説明

作業機及び作業機の制御方法

【課題】 半導体スイッチング素子が短絡故障を起こした場合でも起動スイッチの操作によって直流モータへの供給電流を入り切りすることができ、また、半導体スイッチング素子の短絡故障を検知する機能を備えたバッテリー駆動式の作業機及び作業機の制御方法を提供する。
【解決手段】 バッテリー10と、刃物等を回転させる回転部7と、回転部7を駆動するモータ20と、モータ20を制御する制御回路とを備えた作業機において、制御回路はバッテリー10とモータ20を接続してなる主回路と起動スイッチ51を持つ制御ユニット50とを内蔵し、主回路に制御ユニット50により制御されるリレー接点40と半導体スイッチング素子(FET30)を直列に設ける構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータを制御する半導体スイッチング素子が故障した場合の安全対策を施したバッテリー駆動式の作業機及び作業機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータを動力とするバッテリー駆動式の作業機として木片若しくは金属片を加工する電動工具又は芝若しくは雑草等の草葉を刈るのに用いられる芝刈機(例えば、特許文献1)、草刈機(例えば、特許文献2)若しくは刈払機などが知られている。図4は特許文献1に開示の電動芝刈機の制御回路であるが、直流モータ400へのバッテリー100からの供給電流を半導体スイッチング素子であるFET(電界効果型トランジスタ)800でパルス制御することにより直流モータ400の回転数を略一定に制御するものであり、芝刈り作業を開始するに当たっては主スイッチ200をオン側に入れ、作業終了時にはオフ側に入れる操作をするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−201126号公報
【特許文献2】実開平7−5321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の制御回路の主スイッチ200は直流モータ400へ供給される電流を入り切りするものであるから、比較的大電流に耐えうるものでなければならず、大型のスイッチを採用せざるを得なかった。大型のスイッチは操作にある程度の力が必要であり、作業機に取り付けるためのそれなりの場所が必要で、さらにコストもかかるという欠点があった。
【0005】
この欠点を解消するために、主スイッチ200を廃止し、制御回路中の制御ユニット500に起動スイッチを設け、起動スイッチのオンにより制御ユニット500を起動し、FET800の制御を開始するようにすることが考えられる。このような制御回路では、直流モータ400への供給電流の入り切りはFET800だけで行われるので、起動スイッチは制御ユニット500を入り切りするだけの小電流用のものが採用できる。しかし、上記の構成では、FET800が短絡故障を起こした場合は、起動スイッチをオフしてもモータの回転は止まらず、バッテリー100を引き抜かねばならないという問題が想定される。また、充電が完了したバッテリー100を作業機に装着した時、起動スイッチの操作とは関係なく直流モータ400が回転してしまうという問題が想定される。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、半導体スイッチング素子が短絡故障を起こした場合でも起動スイッチの操作によって直流モータへの供給電流を入り切りすることができ、また、半導体スイッチング素子の短絡故障を検知する機能を備えたバッテリー駆動式の作業機及び作業機の制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、バッテリーと、刃物等を回転させる回転部と、回転部を駆動するモータと、モータを制御する制御回路とを備えた作業機において、制御回路はバッテリーとモータを接続してなる主回路と起動スイッチを持つ制御ユニットとを内蔵し、主回路に制御ユニットにより制御されるリレー接点と半導体スイッチング素子を直列に設ける構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1によれば、半導体スイッチング素子が短絡故障を起こした場合でも、起動スイッチをオフにすればモータの回転は止まり、充電が完了したバッテリーを作業機に装着した時も起動スイッチをオンにしなければモータが回転しないので、安全に作業機を使用することが可能となる。また、本発明の請求項2、請求項3によれば、半導体スイッチング素子の短絡故障を適宜知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明にかかる刈払機の全体構成を説明するための外観図である。
【図2】本発明にかかる制御回路図である。
【図3】本発明にかかる制御回路の動作説明用タイミングチャートである。
【図4】従来の制御回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、作業機として刈払機を例に取って説明する。
【実施例1】
【0011】
以下の説明では、説明の便宜のために刈払機1の使用状態に応じた方向を定義することとする。すなわち、図1において、刈刃が回転する回転部7が設置される側を「前」、駆動部3側を「後」、と呼ぶこととする。
【0012】
本実施形態に係る刈払機1は、長手方向に延びる軸体形状にて形成される操作棹2と、操作棹2の一端側である前側に設置される回転部7と、操作棹2の他端側である後側に設置されるとともに、そのハウジング内部に図2に示すモータ20とバッテリー10を備える駆動部3と、操作棹2の長手方向の中間部に設置されるハンドル4とを備えている。
【0013】
操作棹2は、中空棒状のパイプ部材により構成されており、その内部には、不図示の従動軸が回転自在な状態にて内蔵されている。操作棹2の前側先端には回転部7が取り付けられており、回転部7のホルダ7aには外周面に複数の鋸刃状の刃部が形成された円板状をした金属製の不図示の刈刃が回転自在に取り付けられている。ホルダ7aは従動軸の回転運動に応じて回転し、草葉等の刈払いを実施できるようになっている。また、刈刃の後方直近部には、刈刃の一部を覆うように防護カバー7bが設けられており、刈払い時に発生する飛散物の後方への飛散を防ぐことで、作業者の安全が確保されている。なお、刈刃については、円板状をした金属製のものに代えて、セラミックス製のものや、回転中心から放射状に延びる紐からなるものなど、あらゆる形式の刈刃を採用することが可能となっている。
【0014】
また、ハンドル4には右グリップ5Rと左グリップ5Lが取り付けられており、右グリップ5Rにはモータ20を起動する起動スイッチ51が設けられている。6は図示しない肩掛けベルトを取付けることのできるホックである。
【0015】
図2は本発明にかかる制御回路であって、駆動部3にその主要部が内蔵され、配線11、13によって、バッテリー10からの供給電流がモータ20へ供給される主回路が形成されている。主回路にはバッテリー10とモータ20の他に、リレー接点40、FET30、電流検出部12が直列に設けられている。50は制御ユニットであり、図示しない内部のマイコンのプログラムによってリレー接点40とFET30のオンオフを制御するものである。また、電流検出部12からの信号により主回路に電流が流れているかどうか検知することが可能である。電流検出部12は抵抗器で構成されており、電流が流れることにより抵抗器の両端に発生する電圧の有無によって主回路に電流が流れているかどうか判断できる。起動スイッチ51をオンすると図示しない電源により制御ユニット50が起動され、内部のマイコンのプログラムが制御を開始するのである。制御ユニット50の電源はバッテリー10から取るように構成してもよい。
【0016】
以上のように構成された刈払機1で草刈り作業を行う場合には、作業者は、ホック6に取付けられた図示しない肩掛けベルトを肩に掛け回すとともに、ハンドル4が備える左右のグリップ5R,5Lを両手で把持することにより、刈払機1を自在に操ることが可能となる。
【0017】
次にモータを起動して刈刃を回転させるのであるが、そのために作業者は起動スイッチ51をオン側へ入れる。図3は制御回路のタイミングチャートであるが、起動スイッチ51のオン(Tonのタイミング)により制御ユニット50が起動されると、制御ユニット内の不図示のリレーに電気が流れてリレー接点40は開から閉になり接続(導通)されるとともに、FET30のゲート31にオン信号が出力されFET30はオンとなり導通し、モータ20に電流が供給され刈刃が回転を始める。作業が終了すると作業者は起動スイッチ51をオフ側に入れてモータ20を停止しようとするが、起動スイッチ51がオフ(Toffのタイミング)されると制御ユニット50はすぐにFETゲート31へオフ信号を出力してFET30をオフし、その後時間tだけ遅れてリレーをオフ(リレー接点40は開)するよう制御する。時間tは1秒程度が適当であるが、この間に制御ユニット50は電流検出部12からの信号を配線14によって検出し、モータ20に電流が流れているかどうかをチェックする。FET30が正常であれば時間tの間に主回路に電流が流れることはないが、FET30が短絡故障を起こしていると時間tの間に電流が流れ電流検出部12はこれを検出する。FET30の短絡故障が検出されると制御ユニット50は図示しないエラーランプを点灯し作業者に故障を知らせるように構成されている。
【0018】
バッテリー10の充電が必要になると、作業者はバッテリー10を作業機1から外し、不図示の充電装置で充電を行う。充電が完了したら作業者はバッテリー10を作業機1へ装着するが、起動スイッチ51を操作していないので制御ユニット50は起動されておらず、リレー接点40は開のままであるので、仮にこの時FET30が短絡故障を起こしていたとしても主回路に電流が流れてモータ20が不用意に回転を始めるということはなく、安全である。
【0019】
本発明による刈払機1は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、本実施の形態では、バッテリー10で駆動されるモータ20を利用した刈払機1で説明したが、AC電源で駆動されるモータを利用したものでもよい。また、半導体スイッチング素子はFETだけでなくパワートランジスタやサイリスタ等の半導体素子であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明は、刈払機等の作業機について有用である。
【符号の説明】
【0021】
1 刈払機、2 操作棹、3 駆動部、4 ハンドル、7 回転部、10 バッテリー、12 電流検出部、20 モータ、30 FET、40 リレー接点、50 制御ユニット、51 起動スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーと、刃物等を回転させる回転部と、該回転部を駆動するモータと、該モータを制御する制御回路とを備えた作業機において、該制御回路は該バッテリーと該モータを接続してなる主回路と起動スイッチを持つ制御ユニットとを内蔵し、該主回路に該制御ユニットにより制御されるリレー接点と半導体スイッチング素子を直列に設けることを特徴とする作業機。
【請求項2】
該主回路に電流検出部を設け、該起動スイッチのオンにより該リレー接点と該半導体スイッチング素子が導通し該モータに該バッテリーから電流を供給し、該起動スイッチのオフにより該半導体スイッチング素子が非導通となり、その後一定時間経過した後に該リレー接点を非導通とするよう制御するとともに、該一定時間における該電流検出部からの信号により該半導体スイッチング素子の短絡故障を判断することを特徴とする請求項1記載の作業機。
【請求項3】
バッテリーと、刃物等を回転させる回転部と、該回転部を駆動するモータと、該モータを制御する制御回路とを備え、該制御回路は該バッテリーと該モータを接続してなる主回路と起動スイッチを持つ制御ユニットとを内蔵し、該主回路に該制御ユニットにより制御されるリレー接点と半導体スイッチング素子を直列に設け、該主回路には電流検出部を設けた作業機の制御方法であって、該起動スイッチのオンにより該リレー接点と該半導体スイッチング素子が導通し該モータに該バッテリーから電流を供給し、該起動スイッチのオフにより該半導体スイッチング素子が非導通となり、その後一定時間経過した後に該リレー接点を非導通とするよう制御するとともに、該一定時間における該電流検出部からの信号により該半導体スイッチング素子の短絡故障を判断することを特徴とする作業機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−147375(P2011−147375A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10206(P2010−10206)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】