作業車のキャビン構造
【課題】 軽量でデザイン自由度が高く、転倒時保護構造として要求される強度及び剛性を十分に満たし得る構成の作業車のキャビン構造を提供する。
【解決手段】 プレス成形された複数の板金が接合されてなり、中空閉断面に形成されたフレーム部F及びこのフレーム部Fに繋がる外板部Bを有して構成される作業車のキャビンにおいて、そのフレーム部Fは、外板部Bの一部を構成する2枚の板金43,44が、これら両板金43,44の間に一の方向に延びた中空部SPが形成されるように重ね合わせた状態で、一方の板金43の端面Tとこの一方の板金43の端面Tが接する他方の板金44の表面Sとの間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合された構成を有する。
【解決手段】 プレス成形された複数の板金が接合されてなり、中空閉断面に形成されたフレーム部F及びこのフレーム部Fに繋がる外板部Bを有して構成される作業車のキャビンにおいて、そのフレーム部Fは、外板部Bの一部を構成する2枚の板金43,44が、これら両板金43,44の間に一の方向に延びた中空部SPが形成されるように重ね合わせた状態で、一方の板金43の端面Tとこの一方の板金43の端面Tが接する他方の板金44の表面Sとの間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合された構成を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設作業車や農作業車など不整地での作業を行うことのある作業車のキャビン構造に関し、更に詳しくは、万が一車両が転倒した場合であってもキャビン内の乗員を保護し得る構成を備えた作業車のキャビン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設作業車や農作業車等の作業車は不整地での作業を行うことがあり、そのキャビンには、万が一車両が転倒した場合であっても乗員(オペレータ)を保護し得る構成が要求される。このようなキャビン構造は一般に転倒時保護構造と呼ばれ、ROPS(Roll-Over Protective Structure:ロップス)構造とも称される。このような転倒時保護構造は具体的には、車両転倒時においてシートベルトを付けた乗員が機械と地面との間に挟まれて押し潰されないように乗員を保護し得る鋼製の構造を意味する。
【0003】
従来、上記作業車のキャビン構造は例えば下記の特許文献1に示されるように、鋼製管(パイプ)状のフレーム部材と、これに溶接接合された鋼製外板部材とからなる。中空閉断面に形成された鋼製の管状のフレーム部材は剛性が極めて高く、このようなフレーム部材に外板部材を溶接接合することによって比較的容易に剛性が高く丈夫な箱型構造を得ることができる。
【特許文献1】特開2003−105805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のように管状のフレーム部材に外板部材を溶接接合する構成では、管状のフレーム部材はそれ自体が重いことからキャビン全体の重量が大きくなってしまい、製造コストが高くなるという問題点がある。また、管状のフレーム部材を用いた構成ではデザイン自由度があまりなく、画一的な形状となって商品性に劣るといった問題点もある。これらの問題点を解決する方法としては、プレス成形した複数の板金をスポット溶接により接合して管状のフレーム部と外板部とを一体に形成する技術も存在するが、スポット溶接継手は2枚の板金の接合部端面にのみ施されるうえ、隣接するスポット溶接継手間のピッチを小さくするには限界があることから所要の接合強度が得られず、転倒時保護構造として要求される十分な強度・剛性を満たすことができなかった。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、軽量でデザイン自由度が高く、転倒時保護構造として要求される強度及び剛性を十分に満たし得る構成の作業車のキャビン構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業車のキャビン構造は、プレス成形された複数の板金が接合されてなり、中空閉断面に形成された管状のフレーム部及びこのフレーム部に繋がる外板部を有して構成される作業車(例えば、実施形態におけるパワーショベル車1)のキャビンにおいて、そのフレーム部は、外板部の一部を構成する2枚の板金(例えば、実施形態における右外側板金43及び右内側板金44)が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部が形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金(例えば、実施形態における右外側板金43)の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金(例えば、実施形態における右内側板金44)の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合された構成を有している。
【0007】
また、上記構成の作業車のキャビン構造においては、フレーム部を構成する板金の一つ(例えば、実施形態における右外側板金41)とこの板金に接続される外板部を構成する板金(例えば、実施形態における上部板金47)とは、これら両板金が重ね合わされた状態で、一方の板金(例えば、実施形態における上部板金47)の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金(例えば、実施形態における右外側板金41)の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合されていることが好ましい。また、上記一方の板金の端面は、その一方の板金に形成された切り欠き或いは孔の内周縁の端面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る作業車のキャビン構造において、そのフレーム部は、外板部の一部を構成する2枚の板金が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部が形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合された構成となっている。このため本発明に係るキャビン構造はその全体をプレス成形された複数の板金のみから構成することができ、軽量であるとともにデザイン自由度にも優れたものとすることができる。また、従来のように2枚の板金をその接合部端面にのみスポット溶接継手を形成して接合する方法と比べてその接合強度を各段に増大させることができるので、転倒時保護構造として要求される強度及び剛性を十分に満たすことが可能となる。
【0009】
また、上記本発明に係る作業車のキャビン構造において、フレーム部を構成する板金の一つとこの板金に接続される外板部を構成する板金とが、これら両板金が重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合されているのであれば、フレーム部とこれに接続される外板部との接合も強固なものとなり、キャビン全体の強度及び構成をより一層高めることが可能となる。また、このようなすみ肉溶接接合の際、他方の板金の表面とすみ肉溶接継手によって接合される一方の板金の端面が、その一方の板金に形成された切り欠き或いは孔の内周縁の端面であるようにすれば、接合する2枚の板金はその一方の板金に形成された切り欠き或いは孔が目印となって自動溶接が可能となるため、キャビンの生産性を従来以上に高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は本発明の一実施形態に係る作業車のキャビン構造が適用されたパワーショベル車1を示している。このパワーショベル車1は、左右一対のクローラ走行装置11を備えた下部走行体10と、この下部走行体10上に設けられて図示しない旋回モータにより水平旋回が可能な上部旋回体20と、この上部旋回体20に取り付けられたパワーショベル機構30と、上部旋回体20の上部に取り付けられたオペレータ搭乗用のキャビン40とから構成されている。
【0011】
クローラ走行装置11は駆動輪11a、遊動輪11b及びこれら駆動輪11aと遊動輪11bとの間に掛け渡されたクローラベルト11cを有して構成されており、駆動輪11aは油圧モータ11dにより駆動される。パワーショベル機構30は上部旋回体20の前部に取り付けられて上部旋回体20の前後方向に揺動自在なブーム31と、このブーム31の先端部に取り付けられて上部旋回体20の前後方向に揺動自在なアーム32と、アーム32の先端部に取り付けられて上部旋回体20の前後方向に揺動自在なバケット33とを有して構成される。上部旋回体20とブーム31との間にはブームシリンダ34が設けられており、このブームシリンダ34を伸縮作動させることによってブーム31を上部旋回体20の前後方向に揺動させることができる。また、ブーム31とアーム32との間にはアームシリンダ35が設けられており、このアームシリンダ35を伸縮作動させることによってアーム32を上部旋回体20の前後方向に揺動させることができる。また、アーム32とバケット33との間にはバケットシリンダ36が設けられており、このバケットシリンダ36を伸縮作動させることによってバケット33を上部旋回体20の前後方向に揺動させることができる。
【0012】
キャビン40はプレス成形された複数の板金が接合されてなり、中空閉断面に形成された管状の複数のフレーム部F及びこれらフレーム部Fに繋がる複数の外板部Bを有した構成となっている。キャビン40の正面には正面窓WFが設けられており、キャビン40の上方には上部窓WUが、キャビン40の左右両側には窓WL,WRがそれぞれ設けられている。また、キャビン40の左側にはドアDが設けられており、オペレータはここからキャビン40への出入りを行うことができる。
【0013】
キャビン40内にはオペレータが座するオペレータシート61が設けられており、このオペレータシート61の前方位置には左右のクローラ走行装置11の作動操作を行うための走行レバー62が、オペレータシート61の左右側方位置にはパワーショベル機構30の作動操作を行うための左右の操作レバー63,64がそれぞれ設けられている。左側の操作レバー63はその前後方向への傾動操作によってアームシリンダ35を伸縮作動させる(すなわちアーム32を揺動作動させる)ことができ、左右方向への傾動操作によって旋回モータを回転作動させる(すなわち上部旋回体20を水平旋回作動させる)ことができる。また、右側の操作レバー64はその前後方向へ傾動操作によってブームシリンダ34を伸縮作動させる(すなわちブーム31を揺動作動させる)ことができ、左右方向への傾動操作によってバケットシリンダ36を伸縮作動させる(すなわちバケット33を揺動作動させる)ことができる。このようなレバー操作によりオペレータは掘削作業や排土作業などを行うことが可能である。
【0014】
図3はパワーショベル車1から取り外したキャビン40を示している。但し、この図では正面窓WF、上部窓WU、左右の窓WL,WR及びドアDは取り外されている。このキャビン40はプレス成形された8枚の鋼製の板金、すなわち左外側板金41、左内側板金42、右外側板金43、右内側板金44、正面板金45、正面上方ビーム46及び上部板金47、上後方ビーム48からなる(図4〜図7も参照)。
【0015】
図4、図6及び図7から分かるように、左外側板金41の外周部、窓WRの枠部及びドアDの枠部にはそれぞれ曲げ加工部EL1,FL1,DR1が形成されており、左内側板金42の外周部、窓WRの枠部及びドアDの枠部には上記左外側板金41に形成された曲げ加工部EL1,FL1,DR1に対応した曲げ加工部EL2,FL2,DR2が形成されている。これら左外側板金41に形成された曲げ加工部EL1,FL1,DR1と左内側板金42に形成された曲げ加工部EL2,FL2,DL2とは対応するもの同士が対向するように配置されたうえで後述するすみ肉溶接が施されて接合されている。
【0016】
また、図5、図6及び図7から分かるように、右外側板金43の外周部及び窓WLの枠部にはそれぞれ曲げ加工部ER1,FR1が形成されており、右内側板金44の外周部及び窓WLの枠部には上記右外側板金43に形成された曲げ加工部ER1,FR1に対応した曲げ加工部ER2,FR2が形成されている。これら右外側板金43に形成された曲げ加工部ER1,FR1と右内側板金44に形成された曲げ加工部ER2,FR2とは対応するもの同士が対向するように配置されたうえで後述するすみ肉溶接が施されて接合されている。
【0017】
左外側板金41と右外側板金43とは、図3に示すように、キャビン40の正面上方位置を横方向に延びて設けられた正面上方ビーム46と、キャビン40の上後方位置を横方向に延びて設けられた上後方ビーム48とによって相互に連結されている。そして、キャビン40の正面位置に相当する左外側板金41、右外側板金43及び正面上方ビーム46を三辺とする領域にはこの領域を覆うように正面板金45が設けられており、キャビン40の上方位置に相当する左外側板金41、右外側板金43、正面上方ビーム46及び上後方ビーム48を四辺とする領域にはこの領域を覆うように上部板金47が設けられている。ここで、正面板金45はその三辺に位置する各部材41,43,46とすみ肉溶接接合されており(図6参照)、その中央に形成された開口部45aには前述の正面窓WFが取り付けられる。また、上部板金47はその四辺に位置する各部材41,43,46,48とすみ肉溶接接合されており(図7参照)、その前方に形成された開口部47aには前述の上部窓WUが取り付けられる。
【0018】
このような構成のキャビン40では、図8中に示す太線の位置に中空閉断面に形成されたフレーム部Fを有し、またこれらフレームFの間に外板部Bを有することになる(後述のように、外板部Bの一部はフレーム部Fと一体に形成され、他の一部はフレーム部Fに溶接接合されている)。フレーム部Fの各々は外板部Bの一部を構成する2枚の板金が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部SPが形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合されている。例えば、図7(及び図1)に示すように、キャビン40の右側上部に形成されたフレームFは、キャビン40の右側側面の外板部Bを構成する2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)が、これら両板金43,44の間にキャビン40の前後方向に延びた中空部SPが形成されるように重ね合わされた状態で、右外側板金43の端面と右内側板金44の表面との間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合されている。
【0019】
図1は、フレーム部Fを構成する2枚の板金をすみ肉溶接継手Wによって接合する方法の第1の例を、右外側板金43と右内側板金44との接合によってキャビン40の右側上部に形成されたフレーム部Fを例にして示す図である。ここに示す第1の例は、フレームFを構成する2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)のうちの一方の板金(ここでは右外側板金43)の外周部に、その外周縁に沿って一定間隔おきに切り欠きCを設け(図4及び図5も参照)、上記2枚の板金を重ね合わせた状態で、一方の板金(右外側板金43)に形成された切り欠きCの内周縁の端面Tと、この端面Tが接する他方の板金(ここでは右内側板金44)の表面Sとの間にすみ肉溶接を施し、これによって形成されたすみ肉溶接継手Wにより2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)を接合するようにしたものである。ここで、各切り欠きCの長さLと深さD及び切り欠きCのピッチ(隣接する切り欠きC同士の間隔)Pの大きさの設定は任意であり、切り欠きCが形成される板金(ここでは右外側板金43)の強度が許す限り各切り欠きCの長さLを大きくし、或いは切り欠きCのピッチPの値を小さくしてすみ肉溶接継手Wによる両板金(右外側板金43と右内側板金44)の接合面積を増大させてその接合強度を増大させることが可能である。なお、切り欠きCの深さDはすみ肉溶接継手Wの高さ(切り欠きCが設けられる側の板金の厚さ方向寸法)の2〜3倍程度であることが好ましい。
【0020】
図9は、フレーム部Fを構成する2枚の板金をすみ肉溶接継手Wによって接合する方法の第2の例を、右外側板金43と右内側板金44との接合によってキャビン40の右側上部に形成されるフレーム部Fを例にして示す図である。ここに示す第2の例は、フレームFを構成する2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)の一方の板金(右外側板金43)の外周部に、その外周縁に沿って一定間隔おきに孔(ここでは長穴)Hを設け、これら2枚の板金を重ね合わせた状態で、一方の板金(右外側板金43)に形成された孔Hの内周縁の端面Tと、この端面Tが接する他方の板金(右内側板金44)の表面Sとの間にすみ肉溶接を施し、これによって形成されたすみ肉溶接継手Wにより2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)を接合するようにしたものである。
【0021】
また、図10に示す第3の方法は、上記フレームFを構成する2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)を重ね合わせた状態で、これら2枚の板金の一方(右外側板金43)の外周部の端面Tと、この端面Tが接する他方の板金(右内側板金44)の表面Sとの間にすみ肉溶接を施し、これによって形成されたすみ肉溶接継手Wにより2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)を接合するようにしたものである。上記第1〜第3の例に示すいずれの方法によってもフレーム部Fを構成する2枚の板金をすみ肉溶接継手Wによって接合することができるが、第1の方法及び第2の方法では、接合する2枚の板金はその一方の板金に形成された切り欠きC或いは孔Hが目印となって自動溶接が可能となるため、キャビン40の生産性を従来以上に高めることが可能である。なお、上記3つの例ではいずれも、キャビン40の右側上部に位置するフレーム部Fを構成する板金の接合方法を示したが、他の箇所に位置するフレーム部Fを構成する板金の接合方法についてもこれと同様である。
【0022】
また、正面窓WFを右外側板金41、左外側板金43、正面上方ビーム46にすみ肉溶接接合するとき、及び上部窓WUを右外側板金41、左外側板金43、正面上方ビーム46、上後方ビーム48にすみ肉溶接接合するときも上記第1〜第3のいずれかの方法による。例えば、右外側板金41と上部板金47との接合は、図11に示すように、右外側板金41と上部板金47とを重ね合わせた状態で、上部板金47の端面Tとこの端面Tが接する右外側板金41の表面Sとの間にすみ肉溶接を施し、これにより形成されたすみ肉溶接継手Wによって右外側板金41と上部板金47とが接合される。
【0023】
このように本発明に係る作業車のキャビン40構造において、そのフレーム部Fは、外板部Bの一部を構成する2枚の板金が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部SPが形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金の端面Tとこの一方の板金の端面Tが接する他方の板金の表面Sとの間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合された構成となっている。このためキャビン構造全体をプレス成形された複数の板金のみから構成することができ、軽量であるとともにデザイン自由度にも優れたものとすることができる。また、従来のように2枚の板金をその接合部端面にのみスポット溶接継手を形成して接合する方法と比べてその接合強度を格段に増大させることができるので、転倒時保護構造として要求される強度及び剛性を十分に満たすことが可能となる。また、フレーム部Fを構成する板金の一つとこの板金に接続される外板部を構成する板金とが、これら両板金が重ね合わされた状態で、一方の板金の端面Tとこの一方の板金の端面Tが接する他方の板金の表面Sとの間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合されているのであれば、フレーム部Fとこれに接続される外板部Bとの接合も強固なものとなり、キャビン40全体の強度及び構成をより一層高めることが可能となる。
【0024】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、重ね合わされる外側板金と内側板金のうち外側板金に切り欠き(或いは孔)が設けられる構成であったが、内側板金に切り欠き(或いは孔)を設ける構成としてもよい。或いは、切り欠き(或いは孔)を、外側板金と内側板金の双方に、これら外周縁に沿って交互に設ける構成としてもよい。また、上述の実施形態では、キャビン構造を形成する板金は鋼製であるとしたが、これは一例であり、必ずしも鋼製である必要はない。しかし、キャビンの強度及び剛性を高めて転倒時保護構造の要求を満足させるようにするのであれば、各板金は鋼製であることが好ましい。また、本発明に係る作業車のキャビン構造は、上述の実施形態において示したパワーショベル車のみならず他の作業車一般に適用することができるが、このキャビン構造は転倒時保護構造としての十分な強度及び剛性を得るようにすることができることから、クレーン車など他の建設作業車のほか、農作業車など不整地での作業を行うことのある作業車において適用することが望まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業車のキャビン構造が適用されたパワーショベル車における一つのフレーム部を構成する2枚の板金を溶接によって接合する方法の第1の例を示す図であり、(A)はフレーム部の拡大断面図、(B)は(A)における矢視IBから見た図である。
【図2】上記パワーショベル車の斜視図である。
【図3】上記パワーショベル車のキャビンの構成を示す斜視図である。
【図4】キャビンの左側の構成部品を示す分解斜視図である。
【図5】キャビンの右側の構成部品を示す分解斜視図である。
【図6】図3において切断面Mにより切断したキャビンを矢視VIから見た断面図である。
【図7】図3において切断面Nにより切断したキャビンを矢視VIIから見た断面図である。
【図8】キャビンに形成された管状のフレーム部の位置を示す図である。
【図9】フレーム部を構成する2枚の板金を溶接によって接合する方法の第2の例を示す図であり、(A)はフレーム部の拡大断面図、(B)は(A)における矢視IXBから見た図である。
【図10】フレーム部を構成する2枚の板金を溶接によって接合する方法の第3の例を示す図であり、(A)はフレーム部の拡大断面図、(B)は(A)における矢視XBから見た図である。
【図11】フレーム部を構成する板金と外板部を構成する板金とを溶接によって接合する方法を示す図であり、(A)はフレーム部と外板部との接合部の拡大断面図、(B)は(A)における矢視XIBから見た図である。
【符号の説明】
【0026】
1 パワーショベル車(作業車)
10 下部走行体
20 上部旋回体
30 パワーショベル機構
40 キャビン
43 右外側板金(一方の板金)
44 右内側板金(他方の板金)
F フレーム部
SP 中空部
C 切り欠き
T 右外側板金の端面(一方の板金の端面)
S 右内側板金の表面(他方の板金の表面)
W すみ肉溶接継手
B 外板部
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設作業車や農作業車など不整地での作業を行うことのある作業車のキャビン構造に関し、更に詳しくは、万が一車両が転倒した場合であってもキャビン内の乗員を保護し得る構成を備えた作業車のキャビン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設作業車や農作業車等の作業車は不整地での作業を行うことがあり、そのキャビンには、万が一車両が転倒した場合であっても乗員(オペレータ)を保護し得る構成が要求される。このようなキャビン構造は一般に転倒時保護構造と呼ばれ、ROPS(Roll-Over Protective Structure:ロップス)構造とも称される。このような転倒時保護構造は具体的には、車両転倒時においてシートベルトを付けた乗員が機械と地面との間に挟まれて押し潰されないように乗員を保護し得る鋼製の構造を意味する。
【0003】
従来、上記作業車のキャビン構造は例えば下記の特許文献1に示されるように、鋼製管(パイプ)状のフレーム部材と、これに溶接接合された鋼製外板部材とからなる。中空閉断面に形成された鋼製の管状のフレーム部材は剛性が極めて高く、このようなフレーム部材に外板部材を溶接接合することによって比較的容易に剛性が高く丈夫な箱型構造を得ることができる。
【特許文献1】特開2003−105805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のように管状のフレーム部材に外板部材を溶接接合する構成では、管状のフレーム部材はそれ自体が重いことからキャビン全体の重量が大きくなってしまい、製造コストが高くなるという問題点がある。また、管状のフレーム部材を用いた構成ではデザイン自由度があまりなく、画一的な形状となって商品性に劣るといった問題点もある。これらの問題点を解決する方法としては、プレス成形した複数の板金をスポット溶接により接合して管状のフレーム部と外板部とを一体に形成する技術も存在するが、スポット溶接継手は2枚の板金の接合部端面にのみ施されるうえ、隣接するスポット溶接継手間のピッチを小さくするには限界があることから所要の接合強度が得られず、転倒時保護構造として要求される十分な強度・剛性を満たすことができなかった。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、軽量でデザイン自由度が高く、転倒時保護構造として要求される強度及び剛性を十分に満たし得る構成の作業車のキャビン構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業車のキャビン構造は、プレス成形された複数の板金が接合されてなり、中空閉断面に形成された管状のフレーム部及びこのフレーム部に繋がる外板部を有して構成される作業車(例えば、実施形態におけるパワーショベル車1)のキャビンにおいて、そのフレーム部は、外板部の一部を構成する2枚の板金(例えば、実施形態における右外側板金43及び右内側板金44)が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部が形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金(例えば、実施形態における右外側板金43)の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金(例えば、実施形態における右内側板金44)の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合された構成を有している。
【0007】
また、上記構成の作業車のキャビン構造においては、フレーム部を構成する板金の一つ(例えば、実施形態における右外側板金41)とこの板金に接続される外板部を構成する板金(例えば、実施形態における上部板金47)とは、これら両板金が重ね合わされた状態で、一方の板金(例えば、実施形態における上部板金47)の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金(例えば、実施形態における右外側板金41)の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合されていることが好ましい。また、上記一方の板金の端面は、その一方の板金に形成された切り欠き或いは孔の内周縁の端面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る作業車のキャビン構造において、そのフレーム部は、外板部の一部を構成する2枚の板金が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部が形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合された構成となっている。このため本発明に係るキャビン構造はその全体をプレス成形された複数の板金のみから構成することができ、軽量であるとともにデザイン自由度にも優れたものとすることができる。また、従来のように2枚の板金をその接合部端面にのみスポット溶接継手を形成して接合する方法と比べてその接合強度を各段に増大させることができるので、転倒時保護構造として要求される強度及び剛性を十分に満たすことが可能となる。
【0009】
また、上記本発明に係る作業車のキャビン構造において、フレーム部を構成する板金の一つとこの板金に接続される外板部を構成する板金とが、これら両板金が重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合されているのであれば、フレーム部とこれに接続される外板部との接合も強固なものとなり、キャビン全体の強度及び構成をより一層高めることが可能となる。また、このようなすみ肉溶接接合の際、他方の板金の表面とすみ肉溶接継手によって接合される一方の板金の端面が、その一方の板金に形成された切り欠き或いは孔の内周縁の端面であるようにすれば、接合する2枚の板金はその一方の板金に形成された切り欠き或いは孔が目印となって自動溶接が可能となるため、キャビンの生産性を従来以上に高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は本発明の一実施形態に係る作業車のキャビン構造が適用されたパワーショベル車1を示している。このパワーショベル車1は、左右一対のクローラ走行装置11を備えた下部走行体10と、この下部走行体10上に設けられて図示しない旋回モータにより水平旋回が可能な上部旋回体20と、この上部旋回体20に取り付けられたパワーショベル機構30と、上部旋回体20の上部に取り付けられたオペレータ搭乗用のキャビン40とから構成されている。
【0011】
クローラ走行装置11は駆動輪11a、遊動輪11b及びこれら駆動輪11aと遊動輪11bとの間に掛け渡されたクローラベルト11cを有して構成されており、駆動輪11aは油圧モータ11dにより駆動される。パワーショベル機構30は上部旋回体20の前部に取り付けられて上部旋回体20の前後方向に揺動自在なブーム31と、このブーム31の先端部に取り付けられて上部旋回体20の前後方向に揺動自在なアーム32と、アーム32の先端部に取り付けられて上部旋回体20の前後方向に揺動自在なバケット33とを有して構成される。上部旋回体20とブーム31との間にはブームシリンダ34が設けられており、このブームシリンダ34を伸縮作動させることによってブーム31を上部旋回体20の前後方向に揺動させることができる。また、ブーム31とアーム32との間にはアームシリンダ35が設けられており、このアームシリンダ35を伸縮作動させることによってアーム32を上部旋回体20の前後方向に揺動させることができる。また、アーム32とバケット33との間にはバケットシリンダ36が設けられており、このバケットシリンダ36を伸縮作動させることによってバケット33を上部旋回体20の前後方向に揺動させることができる。
【0012】
キャビン40はプレス成形された複数の板金が接合されてなり、中空閉断面に形成された管状の複数のフレーム部F及びこれらフレーム部Fに繋がる複数の外板部Bを有した構成となっている。キャビン40の正面には正面窓WFが設けられており、キャビン40の上方には上部窓WUが、キャビン40の左右両側には窓WL,WRがそれぞれ設けられている。また、キャビン40の左側にはドアDが設けられており、オペレータはここからキャビン40への出入りを行うことができる。
【0013】
キャビン40内にはオペレータが座するオペレータシート61が設けられており、このオペレータシート61の前方位置には左右のクローラ走行装置11の作動操作を行うための走行レバー62が、オペレータシート61の左右側方位置にはパワーショベル機構30の作動操作を行うための左右の操作レバー63,64がそれぞれ設けられている。左側の操作レバー63はその前後方向への傾動操作によってアームシリンダ35を伸縮作動させる(すなわちアーム32を揺動作動させる)ことができ、左右方向への傾動操作によって旋回モータを回転作動させる(すなわち上部旋回体20を水平旋回作動させる)ことができる。また、右側の操作レバー64はその前後方向へ傾動操作によってブームシリンダ34を伸縮作動させる(すなわちブーム31を揺動作動させる)ことができ、左右方向への傾動操作によってバケットシリンダ36を伸縮作動させる(すなわちバケット33を揺動作動させる)ことができる。このようなレバー操作によりオペレータは掘削作業や排土作業などを行うことが可能である。
【0014】
図3はパワーショベル車1から取り外したキャビン40を示している。但し、この図では正面窓WF、上部窓WU、左右の窓WL,WR及びドアDは取り外されている。このキャビン40はプレス成形された8枚の鋼製の板金、すなわち左外側板金41、左内側板金42、右外側板金43、右内側板金44、正面板金45、正面上方ビーム46及び上部板金47、上後方ビーム48からなる(図4〜図7も参照)。
【0015】
図4、図6及び図7から分かるように、左外側板金41の外周部、窓WRの枠部及びドアDの枠部にはそれぞれ曲げ加工部EL1,FL1,DR1が形成されており、左内側板金42の外周部、窓WRの枠部及びドアDの枠部には上記左外側板金41に形成された曲げ加工部EL1,FL1,DR1に対応した曲げ加工部EL2,FL2,DR2が形成されている。これら左外側板金41に形成された曲げ加工部EL1,FL1,DR1と左内側板金42に形成された曲げ加工部EL2,FL2,DL2とは対応するもの同士が対向するように配置されたうえで後述するすみ肉溶接が施されて接合されている。
【0016】
また、図5、図6及び図7から分かるように、右外側板金43の外周部及び窓WLの枠部にはそれぞれ曲げ加工部ER1,FR1が形成されており、右内側板金44の外周部及び窓WLの枠部には上記右外側板金43に形成された曲げ加工部ER1,FR1に対応した曲げ加工部ER2,FR2が形成されている。これら右外側板金43に形成された曲げ加工部ER1,FR1と右内側板金44に形成された曲げ加工部ER2,FR2とは対応するもの同士が対向するように配置されたうえで後述するすみ肉溶接が施されて接合されている。
【0017】
左外側板金41と右外側板金43とは、図3に示すように、キャビン40の正面上方位置を横方向に延びて設けられた正面上方ビーム46と、キャビン40の上後方位置を横方向に延びて設けられた上後方ビーム48とによって相互に連結されている。そして、キャビン40の正面位置に相当する左外側板金41、右外側板金43及び正面上方ビーム46を三辺とする領域にはこの領域を覆うように正面板金45が設けられており、キャビン40の上方位置に相当する左外側板金41、右外側板金43、正面上方ビーム46及び上後方ビーム48を四辺とする領域にはこの領域を覆うように上部板金47が設けられている。ここで、正面板金45はその三辺に位置する各部材41,43,46とすみ肉溶接接合されており(図6参照)、その中央に形成された開口部45aには前述の正面窓WFが取り付けられる。また、上部板金47はその四辺に位置する各部材41,43,46,48とすみ肉溶接接合されており(図7参照)、その前方に形成された開口部47aには前述の上部窓WUが取り付けられる。
【0018】
このような構成のキャビン40では、図8中に示す太線の位置に中空閉断面に形成されたフレーム部Fを有し、またこれらフレームFの間に外板部Bを有することになる(後述のように、外板部Bの一部はフレーム部Fと一体に形成され、他の一部はフレーム部Fに溶接接合されている)。フレーム部Fの各々は外板部Bの一部を構成する2枚の板金が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部SPが形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合されている。例えば、図7(及び図1)に示すように、キャビン40の右側上部に形成されたフレームFは、キャビン40の右側側面の外板部Bを構成する2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)が、これら両板金43,44の間にキャビン40の前後方向に延びた中空部SPが形成されるように重ね合わされた状態で、右外側板金43の端面と右内側板金44の表面との間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合されている。
【0019】
図1は、フレーム部Fを構成する2枚の板金をすみ肉溶接継手Wによって接合する方法の第1の例を、右外側板金43と右内側板金44との接合によってキャビン40の右側上部に形成されたフレーム部Fを例にして示す図である。ここに示す第1の例は、フレームFを構成する2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)のうちの一方の板金(ここでは右外側板金43)の外周部に、その外周縁に沿って一定間隔おきに切り欠きCを設け(図4及び図5も参照)、上記2枚の板金を重ね合わせた状態で、一方の板金(右外側板金43)に形成された切り欠きCの内周縁の端面Tと、この端面Tが接する他方の板金(ここでは右内側板金44)の表面Sとの間にすみ肉溶接を施し、これによって形成されたすみ肉溶接継手Wにより2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)を接合するようにしたものである。ここで、各切り欠きCの長さLと深さD及び切り欠きCのピッチ(隣接する切り欠きC同士の間隔)Pの大きさの設定は任意であり、切り欠きCが形成される板金(ここでは右外側板金43)の強度が許す限り各切り欠きCの長さLを大きくし、或いは切り欠きCのピッチPの値を小さくしてすみ肉溶接継手Wによる両板金(右外側板金43と右内側板金44)の接合面積を増大させてその接合強度を増大させることが可能である。なお、切り欠きCの深さDはすみ肉溶接継手Wの高さ(切り欠きCが設けられる側の板金の厚さ方向寸法)の2〜3倍程度であることが好ましい。
【0020】
図9は、フレーム部Fを構成する2枚の板金をすみ肉溶接継手Wによって接合する方法の第2の例を、右外側板金43と右内側板金44との接合によってキャビン40の右側上部に形成されるフレーム部Fを例にして示す図である。ここに示す第2の例は、フレームFを構成する2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)の一方の板金(右外側板金43)の外周部に、その外周縁に沿って一定間隔おきに孔(ここでは長穴)Hを設け、これら2枚の板金を重ね合わせた状態で、一方の板金(右外側板金43)に形成された孔Hの内周縁の端面Tと、この端面Tが接する他方の板金(右内側板金44)の表面Sとの間にすみ肉溶接を施し、これによって形成されたすみ肉溶接継手Wにより2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)を接合するようにしたものである。
【0021】
また、図10に示す第3の方法は、上記フレームFを構成する2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)を重ね合わせた状態で、これら2枚の板金の一方(右外側板金43)の外周部の端面Tと、この端面Tが接する他方の板金(右内側板金44)の表面Sとの間にすみ肉溶接を施し、これによって形成されたすみ肉溶接継手Wにより2枚の板金(右外側板金43と右内側板金44)を接合するようにしたものである。上記第1〜第3の例に示すいずれの方法によってもフレーム部Fを構成する2枚の板金をすみ肉溶接継手Wによって接合することができるが、第1の方法及び第2の方法では、接合する2枚の板金はその一方の板金に形成された切り欠きC或いは孔Hが目印となって自動溶接が可能となるため、キャビン40の生産性を従来以上に高めることが可能である。なお、上記3つの例ではいずれも、キャビン40の右側上部に位置するフレーム部Fを構成する板金の接合方法を示したが、他の箇所に位置するフレーム部Fを構成する板金の接合方法についてもこれと同様である。
【0022】
また、正面窓WFを右外側板金41、左外側板金43、正面上方ビーム46にすみ肉溶接接合するとき、及び上部窓WUを右外側板金41、左外側板金43、正面上方ビーム46、上後方ビーム48にすみ肉溶接接合するときも上記第1〜第3のいずれかの方法による。例えば、右外側板金41と上部板金47との接合は、図11に示すように、右外側板金41と上部板金47とを重ね合わせた状態で、上部板金47の端面Tとこの端面Tが接する右外側板金41の表面Sとの間にすみ肉溶接を施し、これにより形成されたすみ肉溶接継手Wによって右外側板金41と上部板金47とが接合される。
【0023】
このように本発明に係る作業車のキャビン40構造において、そのフレーム部Fは、外板部Bの一部を構成する2枚の板金が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部SPが形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金の端面Tとこの一方の板金の端面Tが接する他方の板金の表面Sとの間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合された構成となっている。このためキャビン構造全体をプレス成形された複数の板金のみから構成することができ、軽量であるとともにデザイン自由度にも優れたものとすることができる。また、従来のように2枚の板金をその接合部端面にのみスポット溶接継手を形成して接合する方法と比べてその接合強度を格段に増大させることができるので、転倒時保護構造として要求される強度及び剛性を十分に満たすことが可能となる。また、フレーム部Fを構成する板金の一つとこの板金に接続される外板部を構成する板金とが、これら両板金が重ね合わされた状態で、一方の板金の端面Tとこの一方の板金の端面Tが接する他方の板金の表面Sとの間に施されたすみ肉溶接継手Wによって接合されているのであれば、フレーム部Fとこれに接続される外板部Bとの接合も強固なものとなり、キャビン40全体の強度及び構成をより一層高めることが可能となる。
【0024】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、重ね合わされる外側板金と内側板金のうち外側板金に切り欠き(或いは孔)が設けられる構成であったが、内側板金に切り欠き(或いは孔)を設ける構成としてもよい。或いは、切り欠き(或いは孔)を、外側板金と内側板金の双方に、これら外周縁に沿って交互に設ける構成としてもよい。また、上述の実施形態では、キャビン構造を形成する板金は鋼製であるとしたが、これは一例であり、必ずしも鋼製である必要はない。しかし、キャビンの強度及び剛性を高めて転倒時保護構造の要求を満足させるようにするのであれば、各板金は鋼製であることが好ましい。また、本発明に係る作業車のキャビン構造は、上述の実施形態において示したパワーショベル車のみならず他の作業車一般に適用することができるが、このキャビン構造は転倒時保護構造としての十分な強度及び剛性を得るようにすることができることから、クレーン車など他の建設作業車のほか、農作業車など不整地での作業を行うことのある作業車において適用することが望まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業車のキャビン構造が適用されたパワーショベル車における一つのフレーム部を構成する2枚の板金を溶接によって接合する方法の第1の例を示す図であり、(A)はフレーム部の拡大断面図、(B)は(A)における矢視IBから見た図である。
【図2】上記パワーショベル車の斜視図である。
【図3】上記パワーショベル車のキャビンの構成を示す斜視図である。
【図4】キャビンの左側の構成部品を示す分解斜視図である。
【図5】キャビンの右側の構成部品を示す分解斜視図である。
【図6】図3において切断面Mにより切断したキャビンを矢視VIから見た断面図である。
【図7】図3において切断面Nにより切断したキャビンを矢視VIIから見た断面図である。
【図8】キャビンに形成された管状のフレーム部の位置を示す図である。
【図9】フレーム部を構成する2枚の板金を溶接によって接合する方法の第2の例を示す図であり、(A)はフレーム部の拡大断面図、(B)は(A)における矢視IXBから見た図である。
【図10】フレーム部を構成する2枚の板金を溶接によって接合する方法の第3の例を示す図であり、(A)はフレーム部の拡大断面図、(B)は(A)における矢視XBから見た図である。
【図11】フレーム部を構成する板金と外板部を構成する板金とを溶接によって接合する方法を示す図であり、(A)はフレーム部と外板部との接合部の拡大断面図、(B)は(A)における矢視XIBから見た図である。
【符号の説明】
【0026】
1 パワーショベル車(作業車)
10 下部走行体
20 上部旋回体
30 パワーショベル機構
40 キャビン
43 右外側板金(一方の板金)
44 右内側板金(他方の板金)
F フレーム部
SP 中空部
C 切り欠き
T 右外側板金の端面(一方の板金の端面)
S 右内側板金の表面(他方の板金の表面)
W すみ肉溶接継手
B 外板部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形された複数の板金が接合されてなり、中空閉断面に形成された管状のフレーム部及び前記フレーム部に繋がる外板部を有して構成される作業車のキャビン構造において、
前記フレーム部は、前記外板部の一部を構成する2枚の板金が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部が形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合された構成を有していることを特徴とする作業車のキャビン構造。
【請求項2】
前記フレーム部を構成する板金の一つとこの板金に接続される前記外板部を構成する板金とは、これら両板金が重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合されていることを特徴とする請求項1記載の作業車のキャビン構造。
【請求項3】
前記一方の板金の端面は、前記一方の板金に形成された切り欠き或いは孔の内周縁の端面であることを特徴とする請求項1又は2記載の作業車のキャビン構造。
【請求項1】
プレス成形された複数の板金が接合されてなり、中空閉断面に形成された管状のフレーム部及び前記フレーム部に繋がる外板部を有して構成される作業車のキャビン構造において、
前記フレーム部は、前記外板部の一部を構成する2枚の板金が、これら両板金の間に一の方向に延びた中空部が形成されるように重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合された構成を有していることを特徴とする作業車のキャビン構造。
【請求項2】
前記フレーム部を構成する板金の一つとこの板金に接続される前記外板部を構成する板金とは、これら両板金が重ね合わされた状態で、一方の板金の端面とこの一方の板金の端面が接する他方の板金の表面との間に施されたすみ肉溶接継手によって接合されていることを特徴とする請求項1記載の作業車のキャビン構造。
【請求項3】
前記一方の板金の端面は、前記一方の板金に形成された切り欠き或いは孔の内周縁の端面であることを特徴とする請求項1又は2記載の作業車のキャビン構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−335259(P2006−335259A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163528(P2005−163528)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(392017129)共和産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(392017129)共和産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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