説明

低弾性有機層を用いた高耐久性および高性能の偏光光学素子

解決すべき課題は、光学投影システムの高温高輝度環境にある位相差スタックまたはその他の光学装置の、温度サイクルによって生じる剥離にある。投影表示の厳しい環境において高度な性能を維持できる光学補償素子装置が記載される。取付工程には、光学的に透明なガラスまたはセラミック基板と、低弾性ポリマー位相差フィルムとの間にシーラントを用いることが含まれる。シーラントは、基板を密封して高輝度にある装置の寿命を延ばす酸素バリアとして機能することによって、位相差フィルムの劣化を緩和または防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される実施例は、一般的には、表示システムで使用される光学装置に関し、より具体的には、低弾性有機基板を用いた高耐久性および高性能の偏光光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶オンシリコン(liquid crystal on silicon(LCoS))パネルを用いた投影表示においては、通常、補償位相差素子を用いて性能を高めることができる。こうした補償素子は、黒状態にあるパネルの残留面内位相差を除去するために、および/または液晶層の有限視野による光漏れを除去するために用いられる。さらに、補償素子は、有限F数システム(finite f−number systems)のマクネイル(McNeille)偏光ビームスプリッタ(polarizing beamsplitters(PBS))からの幾何学的回転に関連する漏れをゼロにすることができる。それはまた、所定のシステムの、特に非テレセントリック(off−telecentric)システムの、ワイヤグリッド偏光素子(wire grid polarizers(WGP))によって生じる偏光歪をも補償することができる。実際のシステムにおいては、これらの2または3の組み合わせの影響は、PBSとLCoSパネルとの間の空間に存在する化合物要素を用いて補償され得る。
【0003】
かかる化合物要素は、コンピュータのモデル化によれば所望の補償を達成することが示されているが、現実の実証では理論的な予測にはるかに及ばないことがしばしばである。実際のところ、これは、最終的なシステムのコントラストを通常決定する微妙な補償素子の欠陥に起因する。
【0004】
直視型表示でのグレアを低減するためには、延伸ポリマー位相差フィルムが、例えば、円偏光素子においてしばしば用いられる。初期の位相差フィルムは、ポリビニルアルコール(PVA)−偏光フィルムを作るために大量生産される基板−を用いて製造されていた。しかし、PVA基板は薄くて吸湿性であるため、場合によっては、酢酸酪酸セルロースのような防湿層機能を備える支持基板を付加的に積層する必要がある。現在入手可能なPVA系製品の多くは、過剰な厚さおよび不十分な均一性ゆえに、現代的な位相差フィルム用途には好適でない。
【0005】
位相差フィルム製造のさらに最近の開発活動の多くは、直視型アクティブマトリクスLCD(AMLCD)表示における標準ツイストネマチック(standard twisted nematic(STN))パネル補償および視野補償に向けられていた。LCD用途のための基板の選択肢としてポリカーボネートが登場した。直視型LCD表示では、延伸ポリカーボネートフィルムが、感圧接着剤(pressure sensitive adhesive(PSA))を用いてLCD偏光素子に取り付けられる。
【0006】
原則的には、投影用の位相差フィルムは、直視型LCD補償素子用途に用いられるポリカーボネート材料に類似したポリカーボネート材料を用いて製造することもできる。投影補償素子の性能および信頼性の要求により、商業的に入手可能な位相差フィルム製品の多くが除外される。投影用の補償素子位相差フィルムであれば、高い光学的透明度、低い欠陥密度、ガラスに屈折率整合して等方反射を最小化する低い屈折率(1.52)、異方反射を最小化する低い複屈折性、透過波面歪(transmitted wavefront distortion)および複屈折組織(birefringence texture)を最小化する均一な鋳込みまたは押出し、光軸および位相差の均一性、接着剤接合のための低い表面エネルギー、機械的歪により生じる非均一性に対抗する高い剛性、ならびに性能の安定性、のような特性が最適にバランスする。これらの特性は、材料が投影環境で直面する温度サイクルおよび高い輝度があっても、維持される必要がある。
【0007】
ポリカーボネート材料は、比較的高い屈折率(1.59)を有するが、それ以外の点では、投影環境において課せられる上記難題の多くに適合するように製造される。それにもかかわらず、ポリカーボネート材料の特性は、投影環境の高熱、高輝度条件下で著しく困難にさらされる。
【0008】
投影システムでポリマー位相差フィルムを使用することに関する一つの問題は、厳しい照明条件下で生じる熱勾配に関する。代表的なフロートガラス補償素子における非均一的な加熱は、応力複屈折をもたらす。この応力複屈折は、クロス偏光素子ライトボックスで、例えば角部の光漏れとして現れて直接観測可能である。いくつかの例では、温度勾配は、暗状態の均一性が適切ではないプロジェクタのLCoSパネルポートにおいて十分となる。この影響を最小化するために、低い光弾性係数を備えるガラスが選択されるか、またはガラスの全体の厚さが最小化される。しかし、かかるシステムであっても、ガラス基板と光学的な接合/シーラント層との間に機械的歪が生じ得る。
【0009】
この歪をさらに低減するために、接着特性を備える低いジュロメータ硬さのエラストマー系シーラントが使用されて、位相差フィルム層がガラス基板に接合される。かかるエラストマー系接着剤は、位相差フィルムをガラス基板から機械的に隔離する。しかし、さらに剛性のあるシーラントが代表的なポリカーボネートとともに使用されると、動作の温度ウィンドウが投影システムに対して狭すぎることになる。
【0010】
高温ポリシリコン(HTPS)投影システムで偏光素子をガラスに取り付けるためにしばしば用いられる代表的な感圧接着剤は、LCoSプロジェクタのような、より高輝度なシステムの厳しい照明下で劣化する。さらに、感圧接着剤は、低い屈折率(1.46)を有するのが通常であり、LCoSシステムのコントラストを低下させ得る高い反射性を与える。また、感圧接着剤によるヘイズ(haze)は、シーケンシャルなANSIコントラスト(sequential and ANSI contrast)を低下させ得る付加的な散乱成分を与える。
【0011】
感圧接着剤には、剛性基板に位相差フィルムを取り付けるための代替手段がある。紫外線硬化アクリルシーラントは、極めて透明であり、中程度の屈折率を有し得る。慎重に硬化させれば、位相差フィルムの歪は最小化され得る。しかし、かかるアクリルシーラントは通常、基板に対する熱膨張係数(coefficient of thermal expansion(CTE))の整合が不十分であり、温度が硬化温度から偏差すると機械的な負荷の原因となる。厳しい温度サイクルを含む用途では、CTEの不整合による剥離が究極的に生じ得る。
【0012】
すなわち、改善された補償素子であれば、特に高輝度投影システムにおいては有用であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一つの側面において、本発明の実施例によれば、理論的性能に近い性能が得られる補償要素が与えられる一方で、さらに、投影表示の厳しい環境にある部分領域にわたり特定の動作条件のすべてのもとで、例えば光軸安定性が<±0.1°かつ位相差安定性が<±0.5nmとなるような高度な性能が維持される。いくつかの例において、これは、光軸と位相差とがこの程度に維持されるまでは著しいコントラスト損失が生じることを意味する。こうした補償要素の核となる要素は、位相差フィルムすなわち有機層である。この核となる要素の機能は、偏光回転、偏光遅延、ならびに波長選択偏光回転および/または遅延のうちの一つである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のいくつかの実施例によって、周囲からの封止を有する光学的補償要素が与えられる。いくつかの実施例において、周囲からの封止は、シーラントとガラスとの境界層に光を透過させ得る取付工程によって得られる。周囲からの封止によって、位相差フィルムは環境、特に酸素、にさらされることから保護される。これは、高温度、高輝度条件下にある開示の低弾性有機材料にとって特に重要である。その代わりに、またはその追加として、酸素が位相差フィルムを通過することを制限するために、ガラス基板間に縁部シールが用いられてもよい。本発明に従って製造されたいくつかの光学要素においては、信頼性が劇的に改善された。試験によって、かかる光学要素のいくつかが、厳しい環境にある部分領域にわたり特定の動作条件のもとで、光軸安定性が<±0.1°かつ位相差安定性が<±0.5nmのまま、少なくとも3000時間の間190Mluxの環境に耐えることができた。ただし、請求項に係る発明は、そのように具体的に請求されていない限りにおいては、この測定結果によってなんら制限を受けるわけではない。したがって、記載された実施例は、高いまたは低い光強度の環境において有用となり得る。ここで、要素は短いまたは長い時間耐える。また有利なことには、例えば、本明細書に記載された原則に従って形成された記載の光学要素は、50Mlux又は100Mluxの環境で少なくとも約3000時間の動作であっても、記載の光軸および位相差安定性で機能する。
【0015】
一つの実施例では、かかる光学要素は、表面に第1バリア層が形成された第1基板層と、第1バリア層にわたって形成された低弾性分子配向層と、分子配向層にわたって形成された第2バリア層と、第2バリア層にわたって形成された第2基板層とを含む。形成された光学要素は、位相差フィルムを環境的に隔離する、周囲からの封止を含む。
【0016】
付加的バリア層が単数または複数の基板上に形成され、その付加的バリア層によって、光学要素を取り囲む環境に対して付加的な封止、基板の硬化、基板を入射光に対して非反射的にすること−反射防止コーティングとしての機能−、および光学要素を透過する光の光学特性の改善が得られる。
【0017】
かかる光学要素の具体的な実施例は偏光光学素子であって、ここで基板は光学的に透明なガラスまたはセラミックを含み、低弾性分子配向層は延伸ポリマー位相差フィルムを含み、および、基板層と位相差フィルムとの間に配置されたバリア層は、基板とフィルムとの間の酸素バリアを与える光学的に透明なシーラント層を含む。単数または複数の基板は、溶融シリカ、ボロフロートガラス(boro−float glass)、セラミックガラス、光学的に透明なガラス、または低複屈折率ポリマーを含んでよい。封止要素/バリア層は、光学的に透明なシーラント、アクリルシーラント、もしくは紫外線硬化アクリルシーラントでもよく、または、それらは、例えば溶剤溶接によって位相差フィルムに溶接される付加的な有機層もしくは無機層であってもよい。
【0018】
低弾性分子配向層は、Arton(登録商標)のような修飾ポリオレフィン(modified polyolefin)を用いた単層の位相差フィルムを含んでよい。分子配向層は、XY座標系上の2軸延伸でもよく、例えば10−25nmの面内位相差および/または120−250nmの負のZ位相差(z retardance)でもよい。分子配向層は、単層または多層であってよく、ともに積層されて集合的に特定平面においてCプレートとして機能する、低弾性材料のクロス1軸基板(クロスAプレート)を含んでもよい。分子配向層はまた、多層スタック要素であってもよい。かかる実施例において、位相差フィルムは、メチルアミルケトン(MAK)またはメチルエチルケトン(MEK)を用いて、化学接合によって積層されてよい。この積層技術は、米国特許第6,638,583号明細書にさらに記載されており、本明細書において参考として組み入れられる。記載の積層技術は、多層スタックの多層を積層するために用いられるだけではなく、用いられる関連材料が記載の技術に適している程度までは、基板層、バリア層および分子配向層のいずれかを互いに接合するのに用いられる。
【0019】
アクロマチック円偏光素子、アクロマチック偏光回転素子、アクロマチック1/2波長補償素子およびアクロマチック1/4波長補償素子を形成し得る分子配向層を含む化合物多層要素が、本明細書において開示される原則に従って用いられてもよい。記載の実施例に従って作られた光学要素の実施例は、非常に広い波長範囲にわたって極めて良好に機能する可能性を有する。上述の具体的な例は、光学要素を透過する光に対する偏光効果を有する要素である一方で、取り囲む接着剤、バリア層および/または基板のような要素は、偏光効果がない非配向分子を有するのが通常である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
光学投影システムは、そのシステムの光学要素に非均一な加熱を生じさせ得る厳しい照明を受ける。加熱は、こうした投影システムおよびその要素の設計において考慮される必要がある。所定の光学要素は、光学要素または光学材料のスタックから設計される。興味ある特定の用途は、位相差フィルム光学補償素子を使用すること、または、より一般的には、有機材料層を使用することである。それは、対向するガラス基板から位相差フィルムまたは有機材料層を分離するバリア層を備えまたは備えずに、対向するガラス基板の間に挟み込まれる。しかし、ガラス基板の非均一的な加熱および光学材料のスタック全体の非均一的な加熱によって位相差スタックが受け得る歪は、応力複屈折または、スタック状光学要素の寸法にわたってその他の光学性能の変化をもたらし得る。こうした光学効果は、ガラス基板に接合されている有機層または位相差スタックの寸法にわたるガラス・ポリマー接合が受ける様々な歪によって生じ得る。
【0021】
本発明の実施例によって、非均一的な加熱に起因する応力複屈折の影響またはその他の光学性能の変化が低減された光学要素が与えられる。いくつかの実施例では、光学要素は、低弾性分子配向有機層が間に挟みこまれたまたは挿入された第1および第2ガラス(すなわち光学基板)層を含む補償素子である。実施例は、ガラス層と分子配向層との間にバリア層を含んでもよい。
【0022】
図1に図示されるように、補償要素の実施例はまた、基板層104、105を含む。基板層104、105は、同じまたは異なる材料であり、具体的には材料は光学的に透明なガラスまたはセラミックガラスである。いくつかの好適なガラス材料は、低い光弾性係数を備えるガラスを含む。かかるガラスは、Neoceram(登録商標)のような、溶融シリカおよびセラミックガラスを含むが、それに限られるものではない。低コストのボロフロートガラスが使用される場合は、応力複屈折の程度を最小化するために、厚さ0.3mm以下になるように設計することができる。別の可能な基板材料は、低複屈折率ポリマーである。基板がポリマー基板である場合は、入力光の偏光方向に対して直線をなすかまたは対角をなして配向する延伸方向を有するようにポリマー基板を配向させる設計アプローチが適切であろう。
【0023】
具体的には、第1および第2ガラス(すなわち光学基板)層104、105が、その間に挟みこまれたまたは挿入された低弾性分子配向有機層100を有する実施例が図1に示される。実施例は、ガラス層104、105と、位相差フィルム100のような分子配向層との間のバリア層102、103を含む。通常、バリア層102、103は、熱硬化または紫外線硬化のアクリル系処方物(acrylic−based formulations)のような、光学的に透明なシーラントである。バリア層102、103は、酸素バリアとして機能するように選択されて設計され、分子配向層100をその環境から実質的に隔離することによって、光化学またはその他の反応に起因する層100の劣化が低減される。具体的には、かかる封止は、これがなかったら生じ得るフリーラジカル活性化のような過程を著しく阻止することができる。いくつかの実施例では、バリア層102、103自体は2つ以上の層を含む。第1および第2光学基板層104、105は同じまたは異なる材料であり、第1または第2バリア層102、103もまた、同じまたは異なる材料である。
【0024】
酸素バリア機能は、取り付け前のフィルムにバリア層を真空または液状コーティングすることによって付加的に設けられる。かかるコーティングは、機能的な周囲からの封止が与えて、これを取り付け接着剤の機械的および光学的な要求から切り離す。
【0025】
記載の実施例では、位相差フィルム層100は、ポリマー、特にポリオレフィン系材料、のような有機材料である。これは、取付工程に起因する延伸したままのフィルム特性を保持しており、投影環境の温度サイクル特性に耐える。本発明の実施例では、位相差フィルム100は、好適な光学特性を有して引張および/または剪断応力に対して比較的鈍感な修飾ポリオレフィン(例えば環状オレフィンコポリマー)である。及ぼされた応力に起因する複屈折シフトおよび光軸回転は、これらの基板においてよりも、ポリカーボネートフィルム(例えばNitto Denko NRF)においての方が相当に大きい。かかる修飾ポリオレフィンの一つは、日本国東京都のJSR Corporationによって製造されるArton(登録商標)である。同様のポリオレフィンはまた、日本国のNippon ZeonおよびMitsui Chemicalならびにドイツ国のTiconaによって製造される。環状オレフィンホモポリマー(hompopolymers)/コポリマーは、リング状のノルボルネン(norborene)分子から派生した熱可塑性プラスチックである。これは、ジシクロペンタジエン(DCPD)およびエチレンから作られる。Artonは、Tgを制御するエステル側鎖によって官能化される。位相差フィルム層100は、材料に異方性特性を与える分子配向をさらに有する。
【0026】
修飾ポリオレフィン位相差フィルムによって、高性能補償位相差素子フィルム100に必要な顕著な特徴の多くが与えられる。しかし、こうした位相差フィルムの位相差は、周囲からの影響にさらされると、特に高熱高輝度の環境で酸素にさらされると、不十分な光安定性を示す。例えば、位相差フィルムは、70℃、50Mlux、紫外線および赤外線フィルタ処理された照明の環境において、100時間よりも短い時間の後に、有意な位相差部分の損失が生じ得る。異方性の損失は、光化学相互作用の結果による。光化学相互作用は、最も高照度の領域において極めて明確に観測可能である(したがって、熱的条件の役割は比較的小さい)。従来通りに取付けられた場合、結果的に得られる要素は急速に劣化し、投影に適さないものになり得る。信頼性試験によって、故障率が周囲条件に大きく左右されることがさらに観測される。すなわち、位相差損失率は、(酸素富化環境とは反対に)窒素富化環境にフィルムをさらすことによって著しく低減される。これは、酸素がポリマー鎖分解のための触媒として機能することを示す。
【0027】
記載の光学要素は、以下のいくつかの補償機能を含む:(1)暗状態のパネルの面内位相差の除去;(2)低F数でのコントラスト改善のためのZ位相差の除去;および(3)低F数でのコントラスト改善のための、マクネイルPBSからの幾何学的回転に起因する光漏れの除去。しかし、その他の状況においてはその他の光学特性が興味あるものかもしれないが、その他の状況のために作られた光学要素であってもなお、本願で請求される実施例に従っており、本願から究極的に発行される請求項によってカバーされる。
【0028】
Arton(登録商標)製品のような、比較的剛性のある材料から形成された位相差フィルムは、延伸方向に沿った光軸に対して正の1軸配向となる傾向がある。LCoSパネルにおいては、高コントラスト(通常は10−25nm)を得るために、小さな面内位相差補正が要求される。小さな面内補償素子は、パネル位相差素子とクロスさせることによって、正味の面内位相差をゼロにしてコントラストを増大させる。しかし、低い位相差値では製造上の制御が難しいのが通常であり、許容可能な光軸および位相差の均一性を有する材料を得ることが難しい。したがって、鋳込みもしくは押出しのみを用いて、または非常に緩慢な延伸によって、製造された低位相差フィルムは不十分な均一性を示すのが通常である。
【0029】
これを克服するためには2つの方法がある。そのいずれも、視野補償を付加的に与え、この視野補償もまた有益である。第1の方法は、2つの位相差フィルムを極度に延伸してそれらを溶接して合わせることである。第2の方法は、単一の位相差フィルムを2軸に沿って延伸することである。
【0030】
クロス1軸プレート
第1のアプローチでは、クロスした正の1軸位相差フィルムによって2つの位相差値が作られた。これらの位相差値間の差は、暗状態のパネルの残留位相差近くに整合させる必要がある。この残留位相差は、LCモードに依存するが、例えば3nmから25nmまでであってよい。パネルの面内位相差を補償する場合に重要なのは、位相差安定性が十分に整合することである。これによって、正味の位相差がゼロに近づきコントラストが最大になる。平均コントラストは位相差間の差の平均によって決まる。その結果、コントラストの均一性は、パネルおよび補償素子の空間均一性によって決まる。通常、補償素子は、透明なアパチャ全体にわたり、フルレンジの温度動作にわたり、および厳しい照明のもとで、均一性が<±0.5nmとなる必要がある。
【0031】
さらに、各フィルムの位相差は、最適視野補償のためには暗状態のパネルのZ位相差にほぼ整合する。この位相差値は、通常は十分に大きく(例えば140−250nm)、位相差および光軸に対する厳密な許容誤差を製造において維持することができる。適切に配向されると、その対は面内位相差が補償されて、所定の視野補償も達成され得る。垂直配向ネマチック(vertically aligned nematic(VAN))モードパネルの場合は特に、位相差フィルムはほぼ整合した位相差値を有し、光軸は入力偏光に対して±45°で配向される。所定のLCモードに対しては、面内およびZ位相差補償両方の最適化のためには、3つ以上の位相差フィルムが付加的に必要となる。
【0032】
補償素子の実施例は、ガラスに取り付ける前に、一対の低弾性位相差フィルムをともに積層することによってなされる。積層は、接着特性を備えるシーラントを用いることのような任意の方法によって達成されるがこれに限られることはなく、本明細書において参考として組み入れられる米国特許第6,638,583号明細書に記載されるような溶剤接合によって達成されるのが好ましい。本実施例においては、位相差フィルム層は、例えば、MAK(メチルアミルケトン)のような溶剤を用いて積層されたArton(登録商標)フィルム対を含み、非常に低い複屈折緩和率、例えば約1−2%の複屈折緩和率、と組み合わされた極めて良好な剥離強度(多くの例においてはフィルムは分離する前に破損する)を示す。接着剤を用いた実施例としては、モノマーが接着剤に含まれてモノマーの接着特性が高められる。
【0033】
特定の理論にとらわれることを望むわけではないが、本出願人は、位相差フィルム対の、低弾性有機層の機械的応力に対する相対的な鈍感性によって、同一の工程を経たポリカーボネート系の積層に比べて均一性が優れた結果になると考えている。
【0034】
ポリカーボネート系の積層は、積層工程の結果として比較的高い光軸のぶれ(optic axis wander)を示すが、低弾性位相差フィルム対は、ポリカーボネート系の積層よりも有利な点を示す。これは、光軸が共通の方向に沿ったままいくつかのシートが積層される場合に明らかとなり、クロス偏光素子で観測される。光軸のぶれによって、異なる領域が異なる配向において消滅するか、または領域が任意の配向において不十分に消滅する。しかし、開示の原則に従う低弾性を有する比較的剛性のあるポリマーを含む位相差フィルム層は、溶剤接合時に光軸のぶれのような性能の損失をほとんどまたは全く受けない。
【0035】
本方法で溶剤接合された位相差フィルム対は低複屈折組織を示し、クロス偏光素子同士間で垂直入射でながめると均一な単層位相差フィルムの外観を有する。さらに、溶剤接合は、(ゼロの接合線厚さゆえに)透過波面歪が保存されるという利点を有し、安価であり、および短い時間スケールでの強固な接合を得る。結果的に得られる積層溶剤対は、実質的に異物が含まれず、内部の光学的界面すなわち反射が実質的に低減され、および熱膨張係数の不整合すなわちシーラントの故障問題が十分に低減される。
【0036】
付加的な層を積層して多層補償素子(図4参照)を作ることによって、付加的な機能を得ることができる。いくつかの層が、パネルおよびPBSを含むシステム全体を補償するために使用される。多層積層400は、必要に応じて上述の工程を繰り返し適用することによって製造することができる。
【0037】
さらに、上述のように製造された積層はその後、ガラス基板の間に光学的に透明なシーラントを用いて取り付けられる。いくつかの実施例においては、補償要素は、2つのガラスまたはセラミック基板層をその間に配置される位相差フィルムとともに圧縮することによって製造される。層は、好ましくは酸素バリアとしても機能する所定の接着剤を用いてともに保持される。シーラントは紫外線または熱のどちらかによって硬化する。シーラントは、架橋されて、環境から位相差フィルム層を気密封止する。特に、フィルムは酸素から隔離される。酸素は、そうでなければ位相差の緩和を加速させる触媒として機能する。母材シートから部品がスライスおよびダイスカットされ、必要に応じて、環境抵抗性を高めるために縁部が封止される。
【0038】
単一2軸延伸プレート
本明細書で開示される原則に従う所望の面内およびZ位相差を得るための別の製造技術は、2軸延伸を用いることである。これによると、まず、低弾性ポリマーフィルムがウェブ方向に延伸され(屈折率が大きくなる)、パネルの位相差値にほぼ整合する位相差値が得られる。その後、フィルム面内ではあるがウェブ方向には垂直に延伸して、フィルム面内の法線方向に対して実質的に高い屈折率のフィルムが結果的に得られる。これにより、Cプレート位相差と所望の面内位相差との組み合わせが結果的に得られる。この実施例の一つの特徴は、単層であっても、面内と視野との両方を補償するための所望の2軸性を有することができるということである。
【0039】
2軸延伸フィルムまたはプレートのその他の任意の材料への積層を得るために、上述のクロス1軸プレート実施例の積層技術を適宜用いることができる。
【0040】
上記方法のいずれかを用いて、面内位相差値を制御することができる。LCoSパネルは、LCモードによって、コントラストを最大にするための様々な面内補償値(例えば3−25nm)を有することができる。HTPSパネルでは、ツイストネマチック(twisted nematic(TN))モードまたは垂直配向ネマチック(vertically aligned nematic(VAN))モードのいずれかが可能である。TNパネルに対しては、コントラスト改善は、境界付近の傾斜的な分子分布の補償を含む。しかし、VANのHTPSパネルのオフ状態は、非駆動状態によって決まる。したがって、垂直入射方向にほぼ沿って、より均一な分子分布が存在する。これは、比較的大きなZ位相差と組み合わせられた(例えば±45°における)小さな面内位相差に相当する。かかる補償機能は、本発明に従って製造された要素によって適宜与えられる。
【0041】
スキュー光線補償
本明細書に開示される原則の別の実施例は、スキュー光線補償素子の構築である。マクネイルPBSキューブによってLCoSパネルに導入されたスキュー光線の幾何学的歪を補正するためには、1/4波長位相差素子が用いられる。所定の機能のためには、1/4波長位相差素子は、垂直入射またはP平面においてゼロ効果(zero effect)を有する必要がある。1/4波長位相差素子の光軸の空間的な不安定性によって、コントラストが式1に従って急速に劣化する。
CR=1/sin[2α](式1)
【0042】
ここでαは、局所的な光軸配向である。この実施例によると、取り付けられた低弾性1/4波長位相差素子において、動作条件の範囲全体にわたり光軸安定性が<±0.2°までに保持される。位相差素子によって変換されるスキュー光線に対しては、所定の補正によって、偏光状態(state of polarization(SOP))が速軸(fast axis)について有効に反射されること(すなわち線形状態を線形状態にマッピングすること)が要求される。これによって、単一経路位相差は、動作のための全帯域にわたり1/4波長にかなり近似することが要求される。3パネルシステムにおいては、これは通常430−480nm(青)、520―570nm(緑)および590−650nm(赤)である。位相差安定性は重要ではあるが、高いシステムコントラストを確保するための光軸安定性と比べるとそれほど関心のあることではない。よって、低弾性位相差フィルム層は、確固たる解決策を得る上で非常に有益である。信頼性のある性能を与えるサンドイッチ構造の製作は上述した通りである。
【0043】
その他の用途
化合物多層要素は、アクロマチック円偏光素子、アクロマチック偏光回転素子、アクロマチック1/2波長位相差素子およびアクロマチック1/4波長位相差素子を形成することが可能であり、(単一スタックで可能な400−2000nmまでの)非常に広い波長範囲にわたって極めて十分に機能する可能性がある。実際には、積層中に生じる各フィルムの光軸および位相差の小さな変動によって性能が大幅に劣化し得る。アクロマチックなレスポンスには、多偏光変換後に全ての波長がポアンカレ球の同一の端点にマッピングされることが要求される。位相差素子に対しては、化合物光軸沿いに光が導入される際に全ての波長が入力偏光にマッピングされることが光軸安定性によってさらに要求される。これらの要求の感度は相当なものであり、積層工程によるエラーのマージンはほとんどない。高剛性の基板材料を用いて、性能の劣化が非常に小さいままで化学接合工程を行うことができる。ポリカーボネート系アクロマチック要素に比べて、理論性能と実測性能との間のギャップは、基礎フィルムの延伸されたままの特性によってかなり近似的に予測される。
【0044】
補償素子を構成するための上述の工程とは別に、図2および3には、本明細書に開示される通りに構成された補償素子を組み込んだLCoS表示システムの例示的な実施例が図示されている。両方の図示されたシステムにおいて、補償素子200は、LCoSパネル202に近接して配置されてパネル202上に照らされてそこから反射される光204を補償する。光は光源210によって生成される。さらに具体的には、図2には、マクネイルPBS206を用いたLCoS表示システムが図示される一方、図3には、ワイヤグリッド(wire−grid)偏光素子208によって生じた偏光歪を低減するための開示の補償素子が図示される。
【0045】
本明細書で開示される原則に従って構成された様々な実施例が上述されたが、それらは例としてのみ示されたものであって限定ではないことを理解すべきである。したがって、単数または複数の本発明の幅および範囲は、上述の例示的な実施例のいずれかによって限定されるものではなく、本開示から発行される請求項およびその均等物のいずれかに従ってのみ定義されるべきである。さらに、上記利点および特徴は、記載の実施例において与えられるが、かかる発行された請求項を上記利点のいずれかまたは全てを達成する工程および構造に適用することを限定するものではない。
【0046】
また、本明細書の項目の見出しは、米国特許法施行規則第1.77条(37CFR1.77)の推奨に整合させるため、または構成上の手がかりとして与えられる。これらの見出しは、本開示から発行される任意の請求項に規定される単数または複数の発明を限定したり、特徴づけたりするものではない。具体的におよび例としては、見出しは「技術分野」を言及していても、かかる請求項は、いわゆる技術分野を記載するために本見出しのもとで選択された文言によって限定されるべきではない。さらに、「背景技術」の技術の記載は、技術が、本開示の単数または複数の任意の発明に対する先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。「発明の開示」も、発行の請求項に規定される単数または複数の発明の特徴としてみなされるべきではない。さらに、本開示における、単数形の「発明」へのいずれの言及も、本開示には単一の新規な点しかないことを主張するために用いられるべきではない。多数の発明は、本開示から発行される多数の請求項の限定によって規定され、したがって、かかる請求項は、それによって保護される単数または複数の発明およびその均等物を規定する。全ての実施例において、かかる請求項の範囲は、本開示に鑑みてそれ自体の利点によって考慮され、本明細書に規定される見出しによって制限されるべきではない。
【0047】
本発明に係る具体化は、特定の実施例に関連して記載されている。これらの実施例は図示を意図したものであって、限定を意図したものではない。多くの変形例、修正例、追加例および改善例が可能である。このため、本明細書で単一の例として記載される要素に対しては複数の例が与えられてよい。様々な要素と動作との境界は、特定の構成に関連して図示される。機能のその他の割り当てが想定されて、以下の請求の範囲内に含まれる。例示的な構成において別個の要素として示された構造および機能は、組み合わせられた構造または要素として実施してよい。これらおよびその他の変形例、修正例、追加例および改善例は、以下の請求項に規定される発明の範囲内に含まれてよい。
【0048】
本明細書で記載される補償スタックは、固体結晶、延伸ポリマー、液晶のような任意の好適な材料、または別の材料から作られてよい。液晶ポリマーは、2重ホモジニアス配向(dual homogeneous alignment)、スプレイ配向(ホモジニアス/ホメオトロピック)または任意の好適な配向を有し得る。補償位相差スタックは、投影表示に対する色管理に関連して記載されるが、いくつかの用途において用いることができる。これはとりわけ、イメージキャプチャまたは放射分析のための色分解、および近赤外線光通信を含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施例およびその利点が詳細に記載されてきたが、変更、代替、変換、修正、変形、並べ替えおよび改変が、添付の請求項に規定される本発明の教示、趣旨および発明の範囲から逸脱せずになされてよいことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】開示の原則に従って構成された補償素子装置の一つの実施例を示す。
【図2】、本明細書で開示される補償素子に対する環境を与えるLCoS表示システムの一部の一つの実施例を示す。
【図3】本明細書で開示されるタイプの補償素子を組み込んだLCoS表示システムの一部の別の実施例を示す。
【図4】開示の原則に従って構成された多層位相差フィルムの一つの実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学要素であって、
低弾性有機層と、
少なくとも部分的に前記低弾性有機層を取り囲む封止要素であって、それ自体または別の要素によって前記有機層を前記光学要素を取り囲む環境から封止するべく動作可能な封止要素と、
を含む光学要素。
【請求項2】
前記封止要素は、前記有機層を実質的に封止するべく別の要素とともに動作可能であり、前記別の要素は、前記有機層に隣接した基板層であり、前記封止要素は前記基板に対して前記有機層を実質的に封止する、請求項1に記載の光学要素。
【請求項3】
前記基板層は、溶融シリカ、ボロフロートガラス、セラミックガラスおよび光学的に透明なガラスからなる群から選択される、請求項2に記載の光学要素。
【請求項4】
前記封止要素は、前記別の要素とともに動作可能であり、前記別の要素は、第1基板層と第2基板層とを前記有機層に隣接して、かつ、前記有機層の対向する両側に含み、前記封止要素は、前記第1基板層と前記第2基板層とをともに実質的に封止する縁部シールであり、前記封止要素ならびに前記第1基板層および前記第2基板層は前記有機層を実質的に囲んで封止する、請求項1に記載の光学要素。
【請求項5】
前記有機層は分子配向有機層である、請求項1に記載の光学要素。
【請求項6】
前記有機層は単層を含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項7】
前記有機層は修飾ポリオレフィンフィルムを含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項8】
前記有機層は2軸延伸される、請求項1に記載の光学要素。
【請求項9】
前記有機層は2つ以上の層を含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項10】
前記有機層は1対のクロス1軸分子配向層を含む、請求項9に記載の光学要素。
【請求項11】
前記封止要素は、光学的に透明なシーラント、アクリルシーラントおよび紫外線硬化アクリルシーラントからなる群から選択される材料のバリア層である、請求項1に記載の光学要素。
【請求項12】
前記基板は低複屈折率ポリマーである、請求項2に記載の光学要素。
【請求項13】
前記基板は、入力光の偏光方向に対して直線をなすかまたは対角をなして配向する延伸方向を有する配向ポリマー基板である、請求項2に記載の光学要素。
【請求項14】
前記基板上に形成された付加的バリア層をさらに含み、前記付加的バリア層は、前記光学要素を取り囲む環境に対して付加的な封止を与えること、前記基板を硬化すること、前記基板を入射光に対して非反射的にすること、および前記光学要素を透過する光の光学特性を改善することからなる群から選択される少なくとも一つの付加的機能を果たすべく動作可能である、請求項2に記載の光学要素。
【請求項15】
請求項1に記載の封止要素として機能すること、前記光学要素を取り囲む環境に対して付加的な封止を与えること、前記光学要素を硬化すること、前記基板を入射光に対して非反射的にすること、および前記光学要素を透過する光の光学特性を改善することからなる群から選択される少なくとも一つの付加的機能を果たすべく動作可能であるバリア層をさらに含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項16】
前記封止要素は、前記有機層に溶接された付加的有機層を含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項17】
前記付加的有機層には偏光機能がなく、前記低弾性有機層は偏光制御機能を有する、請求項16に記載の光学要素。
【請求項18】
前記低弾性有機層の前記偏光制御機能は、偏光回転、偏光遅延ならびに波長選択偏光回転および/または遅延からなる群から選択される、請求項17に記載の光学要素。
【請求項19】
前記封止要素は、前記低弾性有機層上に形成されたバリア層である、請求項1に記載の光学要素。
【請求項20】
前記バリア層は、液状/真空コーティングによって形成される、請求項1に記載の光学要素。
【請求項21】
前記有機層の外側に形成された反射防止コーティングをさらに含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項22】
前記封止要素は、さらに反射防止コーティングとして機能する、請求項1に記載の光学要素。
【請求項23】
前記封止要素は、前記有機層にわたって少なくとも部分的に形成される接着剤を含む、請求項1に記載の光学要素。
【請求項24】
前記接着剤はモノマーを含む、請求項23に記載の光学要素。
【請求項25】
少なくとも3000時間の間にわたり、50Mluxの環境において、光軸安定性が<±0.1°および位相差安定性が<±0.5nmとなる、請求項1に記載の光学要素。
【請求項26】
光学要素であって、
基板層と、
前記基板層に隣接した低弾性分子配向層と、
少なくとも前記基板層に結合された封止要素であって、前記光学要素を取り囲む環境から前記低弾性分子配向層を実質的に封止するべく前記基板層とともに動作可能である封止要素と、
を含む光学要素。
【請求項27】
前記封止要素は、実質的に前記分子配向層と別の基板層との間にあるバリア層である、請求項26に記載の光学要素。
【請求項28】
前記分子配向層に隣接した別の基板層をさらに含み、前記封止要素は、前記基板層と前記別の基板層とをともに実質的に封止する縁部シールであり、前記封止要素および前記複数の基板層は、前記分子配向層を実質的に囲んで封止する、請求項26に記載の光学要素。
【請求項29】
前記分子配向層は多層を含む、請求項26に記載の光学要素。
【請求項30】
前記分子配向層は修飾ポリオレフィンフィルムである、請求項26に記載の光学要素。
【請求項31】
投影光経路を有する光学投影システムであって、
投影光を与えるべく前記投影光経路の始点に配置された光源と、
実質的に前記光学投影システムから光を投影するべく前記投影光経路の終点に配置された投影レンズと、
前記投影光経路に配置されて前記投影光にそこを透過させる低弾性有機層を有する光学要素であって、前記光学要素を取り囲む環境から前記低弾性有機層を封止するための封止要素を含む光学要素と、
を含む光学投影システム。
【請求項32】
前記光学要素は基板層をさらに含み、前記封止要素は、前記有機層に隣接した基板層に対して前記有機層を実質的に封止するべく動作可能である、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項33】
前記基板層は、溶融シリカ、ボロフロートガラス、セラミックガラスおよび光学的に透明なガラスからなる群から選択される、請求項32に記載の光学投影システム。
【請求項34】
前記光学要素は、第1基板層と第2基板層とをさらに含み、前記光学封止要素は、前記有機層のいずれかの側面上で前記第1基板層と前記第2基板層との間において前記有機層を実質的に封止するべく動作可能であり、前記封止要素ならびに前記第1基板層および前記第2基板層は、前記有機層を実質的に囲んで封止する、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項35】
前記有機層は分子配向有機層である、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項36】
前記有機層は単層を含む、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項37】
前記有機層は修飾ポリオレフィンフィルムを含む、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項38】
前記有機層は2軸延伸される、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項39】
前記有機層は2つ以上の層を含む、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項40】
前記有機層は、1対のクロス1軸分子配向層を含む、請求項39に記載の光学投影システム。
【請求項41】
前記封止要素は、光学的に透明なシーラント、アクリルシーラントおよび紫外線硬化アクリルシーラントからなる群から選択される材料のバリア層である、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項42】
前記基板は低複屈折率ポリマーである、請求項33に記載の光学投影システム。
【請求項43】
前記基板は、入力光の偏光方向に対して直線をなすかまたは対角をなして配向する延伸方向を有する配向ポリマー基板である、請求項32に記載の光学投影システム。
【請求項44】
前記光学要素は、前記基板上に形成された付加的バリア層をさらに含み、前記付加的バリア層は、前記光学要素を取り囲む環境に対して付加的な封止を与えること、前記基板を硬化すること、前記基板を入射光に対して非反射的にすること、および前記光学要素を透過する光の光学特性を改善することからなる群から選択される少なくとも一つの付加的機能を果たすべく動作可能である、請求項32に記載の光学投影システム。
【請求項45】
前記光学要素は付加的バリア層をさらに含み、前記付加的バリア層はさらに、請求項31に記載の封止要素として機能すること、前記光学要素を取り囲む環境に対して付加的な封止を与えること、前記光学要素を硬化すること、前記基板を入射光に対して非反射的にすること、および前記光学要素を透過する光の光学特性を改善することからなる群から選択される少なくとも一つの付加的機能を果たすべく動作可能である、請求項32に記載の光学投影システム。
【請求項46】
前記封止要素は、前記有機層に溶接された付加的有機層を含む、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項47】
前記付加的有機層には偏光機能がなく、前記低弾性有機層は偏光制御機能を有する、請求項46に記載の光学投影システム。
【請求項48】
前記低弾性有機層の前記偏光制御機能は、偏光回転、偏光遅延ならびに波長選択偏光回転および/または遅延からなる群から選択される、請求項47に記載の光学投影システム。
【請求項49】
前記封止要素は、前記低弾性有機層上に形成されたバリア層である、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項50】
前記バリア層は、液状/真空コーティングによって形成される、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項51】
前記光学要素は、前記有機層の外側に形成された反射防止コーティングをさらに含む、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項52】
前記封止要素は、さらに反射防止コーティングとして機能する、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項53】
前記封止要素は、前記有機層にわたって少なくとも部分的に形成される接着剤を含む、請求項31に記載の光学投影システム。
【請求項54】
前記接着剤はモノマーを含む、請求項53に記載の光学投影システム。
【請求項55】
前記光学要素は、少なくとも3000時間の間にわたり、50Mluxの環境において、光軸安定性が<±0.1°および位相差安定性が<±0.5nmとなる、請求項1に記載の光学投影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−500596(P2008−500596A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517572(P2007−517572)
【出願日】平成17年5月22日(2005.5.22)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051662
【国際公開番号】WO2005/116737
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506380754)カラーリンク・インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】