
【0049】
本実施例の地磁気センサ107は3軸方向のそれぞれの磁束密度を示す情報を出力する。CPU101は地磁気センサ107から出力された各軸方向の磁束密度を示す情報に基づき各軸方向の磁力密度データを特定する。
【0050】
加速度センサ106、地磁気センサ107およびCPU101の組み合わせは移動検出部50の一例である。
【0051】
クロック108は位置登録装置10の内部時計である。本実施例では、クロック108の時刻を基準にイベント発生時刻、絶対位置情報を受信した時刻等を特定する。なお、クロック108の時刻は、外部からの信号に基づき修正可能であるとする。
【0052】
なお、GPS等を用いる場合、絶対位置特定部60はイベント発生時点からGPSによる測位を行う。位置登録装置10は、GPSの信号に基づき、クロック108の時刻を修正可能である。この時、位置特定部23によるイベント発生位置の特定が完了するまでは、修正前の時刻でデータの取得を継続してもよい。時刻の修正により、クロック108が出力するイベント発生時点の時刻は、クロック108が絶対位置60が絶対位置を検出した時点に出力する時刻とでは、基準が異なるためである。例えば、絶対位置特定部60は、クロック108の修正前の時刻と修正後の時刻との差分を特定し、位置テーブル22に登録するときに特定した差分で、修正後の時刻を再修正して登録することで、実現可能である。この構成により、時刻が修正された場合でも、位置テーブル23に格納された過去のレコードと今後記録するレコードとの間での時刻の基準を統一することができる。
【0053】
ディスプレイ110は、画像、映像、データ等を表示するユニットである。入力部109は、外部から押されることで、信号を検出するユニットである。入力部109は例えばスイッチやタッチパネル等である。例えば位置登録装置10はディスプレイ110とタッチパネルとが組み合わせられているとする。位置登録装置10はディスプレイ110上にアイコン等を表示する。利用者が、表示されたアイコンをタッチパネル越しに触れると、利用者の触れた座標がタッチパネルから出力される。位置登録装置10は出力された座標から、ディスプレイ上に表示された命令を実行する。
【0054】
具体的には、位置登録装置10はタッチパネルに触れられたことを検出すると、割り込み信号をCPU101に出力する。CPU101は割り込み信号を受信すると割り込み信号に応じた処理を実行する。
【0055】
[処理フロー]
次に、位置登録装置10の処理を説明する。以下の処理は、位置登録装置10を用いた物品の棚卸作業を例にして説明する。棚卸作業では、物品に事前に無線ICタグを付加しておく。位置登録装置10は無線ICタグに格納されたタグ情報を読取可能である。棚卸利用者は位置登録装置10を用いて、物品に付加された無線ICタグに格納されたタグ情報を読み取る。位置登録装置10は読み取ったタグ情報を位置登録装置10のRAM103に格納する。このとき、タグ情報と無線ICタグを読み取った位置情報とを関連づけておくことで、後日、利用者が物品を探す際に便利である。
【0056】
なお、本実施例の位置登録装置10は、通常時において、測位機能を機能させていないものとする。具体的には、位置登録装置10は測位機能のための電源を供給しない状態であるものとする。
【0057】
[イベント管理部21]
図6はイベント管理部21の処理のフローチャートである。
【0058】
イベント検出部40はイベントを検出する。イベント検出部40は、位置登録装置10がタグ情報の読取処理を実行したことにより、イベントを検出する。イベント検出部40は、イベントを検出したことを処理部20に出力する。
【0059】
処理部20のイベント管理部21は、イベント検出部40からイベントを検出した旨の情報を受信する(S01)。イベント管理部21は、イベント検出部40から受信したイベントが測位イベントか否かを判別する(S02)。例えば、位置登録装置10が複数種類のイベントを実行可能である場合、イベントID毎に測位を伴う測位イベントか否かを分類した分類情報を関連づけて記憶しておく。イベント管理部21はイベント発生情報を取得すると、取得したイベント発生情報に含まれるイベントの種別と分類情報とから、測位イベントか否かを判別する。本実施例では、測位イベントとして、物品に張り付けられた無線ICタグに格納されたタグ情報を読み取った処理の実行が予め定義されているものとする。
【0060】
イベント管理部21は、測位イベントの場合、位置情報を取得するため、測位制御部22に測位の開始の要求を出力する(S03)。
【0061】
イベント管理部21は、イベント発生時刻312、イベント内容313を含むイベントにイベントID311を付与して、イベントテーブル31に格納する(S04)。
【0062】
[測位制御部22]
次に測位制御部22の処理を説明する。図7は測位制御部22の処理のフローチャートである。
【0063】
測位制御部22は、イベント管理部21からの測位開始の指示を受信すると、移動検出部50および絶対位置特定部60に測位の開始を要求する(S11)。
【0064】
測位制御部22は、絶対位置特定部60に絶対位置の測定を依頼するとともに、移動検出部50に移動情報の検出を依頼する。依頼された絶対位置特定部60および移動検出部50はそれぞれ絶対位置情報の測定および移動情報の検出を開始する。絶対位置特定部60は、絶対位置を検出するために電波の受信、解析を含む絶対位置測定を行う。
【0065】
絶対位置測定は、位置測定処理を開始してから位置を捕捉するまでに時間がかかる。よって、加速度センサ106、地磁気センサ107を停止状態から機能状態に遷移させ移動情報を取得可能になるまでの時間は、絶対位置情報の測定処理を開始してから位置を捕捉するまでの時間よりも短い。
【0066】
移動検出部50は、加速度センサ106から加速度を示す電圧が出力される毎に、加速度の大きさを示す電圧から加速度データを算出し、測位制御部22に出力する。また、移動検出部50は、地磁気センサ107から磁束密度の強さを示す電圧が出力される毎に、磁束密度の大きさを示す電圧から磁束密度データを算出し、測位制御部22に出力する。なお、移動検出部50は、加速度を示す電圧値、磁束密度の大きさを示す電圧値を測位制御部22に出力し、位置特定部23で位置の特定処理を実行する際に加速度データ、磁束密度データを算出してもよい。また、移動検出部50は、定期的に加速度センサ106、地磁気センサ107の出力を取得するようにしてもよい。
【0067】
測位制御部22は、移動検出部50から位置登録装置10の移動に関連する値(移動情報)を定期的に受信する(S12)。移動情報は、例えば、位置登録装置10に加わる加速度、位置登録装置10の磁束密度等である。測位制御部22は、得られた移動情報を位置テーブル32に格納する。移動情報の取得処理については後述する。
【0068】
測位制御部22は、絶対位置特定部60が絶対位置情報を検出したか否かを判別する(S13)。絶対位置情報を検出していない場合(S13:No)、測位制御部22はS12を継続して移動情報を取得する。従って、移動情報の取得は絶対位置特定部60が絶対位置情報を検出するまで続けられる。絶対位置情報の取得処理については後述する。
【0069】
絶対位置情報を検出した場合(S13:Yes)、測位制御部22は位置特定部23にイベント発生位置の特定処理の開始を指示する(S14)。また、測位制御部22は、得られた絶対位置情報を位置テーブル32に格納する。
【0070】
測位制御部22は、移動検出部50と絶対位置特定部60の動作を停止する(S15)。絶対位置の測定が完了した直後に、移動検出部50と絶対位置特定部60の動作を停止することにより、電力の消費を抑えることが可能になる。なお、位置登録装置10は、イベントに対する位置情報の取得が完了すると位置情報の取得機能を停止してもよい。なお、測位制御部22は、移動検出部50と絶対位置特定部60とを省電力の状態にする、あるいは移動検出部50と絶対位置特定部60とへの電力の供給を停止するようにしてもよい。位置登録装置10は、測位完了後に移動検出部50と絶対位置特定部60とを省電力の状態にできるため、位置登録装置10の消費電力を少なくすることが可能になる。
【0071】
[移動情報の取得処理]
ここで、移動情報の取得処理について説明する。
【0072】
移動検出部50は、測位制御部22から送信された測位処理の開始要求を受信すると移動情報の取得を開始する。具体的には、加速度センサ106、地磁気センサ107に電力を供給する。
【0073】
加速度センサ106は、電力が供給されることにより、3軸方向それぞれについて、加速度の大きさに対応する電圧を出力する。また、地磁気センサ107は、電力が供給されることにより、3軸方向それぞれについて、磁束密度の大きさに対応する電圧を出力する。
【0074】
ここで、位置登録装置10に搭載される加速度センサ106、地磁気センサ107の3軸方向を説明する。図8は位置登録装置10と軸の関係を説明する図である。図8中の「x」,「y」および「z」はそれぞれ位置登録装置10のx軸、y軸およびz軸を示す。加速度センサ106および地磁気センサ107は、各センサのx軸、y軸およびz軸が位置登録装置10のx軸、y軸およびz軸に対応するように、位置登録装置10に搭載されているものとする。また、本実施例では、位置登録装置10のz軸方向の面にディスプレイ110、入力部109が配置されているものとする。
【0075】
図9は時系列の加速度データの例である。加速度データ51は、加速度を検出した時刻511と、x軸、y軸、z軸方向の各加速度の値512,513,514とを含む。例えば、加速度センサ106は加速度に換算可能な電圧を出力する。移動検出部50は加速度センサ106から得られた出力を加速度データに換算する。また、図10は時系列の加速度データ51のグラフ515である。移動検出部50は換算した各軸方向の加速度データと加速度センサ106から受信した時刻とを位置テーブル32に格納する。
【0076】
図11は時系列の方向データの例である。方向データ61は、方向データを検出した時刻611と、x軸、y軸、z軸方向の各磁束密度の値612,613,614とを含む。例えば、地磁気センサ107は磁束密度に換算可能な電圧を出力する。移動検出部50は地磁気センサ107から得られた出力を磁束密度に換算する。また、図12は時系列の方向データ61のグラフ615である。移動検出部50は換算した各軸方向の磁束密度データと地磁気センサ107から受信した時刻とを位置テーブル32に格納する。
【0077】
また、位置登録装置10にジャイロセンサを搭載し、該ジャイロセンサが位置登録装置10の回転速度を得ることも可能である。ジャイロセンサにより、地磁気が理想的に取れない状態であっても、利用者の歩行中に向きを変えたことを知ることができる。ジャイロは環境依存性が少ないため、位置登録装置10の回転動作を得る精度は地磁気より高い。
【0078】
[絶対位置情報の取得処理]
次に、絶対位置の取得について説明する。位置登録装置10は、外部から無線ないし電波で得られる信号を解析することにより、位置登録装置10の絶対位置を特定する。絶対位置の取得手段には、アクセスポイントから送信された電波強度による測位手段、アクセスポイントからの信号の到達時間による測位手段、GPSによる測位手段、電波の位相差を利用した測位手段、あるいは環境から端末情報を読み取ることで位置を認識する手段等がある。本実施例では、受信信号強度(Received Signal Strength Indicator:RSSI)を利用して位置登録装置10の絶対位置を取得する。絶対位置特定部60は、例えば、複数のアクセスポイントから送信された電波強度から絶対位置情報を特定する。
【0079】
絶対位置特定部60は、例えばGPSや無線強度を用いた測位を行う場合、衛星電波の捕捉やアクセスポイントから送信される電波の受信等の処理を行うため、測位機能を起動してから現在位置を捕捉するまでにある程度の時間がかかる。したがって、絶対位置特定部60は、イベント発生時とともに測位機能を起動したとしても、位置を特定するまでの間に装置が移動すると、装置はイベント発生時の位置とは異なる位置を示す位置情報を特定することになる。
【0080】
図13は、受信信号強度の取得の説明図である。図13は、部屋130に複数のアクセスポイント131、132,133,134,135,136,137,138,139が設置されているものとする。また部屋130には、複数の物品231,232,233,234が置かれているものとする。
【0081】
図14は、受信信号強度の取得のシステム構成例である。
【0082】
アクセスポイント131、132、139は、それぞれ位置登録装置10と無線通信を行うための装置であり、図13の各アクセスポイントに相当する。
【0083】
サーバ120は、複数のアクセスポイント131乃至139の電波強度および絶対位置情報を記憶する。図15はアクセスポイントからの距離と電波強度の関係テーブル140である。テーブル140は、アクセスポイントを識別するアクセスポイントID141、アクセスポイントとの距離に応じたRSSI値(dB/m)142、143、144を含む。サーバ120は、複数のアクセスポイント131乃至139の絶対位置情報を予めに記憶する。図16はアクセスポイントとアクセスポイントの絶対位置情報の関係テーブル145である。テーブル145は、アクセスポイントを識別するアクセスポイントID146、アクセスポイントの位置の座標を示す絶対位置情報147を含む。
【0084】
絶対位置を測位する場合、位置登録装置10は複数のアクセスポイント131乃至139から無線電波を受信する。この時、位置登録装置10は各アクセスポイント131乃至139からの無線電波の信号強度(RSSI値)を取得する。位置登録装置10は、例えば、3つのアクセスポイントからの電波強度を取得すると、サーバ120に受信したアクセスポイントの識別情報と電波強度情報とを送信する。
【0085】
ここで、位置登録装置10は、測位が可能な数のアクセスポイントからの電波強度を受信が完了した時刻を絶対位置を特定した時刻とする。つまり、絶対位置を特定した時刻は、該位置の特定が可能な情報を外部から取得した時点である。なお、位置登録装置10は、電波強度を取得してからサーバ120への送信までが短時間で完了する場合、サーバ120にアクセスポイントの識別情報と電波強度情報とを送信した時刻を絶対位置を特定した時刻としてもよい。この構成により、サーバ120で行う測位演算に時間を要する場合であっても、位置登録装置10の絶対位置を取得した時刻は正しい時刻を示すことができる。
【0086】
サーバ120は、関係テーブル145から各アクセスポイントの絶対位置情報147を特定する。サーバ120は、各アクセスポイントの電波強度情報と関係テーブル140とを用いて、例えば三角測量の手法により、位置登録装置10の位置を特定する。サーバ120は特定した位置登録装置10の絶対位置情報を位置登録装置10に送信する。
【0087】
以上により、位置登録装置10の絶対位置特定部60は、絶対位置を特定した時刻とサーバ120から取得した絶対位置情報とを取得する。図17は、絶対位置情報の一例である。絶対位置情報71は、絶対値情報を特定した時刻711および絶対位置を示す座標情報(緯度712、経度713)を含む。座標情報は緯度・経度以外にも、部屋を示すID、入口からの南北方向移動距離、東西方向移動距離等、様々な記述が可能であるが、本実施例では緯度・経度を用いる。
【0088】
なお、外部から信号を受信することで絶対位置を取得する場合、測位を開始したときに電波を取得できない場合もある。
【0089】
例えば、位置登録装置10が屋内にある場合、GPSによる測位はできない。また、無線LANやBluetooth等の電波強度を利用した測位の場合、位置登録装置10の場所によっては、測位に必要なアクセスポイントが不足する場合もある。このような場合、位置登録装置10は、測位を開始してから絶対位置情報の取得をするための情報を取得できるまでに時間を要する。
【0090】
さらに、位置登録装置10が電波を受信するまでに、他の障害物による電波の反射や回り込みが発生する場合がある。この場合において、複数のアクセスポイント、人工衛星からの電波に基づき三角測量をしても、正確な位置を特定できない場合がある。
【0091】
このような状況の場合、位置登録装置10は、十分な精度の絶対位置情報が取得できるまでは移動情報を継続して取得し、十分な精度の絶対位置情報が取得できた場合に、該十分な精度の絶対位置情報と移動情報とからイベント発生位置を特定することも可能である。
【0092】
十分な精度の絶対位置情報か否かは、例えば、位置登録装置10が複数の絶対位置情報を取得し、予め取得した統計情報の分布内に含まれるか否かによって判断することが可能である。
【0093】
[位置特定]
次に、位置特定部23の処理を説明する。図18は位置特定部23の処理のフローチャートである。測位制御部22は、絶対位置特定部60から絶対位置情報を取得すると、位置特定部23に位置特定処理の実行開始の要求を出力する。位置特定部23は、位置特定処理の実行開始の要求を受信すると位置特定処理を開始する。位置特定部23は、位置テーブル32に格納された時系列の移動情報および絶対位置情報から、イベント発生時刻での位置登録装置10の位置(イベント発生位置)を推測する。位置特定部23は時系列の移動情報に基づき、イベント発生時刻から絶対位置情報を取得した時刻までの時間の位置登録装置10の移動距離および移動方向を特定する。そして、位置特定部23は、絶対位置特定部60で得られた絶対位置情報から、特定した移動距離だけ特定した移動距離とは逆方向に移動した位置をイベント発生時の位置として特定する。以下、各ステップを説明する。
【0094】
位置特定部23は、イベントテーブル31から測位情報が測位イベントを読みだす(S21)。位置特定部23は、読みだしたイベントからイベント発生時の時刻情報(イベント発生時刻)を抽出する(S22)。
【0095】
位置特定部23は、抽出したイベント情報のイベント発生時刻と、位置テーブル32に格納された移動情報および絶対位置情報に基づき、イベント発生時刻から絶対位置情報を取得した時刻までの位置登録装置10の移動距離、移動方向を特定する(S23)。
【0096】
図9および図11の場合を例に説明する。なお、イベント検出部40は、15:37:24に無線ICタグのタグ情報の読取イベントを検出したものとする。位置登録装置10は、イベント検出部40がイベントを検出した時点から、イベント管理部21、測位制御部22を経由して加速度データおよび方向データの取得を開始する。この結果、15:37:24以降のデータを得ることが可能になる。測位制御部22は、絶対位置情報を得るまで、加速度データ、方向データの取得を続ける。絶対位置特定部60は15:38:08の時点における位置登録装置10の絶対位置情報の捕捉に成功したものとする。この結果、位置登録装置10の絶対位置情報(緯度、経度)が得られる。
【0097】
位置特定部23は、得られた時系列の移動情報(加速度データ、方向データ)に基づき、イベント発生時刻(15:37:24)から絶対位置が確定した時刻(15:38:08)までの位置登録装置10の移動量(移動距離、移動方向)を特定する。
【0098】
ここで、位置特定部23は、移動量の特定処理を説明する。
【0099】
[位置登録装置10の移動距離]
位置特定部23は、利用者の歩数により、位置登録装置10の移動距離を特定する。位置特定部23は、時系列の加速度データの変動に基づき、利用者が歩いたこと、および歩数を検出する。利用者が歩行した場合、時系列の加速度データは図10のような波形状になる。位置特定部23は、例えば、一つの波が所定の振幅よりも大きい場合に利用者が一歩歩いたと特定する。また、位置特定部23は波の周期が所定の範囲内であるかを判断の基準とすることも可能である。
【0100】
本実施例では、位置特定部23は、加速度データの振幅等から定まる値の変動が閾値を越えた回数を歩数として計算する。図9の場合、位置特定部23は、利用者が82歩歩いたと特定する。位置登録装置10は、予め利用者の平均歩幅情報をパラメータとして取得しているものとする。本実施例では、仮に、利用者の平均歩幅は75cmであるとする。この場合、位置特定部23は、0.75(m)x82(歩)=61.5m移動したと推測する。
【0101】
[位置登録装置10の移動方向]
位置特定部23は、位置登録装置10の移動方向を以下の手順で特定する。
【0102】
利用者は、位置登録装置10を歩いて持ち運ぶとする。歩行時は加速と減速を繰り返しており、足が着地したときに歩行速度は落ちる。足が着地する時は、加速度が重力方向で上向きのピークになる時に相当する。加速度が重力方向で上向きのピークになる時に減速する方向は、負の加速度が大きい方向に相当する。その後、位置登録装置10は利用者の足の力により、比較的ゆるやかに正の加速度を得て前に進む。位置特定部23は、以上の歩行時の特性を利用して、位置登録装置10の移動方向を特定する。
【0103】
位置特定部23は、加速度データ51から重力方向の上方向の加速度のピークを特定する。この時、位置特定部23は水平方向で加速度が負のピークになる方向を特定する。なお、位置特定部23は、位置登録装置10のx軸、y軸およびz軸を用いて方向を特定する。特定した方向は、位置登録装置10の移動方向とは逆の方向を示す。
【0104】
また、位置特定部23は、重力方向の上方向の加速度のピークの検出以降の水平方向で正の加速度の方向を、x軸、y軸およびz軸を用いて特定してもよい。
【0105】
以上により、位置特定部23は、x軸、y軸およびz軸を用いて、位置登録装置10の移動した方向を特定することができる。
【0106】
なお、別の方法として、利用者は画面を見るということを前提として、位置登録装置10の画面に正対する方向を移動方向として定めることも可能である。本実施例の位置登録装置10はz軸方向にディスプレイ110を有している。この場合、位置特定部23は、z軸に正対する方向を歩行の進行方向と特定する。
【0107】
[位置登録装置10の向き]
次に、位置登録装置10は、加速度データ51および方向データ61を解析することで北方向に対する位置登録装置10の向きを特定する。
【0108】
図9の加速度データ51は、位置登録装置10のy軸に加わる加速度の大きさが重力加速度に近い9.8(m/s)の近傍となっている。つまり、移動情報を検出している間、位置登録装置10のy軸は鉛直方向に保持されていたことが分かる。したがって、位置特定部23は、y軸方向を鉛直方向とし、x軸とz軸が水平方向と判定する。
【0109】
次に、位置特定部23は、位置登録装置10の進行方向から見た磁極の方向を特定する。例えば、位置登録装置10のz軸方向が進行方向である場合、位置特定部23は方向データ61のx軸とz軸の磁力値からarctan(z,x)を計算することにより、z軸から見て磁極がどの方向にあるかを特定する。実際には、方向は、利用者の歩行に伴って位置登録装置10の姿勢が変化するため、細かく変動する。そこで、本実施例では、位置特定部23は、各方向の磁束密度の移動平均を算出し、算出した移動平均値で移動方向を特定する。
【0110】
図19は、図10の方向データ61に基づき、z軸から見た北方向の角度の時系列のグラフである。図19の波形から、z軸から見た北方向は約80度の方向にあることが分かる。よって、位置特定部23は、位置登録装置10の移動方向は西南西であったと特定する。図20は、位置登録装置10の軸と北方向の関係を示す図である。
【0111】
以上の移動距離と移動方向とから、位置特定部23は、イベント発生時刻から絶対位置情報を取得した時刻までの時間に、位置登録装置10は61.5mの距離を西南西の方向に移動したと特定する。
[移動の推測]
位置特定部23は、絶対位置と、特定した移動距離および移動方向とから、イベント発生位置を特定して、特定したイベント発生位置を保存する(S24)。
【0112】
位置特定部23は、例えば、推測した位置登録装置10の移動量を逆算することで、イベント発生位置を特定する。位置特定部23は、特定した移動距離を特定した移動方向と逆方向に絶対位置から移動した位置をイベント発生位置とする。位置特定部23は、絶対位置情報の座標から61.5m東北東に移動した位置の座標をイベント発生位置とする。位置特定部23は、イベント発生位置をイベント情報に関連付けてイベント位置テーブル33に格納する。
【0113】
なお、位置特定部23は、イベント発生位置についての誤差情報を合わせて格納することもできる。誤差とは、特定したイベント発生位置と真のイベント発生位置との位置ずれの可能性を示す情報である。誤差は一般的に、推測の時間が長くなると大きくなる。位置特定部23は、イベント発生時刻から絶対位置情報を取得した時刻までの時間の長さに応じて誤差の大きさを算出する。時間の長さと誤差の大きさの関係は予め定義しておく。また、位置登録装置10の保持が一定ではない場合、利用者の歩き方が一定ではない場合、移動方向が頻繁に変わった場合も誤差は大きくなる。
【0114】
位置特定部23は、移動情報から、歩行あるいは停止以外の大きな変動を検出した場合は、その部分の移動距離および移動方向の特定をしないようにすることも可能である。この場合、特定をしなかった移動情報については、誤差情報として記憶する。例えば、位置特定部23は、算出した全体の移動距離とイベント発生時刻から絶対位置情報を取得した時刻までの時間とから全体の移動速度を算出する。位置特定部23は、特定しなかった時間について、算出した移動速度で移動したと仮定して誤差情報を算出する。
【0115】
なお、複数のイベントテーブル31に複数のイベントが格納されている場合がある。この場合、位置特定部23は、イベント情報のレコードを一つずつ読み出す。位置特定部23は、読みだしたレコードのイベント発生時刻を抽出する。位置特定部23は、抽出したイベント発生時刻から絶対位置情報を取得した時刻までの移動距離、移動方向を特定する。位置特定部23は、特定した移動距離、移動方向、絶対位置情報から、イベント発生位置を特定する。したがって、位置特定部23は、イベントテーブル31に複数のイベント情報がある場合でも、それぞれのイベントに対するイベント発生位置を特定することが可能である。
【0116】
以上に開示した位置登録装置10によれば、測位イベントの発生するタイミングが事前にわからない場合であっても、測位イベントが発生した後、絶対位置情報を得るまでの間だけ絶対位置情報の取得機能および移動情報の取得機能を動作させればよいため、常時位置取得を機能させている装置に比べて、電力の使用量を削減することができる。
【0117】
また、例えば、物品に付加された無線ICタグを読取り、読み取ったタグ情報に含まれる物品の識別情報と物品の位置情報とを関連付けて保存する場合、利用者は、同じ物品を複数回、同じ位置登録装置10により読み取る場合も考えられる。複数回の読取があった場合、最新の位置情報をその物品の位置として保存する代わりに、より精度の高い情報を位置情報として用いる方法が考えられる。
【0118】
位置登録装置10は、過去に特定した物品の位置情報を物品の識別情報と関連づけて、イベント位置テーブル33に格納する。
【0119】
位置登録装置10は、物品に付加された無線ICタグの読取位置の特定を行った後、過去に物品に付加された無線ICタグの読取り処理を実行したか否かを判別する。例えば、物品の識別情報でイベント位置テーブル33のレコードを検索することにより、過去の物品の読取の有無を判別する。
【0120】
位置特定部23は、過去に特定した位置データと今回特定した絶対位置を比較する。その絶対位置が閾値以下の場合、物品が移動していないとみなし、過去の位置データと今回得られた位置データのうち、移動推測距離や誤差の少ない方のデータを最新の物品の位置とする。一般に、特定する時間が短いほど、イベント発生位置に近いと考えられるためである。
【0121】
図21は、物品の位置を表示させた画面例である。位置登録装置10は予め座標データを含む地図情報を記憶しているものとする。位置登録装置10は、利用者から物品231と物品234の位置を表示させる要求を受け付けたとする。処理部20は、イベント位置テーブル33のイベント内容332を検索して、物品231と物品234のレコードを抽出する。
【0122】
処理部20は、物品231のイベント発生位置および物品234のイベント発生位置を特定して、地図情報と併せてディスプレイ110に表示する。処理部20は、このとき誤差情報335を合わせて表示してもよい。処理部20は例えばイベント発生位置を中心とする円で誤差情報を表示する。
【0123】
(実施例2)
[装置の機能]
実施例1では、イベント発生時刻から絶対位置情報が得られる時刻まで位置登録装置10の移動検出部50により時系列の移動情報を取得し、取得した時系列の移動情報から移動距離および移動方向を特定した。実施例2では、位置特定部23は、複数の絶対位置情報を取得し、複数の絶対位置間の移動距離および移動方向を求め、特定した移動距離および移動方向との誤差を求める。位置特定部23は、求められた誤差に基づき、イベント発生時刻から絶対位置情報取得した時刻までの移動方向、移動距離を補正する。この結果、位置特定部23は、イベント発生時刻から絶対位置情報取得した時刻までの移動距離および移動方向を精度よく特定することができる。
【0124】
以下、位置登録装置10の処理を説明する。
【0125】
図22は、実施例2での測位制御部22の処理のフローチャートである。測位制御部22は、イベント管理部21からの測位開始の指示を受信すると、移動検出部50および絶対位置特定部60に測位の開始を要求する(S31)。測位制御部22は、移動検出部50から移動情報を定期的に受信する(S32)。測位制御部22は、絶対位置特定部60が絶対位置情報を検出したか否かを判別する(S33)。絶対位置情報を検出していない場合(S33:No)、測位制御部22はS32を継続して移動情報を取得する。絶対位置情報を検出した場合(S33:Yes)、測位制御部22は位置特定部23にイベント発生位置の特定処理の開始を指示する(S34)。
【0126】
次に、測位制御部22は、位置特定条件を満たすか否かを判別する(S35)。位置特定条件を満たすか否かについては、位置特定部23が判別する。位置特定条件は、位置特定に使用可能な情報(例えば歩幅や端末の姿勢情報)について、閾値以上の「確からしさ」を持つか否かを判定する。位置特定部23は、例えば、複数の絶対位置情報から複数の移動情報の統計を求める。位置特定部23は、絶対位置情報から得た複数の移動情報の標準偏差を求める。位置特定部23は、加速度データおよび地磁気データから求めた移動情報が標準偏差の所定の範囲に収まるか否かで、閾値以上の「確からしさ」を持つか否かを判定する。なお、位置特定条件は、単に所定数以上の絶対位置情報を取得したか否かでもよい。
【0127】
位置特定条件を満たさない場合(S35:No)、測位制御部22は引き続き、移動情報、絶対位置情報の取得を実行する。本実施例では、位置登録装置10は、最初に絶対位置情報を捕捉した後も、位置特定条件を満たすまでは、移動情報と絶対位置情報を継続して取得する。位置特定条件を満たさない場合(S35:Yes)、測位制御部22は、移動検出部50と絶対位置特定部60の動作を停止する(S36)。
【0128】
次に、位置特定部23の処理を説明する。図23は、実施例2での測位制御部22の処理のフローチャートである。
【0129】
位置特定部23はイベントテーブル31から測位イベントを読みだす(S41)。位置特定部23は、読みだした測位イベントからイベント発生時の時刻情報(イベント発生時刻)を抽出する(S42)。位置特定部23は、位置テーブル32に格納された複数の絶対位置情報を読み出す。なお、複数の絶対位置情報がない場合、パラメータの精度が十分でないと判断して、測位の継続の要求を測位制御部22に出力する。位置特定部23は、複数の絶対位置間の距離を算出する(S43)。
【0130】
図24は、測位制御部22が絶対位置情報を継続して取得した場合の絶対位置情報の時系列データである。絶対位置情報の時系列データ81は絶対値情報を特定した時刻811、絶対位置を示す座標情報(緯度812、経度813)を含む。時系列データ81は15:38:09に絶対位置情報が捕捉された後、15:38:19までに得られた絶対位置情報を示す。図25は、時系列データ81から得られる絶対座標の変化を示すグラフ814である。
【0131】
位置特定部23は、図24の絶対位置情報の時系列データ81を線積分することにより、距離Aを算出する。本実施例では、位置特定部23は、15.7mの移動距離を算出する。
【0132】
位置特定部23は、S43の複数の絶対位置情報間の歩数を以上の情報から特定する(S44)。図26は、図24に対応する期間に検出された加速度データの波形である。位置特定部23は、加速度データの振幅、周期を抽出することで絶対位置情報間に利用者が歩いた歩数Bを特定する。本実施例では、位置特定部23は、利用者が図24に対応する期間に21.5歩だけ歩いたことを検出する。
【0133】
位置特定部23は、距離Aと歩数Bから、距離の特定に使用する特定パラメータを補正する(S45)。具体的には、位置特定部23は、絶対位置情報間の距離Aと、移動情報から求めた歩数Bとを用いて歩幅を算出する。位置特定部23は保存されている歩幅のパラメータを算出した歩幅のパラメータに補正する。本実施例では、15.7/21.5=0.73となり、歩幅は約73cmとなる。
【0134】
位置特定部23は、補正パラメータの精度が所定の閾値を満たすか否かを判別する(S46)。例えば、位置特定部23は歩幅情報の統計情報から標準偏差を予め取得しておく。位置特定部23はS45で補正した歩幅のパラメータが標準偏差の所定の範囲に収まるか否かにより、補正パラメータの精度が十分か否かを判別する。
【0135】
位置特定部23は、補正パラメータの精度が閾値以上の場合(S46:Yes)、位置特定部23は、補正パラメータと、抽出したイベント情報のイベント発生時刻と、位置テーブル32に格納された移動情報と、絶対位置情報とに基づき、イベント発生時刻から絶対位置情報を取得した時刻までの位置登録装置10の移動距離、移動方向を特定する(S47)。本実施例では、最初に絶対位置情報が検出されるまでは、実施例1の図9および図11と同じ加速度データ、地磁気データが得られたものとする。位置特定部23は、得られた歩幅パラメータを利用して、移動情報から移動距離を計算する。この結果、移動距離は0.73x82=59.9mとなる。位置特定部23は計算した移動距離をイベント発生位置から絶対位置までの特定移動距離として使用する。
【0136】
位置特定部23は、絶対位置と、特定した移動距離および移動方向とから、イベント発生位置を特定してイベント位置テーブル33に保存する(S48)。位置特定部23は、位置特定の完了の通知を位置登録装置22に送信する。この完了通知は、位置特定条件を満足したことを示す。
【0137】
位置特定部23は、補正パラメータの精度が閾値未満の場合(S46:No)、位置特定条件を満たさないとして、絶対位置情報、移動情報の取得の継続の要求を測位制御部22に出力する。なお、補正パラメータの精度が閾値未満の場合、位置特定部23は、歩幅のパラメータは補正前のパラメータに戻してもよい。
【0138】
本実施例の測位制御部22は、絶対位置特定部60から絶対位置情報を取得すると、移動測位部50と絶対位置特定部60の動作を停止する代わりに、十分な「確からしさ」が得られるまで移動測位部50と絶対位置特定部60を継続して機能させる。
【0139】
なお、位置特定部23が「確からしさ」を判別する代わりに、絶対位置情報の値が最初に得られた後、測位制御部22は一定時間測位を継続して動作させ、その一定時間内に得られた絶対位置情報と移動情報とから位置登録装置10の移動情報を補正することも可能である。
【0140】
例えば、位置特定部23は、第一の絶対位置情報を取得してから第二の絶対位置情報を取得するまでの間、加速度データ、方向データを検出する。位置特定部23は、加速度データ、方向データを用いて位置登録装置10の移動方向Aを特定する。位置特定部23は、第一の絶対位置情報および第二の絶対位置情報を用いて、第一の絶対位置から第二の絶対位置への移動方向Bを特定する。位置特定部23は、移動方向Aと移動方向Bの角度差を特定する。位置特定部23は、特定した角度差を用いて、イベント検出時点から絶対位置を捕捉した時点までの移動方向を補正する。
【0141】
また、位置登録装置10は、「確からしさ」と「時間」のいずれか一つの条件を満たすまで測位を継続するようにしてもよい。
【0142】
(実施例3)
[読取装置を設ける]
実施例1および実施例2では、絶対位置情報の測位に電波強度を使用した。絶対位置情報の取得は、他の方法によっても取得可能である。実施例3では、周囲の環境に予め位置検出手段を設けた場合の取得方法を示す。具体的には、実施例3の位置登録装置200は、位置登録装置200に付加した無線ICタグ情報を読み取った識別情報読取装置の設置場所情報を外部から取得することで絶対位置を特定する。
【0143】
図27は実施例3のシステムの説明図である。実施例3のシステムは、位置登録装置200、サーバ220、複数の識別情報読取装置(226、227、228)および複数の物品(231、232)を含む。サーバ220と識別情報読取装置226、227、228はデータの送受信が可能である。また、サーバ220と位置登録装置200とは無線LAN等を介してデータの送受信が可能である。
【0144】
識別情報読取装置226、227、228は、位置登録装置200の無線ICタグ211のタグ情報を読取可能な装置である。各識別情報読取装置226、227、228の設置場所は予め特定されており、設置場所の絶対位置情報が定義されているものとする。各識別情報読取装置226、227、228は識別情報を有するものとする。
【0145】
識別情報読取装置226、227、228は、読取情報をサーバ220に送信する。図28は読取情報の例である。読取情報96は、位置登録装置200の識別情報97と、識別情報読取装置226、227、228を識別する識別情報読取装置ID98と、識別情報読取装置による位置登録装置200の無線ICタグ211の読取時刻99とを関連付けた情報である。サーバ220は、識別情報読取装置226、227、228から受信した読取情報を格納する。
【0146】
サーバ220は、識別情報読取装置226、227、228の設置場所情報を格納する。図29は設置場所情報の例である。設置場所情報91は、識別情報読取装置を識別するための識別情報読取装置ID92、識別情報読取装置が設置された位置の絶対位置情報を示す絶対位置情報93を含む。サーバ220は、例えば無線LANを介して位置登録装置200とデータ通信が可能である。
【0147】
物品231、232は棚卸の対象である。各物品231、232には無線ICタグが付加されている。位置登録装置200は各物品231、232に付加された無線ICタグの情報を読み取ることで、物品の棚卸を行う。
【0148】
位置登録装置200は、測位機能を有する装置である。図30は、実施例3の位置登録装置200のハードウェア構成である。位置登録装置200のCPU201、ROM202、RAM203、無線ICタグリーダー204、アンテナ205、加速度センサ206、地磁気センサ207、クロック208、入力部209、ディスプレイ210は、それぞれ、実施例1の位置登録装置10のCPU101、ROM102、RAM103、無線ICタグリーダー104、アンテナ105、加速度センサ106、地磁気センサ107、クロック108、入力部109、ディスプレイ110に対応する。無線ICタグ211は、位置登録装置200に張り付けられている。無線ICタグ211はタグ情報として、タグを識別する識別情報を含む。タグ情報に基づき、位置登録装置200は識別可能であるとする。
【0149】
図31は、位置登録装置200の機能ブロックである。
【0150】
位置登録装置200は、処理部250、記憶部260、イベント検出部271、移動検出部272および絶対位置特定部273を含み、それぞれ、実施例1の位置登録装置10の処理部20、記憶部30、イベント検出部40、移動検出部50および絶対位置特定部60に対応する。
【0151】
処理部250は、イベント管理部251、測位制御部252、位置特定部253を含み、それぞれ実施例1の位置登録装置10の処理部20のイベント管理部21、測位制御部22、位置特定部23に対応する。記憶部260はイベントテーブル261、位置テーブル262、イベント位置テーブル263を含み、それぞれ実施例1の位置登録装置10の記憶部30のイベントテーブル31、位置テーブル32、イベント位置テーブル33に対応する。
【0152】
図32は、実施例3の屋内環境の例である。244、245、246は部屋である。各部屋244、245、246にはそれぞれ扉241,242,243がある。各扉241,242,243にはそれぞれ識別情報読取装置226、227、228が設置されている。また、各部屋244、245、246にはそれぞれ棚卸対象の物品231,232,233が置かれている。本実施例では、識別情報読取装置226、227、228は、それぞれ、別の部屋の扉付近等に設置される。
【0153】
次に、実施例3の処理について説明する。
【0154】
利用者は、入室あるいは退室する際、扉付近に設置された識別情報読取装置に位置登録装置200の無線ICタグ211を読み取らせる。識別情報読取装置226、227、228は、位置登録装置200の無線ICタグ211を読み取ることで、各部屋244、245、246に入室あるいは各部屋244、245、246から退室したことを検出する。入室か退室かは、例えば、扉の両面に読取装置を設けることにより実現できる。また一回目の読取で入室と判別し、二回目の読取で退室と判別することも可能である。識別情報読取装置は、通過を検出した無線ICタグ211の識別情報、識別情報読取装置の識別情報、および読取時刻を含む読取情報をサーバ220に送信する。
【0155】
以降の説明では、識別情報読取装置226が位置登録装置200の無線ICタグ211を読み取った場合を例に説明する。
【0156】
通常状態では、位置登録装置200の移動検出部272および絶対位置特定部273は機能を停止している。本実施例では、位置登録装置10は、移動検出部272に対応する加速度センサ、地磁気センサ、または絶対位置特定部273に対応する通信部、無線ICタグ211に電源を供給していない。
【0157】
利用者は、位置登録装置200のタグを識別情報読取装置226に読み取らせる。例えば、識別情報読取装置226は、常に読取状態であり、位置登録装置200の無線ICタグ211が近傍にあることを検出すると無線ICタグ211のタグ情報を読み取る。
【0158】
利用者は、位置登録装置200を持って部屋244内の物品231の近傍に移動する。位置登録装置200は、利用者から物品231に付加された無線ICタグの読取指示を受け付けると、無線ICタグリーダー210を用いて物品231に付加された無線ICタグ情報を読み取る。
【0159】
イベント検出部271が無線ICタグ情報を読み取るイベントを検出すると、イベント管理部251は、イベント情報とイベントテーブル261に格納する。イベント管理部251は、測位制御部252に測位の開始を指示する。
【0160】
測位制御部252は、移動検出部272、絶対位置特定部273に移動情報の取得の開始要求を出力する。
【0161】
移動検出部272は、加速度センサ、地磁気センサに電源を供給して加速度データ、地磁気データの取得を開始する。
【0162】
絶対位置特定部273は、通信部に電源供給する。通信部は定期的にサーバ220に対して扉を通過したことを示す読取情報(扉通過情報)の問い合わせを行う。測位制御部252は、加速度データと地磁気データの取得、および扉通過情報の問い合わせを、サーバから扉通過情報の応答を得るまで続ける。測位制御部252は、取得した加速度データと地磁気データを位置テーブル262に格納する。
【0163】
ここで、利用者は位置登録装置10を持ち、扉241を通過して部屋244から退室したものとする。識別情報読取装置226は位置登録装置200識別情報および読取時刻を含む読取情報をサーバ220に送信する。サーバ220は受信した読取情報を記録する。
【0164】
位置登録装置200は、定期的にサーバ220にアクセスして、絶対位置情報の取得を要求する。絶対位置の取得の要求は、例えば、次の処理を実行する。位置登録装置200はサーバ220に位置登録装置200の識別情報を送信する。サーバ220は受信した識別情報を含むレコードを読取情報96から検索する。サーバ220は検索結果から識別情報読取装置を特定する。サーバ220は特定した識別情報読取装置226の絶対位置情報を設置場所情報91から検索する。また、サーバは読取情報96のレコードから読取時刻を特定する。サーバは特定した識別情報読取装置226の絶対位置情報93及び読取時刻99を位置登録装置200に送信する。
【0165】
なお、位置登録装置200のサーバ220への問い合わせは、本実施例では定期的に行うものとしたが、例えば、加速度データに一定量を越える変化が起きるごとに行っても構わない。以上により位置登録装置200は、読取時刻における絶対位置情報を取得することができる。
【0166】
絶対位置特定部273は、サーバ220から絶対位置情報及び読取時刻情報を受信すると、測位制御部252に絶対位置情報を取得した旨を出力する。測位制御部252は、移動検出部272に移動情報の取得の停止を指示する。移動検出部272は加速度センサ、地磁気センサへの電源の供給を停止する。
【0167】
位置登録装置200は、取得した識別情報読取装置の位置情報をセンサ値324へ、読取時刻を位置テーブル32の時刻322へ、センサ種別323を絶対位置情報として位置テーブル262に格納する。
【0168】
測位制御部252は、位置特定部253に位置特定の開始の要求を出力する。以降、位置特定部253は、イベント発生位置の特定処理を実行する。位置特定の処理は実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0169】
図33は位置登録装置200が物品231の無線ICタグを読み取った以降の加速度データのグラフ816の一例である。図34は位置登録装置200が物品231の無線ICタグを読み取った以降の方向データのグラフ817の一例である。図33、図34において、位置登録装置200は13:22:30に物品231の無線ICタグを検出したものとする。識別情報読取装置226は13:22:47に位置登録装置200の無線ICタグ211を読み取った、すなわち、位置登録装置200が扉241を通過したとする。図33、図34は、13:22:42から13:22:47にかけて、東北東の方向に9歩移動している状態が示されている。位置特定部253は、扉241から西南西に9(歩)x0.75(歩幅(m))=6.75mの位置に物品231があったもの特定する。
【0170】
なお、本実施例の位置登録装置は、カメラ、ビデオカメラ、スマートフォン、携帯電話等の携帯端末を対象としてもよい。カメラ、ビデオカメラ、スマートフォン、携帯電話等の場合、例えば、写真を撮影した信号を検出すると、イベントが発生したと判断することも可能である。また、スマートフォン、携帯電話の場合、例えば、他者から電話、電子メール、位置情報の確認要求を受けたことを検出すると、イベントが発生したと判断することも可能である。また、携帯端末がアプリケーションプログラムを実行することにより、上記の処理を実行することも可能である。以上より、位置登録装置は、イベントを実行する機能の組み合わせた一つの装置として提供することも可能である。
【0171】
また、本実施例では、位置登録装置10は通常時において測位機能を停止するように処理している。しかし、位置登録装置10の測位処理を間欠的に行い、その間にイベントが発生した場合に、上記の処理を実行するようにしてもよい。また、本実施例では、位置登録装置10は、通常時に、電力を測位機能に供給しないことにより、測位機能を停止している。しかし、測位機能に待機モードがある場合は待機モードの状態にさせてもよい。測位機能全体に電力を供給しないのか、一部への電力の供給をしないのか等は装置によって異なり、適宜最適な電力制御を行っても良い。
【0172】
また、位置登録装置10は、測位機能を常時起動しておき、絶対位置情報を取得したときに、イベント発生後から絶対位置取得までの時間の移動量でイベント発生位置を特定することも可能である。
【0173】
なお、位置登録装置10は、加速度と地磁気により、位置登録装置10の移動距離と移動方向とを特定した。本実施例の位置登録装置10は、加速度の波形から利用者の歩行状態を検出し、歩数により距離を特定した。しかし、例えば、加速度のノイズが少ない場合、位置登録装置10は加速度の積分によって速度や移動距離を計算することも可能である。また、位置登録装置10はカメラ機能を起動することで、カメラが撮像した撮像情報から速度を特定して移動距離を計算することも可能である。
【0174】
なお、本実施例の絶対位置は、位置登録装置が位置の特定が可能な情報を外部から取得することで特定した。例えば、位置登録装置は、電波強度、GPS、あるいはICタグ読取装置の場所によって、絶対位置を特定した。しかし、位置の特定が可能な情報とは上記に限らず、位置が明らかなICタグ情報、バーコード情報等でもよい。
【0175】
以上により、開示した位置登録装置10および位置登録装置200は、イベント発生後に絶対位置情報の取得を開始した場合であっても、イベント発生位置を特定することが可能になる。
【符号の説明】
【0176】
10 位置登録装置
20 処理部
21 イベント管理部
22 測位制御部
23 位置特定部
30 記憶部
31 イベントテーブル
32 位置テーブル
33 イベント位置テーブル
40 イベント検出部
50 移動検出部
60 絶対位置特定部
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 無線ICタグリーダー
105 アンテナ
106 加速度センサ
107 地磁気センサ
108 クロック
109 入力部
110 ディスプレイ
120 サーバ
200 位置登録装置
250 処理部
251 イベント管理部
252 測位制御部
253 位置特定部
260 記憶部
261 イベントテーブル
262 位置テーブル
263 イベント位置テーブル
271 イベント検出部
272 移動検出部
273 絶対位置特定部
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 無線ICタグリーダー
205 アンテナ
206 加速度センサ
207 地磁気センサ
208 クロック
209 入力部
210 ディスプレイ
220 サーバ
211 無線ICタグ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イベントの発生した位置を登録する位置登録装置であって、
イベントの発生を検出する検出部と、
該位置登録装置の外部から位置の特定が可能な情報を取得することで位置を特定する位置特定部と、
該位置登録装置の移動量を検出する移動検出部と、
少なくとも検出された該イベントの発生以降に該移動検出部で検出された該移動情報を蓄積する記憶部と、
該位置特定部により該位置登録装置の位置が特定されると、該記憶部に蓄積された該移動情報に基づき、該イベントの発生時点から該位置登録装置の位置の特定が可能な情報を該位置登録装置の外部から取得した時点までの該位置登録装置の移動量を特定し、該位置特定部で特定された該位置登録装置の位置と特定した該位置登録装置の移動量とから該イベントの発生時点の該位置登録装置の位置を特定する位置特定部と
を有することを特徴とする位置登録装置。
【請求項2】
該位置特定部は、該検出部が該イベントの発生を検出したときに、該位置の特定を開始することを特徴とする請求項1に記載の位置登録装置。
【請求項3】
該移動検出部は、該検出部が該イベントの発生を検出したときに、該移動情報の検出を開始することを特徴とする請求項1または2に記載の位置登録装置。
【請求項4】
少なくとも該位置登録装置の外部から該位置の特定が可能な情報を取得した後、該位置特定部による該位置の特定および該移動検出部による該移動情報の検出を停止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の位置登録装置。
【請求項5】
該位置特定部は、該位置の特定を複数回実行し、
該位置特定部は、該移動検出部で検出された該位置登録装置の該移動量を算出するパラメータを、該位置特定部による該複数の該位置登録装置の位置に基づき補正することを特徴とする請求項1に記載の位置登録装置。
【請求項6】
該移動検出部は、3軸の加速度センサにより該位置登録装置に加わる3方向の加速度と、3軸の地磁気センサにより該位置登録装置の3方向の磁束密度を移動情報として検出し、
該加速度センサの出力から重力方向を検出し、検出した重力方向から水平面を特定し、特定した水平面に対応する磁束密度を該地磁気センサから特定することで、該位置登録装置の方向を取得することを特徴とする請求項1に記載の位置登録装置。
【請求項7】
該移動検出部は、3軸の加速度センサにより該位置登録装置に加わる3方向の加速度センサにより加速度を移動情報として検出し、
該加速度センサの出力から重力方向を検出し、加速度の波形から歩数を特定することで、該位置登録装置の移動距離を取得することを特徴とする請求項1に記載の位置登録装置。
【請求項8】
該位置登録装置は無線ICタグを有し、
該位置特定部は、予め位置情報を有する無線ICタグ読取装置により該無線ICタグが読み取られたことを検出することにより、該無線ICタグ読取装置の位置から該位置登録装置の位置を特定することを特徴とする請求項1に記載の位置登録装置。
【請求項9】
位置を測定する位置登録装置に実行させる位置登録プログラムであって、
イベントの発生を検出し、
位置の特定が可能な情報を外部から取得することで位置を取得し、
該位置登録装置の移動量を検出し、
少なくとも検出された該イベントの発生以降に検出された該移動情報を蓄積し、
該位置登録装置の位置を取得すると、蓄積された該移動情報に基づき、該イベントの発生時点から該位置登録装置の位置の特定が可能な情報を該位置登録装置の外部から取得した時点までの該位置登録装置の移動量を特定し、取得した該位置登録装置の位置と特定した該位置登録装置の移動量とから該イベントの発生時点の該位置登録装置の位置を特定する
処理を該位置登録装置に実行させることを特徴とする位置登録プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−194149(P2012−194149A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60258(P2011−60258)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】