説明

低圧EGRシステム制御装置及び方法

【課題】低EGRシステムから凝縮水が発生しないように制御する低EGRシステム制御装置および方法を提供する。
【解決手段】車両の運行地域の外気温度を検出する外気温度検出部と、エアコンシステムが作動されているか否かの情報を出力するエアコンスイッチと、ワイパーが作動されているか否かの情報を出力するワイパースイッチと、外気温度を分析して相対湿度を算出し、その相対湿度が設定値より高い多湿条件であると判断した場合は、低圧EGRシステムの作動を制限して凝縮水が発生しないようにする制御部と、を備えることを特徴とする。
また制御部は、特定地域の月別平均最低気温、月別平均相対湿度、及び月別平均総降雨量に対する情報が予めマッピングされて設定され、相対湿度と総降雨量とが予め設定した設定数値以上であれば、低圧EGRシステムの作動を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧EGRシステム制御装置及び方法に係り、より詳しくは、再循環される排気ガスがEGRクーラー及びインタークーラーを通過して熱交換される過程で、凝縮水が生成しないようにした低圧EGRシステム制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、排気ガスの一部を吸気系に再循環させ、燃焼時の最高温度を低くすることによってNOxの発生を抑制する、EGR(Exhaust Gas Recirculation)システムが装着されている。
図1は、内燃機関に装着されるEGRシステムの構成を示す図面である。
図1に示すように、内燃機関には、エンジン100の排気マニホールドに連結するターボ・チャージャー102の入口側の排気ガスを吸気系に再循環させる高圧EGRシステム110と、触媒103の出口側の排気ガスをコンプレッサに再循環させる低圧EGRシステム120と、が装着される。
【0003】
高圧EGRシステム110は、ターボ・チャージャー102の入口側の排気ガスの再循環量を調節する第1EGRバルブ111と、第1EGRバルブ111を通じて再循環される排気ガスを冷却させてマニホールドに流入させる第1EGRクーラー112と、を含み、エンジン100の運転条件によってデューティー制御される。
また、低圧EGRシステム120は、触媒103の出口側の排気ガスの再循環量を調節する第2EGRバルブ121と、第1EGRバルブ121を通じて再循環される排気ガスを冷却させる第2EGRクーラー122と、フィルター123と、を含み、エンジン100の運転条件によってデューティー制御される。
【0004】
低圧EGRシステム120は、ターボ・チャージャー102の出口側の排気ガスを再循環させることによって、高速、高負荷の運転条件でもターボ効率を減少させないで、多量の排気ガスを供給することができるため、NOx及び燃費の低減効果が得られる。
しかし、低圧EGRシステムは、再循環される排気ガスがEGRクーラー及びインタークーラーを通過して熱交換される過程で、凝縮水が発生する。発生する凝縮水の量は、次式に示す通りである。
【0005】
凝縮水発生量(g)=排気ガスに含まれている水蒸気量(g)−下降した温度での飽和水蒸気量(g/m)×排気ガス流量(m
【0006】
図2は、低圧EGRシステムにおける凝縮水発生関連因子及び問題点を示した図面である。
図2に示すように、低圧EGRシステムで凝縮水発生に間接的に作用する因子としては、冷却水温度、低圧EGRクーラー効率、差圧、負荷、燃料量、外気温度、車速、大気圧、ブースト圧、インタークーラー効率、相対湿度、及び低圧と高圧のEGR比率などがある。
【0007】
そして、凝縮水発生に直接的に作用する因子としては、前記の間接的な因子の影響を受ける低圧EGRクーラー出口温度、低圧EGRクーラー通過流量、作動流体内部水蒸気量、インタークーラー出口温度、インタークーラー通過流量などがある。
上記の間接的な因子及び直接的な因子によって、低圧EGRクーラーとインタークーラーに凝縮水が発生する。
【0008】
低圧EGRクーラーから発生する凝縮水は、ターボ・チャージャーのコンプレッサーホィールを損傷させ、低圧EGRバルブと低圧EGRクーラーを腐蝕させ、フィルタ詰まりを発生させる。
そして、インタークーラーから発生する凝縮水はインタークーラーを腐食させ、燃焼室に構成される部品を損傷させる問題点を発生させる。
特許文献1には、インタークーラーから発生する凝縮水をリザーバタンクに貯蔵し、凝縮水が一定量になった時に電子式バルブを動作させて凝縮水を排出させる技術が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、低圧EGRクーラーに凝縮水を排出するための別途の排気通路を設け、発生した凝縮水を排気管を通じて排出する技術が記載されている。
上記ような技術は、追加的な装置を必要とするために装置全体の製造コストを上昇させるという問題点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,301,887号明細書
【特許文献2】特開第2008−002351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、低EGRシステムから凝縮水が発生しないように制御する低EGRシステム制御装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような目的を達成するための本発明の内燃機関に適用される低圧EGRシステムは、車両の走行地域の外気温度を検出する外気温度検出部と、エアコンシステムが作動されているか否かの情報を出力するエアコンスイッチと、ワイパーが作動されているか否かの情報を出力するワイパースイッチと、外気温度を分析して相対湿度を算出し、その相対湿度が設定値より高い多湿条件であると判断した場合に低圧EGRシステムの作動を制限して、凝縮水が発生しないようにする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、制御部が、エアコンシステム又はワイパーが作動されていると判断した場合は、多湿条件と判断して低圧EGRシステムの作動を制限する。
また本発明は、制御部に特定地域の月別平均最低気温(℃)、月別平均相対湿度(%)、及び月別平均総降雨量(mm)に対する情報が予めマッピングされて設定され、制御部は、相対湿度と累積降雨量とが予め設定した設定数値以上であれば低圧EGRシステムの作動を制限する。
【0014】
また、本発明の低圧EGRシステム制御方法は、制御部が、車両の走行地域の外気温度を検出して予め設定した設定温度と比較する過程と、外気温度が設定温度を超えていると判断した場合は相対湿度を算出する過程と、相対湿度が予め設定された多湿条件であるか否かを判断する過程と、多湿条件であれば低圧EGRシステムを制限して制御する過程と、を含む。
【0015】
また、本発明は、エアコン又はワイパーの作動が検出された場合、多湿条件であると判断する。
また、本発明は、外気温度が設定温度未満であるか、又は予め設定された多湿条件でなければ、低圧EGRシステムを正常制御する。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、単純な制御ロジックの適用によって低圧EGRシステムで凝縮水が発生するのを防止することができるので、低圧EGRクーラー、インタークーラー及び燃焼室部品の耐久性を向上させる効果がある。
また、本発明の低圧EGRシステム制御装置は、追加のセンサー等の設置を必要としないため、製造経費を節減することができ、値段競争力を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】内燃機関に装着されるEGRシステムの構成を示した図面である。
【図2】低圧EGRシステムにおける凝縮水発生関連因子及び問題点を示した図面である。
【図3】本発明の実施形態に係る低圧EGRシステム制御装置を概略的に示した図面である。
【図4】本発明の実施形態による特定国家の月別平均最低気温(℃)を示したグラフである。
【図5】本発明の実施形態による特定国家の月別平均相対湿度(%)を示したグラフである。
【図6】本発明の実施形態による特定国家の月別平均総降雨量(mm)を示したグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る低圧EGRシステムの制御手続を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付した図面を参照し、本発明について詳細に説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る低圧EGRシステム制御装置を概略的に示した図面である。図3に示すように、本発明の低圧EGRシステム制御装置は、外気温度検出部10、エアコンスイッチ11、ワイパースイッチ12、制御部13、及び低圧EGRバルブ14を有する。
【0019】
外気温度検出部10は、運行される地域の外気温度を検出して、それに対する情報を制御部13に提供する。
エアコンスイッチ11は、運転者によるエアコンシステムのオン/オフ選択情報を出力して、制御部13に提供する。
ワイパースイッチ12は、運転者によるワイパーの作動オン/オフ選択情報を出力して、制御部13に提供する。
【0020】
制御部13は、走行している地域の外気温度及び絶対湿度から相対湿度を推定し、相対湿度、エアコンスイッチ11の接続情報、及びワイパースイッチ12の接続点の情報を総合して、多湿条件であるか否かを判断する。
また制御部13は、相対湿度と、運転者の運転条件(エアコン作動及びワイパー作動)と、から多湿条件であると判断した場合は、低圧EGRシステムの作動を制限して凝縮水が発生しないようにする。
【0021】
つまり、制御部は、相対湿度が設定値以上であるか、エアコンが作動されているか、またはワイパーが作動されていれば多湿条件であると判断し、多湿条件であると判断すると低圧EGR制御システムを作動させない。
【0022】
図4は、本発明の実施形態による特定国家の月別平均最低気温(℃)を示したグラフであり、図5は、本発明の実施形態による特定国家の月別平均相対湿度(%)を示したグラフであり、図6は、本発明の実施形態による特定国家の月別平均総降雨量(mm)を示したグラフである。
制御部13には、図4に示したような特定地域別の月別平均最低気温(℃)、図5に示したような特定地域別の月別平均相対湿度(%)、及び図6に示したような特定地域別の月別平均総降雨量(mm)に対するマッピング情報が予め設定される。
【0023】
図4〜図6に示したマッピング情報は、一例として大韓民国の情報を示したものであるが、車両が運行される地域によって相異する。当該地域に対する情報をマッピングするように設定できる。
低圧EGRシステム14は、制御部13から印加されるデューティー信号によって作動して、排気ガスを再循環させる。
【0024】
図7は、本発明の実施形態に係る低圧EGRシステムの制御手続を示したフローチャートである。図7に示すように、上述したような機能を含む本発明による低圧EGRシステムの動作は、次の通り実行される。
本発明が適用される内燃機関の運転が開始されると、制御部13は、外気温度検出部10から提供される走行する地域の外気温度情報と、エアコンスイッチ11から提供されるエアコンのオン/オフ情報と、ワイパースイッチ12から提供されるワイパーのオン/オフ情報と、を含む全般的な運転情報を検出する(S101)。
【0025】
次いで、制御部13は、検出された情報を分析して、外気温度が設定温度を超えるか否かを判断する(S102)。
外気温度と比較される設定温度は、図4に示すように相対湿度を考慮するべき範囲であって、例えば15℃と設定することができる。
【0026】
制御部13は、S102で外気温度が設定温度を超えると判断した場合は、外気温度と絶対湿度から相対湿度を計算する。
例えば、図4に示すように、外気温度が設定された一定温度を超えれば、5月乃至10月の間の運行と判断し、図5を適用して外気温度から相対湿度を計算する。
相対湿度とは、その温度で最大に包含できる湿気に対する比率であって、一般的には、相対湿度が50%以下である場合には乾燥感を感じ、75%以上である場合にはじめじめ感を感じることが多い。
【0027】
S102の判断で外気温度が設定温度未満であれば、相対湿度が高くても凝縮水を発生させない条件であるから、制御部13は低圧EGRシステムを正常に制御する(S103)。
しかし、S102の判断で外気温度が設定温度を超えて相対湿度が算出された場合は、運転者の行動を判断する。先ず、エアコンが作動されているか否かをを判断する(S104)。
【0028】
制御部13は、S104でエアコンの作動を検出した場合は、エアコンは車両の室内温度を下げ湿度を低くするために作動されていると解釈し、運転条件は多湿条件であると判断する(S107)。通常、エアコンの作動は5月乃至10月の間に行われる。
【0029】
したがって、制御部13は、低圧EGRシステムの作動を制限し、多湿な運転条件で凝縮水が発生しないようにする(S108)。
また、S104でエアコンの作動が検出されなければ、ワイパーの作動が選択されたか否かを判断する(S105)。
【0030】
S105の判断でワイパーが作動されていない状態であれば、制御部13は低圧EGRシステムを正常に制御する(S106)。制御部13は、外気温度が設定された一定温度を超え、ワイパーが作動されている状態であれば、雨天の状況であるから、湿度が非常に高い状態と判断する(S107)。したがって、制御部13は、低圧EGRシステムの作動を制限し、多湿な運転条件で凝縮水が発生しないようにする(S108)。
【0031】
上述のように、本発明の実施形態によれば、外気温度と絶対湿度の相関関係を利用して相対湿度を計算し、エアコンの作動あるいはワイパーの作動を検出して多湿条件であると判定した場合に、低圧EGRシステムの作動を制限して凝縮水が発生しないようにすることによって、凝縮水による部品の損傷を防ぎ、凝縮水による損傷可能部品の耐久性を高め、信頼性を提供する。
【0032】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0033】
10 外気温度検出部
11 エアコンスイッチ
12 ワイパースイッチ
13 制御部
14 低圧EGRバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に適用される低圧EGRシステムにおいて、
車両の走行地域の外気温度を検出する外気温度検出部と、
エアコンシステムが作動されているか否かの情報を出力するエアコンスイッチと、
ワイパーが作動されているか否かの情報を出力するワイパースイッチと、
外気温度を分析して相対湿度を算出し、その相対湿度が設定値より高い多湿条件であると判断した場合は、低圧EGRシステムの作動を制限して凝縮水が発生しないようにする制御部と、
を備えることを特徴とする低圧EGRシステム制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記エアコンシステム又は前記ワイパーが作動されていると判断した場合は、多湿条件と判断して前記低圧EGRシステムの作動を制限することを特徴とする請求項1に記載の低圧EGRシステム制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、特定地域の月別平均最低気温(℃)、月別平均相対湿度(%)、及び月別平均総降雨量(mm)に対する情報が予めマッピングされて設定され、相対湿度と総降雨量とが予め設定した設定数値以上であれば、前記低圧EGRシステムの作動を制限することを特徴とする請求項1に記載の低圧EGRシステム制御装置。
【請求項4】
制御部が、車両の運行地域の外気温度を検出して予め設定した設定温度と比較する過程と、外気温度が設定温度を超えていると判断した場合は相対湿度を算出する過程と、前記相対湿度が予め設定された多湿条件であるか否かを判断する過程と、多湿条件であれば低圧EGRシステムを制限する過程と、を含むことを特徴とする低圧EGRシステム制御方法。
【請求項5】
エアコン又はワイパーの作動が検出された場合、多湿条件であると判断することを特徴とする請求項4に記載の低圧EGRシステム制御方法。
【請求項6】
外気温度が設定温度未満であるか、又は予め設定された多湿条件でなければ、前記低圧EGRシステムを正常運転することを特徴とする請求項4に記載の低圧EGRシステム制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−21524(P2012−21524A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135172(P2011−135172)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】