説明

作動油貯留装置

【課題】フィルタ収容室内の洗浄時やフィルタのメンテナンス時にフィルタ収容室内から作動油を排出する際、作動油タンクからフィルタ収容室内への作動油の逆流を確実に防止可能な作動油貯留装置を提供する。
【解決手段】この作動油貯留装置は、作動油タンク2内においてリターンポート10fに対して離接可能に設けられ、リターンポート10fを閉止するための閉止部材16と、閉止部材16をリターンポート10fに接近する方向に弾発し、閉止部材16によりリターンポート10fを閉止させる弾性部材18とを備え、入口側フィルタ13は、フィルタ収容室10内に装着されるのに伴って弾性部材18の弾発力に抗しながら閉止部材16をリターンポート10fから離反する方向に押動することによりリターンポート10fを開放する押動部13bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油貯留装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧機器を備えた建設機械等では、油圧機器で用いられた後、戻ってきた作動油をフィルタで濾過するとともに、その濾過後の作動油を再度油圧機器へ供給するために一旦貯留する作動油貯留装置が設けられている。下記の特許文献1には、そのような作動油貯留装置の一例が示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された作動油貯留装置は、作動油を貯留するための作動油タンクと、その作動油タンク内に設けられ、フィルタを収容するフィルタ収容室とを備えている。フィルタ収容室の上部の側壁には、油圧機器から戻ってきた作動油を受け入れるための受入れポートが設けられており、フィルタ収容室の底壁には、フィルタ収容室内の空間と作動油タンク内の空間とを連通させるリターンポートが設けられている。フィルタ収容室の下部の側壁には、フィルタ収容室内から外部へ作動油を排出する際に用いられるドレンポートが設けられている。また、前記フィルタは筒状に構成されており、フィルタ収容室内においてリターンポートの周りを囲むように当該フィルタ収容室内の底面上に立設されている。前記油圧機器から戻ってきた作動油は、受入れポートを通ってフィルタ収容室内に流入するとともに、フィルタを外側から内側へ透過して濾過された後、リターンポートを通って作動油タンク内に流入するようになっている。
【0004】
前記リターンポートには、このリターンポートを開閉するための開閉手段としてシャッタが設けられている。このシャッタは、リターンポートの下端部にヒンジを介して水平軸回りに揺動可能に取り付けられている。このシャッタが下方に降下した状態ではリターンポートが開放される一方、シャッタが持ち上げられてリターンポートの下端面に密着することによりリターンポートが閉止される。通常時には、フィルタ収容室内の作動油の圧力によってシャッタが下方へ押されることによりリターンポートが開放されている。
【0005】
この作動油貯留装置では、フィルタ収容室内の洗浄時やフィルタのメンテナンス時に、前記ドレンポートを通じてフィルタ収容室内の作動油を外部へ排出して廃棄した後、洗浄作業やメンテナンス作業が行われる。このフィルタ収容室からの作動油の廃棄の際、前記シャッタによりリターンポートが自動的に閉止されて作動油タンクからフィルタ収容室への作動油の逆流が防止されることにより、廃棄される作動油量の低減が図られている。
【0006】
すなわち、ドレンポートを通ってフィルタ収容室内の作動油が外部へ排出されるのに伴って作動油タンク内の作動油がリターンポートを通じてフィルタ収容室内へ逆流しようとするが、その作動油の逆流によってシャッタが持ち上げられ、リターンポートが閉止される。これにより、作動油タンクからフィルタ収容室への作動油の逆流が遮断され、その逆流による大量の作動油がドレンポートを通って廃棄されるのが防止される。
【0007】
また、特許文献1には、前記シャッタの代わりに浮力を有するゴム球をリターンポートの開閉手段として用いた別の作動油貯留装置が示されている。この作動油貯留装置では、ゴム球が所定長さのチェーンを介してリターンポートに取り付けられている。通常時には、フィルタ収容室内の作動油の圧力によってゴム球が押し下げられることにより、リターンポートが開放されて作動油がフィルタ収容室内から作動油タンク内へ流れるようになっている。一方、フィルタ収容室内の洗浄時やフィルタのメンテナンス時にフィルタ収容室内から作動油を排出する際には、ゴム球の浮力及び作動油タンクからフィルタ収容室への作動油の逆流によってゴム球がリターンポートの開口に下方から嵌り込む。これによって、リターンポートが閉止され、作動油タンクからフィルタ収容室への作動油の逆流が防止される。
【特許文献1】特許第2981439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された作動油貯留装置では、作動油タンクからフィルタ収容室への作動油の逆流の防止が不完全になる虞がある。
【0009】
具体的には、前記開閉手段としてシャッタが用いられた作動油貯留装置では、ドレンポートからフィルタ収容室内の作動油を排出する際、フィルタ収容室内の油面の位置が作動油タンク内の油面の位置よりも低いが、それら両油面の位置の高さの差が小さい場合、すなわち作動油タンク内の作動油の圧力に対するフィルタ収容室内の作動油の圧力の差が小さい場合には、作動油タンクからフィルタ収容室へ逆流する作動油の流れが弱くなり、リターンポートの下端面にシャッタを密着させる程、シャッタを持ち上げることができない。このため、リターンポートが完全に閉止されず、その結果、前記作動油の逆流の防止が不完全になる。
【0010】
また、前記開閉手段としてゴム球が用いられた作動油貯留装置では、ゴム球をチェーンを介してリターンポートに繋いでいるため、そのチェーンがゴム球とリターンポートとの間に挟まれた場合には、そのチェーンが邪魔になってリターンポートが完全には閉止されず、前記作動油の逆流の防止が不完全になる。
【0011】
さらに、前記チェーンが長すぎる場合には、作動油がフィルタ収容室から作動油タンクへ流れる通常時にゴム球がリターンポートの下端から離反してそのリターンポートの径方向外側へ移動し、リターンポートを閉止したいときにゴム球がリターンポートの開口に嵌り込む位置に戻ってこない虞がある。この場合も、リターンポートを閉止できず、前記作動油の逆流を防止できなくなる。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、フィルタ収容室内の洗浄時やフィルタのメンテナンス時にフィルタ収容室内から作動油を排出する際、作動油タンクからフィルタ収容室内への作動油の逆流を確実に防止可能な作動油貯留装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、作動油を貯留する作動油タンクと、作動油を濾過するフィルタと、前記作動油タンクに設けられ、前記フィルタを収容するフィルタ収容室とを備え、前記フィルタ収容室は、当該フィルタ収容室内の空間と前記作動油タンク内の空間とを連通させるリターンポートと、当該フィルタ収容室内から作動油を外部へ排出するためのドレンポートとを有し、油圧機器から戻ってくる作動油を前記フィルタ収容室内の前記フィルタを通して濾過した後、前記リターンポートを通じて前記作動油タンクに導入して貯留する作動油貯留装置であって、前記作動油タンク内において前記リターンポートに対して離接可能に設けられ、前記リターンポートを閉止するための閉止部材と、前記閉止部材を前記リターンポートに接近する方向に弾発し、前記閉止部材により前記リターンポートを閉止させる弾性部材とを備え、前記フィルタは、前記フィルタ収容室内に装着されるのに伴って前記弾性部材の弾発力に抗しながら前記閉止部材を前記リターンポートから離反する方向に押動することにより前記リターンポートを開放する押動部を有する。
【0014】
請求項1に記載の発明によると、フィルタをフィルタ収容室内に装着したときには押動部が閉止部材を押動することによりリターンポートが開放される一方、フィルタをフィルタ収容室から取り外したときには弾性部材によって弾発された閉止部材によりリターンポートを閉止することができるので、通常時にはフィルタ収容室内からリターンポートを通じて作動油タンクへ作動油を流すことができる一方、フィルタ収容室内の洗浄時やフィルタのメンテナンス時にフィルタをフィルタ収容室から取り外せば、リターンポートを閉止することができる。そして、リターンポートが閉止された後、ドレンポートを通じてフィルタ収容室内から作動油を排出すれば、作動油タンクからフィルタ収容室内への作動油の逆流を防止することができる。また、この構成では、弾性部材の弾発力によってリターンポートが閉止部材で閉止されるので、フィルタ収容室内からドレンポートを通じて作動油を排出するときには作動油タンク内の作動油の圧力に対するフィルタ収容室内の作動油の圧力の差が小さい場合であっても、リターンポートを確実に閉止して作動油タンクからフィルタ収容室内への作動油の逆流を確実に防止することができる。また、この構成では、弾性部材によって閉止部材がリターンポート側に弾発されるので、閉止部材がリターンポートから離反する動きを規制することができる。このため、従来の作動油貯留装置と異なり、開閉手段がリターンポートから離れるのを規制するためにチェーンで開閉手段をリターンポートに繋がなくてもよい。すなわち、請求項1に記載の発明では、チェーンが開閉手段とリターンポートとの間に挟まったり、チェーンが長すぎて開閉手段がリターンポートを閉止したいときに戻ってこないといった従来の作動油貯留装置のような不都合は生じず、リターンポートを閉止部材で確実に閉止することができる。従って、請求項1に記載の発明では、フィルタ収容室内の洗浄時やフィルタのメンテナンス時にフィルタ収容室内から作動油を排出する際、作動油タンクからフィルタ収容室内への作動油の逆流を確実に防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作動油貯留装置において、前記弾性部材が、前記フィルタ収容室内に作動油が充満しているとともにそのフィルタ収容室内に前記油圧機器から戻ってくる作動油がさらに流入する状態で前記閉止部材が受ける作動油の圧力により前記閉止部材が前記リターンポートから離反するのを許容するような弾発力を有するものである。
【0016】
このように構成すれば、押動部の変形または破損等により閉止部材を押動できなくなった場合でも、フィルタ収容室内から作動油タンクへ向かって流れる作動油の圧力によって閉止部材をリターンポートから離反させてリターンポートを開放することができる。このため、閉止部材を押動できなくなった場合でも、通常時にフィルタ収容室から作動油タンクへ作動油を流すことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の作動油貯留装置において、前記リターンポートが、前記フィルタ収容室の底壁に設けられ、前記押動部が、前記フィルタの底部に設けられ、前記フィルタが、前記フィルタ収容室内の底面上に載置されることによってそのフィルタ収容室内に装着され、前記閉止部材が、前記リターンポートを下方から閉止する閉止部と、その閉止部が前記リターンポートを閉止している状態でその閉止部から前記リターンポート内を通って前記フィルタ収容室内の底面上に突出し、前記フィルタが前記フィルタ収容室内の底面上に載置されるのに伴って前記押動部によって押圧される被押圧部とを有するものである。
【0018】
この構成では、閉止部がリターンポートを閉止している状態で被押圧部がフィルタ収容室内の底面上に突出しているので、フィルタ収容室内にフィルタを装着する際、フィルタ収容室内の底面上にフィルタを載置するだけでフィルタの底部に設けられた押動部によって容易に前記被押圧部を押圧することができ、閉止部材をリターンポートから離反する方向へ容易に押動することができる。また、この構成によれば、フィルタにフィルタ収容室内からリターンポート内を通って作動油タンク側へ延びるような大きな押動部を設けなくても、閉止部材を押動することができる。このため、フィルタに設ける押動部が大型化するのを防ぎながら、閉止部材をリターンポートから離反する方向へ容易に押動することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の作動油貯留装置において、前記被押圧部が、前記閉止部の軸心に対応する位置に設けられているものである。
【0020】
このように構成すれば、押動部により閉止部材の軸心に対応する箇所を押圧することができるので、閉止部が傾かないように安定した状態で閉止部材を押動することができる。このため、閉止部材を安定してリターンポートから離反させることができ、リターンポートを安定して開放することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、作動油を貯留する作動油タンクと、作動油を濾過するフィルタと、前記作動油タンクに設けられ、前記フィルタを収容するフィルタ収容室とを備え、前記フィルタ収容室は、当該フィルタ収容室内の空間と前記作動油タンク内の空間とを連通させるリターンポートと、当該フィルタ収容室内から作動油を外部へ排出するためのドレンポートとを有し、油圧機器から戻ってくる作動油を前記フィルタ収容室内の前記フィルタを通して濾過した後、前記リターンポートを通じて前記作動油タンクに導入して貯留する作動油貯留装置であって、前記作動油タンク内において前記リターンポートに対して離接可能に設けられ、前記リターンポートを閉止するための閉止部材と、前記閉止部材を前記リターンポートに接近する方向に弾発し、前記閉止部材により前記リターンポートを閉止させる弾性部材とを備え、前記弾性部材は、前記フィルタ収容室内に作動油が充満しているとともにそのフィルタ収容室内に前記油圧機器から戻ってくる作動油がさらに流入する状態で前記閉止部材が受ける作動油の圧力により前記閉止部材が前記リターンポートから離反するのを許容するような弾発力を有する。
【0022】
請求項5に記載の発明によると、通常時には、フィルタ収容室内から作動油タンクへ向かって流れる作動油の圧力によって閉止部材をリターンポートから離反させてリターンポートを開放することができる一方、ドレンポートを通じてフィルタ収容室内から作動油を排出するときには、弾性部材によって弾発された閉止部材によりリターンポートを閉止することができる。このため、通常時にはフィルタ収容室内からリターンポートを通じて作動油タンクへ作動油を流すことができる一方、フィルタ収容室内の洗浄時やフィルタのメンテナンス時にフィルタ収容室内から作動油を排出するときにはリターンポートを閉止して作動油タンクからフィルタ収容室内への作動油の逆流を防止することができる。また、この構成では、弾性部材の弾発力によってリターンポートが閉止部材で閉止されるので、フィルタ収容室内からドレンポートを通じて作動油を排出するときには作動油タンク内の作動油の圧力に対するフィルタ収容室内の作動油の圧力の差が小さい場合であっても、リターンポートを確実に閉止して作動油タンクからフィルタ収容室内への作動油の逆流を確実に防止することができる。また、この構成では、弾性部材によって閉止部材がリターンポート側に弾発されるので、閉止部材がリターンポートから離反する動きを規制することができる。このため、従来の作動油貯留装置と異なり、閉止部材がリターンポートから離れるのを規制するためにチェーンで閉止部材をリターンポートに繋がなくてもよい。すなわち、請求項5に記載の発明では、従来の作動油貯留装置のようなチェーンが開閉手段とリターンポートとの間に挟まったり、チェーンが長すぎて開閉手段がリターンポートを閉止したいときに戻ってこないといった不都合は生じず、リターンポートを閉止部材で確実に閉止することができる。従って、請求項5に記載の発明では、フィルタ収容室内の洗浄時やフィルタのメンテナンス時にフィルタ収容室内から作動油を排出する際、作動油タンクからフィルタ収容室内への作動油の逆流を確実に防止することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の作動油貯留装置において、前記弾性部材が、前記閉止部材に対して前記リターンポートと反対側からその閉止部材を弾発する圧縮コイルバネからなるものである。
【0024】
このように構成すれば、閉止部材に対してリターンポートと反対側に配置した圧縮コイルバネによって閉止部材を弾発することができるので、閉止部材に対してリターンポート側に配置された弾性部材により閉止部材を引っ張ってリターンポートを閉止させるような構成と異なり、フィルタ収容室内からリターンポートを通じて作動油タンクへ流れる作動油の流れが弾性部材によって妨げられるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の作動油貯留装置によれば、フィルタ収容室内の洗浄時やフィルタのメンテナンス時にフィルタ収容室内から作動油を排出する際、作動油タンクからフィルタ収容室内への作動油の逆流を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態による通常時の作動油貯留装置の縦断面図である。図2は、図1に示した作動油貯留装置のリターンポート10f近傍の構造を部分的に拡大して示した図である。図3は、フィルタ収容室10内の洗浄時または入口側フィルタ13のメンテナンス時における作動油貯留装置の図1に対応する縦断面図である。図4は、図3に示した作動油貯留装置のリターンポート10f近傍の構造を部分的に拡大して示した図である。図5は、図4中の入口側フィルタ13を矢印A方向から見た図である。まず、図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態による作動油貯留装置の構成について説明する。
【0028】
本実施形態による作動油貯留装置は、図略の油圧機器で使用されて戻ってくる作動油を後述するようにフィルタ収容室10内の入口側フィルタ13を通して濾過した後、リターンポート10fを通じて作動油タンク2に導入して貯留するものである。この作動油貯留装置は、図1に示すように、作動油タンク2と、タンク蓋4と、エアブリーザ6と、出口側フィルタ8と、フィルタ収容室10と、フィルタ蓋12と、入口側フィルタ13と、フィルタ用スプリング14と、ケーシング15と、閉止部材16と、弾性部材18とを備えている。
【0029】
前記作動油タンク2は、図略の油圧機器へ供給する作動油を内部に貯留するものである。この作動油タンク2の天壁にはタンク開口部2aが設けられており、このタンク開口部2aの外側を覆うように前記タンク蓋4が作動油タンク2の天壁上に着脱可能に取り付けられている。具体的には、作動油タンク2の天壁の上面には、前記タンク開口部2aの周りを囲むようにタンク蓋受部2bが設けられており、このタンク蓋受部2bに対してタンク蓋4が止めボルト2cによって締結されている。
【0030】
また、作動油タンク2の天壁の中央部には、貫通孔2dが形成され、この貫通孔2dに前記エアブリーザ6が取り付けられている。このエアブリーザ6を通じて作動油タンク2内に空気が出入可能となっている。エアブリーザ6は、図略のエアフィルタを有しており、作動油タンク2内に空気が流入する際、塵埃等が一緒に侵入するのを防止している。
【0031】
作動油タンク2内の底部には、仕切壁2fで囲まれた導出室2gが設けられている。仕切壁2fのうち導出室2gの天井部を構成する部分には、導出室2g内に作動油を流入させる流入ポート2hが設けられている。作動油タンク2の側壁のうち導出室2gに対応する箇所には導出室2g内から外部へ作動油を導出するための出口ポート2iが設けられている。
【0032】
前記出口側フィルタ8は、作動油タンク2内の作動油を前記出口ポート2iから導出させる前に濾過するものである。この出口側フィルタ8は、天井部が遮蔽された円筒状に形成されており、前記流入ポート2hの周りを囲むように前記仕切壁2f上に載置されている。作動油タンク2内の作動油は、出口側フィルタ8を外側から内側へ透過して濾過された後、流入ポート2hを通って導出室2g内に流入し、出口ポート2iを通じて導出されて前記油圧機器へ供給される。
【0033】
前記フィルタ収容室10は、前記作動油タンク2内に設けられており、前記入口側フィルタ13を収容するとともに、前記油圧機器から戻ってくる作動油を最初に受け入れるものである。このフィルタ収容室10は、作動油タンク2内の上部でかつ幅方向において前記タンク蓋4や前記出口側フィルタ8が設けられた領域と反対側の領域に配置されている。通常時には、このフィルタ収容室10内に作動油が充満された状態で油圧機器から戻ってくる作動油がさらに流入するようになっている。フィルタ収容室10の天壁にはフィルタ収容室開口部10aが設けられており、このフィルタ収容室開口部10aの外側を覆うように前記フィルタ蓋12がフィルタ収容室10の天壁上に着脱可能に取り付けられている。
【0034】
具体的には、フィルタ収容室10の天壁の上面には、フィルタ収容室開口部10aの周りを囲むようにフィルタ蓋受部10bが設けられており、このフィルタ蓋受部10bに対してフィルタ蓋12が止めボルト10cによって締結されている。なお、フィルタ蓋12がフィルタ蓋受部10bに締結されることによって、フィルタ収容室10が密閉されるように構成されている。フィルタ収容室10内の洗浄時や入口側フィルタ13のメンテナンス時には、止めボルト10cを緩めることによってフィルタ蓋12をフィルタ蓋受部10bから取り外し、フィルタ収容室開口部10aを通じて入口側フィルタ13をフィルタ収容室10内から取り外せるようになっている。
【0035】
また、フィルタ収容室10は、受入れポート10eと、リターンポート10fと、ドレンポート10gとを有している。
【0036】
前記受入れポート10eは、前記油圧機器から戻ってきた作動油をフィルタ収容室10内に受け入れるためのポートである。この受入れポート10eは、フィルタ収容室10の側壁に設けられており、その側壁の上下方向の略中央の位置に配置されている。受入れポート10eには、図略の開閉機構が付設されている。この開閉機構により、通常時には受入れポート10eを開放してフィルタ収容室10内に作動油を受け入れる一方、フィルタ収容室10内の洗浄時や前記入口側フィルタ13のメンテナンス時には受入れポート10eを閉じてフィルタ収容室10内への作動油の流入を止めることが可能となっている。
【0037】
前記リターンポート10fは、フィルタ収容室10内の空間と作動油タンク2内の空間とを連通させるポートであり、このリターンポート10fを通じてフィルタ収容室10内から作動油タンク2内へ作動油が流れる。リターンポート10fは、フィルタ収容室10の底壁に設けられており、その底壁から下方へ作動油タンク2内に突出する円筒状に形成されている。
【0038】
前記ドレンポート10gは、フィルタ収容室10内から作動油を外部へ排出する際に用いられるポートである。このドレンポート10gは、フィルタ収容室10の側壁の下端部に設けられている。ドレンポート10gには、その開閉を行うためのドレンコック10hが取り付けられている。このドレンコック10hは、通常時にはドレンポート10gを通って作動油が排出されないように閉じられている一方、フィルタ収容室10内の洗浄時や前記入口側フィルタ13のメンテナンス時にはドレンポート10gを通じてフィルタ収容室10内から作動油を排出するために開けられる。
【0039】
前記入口側フィルタ13は、前記油圧機器から戻ってきてフィルタ収容室10内に導入された作動油を濾過するものである。この入口側フィルタ13が本発明のフィルタの概念に含まれるものである。この入口側フィルタ13は、フィルタ収容室10内に着脱可能となっている。
【0040】
具体的には、入口側フィルタ13は、前記フィルタ収容室開口部10aを通じてフィルタ収容室10内に上方から挿入されるとともにフィルタ収容室10内の底面上に載置されることによってフィルタ収容室10内に装着される一方、図3に示すように前記フィルタ収容室開口部10aを通じてフィルタ収容室10内から上方へ抜き出されることによってフィルタ収容室10内から取り外される。
【0041】
この入口側フィルタ13の上端部は、圧縮コイルバネからなる前記フィルタ用スプリング14を介して前記フィルタ蓋12の下面に接続されている。すなわち、入口側フィルタ13の上端部とフィルタ蓋12の下面との間にフィルタ用スプリング14が挟み込まれている。入口側フィルタ13がフィルタ収容室10内に装着された状態で前記フィルタ蓋12がフィルタ蓋受部10bに締結されることにより、フィルタ用スプリング14は圧縮されるとともに、入口側フィルタ13を下方へ弾発する。これにより、入口側フィルタ13の下面がフィルタ収容室10内の底面に密着されるとともに、当該入口側フィルタ13がフィルタ収容室10内で固定される。
【0042】
また、入口側フィルタ13は、フィルタ部13aと、押動部13b(図2参照)とを有している。
【0043】
前記フィルタ部13aは、フィルタ収容室10内に導入された作動油を濾過するものである。このフィルタ部13aは、上下に延びるとともに天井部が遮蔽された略円筒状に形成されており、その径方向の外側から内側へ作動油が透過して濾過されるようになっている。このフィルタ部13aは、フィルタ収容室10内においてリターンポート10fの周りを囲むようにフィルタ収容室10内の底面上に立設される。
【0044】
前記押動部13bは、入口側フィルタ13がフィルタ収容室10内に装着されるのに伴って前記弾性部材18の弾発力に抗しながら前記閉止部材16をリターンポート10fから離反する下方へ押動するものである。この押動部13bは、前記フィルタ部13aの底部に設けられており、その底部において図5に示すようにフィルタ部13aの内面から径方向内側に延びている。押動部13bの先端には、フィルタ部13aの軸心に対応する位置で下方へ突出する突出部13cが設けられている。この突出部13cによって前記閉止部材16の後述する被押圧部16bの上端部が下方へ押圧されることにより、閉止部材16が下方へ押動される。
【0045】
前記ケーシング15は、図2に示すように前記閉止部材16と前記弾性部材18を内部に保持するものである。このケーシング15は、有底の円筒状に形成されており、その上部の開口部において前記リターンポート10fの下端部に外嵌している。ケーシング15は、リターンポート10fの下端部から下方に延びており、その内面によって閉止部材16の後述する閉止部16aを上下方向、すなわちリターンポート10fに離接する方向に移動可能に保持している。前記弾性部材18は、閉止部材16の閉止部16aの下面とケーシング15内の底面との間に挟み込まれた状態で保持されている。また、ケーシング15の側壁には、複数の流通口15aが設けられており、前記フィルタ収容室10内からリターンポート10fを通って流れ出す作動油がこの流通口15aを通って作動油タンク2内に流入するようになっている。
【0046】
前記閉止部材16は、前記リターンポート10fを閉止するためのものである。この閉止部材16は、前記ケーシング15内で保持されることによりリターンポート10fに対して離接可能に設けられている。この閉止部材16は、閉止部16aと、被押圧部16bとを有している。
【0047】
前記閉止部16aは、上向きに突出する略円錐台状に形成されており、図4に示すようにその上部がリターンポート10fの下端部の開口に下方から嵌り込むことによってリターンポート10fを閉止する。一方、図2に示すように、この閉止部16aがリターンポート10fの下端部から下方に離反することにより、リターンポート10fが開放される。この閉止部16aは、その周縁部が前記ケーシング15の内面に案内されることによりリターンポート10fに対して離接する上下方向に移動可能となっている。
【0048】
前記被押圧部16bは、前記入口側フィルタ13の押動部13bによって押圧される部分である。この被押圧部16bは、前記閉止部16aの上端から上方へ延びる直棒状に形成されており、閉止部16aの軸心の位置に設けられている。この被押圧部16bは、図4に示すように、前記閉止部16aがリターンポート10fを閉止している状態でリターンポート10f内を通ってフィルタ収容室10内の底面上に突出する。被押圧部16bの上端部には、他の部分に比べて水平面積の大きい部分が設けられており、この部分の上面が入口側フィルタ13の押動部13bの突出部13cによって押圧される。
【0049】
前記弾性部材18は、前記閉止部材16をリターンポート10fに接近する方向に弾発し、閉止部材16によりリターンポート10fを閉止させるものである。この弾性部材18は、閉止部材16の閉止部16aに対してリターンポート10fと反対側からその閉止部16aを弾発する圧縮コイルバネからなる。また、この弾性部材18は、フィルタ収容室10内に作動油が充満しているとともにそのフィルタ収容室10内に油圧機器から戻ってくる作動油がさらに流入する状態で閉止部材16が受ける作動油の圧力によりその閉止部材16がリターンポート10fから離反するのを許容するような弾発力を有する。
【0050】
弾性部材18は、通常時には、図2に示すように、入口側フィルタ13の押動部13bにより閉止部材16が下方へ押圧されることによって圧縮されている。そして、フィルタ収容室10内の洗浄時や入口側フィルタ13のメンテナンス時に入口側フィルタ13がフィルタ収容室10から取り外される際には、押動部13bによる閉止部材16の下方への押圧がなくなるので、入口側フィルタ13が上方へ抜き出されるのに伴って弾性部材18は伸長しながら閉止部材16を上方へ移動させてその閉止部16aをリターンポート10fの下端部に押圧する。これにより、リターンポート10fが閉止される。
【0051】
次に、本実施形態による作動油貯留装置の動作について説明する。
【0052】
本実施形態の作動油貯留装置では、通常時には図1に示すようにフィルタ収容室10内に入口側フィルタ13が装着されている。この状態で、図2に示すように、入口側フィルタ13の押動部13bにより弾性部材18の弾発力に抗しながら閉止部材16が下方へ押圧されることによってリターンポート10fが開放されている。これにより、油圧機器から戻ってきた作動油が受入れポート10eを通じてフィルタ収容室10内に導入されるとともに、入口側フィルタ13を外側から内側へ通って濾過され、リターンポート10f内を通ってケーシング15の流通口15aを通り、作動油タンク2内に流れる。なお、この通常時では、フィルタ収容室10内が作動油で充満した状態となっている。
【0053】
そして、作動油タンク2内に流入した作動油は、その作動油タンク2内で一旦貯留される。この貯留された作動油は、出口側フィルタ8を透過するとともに流入ポート2hを通って導出室2g内に流入し、その後、出口ポート2iを通って再び油圧機器に供給される。
【0054】
この作動油貯留装置において、上記のような通常時における作動油の受入れ、貯留及び供給が継続して行われている間には、入口側フィルタ13のフィルタ部13aが油圧機器から戻ってきた作動油に含まれるダスト等によって目詰まりを生じたり、フィルタ収容室10内に前記ダスト等が蓄積される。このため、定期的にフィルタ収容室10内の洗浄や、入口側フィルタ13の洗浄または交換等のメンテナンスを行う必要がある。
【0055】
この洗浄等のメンテナンスの際には、まず、前記開閉機構により受入れポート10eを閉じてフィルタ収容室10内への作動油の受入れを停止する。
【0056】
次に、フィルタ蓋12の止めボルト10cを緩めてフィルタ蓋12を浮かせることによりフィルタ収容室開口部10aを通じてフィルタ収容室10内に空気が入るようにし、フィルタ収容室10を大気開放する。これにより、作動油タンク2内の油面の高さとフィルタ収容室10内の油面の高さとが等しくなる。すなわち、作動油タンク2内の作動油の圧力とフィルタ収容室10内の作動油の圧力とが等しくなる。なお、このとき、入口側フィルタ13は、その下端面がフィルタ収容室10内の底面上に密着した状態で保持されているとともに、リターンポート10fは開放された状態で維持されている。
【0057】
この後、図3に示すように、フィルタ蓋12をフィルタ蓋受部10bから取り外すとともに、入口側フィルタ13をフィルタ収容室開口部10aを通じてフィルタ収容室10内から上方へ抜き出す。これにより、図4に示すように、閉止部材16を押圧していた押動部13bも上方へ移動するため、閉止部材16が弾性部材18の弾発力により上方へ移動し、その閉止部16aがリターンポート10fの下端部の開口に下方から嵌り込んで押圧される。これにより、リターンポート10fが閉止され、未濾過の作動油やダストがフィルタ収容室10内からリターンポート10fを通じて作動油タンク2内の作動油に混入するのが防止される。この状態では、閉止部材16の被押圧部16bがフィルタ収容室10内の底面上に突出している。フィルタ収容室10内から取り外した入口側フィルタ13については、洗浄や交換等のメンテナンスを行う。
【0058】
次に、図3に示すように、ドレンコック10hを開き、フィルタ収容室10内の作動油をドレンポート10gを通じて外部へ排出し、廃棄する。この際、リターンポート10fは、上記のように閉止部材16によって閉止されているので、作動油タンク2からフィルタ収容室10内への作動油の逆流が防止される。そして、フィルタ収容室10内の作動油が全て排出された後、フィルタ収容室10内の洗浄を行う。その後、ドレンコック10hを閉め、ドレンポート10gを閉止する。
【0059】
この後、フィルタ収容室開口部10aを通じてフィルタ収容室10内にきれいな入口側フィルタ13を上方から差し込むことによりその入口側フィルタ13をフィルタ収容室10内に装着するとともに、フィルタ蓋12を止めボルト10cでフィルタ蓋受部10bに締結することにより入口側フィルタ13をフィルタ収容室10内の底面上に載置した状態で固定する。この入口側フィルタ13をフィルタ収容室10内に差し込む際、降下する押動部13bの突出部13cによりフィルタ収容室10内の底面上に突出した被押圧部16bの上端部が押圧される。これにより、閉止部材16は、弾性部材18の弾発力に抗しながらリターンポート10fから離反する下方へ押動され、リターンポート10fが開放される。この後、前記開閉機構により受入れポート10eを開放し、上記通常時の動作を再開する。
【0060】
以上のようにして、本実施形態による作動油貯留装置の動作が行われる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態では、入口側フィルタ13をフィルタ収容室10内に装着したときには押動部13bが閉止部材16を押動することによりリターンポート10fが開放される一方、入口側フィルタ13をフィルタ収容室10内から取り外したときには弾性部材18によって弾発された閉止部材16によりリターンポート10fを閉止することができる。このため、通常時にはフィルタ収容室10内からリターンポート10fを通じて作動油タンク2へ作動油を流すことができる一方、フィルタ収容室10内の洗浄時や入口側フィルタ13のメンテナンス時に入口側フィルタ13をフィルタ収容室10内から取り外せば、リターンポート10fを閉止することができる。そして、リターンポート10fが閉止された後、ドレンポート10gを通じてフィルタ収容室10内から作動油を排出すれば、作動油タンク2からフィルタ収容室10内への作動油の逆流を防止することができる。
【0062】
また、本実施形態では、弾性部材18の弾発力によってリターンポート10fが閉止部材16で閉止されるので、フィルタ収容室10内からドレンポート10gを通じて作動油を排出するときには作動油タンク2内の作動油の圧力に対するフィルタ収容室10内の作動油の圧力の差が小さい場合であっても、リターンポート10fを確実に閉止して作動油タンク2からフィルタ収容室10内への作動油の逆流を確実に防止することができる。
【0063】
また、本実施形態では、弾性部材18によって閉止部材16がリターンポート10f側に弾発されるので、閉止部材16がリターンポート10fから離反する動きを規制することができる。このため、従来の作動油貯留装置と異なり、閉止部材16がリターンポート10fから離れるのを規制するためにチェーンで閉止部材16をリターンポート10fに繋がなくてもよい。すなわち、本実施形態では、従来の作動油貯留装置のようなチェーンが開閉手段とリターンポートとの間に挟まったり、チェーンが長すぎて開閉手段がリターンポートを閉止したいときに戻ってこないといった不都合は生じず、リターンポート10fを閉止部材16で確実に閉止することができる。従って、本実施形態では、フィルタ収容室10内の洗浄時や入口側フィルタ13のメンテナンス時にフィルタ収容室10内から作動油を排出する際、作動油タンク2からフィルタ収容室10内への作動油の逆流を確実に防止することができる。
【0064】
また、本実施形態では、弾性部材18が、フィルタ収容室10内に作動油が充満しているとともにそのフィルタ収容室10内に油圧機器から戻ってくる作動油がさらに流入する状態で閉止部材16が受ける作動油の圧力によりその閉止部材16がリターンポート10fから離反するのを許容するような弾発力を有する。このため、押動部13bの変形または破損等により閉止部材16を押動できなくなった場合でも、フィルタ収容室10内から作動油タンク2へ向かって流れる作動油の圧力によって閉止部材16をリターンポート10fから離反させてリターンポート10fを開放することができる。すなわち、本実施形態では、閉止部材16を押動できなくなった場合でも、通常時にフィルタ収容室10内から作動油タンク2内へ作動油を流すことができる。
【0065】
また、本実施形態では、閉止部16aがリターンポート10fを閉止している状態で被押圧部16bがフィルタ収容室10内の底面上に突出しているので、フィルタ収容室10内に入口側フィルタ13を装着する際、フィルタ収容室10内の底面上に入口側フィルタ13を載置するだけで入口側フィルタ13の底部に設けられた押動部13bによって容易に被押圧部16bを押圧することができ、閉止部材16をリターンポート10fから離反する方向へ容易に押動することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、入口側フィルタ13にフィルタ収容室10内からリターンポート10f内を通って作動油タンク2側へ延びるような大きな押動部13bを設けなくても、閉止部材16を押動することができる。このため、入口側フィルタ13に設ける押動部13bが大型化するのを防ぎながら、閉止部材16をリターンポート10fから離反する方向へ容易に押動することができる。
【0067】
また、本実施形態では、被押圧部16bが閉止部16aの軸心に対応する位置に設けられているので、押動部13bにより閉止部16aの軸心に対応する箇所を押圧することができる。このため、閉止部16aが傾かないように安定した状態で閉止部材16を押動することができる。その結果、閉止部材16を安定してリターンポート10fから離反させることができ、リターンポート10fを安定して開放することができる。
【0068】
また、本実施形態では、弾性部材18が閉止部材16に対してリターンポート10fと反対側からその閉止部材16を弾発する圧縮コイルバネからなっているので、閉止部材に対してリターンポート側に配置された弾性部材により閉止部材を引っ張ってリターンポートを閉止させるような構成と異なり、フィルタ収容室10内からリターンポート10fを通じて作動油タンク2へ流れる作動油の流れが弾性部材18によって妨げられるのを防ぐことができる。
【0069】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0070】
例えば、上記実施形態では、入口側フィルタ13の押動部13bにより閉止部材16の被押圧部16bを押圧することにより閉止部材16を押動してリターンポート10fを開放する構成を示したが、本発明はこの構成に限られない。
【0071】
すなわち、図6に示す上記実施形態の変形例のように、上記実施形態の構成において入口側フィルタ13から押動部13bを省略するとともに、閉止部材16から被押圧部16bを省略し、通常時にフィルタ収容室10内からリターンポート10fを通って作動油タンク2内に流れる作動油の圧力により閉止部材16が押動されてリターンポート10fが開放されるような構成であってもよい。この構成では、上記実施形態と同様、弾性部材18がフィルタ収容室10内に作動油が充満し、そのフィルタ収容室10内に油圧機器から戻ってくる作動油がさらに流入する状態で閉止部材16が受ける作動油の圧力により閉止部材16がリターンポート10fから離反するのを許容するような弾発力を有している。また、この構成において、フィルタ収容室10内の洗浄時や入口側フィルタ13のメンテナンス時には、開閉機構により受入れポート10eを通じてフィルタ収容室10内に作動油が流入するのを停止した時点で弾性部材18の弾発力により閉止部材16がリターンポート10fの下端部に押圧され、リターンポート10fが閉止される。
【0072】
この変形例では、通常時には、フィルタ収容室10内から作動油タンク2へ向かって流れる作動油の圧力によって閉止部材16をリターンポート10fから離反させてリターンポート10fを開放することができる一方、ドレンポート10gを通じてフィルタ収容室10内から作動油を排出するときには、弾性部材18によって弾発された閉止部材16によりリターンポート10fを閉止することができる。このため、通常時にはフィルタ収容室10内からリターンポート10fを通じて作動油タンク2へ作動油を流すことができる一方、フィルタ収容室10内の洗浄時や入口側フィルタ13のメンテナンス時にフィルタ収容室10内から作動油を排出するときにはリターンポート10fを閉止して作動油タンク2からフィルタ収容室10内への作動油の逆流を防止することができる。
【0073】
また、この変形例では、上記実施形態と同様、フィルタ収容室10内からドレンポート10gを通じて作動油を排出するときには作動油タンク2内の作動油の圧力に対するフィルタ収容室10内の作動油の圧力の差が小さい場合であっても、リターンポート10fを確実に閉止して作動油タンク2からフィルタ収容室10内への作動油の逆流を確実に防止することができる。さらに、この変形例では、上記実施形態と同様、従来の作動油貯留装置のようなチェーンが開閉手段とリターンポートとの間に挟まったり、チェーンが長すぎて開閉手段がリターンポートを閉止したいときに戻ってこないといった不都合は生じず、リターンポート10fを閉止部材16で確実に閉止することができる。従って、この変形例では、フィルタ収容室10内の洗浄時や入口側フィルタ13のメンテナンス時にフィルタ収容室10内から作動油を排出する際、作動油タンク2からフィルタ収容室10内への作動油の逆流を確実に防止することができる。
【0074】
この変形例による上記以外の効果は、上記実施形態による効果と同様である。
【0075】
また、閉止部材16の形状は上記実施形態で示した形状に限らない。例えば、リターンポート10fを閉止可能であれば、閉止部材16の閉止部16aが球状やその他の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態による通常時の作動油貯留装置の縦断面図である。
【図2】図1に示した作動油貯留装置のリターンポート近傍の構造を部分的に拡大して示した図である。
【図3】フィルタ収容室内の洗浄時またはフィルタのメンテナンス時の作動油貯留装置の図1に対応する縦断面図である。
【図4】図3に示した作動油貯留装置のリターンポート近傍の構造を部分的に拡大して示した図である。
【図5】図4中のフィルタを矢印A方向から見た図である。
【図6】本発明の一実施形態の変形例による通常時の作動油貯留装置の図2に対応する図である。
【符号の説明】
【0077】
2 作動油タンク
10 フィルタ収容室
10f リターンポート
10g ドレンポート
13 入口側フィルタ(フィルタ)
13b 押動部
16 閉止部材
16a 閉止部
16b 被押圧部
18 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を貯留する作動油タンクと、作動油を濾過するフィルタと、前記作動油タンクに設けられ、前記フィルタを収容するフィルタ収容室とを備え、前記フィルタ収容室は、当該フィルタ収容室内の空間と前記作動油タンク内の空間とを連通させるリターンポートと、当該フィルタ収容室内から作動油を外部へ排出するためのドレンポートとを有し、油圧機器から戻ってくる作動油を前記フィルタ収容室内の前記フィルタを通して濾過した後、前記リターンポートを通じて前記作動油タンクに導入して貯留する作動油貯留装置であって、
前記作動油タンク内において前記リターンポートに対して離接可能に設けられ、前記リターンポートを閉止するための閉止部材と、
前記閉止部材を前記リターンポートに接近する方向に弾発し、前記閉止部材により前記リターンポートを閉止させる弾性部材とを備え、
前記フィルタは、前記フィルタ収容室内に装着されるのに伴って前記弾性部材の弾発力に抗しながら前記閉止部材を前記リターンポートから離反する方向に押動することにより前記リターンポートを開放する押動部を有することを特徴とする、作動油貯留装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記フィルタ収容室内に作動油が充満しているとともにそのフィルタ収容室内に前記油圧機器から戻ってくる作動油がさらに流入する状態で前記閉止部材が受ける作動油の圧力により前記閉止部材が前記リターンポートから離反するのを許容するような弾発力を有することを特徴とする、請求項1に記載の作動油貯留装置。
【請求項3】
前記リターンポートは、前記フィルタ収容室の底壁に設けられ、
前記押動部は、前記フィルタの底部に設けられ、
前記フィルタは、前記フィルタ収容室内の底面上に載置されることによってそのフィルタ収容室内に装着され、
前記閉止部材は、前記リターンポートを下方から閉止する閉止部と、その閉止部が前記リターンポートを閉止している状態でその閉止部から前記リターンポート内を通って前記フィルタ収容室内の底面上に突出し、前記フィルタが前記フィルタ収容室内の底面上に載置されるのに伴って前記押動部によって押圧される被押圧部とを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の作動油貯留装置。
【請求項4】
前記被押圧部は、前記閉止部の軸心に対応する位置に設けられている、請求項3に記載の作動油貯留装置。
【請求項5】
作動油を貯留する作動油タンクと、作動油を濾過するフィルタと、前記作動油タンクに設けられ、前記フィルタを収容するフィルタ収容室とを備え、前記フィルタ収容室は、当該フィルタ収容室内の空間と前記作動油タンク内の空間とを連通させるリターンポートと、当該フィルタ収容室内から作動油を外部へ排出するためのドレンポートとを有し、油圧機器から戻ってくる作動油を前記フィルタ収容室内の前記フィルタを通して濾過した後、前記リターンポートを通じて前記作動油タンクに導入して貯留する作動油貯留装置であって、
前記作動油タンク内において前記リターンポートに対して離接可能に設けられ、前記リターンポートを閉止するための閉止部材と、
前記閉止部材を前記リターンポートに接近する方向に弾発し、前記閉止部材により前記リターンポートを閉止させる弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、前記フィルタ収容室内に作動油が充満しているとともにそのフィルタ収容室内に前記油圧機器から戻ってくる作動油がさらに流入する状態で前記閉止部材が受ける作動油の圧力により前記閉止部材が前記リターンポートから離反するのを許容するような弾発力を有することを特徴とする、作動油貯留装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記閉止部材に対して前記リターンポートと反対側からその閉止部材を弾発する圧縮コイルバネからなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の作動油貯留装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−127781(P2009−127781A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304913(P2007−304913)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】