説明

低温液化ガス貯留設備

【課題】外槽と筒状外壁との間への雨水や結露水の浸入を簡便、かつ、確実に防止できるようにする。
【解決手段】ドーム屋根8の上面を形成している金属製屋根板9と金属製筒状周壁10とを一連一体に形成してある外槽3の内側に、低温液化ガス貯留用の内槽を断熱材5を介して収容し、外槽の外側部を全周に亘って取り囲むコンクリート製の筒状外壁6を外槽と一体に立設すると共に、その筒状外壁の上端面を環状に覆う金属製覆い板7を設けてある低温液化ガス貯留設備であって、外槽から覆い板に亘り、金属製継ぎ板13を筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で環状に架け渡して、その筒径方向両端縁部14,15の夫々を一連に溶接接合してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム屋根の上面を形成している金属製屋根板と金属製筒状周壁とを一連一体に形成してある外槽の内側に、低温液化ガス貯留用の内槽を断熱材を介して収容し、前記外槽の外側部を全周に亘って取り囲むコンクリート製の筒状外壁を前記外槽と一体に立設すると共に、その筒状外壁の上端面を環状に覆う金属製覆い板を設けてある低温液化ガス貯留設備に関する。
【背景技術】
【0002】
上記低温液化ガス貯留設備は、外槽の外側部を全周に亘って取り囲むコンクリート製の筒状外壁を外槽と一体に立設してあるので、外槽と筒状外壁との間に雨水や結露水が浸入して、外槽を構成している金属製の屋根板又は筒状周壁が腐食し易い問題がある(例えば、特許文献1参照)。
このため、外槽と筒状外壁との間への雨水や結露水の浸入を防止するために、従来、筒状外壁の上端面を環状に覆う金属製覆い板の端面と外槽との対向箇所を互いに一連に溶接接合する等の対策が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−196029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、外槽は低温液化ガス貯留設備の設置現場で完成させるので、覆い板の筒径方向内方側端面の形状を、実際の外槽の外周形状に沿わせて設けることが難しくて、覆い板の端面と外槽との対向箇所に大きな隙間ができ易い。
このために、覆い板の筒径方向内方側端面の形状を、実際の外槽の外周形状に沿わせるための覆い板の製作・加工に非常に手間を要し、また、その隙間を溶接肉盛りで埋めるとしても、溶接作業に多大の手間と時間を要する欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、外槽と筒状外壁との間への雨水や結露水の浸入を簡便、かつ、確実に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、ドーム屋根の上面を形成している金属製屋根板と金属製筒状周壁とを一連一体に形成してある外槽の内側に、低温液化ガス貯留用の内槽を断熱材を介して収容し、前記外槽の外側部を全周に亘って取り囲むコンクリート製の筒状外壁を前記外槽と一体に立設すると共に、その筒状外壁の上端面を環状に覆う金属製覆い板を設けてある低温液化ガス貯留設備であって、前記外槽から前記覆い板に亘り、金属製継ぎ板を筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で環状に架け渡して、その筒径方向両端縁部の夫々を一連に溶接接合してある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
外槽から覆い板に亘って金属製継ぎ板を環状に架け渡し、その継ぎ板の筒径方向両端縁部の夫々を、外槽と覆い板に一連に溶接接合してあるので、覆い板の端面と外槽との対向箇所に大きな隙間ができても、覆い板の筒径方向内方側端面の形状を、実際の外槽の外周形状に沿わせるための覆い板の製作・加工を行ったり、その隙間を溶接肉盛りで埋めるようなことなく、外槽と覆い板に一連に溶接接合してある環状の継ぎ板で、外槽と筒状外壁との間への雨水や結露水の浸入を確実に防止できる。
また、継ぎ板を筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で環状に架け渡してあるので、雨水や結露水を継ぎ板の上面に沿って覆い板の外周側に向けて流下させ易い。
従って、外槽と筒状外壁との間への雨水や結露水の浸入を簡便、かつ、確実に防止できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記継ぎ板と前記覆い板との間に、前記外槽と前記覆い板とに亘って、金属製補助継ぎ板を筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で環状に架け渡して、その筒径方向両端縁部の夫々を一連に溶接接合してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
継ぎ板と覆い板との間に、外槽と覆い板とに亘って、金属製補助継ぎ板を環状に架け渡して、その筒径方向両端縁部の夫々を、外槽と覆い板に一連に溶接接合してあるので、仮に、継ぎ板と外槽との溶接箇所や継ぎ板と覆い板との溶接箇所にクラックなどが発生して、継ぎ板の内側に雨水や結露水が流入しても、その流入水の外槽と筒状外壁との間への浸入を、補助継ぎ板で確実に防止できる。
また、補助継ぎ板を筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で環状に架け渡してあるので、流入水を補助継ぎ板の上面に沿って覆い板の外周側に向けて流下させ易い。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、金属製補助継ぎ板を、筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で、前記継ぎ板と前記覆い板との間に環状に入り込ませて、その筒径方向内方側端縁部を前記外槽に一連に溶接接合するとともに、筒径方向外方側端縁部を前記覆い板に対して相対変位自在に設けてある点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
金属製補助継ぎ板を、筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で、継ぎ板と覆い板との間に環状に入り込ませて、その筒径方向内方側端縁部を外槽に一連に溶接接合してあるので、仮に、継ぎ板と外槽との溶接箇所にクラックなどが発生して、継ぎ板の内側に雨水や結露水が流入しても、その流入水を補助継ぎ板の上面に沿って覆い板の外周側に向けて流下させ易く、流入水が外槽と筒状外壁との間に浸入しにくい。
また、補助継ぎ板の筒径方向外方側端縁部を覆い板に対して相対変位自在に設けてあるので、外槽と筒状外壁とが熱膨張率の違いなどに起因して相対変位しようとしても、補助継ぎ板の外槽との溶接箇所に熱応力などが作用しにくく、クラックなどが発生しにくい。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記外槽の前記筒状外壁に対向する外周面に、金属製環状帯板材を前記筒状外壁側に向けて鍔状に突出する姿勢で一連に溶接固定して、前記筒状外壁に埋設してある点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
外槽の筒状外壁に対向する外周面に、金属製環状帯板材を筒状外壁側に向けて鍔状に突出する姿勢で一連に溶接固定して、筒状外壁に埋設してあるので、仮に、継ぎ板と外槽との溶接箇所や継ぎ板と覆い板との溶接箇所にクラックなどが発生して、継ぎ板の内側に雨水や結露水が流入し、その流入水が外槽と筒状外壁との間に浸入しても、また、継ぎ板と外槽との接続又は固定が成される前の建設途中において、外槽と筒状外壁との間に雨水や結露水が浸入しても、筒状外壁に埋設してある環状帯板材よりも下側の外槽と筒状外壁との間への浸入を防止して、外槽を構成している屋根板又は筒状周壁の腐食範囲の拡大を防止できる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記環状帯板材を、筒径方向外方側ほど高くなる傾斜姿勢で一連に溶接固定して、前記筒状外壁に埋設してある点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
環状帯板材を、筒径方向外方側ほど高くなる傾斜姿勢で一連に溶接固定して、筒状外壁に埋設してあるので、継ぎ板の内側に流入した流入水が外槽と筒状外壁との間に浸入しても、その流入水を外槽と環状帯板材との間に溜めて、環状帯板材よりも下側の筒状外壁内部への浸み出しを防止できる。
【0015】
本発明の第6特徴構成は、前記覆い板の筒径方向内方側端部を筒周方向に沿って上向きに一連に屈曲させてある点にある。
【0016】
〔作用及び効果〕
覆い板の筒径方向内方側端部を筒周方向に沿って上向きに一連に屈曲させてあるので、仮に、継ぎ板や補助継ぎ板の下側で覆い板の上に水が溜まるようなことがあっても、その水の筒径方向内方側への流動に抵抗を与えることができ、外槽と筒状外壁との間に水が浸入しにくい。
【0017】
本発明の第7特徴構成は、前記外槽と前記覆い板の端面との対向箇所に、樹脂コーキング材を充填してある点にある。
【0018】
〔作用及び効果〕
外槽と覆い板の端面との対向箇所に、樹脂コーキング材を充填してあるので、仮に、継ぎ板と外槽との溶接箇所や継ぎ板と覆い板との溶接箇所にクラックなどが発生して、継ぎ板の内側に雨水や結露水が流入しても、その流入水の外槽と筒状外壁との間への浸入を、樹脂コーキング材で確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】低温液化ガス貯留設備の概略縦断面図
【図2】低温液化ガス貯留設備の概略平面図
【図3】要部の縦断面図
【図4】第2実施形態を示す要部の縦断面図
【図5】第3実施形態を示す要部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は本発明による低温液化ガス(本実施形態では液化天然ガス)LNGの貯留設備を示し、鋼管杭1で補強してある地盤に基礎スラブ2を略円形に設けて、その基礎スラブ2の上に鋼製の外槽3を設置し、外槽3の内側に、液化天然ガス貯留用の内槽4をグラスウールや粒状パーライトなどの断熱材5を介して収容するとともに、外槽3の外側部を全周に亘って取り囲むプレストレスコンクリート製の防液用円筒状外壁6を基礎スラブ2と外槽3とに一体に立設し、円筒状外壁6の上端面を環状に覆う鋼製覆い板7を設けてある。
【0021】
前記外槽3は、ドーム屋根8の上面を形成している鋼製の屋根板9と鋼製の円筒状外槽側部ライナ(円筒状周壁)10と外槽底部ライナ11とを溶接などで一連一体に形成して構成してあり、外槽底部ライナ11を挟んで底部保冷層12を略円形に設置してある。
【0022】
そして、図3に示すように、屋根板9の外面から覆い板7の上面に亘り、鋼製継ぎ板13を筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で一連の環状に架け渡して、その筒径方向両端縁部14,15の夫々を屋根板9の外面と覆い板7の上面とに、全周に亘って一連の連続溶接で接合してある。
【0023】
また、継ぎ板13と覆い板7との間に、屋根板9の外面と覆い板7の上面とに亘って、鋼製補助継ぎ板16を筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で一連の環状に架け渡して、その筒径方向両端縁部17,18の夫々を屋根板9の外面と覆い板7の上面とに、全周に亘って一連の連続溶接で接合してある。
【0024】
前記外槽側部ライナ10の頂部は、一方のフランジ22を水平方向に沿わせて筒径方向内方側に向け、且つ、他方のフランジ23を鉛直方向に沿わせて、円筒状鋼板部25の上端部に全周に亘って一連の環状に連続溶接してある一連の頂部山形鋼24で構成してあり、屋根板9を水平フランジ22の端縁に全周に亘って一連の連続溶接で接合してある。
【0025】
そして、外槽3の筒状外壁6に対向する外周面、つまり、頂部山形鋼24における鉛直フランジ23の外周面に、一連の鋼(金属の一例)製環状帯板材26を、筒状外壁6側に向けて鍔状に突出し、かつ、筒径方向外方側ほど高くなる傾斜姿勢で、全周に亘って一連の連続溶接で固定して、筒状外壁6を形成しているコンクリートに埋設してある。
【0026】
尚、筒状外壁6は、外槽側部ライナ10の周りに形成する側部コンクリート層27と、頂部山形鋼24の上部を覆う上部コンクリート層28とに分けて、側部コンクリート層27を打設して環状帯板材26を埋設した後、上部コンクリート層28を打設して設けてある。
【0027】
〔第2実施形態〕
図4は本発明による低温液化ガス貯留設備の別実施形態を示し、補助継ぎ板16を、筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で、継ぎ板13と覆い板7との間に一連の環状に入り込ませて、その筒径方向内方側端縁部17を屋根板9の外面に、全周に亘って一連の連続溶接で接合するとともに、筒径方向外方側端縁部18と覆い板7との間に隙間を設けて、端縁部18を覆い板7に対して相対変位自在に設け、覆い板7の筒径方向内方側端部19を筒周方向に沿って上向きに一連に屈曲させてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0028】
〔第3実施形態〕
図5は本発明による低温液化ガス貯留設備の別実施形態を示し、屋根板9の外面と覆い板7の端面20との対向箇所に、樹脂コーキング材21を一連の環状に充填してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0029】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による低温液化ガス貯留設備は、液体酸素や液体水素,液化プロパンガスなどの低温液化ガスの貯留設備であっても良い。
2.本発明による低温液化ガス貯留設備は、第1実施形態で示した覆い板7の筒径方向内方側端部19を、筒周方向に沿って上向きに一連に屈曲させてあっても良い。
【符号の説明】
【0030】
3 外槽
4 内槽
5 断熱材
6 筒状外壁
7 覆い板
8 ドーム屋根
9 屋根板
10 筒状周壁
13 継ぎ板
14 端縁部
15 端縁部
16 補助継ぎ板
17 端縁部
18 端縁部
21 樹脂コーキング材
26 環状帯板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム屋根の上面を形成している金属製屋根板と金属製筒状周壁とを一連一体に形成してある外槽の内側に、低温液化ガス貯留用の内槽を断熱材を介して収容し、前記外槽の外側部を全周に亘って取り囲むコンクリート製の筒状外壁を前記外槽と一体に立設すると共に、その筒状外壁の上端面を環状に覆う金属製覆い板を設けてある低温液化ガス貯留設備であって、
前記外槽から前記覆い板に亘り、金属製継ぎ板を筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で環状に架け渡して、その筒径方向両端縁部の夫々を一連に溶接接合してある低温液化ガス貯留設備。
【請求項2】
前記継ぎ板と前記覆い板との間に、前記外槽と前記覆い板とに亘って、金属製補助継ぎ板を筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で環状に架け渡して、その筒径方向両端縁部の夫々を一連に溶接接合してある請求項1記載の低温液化ガス貯留設備。
【請求項3】
金属製補助継ぎ板を、筒径方向外方側ほど低くなる傾斜姿勢で、前記継ぎ板と前記覆い板との間に環状に入り込ませて、その筒径方向内方側端縁部を前記外槽に一連に溶接接合するとともに、筒径方向外方側端縁部を前記覆い板に対して相対変位自在に設けてある請求項1記載の低温液化ガス貯留設備。
【請求項4】
前記外槽の前記筒状外壁に対向する外周面に、金属製環状帯板材を前記筒状外壁側に向けて鍔状に突出する姿勢で一連に溶接固定して、前記筒状外壁に埋設してある請求項1記載の低温液化ガス貯留設備。
【請求項5】
前記環状帯板材を、筒径方向外方側ほど高くなる傾斜姿勢で一連に溶接固定して、前記筒状外壁に埋設してある請求項4記載の低温液化ガス貯留設備。
【請求項6】
前記覆い板の筒径方向内方側端部を筒周方向に沿って上向きに一連に屈曲させてある請求項1〜5のいずれか1項記載の低温液化ガス貯留設備。
【請求項7】
前記外槽と前記覆い板の端面との対向箇所に、樹脂コーキング材を充填してある請求項1〜5のいずれか1項記載の低温液化ガス貯留設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−252604(P2011−252604A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205084(P2011−205084)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2006−74615(P2006−74615)の分割
【原出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】