説明

低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法

ポリオール架橋可能なフッ素ゴム、架橋促進剤、ポリオール系架橋剤、および水酸化カルシウムを含有し、かつ、上記架橋促進剤とポリオール系架橋剤との重量比が特定比率であるフッ素ゴム組成物を、特定条件で熱処理することにより、低摩擦性、低粘着性、低反発性等にバランス良く優れ、防振ゴム、ハードディスク装置用ストッパーに代表される衝撃吸収ストッパ部品等に好適に使用可能な低摩擦性フッ素ゴム架橋体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法に関し、さらに詳しくは、低摩擦性、低粘着性、低反発性等にバランス良く優れ、防振ゴム、衝撃吸収ストッパ部品、特にハードディスク(HDD)装置のヘッド制御部用の部品等の製造用として好適に使用可能な低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法並びに該方法にて得られた低摩擦性フッ素ゴム架橋体の用途に関する。
【背景技術】
従来よりフッ素ゴムは、他の汎用ゴムと同様にゴム本来の特性であるゴム弾性を有し、しかも他の汎用ゴムに比して耐熱性、耐油性、耐薬品性などの特性に優れているので、それらの特性を生かして、例えば、O−リング、パッキン、ガスケットなどに代表される漏洩防止用ゴム部品、防振ゴム、ベルト、ゴム引布などとして、あるいはプリンターヘッド、ハードディスク(HDD)装置のヘッド制御部などの衝撃吸収ストッパ部品、より具体的には、HDD装置内の読み取りアームの誤動作抑制等を目的として設置するストッパーなどとして様々な用途に用いられている。
このような従来のフッ素ゴムは、ゴム表面が粘着し、摩擦係数が大きいため、その製造に際して、架橋ゴム表面に粘着防止処理をする場合がある。しかし、処理コストが高くなるという問題がある。
また、従来のフッ素ゴムを、例えば、ハードディスク(HDD)の記憶装置のストッパーなどとして用いると、ストッパーとアームとの粘着による誤作動が問題になる。さらに、そのダンピング特性の温度依存性が大きく、高温での反発弾性率が高く、アームの振動を吸収することができないという問題がある。ここで、ストッパーとは、先端に記録読み取り用ヘッド部を有するアームが待機する際のヘッド部可動範囲の位置(アーム振れ位置)を規定し、さらに、アーム作動後、もしくは待機する際のアーム誤動作抑制のために衝撃吸収等を行うことを目的として設置される部分である。
また近年、このストッパーとしては、ゴム中に磁石を組み込み、磁力によりアームを固定するマグネットフォルダータイプのストッパー、あるいはアームの両側にストッパーを配置したクラッシュストップタイプのストッパーが増加してきている。これらストッパーの要求機能は、主に下記の3項目である。
(1)アーム衝突時の衝撃吸収性に優れること。
(2)アーム待機時に磁力等によりゴム/アーム端部(金属)が圧着されている必要があるが、粘着しないこと。
(3)クリーンであること。
しかし、従来のフッ素ゴムを用いた場合は、(1)衝撃吸収性および(3)クリーンである点では問題が少ないものの、粘着性が大きいため(2)で示す要求性能を満たすものがないという問題があった。
従来、この(2)で示す要求性能を満たす手法としては、例えば、特公平4−37094に示されるように、フッ素ゴムの架橋剤および架橋促進剤溶液をゴム表面に塗布含浸させ、再架橋することにより、表面の非粘着化を実施する方法が提案されている。しかし、この方法は溶剤を多量に使用するため、環境に悪影響を与えるため望ましくない。また、溶剤による浸透制御のため、ストッパーとして用いる場合には、製品間での性能のばらつきがあり、HDDの動作不良の原因となる製品もあった。
そこで、本発明者らは上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリオール架橋性フッ素ゴムと共に、特定の架橋剤、架橋促進剤、水酸化カルシウム、必要によりさらに酸化マグネシウムなどを含み、架橋促進剤と架橋剤との量比(R){架橋促進剤/架橋剤}が、0.9以上〜5以下の範囲となるように、架橋促進剤および架橋剤を含む未架橋フッ素ゴム組成物を、(必要によりポリオール架橋、予備成形等した後、)特定条件下で熱処理することにより、フッ素ゴム組成物中(あるいは予備成形物中)の架橋促進剤が表層に良好に移行して、ゴム表面の架橋密度を向上させ、ゴム表面を低摩擦、低粘着化でき、しかもフッ素ゴム成形体の反発弾性率を低くできることを見出した。
より具体的には、例えば、架橋促進剤としての有機第4級ホスホニウム塩と架橋剤の添加比(架橋促進剤/架橋剤)が、0.9以上〜5以下の範囲であれば大きい程、架橋促進剤のゴム表面への移行量が増え、ゴム成形体表面の架橋密度は上がる一方で、ゴム成形体全体としての架橋密度は下がり、反発弾性率を下げることが出来ることを本発明者らは見出した。
また、本発明者らは、フッ素ゴム組成物中の架橋促進剤としての有機第4級ホスホニウム塩等と架橋剤の添加比(架橋促進剤/架橋剤)をこのように従来のフッ素ゴム組成物よりも高くすることにより、架橋体の低摩擦性、低粘着特性および低反発特性の何れの特性もバランスよく向上させることができ、O−リング、パッキン、ガスケットなどに代表される漏洩防止用ゴム部品、防振ゴム、ベルト、ゴム引布、衝撃吸収ストッパ部品、例えばHDD装置内部のストッパー、などの製造用途に好適に使用可能な低摩擦性フッ素ゴム架橋体が得られることなどを見出して本発明を完成するに至った。
なお、フッ素ゴムのポリオール加硫に関連した技術としては、これまでに下記のようなものが知られている。
例えば、特公平4−37094公報には、含フッ素エラストマーの加硫成形品の表面に、架橋剤(加硫剤)としてのポリヒドロキシ化合物、および必要により加硫促進活性剤(架橋促進剤)を含浸させ、再度加硫する含フッ素エラストマー成形品の表面改質方法が開示され、この含フッ素エラストマー成形品の表面改質法によれば、加硫成形品の表面に非粘着性、低摩擦性を付与させることができる旨記載されている。
しかしながら、架橋剤のポリヒドロキシ化合物、加硫促進活性剤(架橋促進剤)などを含浸させる際には、架橋剤及び架橋促進剤をアセトンなどの有機溶媒に溶解してなる表面処理液が用いられており、有機溶剤による環境汚染の恐れがある。また、加硫後に更に表面を行うため工程数が多くなり、処理コストが嵩むという問題点がある。
なお、特開平7−3099号公報には、(A)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、必要によりテトラフルオロエチレンを共重合して得られるフッ素ゴム100重量部、(B)有機4級ホスホニウム塩0.05〜2重量部、(C)窒素含有有機化合物および/またはリン含有有機化合物0.01〜3重量部、(D)ポリヒドロキシ化合物0.1〜10重量部、(E)金属酸化物および/または金属水酸化物0.5〜30重量部からなるフッ素ゴム組成物が開示され、該組成物からなる所望形状のプレフォームを金型に入れて加熱下に圧縮成形などを行うことによりポリオール加硫して、フッ素ゴム加硫成形品を得ることが記載され、得られた成形品は、機械的特性の低下がなく、加硫成形時に成形不良の発生がない旨記載されている。
しかし該公報の実施例などで具体的に開示されている成形体では、有機4級ホスホニウム塩のゴム成形体表面への移行が乏しく、摩擦係数及び粘着力が高いなどの問題点がある。
特開平7−3100号公報には、(A)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、必要によりテトラフルオロエチレンを共重合して得られるフッ素ゴム100重量部、(B)有機4級ホスホニウム塩0.05〜2重量部、(C)有機4級アンモニウム硫酸水素塩など、0.05〜2重量部(D)ポリヒドロキシ化合物、0.1〜10重量部(E)金属酸化物および/または金属水酸化物0.5〜30重量部などからなるフッ素ゴム組成物が開示され、該組成物からなる所望形状のプレフォームを金型に入れて加熱下に圧縮成形などを行うことによりポリオール加硫して、フッ素ゴム加硫成形品を得ることが記載され、得られた成形品は、加硫成形時に成形不良の発生がない旨記載されている。
しかし、上記特許文献2と同様に、該公報の実施例などで具体的に開示されている成形体では、有機4級ホスホニウム塩等のゴム成形体表面への移行が乏しく、摩擦係数及び粘着力が高いという問題点がある。
特開平7−82449号公報には、ポリオール加硫系フッ素ゴムにハイドロタルサイト類縁化合物を配合したポリオール加硫系フッ素ゴム組成物が開示され、加硫は、フッ素ゴムに加硫系成分などを混合し、一次加硫として140〜200℃で約2〜120分間のプレス加硫し、二次加硫として約150〜250℃で0〜30時間程度のオーブン加硫をすることにより、行われることが記載されている。上記加硫系成分としては、フッ素ゴム100重量部当たり0.5〜10重量部のポリヒドロキシ芳香族化合物などの加硫剤、1〜20重量部の二価金属の酸化物または水酸化物等の受酸剤、10重量部以下の第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩等の加硫促進剤等が挙げられている。また、上記組成物は、金型離型性がよく、加硫物性がよく、耐エンジン油性が改善される旨記載されている。
しかし該公報の実施例などで具体的に開示されている成形体では、第四級ホスホニウム塩等の加硫促進剤のゴム成形体表面への移行が乏しく摩擦係数及び粘着力が高いという問題点がある。また、加硫促進剤例えば、有機4級ホスホニウム塩の添加量を増加させかつ、該公報に記載されているようにハイドロタルサイト類縁化合物をも添加すると、架橋速度が速く、プレス成形では、型に流し込む前に架橋してしまい、所望形状に成形できないという問題点もある。
特開2000−34379号公報には、原料フッ素ゴム、ポリオール系加硫剤、有機促進剤、加硫促進助剤および受酸剤を含有し、必要により充填剤を含有してなるフッ素ゴム組成物であって、加硫促進助剤として、脂肪酸エステル等で処理され、その平均粒子径が7.5μm以下であり、比表面積が20m/g以上の水酸化カルシウムを配合したものは、加硫すると、耐圧縮永久歪み性が良い旨記載されている。また、加硫としては、170℃で10分間の一次加硫、200℃で24時間の二次加硫が挙げられている。
しかしながら、該公報における加硫促進助剤は、その比表面積が高く、脂肪酸エステル等で処理されているためと想定されるが、フッ素ゴム成形体の架橋密度及び反発弾性率が高くなり、有機4級ホスホニウム塩等の有機促進剤(加硫促進剤)のゴム成形体表面への移行が乏しく、また、該公報に実施例などで具体的に開示された例では、何れも摩擦係数及び粘着力が高いという問題点がある。
特開2001−192482号公報には、フッ素ゴム100重量部、水酸化カルシウム0.5〜3重量部、酸化マグネシウム4〜15重量部、サーマルブラックと瀝青炭フィラーとの合計約10〜50重量部を含有するフッ素ゴム組成物を、ポリオール系加硫剤の存在下で加硫成形した後、約250〜300℃の温度で熱処理して、耐圧縮永久歪特性等に優れたフッ素ゴム加硫成形品を製造することが記載されている。上記ポリオール系加硫剤としてのポリヒドロキシ芳香族化合物等は含フッ素ゴム100重量部当たり約0.5〜10重量部で、アンモニウム塩またはホスホニウム塩は約0.1〜30重量部で用いられる旨記載されている。また、該フッ素ゴム組成物は、圧縮プレス等により約150〜230℃で約1〜30分間加硫成形し、グロメット、シールパッキン類では約250〜300℃で約5〜48時間エアオーブン等で熱処理(二次加硫)される旨記載されている。
しかし、該公報に記載の成形品では、反発弾性率が高く、また、有機4級ホスホニウム塩のゴム表面への移行が少なく、摩擦係数及び粘着力が高いという問題点がある。
さらに、下記のようなフッ素ゴム組成物、あるいはその加硫成形体も、これまでに提案されている。
特許第3063172号(特開平4−236254号公報に対応)には、フッ素ゴム100重量部、液状ポリイソプレンゴムおよび水添液状ポリイソプレンゴムより選択される液状炭化水素系ゴム0.5〜10重量部からなるフッ素ゴム組成物が開示され、押出加工性などの加工性がよく、加硫ゴム物性もよい旨記載されている。
特許第3222054号公報(特開平9−208751号公報に対応)には、(A)フッ素ゴムポリマー、(B)フッ素含有有機基を含む融点30〜200℃のワックス、(C)アミン、ポリオール、パーオキサイドから選択される架橋剤からなるゴム組成物が開示され、(B)フッ素含有有機基を含む融点30〜200℃のワックス、(C)アミン、ポリオール、パーオキサイドから選択される架橋剤からなるゴム組成物が開示され、該ゴム組成物は加工性が優れ、混練り作業性が優れ、金型離型性が良く、また得られた成形物の物性は従来品と同等である旨記載されている。
特許第2653340号公報(特開平6−293850号公報に対応)には、(A)ポリオール架橋系フッ素ゴム、(B)液状フッ素ゴム、(C)1分子中のOH基の少なくとも1個がシリル化されたポリオールを配合してなるフッ素ゴム組成物が開示され、該組成物を発泡の生じない130〜160℃の低温で架橋(一次架橋)し、120〜250℃の温度で二次架橋することも記載されており、該組成物は、加工性に優れ、得られた成型品は、低硬度であり各種用途に使用できる旨記載されている。
特開平5−239300号公報には、(A)フッ化ビニリデン単位と少なくとも1種の他のフッ素含有単量体単位とを有するエラストマー共重合体、(B)アルコキシ基、フェノキシ基などで置換されたトリフェニルホスフィン等からなる3級ホスフィン加硫促進剤、(C)ポリオール架橋剤、(D)二価金属酸化物または水酸化物等を含有してなるフルオロエラストマー加硫組成物が開示され、該組成物は、一次加硫(プレス加硫)、二次加硫(オーブン加熱)してシール材などの加硫成形物として用いる際の一次加硫速度が速く、加硫成形物は、ゴム弾性、引張物性が良好である旨記載されている。
特開平6−248145号公報には、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびプロピレンを共重合してなるフッ素ゴムに酸化カルシウムおよびポリエチレンワックスが配合されてなるフッ素ゴム組成物が開示され、該組成物は、100〜400℃で数秒〜5時間加硫した後、加硫物性を安定化させるために150〜300℃で30分〜48時間程度二次加硫を行ってもよい旨記載され、該組成物は、加硫、成形の際に融合不良がない旨記載され、成形品は、耐熱性などがよい旨記載されている。
特開平6−306180号公報には、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、および必要によりテトラフルオロエチレンを共重合して得られるフッ素ゴムをポリオール加硫により金型を用いて成形を行う際に、加硫促進剤として有機4級アンモニウム塩を用いる、フッ素ゴム加硫成形品の製造方法が開示され、加硫成形時に成形不良がない旨記載されている。
しかしながら、上記文献に記載されているフッ素ゴム組成物には、液状炭化水素系ゴム、フッ素含有有機基を含む融点30〜200℃のワックス、液状フッ素ゴム、3級ホスフィン架橋促進剤、酸化カルシウムおよびポリエチレンワックス、有機4級アンモニウム塩等が添加されており、このようなフッ素ゴム組成物からなる加硫成形体では、低粘着、低摩擦及び低反発弾性の点、あるいはそれら特性のバランスの点で充分でない。
【発明の開示】
本発明に係る低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法では、
ポリオール架橋可能なフッ素ゴムと、
架橋促進剤(好ましくは有機第4級ホスホニウム塩)と、ポリオール系架橋剤(好ましくはビスフェノール類)と、水酸化カルシウムと、必要により酸化マグネシウムとを含有し、かつ、上記架橋促進剤とポリオール系架橋剤との重量比R{架橋促進剤/ポリオール系架橋剤}が0.9〜5、好ましくは0.9〜3、より好ましくは0.9〜2であるポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物を、
必要により予めポリオール架橋した後、
150〜300℃、好ましくは200〜300℃、より好ましくは240〜300℃の温度範囲で0.1〜48時間、好ましくは1〜48時間、より好ましくは10〜48時間熱処理することにより、架橋体の表面の摩擦係数が1未満の低摩擦性フッ素ゴム架橋体を得ることを特徴としている。
本発明においては、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物には、該ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、上記架橋促進剤が2.1〜20重量部、上記ポリオール系架橋剤が0.4〜20重量部の量で含有され、比表面積20m/g未満の水酸化カルシウムが0.5〜10重量部の量で含有されていることが好ましい。
また、本発明では、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物には、該ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、上記酸化マグネシウムが3.0重量部以下の量で含まれていることが好ましい。
本発明においては、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物には、さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、5〜200重量部の量で含まれていることが好ましい。
本発明においては、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物のポリオール架橋時に、金型内周面が凹凸処理された圧縮成形金型を用いて、0.5〜200μmの平均深さの凹凸面を有する架橋体を得て、これを上記熱処理することが好ましい。
また、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物から得られる架橋体をハードディスク(HDD)記録装置用ストッパーとして用いる場合には、該ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対してポリオール系架橋剤が1〜10重量部含まれ、上記重量比R{架橋促進剤/ポリオール系架橋剤}が0.9〜2であることも好ましい。
本発明に係る、HDD装置用ストッパーに代表される衝撃吸収用ストッパ部品は、上記の何れかに記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法により得られたことを特徴としている。
また、本発明に係る架橋体をHDD装置用ストッパーとして用いる場合には、ホールディングトルク値の変化率が14%以下であることが望ましい。
本発明によれば、有機溶剤を含むような表面処理液にて表面改質をしなくとも、フッ素ゴム組成物の熱処理のみ(必要によりこの熱処理に先立ち、加硫、予備成形を行ってもよいが、)で製造でき、製造時に環境汚染の恐れがなく、低摩擦性、低粘着性、低反発性等にバランス良く優れ、防振ゴム、衝撃吸収ストッパ部品、流体漏洩防止用ゴム部品、ベルト、ゴム引き布、ワイパー等の製造用途に好適に使用可能な低摩擦性フッ素ゴム架橋体の安価な製造方法が提供される。また、本発明に係る低磨耗性フッ素ゴム架橋体は非粘着性が向上するとともに安定しているので、特にHDD装置のストッパーとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
図1: 図1は、本発明に係る低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法で得られた低摩擦性フッ素ゴム架橋体の粘着力耐久性の評価を行う際に用いられる試験装置の説明図である。
図2: 図2は、図1の試験装置に組み込まれるアウターストッパーの断面図である。
図3: 図3は、マグネット粘着試験変化率の評価を行う際に用いられる試験装置の説明図である。
図4: 図4は、ホールディングトルク値の評価を行う際に用いられる試験装置の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法について具体的に説明する。
[低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法]
本発明に係る低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法では、以下に詳述するポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物を、あるいは必要により予めポリオール架橋した後、得られた架橋体(フッ素ゴム架橋体)を、150℃〜300℃、好ましくは200〜300℃、より好ましくは240〜300℃の温度範囲で0.1〜48時間、好ましくは1〜48時間、より好ましくは10〜48時間熱処理している。
以下、本発明で好ましく用いられるポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物(ポリオール架橋系フッ素ゴム組成物)、加硫条件(一次加硫の他に、必要により行われる二次加硫を含む。)、加硫後の熱処理条件、得られた低摩擦性フッ素ゴム架橋体の特性などについて順次詳説する。
<ポリオール架橋系フッ素ゴム組成物>
本発明で好ましく用いられるポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物(ポリオール架橋系フッ素ゴム組成物)は、ポリオール架橋可能なフッ素ゴムと、架橋促進剤である有機第4級ホスホニウム塩と、ビスフェノール類に代表されるポリオール系架橋剤と、水酸化カルシウムとを含有し、必要により酸化マグネシウムを含有している。
ポリオール架橋可能なフッ素ゴム
ポリオール架橋可能なフッ素ゴム(ポリオール架橋系フッ素ゴム)としては、1種または2種以上の含フッ素オレフィンの(共)重合体を用いることができる。
含フッ素オレフィンとしては、具体的には、例えば、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、パーフルオロアクリル酸エステル、アクリル酸パーフルオロアルキル、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテルなどが挙げられる。これらの含フッ素オレフィンは1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
このようなポリオール架橋系フッ素ゴム((共)重合体)として、好ましくは、フッ化ビリデン−ヘキサフルオロプロピレン2元共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体、フッ化ビリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン3元共重合体など、一般的に市販されているフッ素ゴムをそのまま使用することができる。
架橋剤
架橋剤としては、ポリオール系架橋剤のビスフェノール類が好ましく、具体的には、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン[ビスフェノールAF]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン[ビスフェノールS]、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタンなどのポリヒドロキシ芳香族化合物が挙げられ、好ましくはビスフェノールA、ビスフェノールAFなどが用いられる。これらはまた、アルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の形であってもよい。また、架橋剤として、原料ゴムと架橋剤とを含む市販されているマスターバッチを用いてもよい。市販されているマスターバッチとしては、例えばキュラティブVC#30(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋剤〔ビスフェノールAF〕50wt%含有)などが挙げられる。これらの架橋剤は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
架橋促進剤
架橋促進剤としては、有機第4級ホスホニウム塩、活性水素含有芳香族化合物−第4級ホスホニウム塩等モル分子化合物、2価金属アミン錯体化合物など、ポリオール架橋の際に一般的に用いられる架橋促進剤が挙げられ、これらの架橋促進剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。これらの架橋促進剤のうちでは、得られた低摩擦性フッ素ゴム架橋体からのアウトガス量を少なくする上では、有機第4級ホスホニウム塩が好ましい。
これらの架橋促進剤有機第4級ホスホニウム塩のうち、具体的には、本願出願人が特開2001−192482号公報の「0010」〜「0012」欄に記載したようなものが挙げられ、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライドなどが好ましく用いられる。また、架橋促進剤として、原料ゴムと架橋促進剤とを含む市販されているマスターバッチを用いてもよい。市販されているマスターバッチとしては、例えばキュラティブVC#20(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋促進剤〔有機ホスホニウム塩〕33wt%含有)などが挙げられる。
その他の配合成分
本発明で用いられるポリオール架橋系フッ素ゴム組成物には、以上の成分以外に、ゴム配合剤として、カーボンブラック、カーボン繊維などの補強剤;
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、酸化チタン、硫酸バリウム、ほう酸アルミニウム、ガラス繊維、アラミド繊維などの充填剤;
ワックス、金属セッケン等の加工助剤;
酸化亜鉛などの受酸剤(水酸化カルシウムを除く。以下同様。);
老化防止剤;熱可塑性樹脂;など、ゴム工業で一般的に使用されている配合剤が、本発明に使用する架橋剤および架橋促進剤の効果を損なわない範囲で、必要に応じて適宜添加される。尚、配合剤としてシリカを用いると、室温では低粘着効果はあるが、高湿下では金属との粘着を大きくするため、シリカは添加しないことが好ましい場合がある。
このポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物(ポリオール架橋系フッ素ゴム組成物)には、ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、架橋促進剤(好ましくは有機第4級ホスホニウム塩)が、通常、2.1〜20重量部、好ましくは2.5〜10重量部の量で、
ポリオール架橋剤(好ましくはビスフェノール類)が通常、0.4〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の量で、
必要により、酸化マグネシウムは、3重量部以下、好ましくは1〜3重量部の量で、
水酸化カルシウムが、通常、0.5〜10重量部、好ましくは1〜7重量部、特に好ましくは1〜5重量部の量で含有されていることが望ましい。
架橋促進剤が上記範囲より少ないと、ゴム表面の摩擦係数、粘着力が高くなる傾向があり、また、上記範囲よりも多いと得られた低摩擦性フッ素ゴム架橋体(成形体)を屈曲させ、また圧縮、変形等させると、成形体にクラックが生じる傾向がある。
また、架橋剤が上記範囲より少ないと、成形後、発泡を起こし、一定の形状の架橋体にできなくなる傾向があり、また、上記範囲よりも多いと同様に、得られた低摩擦性フッ素ゴム架橋体(成形体)を屈曲させ、また圧縮、変形等させるとクラックが生じるとなる傾向がある。
なお、架橋剤が上記範囲内で使用されて、もし、架橋成形時に発泡が生ずるような場合には、上記補強剤や充填剤、受酸剤、架橋剤をさらに増量することにより発泡をなくすことができ、必要に応じてこれら成分の添加量を適宜調整すればよい。
このポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物では、上記有機第4級アンモニウム塩、有機第4級ホスホニウム塩に代表される架橋促進剤と、ビスフェノール類に代表されるポリオール系架橋剤との重量比(R)={架橋促進剤/ポリオール系架橋剤}が通常、0.9〜5、好ましくは0.9〜4、より好ましくは約0.9〜3、特に好ましくは0.9〜2である。
ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物中における、この重量比R{架橋促進剤/ポリオール系架橋剤}が上記範囲より小さい場合には、架橋促進剤のゴム表層への移行が乏しく、ゴム表層の架橋密度が充分に上がらず、所望の低粘着性、低摩擦性が得られず、また、この重量比Rがこの範囲より大きい場合には、ゴム表層の架橋密度は上がるが、得られた低摩擦性フッ素ゴム架橋体(成形体)を屈曲させ、また圧縮、変形等させるとクラックが生じる傾向がある。
なお、酸化マグネシウムは、上記量(すなわち未架橋フッ素ゴム100重量部に対して3.0重量部)より多いと、得られる成形体の反発弾性率が高く、酸化マグネシウム自体が金属との粘着力を有することもあり、得られるゴム成形体と相手金属との粘着力が大きくなり、また、有機ホスホニウム塩などの架橋促進剤の成形体表面への移行が少なく、低摩擦係数、低粘着力のものが得られない。
また、本発明に係る低摩擦性フッ素ゴム架橋体をハードディスク装置用ストッパーとして用いる場合は、フッ素上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、架橋剤の量が0.4重量部以上〜20重量部以下、好ましくは0.4重量部以上〜10重量部以下で、R{架橋促進剤/ポリオール系架橋剤}の値が0.9〜2、好ましくは0.9〜1.5である。架橋剤量とRの値とが上記範囲内にあると、得られたフッ素ゴム架橋体表面の非粘着性に優れ、非粘着性の安定性にも優れるのでHDD装置のストッパーとして好適に用いることができる。
なお、酸化マグネシウム量の下限値は、未架橋フッ素ゴム100重量部に対して、0重量部でもよいが、好ましくは1重量部以上〜3.0重量部以下であることが架橋時に適正な架橋速度にすることができ、発泡のない低摩擦、低粘着の架橋体(成形体)が得られる点で望ましい。なお、酸化マグネシウム添加量は、水酸化カルシウムと同様な傾向を示す。
水酸化カルシウムは、上記したような量で含有されていると、架橋密度が適度で、低反発弾性率となり、成形時の発泡も起きにくいなどの点から望ましい。
水酸化カルシウムは、一般に、その添加量が少ない程、架橋密度が下がり、反発弾性率は下がる傾向にあり、また、成形時に発泡しやすくなる。
もし、成形時に発泡する場合には、その他の成分の受酸剤をより多く入れることが望ましく、例えば、ポリオール架橋系フッ素ゴム100重量部に対して受酸剤を0.5〜10重量部の量で配合することができる。
一方、水酸化カルシウム量が上記の範囲より多い場合には、得られるゴム全体の架橋密度が高くなり、反発弾性率が高くなる。また、架橋促進剤のゴム表面への移行が著しく低下・減退して、ゴム表面が低粘着性にならないことがある。
なお、この水酸化カルシウムとしては、好ましくは、比表面積20m/g未満の一般的に市販されているものがそのまま使用される。
なお、用いられる水酸化カルシウムの比表面積が20m/g以上の場合には、得られるゴム全体の架橋密度が高くなり、反発弾性率が高くなる。また、架橋促進剤のゴム表面への移行が著しく低下・減退して、ゴム表面が低粘着性にならないことがある。
本発明においては、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物には、さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が、低摩擦、低粘着、低反発弾性の観点から、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは約20〜100重量部の量で含まれていてもよい。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)自身は、低摩擦性能、低粘着性能、反発弾性特性が良く、フッ素ゴム組成物調製時にこのPTFEを添加することにより、得られる成形体の低摩擦性能、低粘着性能、反発弾性特性などを向上させることができる。
なお、PTFEの配合量がこの範囲より少ない割合では、得られる成形体の反発弾性率を下げる効果に乏しく、一方、この範囲より多い割合では、得られる成形体の硬度が過度に高くなり、ゴム状弾性を失う傾向がある。
<ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の調製と加硫>
上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の調製の際には、例えば、上記各成分を上記量で含む配合物を、インターミックス、ニーダー、バンバリーミキサなどの密閉型混練機またはオープンロールなどゴム用の一般的な混練機で混練すればよい。該組成物の「その他の調製法」としては、各成分を溶剤等で溶解して、攪拌機等で分散させる方法などが挙げられる。
上記のようにして得られたポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の架橋(加硫)成形は、射出成形機、圧縮成形機、加硫プレス機、オーブンなどを用いて、通常、140〜230℃の温度で1〜120分程度加熱(一次加硫)することにより行われる。なお、一次加硫加硫は、一定の形状を形成(予備成形)するために、形状を維持できる程度に架橋させる工程であり、複雑な形状では、好ましくは、金型により成形され、空気加熱等のオーブンでも一次加硫は可能である。
本発明においては、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物のポリオール架橋時、特に一次加硫時に、上記加硫プレス機等として、あるいは上記加硫プレス機等と共に、例えば、低摩擦特性、低粘着性向上の観点から、得られる架橋体表面に所望の深さ(例:0.5〜200μm)の凹凸面が形成されるように、金型内周面がほぼ対応する深さで凹凸処理された圧縮成形金型を用いて、0.5〜200μmの平均深さの凹凸面を有する架橋体を得るようにしてもよい。
本発明では、ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の混練後は、被処理物を、後述するように圧縮成形するが、上記混練後は、通常、(a):いったん常温に戻し、再び昇温して圧縮成形してもよく、あるいは(b):混練後そのまま昇温を続けて圧縮成形してもよい。通常、圧縮成形機を用いる圧縮工程では、工程上、上記(a)になる。
また例えば、ゴムホース等のフッ素ゴム成形品を製造する場合、フッ素ゴム組成物の混練後、チューブ状に押し出しをして、そのままオーブン加硫を実施することができるが、その場合は、(b)となる。
ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の加硫前に、該組成物を一定形状にしておけば、(a)でも(b)でも低摩擦、低粘着性の成形品を得ることができる。得られるフッ素ゴム架橋体の低摩擦、低粘着化の程度は、その前の熱処理に向けた昇温パターンや昇温曲線の如何には影響されず、本発明のフッ素樹脂組成物は、熱処理を行う温度と時間に左右される。
本発明の熱処理方法は、通常の2次加硫と同じであるが、本発明の材料(ポリオール架橋性フッ素樹脂組成物)でなければ、通常の2次加硫を行っても、低摩擦、低粘着性のものは得られない。従来のフッ素ゴムでは、2次加硫は、1次加硫で不足した架橋反応を完了させる目的とゴム中の低分子成分をガス化させて、強度向上、圧縮永久歪み低減を目的としているが、本発明は、これと異なり、一次加硫物中の架橋促進剤をその表面に移行させて、低摩擦、低粘着化すると共に、表面を硬化させるという目的とがある。
<加硫後の熱処理>
本発明では、ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物を、150〜300℃の温度範囲、好ましくは200〜300℃の温度範囲、より好ましくは240℃〜300℃の範囲で、0.1〜48時間、好ましくは1〜48時間、より好ましくは10〜48時間熱処理している。
なお、本発明では、ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物を、架橋体の低分子揮発成分(アウトガス)発生防止の観点から、必要により、上記のように予めポリオール架橋(加硫)した後、得られた架橋体を、さらに、上記のように、150〜300℃温度範囲、好ましくは200〜300℃の温度範囲、より好ましくは240℃〜300℃の範囲で、0.1〜48時間、好ましくは1〜48時間、より好ましくは10〜48時間熱処理してもよい。
架橋体の低分子揮発成分(アウトガス)が多いと、HDD装置用ストッパー等に使用したときには、架橋体から発生する低分子成分により、ディスク等金属部品の汚染などの問題があるため、熱処理温度が高く、熱処理時間が長いほうが好ましい。
このように架橋体を熱処理することにより、架橋体の内部からその表面に近い部分である架橋体表層に、架橋体中の架橋促進剤成分などが次第に移行して、架橋体の内部(特に中心部)に比べて表層(例えば、架橋体の表面および架橋体表面から100μm程度内部までの範囲)の架橋密度が向上し、その結果、このように熱処理された架橋体では、その表面(架橋体表面)の低粘着化、低摩擦化、低反発弾性化が行われる。また、熱処理条件が上記条件で行うと、特に、得られたフッ素ゴム架橋体表面の非粘着性に優れるとともに、非粘着性の安定性に優れる点でも好ましい。
すなわち、架橋体の上記熱処理を行うことにより、表面の静摩擦係数と動摩擦係数の両者が1未満、好ましくは0.1〜0.7の低摩擦性フッ素ゴム架橋体を得ることができる。
なお、本発明のポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物(未架橋物)を、上記条件で熱処理、すなわち150〜300℃の温度範囲、好ましくは200〜300℃の温度範囲、より好ましくは240℃〜300℃の範囲で、0.1〜48時間、好ましくは1〜48時間、より好ましくは10〜48時間熱処理すると、架橋反応と、架橋促進剤成分の表層への移行とが同時進行的に起こり、低粘着化、低摩擦化、低反発弾性化された、低摩擦性フッ素ゴム架橋体が得られる。
なお、本発明では、予めポリオール架橋するか否かによらず、上記の何れの態様でも、熱処理の際には、加熱装置として、オーブン、加硫釜、高周波加熱などが用いられる。
本発明におけるフッ素ゴム組成物の加硫後の熱処理は、ゴム工業で一般的に行われる加硫工程でのオーブン中での二次加硫工程と同様な処理方法である。しかし、本発明で用いられるフッ素ゴム組成物と従来のものとでは、成分組成が全く相違しており、そのため、加硫後の熱処理の意義・役割も相違しており、従来のフッ素ゴム(加硫成形体)では、主に、引張り物性向上、圧縮永久歪み低減を目的として加硫後の熱処理が行われている。
これに対して、本発明では、上記のような特定の組成の未架橋フッ素ゴム組成物(あるいはその予備成形体)を用いており、そのため、架橋後の熱処理は、架橋促進剤の成形体表面への移行を短時間で促進、安定化させ、成形体表面を低摩擦化、低粘着化することを目的とし、該熱処理によりそのような効果が得られている。
従来のフッ素ゴム組成物では、従来のような条件、(例えば、特開平7−82449号公報:特許文献4に示されているような、140〜200℃で約2〜120分間程度の一次加硫条件)で、金型でのプレス加硫等の一次加硫を行うのみでは、架橋促進剤の表面移行が不十分で、低摩擦、低粘着の成形体とならない。
本発明の未架橋フッ素ゴム組成物は、一次加硫として、オーブン中で、150〜300℃の温度範囲、好ましくは200〜300℃の温度範囲、より好ましくは240℃〜300℃の範囲で、0.1〜48時間、好ましくは1〜48時間、より好ましくは10〜48時間の加熱を実施すると、この一次加硫のみで架橋促進剤の表面移行が進行し、低摩擦、低粘着性の低摩擦性フッ素ゴム架橋体となり、その後に同様な条件での熱処理は不要となる。
従来のフッ素ゴム(未架橋物)では、一次加硫としてこれと同様な処理を行っても、このような処理のみでは、低摩擦、低粘着性のフッ素ゴム架橋体にはならない。
ここで、特に、本発明と前記特公平4−37094公報(特許文献1)との差異について付言すると、特公平4−37094公報には、前記「発明の技術的背景」の項でも触れたように、含フッ素エラストマーの加硫成形品の表面に、フッ素ゴム用の架橋剤(加硫剤)、および必要により加硫促進活性剤(架橋促進剤)を含む溶液(以下、「処理剤」とも言う。)を塗布・含浸させ、再度加硫することにより、得られる含フッ素エラストマー成形品のゴム表層の架橋密度を上げて、含フッ素エラストマー成形品を非粘着化、低摩擦化する方法が開示されている。
これに対して本発明では、特公平4−37094公報などには示唆すらされていない、特定のポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物を用いることにより、上記特公平4−37094公報と異なり「処理剤」を使わずに架橋物の熱処理のみを行うことにより、低摩擦性を有するなど、該公報に記載のものと同様な表面状態の低摩擦性フッ素ゴム架橋体が製造可能となっている。
また、本発明では、低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造に際して架橋促進剤を多く添加することにより、得られる熱処理物の高温での反発弾性率を下げることが可能である。
さらに詳説すると、本発明では、このように、架橋体中に添加されている架橋促進剤が、加硫成形体の熱処理により、ゴム表層に移行し、そのため、成形体の表面に近づく程、架橋密度が高くなった状態になり、ゴム表層の架橋密度を上げることが可能となっている。その結果、本発明では、ゴム表面にコーティングをしなくとも、架橋ゴム成形体に熱処理を施すことにより、特公平4−37094公報に記載のものと同様な表面状態の低摩擦性フッ素ゴム架橋体を製造可能となっている。
ここで、特に、本発明と前記特開2001−192482号公報(特許文献6)との差異について付言すると、特開2001−192482号公報には、フッ素ゴム100重量部、水酸化カルシウム0.5〜3重量部、酸化マグネシウム4〜15重量部、サーマルブラックと瀝青炭フィラーとの合計約10〜50重量部を含有するフッ素ゴム組成物を、ポリオール系加硫剤の存在下で加硫成形した後、約250〜300℃の温度で熱処理して、耐圧縮永久歪特性等に優れたフッ素ゴム加硫成形品を製造することが記載されている。しかし、該公報に記載のフッ素ゴム組成物では、架橋促進剤/架橋剤の比が小さく、さらに、酸化マグネシウム量がフッ素ゴム100重量部当たり4〜15重量部と多いため、本発明と同様に加硫物(架橋ゴム成形体)の熱処理を行っても、有機4級ホスホニウム塩のゴム表面への移行が少なく、反発弾性率が高く、金属との粘着力が大きいものしか得られない。
<低摩擦性フッ素ゴム架橋体>
本発明では、上記のように特定の組成の架橋性フッ素ゴム組成物を用いてなるフッ素ゴム架橋体に「熱処理」を施すことにより、架橋体の表面の摩擦係数が1未満、好ましくは0.1〜0.7の低摩擦性フッ素ゴム架橋体(フッ素ゴム架橋体熱処理物)が得られている。このフッ素ゴム架橋体は、上記のように表面の摩擦係数が低く、しかも、低粘着性、低い反発弾性率、低い静摩擦係数および低い動摩擦係数並びに適度の硬さなどを有している。
例えば、熱処理されたフッ素ゴム架橋体は、その静摩擦係数(JIS P8147に準拠)が1未満、好ましくは0.1〜0.7の範囲にあり、粘着力が低く、
動摩擦係数[厚さ2mmのゴムシートをJIS K7125、P8147に準拠し、(株)新東科学製 表面性試験機により、試料ゴム表面の動摩擦係数を測定。試験条件としては、相手材が直径10mmクロムメッキ鋼球の摩擦子、移動速度は50mm/分、荷重は50gで測定。]が、通常1未満、好ましくは0.1〜0.7であり、粘着力が低く、
硬さ[JIS K6253に準拠し、タイプAデュロメータで測定]が、通常40〜85(単位:POINT)、好ましくは60〜80(単位:POINT)であり、
反発弾性率[JIS K6255に準拠し、厚さ2mm、直径29mmのゴムシートを6枚重ね、リュプケ法により、0℃、25℃、70℃での反発弾性率を測定。]が、何れの測定温度においても、通常、50%以下、好ましくは40%以下であり、アーム等の相手材からの振動を良好に吸収でき、
粘着力[厚さ2mmのゴムシートに金属棒(ステンレス製、重さ:16g、ゴムとの接触部分の曲面形状:直径3mm幅1.5mmの円柱)を60℃で24時間もしくは72時間押しつけた後、0℃で24時間押しつけ、0℃でのゴムと金属棒との粘着力を測定。]が、通常、100g以下、好ましくは50g以下であり、
粘着力耐久性(測定条件:後述する。)が、通常、100g以下、好ましくは70g以下である。熱処理を行わない場合や熱処理が不足している場合には、成形体中に含まれている架橋促進剤の成形体表面への移行量が少なくなり、粘着力は、400g以上になる。
特に、架橋物(架橋体)の表面に凹凸を形成することにより、得られた低摩擦性フッ素ゴム架橋体の相手材との接触面積を小さくでき、摩擦係数1未満が達成され、非粘着特性の向上を図り、安定化させることができる。
[低摩擦性フッ素ゴム架橋体の用途]
上記のようにして得られた、本発明に係る低摩擦性フッ素ゴム架橋体(成形体)は、低摩擦性、低粘着性、低反発性等にバランス良く優れており、
ハードディスク(HDD)記憶装置用ヘッド、HDD装置用ストッパー、光ディスク等を用いる車載用ディスク装置やカメラ一体型ビデオレコーダー用ディスク装置等の記憶装置用ヘッド、プリンターヘッドなどの衝撃吸収用ストッパ部品;
Oリング、パッキン、Vパッキン、オイルシール、ガスケット、角リング、Dリング、ダイアフラム、各種バルブ等の流体(気体などを含む。)漏洩防止用の各種ゴム部品;
防振ゴム、ベルト、ゴム引布、ワイパー等の各種ゴム部品;
などとして好適に用いられる。
特に、本発明に係る低摩擦性フッ素ゴム架橋体(成形体)を、HDD装置用ストッパーに代表される上記した衝撃吸収用ストッパ部品などとして用いると、衝撃吸収ストッパとディスクアームとの粘着による誤作動が著しく低減され、高温でのダンピング特性も良好であり、アームの振動を吸収することができるという顕著な効果が期待できる。
特に、本発明に係る製造方法により得られる架橋体はHDD装置用マグネットホルダータイプストッパーとして用いると、ホールディングトルク値の変化率は14%以下、好ましくは10%以下の範囲とすることができる。ホールディングトルク値の変化率が上記範囲内にあると、HDD装置内のアームの誤動作を長期に渡って安定して抑制できるとともに、ストッパーとして必要な他の特性をバランスよく満たすことができる。
ここで、ホールディングトルク値の変化率とは、下記に詳述するが、アームとストッパーとの非粘着性の経時変化に対する指標であり、この値が小さいものほど、非粘着性を長期間維持できる、すなわち、HDD装置内のアームの誤作動を長期に渡って安定して抑制できることを意味する。
【発明の効果】
本発明においては、上述したような特定の組成の架橋性フッ素ゴム組成物からなるフッ素ゴム架橋体に熱処理を施しており、本発明によれば、従来のフッ素ゴムの持つ耐熱性、耐油性、耐薬品性などの優れた特性を損なうことなく、低粘着性、低摩擦性及び低反発弾性を備えたフッ素ゴム架橋体を得ることができる。
本発明では、上述したような特定の組成の架橋性フッ素ゴム組成物に、必要により架橋し、得られたフッ素ゴム架橋成形体に特定の「熱処理」を施し、あるいは未架橋の上記特定のフッ素ゴム組成物に直ちに、特定の「熱処理」を施しており、従来法にあるような、フッ素ゴム架橋成形体表面へのコーティング、化学処理、電子線等の処理よりも、低コストで、安定した低粘着性、低摩擦特性のフッ素ゴム架橋体(低摩擦性フッ素ゴム架橋体)が得られる。
特に、低摩擦性フッ素ゴム架橋体を製造する際に、上記フッ素ゴム組成物中にPTFEを配合したものを用いると、低粘着性能、低摩擦性能、低反発弾性特性へと特性を向上させた低摩擦性フッ素ゴム架橋体が得られる。
特に、低摩擦性フッ素ゴム架橋体を製造する際に、低摩擦性フッ素ゴム架橋体(架橋物)の表面に、凹凸、例えば、0.5〜200μmの深さの凹凸を形成すると、相手材との接触面積が小さくなり、摩擦係数1未満が達成され、安定した低粘着性、低摩擦性能の低摩擦性フッ素ゴム架橋体が得られる。
また本発明によれば、上記製法で得られたフッ素ゴム架橋体は、上記特性を具備しており、防振ゴム、ベルト、ゴム引布、ワイパーなどとして、あるいはO−リング、パッキンなどに代表される流体漏洩防止用ゴム部品などとして、あるいはプリンターヘッド、ハードディスク(HDD)装置のヘッド制御部などの衝撃吸収ストッパ部品、より具体的には、HDD装置内の読み取りアームの誤動作抑制等を目的として設置するストッパーとして好適に使用できる。
また本発明に係るゴム組成物を用いれば、非粘着性に優れたストッパーを、環境に悪影響を与えることなく、効率よく低コストで製造することができる。
【実施例】
以下、本発明に係る低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法などについて実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は係る実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
<ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の配合組成>
フッ素ゴム(デュポン・ダウ・エラストマー社製、バイトンA−500
ムーニー粘度ML1+10(121℃)45) ・・・・・100重量部、
FEFカーボンブラック(東海カーボン社製シーストGSO、平均粒径43mμ
μ、比表面積42m/g) ・・・・・・・・・・・・2重量部、
酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョウワマグ#150)
・・・・・・・・・・・・3重量部、
水酸化カルシウム(近江化学工業社製カルディック#2000、
比表面積17m/g) ・・・・・・・・・・・・3重量部、
ビスフェノールAF(Riedel Dehaen社製)・・・・・・・・・・・2.3重量部、
トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド
(関東化学社製試薬) ・・・・・2.3重量部、
カルナウバワックス(デュポン・ダウ・エラストマー社製VPA No.2融点80℃)
・・・・・・・1重量部。
以上の各成分をニーダー及びオープンロールにて80℃の温度で20分間混練し、次いで、圧縮成形機を用いて、180℃で30分間の圧縮成形を行った後、得られた成型物(圧縮成形物)をオーブン中で、230℃の温度で24時間の熱処理した。
得られた熱処理物(フッ素ゴム架橋体熱処理物)について、静摩擦係数、動摩擦係数、硬さ、反発弾性率、粘着力(1),(2)、粘着力耐久性などの物性を測定した。
結果を表1に示す。
【実施例2】
実施例1において、下記配合組成のポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物(すなわち実施例1において、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド量のみを、9.2重量部に変更した点のみ相違するもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
<ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の配合組成>
フッ素ゴム(デュポン・ダウ・エラストマー社製、バイトンA−500
ムーニー粘度ML1+10(121℃)45) ・・・・・・・・・・・・・・・100重量部、
FEFカーボンブラック(東海カーボン社製シーストGSO、平均粒径43mμ、
比表面積42m/g) ・・・・・・・・・・・・・・・2重量部、
酸化マグネシウム (協和化学工業社製、キョウワマグ#150)
・・・・・・・・・・・・・・・3重量部、
水酸化カルシウム(近江化学工業社製、カルディック#2000、
比表面積17m/g) ・・・・・・・・・・・・・・3重量部、
ビスフェノールAF(Riedel Dehaen社製)・・・・・・・・・・2.3重量部、
トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド
(関東化学社製試薬) ・・・・・・・・・・・・・・9.2重量部、
カルナウバワックス(デュポン・ダウ・エラストマー社製VPA No.2融点
80℃) ・・・・・・・・・・・・・・・1重量部。
【実施例3】
実施例1において、PTFEを40重量部(phr)添加した以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
【実施例4】
実施例1において、架橋成形時に平均深さ20μmの表面凹凸処理された成形型を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
【実施例5】
実施例1において、得られた圧縮成形物の表面にガラスビーズ(粒径:100μm)をショットして、表面を荒らした後、熱処理した以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
【実施例6】
実施例1において、圧縮成形物の熱処理条件を260℃、10時間として実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
【実施例7】
<ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の配合組成>
フッ素ゴム(デュポン・ダウ・エラストマー社製、バイトンA−500
ムーニー粘度ML1+10(121℃)45) ・・・・・・・・・・・・・・100重量部、
FEFカーボンブラック(東海カーボン社製シーストGSO平均粒径43mμ、
比表面積42m/g) ・・・・・・・・・・・・・・2重量部、
酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョウワマグ#150)
・・・・・・・・・・・・・・・6重量部、
ビスフェノールAF(Riedel Dehaen社製)・・・・・・・・・・・・・10重量部、
トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド
(関東化学社製試薬) ・・・・・・・10重量部、
カルナウバワックス(デュポン・ダウ・エラストマー社製VPA No.2融点
80℃) ・・・・・・・・・・・・・・・1重量部。
以上の各成分をニーダー及びオープンロールにて80℃の温度で20分間混練し、次いで、圧縮成形機を用いて、180℃の温度で30分間の圧縮成形を行った後、得られた成型物(圧縮成形物)をオーブン中で230℃の温度で24時間の熱処理を行った。得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
【実施例8】
実施例1において、水酸化カルシウムの配合量を8重量部(phr)とした以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
【実施例9】
実施例1において、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライドの配合量を6.9重量部(phr)とした以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
【実施例10】
実施例1において、下記配合組成のポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物(すなわち実施例1において、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド量のみを、2.76重量部に変更した点のみ相違するもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を、表1に示す。
<ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の配合組成>
フッ素ゴム(デュポン・ダウ・エラストマー社製、バイトンA−500
ムーニー粘度ML1+10(121℃)45) ・・・・・・・・・・・・・・100重量部、
FEFカーボンブラック(東海カーボン社製シーストGSO、平均粒径43mμ、
比表面積42m/g) ・・・・・・・・・・・・・・2重量部、
酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョウワマグ#150)
・・・・・・・・・・・・・・・3重量部、
水酸化カルシウム(近江化学工業社製カルディック#2000、
比表面積17m/g) ・・・・・・・・・・・・・・3重量部、
ビスフェノールAF(Riedel Dehaen社製)・・・・・・・・・・2.3重量部、
トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド
(関東化学社製試薬) ・・・・・・・・・・・・・・2.76重量部、
カルナウバワックス(デュポン・ダウ・エラストマー社製VPA No.2融点
80℃) ・・・・・・・・・・・・・・・1重量部。
比較例1
実施例1において、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライドの配合量を1.3重量部(phr)とし、水酸化カルシウムの配合量を6重量部(phr)とした以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
比較例2
実施例1において、架橋成型物(圧縮成形物)の熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして架橋成型物を得て、得られた架橋成型物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
比較例3
比較例1において、得られた成型物(圧縮成形物)の熱処理前に、下記の架橋剤と架橋促進剤を含んだ処理溶液(溶媒:アセトン)に浸漬温度:20℃で、浸漬時間:1時間の条件で浸漬した後、溶液中より取出して溶剤を乾燥・除去した後、230℃の温度で24時間加熱処理を行った。
得られた熱処理物について、比較例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
<処理溶液>
ビスフェノールAF(Riedel Dehaen社製)・・・・・・・・・・・・・・・10重量部、
トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド
(関東化学社製試薬) ・・・・・・・・・・・・・2重量部、
アセトン(関東化学社製試薬) ・・・・・・・・・・・・88重量部。
比較例4
実施例1において、水酸化カルシウムを2重量部(phr)、酸化マグネシウムを8重量部(phr)、ビスフェノールAF1.5重量部(phr)、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド0.5重量部(phr)とした以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
比較例5
<ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の配合組成>
バイトンGLT(デュポン・ダウ・エラストマー社製ムーニー粘度ML
1+10(121℃)90) ・・・・・・・・・・・・・・・100重量部、
MTカーボン
(Huber社製Huber N−990:平均粒径500mμ、比表面積6m/g)
・・・・・・・・・・・・・・・10重量部、
水酸化カルシウム(近江化学工業社製カルディック#2000
比表面積17m/g) ・・・・・・・・・・・・・・・4重量部、
トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、TAIC)・・2.4重量部、
有機過酸化物架橋剤(日本油脂社製、パーヘキサ25B)・・0.8重量部。
以上の各成分を含むフッ素ゴム組成物を、ニーダー及びオープンロールにて80℃の温度で20分間混練し、次いで圧縮成形機を用いて170℃の温度で30分間の圧縮成形した後、得られた成型物をオーブン中で230℃の温度で24時間の熱処理を行った。
得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
比較例6
実施例1において、水酸化カルシウム比表面積48m/gとした以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
水酸化カルシウムは、特開平9−100119,段落〔0016〕の実施例1と同様な方法で作成した。
結果を表1に示す。
比較例7
実施例1において、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド13.8重量部(phr)、水酸化カルシウム6重量部(phr)、とした以外は、実施例1と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例1と同様に物性を測定した。
結果を表1に示す。
<物性測定条件>
なお、実施例1〜10および比較例1〜7の物性測定条件は、以下の通り。
(1)静摩擦係数の測定
試料ゴムシートをJIS P8147に準じ、傾斜板上に置き、傾斜角度を次第に大きくしてゴムシートの滑り出し開始角度の正接(tanθ)を静摩擦係数とした。静摩擦係数が高い程、ゴムの粘着力が高くなる傾向がある。
(2)動摩擦係数の測定
厚さ2mmの試料ゴムシートをJIS K7125、P8147に準じ、(株)新東科学製の表面性試験機により、シート表面の動摩擦係数を測定した。動摩擦係数が高いほど、ゴムの粘着力が高くなる傾向がある。
<試験条件>
相手材:直径10mmクロムメッキ鋼球の摩擦子、
移動速度:50mm/分、
荷重:50g。
(3)硬さの測定
JIS K6253に準じ、タイプAデュロメータで、試料ゴムシートの硬さを測定した。
(4)反発弾性率の測定
JIS K6255に準じ、厚さ2mm、直径29mmの試料ゴムシートを6枚重ね、リュプケ法により、温度0℃、25℃、70℃での反発弾性率を測定した。反発弾性率が低いほど、アームの振動をよく吸収する。
(5)粘着力の測定
〔粘着力(1)の測定〕
厚さ2mmの試料ゴムシートに金属棒(ステンレス製、重さ:16g、ゴムとの接触部分の曲面形状:直径3mm幅1.5mmの円柱)を60℃で24時間押しつけた後、そのまま0℃して、さらに24時間押しつけた状態にして、0℃でのゴムと金属棒との粘着力を測定した。
〔粘着力(2)の測定〕
厚さ2mmの試料ゴムシートに金属棒(ステンレス製、重さ:16g、ゴムとの接触部分の曲面形状:直径3mm幅1.5mmの円柱)を60℃で72時間押しつけた後、そのまま0℃して、さらに24時間押しつけた状態にして、0℃でのゴムと金属棒との粘着力を測定した。
(6)粘着力耐久性の評価
図1に示すような、3インチ径のアルミ基板スパッタ薄膜ディスク、AlTiC薄膜ヘッドアームのナノスライダ、2つの異極性磁石が設けられたボイスコイルモーターVCMを装着したハードディスクドライブを準備する。
このハードディスクドライブのステンレス鋼製ピンに、水及び超音波にて洗浄した円筒状のアウターストッパゴム(外径5mmφ、軸方向長さ:10mm)を、図2に示すように該ゴムの軸方向中央部とステンレス鋼製のピン(径1.5mmφ、長さ20mm、材質:SUS304)の長手方向中央部とがほぼ一致するように差し込む。
次いで、この状態で、ストッパゴムとアームとを、室温で、5万回ヒッティングした後、ストッパゴムとアームが接触した状態で、60℃で24時間保持し、さらに0℃にして、24時間ストッパゴムとアームとを接触させた状態で保持し、この温度0℃にて粘着力を測定した。
(7)折り曲げ試験
JIS K5600−5−1耐屈曲性(円筒形マンドレル法)に準ずる。
折り曲げ試験装置タイプ1(マンドレル直径2mm)ゴムシート2mmを室温で180°折り曲げて、目視及び光学顕微鏡25倍観察でクラックが確認できない場合にはA、光学顕微鏡25倍観察でクラックが確認できる場合(但、機能上は問題がない)はB、目視及び光学顕微鏡25倍観察でクラックが確認できる場合はCの評価を行う。

【実施例11】
<ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の配合組成>
フッ素ゴム(デュポン・ダウ・エラストマー社製、バイトンA−500
ムーニー粘度ML1+10(121℃)45) ・・・・・100重量部、
MTカーボン
(Huber社製Huber N−990:平均粒径500mμ、比表面積6m/g)
・・・・・・・・・・・・・・・20重量部、
酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョウワマグ#150)
・・・・・・・・・・・・3重量部、
水酸化カルシウム(近江化学工業社製カルディック#2000、
比表面積17m/g) ・・・・・・・・・・・・3重量部、
キュラティブVC#30(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋剤〔ビスフェノールAF〕50wt%、フッ素ゴム〔バイトンE−45〕50wt%含有)
・・・・・・・・・・・4.5重量部、
キュラティブVC#20(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋促進剤〔有機ホスホニウム塩〕33wt%、フッ素ゴム〔バイトンE−45〕67wt%含有)
・・・・・・・・・・・7.0重量部、
以上の各成分をニーダー及びオープンロールにて80℃の温度で20分間混練し、次いで、圧縮成形機を用いて、170℃で20分間の圧縮成形を行いゴムシートおよび製品(マグネットフォルダータイプのストッパー)を得た。その後、得られた成型物(圧縮成形物)をオーブン中で、240℃の温度で10時間の熱処理した。得られた熱処理物(フッ素ゴム架橋体熱処理物)について、硬さ、マグネット粘着試験変化率、ホールディングトルク値の変化率などの物性を測定した。
結果を表2に示す。ジヒドロキシ芳香族化合物と有機ホスホニウム塩とを特定の比率で組み合わせることにより非粘着効果が発現した。従来のゴム架橋体を用いた製品と比較してホールディングトルク値の変化率が小さくなっている。
【実施例12】
実施例11において、下記配合組成のポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物(すなわち実施例11において、キュラティブVC#20の量のみを、7.5重量部に変更した点のみ相違するもの)を用いた以外は、実施例11と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例11と同様に物性を測定した。
結果を表2に示す。
<ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物の配合組成>
フッ素ゴム(デュポン・ダウ・エラストマー社製、バイトンA−500
ムーニー粘度ML1+10(121℃)45) ・・・・・100重量部、
MTカーボン
(Huber社製Huber N−990:平均粒径500mμ、比表面積6m/g)
・・・・・・・・・・・・・・・20重量部、
酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョウワマグ#150)
・・・・・・・・・・・・3重量部、
水酸化カルシウム(近江化学工業社製カルディック#2000、
比表面積17m/g) ・・・・・・・・・・・・3重量部、
キュラティブVC#30(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋剤〔ビスフェノールAF〕50wt%、フッ素ゴム〔バイトンE−45〕50wt%含有)
・・・・・・・・・・・4.5重量部、
キュラティブVC#20(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋促進剤〔有機ホスホニウム塩〕33wt%、フッ素ゴム〔バイトンE−45〕67wt%含有)
・・・・・・・・・・・8.0重量部、
【実施例13】
実施例11において、キュラティブVC#20の量のみを、9.0重量部に変更した以外は、実施例11と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例11と同様に物性を測定した。
結果を表2に示す。
【実施例14】
実施例11において、キュラティブVC#20の量のみを、6.0重量部に変更した以外は、実施例11と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例11と同様に物性を測定した。
結果を表2に示す。
【実施例15】
実施例11において、キュラティブVC#20の量のみを、10.5重量部に変更した以外は、実施例11と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例11と同様に物性を測定した。
結果を表2に示す。
比較例8
実施例11において、キュラティブVC#20の量のみを、1.5重量部に変更した以外は、実施例11と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例11と同様に物性を測定した。
結果を表2に示す。本配合は汎用フッ素ゴム配合である。ホールディングトルク値の変化率は大きい。
比較例9
フッ素ゴム(デュポン・ダウ・エラストマー社製、バイトンA−500
ムーニー粘度ML1+10(121℃)45) ・・・・・100重量部、
MTカーボン
(Huber社製Huber N−990:平均粒径500mμ、比表面積6m/g)
・・・・・・・・・・・・・・・20重量部、
酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョウワマグ#150)
・・・・・・・・・・・・3重量部、
水酸化カルシウム(近江化学工業社製カルディック#2000、
比表面積17m/g) ・・・・・・・・・・・・3重量部、
湿式シリカ(日本シリカ工業製ニップシールER:平均粒径11μm)
・・・・・・・・・・・・1重量部、
キュラティブVC#30(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋剤〔ビスフェノールAF〕50wt%、フッ素ゴム〔バイトンE−45〕50wt%含有)
・・・・・・・・・・・4.5重量部、
キュラティブVC#20(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋促進剤〔有機ホスホニウム塩〕33wt%、フッ素ゴム〔バイトンE−45〕67wt%含有)
・・・・・・・・・・・1.5重量部、
実施例11と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例11と同様に物性を測定した。
結果を表2に示す。シリカが含有すると、ホールディングトルク値の変化率は大きい。
比較例10
実施例11において、キュラティブVC#20の量のみを、3.0重量部に変更した以外は、実施例11と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例11と同様に物性を測定した。
結果を表2に示す。本配合は汎用フッ素ゴム配合である。ホールディングトルク値の変化率は大きい。
比較例11
実施例11において、キュラティブVC#20の量のみを、4.5重量部に変更した以外は、実施例11と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例11と同様に物性を測定した。
結果を表2に示す。本配合は汎用フッ素ゴム配合である。ホールディングトルク値の変化率は大きい。
参考例1
フッ素ゴム(デュポン・ダウ・エラストマー社製、バイトンA−500
ムーニー粘度ML1+10(121℃)45) ・・・・・100重量部、
MTカーボン
(Huber社製Huber N−990:平均粒径500mμ、比表面積6m/g)
・・・・・・・・・・・・・・・20重量部、
酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョウワマグ#150)
・・・・・・・・・・・・3重量部、
水酸化カルシウム(近江化学工業社製カルディック#2000、
比表面積17m/g) ・・・・・・・・・・・・3重量部、
湿式シリカ(日本シリカ工業製ニップシールER:平均粒径11μm)
・・・・・・・・・・・・1重量部、
キュラティブVC#30(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋剤〔ビスフェノールAF〕50wt%、フッ素ゴム〔バイトンE−45〕50wt%含有)
・・・・・・・・・・・1.5重量部、
キュラティブVC#20(デュポン・ダウ・エラストマー社製:架橋促進剤〔有機ホスホニウム塩〕33wt%、フッ素ゴム〔バイトンE−45〕67wt%含有)
・・・・・・・・・・・4重量部、
実施例11と同様にして熱処理物を得て、得られた熱処理物について、実施例11と同様に物性を測定した。
結果を表2に示す。シリカが含有すると、ホールディングトルク値の変化率は大きい。
<物性測定条件>
なお、実施例11〜15および比較例8〜11の物性測定条件は、以下の通り。
(1)硬さの測定
JIS K6253に準じ、タイプAデュロメータで、試料ゴムシートの硬さを測定した。
(2)マグネット粘着試験変化率
図3に示すように下を固定した磁石(永久磁石, 形状:厚さ3.6mm,縦3mm×横3mmの角柱)上に、厚さ0.4mm,縦3mm×横3mmの試料ゴムシートを重ねておいた。この試料ゴムシートの上に金属棒(SPCC(冷間圧延鋼板)製、重さ:30g、ゴムとの接触部分の形状:3mm×1mmの角棒)を置き、23℃、湿度50%の条件下で、ゴムと金属棒との間の初期粘着力Fを測定した。
ついで、試料ゴム上に再度金属棒を置き、磁石、試料ゴムおよび金属棒からなる試験ユニットを60℃、湿度80%の条件下で10時間静置した。
その後、試験ユニットを23℃、湿度50%の条件下に戻し、湿度負荷後の粘着力F’を測定した。これら測定値F、F’を用いて下記式により粘着増加率を求めた。
(粘着増加率)=(F’−F)/F×100
(3)ホールディングトルク値の変化率
図4に示すマグネットフォルダータイプのストッパーの製品形状の架橋体を作成し、これにマグネットをはめ込み、実際にハードディスク装置に取り付けた。ハードディスクのアームを、ストッパーに接触させ、23℃、湿度50%の条件下で、ストッパーからアームを引き剥がす際の荷重を測定し、これを初期ホールディングトルク値Fとした。
次いで、再度ストッパーにアームを接触させ、この状態のまま60℃80%の条件下で10時間静置した。
その後、ストッパーとアームとを23℃、湿度50%の条件下に戻して、湿度負荷後のホールディングトルク値F’を測定した。これら測定値F、F’を用いて下記式によりホールディングトルク値の変化率を求めた。
(ホールディングトルク値の変化率)=(F’−F)/F×100

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール架橋可能なフッ素ゴムと、
架橋促進剤と、ポリオール系架橋剤と、水酸化カルシウムと、必要により酸化マグネシウムとを含有し、かつ、上記架橋促進剤とポリオール系架橋剤との重量比R{架橋促進剤/ポリオール系架橋剤}が0.9〜5であるポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物を、
必要により予めポリオール架橋した後、
150〜300℃の温度範囲で0.1〜48時間熱処理することにより、架橋体の表面の摩擦係数が1未満の低摩擦性フッ素ゴム架橋体を得ることを特徴とする低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項2】
上記重量比Rが0.9〜3であり、上記熱処理を200〜300℃の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1に記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項3】
上記重量比Rが0.9〜2であり、上記熱処理を240〜300℃の温度範囲で10〜48時間行うことを特徴とする請求項1または2に記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項4】
上記架橋促進剤が有機第4級ホスホニウム塩であり、かつ上記ポリオール系架橋剤がビスフェノール類である請求項1〜3の何れかに記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項5】
上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、上記架橋促進剤が2.1〜20重量部、上記ポリオール系架橋剤が0.4〜20重量部の量で含まれていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項6】
上記フッ素ゴム組成物には、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、比表面積が20m/g未満の水酸化カルシウムが0.5〜10重量部の量で含まれていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項7】
上記フッ素ゴム組成物には、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、上記酸化マグネシウムが3.0重量部以下の量で含まれていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項8】
上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物には、さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が、上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、5〜200重量部の量で含まれていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項9】
上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴム組成物のポリオール架橋時に、金型内周面が凹凸処理された圧縮成形金型を用いて、0.5〜200μmの平均深さの凹凸面を有する架橋体を得て、これを上記熱処理することを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項10】
熱処理後の架橋体をハードディスク装置用ストッパーとして用いる組成物であって、
ポリオール架橋可能なフッ素ゴム、ポリオール系架橋剤、および架橋促進剤を含み、
ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100重量部に対して、ポリオール系架橋剤0.4〜20重量部、
上記架橋促進剤とポリオール系架橋剤との重量比R{架橋促進剤/ポリオール系架橋剤}が0.9〜2.0であることを特徴とするフッ素ゴム組成物。
【請求項11】
請求項1〜9の何れかに記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法により得られたことを特徴とする衝撃吸収用ストッパ部品。
【請求項12】
請求項1〜9の何れかに記載の低摩擦性フッ素ゴム架橋体の製造方法により得られたことを特徴とするハードディスク装置用ストッパー。
【請求項13】
マグネットフォルダータイプのストッパーとして用いた場合のホールディングトルク値の変化率が14%以下であることを特徴とする請求項12に記載のハードディスク装置用ストッパー。

【国際公開番号】WO2004/094479
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505755(P2005−505755)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005683
【国際出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】