作業支援システム
【課題】各作業工程の案内情報を作業の進捗に応じて作業者に提供すると共に、作業中断後の再開時に正しい作業工程から案内情報を出力できる作業支援システムを提供する。
【解決手段】携帯端末20は、各作業工程の実施順序および案内情報を含む作業手順書ファイルを記憶しており、各作業工程に対する案内情報を作業工程の進捗状況に応じて出力する。作業対象の装置Dには、作業手順書ファイル名が初期登録された装置タグ13が設けてあり、携帯端末20は作業の中断もしくは終了時には、その時点の作業工程番号、時刻、作業者IDなどを装置ICタグ13に書き込み、作業の開始時は装置ICタグから読み取った、作業手順書ファイル名及び作業工程番号に基づいて、前回の続きの作業工程から案内情報の出力を行う。
【解決手段】携帯端末20は、各作業工程の実施順序および案内情報を含む作業手順書ファイルを記憶しており、各作業工程に対する案内情報を作業工程の進捗状況に応じて出力する。作業対象の装置Dには、作業手順書ファイル名が初期登録された装置タグ13が設けてあり、携帯端末20は作業の中断もしくは終了時には、その時点の作業工程番号、時刻、作業者IDなどを装置ICタグ13に書き込み、作業の開始時は装置ICタグから読み取った、作業手順書ファイル名及び作業工程番号に基づいて、前回の続きの作業工程から案内情報の出力を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立作業などの作業内容を作業者に案内する作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
装置などを組み立てる際の生産方式には、一人の作業者が1台の装置の組立作業を最初から最後まですべて行う、所謂、セル生産方式がある。このような生産方式では、作業者に対する作業指示は図面や説明文などが作業工程毎に記載された作業手順書によって行われるのが通常である。しかし、作業手順書を捲りながらの作業は作業効率を低下させる。また、作業に慣れてきた作業者が作業手順書を確認せずに作業を進める恐れもある。
【0003】
そこで、音声などで作業者に作業の内容を案内する装置が種々提案されている。たとえば、ある作業工程の内容を音声信号で出力した後、作業者の発話する声を音声認識し、その認識結果に応じて次の作業工程の内容の音声信号で出力するようにした音声作業指示装置がある(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−123482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業現場では、作業の途中で終業時間となり、続きの作業を翌日以降に行うことがある。この場合、作業対象の装置の配置が夜間の清掃作業などで変化したり、作業の再開時に他の作業者のものと作業対象の装置を取り違えたり、作業者が交代したりすると、前回の続きの作業工程から正しく作業を再開できない虞がある。
【0006】
また、作業内容を音声案内する場合であっても、組み立て対象の装置が複数機種ある場合に、作業を音声案内している機種と実際に組み立てている装置の機種とが食い違うと、作業不良が発生してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、各作業工程の案内情報を作業の進捗状況に応じて提供すると共に、作業中断後の再開時に正しい作業工程から案内情報を出力することのできる作業支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0009】
[1]作業対象に対応付けて設けられた情報記憶媒体と、
前記情報記憶媒体に対する情報の書き込みおよび読み取りを行うアクセス手段と、
作業工程の実施順序および各作業工程に対する案内情報を含む作業手順書データが記憶された記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている作業手順書データに基づいて各作業工程に対する案内情報を出力する案内情報出力手段と、
作業の進捗状況に応じて前記案内情報を前記案内情報出力手段に出力させると共に、作業の中断もしくは終了時には、その時点での作業の進捗状況を示す進捗情報を前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体に書き込み、作業の開始時は前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体から前記進捗情報を読み取り、該進捗情報の示す作業の進捗状況に応じた作業工程から前記案内情報出力手段による前記案内情報の出力を開始させる制御手段と
を有する
ことを特徴とする作業支援システム。
【0010】
上記発明では、作業の進捗状況に応じて各作業工程に対する音声や画像による案内情報が案内情報出力手段から出力される。また、作業対象の装置にはそれぞれICタグなどの情報記憶媒体を設けてあり、作業の中断もしくは終了時はその時点の作業の進捗状況を情報記憶媒体に書き込み、作業の開始時は情報記憶媒体から読み取った情報に応じた作業工程から案内情報の出力が開始される。これにより、作業の再開時に中断前の続きの作業工程から案内情報を出力することができ、正しい作業工程から作業を再開させることができる。
【0011】
[2]前記情報記憶媒体に、作業手順書データを特定する特定情報を予め記憶しておき、
前記制御手段は、作業の開始時に前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体から前記特定情報を読み取り、該特定情報によって特定される作業手順書データに従って前記案内情報出力手段に前記案内情報を出力させる
ことを特徴とする[1]に記載の作業支援システム。
【0012】
上記発明では、装置に対応して設けられた情報記憶媒体には予め作業手順書データの特定情報が記憶されており、作業の開始時に情報記憶媒体から読み取った特定情報の示す作業手順書データに従って案内情報が出力される。これにより、間違った作業手順書データに従って作業を行うことが防止される。
【0013】
[3]前記制御手段は、作業の中断もしくは終了時に、作業者名およびまたは日時情報を前記情報記憶媒体にさらに書き込む
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の作業支援システム。
【0014】
上記発明では、作業の中断もしくは終了時に作業者名およびまたは日時情報を情報記憶媒体にさらに書き込む。これにより、装置に対応付けされた情報記憶媒体を読み取ることで、その装置に対する作業を行った作業者名や作業の行われた日時を認識でき、管理に役立てることができる。
【0015】
[4]前記制御手段は、前記案内情報出力手段によって案内情報を出力した作業工程に対する作業の終了通知を受けたとき、次の作業工程に対する案内情報を前記案内情報出力手段に出力させる
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【0016】
上記発明では、ある作業工程に対する案内情報を出力した後、作業者から作業の終了通知を受けたとき、次の作業工程の案内情報を出力する。これにより、作業の進捗状況に応じた案内情報が出力される。終了通知は、特定のスイッチ操作により入力されてもよいし、作業者の声の音声認識により検知してもよく、終了通知の方法は問わない。
【0017】
[5]前記制御手段は、作業者の発した音声を音声入力部から取り込んで音声認識し、前記案内情報出力手段によって案内情報を出力した後に前記音声認識で特定の語句が認識されたとき前記終了通知を受けたと判断する
ことを特徴とする[4]に記載の作業支援システム。
【0018】
上記発明では、ある作業工程に対する案内情報を出力した後、作業者が特定の語句を発話したことを音声認識すると、次の作業工程の案内情報が出力される。
【0019】
[6]前記終了通知を受けたことを示す作業確認情報を含む作業履歴を各作業工程について記憶する
ことを特徴とする[4]乃至[5]のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【0020】
上記発明では、各作業工程について作業者から作業の終了通知を受け取ったことを示す作業確認情報が作業履歴として残る。これにより、管理者等は作業手順通りに作業が進められたか否かを、記録された作業履歴によって確認することができる。
【0021】
[7]前記作業履歴として、各作業工程に要した作業時間をさらに記憶する
ことを特徴とする[6]に記載の作業支援システム。
【0022】
上記発明では、作業時間の履歴が記録される。作業時間の履歴を収集し統計処理することで、各作業工程に対する標準作業時間などを導出することができる。各作業工程の作業時間は、たとえば、その作業工程に対する案内情報を出力してから、特定の語句が音声認識されるまでの時間として計測することができる。
【0023】
[8]前記アクセス手段と前記記憶手段と前記案内情報出力手段と前記制御手段は、携帯端末に設けられる
ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【0024】
上記発明では、携帯端末を作業者に所持させて作業させることができる。なお、複数の携帯端末がある場合に、作業者が携帯端末を取り違えたとしても、作業対象に対応して設けられた情報記録媒体から読み取った情報に基づいて、その作業対象に対応した案内情報を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る作業支援システムによれば、各作業工程の案内情報を作業の進捗状況に応じて作業者に提供すると共に、作業の中断があっても正しい作業工程から案内情報の提供を再開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る作業支援システム10のシステム構成例を示している。作業支援システム10は、多数の部品を組み合わせて製造される装置Dの組み立て作業などを支援するシステムである。作業支援システム10は、セル生産方式に対応したものであり、図中、一点破線で囲んだ各範囲C(セルC)が作業者M一人分の作業領域を成している。
【0028】
作業支援システム10は、管理PC11と複数台の表示用PC12とをLAN(Local
Area Network)などのネットワーク2に接続して備えている。また、作業支援システム10は、各作業者Mに携帯させる複数台の携帯端末20と、作業対象の装置Dに対応して設けられた情報記憶媒体としての装置ICタグ13と、作業者Mの衣服などに装着される作業者毎の氏名ICタグ14とを含んで構成される。装置ICタグ13および氏名ICタグ14はそれぞれRFID(Radio Frequency Identification)用のタグであり、リーダーライタから非接触でタグに情報を書き込んだり、タグに記憶された情報を非接触で読み出したりすることができる。
【0029】
管理PC11および表示用PC12はそれぞれ図示省略のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、補助記憶装置としてのハードディスク装置、ディスプレイ装置、通信I/F(Interface)などを備えたコンピュータ装置である。
【0030】
管理PC11には、端末I/F16が接続されている。管理PC11は端末I/F16を介して携帯端末20とデータを授受する。端末I/F16は、所謂、クレードルとして構成されており、携帯端末20を端末I/F16の所定の箇所に載置することで携帯端末20と端末I/F16との電気的な接続が成されるようになっている。
【0031】
管理PC11では、作業の前準備として各種データファイルを作成したり、装置ICタグ13や氏名ICタグ14に必要なデータを初期登録したりする作業を行う。また、後作業として作業履歴のデータの収集、管理し、統計処理などを行う。データファイルには、各作業工程で表示される画像を登録した画像ファイルと、各作業工程の実施順序や各作業工程に対する音声案内情報などを含む作業手順書ファイルF(作業手順書データ)とがある。
【0032】
表示用PC12は、管理PC11に記憶されている画像ファイルの画像をネットワーク2を通じて取得して自装置12のディスプレイに表示する機能を果たす。
【0033】
携帯端末20は、携帯型の情報処理装置である。携帯端末20は管理PC11で作成された作業手順書ファイルFをダウンロードして記憶し、この作業手順書ファイルFに従って各作業工程に関する案内情報を作業の進捗に応じて作業者Mに提供する機能を果たす。携帯端末20には、音声で案内情報を出力するためのスピーカ21aと作業者Mの発した声を取り込むためのマイクロフォン21bとを備えたヘッドセット21が接続される。ヘッドセット21は作業者Mの頭に装着される。
【0034】
各セルCには、組立作業対象の装置Dが置かれて作業が行われる。作業の前準備として各装置Dにはそれぞれ管理者によって装置ICタグ13が添付される。ここでは、組み立て対象の装置Dを載置するパレットに装置ICタグ13は添付される。
【0035】
図2は、携帯端末20の概略構成を示している。携帯端末20は、CPU、ROM、RAMなどを主要部として構成された制御手段22に、アクセス手段23、記憶手段24、案内情報出力手段25、音声入力部26、無線通信部27、操作表示部28、入出力部29、時計部31などを接続して構成される。
【0036】
アクセス手段23は装置ICタグ13や氏名ICタグ14に対して情報の読み書きを行うためのリーダライタである。記憶手段24には作業手順書ファイルFなどが記憶される。案内情報出力手段25は、記憶手段24に記憶されている作業手順書ファイルFに基づいて各作業工程に対する案内情報をヘッドセット21のスピーカ21aから音声で出力する機能を果し、音声合成回路や出力アンプなどで構成される。音声入力部26は、ヘッドセット21のマイクロフォン21bからの音声信号を取り込むための入力回路である。
【0037】
無線通信部27は、表示用PC12との間でデータを無線で送受信する機能を果たす。ここでは、表示画像を特定するための識別情報である画像IDを携帯端末20の無線通信部27から表示用PC12へ送信する。
【0038】
操作表示部28は、小型の液晶ディスプレイと、その画面上に設けられたタッチパネルと、各種のスイッチとで構成される。入出力部29は、外部装置とデータを受け渡しする機能を果たす。たとえば、端末I/F16を通じて管理PC11とデータを授受する。時計部31は、日付と日時(時、分、秒)を計時する。
【0039】
制御手段22は、ROMに格納されたプログラムに基づいて携帯端末20全体の動作を制御する。また、記憶手段24に記憶された作業手順書ファイルFに基づいて、各作業工程の案内情報を作業の進捗状況に応じて案内情報出力手段25から出力させる制御を行う。
【0040】
ここでは、案内情報出力手段25によって案内情報を出力した作業工程に対する作業の終了通知を作業者Mから受けたとき、次の作業工程に対する案内情報を案内情報出力手段25に出力させるように制御する。より詳細には、制御手段22は、マイクロフォン21bおよび音声入力部26から取り込んだ作業者Mの声を音声認識する音声認識部22aの機能を備えており、案内情報出力手段25からある作業工程に対する案内情報を出力した後に、「了解」など特定の語句が音声認識されたとき、その作業工程に対する終了通知を受けたと判断する。
【0041】
制御手段22はさらに、作業の中断もしくは終了時には、その時点での作業の進捗状況を示す進捗情報などをアクセス手段23によって装置ICタグ13に書き込む制御を行う。また、作業の開始時はアクセス手段23によって装置ICタグ13から進捗情報などを読み取り、該進捗情報の示す作業の進捗状況に応じた作業工程から案内情報出力手段25による案内情報の出力を開始させるといった制御を行う。
【0042】
このほか制御手段22は、各作業工程に要した作業時間を計時する機能や作業履歴を記憶させる機能を果たす。作業時間は、たとえば、ある作業工程に対する案内情報を出力した時点から「了解」の語句が音声認識されるまでの時間(ただし、休憩が入ったときはその間を除く)として計時する。
【0043】
図3は、作業手順書ファイルFのデータ構成の一例を示している。図3に示す作業手順書ファイルFのファイル名は「KY12−506」である。ファイル名は作業手順書ファイルFを特定する特定情報として使用される。なお、必要に応じてディレクトリ名などを特定情報に含めてもよい。
【0044】
作業手順書ファイルFには、作業工程の実施順序を示す作業工程番号毎に、その作業工程番号の作業工程に対して出力する音声案内の内容を示す案内音声データと、その作業工程番号の作業工程に対する案内情報として表示する画像の画像IDとが対応付けて登録されている。また作業工程番号毎に、その作業工程番号の作業工程における作業履歴を記録するための履歴記憶欄が設けられている。図3に示す作業手順書ファイルFでは、1レコード(1行)に1つの作業工程に関する情報が登録されており、作業手順書ファイルFの先頭から作業の実施順序に従って各レコードが登録されている。作業履歴欄には、作業者から作業の終了通知を受けたことを示す作業確認情報(確認欄の丸印)、時間情報(ここでは、終了通知を受けた日時およびその作業に要した作業時間)、作業者IDが登録される。
【0045】
図4(a)は、装置ICタグ13に登録される情報を示している。装置ICタグ13には、作業手順書ファイル名、進捗情報としての作業工程番号、作業者ID、時刻情報が登録される。
【0046】
次に、作業支援システム10における作業の流れを説明する。
【0047】
図5は、管理者が行う前準備の流れを示している。管理者は、各作業工程において作業者Mに作業案内として表示するための画像を収集し、画像ファイルとして管理PC11に格納する(ステップS101)。画像としては、作業手順書における図面や作業内容の説明文などでもよいし、模範作業の様子を撮影した静止画や動画などでもよい。
【0048】
次に、作業手順書ファイルFを作成し管理PC11に保存する(ステップS102)。さらに、この作業手順書ファイルFを各携帯端末20に端末I/F16経由でダウンロードする(ステップS103)。なお、携帯端末20には、複数の作業手順書ファイルFをダウンロードして記憶しておくことができる。
【0049】
さらに装置ICタグ13に初期値を書き込み、その装置ICタグ13を該当する装置Dに添付する(ステップS104)。装置ICタグ13への情報の書き込みは、書き込むべき情報を管理PC11から携帯端末20に一旦ダウンロードした後、携帯端末20から行う。図4(b)は装置ICタグ13に登録する初期値の一例を示している。この例では作業手順書ファイル名として図3に示した「K12−506」が登録されている。作業工程番号には「0」が登録されている。「0」は未作業を示す。作業者IDは未登録にする。時刻情報は初期値を書き込んだ時点の時刻が登録される。なお、作業者IDとして、たとえば、この装置ICタグ13に初期値を書き込んだ管理者のIDを登録してもよい。
【0050】
次に、各作業者Mに固有に割り当てた識別情報である作業者IDを氏名ICタグ14に書き込み、これを各作業者Mに配布する(ステップS105)。氏名ICタグ14への書き込みは、装置ICタグ13への書き込みと同様に、書き込むべき情報を管理PC11から携帯端末20に一旦ダウンロードした後、携帯端末20によって行う。
【0051】
図6は、作業者Mによる作業の流れを示している。作業者Mは、該当のセルCにて表示用PC12の電源をオンする(ステップS201)。次に、携帯端末20の音声作業支援システムを起動する(ステップS202)。その後、自分の氏名ICタグ14の上に携帯端末20をかざして、氏名ICタグ14から作業者IDなどを携帯端末20に読み取らせる(ステップS203)。さらに、作業対象の装置Dに添付されている装置ICタグ13の上に携帯端末20をかざして、装置ICタグ13の情報を携帯端末20に読み取らせる(ステップS204)。
【0052】
これにより、携帯端末20は、作業者IDや作業手順書ファイル名、作業開始すべき作業工程番号、作業状態などを認識し、その作業手順書ファイル名に対応する作業手順書ファイルFに基づいて、その作業工程番号に対応する作業工程(読み取った作業工程番号を+1した作業工程)から順に案内情報の提供を行う。作業者Mは、携帯端末20から提供される音声、画像による案内情報に従って各作業工程の作業を進める(ステップS205)。
【0053】
その後、すべての作業工程が完了、あるいは終業時間の到来などでいずれかの作業工程で作業を中断するとき、作業者Mは作業の終了や中断の操作(終了ボタンや中断ボタンの操作あるいは「終了」、「中断」の発話など)を携帯端末20に対して行った後、携帯端末20を装置ICタグ13の上にかざす(ステップS206)。これにより、その時点の作業の進捗状況(作業工程番号)、作業者ID、その時点の時刻情報などの終了情報が装置ICタグ13に書き込まれて、装置ICタグ13の登録内容が更新される。作業者Mの作業はこれで終了する(エンド)。
【0054】
図4(c)は、作業の中断により終業情報が書き込まれた装置ICタグ13の登録内容の一例を示している。この例では、作業工程番号「23」の作業工程まで作業が終了したこと、その作業者Mの作業者IDが「A001」であること、作業終了時の日時が2007年1月20日の17時10分00秒であることを示す終了情報が装置ICタグ13に記録されている。
【0055】
翌日、図6に示す作業を作業者Mが開始するとそのステップS204で装置ICタグ13から図4(c)に示す情報が読み取られる。これに基づき、翌日は、作業工程番号「24」の作業工程から案内情報の提供が開始される。
【0056】
図4(d)は、すべての作業工程の完了により終了情報が書き込まれた場合の装置ICタグ13の登録内容の一例を示している。作業工程番号の欄の「E」は作業完了を示している。この例では、作業者IDが「A001」であること、作業完了時の日時が2007年1月21日11時05分00秒であることが登録されている。図6のステップS204にてこの装置ICタグ13を読み取った場合、携帯端末20は作業工程番号「E」が読み取られたことから作業が完了していることを認識し、この装置Dに対する作業が完了していることを作業者Mに音声や警告音などで報知して案内情報の提供は行わない。
【0057】
図7は、携帯端末20が行う処理の流れを示している。携帯端末20は、作業者Mが当該携帯端末20を氏名ICタグ14や装置ICタグ13の上にかざしたとき、氏名ICタグ14からは作業者IDを、装置ICタグ13からは作業手順書ファイル名、作業工程番号および作業者ID、時刻情報などの情報をそれぞれ読み取る(ステップS301)。次に、読み取った作業手順書ファイル名に対応する作業手順書ファイルFを自装置20の記憶手段24内で検索する(ステップS302)。該当の作業手順書ファイルFが記憶手段24に記憶されていないときは(ステップS303;N)、その旨のエラー通知(警告音の出力やエラーメッセージの表示)を行って(ステップS304)処理を終了する(エンド)。
【0058】
装置ICタグ13から読み取った作業手順書ファイル名に一致する作業手順書ファイルFが記憶手段24に記憶されている場合は(ステップS303;Y)、装置ICタグ13から読み取った作業工程番号が作業の完了を示す「E」か否かを判定し(ステップS305)、作業完了を示す「E」の場合は(ステップS305;Y)、すでにこの装置Dに対する作業が完了していることの通知(警告音の出力やエラーメッセージの表示)を行って(ステップS306)処理を終了する(エンド)。
【0059】
装置ICタグ13から読み取った作業工程番号が作業の完了を示す「E」でない場合は(ステップS305;N)、装置ICタグ13から読み取った作業工程番号に+1した値を、音声ガイダンス開始時の作業工程番号に設定する(ステップS307)。次に、その作業工程番号に対応する案内音声データを該当の作業手順書ファイルFから読み出し、該案内音声データに対応する音声を音声ガイダンスとして出力する。さらにその作業工程番号に対応する画像IDを該当の作業手順書ファイルFから読み出し、これを無線通信で表示用PC12に送信し、その画像IDに対応する画像を表示用PC12のディスプレイに表示させる(ステップS308)。
【0060】
なお、表示用PC12は、携帯端末20から受信した画像IDに対応する画像データをネットワーク2経由で管理PC11に要求し、その応答として管理PC11から返送されてくる画像データを該表示用PC12のディスプレイに表示するようになっている。
【0061】
上記音声ガイダンスを出力した後、携帯端末20はマイクロフォン21bから入力される作業者Mの声に対する音声認識処理の実行状態になる(ステップS309)。ここで、「了解」など特定の語句が認識されると(ステップS310;Y)、現在の作業工程に関連付けて、作業確認情報、作業時間、時刻情報、作業者IDなどの作業履歴を記憶する(ステップS311)。ここでは、作業手順書ファイルFの中の現在の作業工程番号に対応する作業履歴記憶欄にこれらの作業履歴を登録する。
【0062】
たとえば、図3の例では、作業工程番号1の音声ガイダンスとして「W010、背面パネルの取付です。取付ネジ、A、B、Cを8個、D、E、Fを4個用意し、背面パネルを取付けてください。」という音声を出力した後、作業者Mの発話した「了解」の語句が認識されたことを示す作業履歴として、作業工程番号1に対応する作業履歴記憶欄の中の確認欄に作業確認情報として丸印が付され、さらにその時点の時間情報および作業者IDが登録されている。
【0063】
作業履歴を登録した後、作業工程番号を+1して次の作業工程に進める(ステップS312)。ここで、+1した後の作業工程番号の作業工程が作業手順書ファイルFに登録されている場合は(ステップS313;N)、ステップS308に戻って、次の作業工程に対する案内情報の出力処理を実行する。+1した後の作業工程番号の作業工程が作業手順書ファイルFに登録されていない場合は作業完了となり(ステップS313;Y)、装置ICタグ13に対して、作業完了用の終了情報(図4(d)に例示したように作業工程番号として「E」、時刻情報、作業者ID)を書き込み(ステップS315)処理を終了する(エンド)。
【0064】
なお、作業の途中で、作業の中断操作を受けた場合は(ステップS314;Y)、装置ICタグ13に対して作業中断用の終了情報(図4(c)に例示したように現時点の作業工程番号、時刻情報、作業者ID)を書き込み(ステップS315)処理を終了する(エンド)。
【0065】
また、図7に示す流れ図では省略したが、音声認識では「了解」以外の語句、たとえば、「開始」、「終了」、「停止」などの語句についても認識しており、その認識結果に応じた処理が行われる。さらに、図7では省略したが各種操作ボタンの受付も行っており、それらの操作に応じた処理も行われる。
【0066】
図8は、作業者Mの作業中に行われる作業支援システム10の動作例を示している。作業者Mが装置ICタグ13の上に携帯端末20をかざすと、携帯端末20は、装置ICタグ13から読み取った情報から作業状態(未作業、作業中、作業完了)を確認し(ステップS401)、該当する作業手順書ファイルFの該当する作業工程から案内情報を出力する処理を開始する(ステップS402)。
【0067】
処理開始時、表示用PC12には所定の初期画面が表示される(P1)。また、携帯端末20などの使い方や作業開始時の作業工程を確認する音声ガイダンスが読み上げられた後、音声認識中になり、作業者Mが「了解」と発話すると(ステップS403)、最初の作業工程(ここでは作業工程N)の音声ガイダンスが読み上げられ、再び音声認識中となる。また作業工程Nに対応する画面NがそのセルCの表示用PC12に表示される(P2)。
【0068】
作業者Mは作業工程Nに関する作業を行い、作業が終了すると「了解」と発話する(ステップS404)。すると作業工程が1つ進み、作業工程N+1の音声ガイダンスが読み上げられ、音声認識中になり、作業工程N+1に対応する画面N+1が表示用PC12に表示される(P3)。
【0069】
作業者Mは作業工程N+1に関する作業を行い、作業が終了すると「了解」と発話する(ステップS405)。すると作業工程が1つ進み、作業工程N+2の音声ガイダンスが読み上げられ、音声認識中になり(ステップS406)、作業工程N+2に対応する画面N+2が表示用PC12に表示される(P4)。
【0070】
この状態で、作業者Mが携帯端末20の図示省略した「戻る」キーあるいは「進む」キーを操作すると(ステップS407)、その操作に応じて表示用PC12に表示される画面が前後の作業工程の画面に遷移する(P5)。作業者Mは画面を参考にして作業を進め、作業が終了すると「了解」と発話する(ステップS408)。すると作業工程が1つ進み、作業工程N+3の音声ガイダンスが読み上げられ、音声認識中になり、作業工程N+3に対応する画面N+3が表示用PC12に表示される(P6)。
【0071】
ここで、作業者Mが「停止」と発話すると(ステップS409)、その語句が音声認識で認識され、休憩中の画面が表示用PC12に表示される(P7)。その後、作業者Mが「開始」と発話すると(ステップS410)、休憩は終了し、休憩前の作業工程N+3に対する音声ガイダンスが再度読み上げられ、作業工程N+3に対応する画面N+3が表示用PC12に表示される(P8)。
【0072】
作業者Mは作業工程N+3に関する作業を行い、作業が終了したときは「終了」と発話する(ステップS411)。すると作業の終了となり、表示用PC12には終了画面が表示される(P9)。また、作業終了に関する注意事項(携帯端末20を装置ICタグ13の上にかざすことなどを指示する)などの音声ガイダンスが読み上げられ、終了情報の装置ICタグ13への書き込みが行われて処理は終了する(ステップS412、エンド)。
【0073】
作業者Mによる一連の作業が終了すると携帯端末20は管理者に返却され、管理者は携帯端末20の記憶手段24に記憶されている作業履歴を管理PC11にアップロードする。ここでは、携帯端末20から管理PC11へ作業手順書ファイルFをアップロードし、管理PC11は、携帯端末20からアップロードした作業手順書ファイルFから作業履歴に関するデータを抽出し、別途の履歴ファイルとして保存するようになっている。管理PC11は、蓄積した履歴ファイルから、各作業工程の作業時間を統計的に処理して標準作業時間の算出などを行う。
【0074】
以上のように本実施の形態にかかわる作業支援システム10では、装置Dに対応して設けられる装置ICタグ13に予め作業手順書ファイル名を登録しておき、作業者Mの作業時には、装置ICタグ13から読み取った作業手順書ファイル名に対応する作業手順書ファイルFに従って案内情報を作業者Mに提供するので、機種別に複数の作業手順書ファイルFがあっても、間違った機種の作業手順書ファイルFによって間違った作業が行われるようなことが防止され、その装置Dに対応した正しい作業手順書ファイルFに従って作業が行われる。
【0075】
また、作業終了時に作業工程番号を装置ICタグ13に書き込み、作業開始時には装置ICタグ13から読み取った作業工程番号が示す作業工程から案内情報の提供を開始するので、中断した続きの箇所から作業を誤りなく再開させることができる。たとえば、作業の途中で終業時間になりその続きの作業工程を翌日以降に行う場合に、作業を再開するまでの間に作業対象の装置Dの配置が清掃作業などで変化したり、作業の再開時に隣の作業者Mのものと作業対象の装置Dを取り違えたり、作業者Mが代理の作業者に替わったり、携帯端末20を他の作業者のものと取り違えたりするなどの混乱があっても、装置ICタグ13に記録されている情報に基づいて作業案内を再開することで、前回の続きの作業工程から正しく作業を再開することができる。
【0076】
さらに装置ICタグ13を読み取ることで、その装置Dに対する作業がどの作業工程まで終了しているかを認識したり、前回の作業を行った作業者Mや前回の作業が終了した日時を認識することができ、管理に役立てることができる。
【0077】
また、作業工程の進捗状況に応じて音声や画像による案内情報を作業者Mに提供するので、作業者Mは作業手順書を暗記しなくても作業を進めることができる。また、作業手順書ファイルFに従って各作業工程の案内情報を流し、「了解」の応答を確認して次の作業工程に進めるので、作業手順書ファイルFに登録してある作業手順通りに作業が行われることが厳守される。さらに、「了解」の語句を認識したことを作業履歴として記録するので、作業手順書通りに確実に作業が行われたことを履歴に残すことができる。
【0078】
また、作業者Mの発話した語句を音声認識して作業者Mからの指示や応答を受け付けるので、当該作業支援システム10に対する作業者Mの操作負担が軽減する。
【0079】
さらに、携帯端末20に作業中の作業履歴を保存するので、たとえば、他の工場の生産ラインに作業支援システム10を導入して装置Dの組み立てなどの作業を行わせる場合に、その生産時に使用された携帯端末20を本部などで回収することにより、他の工場で行われた作業の履歴を本部で管理することができ、外部で生産される製品の品質管理や生産管理を的確に行うことが可能になる。
【0080】
以上、本発明の実施の形態および実施例を図面によって説明してきたが、具体的な構成は例示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0081】
たとえば、実施の形態では、案内情報を出力した作業工程に対する作業の終了通知を作業者Mの発話した「了解」などの特定語句を音声認識することによって検出したが、操作ボタンの操作など他の方法で作業の終了通知を受けるように構成されてもよい。
【0082】
実施の形態では、携帯端末20に案内情報出力手段25や音声認識部22aなどを設けたが、作業支援システム10の有する機能のうちのどの機能を携帯端末20、表示用PC12、管理PC11に配分するかは適宜に定めればよい。たとえば、携帯端末20のほぼ全部の機能を表示用PC12側に設け、作業者Mには、表示用PC12との通信機能を備えたヘッドセット21を装着させるように構成されてもかまわない。
【0083】
また、実施の形態では作業手順書ファイルFに作業履歴を記憶させるようにしたが、別途のファイルや記憶装置に作業履歴を記憶させてもかまわない。
【0084】
装置ICタグ13は、装置Dを組み立てる際のパレットに貼付するほか、たとえば、装置Dのメインフレームや外装などの主要部品に設けてもかまわない。また、情報記録媒体はICタグに限定されるものではなく、たとえば、メモリーカードなどでもかまわない。
【0085】
作業対象は装置に限らず、たとえば、複数の作業工程からなる検査作業に対する案内情報を提供するような場合には、検査対象物や検査装置なども作業対象になる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態にかかわる作業支援システムのシステム構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかわる作業支援システムに含まれる携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図3】作業手順書ファイルのデータ構造の一例を示す説明図である。
【図4】装置ICタグに登録される情報を例示した説明図である。
【図5】管理者の行う前準備の手順を示す流れ図である。
【図6】作業者の行う作業の手順を示す流れ図である。
【図7】携帯端末の行う処理を示す流れ図である。
【図8】作業者の作業中に行われる作業支援システム10の動作例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0087】
2…ネットワーク
10…作業支援システム
11…管理PC
12…表示用PC
13…装置ICタグ
14…氏名ICタグ
16…端末I/F
20…携帯端末
21…ヘッドセット
21a…スピーカ
21b…マイクロフォン
22…制御手段
22a…音声認識部
23…アクセス手段
24…記憶手段
25…案内情報出力手段
26…音声入力部
27…無線通信部
28…操作表示部
29…入出力部
31…時計部
C…セル
D…装置
F…作業手順書ファイル
M…作業者
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立作業などの作業内容を作業者に案内する作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
装置などを組み立てる際の生産方式には、一人の作業者が1台の装置の組立作業を最初から最後まですべて行う、所謂、セル生産方式がある。このような生産方式では、作業者に対する作業指示は図面や説明文などが作業工程毎に記載された作業手順書によって行われるのが通常である。しかし、作業手順書を捲りながらの作業は作業効率を低下させる。また、作業に慣れてきた作業者が作業手順書を確認せずに作業を進める恐れもある。
【0003】
そこで、音声などで作業者に作業の内容を案内する装置が種々提案されている。たとえば、ある作業工程の内容を音声信号で出力した後、作業者の発話する声を音声認識し、その認識結果に応じて次の作業工程の内容の音声信号で出力するようにした音声作業指示装置がある(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−123482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業現場では、作業の途中で終業時間となり、続きの作業を翌日以降に行うことがある。この場合、作業対象の装置の配置が夜間の清掃作業などで変化したり、作業の再開時に他の作業者のものと作業対象の装置を取り違えたり、作業者が交代したりすると、前回の続きの作業工程から正しく作業を再開できない虞がある。
【0006】
また、作業内容を音声案内する場合であっても、組み立て対象の装置が複数機種ある場合に、作業を音声案内している機種と実際に組み立てている装置の機種とが食い違うと、作業不良が発生してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、各作業工程の案内情報を作業の進捗状況に応じて提供すると共に、作業中断後の再開時に正しい作業工程から案内情報を出力することのできる作業支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0009】
[1]作業対象に対応付けて設けられた情報記憶媒体と、
前記情報記憶媒体に対する情報の書き込みおよび読み取りを行うアクセス手段と、
作業工程の実施順序および各作業工程に対する案内情報を含む作業手順書データが記憶された記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている作業手順書データに基づいて各作業工程に対する案内情報を出力する案内情報出力手段と、
作業の進捗状況に応じて前記案内情報を前記案内情報出力手段に出力させると共に、作業の中断もしくは終了時には、その時点での作業の進捗状況を示す進捗情報を前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体に書き込み、作業の開始時は前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体から前記進捗情報を読み取り、該進捗情報の示す作業の進捗状況に応じた作業工程から前記案内情報出力手段による前記案内情報の出力を開始させる制御手段と
を有する
ことを特徴とする作業支援システム。
【0010】
上記発明では、作業の進捗状況に応じて各作業工程に対する音声や画像による案内情報が案内情報出力手段から出力される。また、作業対象の装置にはそれぞれICタグなどの情報記憶媒体を設けてあり、作業の中断もしくは終了時はその時点の作業の進捗状況を情報記憶媒体に書き込み、作業の開始時は情報記憶媒体から読み取った情報に応じた作業工程から案内情報の出力が開始される。これにより、作業の再開時に中断前の続きの作業工程から案内情報を出力することができ、正しい作業工程から作業を再開させることができる。
【0011】
[2]前記情報記憶媒体に、作業手順書データを特定する特定情報を予め記憶しておき、
前記制御手段は、作業の開始時に前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体から前記特定情報を読み取り、該特定情報によって特定される作業手順書データに従って前記案内情報出力手段に前記案内情報を出力させる
ことを特徴とする[1]に記載の作業支援システム。
【0012】
上記発明では、装置に対応して設けられた情報記憶媒体には予め作業手順書データの特定情報が記憶されており、作業の開始時に情報記憶媒体から読み取った特定情報の示す作業手順書データに従って案内情報が出力される。これにより、間違った作業手順書データに従って作業を行うことが防止される。
【0013】
[3]前記制御手段は、作業の中断もしくは終了時に、作業者名およびまたは日時情報を前記情報記憶媒体にさらに書き込む
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の作業支援システム。
【0014】
上記発明では、作業の中断もしくは終了時に作業者名およびまたは日時情報を情報記憶媒体にさらに書き込む。これにより、装置に対応付けされた情報記憶媒体を読み取ることで、その装置に対する作業を行った作業者名や作業の行われた日時を認識でき、管理に役立てることができる。
【0015】
[4]前記制御手段は、前記案内情報出力手段によって案内情報を出力した作業工程に対する作業の終了通知を受けたとき、次の作業工程に対する案内情報を前記案内情報出力手段に出力させる
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【0016】
上記発明では、ある作業工程に対する案内情報を出力した後、作業者から作業の終了通知を受けたとき、次の作業工程の案内情報を出力する。これにより、作業の進捗状況に応じた案内情報が出力される。終了通知は、特定のスイッチ操作により入力されてもよいし、作業者の声の音声認識により検知してもよく、終了通知の方法は問わない。
【0017】
[5]前記制御手段は、作業者の発した音声を音声入力部から取り込んで音声認識し、前記案内情報出力手段によって案内情報を出力した後に前記音声認識で特定の語句が認識されたとき前記終了通知を受けたと判断する
ことを特徴とする[4]に記載の作業支援システム。
【0018】
上記発明では、ある作業工程に対する案内情報を出力した後、作業者が特定の語句を発話したことを音声認識すると、次の作業工程の案内情報が出力される。
【0019】
[6]前記終了通知を受けたことを示す作業確認情報を含む作業履歴を各作業工程について記憶する
ことを特徴とする[4]乃至[5]のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【0020】
上記発明では、各作業工程について作業者から作業の終了通知を受け取ったことを示す作業確認情報が作業履歴として残る。これにより、管理者等は作業手順通りに作業が進められたか否かを、記録された作業履歴によって確認することができる。
【0021】
[7]前記作業履歴として、各作業工程に要した作業時間をさらに記憶する
ことを特徴とする[6]に記載の作業支援システム。
【0022】
上記発明では、作業時間の履歴が記録される。作業時間の履歴を収集し統計処理することで、各作業工程に対する標準作業時間などを導出することができる。各作業工程の作業時間は、たとえば、その作業工程に対する案内情報を出力してから、特定の語句が音声認識されるまでの時間として計測することができる。
【0023】
[8]前記アクセス手段と前記記憶手段と前記案内情報出力手段と前記制御手段は、携帯端末に設けられる
ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【0024】
上記発明では、携帯端末を作業者に所持させて作業させることができる。なお、複数の携帯端末がある場合に、作業者が携帯端末を取り違えたとしても、作業対象に対応して設けられた情報記録媒体から読み取った情報に基づいて、その作業対象に対応した案内情報を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る作業支援システムによれば、各作業工程の案内情報を作業の進捗状況に応じて作業者に提供すると共に、作業の中断があっても正しい作業工程から案内情報の提供を再開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る作業支援システム10のシステム構成例を示している。作業支援システム10は、多数の部品を組み合わせて製造される装置Dの組み立て作業などを支援するシステムである。作業支援システム10は、セル生産方式に対応したものであり、図中、一点破線で囲んだ各範囲C(セルC)が作業者M一人分の作業領域を成している。
【0028】
作業支援システム10は、管理PC11と複数台の表示用PC12とをLAN(Local
Area Network)などのネットワーク2に接続して備えている。また、作業支援システム10は、各作業者Mに携帯させる複数台の携帯端末20と、作業対象の装置Dに対応して設けられた情報記憶媒体としての装置ICタグ13と、作業者Mの衣服などに装着される作業者毎の氏名ICタグ14とを含んで構成される。装置ICタグ13および氏名ICタグ14はそれぞれRFID(Radio Frequency Identification)用のタグであり、リーダーライタから非接触でタグに情報を書き込んだり、タグに記憶された情報を非接触で読み出したりすることができる。
【0029】
管理PC11および表示用PC12はそれぞれ図示省略のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、補助記憶装置としてのハードディスク装置、ディスプレイ装置、通信I/F(Interface)などを備えたコンピュータ装置である。
【0030】
管理PC11には、端末I/F16が接続されている。管理PC11は端末I/F16を介して携帯端末20とデータを授受する。端末I/F16は、所謂、クレードルとして構成されており、携帯端末20を端末I/F16の所定の箇所に載置することで携帯端末20と端末I/F16との電気的な接続が成されるようになっている。
【0031】
管理PC11では、作業の前準備として各種データファイルを作成したり、装置ICタグ13や氏名ICタグ14に必要なデータを初期登録したりする作業を行う。また、後作業として作業履歴のデータの収集、管理し、統計処理などを行う。データファイルには、各作業工程で表示される画像を登録した画像ファイルと、各作業工程の実施順序や各作業工程に対する音声案内情報などを含む作業手順書ファイルF(作業手順書データ)とがある。
【0032】
表示用PC12は、管理PC11に記憶されている画像ファイルの画像をネットワーク2を通じて取得して自装置12のディスプレイに表示する機能を果たす。
【0033】
携帯端末20は、携帯型の情報処理装置である。携帯端末20は管理PC11で作成された作業手順書ファイルFをダウンロードして記憶し、この作業手順書ファイルFに従って各作業工程に関する案内情報を作業の進捗に応じて作業者Mに提供する機能を果たす。携帯端末20には、音声で案内情報を出力するためのスピーカ21aと作業者Mの発した声を取り込むためのマイクロフォン21bとを備えたヘッドセット21が接続される。ヘッドセット21は作業者Mの頭に装着される。
【0034】
各セルCには、組立作業対象の装置Dが置かれて作業が行われる。作業の前準備として各装置Dにはそれぞれ管理者によって装置ICタグ13が添付される。ここでは、組み立て対象の装置Dを載置するパレットに装置ICタグ13は添付される。
【0035】
図2は、携帯端末20の概略構成を示している。携帯端末20は、CPU、ROM、RAMなどを主要部として構成された制御手段22に、アクセス手段23、記憶手段24、案内情報出力手段25、音声入力部26、無線通信部27、操作表示部28、入出力部29、時計部31などを接続して構成される。
【0036】
アクセス手段23は装置ICタグ13や氏名ICタグ14に対して情報の読み書きを行うためのリーダライタである。記憶手段24には作業手順書ファイルFなどが記憶される。案内情報出力手段25は、記憶手段24に記憶されている作業手順書ファイルFに基づいて各作業工程に対する案内情報をヘッドセット21のスピーカ21aから音声で出力する機能を果し、音声合成回路や出力アンプなどで構成される。音声入力部26は、ヘッドセット21のマイクロフォン21bからの音声信号を取り込むための入力回路である。
【0037】
無線通信部27は、表示用PC12との間でデータを無線で送受信する機能を果たす。ここでは、表示画像を特定するための識別情報である画像IDを携帯端末20の無線通信部27から表示用PC12へ送信する。
【0038】
操作表示部28は、小型の液晶ディスプレイと、その画面上に設けられたタッチパネルと、各種のスイッチとで構成される。入出力部29は、外部装置とデータを受け渡しする機能を果たす。たとえば、端末I/F16を通じて管理PC11とデータを授受する。時計部31は、日付と日時(時、分、秒)を計時する。
【0039】
制御手段22は、ROMに格納されたプログラムに基づいて携帯端末20全体の動作を制御する。また、記憶手段24に記憶された作業手順書ファイルFに基づいて、各作業工程の案内情報を作業の進捗状況に応じて案内情報出力手段25から出力させる制御を行う。
【0040】
ここでは、案内情報出力手段25によって案内情報を出力した作業工程に対する作業の終了通知を作業者Mから受けたとき、次の作業工程に対する案内情報を案内情報出力手段25に出力させるように制御する。より詳細には、制御手段22は、マイクロフォン21bおよび音声入力部26から取り込んだ作業者Mの声を音声認識する音声認識部22aの機能を備えており、案内情報出力手段25からある作業工程に対する案内情報を出力した後に、「了解」など特定の語句が音声認識されたとき、その作業工程に対する終了通知を受けたと判断する。
【0041】
制御手段22はさらに、作業の中断もしくは終了時には、その時点での作業の進捗状況を示す進捗情報などをアクセス手段23によって装置ICタグ13に書き込む制御を行う。また、作業の開始時はアクセス手段23によって装置ICタグ13から進捗情報などを読み取り、該進捗情報の示す作業の進捗状況に応じた作業工程から案内情報出力手段25による案内情報の出力を開始させるといった制御を行う。
【0042】
このほか制御手段22は、各作業工程に要した作業時間を計時する機能や作業履歴を記憶させる機能を果たす。作業時間は、たとえば、ある作業工程に対する案内情報を出力した時点から「了解」の語句が音声認識されるまでの時間(ただし、休憩が入ったときはその間を除く)として計時する。
【0043】
図3は、作業手順書ファイルFのデータ構成の一例を示している。図3に示す作業手順書ファイルFのファイル名は「KY12−506」である。ファイル名は作業手順書ファイルFを特定する特定情報として使用される。なお、必要に応じてディレクトリ名などを特定情報に含めてもよい。
【0044】
作業手順書ファイルFには、作業工程の実施順序を示す作業工程番号毎に、その作業工程番号の作業工程に対して出力する音声案内の内容を示す案内音声データと、その作業工程番号の作業工程に対する案内情報として表示する画像の画像IDとが対応付けて登録されている。また作業工程番号毎に、その作業工程番号の作業工程における作業履歴を記録するための履歴記憶欄が設けられている。図3に示す作業手順書ファイルFでは、1レコード(1行)に1つの作業工程に関する情報が登録されており、作業手順書ファイルFの先頭から作業の実施順序に従って各レコードが登録されている。作業履歴欄には、作業者から作業の終了通知を受けたことを示す作業確認情報(確認欄の丸印)、時間情報(ここでは、終了通知を受けた日時およびその作業に要した作業時間)、作業者IDが登録される。
【0045】
図4(a)は、装置ICタグ13に登録される情報を示している。装置ICタグ13には、作業手順書ファイル名、進捗情報としての作業工程番号、作業者ID、時刻情報が登録される。
【0046】
次に、作業支援システム10における作業の流れを説明する。
【0047】
図5は、管理者が行う前準備の流れを示している。管理者は、各作業工程において作業者Mに作業案内として表示するための画像を収集し、画像ファイルとして管理PC11に格納する(ステップS101)。画像としては、作業手順書における図面や作業内容の説明文などでもよいし、模範作業の様子を撮影した静止画や動画などでもよい。
【0048】
次に、作業手順書ファイルFを作成し管理PC11に保存する(ステップS102)。さらに、この作業手順書ファイルFを各携帯端末20に端末I/F16経由でダウンロードする(ステップS103)。なお、携帯端末20には、複数の作業手順書ファイルFをダウンロードして記憶しておくことができる。
【0049】
さらに装置ICタグ13に初期値を書き込み、その装置ICタグ13を該当する装置Dに添付する(ステップS104)。装置ICタグ13への情報の書き込みは、書き込むべき情報を管理PC11から携帯端末20に一旦ダウンロードした後、携帯端末20から行う。図4(b)は装置ICタグ13に登録する初期値の一例を示している。この例では作業手順書ファイル名として図3に示した「K12−506」が登録されている。作業工程番号には「0」が登録されている。「0」は未作業を示す。作業者IDは未登録にする。時刻情報は初期値を書き込んだ時点の時刻が登録される。なお、作業者IDとして、たとえば、この装置ICタグ13に初期値を書き込んだ管理者のIDを登録してもよい。
【0050】
次に、各作業者Mに固有に割り当てた識別情報である作業者IDを氏名ICタグ14に書き込み、これを各作業者Mに配布する(ステップS105)。氏名ICタグ14への書き込みは、装置ICタグ13への書き込みと同様に、書き込むべき情報を管理PC11から携帯端末20に一旦ダウンロードした後、携帯端末20によって行う。
【0051】
図6は、作業者Mによる作業の流れを示している。作業者Mは、該当のセルCにて表示用PC12の電源をオンする(ステップS201)。次に、携帯端末20の音声作業支援システムを起動する(ステップS202)。その後、自分の氏名ICタグ14の上に携帯端末20をかざして、氏名ICタグ14から作業者IDなどを携帯端末20に読み取らせる(ステップS203)。さらに、作業対象の装置Dに添付されている装置ICタグ13の上に携帯端末20をかざして、装置ICタグ13の情報を携帯端末20に読み取らせる(ステップS204)。
【0052】
これにより、携帯端末20は、作業者IDや作業手順書ファイル名、作業開始すべき作業工程番号、作業状態などを認識し、その作業手順書ファイル名に対応する作業手順書ファイルFに基づいて、その作業工程番号に対応する作業工程(読み取った作業工程番号を+1した作業工程)から順に案内情報の提供を行う。作業者Mは、携帯端末20から提供される音声、画像による案内情報に従って各作業工程の作業を進める(ステップS205)。
【0053】
その後、すべての作業工程が完了、あるいは終業時間の到来などでいずれかの作業工程で作業を中断するとき、作業者Mは作業の終了や中断の操作(終了ボタンや中断ボタンの操作あるいは「終了」、「中断」の発話など)を携帯端末20に対して行った後、携帯端末20を装置ICタグ13の上にかざす(ステップS206)。これにより、その時点の作業の進捗状況(作業工程番号)、作業者ID、その時点の時刻情報などの終了情報が装置ICタグ13に書き込まれて、装置ICタグ13の登録内容が更新される。作業者Mの作業はこれで終了する(エンド)。
【0054】
図4(c)は、作業の中断により終業情報が書き込まれた装置ICタグ13の登録内容の一例を示している。この例では、作業工程番号「23」の作業工程まで作業が終了したこと、その作業者Mの作業者IDが「A001」であること、作業終了時の日時が2007年1月20日の17時10分00秒であることを示す終了情報が装置ICタグ13に記録されている。
【0055】
翌日、図6に示す作業を作業者Mが開始するとそのステップS204で装置ICタグ13から図4(c)に示す情報が読み取られる。これに基づき、翌日は、作業工程番号「24」の作業工程から案内情報の提供が開始される。
【0056】
図4(d)は、すべての作業工程の完了により終了情報が書き込まれた場合の装置ICタグ13の登録内容の一例を示している。作業工程番号の欄の「E」は作業完了を示している。この例では、作業者IDが「A001」であること、作業完了時の日時が2007年1月21日11時05分00秒であることが登録されている。図6のステップS204にてこの装置ICタグ13を読み取った場合、携帯端末20は作業工程番号「E」が読み取られたことから作業が完了していることを認識し、この装置Dに対する作業が完了していることを作業者Mに音声や警告音などで報知して案内情報の提供は行わない。
【0057】
図7は、携帯端末20が行う処理の流れを示している。携帯端末20は、作業者Mが当該携帯端末20を氏名ICタグ14や装置ICタグ13の上にかざしたとき、氏名ICタグ14からは作業者IDを、装置ICタグ13からは作業手順書ファイル名、作業工程番号および作業者ID、時刻情報などの情報をそれぞれ読み取る(ステップS301)。次に、読み取った作業手順書ファイル名に対応する作業手順書ファイルFを自装置20の記憶手段24内で検索する(ステップS302)。該当の作業手順書ファイルFが記憶手段24に記憶されていないときは(ステップS303;N)、その旨のエラー通知(警告音の出力やエラーメッセージの表示)を行って(ステップS304)処理を終了する(エンド)。
【0058】
装置ICタグ13から読み取った作業手順書ファイル名に一致する作業手順書ファイルFが記憶手段24に記憶されている場合は(ステップS303;Y)、装置ICタグ13から読み取った作業工程番号が作業の完了を示す「E」か否かを判定し(ステップS305)、作業完了を示す「E」の場合は(ステップS305;Y)、すでにこの装置Dに対する作業が完了していることの通知(警告音の出力やエラーメッセージの表示)を行って(ステップS306)処理を終了する(エンド)。
【0059】
装置ICタグ13から読み取った作業工程番号が作業の完了を示す「E」でない場合は(ステップS305;N)、装置ICタグ13から読み取った作業工程番号に+1した値を、音声ガイダンス開始時の作業工程番号に設定する(ステップS307)。次に、その作業工程番号に対応する案内音声データを該当の作業手順書ファイルFから読み出し、該案内音声データに対応する音声を音声ガイダンスとして出力する。さらにその作業工程番号に対応する画像IDを該当の作業手順書ファイルFから読み出し、これを無線通信で表示用PC12に送信し、その画像IDに対応する画像を表示用PC12のディスプレイに表示させる(ステップS308)。
【0060】
なお、表示用PC12は、携帯端末20から受信した画像IDに対応する画像データをネットワーク2経由で管理PC11に要求し、その応答として管理PC11から返送されてくる画像データを該表示用PC12のディスプレイに表示するようになっている。
【0061】
上記音声ガイダンスを出力した後、携帯端末20はマイクロフォン21bから入力される作業者Mの声に対する音声認識処理の実行状態になる(ステップS309)。ここで、「了解」など特定の語句が認識されると(ステップS310;Y)、現在の作業工程に関連付けて、作業確認情報、作業時間、時刻情報、作業者IDなどの作業履歴を記憶する(ステップS311)。ここでは、作業手順書ファイルFの中の現在の作業工程番号に対応する作業履歴記憶欄にこれらの作業履歴を登録する。
【0062】
たとえば、図3の例では、作業工程番号1の音声ガイダンスとして「W010、背面パネルの取付です。取付ネジ、A、B、Cを8個、D、E、Fを4個用意し、背面パネルを取付けてください。」という音声を出力した後、作業者Mの発話した「了解」の語句が認識されたことを示す作業履歴として、作業工程番号1に対応する作業履歴記憶欄の中の確認欄に作業確認情報として丸印が付され、さらにその時点の時間情報および作業者IDが登録されている。
【0063】
作業履歴を登録した後、作業工程番号を+1して次の作業工程に進める(ステップS312)。ここで、+1した後の作業工程番号の作業工程が作業手順書ファイルFに登録されている場合は(ステップS313;N)、ステップS308に戻って、次の作業工程に対する案内情報の出力処理を実行する。+1した後の作業工程番号の作業工程が作業手順書ファイルFに登録されていない場合は作業完了となり(ステップS313;Y)、装置ICタグ13に対して、作業完了用の終了情報(図4(d)に例示したように作業工程番号として「E」、時刻情報、作業者ID)を書き込み(ステップS315)処理を終了する(エンド)。
【0064】
なお、作業の途中で、作業の中断操作を受けた場合は(ステップS314;Y)、装置ICタグ13に対して作業中断用の終了情報(図4(c)に例示したように現時点の作業工程番号、時刻情報、作業者ID)を書き込み(ステップS315)処理を終了する(エンド)。
【0065】
また、図7に示す流れ図では省略したが、音声認識では「了解」以外の語句、たとえば、「開始」、「終了」、「停止」などの語句についても認識しており、その認識結果に応じた処理が行われる。さらに、図7では省略したが各種操作ボタンの受付も行っており、それらの操作に応じた処理も行われる。
【0066】
図8は、作業者Mの作業中に行われる作業支援システム10の動作例を示している。作業者Mが装置ICタグ13の上に携帯端末20をかざすと、携帯端末20は、装置ICタグ13から読み取った情報から作業状態(未作業、作業中、作業完了)を確認し(ステップS401)、該当する作業手順書ファイルFの該当する作業工程から案内情報を出力する処理を開始する(ステップS402)。
【0067】
処理開始時、表示用PC12には所定の初期画面が表示される(P1)。また、携帯端末20などの使い方や作業開始時の作業工程を確認する音声ガイダンスが読み上げられた後、音声認識中になり、作業者Mが「了解」と発話すると(ステップS403)、最初の作業工程(ここでは作業工程N)の音声ガイダンスが読み上げられ、再び音声認識中となる。また作業工程Nに対応する画面NがそのセルCの表示用PC12に表示される(P2)。
【0068】
作業者Mは作業工程Nに関する作業を行い、作業が終了すると「了解」と発話する(ステップS404)。すると作業工程が1つ進み、作業工程N+1の音声ガイダンスが読み上げられ、音声認識中になり、作業工程N+1に対応する画面N+1が表示用PC12に表示される(P3)。
【0069】
作業者Mは作業工程N+1に関する作業を行い、作業が終了すると「了解」と発話する(ステップS405)。すると作業工程が1つ進み、作業工程N+2の音声ガイダンスが読み上げられ、音声認識中になり(ステップS406)、作業工程N+2に対応する画面N+2が表示用PC12に表示される(P4)。
【0070】
この状態で、作業者Mが携帯端末20の図示省略した「戻る」キーあるいは「進む」キーを操作すると(ステップS407)、その操作に応じて表示用PC12に表示される画面が前後の作業工程の画面に遷移する(P5)。作業者Mは画面を参考にして作業を進め、作業が終了すると「了解」と発話する(ステップS408)。すると作業工程が1つ進み、作業工程N+3の音声ガイダンスが読み上げられ、音声認識中になり、作業工程N+3に対応する画面N+3が表示用PC12に表示される(P6)。
【0071】
ここで、作業者Mが「停止」と発話すると(ステップS409)、その語句が音声認識で認識され、休憩中の画面が表示用PC12に表示される(P7)。その後、作業者Mが「開始」と発話すると(ステップS410)、休憩は終了し、休憩前の作業工程N+3に対する音声ガイダンスが再度読み上げられ、作業工程N+3に対応する画面N+3が表示用PC12に表示される(P8)。
【0072】
作業者Mは作業工程N+3に関する作業を行い、作業が終了したときは「終了」と発話する(ステップS411)。すると作業の終了となり、表示用PC12には終了画面が表示される(P9)。また、作業終了に関する注意事項(携帯端末20を装置ICタグ13の上にかざすことなどを指示する)などの音声ガイダンスが読み上げられ、終了情報の装置ICタグ13への書き込みが行われて処理は終了する(ステップS412、エンド)。
【0073】
作業者Mによる一連の作業が終了すると携帯端末20は管理者に返却され、管理者は携帯端末20の記憶手段24に記憶されている作業履歴を管理PC11にアップロードする。ここでは、携帯端末20から管理PC11へ作業手順書ファイルFをアップロードし、管理PC11は、携帯端末20からアップロードした作業手順書ファイルFから作業履歴に関するデータを抽出し、別途の履歴ファイルとして保存するようになっている。管理PC11は、蓄積した履歴ファイルから、各作業工程の作業時間を統計的に処理して標準作業時間の算出などを行う。
【0074】
以上のように本実施の形態にかかわる作業支援システム10では、装置Dに対応して設けられる装置ICタグ13に予め作業手順書ファイル名を登録しておき、作業者Mの作業時には、装置ICタグ13から読み取った作業手順書ファイル名に対応する作業手順書ファイルFに従って案内情報を作業者Mに提供するので、機種別に複数の作業手順書ファイルFがあっても、間違った機種の作業手順書ファイルFによって間違った作業が行われるようなことが防止され、その装置Dに対応した正しい作業手順書ファイルFに従って作業が行われる。
【0075】
また、作業終了時に作業工程番号を装置ICタグ13に書き込み、作業開始時には装置ICタグ13から読み取った作業工程番号が示す作業工程から案内情報の提供を開始するので、中断した続きの箇所から作業を誤りなく再開させることができる。たとえば、作業の途中で終業時間になりその続きの作業工程を翌日以降に行う場合に、作業を再開するまでの間に作業対象の装置Dの配置が清掃作業などで変化したり、作業の再開時に隣の作業者Mのものと作業対象の装置Dを取り違えたり、作業者Mが代理の作業者に替わったり、携帯端末20を他の作業者のものと取り違えたりするなどの混乱があっても、装置ICタグ13に記録されている情報に基づいて作業案内を再開することで、前回の続きの作業工程から正しく作業を再開することができる。
【0076】
さらに装置ICタグ13を読み取ることで、その装置Dに対する作業がどの作業工程まで終了しているかを認識したり、前回の作業を行った作業者Mや前回の作業が終了した日時を認識することができ、管理に役立てることができる。
【0077】
また、作業工程の進捗状況に応じて音声や画像による案内情報を作業者Mに提供するので、作業者Mは作業手順書を暗記しなくても作業を進めることができる。また、作業手順書ファイルFに従って各作業工程の案内情報を流し、「了解」の応答を確認して次の作業工程に進めるので、作業手順書ファイルFに登録してある作業手順通りに作業が行われることが厳守される。さらに、「了解」の語句を認識したことを作業履歴として記録するので、作業手順書通りに確実に作業が行われたことを履歴に残すことができる。
【0078】
また、作業者Mの発話した語句を音声認識して作業者Mからの指示や応答を受け付けるので、当該作業支援システム10に対する作業者Mの操作負担が軽減する。
【0079】
さらに、携帯端末20に作業中の作業履歴を保存するので、たとえば、他の工場の生産ラインに作業支援システム10を導入して装置Dの組み立てなどの作業を行わせる場合に、その生産時に使用された携帯端末20を本部などで回収することにより、他の工場で行われた作業の履歴を本部で管理することができ、外部で生産される製品の品質管理や生産管理を的確に行うことが可能になる。
【0080】
以上、本発明の実施の形態および実施例を図面によって説明してきたが、具体的な構成は例示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0081】
たとえば、実施の形態では、案内情報を出力した作業工程に対する作業の終了通知を作業者Mの発話した「了解」などの特定語句を音声認識することによって検出したが、操作ボタンの操作など他の方法で作業の終了通知を受けるように構成されてもよい。
【0082】
実施の形態では、携帯端末20に案内情報出力手段25や音声認識部22aなどを設けたが、作業支援システム10の有する機能のうちのどの機能を携帯端末20、表示用PC12、管理PC11に配分するかは適宜に定めればよい。たとえば、携帯端末20のほぼ全部の機能を表示用PC12側に設け、作業者Mには、表示用PC12との通信機能を備えたヘッドセット21を装着させるように構成されてもかまわない。
【0083】
また、実施の形態では作業手順書ファイルFに作業履歴を記憶させるようにしたが、別途のファイルや記憶装置に作業履歴を記憶させてもかまわない。
【0084】
装置ICタグ13は、装置Dを組み立てる際のパレットに貼付するほか、たとえば、装置Dのメインフレームや外装などの主要部品に設けてもかまわない。また、情報記録媒体はICタグに限定されるものではなく、たとえば、メモリーカードなどでもかまわない。
【0085】
作業対象は装置に限らず、たとえば、複数の作業工程からなる検査作業に対する案内情報を提供するような場合には、検査対象物や検査装置なども作業対象になる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態にかかわる作業支援システムのシステム構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかわる作業支援システムに含まれる携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図3】作業手順書ファイルのデータ構造の一例を示す説明図である。
【図4】装置ICタグに登録される情報を例示した説明図である。
【図5】管理者の行う前準備の手順を示す流れ図である。
【図6】作業者の行う作業の手順を示す流れ図である。
【図7】携帯端末の行う処理を示す流れ図である。
【図8】作業者の作業中に行われる作業支援システム10の動作例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0087】
2…ネットワーク
10…作業支援システム
11…管理PC
12…表示用PC
13…装置ICタグ
14…氏名ICタグ
16…端末I/F
20…携帯端末
21…ヘッドセット
21a…スピーカ
21b…マイクロフォン
22…制御手段
22a…音声認識部
23…アクセス手段
24…記憶手段
25…案内情報出力手段
26…音声入力部
27…無線通信部
28…操作表示部
29…入出力部
31…時計部
C…セル
D…装置
F…作業手順書ファイル
M…作業者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象に対応付けて設けられた情報記憶媒体と、
前記情報記憶媒体に対する情報の書き込みおよび読み取りを行うアクセス手段と、
作業工程の実施順序および各作業工程に対する案内情報を含む作業手順書データが記憶された記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている作業手順書データに基づいて各作業工程に対する案内情報を出力する案内情報出力手段と、
作業の進捗状況に応じて前記案内情報を前記案内情報出力手段に出力させると共に、作業の中断もしくは終了時には、その時点での作業の進捗状況を示す進捗情報を前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体に書き込み、作業の開始時は前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体から前記進捗情報を読み取り、該進捗情報の示す作業の進捗状況に応じた作業工程から前記案内情報出力手段による前記案内情報の出力を開始させる制御手段と
を有する
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項2】
前記情報記憶媒体に、作業手順書データを特定する特定情報を予め記憶しておき、
前記制御手段は、作業の開始時に前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体から前記特定情報を読み取り、該特定情報によって特定される作業手順書データに従って前記案内情報出力手段に前記案内情報を出力させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記制御手段は、作業の中断もしくは終了時に、作業者名およびまたは日時情報を前記情報記憶媒体にさらに書き込む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記案内情報出力手段によって案内情報を出力した作業工程に対する作業の終了通知を受けたとき、次の作業工程に対する案内情報を前記案内情報出力手段に出力させる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記制御手段は、作業者の発した音声を音声入力部から取り込んで音声認識し、前記案内情報出力手段によって案内情報を出力した後に前記音声認識で特定の語句が認識されたとき前記終了通知を受けたと判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の作業支援システム。
【請求項6】
前記終了通知を受けたことを示す作業確認情報を含む作業履歴を各作業工程について記憶する
ことを特徴とする請求項4乃至5のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【請求項7】
前記作業履歴として、各作業工程に要した作業時間をさらに記憶する
ことを特徴とする請求項6に記載の作業支援システム。
【請求項8】
前記アクセス手段と前記記憶手段と前記案内情報出力手段と前記制御手段は、携帯端末に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【請求項1】
作業対象に対応付けて設けられた情報記憶媒体と、
前記情報記憶媒体に対する情報の書き込みおよび読み取りを行うアクセス手段と、
作業工程の実施順序および各作業工程に対する案内情報を含む作業手順書データが記憶された記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている作業手順書データに基づいて各作業工程に対する案内情報を出力する案内情報出力手段と、
作業の進捗状況に応じて前記案内情報を前記案内情報出力手段に出力させると共に、作業の中断もしくは終了時には、その時点での作業の進捗状況を示す進捗情報を前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体に書き込み、作業の開始時は前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体から前記進捗情報を読み取り、該進捗情報の示す作業の進捗状況に応じた作業工程から前記案内情報出力手段による前記案内情報の出力を開始させる制御手段と
を有する
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項2】
前記情報記憶媒体に、作業手順書データを特定する特定情報を予め記憶しておき、
前記制御手段は、作業の開始時に前記アクセス手段によって前記情報記憶媒体から前記特定情報を読み取り、該特定情報によって特定される作業手順書データに従って前記案内情報出力手段に前記案内情報を出力させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記制御手段は、作業の中断もしくは終了時に、作業者名およびまたは日時情報を前記情報記憶媒体にさらに書き込む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記案内情報出力手段によって案内情報を出力した作業工程に対する作業の終了通知を受けたとき、次の作業工程に対する案内情報を前記案内情報出力手段に出力させる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記制御手段は、作業者の発した音声を音声入力部から取り込んで音声認識し、前記案内情報出力手段によって案内情報を出力した後に前記音声認識で特定の語句が認識されたとき前記終了通知を受けたと判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の作業支援システム。
【請求項6】
前記終了通知を受けたことを示す作業確認情報を含む作業履歴を各作業工程について記憶する
ことを特徴とする請求項4乃至5のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【請求項7】
前記作業履歴として、各作業工程に要した作業時間をさらに記憶する
ことを特徴とする請求項6に記載の作業支援システム。
【請求項8】
前記アクセス手段と前記記憶手段と前記案内情報出力手段と前記制御手段は、携帯端末に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の作業支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−192019(P2008−192019A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27528(P2007−27528)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】
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