説明

体温計及び体温情報収集システム

【課題】迅速かつ高精度に体温情報を得ることができる体温計及び体温情報収集システムを提供すること。
【解決手段】患者の体温を測定するための温度センサ12と、この温度センサ12の出力信号に基づいて体温情報を演算する演算部17と、この演算部17によって演算された体温情報を、ISM帯を利用して無線により送信する送信部21と、を備えることを特徴とする。これにより、複数の患者の体温情報を容易に送信することができることから、迅速かつ高精度に体温情報を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体温を測定するための体温計及び体温情報収集システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院などにおいて患者の体温を測定するために種々の体温計が利用されている(例えば、特許文献1参照。)。これら体温計の中には、患者の体温を測定するための温度センサと、この温度センサの測定結果から体温情報を演算する演算部を備えるものが知られている。そして、演算部によって演算された体温情報が表示部などに表示されるようになっている。
そして、看護士などは、表示部の表示を目視することにより、患者の体温情報を得ることができ、その体温情報を記録用紙などに書き取ることにより、各患者の体温情報を記録する。
【特許文献1】特開2001−149324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような体温計では、特に患者が多数収容されているような大病院では、各患者の体温情報を得るのに多大な時間がかかってしまうという問題がある。また、看護士による読み取り時や書き込み時の不注意により、誤った体温情報が記録されてしまう場合もある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、迅速かつ高精度に体温情報を得ることができる体温計及び体温情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る体温計は、患者の体温を測定するための温度センサと、前記温度センサの出力信号に基づいて体温情報を演算する演算部と、前記演算部によって演算された体温情報を、ISM帯を利用して無線により送信する送信部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明に係る体温計においては、温度センサにより患者の体温が測定され、演算部が、温度センサの出力信号に基づいて体温情報を演算する。そして、送信部により、ISM帯を利用して無線により体温情報が送信される。
これにより、複数の患者の体温情報を容易に得ることができる。
【0007】
また、本発明に係る体温計は、緊急信号を出力する緊急スイッチを備え、前記送信部は、前記緊急スイッチから出力された緊急信号を、緊急情報として送信することを特徴とする。
【0008】
この発明に係る体温計においては、緊急スイッチを操作すると、緊急スイッチから緊急信号が出力される。そして、この緊急信号が緊急情報として送信部により送信される。
これにより、患者に緊急事態が生じても、看護士や医師に迅速かつ確実に伝えることができる。
【0009】
また、本発明に係る体温計は、電力を供給する電源ユニットから非接触で供給された電力を蓄電し、この蓄電された電力を前記演算部に供給する蓄電部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る体温計においては、電源ユニットから蓄電部に非接触で電力が供給され、その電力が蓄電部に蓄電される。そして、蓄電部に蓄電された電力が、温度センサ、演算部及び送信部に供給される。
これにより、電池交換を不要にすることができ、利便性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る体温情報収集システムは、患者の体温を測定する体温計と、複数の患者の体温情報を管理する管理部とを有する体温情報収集システムであって、前記体温計は、前記患者の体温を測定するための温度センサと、この温度センサの出力信号に基づいて体温情報を演算する演算部と、この演算部によって演算された体温情報を、ISM帯を利用して無線により送信する送信部とを備え、前記管理部は、前記送信部から送信された体温情報を受信する受信部と、前記受信部によって受信された体温情報を記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る体温情報収集システムにおいては、温度センサにより患者の体温が測定され、演算部が、温度センサの出力信号に基づいて体温情報を演算する。そして、送信部により、ISM帯を利用して無線により体温情報が送信される。さらに、送信された体温情報は、受信部により受信され、記憶部に記憶される。
これにより、複数の患者の体温情報を迅速かつ確実に記録することができ、それら体温情報の管理を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ISM帯を利用した無線によって、複数の患者の体温情報を容易に送信することができることから、迅速かつ高精度に体温情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態における体温情報収集システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態としての体温情報収集システム1を示したものである。
体温情報収集システム1は、患者の体温を測定する体温計2と、複数の患者の体温情報を収集・管理する管理装置(管理部)3とを備えている。
【0015】
体温計2は、図2に示すように、樹脂製の本体部6を備えている。本体部6には、体温情報を表示する表示部7と、音声を集音するマイク8とが設けられている。
本体部6の一端には、金属部材からなる測温部11が設けられている。測温部11内には、患者の体温を測定するための温度センサ12が設けられている。温度センサ12は、例えばサーミスタなどの温度センサである。一方、本体部6の他端には、緊急用の緊急ボタン(緊急スイッチ)13が設けられている。
また、体温計2は、外部から非接触で電力を供給する外部機器としての電源ユニット16を備えている。
【0016】
さらに、体温計2は、図1に示すように、体温計2の全体を制御する制御部(演算部)17を備えている。制御部17は、I/O部18を介して、表示部7、マイク8、温度センサ12及び緊急ボタン13に電気的に接続されている。
そして、制御部17は、温度センサ12の出力信号に基づいて体温情報を演算する。
また、制御部17は、ISM(INDUSTRY SCIENCE MEDICAL BAND)帯を利用して無線により信号を送受信するための送受信回路(送信部)21に接続されている。
なお、ISM帯とは、2.4GHz帯の電波周波数帯をいい、10mW以下の出力であれば免許不要で利用することができる。そのため、本実施形態においては、免許不要な10mW以下の出力で送受信を行うものとする。
送受信回路21は、電波の送受信を行うアンテナ22に接続されている。
【0017】
また、制御部17はメモリ23に接続されている。メモリ23は、制御部17の動作プログラムが記憶されており、制御部17での処理の過程で発生する一時的なデータをも記憶する。また、メモリ23は、電力を蓄電する蓄電装置(蓄電部)26に接続されている。蓄電装置26は、コンデンサなどにより電力を蓄電し、この蓄電した電力を体温計2の各デバイスに供給するものである。蓄電装置26は、電力を受電する受電回路27に接続されており、この受電回路27は、受電部28に接続されている。受電部28は、磁性体と、この磁性体に巻回されたコイルとを備えている。
【0018】
また、電源ユニット16は、AC電源から供給された電力を送電する送電回路31を備えている。送電回路31は、送電部32に接続されている。送電部32は、受電部28と同様に、磁性体と、この磁性体に巻回されたコイルとを備えており、非接触で体温計2に電力を供給する。
【0019】
さらに、管理装置3は、管理装置3の全体を制御する制御する制御部37を備えている。制御部37は、ISM帯を利用して無線により信号を送受信するための送受信回路(受信部)36に接続され、送受信回路36はアンテナ35に接続されている。また、制御部37は、各種情報を記憶する記憶回路(記憶部)38に接続されている。また、制御部37は、I/O部41を介してスピーカ42に接続されている。
なお、管理装置3は、例えば、病院の看護士室などに設けられるものである。そして、記憶回路38に記憶された情報が、モニタなどの表示装置に表示される。または、記憶回路38に記憶された情報が読み出され、看護士によって患者の体調管理に利用される。
【0020】
次に、このように構成された体温情報収集システム1の処理について説明する。
まず、患者は測温部11を腋や舌などの所定の位置に配する。そして、所定時間が経過すると、測温部11内の温度センサ12が、この温度センサ12の周囲の温度を測定し、その測定結果として測定信号を出力する。この測定信号は、I/O部18を介して制御部17に入力される。制御部17は、測定信号が入力されると、その測定信号に基づいて体温情報を演算する。そして、制御部17は、その演算結果を体温信号としてI/O部18を介して表示部7に入力し、これにより表示部7に体温情報が表示される。
【0021】
また、制御部17は、体温情報を演算すると、その演算結果を体温信号として送受信回路21に入力する。そして、制御部17は、送受信回路21において、2.4GHzの搬送波を体温信号で変調して、その変調された信号(変調信号)を、アンテナ22を介して送信する。
管理装置3側の制御部37は、アンテナ35を介して変調信号を受信する。そして、制御部37は、受信した変調信号を、送受信回路36において復調し、体温信号を再生する。そして、その体温信号が制御部37に入力される。制御部37は、体温信号が入力されると、その体温情報を記憶回路38に記憶する。
このような一連の処理が繰り返されることにより、複数の患者の体温情報が記憶回路38に記憶される。
【0022】
また、体温計2を駆動するための電力は以下のようにして得られる。
すなわち、電源ユニット16を体温計2の近傍の所定の位置に配する。このとき、電源ユニット16の送電部32と、体温計2の受電部28が対向配置される。この状態で、電源ユニット16を駆動すると、送電部32の磁性体が励磁されて電磁波を発する。この電磁波が、受電部28の磁性体に伝わり、電磁誘導により発生した電力が、受電回路27を介して蓄電装置26に蓄電される。そして、蓄電装置26に蓄電された電力が、制御部17などの各デバイスに供給される。
【0023】
さらに、患者に緊急事態が生じたときに、以下のようにして、緊急事態が発生したことが医師や看護士などに伝えられる。
まず、患者や看護士などが緊急ボタン13を押す。すると、緊急ボタン13から緊急信号が出力される。この緊急信号は、I/O部18を介して制御部17に入力される。緊急信号が入力されると、制御部17は、送受信回路21及びアンテナ22を介して、緊急信号を変調信号として送信する。送信された変調信号は、管理装置3側のアンテナ35及び送受信回路36を介して受信される。それから、制御部37は、送受信回路36において復調により緊急信号を再生する。この緊急信号が制御部37に入力される。そして、緊急信号が入力されると、制御部37は、警報装置(不図示)などを駆動して、音、光又は振動などにより警報を発する。
【0024】
また、緊急事態のとき、以下のようにして、患者の状態を医師などに知らしめることができる。
すわなち、患者自身や看護士などが、マイク8に向かって状況などを声を出して説明する。このとき、音声がマイク8によって集音される。すると、制御部17は、マイク8によって音声を電気信号に変換する。そして、マイク8から出力された音声信号は、I/O部18を介して制御部17に入力される。音声信号が入力されると、制御部17は、上記と同様にして、送受信回路21及びアンテナ22を介して変調信号を送信する。管理装置3側の制御部37は、アンテナ35及び送受信回路36を介して変調信号を受信する。そして、上記と同様にして、制御部37が音声信号を再生する。この音声信号が制御部37に入力される。音声信号が入力されると、制御部37は、その音声信号をスピーカ42に入力する。そして、制御部37は、スピーカ42によって、入力した音声信号を音声に変換する。これにより、スピーカ42から音声が発せられ、患者の状態などが医師や別の看護士などに伝達される。
【0025】
以上より、本実施形態における体温計2によれば、患者の体温情報を容易に得ることができ、その体温情報を送信することができることから、迅速かつ高精度に体温情報を収集することができる。
また、無線通信の周波数をISM帯としていることから、患者や病院内の機器などに影響を与えることなく、迅速に体温情報を得ることができる。
【0026】
さらに、緊急ボタン13が設けられ、緊急信号を送信することができることから、患者に緊急事態が生じた場合に、その旨を看護士や医師に迅速かつ確実に伝えることができる。
また、電源ユニット16によって非接触で供給された電力を蓄電することができることから、体温計2の電池交換を不要にすることができ、利便性を向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態における体温情報収集システムによれば、上記と同様の効果を奏することができるだけでなく、体温情報を受信・記憶することにより、複数の患者の体温情報を迅速かつ高精度に収集することができ、より高度な管理体制を構築することができる。
【0028】
なお、本実施形態における体温情報収集システムは、種々のネットワークで利用することができる。例えば、図3に示すように、スター型のネットワークを構築することができる。また、図4に示すように、メッシュ型のネットワークにすることもでき、図5に示すように、クラスタツリー型のネットワークにすることもできる。
なお、図3から図5において、符号45はコーディネータ(親)を示し、符号46はエンドデバイス(子)を示し、さらに符号47はルータ(子)を示すものである。
【0029】
また、制御部17及び制御部37の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより体温情報の収集を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0030】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る体温情報収集システムの実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図1の体温計を示す平面図である。
【図3】図1の体温情報収集システムを利用するネットワークの一例を示したものであり、スター型のネットワークを示す概念図である。
【図4】図1の体温情報収集システムを利用するネットワークの一例を示したものであり、メッシュ型のネットワークを示す概念図である。
【図5】図1の体温情報収集システムを利用するネットワークの一例を示したものであり、クラスタツリー型のネットワークを示す概念図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・体温情報収集システム、2・・・体温計、3・・・管理装置(管理部)、12・・・温度センサ、13・・・緊急ボタン(緊急スイッチ)、16・・・電源ユニット、17・・・制御部(演算部)、21・・・送受信回路(送信部)、26・・・蓄電装置(蓄電部)、36・・・送受信回路(受信部)、38・・・記憶回路(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体温を測定するための温度センサと、
前記温度センサの出力信号に基づいて体温情報を演算する演算部と、
前記演算部によって演算された体温情報を、ISM帯を利用して無線により送信する送信部と、
を備えることを特徴とする体温計。
【請求項2】
緊急信号を出力する緊急スイッチを備え、
前記送信部は、
前記緊急スイッチから出力された緊急信号を、緊急情報として送信することを特徴とする請求項1に記載の体温計。
【請求項3】
電力を供給する電源ユニットから非接触で供給された電力を蓄電し、この蓄電された電力を前記演算部に供給する蓄電部と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の体温計。
【請求項4】
患者の体温を測定する体温計と、複数の患者の体温情報を管理する管理部とを有する体温情報収集システムであって、
前記体温計は、
前記患者の体温を測定するための温度センサと、
この温度センサの出力信号に基づいて体温情報を演算する演算部と、
この演算部によって演算された体温情報を、ISM帯を利用して無線により送信する送信部とを備え、
前記管理部は、
前記送信部から送信された体温情報を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された体温情報を記憶する記憶部と、
を備えることを特徴とする体温情報収集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−330328(P2007−330328A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162507(P2006−162507)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】