説明

作業機械の油圧駆動装置

【課題】方向制御弁にセンタバイパス通路を備えた油圧回路を基本として、煩雑な作業を要することなく、油圧ポンプの出力の如何に関わらずブーム上げ操作を行うことが出来る作業機械の油圧駆動装置の提供。
【解決手段】ブーム用方向制御弁7の下流に位置するセンタバイパス通路12に設けられ、センタバイパス通路12を開閉可能なセンタバイパス弁10と、このセンタバイパス弁10を切り替え制御する比例電磁弁17と、この比例電磁弁17を制御する制御信号を出力可能なコントローラ19とを備え、コントローラ19は、圧力センサ20によってブームの上げ操作が検出されたときに、油圧ポンプ6の出力を演算するポンプ出力演算部と、このポンプ出力演算部で演算された油圧ポンプ6の出力に応じたセンタバイパス弁10の開口量を演算する開口量演算部とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブームを含む作業装置を有する油圧ショベル等の作業機械の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械例えば油圧ショベルでは、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ等の油圧アクチュエータと、エンジンにより駆動される油圧ポンプとが備えられ、油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの圧油の供給を方向制御弁を介して制御するようにしている。方向制御弁は、そのスプールが操作レバーの操作量及び操作方向に応じて供給されるパイロット圧油等を介して駆動され、油圧アクチュエータの作動方向や油圧アクチュエータへの圧油の供給量を制御する。
【0003】
この種の油圧ショベルでは、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の供給制御を担う油圧回路は、方向制御弁にセンタバイパス通路を備えたオープン回路が一般的に用いられている。センタバイパス通路は、方向制御弁の中立状態(操作レバーの中立状態)では、油圧ポンプを油圧タンクに開放する。そして、操作レバーが中立状態から操作され、それに応じて方向制御弁のスプールが変位すると、センタバイパス通路は、スプールのプロファイル等によってあらかじめ定められた開口特性(操作レバーの操作量に対する開口量の特性)で開口量が閉じ側に変化する。
【0004】
ところで、油圧ショベルでの作業形態は、重負荷作業から軽負荷作業まで多岐にわたっている。また、作業内容等に応じてバケット等のアタッチメントを現場にて適宜、交換することがしばしば行われ、標準的なものよりも重いアタッチメントが装着される場合も多々ある。
【0005】
このような場合、上述のようなオープン回路では、操作レバーの操作に対する油圧アクチュエ一夕の動作特性は、油圧アクチュエータの負荷やアタッチメントの重量の影響を受け易く、油圧アクチュエータの好適な操作性が得られないことが多々ある。例えば、重負荷作業を行う場合や重いアタッチメントを装着した場合には、振作レバーの中立状態からの操作量を通常の場合よりも大きくしなければ油圧アクチュエータが起動せず、また、油圧アクチュエータの作動速度を制御し得る操作レバーの操作量の範囲が狭いものとなってしまう。そして、このような場合には、所望の作業を円滑に行うことが困難となる。
【0006】
このような課題を解決するために、特許文献1に開示された従来技術では、油圧ポンプと、ブームシリンダと、該油圧ポンプからブームシリンダへの圧油の供給を制御すべく該油圧ポンプからブームシリンダへの管路に設けられると共にセンタバイパス通路を有する方向制御弁と、該方向制御弁を操作するための操作レバーと、方向制御弁のセンタバイパス通路を流れる圧油の流量を調整すべく該センタバイパス通路に連なる流路に設けられた開口量を調整可能なセンタバイパス弁と、該センタバイパス弁の開口量を制御するセンタバイパス弁制御手段とを備え、該センタバイパス弁制御手段に対して所定の操作によりセンタバイパス弁の開口量を指示する操作ボリュームを備えている。センタバイパス弁制御手段は、操作レバーが方向制御弁のセンタバイパス通路が閉じ始める前の操作量としてあらかじめ定めた所定操作量以上に操作されたとき、該操作レバーの操作量によらずに操作ボリュームにより指示された開口量にセンタバイパス弁を制御する。ブームシリンダの負荷が比較的大きいと判断される状況では、その判断される負荷が大きい程、センタバイパス弁の開口量を小さくするように操作ボリュームに対し所定の操作を行っておくことにより、ブームシリンダの負荷が比較的大きい場合でも、ブームシリンダへの圧油の供給が開始される際の前記合成開口量が小さめに制御されるので、方向制御弁の上流側(油圧ポンプ側)の圧油の圧力が、前記操作レバーの比較的小さい操作量でも迅速に上昇するようになる。その結果、操作レバーの操作に伴うブームシリンダの起動(作動開始)を、ブームシリンダの負荷によらずに迅速に行うことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3804465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1に示される従来技術では、操作ボリュームを操作して作業者が予めアクチュエータ負荷を考慮して開口を設定しておく必要があるため、作業が煩雑になることや、設定が上手く行われない場合があるといった問題がある。さらに、設定を行うための操作ボリューム等の装置も必要となり、コストが掛かるといった問題がある。
【0009】
また、油圧ポンプの出力が変化してもセンタバイパス弁の開口量を制御することが出来ないため、何らかの条件によってブームシリンダに圧油を供給する油圧ポンプの出力が低下しブームが上がりにくくなってしまった場合には対応できないといった問題がある。
【0010】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、方向制御弁にセンタバイパス通路を備えた油圧回路を基本として、煩雑な作業を要することなく、油圧ポンプの出力の如何に関わらずブーム上げ操作を行うことが出来る作業機の油圧駆動装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の作業機械の油圧駆動装置は、かかる目的を達成するために、ブームを含む作業装置を有する作業機械に備えられ、前記ブームを駆動するブームシリンダと、このブームシリンダに圧油を供給する油圧ポンプと、この油圧ポンプを駆動するエンジンと、センタバイパス型の方向制御弁からなり、前記油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される圧油の流れを制御するブーム用方向制御弁と、このブーム用方向制御弁の下流に位置するセンタバイパス通路に設けられ、前記センタバイパス通路を開閉可能なセンタバイパス弁と、このセンタバイパス弁を切り換え制御する電磁弁と、この電磁弁を制御する制御信号を出力可能なコントローラとを備えた作業機械の油圧駆動装置において、前記電磁弁が比例電磁弁から成り、前記ブームの上げ操作を検出する検出手段を備え、前記コントローラは、前記検出手段によって前記ブームの上げ操作が検出されたときに、前記油圧ポンプの出力を演算するポンプ出力演算部と、このポンプ出力演算部で演算された前記油圧ポンプの出力に応じた前記センタバイパス弁の開口量を演算する開口量演算部とを含み、この開口量演算部で演算された開口量に相応する前記制御信号を前記比例電磁弁に出力する処理を行うことを特徴とするものである。
【0012】
かかる本発明では、操作レバーの操作によって方向制御弁のセンタバイパス通路が閉じ始める前に、センタバイパス弁の開口量が、コントローラのポンプ出力演算部で演算された油圧ポンプの出力とブーム上げ操作パイロット圧に応じてコントローラの開口量演算部で演算された開口量に制御されるので、センタバイパス弁によりセンタバイパス通路が閉じ始めてブームシリンダへの圧油の供給が開始する際におけるセンタバイパス通路の開口量とセンタバイパス弁の開口量とを合わせた合成開口量は、コントローラのポンプ出力演算部及び開口量演算部によるセンタバイパス弁の開口量の指示値が小さい程、小さくなる。
【0013】
そこで、本発明では、油圧ポンプの出力が比較的小さい場合にブーム上げ操作が行われた場合でも、ブームシリンダへの圧油の供給が開始される際の合成開口量が自動的にポンプ出力とブーム上げパイロット圧の大きさに適した小さめの面積に制御されることとなる。この結果、操作レバーの操作に伴うブームシリンダの起動(作動開始)が、ブームシリンダの負荷によらずに迅速に行われる。
【0014】
このようにして、煩雑な作業を要することなく、油圧ポンプの出力の如何に関わらずプーム上げ操作を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明は前述した発明において、前記油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧センサと、前記油圧ポンプの吐出量を検出する吐出量センサとを備え、前記コントローラの前記ポンプ出力演算部は、前記吐出圧センサで検出された吐出圧と、前記吐出量センサで検出された吐出量とに基づいて前記油圧ポンプの出力を演算する処理を行うことを特徴としている。
【0016】
また、本発明は前述した発明において、前記ブーム用方向制御弁を操作するブーム用操作装置を備え、前記検出手段は、前記ブーム用操作装置がブームの上げ操作側に操作された時に発生するパイロット圧を検出する庄カセンサから成ることを特徴としている。
【0017】
また、本発明は前述した発明において、前記アタッチメントを駆動するアタッチメント用アクチュエータと、前記エンジンによって駆動され、前記アタッチメント用アクチュエータに圧油を供給する別の油圧ポンプと、この別の油圧ポンプから前記アタッチメント用アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するアタッチメント用方向制御弁とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、電磁弁が比例電磁弁から成り、ブームの上げ操作を検出する検出手段を備え、コントローラは、検出手段によってブームの上げ操作が検出されたときに、油圧ポンプの出力を演算するポンプ出力演算部と、このポンプ出力演算部で演算された油圧ポンプの出力に応じたセンタバイパス弁の開口量を演算する開口量演算部とを含み、この開口量演算部で演算された開口量に相応する制御信号を比例電磁弁に出力する処理を行うことから、煩雑な作業を要することなく、また、油圧ポンプの出力の如何に関わらずブーム上げ操作を行うことが出来る。したがって従来に比べて装置構成を簡単にすることができ、製作コストを低減できる。また、油圧ポンプの出力が小さい場合でも、確実にブーム上げ操作を行うことができる。この場合、油圧ポンプの出力が大きい場合であっても小さい場合であってもブーム用方向制御弁を操作する操作レバーの操作量を同等にすることが出来る。従って優れたブーム上げ操作性を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る油圧駆動装置の一実施形態が備えられる作業機械の一例として挙げたアタッチメントを有する油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
【図3】図2に示す油圧駆動装置に備えられるコントローラ部分の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示すコントローラに備えられる開口量演算部に含まれる第1関数発生器及び第2関数発生器の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の油圧作業機の油圧駆動装置を図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明に係る油圧駆動装置の一実施形態が備えられる作業機械の一例としてあげたアタッチメントを有する油圧ショベルを示す側面図、図2は本実施形態に係る油圧駆動装置を示す油圧回路図、図3は図2に示す油圧駆動装置に備えられるコントローラ部分の構成を示すプロッタ図、図4は図3に示すコントローラに備えられる開口量演算部に含まれる第1関数発生器及び第2関数発生器の特性を示す図である。
【0021】
図1を参照して、まず、本実施形態の油圧駆動装置が備えられる油圧ショベルの全体的な概要構成を説明する。同図中、1は走行体、2は旋回体、3はブーム等を含み、旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられる作業装置であり、4は作業装置3を構成し、ブームを駆動するブームシリンダ、5は作業装置3を構成するアタッチメントである。
【0022】
次に図2を参照して、本実施形態に係る作業機械の油圧駆動装置の概要構成を説明する。
【0023】
同図中、6は可変容量型の油圧ポンプ、7はブームシリンダ4への圧油の供給を制御するセンタバイパス型の方向制御弁、すなわちブーム用方向制御弁である。
【0024】
本実施形態では、前記油圧ポンプ6の吐出口に、方向制御弁7が管路8を介して接続されており、方向制御弁7を介してブームシリンダ4に油圧ポンプ6から圧油を供給可能としている。
【0025】
なお、油圧ショベルの機構的な基本構成は周知であるため、ここでは詳細な説明及び図示は省略するが、図1に示した走行体1には走行装置を駆動するアクチュエータ、旋回体2には旋回装置を駆動するアクチュエータ、作業装置3を構成するアームにはアームを駆動するアクチュエ一タ、同じく作業装置3を構成するアタッチメント5にはアタッチメント5の位置決めを行うアクチュエータがそれぞれ搭載されており、これらのアクチュエ一タを駆動する圧油の供給を制御する方向制御弁9が、管路8を介して油圧ポンプ6に接続される構成となっている。
【0026】
また、10は全開状態から全閉状態まで開口量を変更可能なセンタバイパス弁であり、このセンタバイパス弁10はブーム用方向制御弁7から油タンク11に至るセンタバイパス管路12に介装されており、本実施形態では、センタバイパス弁10は、後述するように可変開口弁から構成されている。
【0027】
ブームシリンダ4は、そのボトム側油室4aが管路13を介してブーム用方向制御弁7に接続され、さらに、ロッド側油室4bが管路14を介してブーム用方向制御弁7に接続されている。
【0028】
ブーム用方向制御弁7は、そのパイロットポート7x,7yがブーム操作用の揺動自在な操作レバー15aを有するブーム用操作装置15に接続されている。該ブーム用操作装置15は、操作レバー15aがその中立位置から例えば同図2の右方向に揺動操作されたときに、該操作レバー15aの操作量に比例したパイロット圧をパイロットポート7xに付与し、また、操作レバー15aがその中立位置から例えば図2の左方向に揺動操作されたときに、該操作レバー15aの操作量に比例したパイロット圧をパイロットポート7yに付与するものである。ここで、操作レバー15aの図2の右方向への操作は、ブーム上げ動作(ブームシリンダ4の伸長動作)を行う場合の操作であり、図2の左方向への操作は、ブーム下げ動作(ブームシリンダ4の短縮動作)を行う場合の操作である。
【0029】
ブーム用方向制御弁7は、そのパイロットポート7x又は7yにブーム用操作装置15から付与されるパイロット圧に応じて図示しないスプールが移動して作動状態が切換わる弁であり、油圧ポンプ6側から供給される圧油の余剰油をセンタバイパス弁10側の管路12を介して油タンク11に還流させるセンタバイパス通路7aを有している。
【0030】
そして、該ブーム用方向制御弁7は、その基本的作動位置として、図示のA位置、B位置、及びC位置を有している。
【0031】
B位置は、前記操作レバー15aが中立位置にある状態(パイロットポート7x、7yのいずれにもパイロット圧が付与されていない状態)におけるブーム用方向制御弁7の中立位置であり、該B位置では、油圧ポンプ6側のメイン管路8をセンタバイパス弁10側のセンタバイパス通路12にセンタバイパス通路7aを介して開通すると共に、ブームシリンダ4のボトム側油室4a、ロッド側油室4bにそれぞれ連なる管路13,14を閉じる。従って、この中立位置Bでは、ブームシリンダ4は作動不能とされる。
【0032】
また、A位置は、操作レバー15aが図2の右方向(ブーム上げ側)に最大操作された状態に対応するブーム用方向制御弁7の作動位置であり、該A位置では、センタバイパス通路7aを閉じると共に、メイン管路8から分岐された分岐管路8aを管路13に開通し、さらに、管路14を管路16を介して油タンク11に開通する。従って、このA位置では、ブームシリンダ4のボトム側油室4aに油圧ポンプ6の吐出圧油が供給されるようになり、該ブームシリンダ4が伸長側(ブームの上げ側),に作動可能となる。
【0033】
また、C位置は、操作レバー15aが図2の左方向(ブーム下げ側)に最大操作された状態に対応するブーム用方向制御弁7の作動位置であり、該C位置では、センタバイパス通路7aを閉じると共に、分岐管路8aを管路14に開通し、さらに、管路13を管路16を介して油タンク11に開通する。従って、このC位置では、ブームシリンダ4のロッド側油室4bに油圧ポンプ6の吐出圧油が供給されるようになり、該ブームシリンダ4が短縮側(ブームの下げ側)に作動可能となる。
【0034】
なお、センタバイパス通路7aは、中立位置BとA位置との間では、ブーム用方向制御弁7のスプールのプロファイルによって、その開口量がブーム用操作装置15からパイロットポート7xに付与されるパイロット圧に応じて変化する。一般に、パイロット圧が増加するほど開口量が減少するという構成となっている。
【0035】
本実施形態における可変開口弁としてのセンタバイパス弁10は、そのパイロットポート10xが電磁弁、すなわち比例電磁弁17に接続されている。該比例電磁弁17は、そのソレノイド17xへの通電電流に比例したパイロット圧をパイロットポンプ18の吐出圧油から生成し、それをセンタバイパス弁10のパイロットポート10xに付与するものである。そして、センタバイパス弁10は、その開口量が、パイロットポート10xに付与されるパイロット圧に応じて変化し、該パイロット圧が大きい程(比例電磁弁17の通電電流が大きい程)、開口量が小さくなる。
【0036】
本実施形態では、上述した油圧回路構成の他、比例電磁弁17の通電制御、ひいては、センタバイパス弁10の開口量の制御を行うためのコントローラ19(電子回路ユニット)と、ブーム用方向制御弁7のパイロットポート7xにブーム用操作装置15から付与されるブーム上げパイロット圧を操作レバー15aの操作量を表すパラメータとして検出する検出手段、例えば、圧力センサ20と、油圧ポンプ6の吐出圧を検出する吐出圧センサ21と、該油圧ポンプ6の吐出量を検出する検出する吐出量センサ22とを備え、圧力センサ20、吐出圧センサ21、吐出量センサ22、ソレノイド17xのそれぞれがコントローラ19と電気的に接続されている。
【0037】
また、油圧ポンプ6とは異なる別の油圧ポンプ23の吐出口に、ブーム用方向制御弁7と同様の構造をもつアタッチメント5のアタッチメント用方向制御弁24が管路25を介して接続されており、アタッチメント用方向制御弁24を介してアタッチメント5を駆動するアクチュェ一夕5aに油圧ポンプ23から圧油を供給可能としている。
【0038】
なお、油圧ポンプ6、パイロットポンプ18、油圧ポンプ23はエンジン26によって駆動される。
【0039】
次に、図3を参照して、コントローラ19の構成について説明する。27は圧力センサ20によってブーム上げ操作が検出されたときに、吐出圧センサ21で検出される吐出圧と吐出量センサ22で検出される吐出量とに基づいて油圧ポンプ6のポンプ出力を演算するポンプ出力演算部であり、28はポンプ出力演算部27で演算されたポンプ出力に応じたセンタバイパス弁10の開口量を演算する開口量演算部である。この開口量演算部28は、第1関数発生器29と、第2関数発生器30と、これらの関数発生器29,30の出力値の最大値を選択する最大値選択部31を含んでいる。
【0040】
第1関数発生器29では、ポンプ出力演算部27で演算されたポンプ出力に応じたセンタバイパス弁10の開口量が決定され、第2関数発生器30では、圧力センサ20によって検出されたブーム上げパイロット圧に応じたセンタバイパス弁10の開口量が決定される。第1関数発生器29、第2関数発生器30によって決定された開口量は最大値選択部31によって開口量の大きな値が選択され、センタバイパス弁10の開口量をこの選択された開口量とするために必要な比例電磁弁17の電流値の演算を電流演算部32で行い、この演算された電流値が比例電磁弁17のソレノイド17xに出力され、この比例電磁弁17が制御されることになる。
【0041】
なお、図4に示すように、第1関数発生器29ではポンプ出力が低いほどセンタバイパス弁10の開口面積を小さくし、第2関数発生器30ではブーム上げパイロット圧が高い程センタバイパス弁10の開口面積を小さくする構成となっている。
【0042】
次に、かかる本実施形態の動作を説明する。
まず、ブーム上げの単独動作を行う場合、ブームシリンダ4に圧油を供給する油圧ポンプ6の吐出圧及び吐出量は大きく、コントローラ19のポンプ出力演算部27で演算される油圧ポンプ6の出力は大きく、開口量演算部28の第1関数発生器29における値は大きく、この値が最大値選択部31で選択され、電流演算部32で小電流が演算され、この小電流が比例電磁弁17のソレノイド17xに出力される。したがって、センタバイパス弁10のパイロットポート10aに与えられるパイロット圧は小さく、センタバイパス弁10は開き気味となる。しかしながら、油圧ポンプ6を駆動するエンジン26から十分な出力が供給されるため、問題なくブーム上げを行うことが出来る。
【0043】
次に、ブーム上げとアタッチメント5の複合動作を行う場合、アタッチメント用方向制御弁24を切り換えることによって油圧ポンプ23からアタッチメント用方向制御弁24を介しアタッチメント用アクチュエータ5aに圧油が供給され、アタッチメント5が駆動する。この時、アクチュエータ5の駆動に必要な出力分が、エンジン26から油圧ポンプ6に供給される出力から差し引かれるが、このとき、油圧ポンプ6の吐出圧及び吐出量は小さくなり、コントローラ19のポンプ出力演算部28の第1関数発生器29における値は小さくなり、また、圧力センサ20から出力される値、即ちブーム用操作装置15の操作レバー15aの操作量が大きく、これに従って第2関数発生器30における値も小さくなる。
【0044】
これにより最大値選択部31で選択される値は小さく、この値に応じて電流演算部32で演算される電流は大電流となる。この大電流が比例電磁弁17のソレノイド17xに出力される。したがって、センタバイパス弁10のパイロットポート10aに与えられるパイロット圧は大きく、センタバイパス弁10は閉じ気味となる。これにより、ブーム上げを行いやすくすることが出来る。
【0045】
また、エコノミーモードなどのエンジン回転数が低い状態でブーム上げの単独動作を行う場合も、エンジン26から油圧ポンプ6に供給される出力が少なくなるが、同様にコントローラ19によってセンタバイパス弁10が閉じられるため、ブーム上げを行いやすくすることが出来る。
【0046】
かかる本実施形態では、ブーム上げ操作レバー15aの操作によってブーム用方向制御弁7のセンタバイパス通路7aが閉じ始める前に、センタバイパス弁10の開口量が、コントローラ19のポンプ出力演算部27で演算された油圧ポンプ6の出力とブーム上げ操作パイロット圧に応じてコントローラ19の開口量演算部29,30で演算された開口量に制御されるので、センタバイパス弁10によりセンタバイパス通路12が閉じ始めてブームシリンダ4への圧油の供給が開始する際におけるセンタバイパス通路7aの開口量と、センタバイパス弁10の開口量とを合わせた合成開口量は、コントローラ19のポンプ出力演算部27及び開口量演算部29,30によるセンタバイパス弁10の開口量の指示値が小さい程、小さくなる。
【0047】
そこで本実施形態では、油圧ポンプ6の出力が比較的小さい場合にブーム上げ操作が行われた場合でも、ブームシリンダ4への圧油の供給が開始される際の合成開口量が自動的にポンプ出力とブーム上げパイロット圧の大きさに適した小さめの開口量に制御されることとなる。この結果、操作レバー15aの操作に伴うブームシリンダ4の起動(作動開始)が、ブームシリンダ4の負荷によらずに迅速に行われる。
【0048】
このようにして、煩雑な作業を要することなく、油圧ポンプ6の出力の如何に関わらずブーム上げ操作を行うことが可能となる。したがって、装置構成を簡単にすることができ、製作コストを低減できる。また、油圧ポンプ6の出力が小さい場合でも、確実にブーム上げ操作を行うことができる。この場合、油圧ポンプ6の出力が大きい場合であっても小さい場合であってもブーム用方向制御弁7を操作する操作レバー15aの操作量を同等にすることが出来る。従って優れたブーム上げ操作性を確保することが出来る。
【符号の説明】
【0049】
3 作業装置
4 ブームシリンダ
5 アタッチメント
5a アタッチメント用アクチュエータ
6 油圧ポンプ
7 ブーム用方向制御弁
10 センタバイパス弁
12 センタバイパス通路
15 ブーム用操作装置
17 比例電磁弁
19 コントローラ
20 圧力センサ
21 吐出圧センサ
22 吐出量センサ
27 ポンプ出力演算部
28 開口量演算部
23 油圧ポンプ
24 アタッチメント用方向制御弁
26 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを含む作業装置を有する作業機械に備えられ、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、このブームシリンダに圧油を供給する油圧ポンプと、この油圧ポンプを駆動するエンジンと、センタバイパス型の方向制御弁からなり、前記油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される圧油の流れを制御するブーム用方向制御弁と、このブーム用方向制御弁の下流に位置するセンタバイパス通路に設けられ、前記センタバイパス通路を開閉可能なセンタバイパス弁と、このセンタバイパス弁を切り換え制御する電磁弁と、この電磁弁を制御する制御信号を出力可能なコントローラとを備えた作業機械の油圧駆動装置において、
前記電磁弁が比例電磁弁から成り、
前記ブームの上げ操作を検出する検出手段を備え、
前記コントローラは、前記検出手段によって前記ブームの上げ操作が検出されたときに、前記油圧ポンプの出力を演算するポンプ出力演算部と、このポンプ出力演算部で演算された前記油圧ポンプの出力に応じた前記センタバイパス弁の開口量を演算する開口量演算部とを含み、この開口量演算部で演算された開口量に相応する前記制御信号を前記比例電磁弁に出力する処理を行うことを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、
前記油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧センサと、前記油圧ポンプの吐出量を検出する吐出量センサとを備え、
前記コントローラの前記ポンプ出力演算部は、前記吐出圧センサで検出された吐出圧と、前記吐出量センサで検出された吐出量とに基づいて前記油圧ポンプの出力を演算する処理を行うことを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の発明において、
前記ブーム用方向制御弁を操作するブーム用操作装置を備え、
前記検出手段は、前記ブーム用操作装置がブームの上げ操作側に操作された時に発生するパイロット圧を検出する庄カセンサから成ることを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項3記載の発明において、
当該作業機械がアタッチメントを有し、
前記アタッチメントを駆動するアタッチメント用アクチュエータと、前記エンジンによって駆動され、前記アタッチメント用アクチュエータに圧油を供給する別の油圧ポンプと、この別の油圧ポンプから前記アタッチメント用アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するアタッチメント用方向制御弁とを備えたことを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−137149(P2012−137149A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290179(P2010−290179)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】