説明

低RF損失の静電気散逸接着剤

【課題】RF性能を損なうことなくスペースレーダアンテナのフローティングメタルコンポーネントを十分に接地する方法を改良する。
【解決手段】本発明は概して導電性接着剤に関する。具体的には、本発明は、有機高分子樹脂及び導電性高分子からなる導電性接着剤に関する。有利には、導電性接着剤のRF損失は低く、よってスペースレーダ用アンテナ、及びアンテナのコンポーネントがRFの視野にあるその他のアンテナ用途に使用するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して導電性接着剤に関する。具体的には、本発明は、有機高分子樹脂及び導電性高分子からなる導電性接着剤に関する。有利には、本導電性接着剤は低いRF損失を有し、よってスペースレーダ用アンテナに用いるのに適している。
【背景技術】
【0002】
宇宙船及びスペースレーダ用アンテナに用いられる電子構造は、電子構造表面上に蓄積する電荷の影響を受けやすい。宇宙環境は、太陽風及びその他のソースを起源とするエネルギー性エレクトロンのフラックスを有する。これらのエレクトロンは、宇宙船又はサンシールドを貫通して電子構造の表面に静電気として蓄積しうる。静電気が蓄積して十分な電圧に達すると、アーク放電により制御不能に放出されて、電子構造に損傷を与える可能性がある。
このような制御不能な放電現象から保護するため、電子構造の導電表面は、共通の接地地面に伸びるリード線により接地される必要がある。しかながら、スペースレーダ用アンテナの電子要素の接地を行うことができる適切な機構の開発は困難であることが分かっている。特に、スペースレーダ用アンテナは、軽量発泡タイル上の、パッチとも呼ばれる多数の金属製高周波(RF)放射要素からなる。これら金属パッチを有する発泡タイルは、断熱のために、サンシールドに、且つ互いに接合される。これら金属パッチの各々は、アンテナの電子要素に干渉しうる制御不能な静電放電を回避するために、宇宙船構造に接地されなければならない。
【0003】
金属パッチを接地するための従来の方法では、各金属要素を個別に接地するための金属ピンを使用した。しかしながら、金属ピンの使用はアンテナ設計を複雑にし、それらを軽量発泡タイルに使用することは非現実的であるので、スペースレーダアンテナに使用することは現実的でない。
導電性接着剤も、金属パッチの接地に使用されている。特に、炭素粉末、黒鉛、或いは導電性セラミック又は金属のような導電性フィラーを含む接着剤は、宇宙環境に曝されていることにより金属パッチ上に蓄積する静電気を除去するために使用されている。しかしながら、このような導電性接着剤は、スペースレーダ用アンテナに使用するには不十分であることが分かっている。特に、接着剤に含まれる固体の導電性フィラーがRFシグナルを吸収することにより、RFリターンが高くなり、且つ挿入損失が生じる。その結果、アンテナは適切に機能できなくなる。加えて、接着剤の導電性が高すぎる場合、金属パッチ間に流れる電流が過剰となり、回路の性能が劣化し、極端な場合には回路の短絡が起こる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、RF性能を損なうことなくスペースレーダ用アンテナのフローティングメタルパッチを十分に接地する方法を改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、有機高分子樹脂と導電性高分子とを含む導電性接着剤に関し、本導電性接着剤の電気抵抗は約10オーム〜10オーム未満である。
本発明の別の態様による導電性接着剤は、有機高分子樹脂と、(接着剤の)4重量%超〜(接着剤の)約10重量%の導電性高分子とを含む。
【0006】
本発明の別の態様は、導電性接着剤を使用して装置を接地する方法に関する。本方法は、フローティングメタルコンポーネント又は電子コンポーネントを備えた装置を供給することと、フローティングメタルコンポーネント又は電子コンポーネントを、各コンポーネントの少なくとも一部に接着剤を適用することにより、接地ポイントに電気的に接続することとを含み、接着剤が有機高分子樹脂と導電性高分子とを含み、接着剤の電気抵抗が約10オーム〜10オーム未満である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例2で調製される導電性接着剤のリターン損失を示すグラフである。(――)は全ての接着剤の平均リターン損失であり、(〜〜〜〜)は接着剤に測定された最小(下の線)又は最大(上の線)のリターン損失であり、(- - - -)は平均リターン損失と一の標準偏差との和(上の線)であるか、又は平均リターン損失と一の標準偏差との差(下の線)である。
【図2】実施例2で調製される導電性接着剤の挿入損失を示すグラフである。(――)は全ての接着剤の平均挿入損失であり、(〜〜〜〜)は接着剤に測定された最小(下の線)又は最大(上の線)の挿入損失であり、(- - - -)は平均挿入損失と一の標準偏差との和(上の線)であるか、又は平均挿入損失と一の標準偏差との差(下の線)である。
【図3】実施例2で調製される導電性接着剤とコントロールの損失接線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、概して導電性接着剤に関する。具体的には、本発明は、有機高分子樹脂と導電性高分子とを含む導電性接着剤に関する。有利には、本導電性接着剤は、RF損失が低いことによりスペースレーダ用アンテナに使用するのに適している。
上述のように、本発明の導電性接着剤は有機高分子樹脂と導電性高分子の混合物である。樹脂は接着剤に結合特性を付与する。樹脂は、導電性高分子の不在下で接着剤を形成するのに適したあらゆる高分子材料とすることができる。好ましい樹脂はポリウレタンであるが、他の適切な樹脂には、例えば、エポキシ、シリコン、アクリル、ポリシアン酸(polycyanate)エステル樹脂などが含まれる。適合し合う樹脂の組み合わせも使用することができる。有利には、樹脂は、導電性に変性されている間もその接着機能性を保持する。一般に、導電性の接着剤は(接着剤の)約90重量%〜(接着剤の)約98重量%に相当する有機高分子樹脂を含む。
【0009】
導電性高分子は、接着剤に導電性を付与する。導電性高分子は、有機高分子樹脂と混合することができ、且つ導電性であるあらゆる高分子材料とすることができる。好ましい導電性高分子は、酸をドープしたポリアニリンなどのポリアニリンである。ポリアニリンは、従来技術に既知の任意の適切な酸を用いてドープすることができる。適切なドープポリアニリンの例は、PANI−DBSAと表記されることもあるポリアニリン−ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリアニリン−カンファースルホン酸、ポリアニリン−ジノニルナフタレンスルホン酸、ポリアニリン−塩酸、ポリアニリン−スルホン酸などを含むが、これらに限定されない。他の適切な導電性高分子には、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン硫化物などが含まれる。
好ましくは、導電性高分子は、ポリアニリン−ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリアニリン−塩酸、ポリアニリン−スルホン酸などの、任意の適切な酸をドープしたポリアニリンである。本発明の導電性接着剤は、一種類の導電性高分子を含むか、又は二種類以上の異なる導電性高分子の組み合わせを含むことができる。
【0010】
混合物中の、有機高分子樹脂と導電性高分子の比率は、硬化させた最終接着剤の接地地面に対する電気抵抗が、約10オームから10オーム未満、好ましくは約10オーム〜約10オームとなるように選択される。この抵抗は、電子構造又は金属構造の表面上に蓄積した静電気が、アーク放電やその他電子コンポーネントの破壊といった制御不能な放電現象の危険を生じる程大きくなる前に、そのような静電気を制御下で慎重に放出しながら地面にゆっくりと伝導するのに十分に低い。
有利には、本発明の導電性接着剤の電気抵抗の変動は、広い温度範囲に亘って許容される。本発明の導電性接着剤の導電性は温度が高い程大きく、温度が低いほど小さいが、変化は必要な電気抵抗の範囲内に収まるので、このような変動は許容可能である。例えば、−40℃において、本接着剤の電気抵抗の大きさは、室温(約25℃)における接着剤の抵抗より概ね一段階低く、100℃における電気抵抗は、室温における接着剤の抵抗より概ね一段階高い。対照的に、炭素粉末、黒鉛、或いはセラミック又は金属粒子フィラーのような粒子を含む接着剤の導電性は、温度が低いほど、接着剤が収縮して粒子が互いに接近するために高く、温度が高いほど、接着剤が膨張して粒子が互いから遠ざかるために低くなる。
【0011】
好ましくは、導電性接着剤は、(接着剤の)約2.0重量%〜(接着剤の)約10重量%、好ましくは(接着剤の)約2.5重量%〜(接着剤の)約6重量%に相当する導電性高分子を含む。一実施形態では、導電性接着剤は、(接着剤の)4重量%超〜(接着剤の)約10重量%、好ましくは(接着剤の)4%超〜(接着剤の)約6重量%に相当する導電性高分子を含む。
一部の実施例では、導電性接着剤の電気抵抗は、接着剤に含まれる導電性高分子の割合によって選択的に決定することができる。例えば、高分子が小さな粒子サイズに適切に分散されている場合、導電性高分子の量を増加させると接着剤の電気抵抗は低下する。電気抵抗と、導電性高分子の割合との関係を較正することにより、所望の電気抵抗を達成するのに必要な割合を見つけることができる。変動する電気抵抗を有する接着剤は、特定の用途及び動作環境に使用することができ、さらには同じ構造の異なる部分に使用することができる。
【0012】
加えて、上述のように、本発明の導電性高分子は、有利には良好なRF性能を有する。具体的には、本発明の接着剤が使用されるとき、炭素粉末、黒鉛、或いはセラミック又は金属粒子フィラーを含む導電性接着剤と比較して、RF損失が殆ど無い。特定の理論によるものではないが、導電性高分子は、炭素粉末、黒鉛、或いはセラミック又は金属粒子フィラーがRFシグナルを吸収するのと同様には同シグナルを吸収しない。そうではなく、導電性高分子は、RFシグナルを殆ど吸収することなく通過させる。その結果、導電性高分子のRF損失は、従来使用されている炭素粉末、黒鉛、或いはセラミック又は金属粒子フィラーの同損失より小さい。
本発明の導電性接着剤のリターン損失及び挿入損失は、それらが測定される周波数に応じて変化する。しかしながら、好ましくは、約6GHz〜約12GHzの周波数において、本導電性接着剤のリターン損失は−30dB以下であり、挿入損失は約0.01dB以下である。加えて、有利には、本導電性接着剤の誘電率は約3.0以下、好ましくは約2.5以下であり、損失接線は約0.05以下、好ましくは約0.03以下である。本発明の接着剤は、広い範囲に亘る係数を有することができ、よって硬化させたとき軟らかくすることも、硬くすることもできる。
【0013】
本導電性接着剤のコンダクタンスの大きさは、接着剤に含める導電性高分子の量によって制御することができる。しかしながら、一般的には、導電性接着剤の導電率は、約1メガオーム(10オーム)〜約100メガオーム(10オーム)である。
スペースレーダ用アンテナの電子コンポーネント又は金属コンポーネント上に電荷が蓄積すると、この電荷は導電性接着剤によって接地地面にゆっくりと伝導される。地面へと静電気をこのように排出又は漏洩させることにより、電子コンポーネント又は金属コンポーネント上における電圧が、そうでなければ増大してアーク放電又はその他周囲のエレクトロニクスへの損傷を招きうるまで高まるのを防ぐ。換言すると、本導電性接着剤は、静電気を制御下で徐々に放出し、電機コンポーネントを損傷させうるアーク放電のような制御不能な放電を防ぐ。
【0014】
よって、別の実施形態では、本発明は、導電性接着剤を用いて装置を接地する方法に関する。本方法は、フローティングメタルコンポーネント又は電子コンポーネントを備える装置を供給すること、及びフローティングメタルコンポーネント又は電子コンポーネントを、各コンポーネントの少なくとも一部に導電性接着剤を適用することにより、一の接地ポイントに電気的に接続することを含む。導電性接着剤は、ここに開示するいずれかの導電性接着剤とすることができ、好ましくは、装置のフローティングメタルコンポーネント又は電子コンポーネントが接着剤により接地ポイントに接続されるように適用される。本明細書で使用する「フローティングメタルコンポーネント又は電子コンポーネント」という用語は、接地ポイントに電気的に接続されていない、装置の金属コンポーネント又は電子コンポーネントを意味する。例えば、フローティングメタルコンポーネントは、ここに開示されるような、スペースレーダ用アンテナ上の金属パッチでありうる。接地ポイントは、フローティングメタルコンポーネント又は電子コンポーネントを接地するのに適したいずれかの位置又は構造とすることができ、一部の実施例においては、例えば装置自体の基部である。特定の実施形態では、装置はスペースレーダ用アンテナである。他の適切な装置の例には、RF生成要素を含むか、又は装置のコンポーネントを接地することが必要な、あらゆる装置が含まれる。
導電性接着剤は通常、何らかの適切なメカニズムにより、高せん断混合装置を用いて、トルエン、キシレン、クロロフォルム、1−メチルピロリドン(NMP)、ジクロロメタンなどの溶媒中に導電性高分子を混ぜ合わせることによって調製される。好ましくは、溶媒はトルエンである。導電性高分子は、例えば粉末又は溶媒中に細かく分散した形態などを含む任意の適切な形態で用いることができる。次いで、所望の量の導電性高分子/溶媒液を、硬化していない有機高分子樹脂に添加し、強く振盪又は攪拌することによりよく混ぜ合わせる。一部の実施形態では、高分子粉末又は高分子溶液を接着剤の樹脂に混合させた後、樹脂の硬化剤を加え、容器に収容し、そして急激に冷凍することにより、任意でフィルム又は凍結プリミックスに成形することができる。
【0015】
導電性接着剤/溶媒液と、硬化させていない有機高分子樹脂とを混合した後、有利には、結果として得られた高分子/樹脂混合物から溶媒を除去する。特定の理論によるものではないが、混合物中の溶媒は、硬化工程を妨害する場合があると考えられる。よって、高分子/樹脂混合物から溶媒を除去することにより、硬化により形成された導電性接着剤の結合特性が向上する。
溶媒は、任意の適切なメカニズムにより除去することができる。好適な一実施形態では、溶媒は回転蒸発を用いて除去される。好ましくは、硬化後の本発明の導電性接着剤に含まれる溶媒は(接着剤の)約2重量%以下であり、好ましくは溶媒は全く含まれない(つまり含まれる溶媒は、接着剤の0重量%)。換言すれば、硬化後の本発明の導電性接着剤は、有利には、少なくとも(接着剤の)約98重量%の固形分、好ましくは(接着剤の)100重量%の固形分を有する。
【0016】
溶媒を除去した後、高分子/樹脂混合物は、所望のレベルの接着性を提供するのに適した量で、接着対象の構造体に適用される。硬化前の混合物は一般に、粘性の大きな液体であるか、又は、例えば少なくとも約2000センチポアズの粘度を有する濃いペーストである。この実施形態では、接着対象の構造体への高分子/樹脂混合物の適用は、はけ塗り、スクリーン印刷、流し塗り、フィルム積層、スプレー付与など、そのような粘性の液体又はペーストに作用可能な任意の技術によって行われる。好ましくは、高分子/樹脂混合物は、ボンドライン厚が0.002インチ〜0.005インチとなるのに十分な量で適用される。別法では、混合物は、一般に厚さ約0.002インチ〜約0.005インチの薄膜の形態である。この実施形態では、フィルムを、接着対象の構造体に適用する。一部の実施形態では、適用前にフィルムを部分的に硬化させることができる。
適用された後、接着剤を硬化させる。好ましくは、硬化は、有機高分子樹脂に推奨されている手順に従って行われる。導電性高分子の比率はとても小さいので、その存在は混合物の硬化に殆ど影響を及ぼさない。従って、硬化方法は、有機高分子樹脂の硬化工程によって決定づけられる。一実施形態では、接着剤は室温で一晩硬化させられる。別法では、硬化は数時間に亘って高温で行うことができる。硬化後の接着剤の結合力は、約100psi重ね合わせ引張りせん断強さ〜約5000psi重ね合わせ引張りせん断強さでよい。
【0017】
本発明の導電性接着剤をスペースレーダ用アンテナに使用することにより、RF性能を低下させることなく、例えば、フローティング電子コンポーネント又は金属パーツを接地すること、発泡タイルコンポーネントを互いに接合すること、及び/又は発泡タイルアセンブリにサンシールドを接合することができる。フローティング金属パーツの接地、及び衛星の構造のプラスチックパーツの被覆といった他の用途においても、RF損失が重要でない場合でも、この技術を利用することができる。
ここまで、本発明について詳細に説明したが、請求の範囲に規定する本発明の範囲から逸脱することなく、改良及び変更が可能であることは明らかである。
【0018】
本発明をさらに説明するために、以下の非限定的実施例について記載する。
【実施例1】
【0019】
この実施形態では、様々な導電性接着剤の電気抵抗を測定した。
まず、高いせん断力下において、様々な濃度の導電性高分子ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)をトルエン溶媒に混合することにより導電性接着剤を調製した。次いで手攪拌により高分子/溶媒混合物を様々な有機高分子樹脂と混合した。結果として得られた高分子/樹脂混合物から、回転蒸発器、コンデンサ付きYamato Model RE 540を用いて溶媒を除去した。結果として得られた高分子/樹脂混合物は溶媒を含まなかった。混合物の調製に使用した特定の樹脂と導電性高分子の量の詳細を下記の表1に示す。
【0020】
各混合物を櫛状の試験回路にはけ塗りした。その後高分子/樹脂混合物をオーブンに入れて65℃(150°F)で3〜4時間硬化させ、導電性接着剤を形成した。硬化後、オーム計を用いて接着剤の電気抵抗を測定した。結果を表1に示す。
表1

【0021】
これらの結果から分かるように、導電性接着剤の抵抗の測定値はすべて良好であった。エポキシ樹脂試料のPANI/DBSAの量を6.0%から2.5%に減少させたとき、抵抗が1.0×10オームから3.0×10オームへ低下したことは、2.5%のPANI/DBSAを含む試料中には、6.0%のPANI/DBSAを含む試料に比べて導電性高分子がよく分散している(粒子サイズが小さい)ことによるものと考えられる。特定の理論によるものではないが、接着剤中に導電性高分子がよく分散している方が接着剤の抵抗は低い。よって、本実施例における最適な静電放電(ESD)(地面に対する抵抗)性能は、高分子が適切に分散しているとき(つまり、粒子サイズが小さいとき)、2.5%のPANI/DBSA量で達成された。
加えて、2.5%のPANI/DBSA凍結プリミックスを使用したとき、凍結プリミックスでない2.5%PANI/DBSAを含む試料と比較して、抵抗は3.0×10オームから5.0×10オームに上昇した。上述のように、プリミックスは、凍結前にプリミックスに添加された硬化剤を含んでいる。特定の理論によるものではないが、樹脂に硬化剤を添加してから接着剤を適用する(結合させる)までの時間が増大するほど、結果として得られる接着剤の抵抗も増大すると考えられる。従って、接着剤適用の前にプリミックスを凍結し、そして解凍するために余分な時間を要するので、凍結プリミックスを用いて調製された接着剤の抵抗は高い。
【実施例2】
【0022】
この実施例では、様々な導電性接着剤のリターン損失と挿入損失とを測定した。
まず、実施例1に記載のように導電性接着剤を調製した。各接着剤を調製するために用いた特定の樹脂と導電性高分子の量を下記の表2に示す。分散する粒子サイズの範囲(ミリメータ)も示す。エポキシ樹脂を含むが導電性高分子を含まない二つのコントロールも試験した。
【0023】
表2

【0024】
導電性接着剤及び二つのエポキシコントロールの各々のリターン損失と挿入損失とを、Damascus Wave Resonatorを用いて測定した。これらの測定の結果を図1及び2と、下記の表3及び4に示す。具体的には、表2に列挙した全ての導電性接着剤の、1〜25GHzの周波数での、図1は平均リターン損失を、図2は平均挿入損失を示す。許容可能なリターン及び挿入損失の測定値は、それらリターン及び挿入損失が測定された周波数に応じて変化するが、6GHz〜12GHzの周波数については、−30dB以下のリターン損失と0.01dB以下の挿入損失が望ましい。図1及び2に示すように、このような周波数における導電性接着剤のリターン及び挿入損失は許容可能なレベルである。表3及び4は、表2に列挙した各接着剤の、1〜50GHzに亘る周波数での、それぞれリターン損失(dB)及び挿入損失(dB)を示す。
各試料の損失接線及び誘電率も測定し、これらの結果を図3(損失接線)と上記の表2に示した。これらの結果から分かるように、最適なRF性能(低い損失)は、高分子が適切に分散しているとき(つまり粒子サイズが小さいとき)、2.5%のPANI/DBSA量で達成された。
【0025】
表3:リターン損失(dB)


表3(続き)


表3(続き)

【0026】
表4:挿入損失(dB)


表4(続き)


表4(続き)

【0027】
本発明又は本発明の好ましい実施形態による要素の語頭に付される「一つの」「その」及び「前記」といった表現は、当該要素が一又は複数個存在することを意味する。「備える」「含む」及び「有する」といった表現は包括的なもので、列挙される要素以外にも追加の要素がありうることを意味する。
上記を考慮すると、本発明の複数の目的が達成され、その他有利な結果が得られることが明らかである。
【0028】
本発明の範囲から逸脱することなく上述の組成物及び製品に様々な変更を加えることができるので、上述の説明に含まれる全ては例示であって限定的な意味は有さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機高分子樹脂と導電性高分子とを含む導電性接着剤であって、電気抵抗が約10オーム〜10オーム未満である接着剤。
【請求項2】
有機高分子樹脂が、エポキシ、ポリウレタン、シリコン、アクリル、ポリシアン酸エステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
(接着剤の)約90重量%〜(接着剤の)約98重量%の有機高分子樹脂を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項4】
導電性高分子が、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレン硫化物、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項5】
ポリアニリンが、ポリアニリン−ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリアニリン−カンファースルホン酸、ポリアニリンジノニルナフタレンスルホン酸、ポリアニリン−塩酸、ポリアニリン−スルホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、ドープされたポリアニリンである、請求項1に記載の接着剤。
【請求項6】
(接着剤の)約2重量%〜(接着剤の)約10重量%の導電性高分子を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項7】
硬化前の粘度が少なくとも約2000センチポアズである、請求項1に記載の接着剤。
【請求項8】
硬化前は固体のフィルムである、請求項1に記載の接着剤。
【請求項9】
硬化後の固体含有量が少なくとも(接着剤の)約98重量%である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項10】
硬化後の固体含有量が(接着剤の)100重量%である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項11】
硬化後の結合強度が約100psi〜約5000psiである、請求項1に記載の接着剤。
【請求項12】
液体、ペースト、及びフィルムからなる群より選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項13】
有機高分子樹脂と、(接着剤の)4重量%超〜(接着剤の)約10重量%の導電性高分子とを含む、導電性接着剤。
【請求項14】
有機高分子樹脂が、エポキシ、ポリウレタン、シリコン、アクリル、ポリシアン酸エステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の接着剤。
【請求項15】
導電性高分子が、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレン硫化物、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の接着剤。
【請求項16】
ポリアニリンが、ポリアニリン−ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリアニリン−カンファースルホン酸、ポリアニリン−ジノニルナフタレンスルホン酸、ポリアニリン−塩酸、ポリアニリン−スルホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、ドープされたポリアニリンである、請求項15に記載の接着剤。
【請求項17】
導電性接着剤を用いて装置を接地する方法であって、
フローティングメタルコンポーネント又は電子コンポーネントを含む装置を供給すること、及び
フローティングメタルコンポーネント又は電子コンポーネントを、各コンポーネントの少なくとも一部に接着剤を適用することにより接地ポイントに電気的に接続すること
を含み、接着剤が、有機高分子樹脂及び導電性高分子を含み、且つ約10オーム〜10オーム未満の電気抵抗を有する方法。
【請求項18】
接着剤が、(接着剤の)4重量%超〜(接着剤の)約10重量%の導電性高分子を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
硬化前の接着剤の粘度が少なくとも約2000センチポアズである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
装置がスペースレーダ用アンテナである、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−47755(P2010−47755A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−182944(P2009−182944)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】