説明

低弾性率、耐湿性シリコーンRTV組成物およびこの製造方法

本発明は、低い弾性率および高い伸びに加えて、耐熱性および耐湿性に優れたシーラントとして特に有用な1成分シリコーン組成物、およびこれらのシーラントを製造する方法を提供する。特に、本発明は、鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサン、高分子量シリコーン・ゴムおよび硬化システムを含む組成物を提供する。この組成物は、例えば、自動車エアーバッグの縫い目をシールするために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い弾性率および高い伸びに加えて、耐熱性および耐湿性に優れたシリコーンシーラントを提供する。特に、本発明は、鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサン、高分子量シリコーン・ゴムおよび硬化システムを含む組成物、およびこれらの組成物を製造する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、建設、高速道路、電子装置および包装組立、電気器具組立および民生用を含めて幅広い範囲の用途に使われる。シリコーン組成物は、シーラント、絶縁保護コーティング、埋込み用樹脂などとして使われる。典型的には、こうした用途で使われるシリコーン組成物は、身近の用途で必要とされる強度と強靱性を備えるように調節されてきた。こうした特性に加えて、硬化速度が速く、製品が安定であることがしばしば望まれる。
【0003】
いくつかの用途では、低い弾性率および高い伸びに加えて、耐熱性および耐湿性に優れたシーラントを使うことが望ましい。以前の1成分シリコーンシーラントは、そのような特性を提供することはなかった。例えば、自動車エアーバッグの縫い目をシールする場合、低い弾性率および高い伸びの組成物を使うことが望ましく、高い展開圧力に対抗でき、それによりエアーバッグの縫い目が完全な状態を維持することができる。従って、エアーバッグを展開した後、より長く膨張したままにすることができる。その上、エアーバッグを自動車のルーフラインで長期間保存した後でも規格通りに機能できるような、耐熱性および耐湿性の組成物を使うことが望ましい。さらに、また、シーラントが迅速に硬化することが望ましく、それによりシーラントを塗布した直後にエアーバッグを縫い合わせることが可能になる。
【0004】
従って、迅速に硬化する組成物を製造することが望ましく、この組成物はシーラントとして有用であり、低い弾性率および高い伸びに加えて、耐熱性および耐湿性を示すものである。さらに、1成分系のそのような組成物を提供することが望ましい。2成分シーラントは、例えば、使用中の規定割合外の性能、ディスペンサーのノズル内での硬化、および高い装置コストなどの欠点がある。本発明は、従って、新規の硬化性組成物を提供し、これらは1成分シーラントとして使用でき、自動車および他の用途で有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬化性シリコーン組成物の種類を提供し、これらはシーラントとして役に立つことができる。この硬化組成物は、低い弾性率および高い伸びに加えて、耐熱性および耐湿性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様では、a)式III:
【0007】
【化1】

(式中、Rは、tert−ブチル、アルキル、アリル、フェニル、アルケニルおよびアリールから選択され;R、R10、R11およびR12は、独立して、C1−4アルキルから選択され;R13は、アルコキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシイミノおよびアミノから選択され;R14は、アルケニルおよびアルキニルから選択され;mは、10−2000であり;yは、1−50であり;zは、0−2である)で表される構造を有する鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサン、b)高分子量シリコーン・ゴム;およびc)硬化システム、を含む組成物を提供する。
【0008】
本発明の別の態様では、a)少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサン;b)ジ(tert−ブトキシ)ジアセトキシシラン;c)ビニルトリオキシイミノシラン;d)トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートを含む第1の接着促進剤;e)γ−ユレイドプロピルトリメトキシシランを含む第2の接着促進剤;およびf)触媒、の反応生成物を含み、ここで前記第1の接着促進剤は前記第2の接着促進剤と約3:1の比で存在する、組成物を提供する。
【0009】
本発明の別の態様に従って、次のステップ:a)少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジメチルシロキサンと、以下に表される構造:
【0010】
【化2】

(式中、Rは、tert−ブチル、アルキル、アリル、フェニル、アルケニルおよびアリールから選択され;Rは、アルコキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシイミノおよびアミノから選択され;およびxは、1−2である)を有するシランとを触媒の存在下で反応させるステップ;b)式II:
【0011】
【化3】

(式中、R、R10、R11およびR12は、独立して、C1−4アルキルから選択され、mは、10−2000およびyは、1−50である)で表される構造を有するポリオルガノシロキサンをイン・サイチューで形成するステップ;c)式IIで表されるポリオルガノシロキサンと、アルコキシシラン;アセトキシシラン;エノキシシラン;オキシイミノシラン;アミノシラン;およびこれらの組合せから選択される反応性シランとを反応させるステップ;d)式III:
【0012】
【化4】

(式中、R13は、アルコキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシイミノおよびアミノから選択され、R14は、アルケニルおよびアルキニルから選択され、およびzは0−2である)で表される構造を有する鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサンをイン・サイチュー形成するステップ;およびe)高分子量シリコーン・ゴムおよび硬化システムを添加して硬化性組成物を形成するステップ、を含む硬化性組成物を製造する方法が提供される。
【0013】
さらに本発明の別の態様では、以下のステップ:a)i)上記で定義された式IIIで表される構造を有する鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサン;ii)高分子量シリコーン・ゴム;およびiii)硬化システム、を含む組成物を提供するステップ;b)膨張可能な自動車エアーバッグの基体に前記組成物を適用するステップ;c)前記基体を環境条件下で湿気に暴露するステップ;およびd)基体を縫い合わせてシールされた自動車エアーバッグを形成するステップ、を含む自動車エアーバッグの縫い目をシールする方法を提供する。
【0014】
さらに本発明の別の態様では、a)i)上記で定義された式IIIで表される構造を有する鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサン;およびii)高分子量シリコーン・ゴム、を含む硬化性組成物;b)水;およびc)湿気硬化触媒、の反応生成物を含む組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、1成分シリコーン組成物を提供し、これは迅速に硬化して、低い弾性率で耐熱性および耐湿性に優れた反応生成物を与える。この組成物は、硬化性鎖延長ポリオルガノシロキサンを含み、湿気硬化基、加えて高分子量シリコーン・ゴムおよび硬化システムを含む。
【0016】
これらの発明の組成物は、例えば、自動車エアーバッグの縫い目のためのシーラント、加えて電子的、自動車の、および消費市場における他の利用などの種々の最終使用用途において有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で用いる場合、用語「硬化する」または「硬化」は、材料の状態、条件、および/または構造における変化を意味し、これらの変化は、必ずしもそうではないが、通常、例えば、時間、温度、湿気、放射線、硬化触媒または加速剤の材料の存在およびその量など、少なくとも1つの変数によって誘発される。この用語は、部分的に加えて完結的な硬化までに及んでいる。
【0018】
本発明の組成物は、下記の一般式III:
【0019】
【化5】

で表される鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサンを含む。
【0020】
式IIIにおいて、Rは、好ましくは、tert−ブチル、アルキル、アリル、フェニル、アルケニルおよびアリールから選択され、R、R10、R11およびR12は、独立して、C1−4アルキルから選択され、R13は、アルコキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシイミノおよびアミノから選択され、R14は、例えば、アルケニルまたはアルキニルのような不飽和炭化水素であり、mは、10−2000であり、yは、1−50であり、およびzは、0−2である。
【0021】
より具体的には、いくつかの態様では、鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサンは、一般式III(a):
【0022】
【化6】

で表すことができる。
【0023】
式III(a)で、変数は、上記の式IIIで定義されるものと同じであることが好ましい。
【0024】
式IIIおよび式III(a)で表される硬化性ポリオルガノシロキサンは、反応性シランと下記の一般式II:
【0025】
【化7】

で表される鎖延長ポリオルガノシロキサンとを反応させた生成物として形成することができる。
【0026】
式IIにおいて、変数は、上記の式IIIで定義されるものと同じであることが好ましい。
【0027】
反応性シランは、式IIで表されるポリオルガノシロキサンを末端封止する役割を果たす。反応性シランは、湿気硬化基を有する任意のシランであってもよい。適したシランの非限定的な例としては、アルコキシシラン、アセトキシシラン、エノキシシラン、オキシイミノシラン、アミノシランおよびこれらの組合せが挙げられる。また、シランは、例えば、アルケニルまたはアルキニル基のような不飽和炭化水素基を含むことができる。特に適した反応性シランとしては、例えば、ビニルトリオキシイミノシランが含まれる。
【0028】
式IIで表されるポリオルガノシロキサンを、少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンと下記の一般式I:
【0029】
【化8】

で表されるシランとの反応生成物として形成することができる。
【0030】
式Iで好ましいRは、アルコキシ、アルケノキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシモおよびアルキルから選択され、xは、1−2であり、Rは、上記式IIIで定義されものと同じである。
【0031】
式Iで表されるシランは、鎖延長剤としての役割を果たす。従って、式Iで表されるシランは、一般的に、ヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンを鎖延長するのに十分な量で組成物中に存在する。例えば、ヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンに対する式Iのシランの比は、約1:10から約0.9:1、より具体的には約1:5であってもよい。
【0032】
式Iで表されるシランは、組成物の重量基準で約0.2%から約2%の量で、より具体的には、約0.5%から約1.5%の量で存在できる。
【0033】
ヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンは、組成物の重量基準で、約20%から約70%の量で、より具体的には、約55%の量で存在することができる。
【0034】
式Iで表される適したシランの非限定的な例としては、ジ−(tertーブトキシ)ジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0035】
本発明で使うのに適したヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンは、下記の一般式IV:
【0036】
【化9】

で表されるものを含む。
【0037】
上記式IVにおいて、R、R、R、R、RおよびRは、好ましくは、独立して、C1−4アルキルから選択される。
【0038】
式Iで表される化合物との反応に適した、商業的入手できるヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンの例としては、式V:
【0039】
【化10】

で表されるポリジメチルシロキサン(「PDMS」)である。
【0040】
繰返し単位の数、「m」は、分子量、従って本発明の組成物の粘度を決定する際に重要な役割を果たす。特に、α有機官能性末端の最終反応生成物がしばしば、実質的に、シラノール末端の最終反応物と同じ粘度を有する。従って、mは、例えば、約10から約2000の整数であってもよい。特定の製品用途によって粘度を容易に選ぶことができる。そのようなヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンの粘度は、約10cpsから約300,0000cpsの範囲にあることが多い。本発明で使われるこれらのシロキサン粘度範囲は、好ましくは、約1000cpsから約300,000cpsであってもよい。
【0041】
本発明に従って、式IIで表される鎖延長ポリオルガノシロキサンを生成する反応、加えて、式IIIまたは式III(a)で表される硬化性ポリオルガノシロキサンを生成する反応は、本発明の組成物においてイン・サイチューで進行する。ヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンおよび上記シランが、触媒の存在下で一度混合されると、この反応は、ヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンを鎖延長し、式IIIまたは式III(a)で表される硬化性鎖延長ポリオルガノシロキサンを形成することによって進行すると考えられる。
【0042】
より具体的には、式Iで表されるシランは、触媒の存在下、ヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンと反応してイン・サイチューで式IIのシロキサンを形成する。式Iで表されるシランは、ヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンを鎖延長する役割を果たす。湿気硬化基を有する反応性シランは、式IIで表される鎖延長ポリオルガノシロキサンを末端封止して、それによりイン・サイチューで式IIIまたは式III(a)で表されるシロキサンを形成する役割を果たす。
【0043】
有機リチウム化合物は、この反応に特に適した触媒である。適した有機リチウム化合物の非限定的な例としては、メチル リチウム;n−ブチルリチウム;sec−ブチルリチウム;t−ブチルリチウム;n−ヘキシルリチウム;2−エチルヘキシルリチウム;n−オクチルリチウム;フェニルリチウム;ビニルリチウム;リチウムフェニルアセチリド;リチウム(トリメチルシリル)アセチリド;リチウムジメチルアミド;リチウムジエチルアミド;リチウムジイソプロピルアミド;リチウムジシクロヘキシルアミド;リチウムシラノレート;リチウムシロキサノレート;およびこれらの組合せが挙げられる。当業者に公知である他の触媒は、本発明の反応性ポリオルガノシロキサンを形成するのに役立つことができるが、有機リチウム化合物が好ましく、これらが関係する利点が米国特許第5,300,608号、同5,498,642号、同5,516,812号および同5,663,2695号各公報(Henkel社に譲渡)に記載され、これらの公報は全体が参考文献として本明細書に組み込まれる。
【0044】
また、本発明の組成物は、高分子量シリコーン・ゴムおよび硬化システムを含む。この高分子量シリコーン・ゴムの分子量は、約200,000から約500,000であってもよい。例えば、このゴムは高分子量ポリジメチルシロキサン・ゴムであってもよく、分子量は約200,000から約500,000であてもよい。
【0045】
本発明の組成物で使用される硬化システムは、限定されないが、本発明の組成物の硬化を加速または促進する役割を果たす触媒または他の試剤を含む。湿気硬化基が存在するので、式IIIまたは式III(a)で表される化合物は、湿気硬化機構によって硬化する性能を有している。従って、本発明の組成物では、この硬化システムが湿気硬化触媒、または縮合触媒を含むことができる。任意の適した湿気硬化触媒として、例えば、有機チタン化合物、有機錫化合物、有機アミン、これらの組合せ、または任意の他の公知の触媒を、湿気硬化シリコーンのために使うことができる。
【0046】
より具体的には、適した湿気硬化触媒の非限定的な例として、例えば、ジブチルスズジラウリル酸塩などの錫IVカルボン酸塩、例えば、テトラブチルチタン酸塩のような有機チタン化合物、およびこれらの塩でキレート剤が例えば、アセト酢酸エステルおよびβ−ジケトンである部分的キレート誘導体が挙げられる。好ましくは、チタンアルコキシド、ジブチル錫ラウリル酸塩またはアルキル錫カルボン酸塩が使われる。さらに、有機アミン、例えば、テトラメチルグアニジンアミン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)およびトリエチルアミンなどを使用することができる。
【0047】
湿気硬化触媒は、組成物の重量を基準として、約10%またはそれより少ない量、より好ましくは、約0.01%から約1.0%の量、最も好ましくは、約0.05%から約0.5%の量で存在してもよい。
【0048】
本発明の組成物において、フィラーが、任意に、含まれていてもよい。一般的に、任意の鉱物、炭素質、ガラス、セラミックフィラーを使うことができ、非限定的な例としては、ヒュームド・シリカ;粘土;金属炭酸塩;硫酸塩;リン酸塩;カーボンブラック;金属酸化物;二酸化チタン;酸化鉄;酸化アルミニウム;酸化亜鉛;石英;ジルコニウムケイ酸塩;ジプサム;窒化ケイ素;窒化ホウ素;ゼオライト;ガラス;プラスチック粉末;およびこれらの組合せが挙げられる。このフィラーは、硬化性組成物中の任意の濃度で、組成物に存在することができる。一般的に、組成物の重量を基準にして、約5%から約80%の濃度で十分である。しかしながら、より好ましい範囲は、20から60%であると考えられる。
【0049】
強化シリカは、より好ましいフィラーに含まれる。このシリカはヒュームド・シリカであってもよく、補助剤で未処理(親水性)または疎水性にするために処理されてもよい。このヒュームド・シリカは、任意の実質的な強化効果を得るために、組成物の重量を基準にして、少なくとも約5%のレベルで存在しなければならない。最適なシリカの濃度は、特定のシリカの特性によって変化するが、一般に、最高の強化効果に達する前に、シリカのチキソトロピー効果で非実際的な粘度の高い組成物が生成することが示されてきた。疎水性シリカのほうが低いチクソ比を示する傾向があり、従って、より多くの量が含まれた所望の濃度の組成物を得ることができる。従って、シリカ濃度の選択に当たっては、所望する強化と実用粘度とをバランスさせなければならない。ヘキサメチルジシラザンで処理したシリカは、特に好ましい(HDK2000
by Wacker−Chemie、Burghausen、Germany)。
【0050】
また、接着促進剤は、硬化性組成物に含まれていてもよい。接着促進剤は、特定の基体(すなわち、金属、ガラス、プラスチック、セラミック、およびこれらのブレンド)に対する硬化性組成物の接着特性を増強する役割を果たす。上記の目的で任意の適した接着促進剤を、所定の用途で使われる特定の基体の成分に応じて採用することができる。様々な有機シラン化合物が好ましいものとされてもよい。
【0051】
適した有機シラン接着促進剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、1,3,5−トリス(トリメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリメトキシシラン、トリス−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート(General・Electric社から市販の商品名SILQUEST A−LINK597)、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0052】
接着促進剤を採用した場合、組成物の重量を基準として、約0.1%から約10%の量で使うことができる。好ましくは、接着促進剤は、組成物の重量を基準として、約0.2%から約2.0%の量で使う。
【0053】
いくつかの態様では、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートおよびγ−ユレイドプロピルトリメトキシシランが接着促進剤として約3:1の比で含まれてもよい。
【0054】
また、組成物は任意の数の任意の添加物、例えば、顔料または色素、可塑剤、アルコール捕捉剤、安定剤、抗酸化剤、難燃剤、UV安定剤、殺生物剤、殺菌剤、熱安定剤、レオロジー添加剤、粘着付与剤など、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。
【0055】
また、本発明は、式IIIまたは式III(a)で表される硬化性ポリオルガノシロキサンおよび前記の高分子量シリコーン・ゴムを含む硬化性組成物、水および湿気硬化触媒の反応生成物を含む組成物に関係している。この反応生成物は、例えば、自動車エアーバッグの縫い目のためのシールを提供することができる。
【0056】
また、本発明は、本発明の硬化性組成物を製造する方法を提供する。これに基づいて、前記の式Iで表されるシランと、前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンとを反応させる。式Iで表されるシランは、ヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンを鎖延長してイン・サイチューで反応生成物、すなわち、式IIで表されるポリオルガノシロキサンを形成する。
【0057】
好ましくは、成分を触媒の存在下で反応させる。この触媒は、前記のような有機リチウム化合物であってもよい。
【0058】
式IIで表されるポリオルガノシロキサンと、前記の反応性シランとを反応させる。この反応性シランは、湿気硬化基を含む。この反応性シランは、式IIで表される鎖延長ポリオルガノシロキサンを末端封止してイン・サイチューで反応生成物、すなわち、式IIIまたは式III(a)で表される硬化性ポリオルガノシロキサンを形成する。
【0059】
この反応を、約0℃から約100℃、好ましくは、約50から75℃の反応温度で実施することができる。この反応を、シロキサンを鎖延長し、封止するのに適した時間、実施することができる。この時間は、何よりも、反応混合物の温度に依存するが、通常、約1時間以内と考えられる。
【0060】
高分子量シリコーン・ゴムおよび硬化システムを添加して、硬化性組成物を形成することができる。
【0061】
本発明の他の方法は、自動車エアーバッグの縫い目のシールに関係する。この方法に基づいて、前記のように本発明の硬化性組成物を提供することができる。組成物を、膨張可能な自動車エアーバッグの基体に適用することができる。続いて、この基体を環境条件下で湿気に暴露し、次いで縫い合わせてシールされた自動車エアーバッグを形成することができる。
【実施例】
【0062】
<例1>
硬化性組成物を、本発明に基づいて製造した。下の表1に記載された成分を、表示された量で混合して硬化性組成物を提供した。
【0063】
【表1】

【0064】
2種類のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを組合せ、動的真空下で5分間混合した。ジ(t−ブトキシ)ジアセトキシシランを添加し、動的真空下で5分間混合した。ブチルリチウム触媒を添加し、動的真空下で30分間混合した。次いで、25mlの破砕したドライアイスを混合物に添加した。動的真空下で10分間混合を続けた。ビニルトリス(メチルエチルケトキサミノ)シランを添加し、動的真空下で10分間混合した。ベンガラ、炭酸カルシウムフィラー、テフロン粉末およびヒュームド無定形シリカを添加し、動的真空下で溶融混合するまで混合した。次いで、この混合物を、高せん断によって動的真空下で20分間混合した。トリメチル末端ポリジメチルシロキサンおよびシリル化シリカを添加し、動的真空下で全体が濡れるまで混合した。次に、この混合物を高せん断によって動的真空下で20分間混合した。次いで、この混合物を、必要に応じて冷却してもよい。それから、シラン接着促進剤(トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートおよびγ−ユレイドプロピルトリメトキシシラン)および錫カルボン酸塩触媒を添加し、冷却しながら、動的真空下で15分間混合した。
【0065】
この組成物を環境湿気硬化条件に暴露し、以下の特性を測定した:スキンオーバータイム;押出し速度;硬度;引張り強度;伸び;引き裂き強度(Die Cを用いてASTM D624に基づいて測定);および剥離強度(ASTM1876に基づいて測定)。剥離試験は、一般的に、結合した表面を引き離すのに必要な力を測定するためである。この実施例においては、自動車エアーバッグ構造試料のシリコーン被覆面を使って、剥離強度を測定した。結果を下の表2に載せる。
【0066】
【表2】

【0067】
これらの結果は、組成物が高い伸びと良好な耐引裂き性を有することを証明している。剥離強度の結果は、さらに、組成物が耐湿性であることを示している。
【0068】
<例2>
硬化性組成物を、本発明に基づいて製造した。下の表3に示す成分を表示された量で組合せ、硬化性組成物を提供した。
【0069】
【表3】

【0070】
表3に示された成分を、実施例1に記載した方法で組合せた。高分子量シリコーン・ゴムをトリメチル末端ポリジメチルシロキサンおよびシリル化シリカとともに添加した。
【0071】
組成物を環境湿気硬化条件に暴露し、実施例1の記載と同じ特性について試験した。結果を、下の表4に載せる。
【0072】
【表4】

【0073】
これらの結果は、組成物が高い伸びと良好な耐引裂き性を有することを証明する。剥離強度の結果は、さらに、組成物が耐湿性であることを示している。
【0074】
<例3>
硬化性組成物を、本発明に基づいて製造した。下の表5に示す成分を表示された量で組合せ、硬化性組成物を供した。
【0075】
【表5】

【0076】
ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンおよびジ(t−ブトキシ)ジアセトキシシランを、動的真空下で30分間混合した。10mlの破砕したドライアイスをこの混合物に添加した。動的真空下で20分間混合を継続した。ビニルトリス(メチルエチルケトキサミノ)シランを添加し、動的真空下で15分間混合した。ベンガラ、沈殿炭酸カルシウムおよびヒュームド無定形シリカを添加し、低いせん断で溶融混合物になるまで混合した。次いで、この混合物を高いせん断でもって動的真空下で20分間混合した。トリメチル末端ポリジメチルシロキサン、ヒュームド・シリカおよび高分子量シリコーン・ゴムを添加し、低いせん断で溶融するまで混合した。次いで、この混合物を、冷却しながら高いせん断でもって動的真空下で20分間混合した。次にシラン接着促進剤(トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートおよびγ−ユレイドプロピルトリメトキシシラン)および錫カルボン酸塩触媒を添加し、冷却しながら中間のせん断でもって動的真空下で15分間混合した。
【0077】
組成物を環境湿気硬化条件に暴露し、実施例1の記載と同じ特性について試験した。結果を、下の表6に載せる。
【0078】
【表6】

【0079】
これらの結果は、組成物が高い伸びと良好な耐引裂き性を有することを証明する。剥離強度の結果は、さらに、組成物が耐湿性であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式III:
【化1】

(式中、Rは、tert−ブチル、アルキル、アリル、フェニル、アルケニルおよびアリールから選択され;R、R10、R11およびR12は、独立して、C1−4アルキルから選択され;R13は、アルコキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシイミノおよびアミノから選択され;R14は、アルケニルおよびアルキニルから選択され;mは、10−2000であり;yは、1−50であり;zは、0−2である)で表される構造を含む鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサン;b)高分子量シリコーン・ゴム;およびc)硬化システム、を含む組成物。
【請求項2】
前記鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサンが、式III(a):
【化2】

で表される構造を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサンが、a)式II:
【化3】

で表される構造を含むポリオルガノシロキサンと、b)反応性シランとの反応生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記反応性シランが、アルコキシシラン;アセトキシシラン;エノキシシラン;オキシイミノシラン;アミノシラン;およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記反応性シランが、ビニルトリオキシイミノシランを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記式IIで表される化合物が、a)少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンと、b)式I:
【化4】

(式中、Rは、アルコキシ、アルケノキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシモおよびアルキルから選択され、xは、1−2である)で表される構造を含むシランとの反応生成物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンが、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記式Iで表されるシランが、ジ(tert−ブトキシ)ジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシランおよびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記式Iで表されるシランが、前記少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンを鎖延長するのに十分な量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記シランが、前記少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンと約1:10から約0.9:1の比で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサンが、前記組成物の重量を基準にして、約20%から約70%の量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記シランが、前記組成物の重量を基準にして、約0.2%から約2%の量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
前記高分子量シリコーン・ゴムが、高分子量ポリジメチルシロキサン・ゴムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記高分子量シリコーン・ゴムが、約200,000から約500,000の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記硬化システムが、有機チタン化合物;有機錫化合物;有機アミン;およびこれらの組合せからなる群より選択される湿気硬化触媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
さらに、接着促進剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記接着促進剤が、少なくとも1種の有機官能化シランを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記接着促進剤が、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、γ−ユレイドプロピルトリメトキシシランおよびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
さらに、少なくとも1種のフィラーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種のフィラーが、ヒュームド・シリカ;粘土;金属炭酸塩;硫酸塩;リン酸塩;カーボンブラック;金属酸化物;二酸化チタン;酸化鉄;酸化アルミニウム;酸化亜鉛;石英;ジルコニウムケイ酸塩;ジプサム;窒化ケイ素;窒化ホウ素;ゼオライト;ガラス;プラスチック粉末;およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
a)少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジオルガノシロキサン;b)ジ(tert−ブトキシ)ジアセトキシシラン;c)ビニルトリオキシイミノシラン;d)トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレートを含む第1接着促進剤;e)γ−ユレイドプロピルトリメトキシシランを含む第2接着促進剤;およびf)触媒、の反応生成物を含み、ここで、前記第1接着促進剤が前記第2接着促進剤と約3:1で存在する、組成物
【請求項22】
硬化性組成物を製造する方法であって、以下のステップ:a)触媒の存在下、少なくとも1種のヒドロキシ官能化ポリジメチルシロキサンと、以下の構造:
【化5】

(式中、Rは、tert−ブチル、アルキル、アリル、フェニル、アルケニルおよびアリールから選択され、Rは、アルコキシ、アルケノキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシモおよびアルキルから選択され、およびxは、1−2である)を含むシランとを反応させるステップ;b)式II:
【化6】

(式中、R、R10、R11およびR12は、独立して、C1−4アルキルから選択され、mは、10−2000およびyは、1−50である)で表される構造を含むポリオルガノシロキサンをイン・サイチューで形成するステップ;c)式IIで表されるものと、アルコキシシラン;アセトキシシラン;エノキシシラン;オキシイミノシラン;アミノシラン;およびこれらの組合せからなる群より選択される反応性シランとを反応させるステップ;d)式III:
【化7】

(式中、R13は、アルコキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシイミノおよびアミノから選択され、R14は、アルケニルおよびアルキニルから選択され、およびzは、0−2である)で表される鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサンをイン・サイチューで形成するステップ;およびe)高分子量シリコーン・ゴムおよび硬化システムを添加して硬化性組成物を形成するステップ、を含む方法。
【請求項23】
ステップ(a)の前記触媒が、有機リチウム化合物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
自動車エアーバッグの縫い目をシールする方法であって、以下のステップ:a)i)式III:
【化8】

(式中、Rは、tert−ブチル、アルキル、アリル、フェニル、アルケニルおよびアリールから選択され;R、R10、R11およびR12は、独立して、C1−4アルキルから選択され;R13は、アルコキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシイミノおよびアミノから選択され;R14は、アルケニルおよびアルキニルから選択され;mは、10−2000であり;yは、1−50であり;zは、0−2である)で表される構造を含む鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサン;ii)高分子量シリコーン・ゴム;およびiii)硬化システムを含む、組成物を提供するステップ;b)前記組成物を、膨張可能な自動車エアーバッグの基体に適用するステップ;c)前記基体を環境条件下で湿気に暴露するステップ;およびd)前記基体を縫い合わせてシールされた自動車エアーバッグを形成するステップ、を含む方法。
【請求項25】
a)i)式III:
【化9】

(式中、Rは、tert−ブチル、アルキル、アリル、フェニル、アルケニルおよびアリールから選択され;R、R10、R11およびR12は、独立して、C1−4アルキルから選択され;R13は、アルコキシ、アセトキシ、エノキシ、オキシイミノおよびアミノから選択され;R14は、アルケニルおよびアルキニルから選択され;mは、10−2000であり;yは、1−50であり;zは、0−2である)で表される構造を含む鎖延長硬化性ポリオルガノシロキサン;およびii)高分子量シリコーン・ゴムを含む硬化性組成物;b)水;およびc)湿気硬化触媒、の反応生成物を含む組成物。

【公表番号】特表2009−542848(P2009−542848A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518271(P2009−518271)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/015046
【国際公開番号】WO2008/005293
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】