説明

作業車のグリル取り付け構造

【課題】 グリルに近接配備した機器に対するメンテナンス作業などを容易に行えるようにする。
【解決手段】 車体の前後一側端に、通風用のグリル15を着脱可能に立設してある作業車のグリル取り付け構造において、グリル15の下端部とグリル15が立設される支持部材31とのいずれか一方に係合孔38を形成し、かつ、他方に係合孔38に対して係脱可能な係合突起39を備え、係合突起39に、係合孔38との係合状態においてグリル15の車体前後方向への傾倒を許容する傾倒許容部68と、グリル15の傾倒姿勢での係合突起39の係合孔38からの抜け出しを阻止する抜止部69とを備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前後一側端に、通風用のグリルを着脱可能に立設してある作業車のグリル取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車のグリル取り付け構造としては、グリル(フロントグリル)の下端側に、車体側に備えた係合孔に対して抜き差し可能な下向き突起を備えることにより、車体の前端にグリルを着脱可能に立設するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−231550号公報(段落番号0032、図1〜3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成によると、グリルの後方に近接配備した機器に対してメンテナンス作業を行う場合には、グリルを車体から取り外す必要が生じることになる。そのため、例えば、バッテリやラジエータ用の冷却液を貯留するリザーブタンクなどをグリルの後方に近接配備した場合には、バッテリにおける電解液の貯留量やリザーブタンクにおける冷却液の貯留量などを目視確認するためだけに、グリルを車体から取り外さなければならないことから、それらの目視確認が面倒なものになる。
【0004】
本発明の目的は、グリルに近接配備した機器に対するメンテナンス作業などを容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明では、
車体の前後一側端に、通風用のグリルを着脱可能に立設してある作業車のグリル取り付け構造において、
前記グリルの下端部と前記グリルが立設される支持部材とのいずれか一方に係合孔を形成し、かつ、他方に前記係合孔に対して係脱可能な係合突起を備え、
前記係合突起に、係合孔に内嵌されることによりグリルを所定の起立姿勢に保持する起立保持部と、前記係合孔との係合状態において前記グリルの車体前後方向への傾倒を許容する傾倒許容部と、前記グリルの傾倒姿勢での前記係合突起の前記係合孔からの抜け出しを阻止する抜止部とを備えてあることを特徴とする。
【0006】
この特徴構成によると、作業車の走行時には、係合突起の起立保持部を係合孔に内嵌してグリルを所定の起立姿勢に保持しておけば、走行時の振動によるグリルのガタツキを防止することができる。
【0007】
また、グリルに近接配備した機器に対してメンテナンス作業を行う場合には、傾倒許容部を利用して、グリルを近接機器から離れる方向に傾倒させるようにすれば、グリルと近接機器との間に、それらの上方側ほど大きく離間する隙間を形成することができ、その隙間から近接機器に対するメンテナンス作業を行うことができる。
【0008】
つまり、グリルを車体から取り外す手間を要することなく、グリルに近接配備した機器に対するメンテナンス作業を行うことができる。
【0009】
しかも、グリルを車体前後方向に傾倒させた状態では、抜止部によって係合突起の係合孔からの抜け出しが阻止されることにより、グリルを傾倒させたメンテナンス作業中などにおいて、グリルに対する不測の接触などに起因してグリルが車体から脱落する虞を防止することができる。
【0010】
従って、走行時には、グリルのガタツキに起因した異音の発生などを防止することができ、グリルに近接配備した機器に対してメンテナンス作業などを行う場合には、その作業性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1にはトラクタの全体側面が示されている。この図に示すように、トラクタの前部には、水冷式のエンジン1やラジエータ2などを備えて原動部3が形成されている。原動部3の左右外方には、エンジン1からの動力で駆動される左右一対の前輪4が配備されている。トラクタの後部には、左右の前輪4に連係されたステアリングホイール5や運転座席6などを備えて搭乗運転部7が形成されている。搭乗運転部7の左右外方には、エンジン1からの動力で駆動される左右一対の後輪8が配備されている。搭乗運転部7の下方には、主変速装置として機能する静油圧式の無段変速装置9や、内部に副変速装置として機能するギヤ式の変速装置(図示せず)などを備えたミッションケース10などが配備されている。
【0013】
ミッションケース10の後部には、ミッションケース10の内部に備えた油圧シリンダ(図示せず)の作動で昇降揺動する左右一対のリフトアーム11や、エンジン1からの動力の外部への取り出しを可能にする動力取出軸12などが装備されている。これにより、このトラクタは、その後部にロータリ耕耘装置やプラウなどの作業装置を駆動昇降可能に連結することができ、また、ロータリ耕耘装置などの駆動型の作業装置に対する動力の取り出しが可能となるように構成されている。
【0014】
図1〜7に示すように、原動部3には、エンジン1やラジエータ2などを覆うボンネット13が装備されている。ボンネット13は、エンジン1やラジエータ2などの左右外方に着脱可能に立設した左右一対のサイドカバー14、ラジエータ2などの前方に位置するようにトラクタの前端部に着脱可能に立設した通風用のグリル15、および、エンジン1やラジエータ2などの上方に開閉可能に配備した上部カバー16、などによって構成されている。
【0015】
図2〜15に示すように、左右の各サイドカバー14は、それらの後端部が、トラクタの前後中間部に立設した門形のセンターピラー17に、上下一対の第1連結手段18を介して着脱可能に連結され、それらの前下部が、エンジン1の下部から前方に向けて延設した前部フレーム19に、第2連結手段20を介して着脱可能に連結され、それらの前上部が、前部フレーム19の前部に備えた支持フレーム21に、第3連結手段22を介して着脱可能に連結されている。
【0016】
各第1連結手段18は、センターピラー17における左右の前端部にそれぞれ前向きに突設した係合ピン23、サイドカバー14の後端部に装備したL字金具24、および、係合ピン23に対して係脱可能に外嵌されるようにL字金具24の後端部に一体装備したゴム製の係合リング25によって嵌合式に構成されている。各第2連結手段20は、前部フレーム19の左右両端部にそれぞれ一体装備したゴム製の係合リング26と、係合リング26に対して係脱可能に挿通されるようにサイドカバー14の前下部から下向きに突設した係合ピン27とから嵌合式に構成されている。各第3連結手段22は、サイドカバー14の前上部から前向きに延設した係合金具28と、係合金具28の前端部に下向きに突出形成した係合突起29が係入されるように支持フレーム21の左右上端部にそれぞれ形成した係合孔30とから係合式に構成されている。
【0017】
図2〜9に示すように、支持フレーム21は、前部フレーム19の前部に載置した載置台31や、載置台31の後部に立設した門形の支持枠32などによって構成されている。載置台31にはバッテリ33が載置されている。支持枠32には、ラジエータ用の冷却液を貯留するリザーブタンク34などが支持されている。支持枠32の左右上端部に係合孔30が形成されている。
【0018】
図2〜16に示すように、グリル15は、バッテリ33やリザーブタンク34などを車体の前方側から覆う平面視略コの字状に形成された樹脂製であり、その前下端部が、載置台31に左右一対の第1係合手段35を介して着脱可能に連結され、その左右の後端部が、左右のサイドカバー14の前端部に、上下一対の第2係合手段36を介して着脱可能に連結され、その左右の上端部が、支持枠32の上部に、左右一対の第3係合手段37を介して着脱可能に連結されている。
【0019】
各第1係合手段35は、載置台31における前部の左右両端側にそれぞれ穿設した係合孔38と、係合孔38に対して係脱可能に挿通されるようにグリル15における前下端部の左右両端側にそれぞれ下向きに突出形成した係合突起39とから構成されている。各第2係合手段36は、サイドカバー14の前端部を係脱可能に挟持するようにグリル15の左右後端部にそれぞれ形成した挟持部40によって構成されている。各第3係合手段37は、グリル15の左右上端部にそれぞれ弾性変形可能に形成した係合片41と、係合片41に下向きに突出形成した係合突起42が係入されるように支持枠32の左右前上部にそれぞれ形成した係合孔43とから構成されている。
【0020】
図2〜9に示すように、上部カバー16は、その後端側を支点にした上下方向への開閉揺動操作が可能となるように、その後端部が支持枠32の上部に左右一対の連結手段44を介して連結されている。上部カバー16の前部には、上部カバー16の閉じ位置への揺動操作に連動して上部カバー16を閉じ位置に係止保持するロック機構45と、所定の手動操作に基づいてロック機構45による上部カバー16の閉じ位置での係止保持を解除する解除操作具46とが配備されている。
【0021】
各連結手段44は、センターピラー17の上部から前方に向けて延設したブラケット47に備えた左右向きの支点ピン48と、支点ピン48に相対回動可能に外嵌するように上部カバー16の後端内部に備えた外嵌金具49とから構成されている。
【0022】
ロック機構45は、支持枠32の上端部から前方に向けて突設した係止ピン50、上部カバー16の前端側内部に装備したベースプレート51、ベースプレート51の下部側に前後向きの支点ピン52を介して相対揺動可能に装備したフック金具53、および、解除操作具46を介してフック金具53を所定の係止位置に向けて復帰付勢する引っ張りバネ54によって構成されている。ベースプレート51は、その下端部に上窄まり形状の係合凹部55が形成されている。フック金具53は、その上端部が解除操作具46に連係され、その下端部が、係止ピン50との接当によって、引っ張りバネ54の付勢に抗してフック金具53を所定の係止位置から所定の係止解除位置に向けて退避揺動させるように形成されている。
【0023】
解除操作具46は、上部カバー16の前端側外部に配備した操作具56と、操作具56からベースプレート51にわたるL字状に形成された連係ロッド57とから構成されている。連係ロッド57は、その上下向きの軸部分を支点にした上部カバー16およびベースプレート51に対する相対回動が可能となるように、また、その遊端に連係されたフック金具53の揺動範囲が所定の係止位置と所定の係止解除位置との間に制限されるように、上部カバー16およびベースプレート51によって支持されている。
【0024】
以上の構成から、上部カバー16を閉じ位置に向けて揺動操作すると、その操作が進むに連れて、ベースプレート51の係合凹部55が係止ピン50に係合するとともに、フック金具53の下端部が係止ピン50に接当し、この接当により、フック金具53が引っ張りバネ54の付勢に抗して所定の係止位置から所定の係止解除位置に向けて揺動変位する。その後、上部カバー16が閉じ位置に到達すると、係合凹部55の上端部が係止ピン50に接当するとともに、フック金具53の下端部と係止ピン50との接当が解除され、引っ張りバネ54の付勢により、フック金具53が所定の係止位置に向けて復帰揺動して係止ピン50に係合する。
【0025】
つまり、上部カバー16の閉じ位置への到達に伴って、引っ張りバネ54の付勢により、ベースプレート51の係合凹部55とフック金具53との間に係止ピン50が挟持保持されることによって、上部カバー16が閉じ位置にて係止保持されるように構成されている。
【0026】
このように上部カバー16を閉じ位置に係止保持した状態において、解除操作具46の操作具56を、連係ロッド57の上下向きの軸部分を支点にして回動操作すると、その操作に連動してフック金具53が引っ張りバネ54の付勢に抗して所定の係止位置から所定の係止解除位置に向けて揺動変位する。これにより、ロック機構45による上部カバー16の閉じ位置での係止保持が解除され、上部カバー16の開き操作が許容される。
【0027】
なお、図示は省略するが、このトラクタには、上部カバー16を所定の開き姿勢で固定保持する保持機構が装備されている。
【0028】
図2、図3、図5および図7に示すように、上部カバー16の前下部には、上部カバー16の閉じ位置への揺動操作に伴って、第3連結手段22および第3係合手段37に対して上方から押圧作用し、上部カバー16の閉じ位置での係止保持に伴って、第3連結手段22を、サイドカバー14側の係合突起29を支持フレーム21側の係合孔30に係入させた連結状態に、また、第3係合手段37を、グリル15側の係合突起42を支持フレーム21側の係合孔43に係入させた連結状態に保持する押圧部58が備えられている。押圧部58は、上部カバー16に溶接した支持金具59に、左右の第3連結手段22および第3係合手段37にそれぞれ作用する4つのゴムブロック60を装備して構成されている。
【0029】
図1〜6および図8に示すように、上部カバー16の前上部にはヘッドライト61が装備されている。グリル15の下部には左右一対のサイドランプ62が配備されている。図6に示すように、各サイドランプ62は、それらのバルブ63の接続端子64に、サイドランプ用として搭乗運転部7側から延出した電線65が、電線65の延出端に装備したカプラ66を介して着脱可能に接続されている。つまり、グリル15を取り外す際には、カプラ66を操作することにより、バルブ63の接続端子64から電線65を簡単に切り離すことができるように構成されている。
【0030】
図2〜6、図8、図9および図16に示すように、各第1係合手段35において、係合孔38は平面視矩形状に形成されている。一方、係合突起39は、係合孔38に対する挿通状態では、係合孔38に対する車体左右方向への変位および傾倒が阻止される幅広の左右幅を有するように形成されている。係合突起39には、係合孔38に内嵌されることによりグリル15を所定の起立姿勢に保持する起立保持部67、係合孔38との係合状態においてグリル15の車体前後方向への傾倒を許容する傾倒許容部68、および、グリル15が車体前後方向に傾倒した姿勢での係合突起39の係合孔38からの抜け出しを阻止する抜止部69、などが形成されている。
【0031】
起立保持部67は、係合突起39の基端側において、係合孔38に対して内嵌可能な矩形状の横断面を有するように、また、その内嵌状態では係合孔38に対する車体前後方向への変位および傾倒が阻止される幅広の前後幅を有するように形成されている。傾倒許容部68は、係合突起39の突出端側において、係合孔38に対して挿通可能な矩形状の横断面を有するように、また、その挿通状態では係合孔38に対する前後方向への変位および傾倒が許容される幅狭の前後幅を有するように形成されている。抜止部69は、係合突起39の突出端において、車体後方に向けて延出するように形成され、また、その延出長さが、グリル15の起立姿勢では係合孔38に対する抜き差しが許容され、かつ、グリル15の傾倒姿勢では係合孔38に対する抜き差しが阻止される長さに設定されている。
【0032】
係合突起39において、起立保持部67と傾倒許容部68との間には、係合突起39を係合孔38に挿通する際に、起立保持部67が係合孔38の周縁に引っ掛かることを防止する傾斜案内部70が形成されている。
【0033】
以上の構成から、グリル15は、その姿勢を所定の起立姿勢に設定した状態で、その各係合突起39を載置台31の各係合孔38に挿通させるようにすると、その各係合突起39の傾倒許容部68が各係合孔38に挿通された段階で、載置台31に、左右の第1係合手段35を介して、車体前後方向への傾倒が許容された状態で支持されることになる。ただし、この傾倒許容状態では、グリル15は、その底部の後端側が載置台31に接当することにより、車体後方への傾倒が阻止されることになる。そして、この傾倒許容状態から各係合突起39の各係合孔38への挿通をさらに進めて行くと、各係合突起39の起立保持部67が各係合孔38に内嵌され、これにより、グリル15は、左右の第1係合手段35を介して、載置台31に、車体前後方向への傾倒が阻止された所定の起立姿勢で支持されることになる。また、この傾倒許容状態から傾倒阻止状態への切り換えに伴って、グリル15は、その左右の後端部が、左右のサイドカバー14の前端部に、上下の第2係合手段36を介して挟持連結され、かつ、その左右の上端部が、支持枠32の上部に、左右の第3係合手段37を介して係合連結されることになる。
【0034】
つまり、トラクタの前端部にグリル15を組み付ける場合には、保持機構により上部カバー16を所定の開き姿勢に固定保持した状態において、グリル15の姿勢を所定の起立姿勢に設定したまま、グリル15の各係合突起39を、その基端側の起立保持部67が載置台31の各係合孔38に内嵌されるまで、各係合孔38に挿通させるようにすれば、グリル15を、車体前後方向への傾倒が阻止された所定の起立姿勢で、トラクタの前端部に簡単に組み付けることができる。
【0035】
逆に、トラクタの前端部からグリル15を取り外す場合には、保持機構により上部カバー16を所定の開き姿勢に固定保持した状態において、グリル15の姿勢を所定の起立姿勢に設定したまま、グリル15を、その各係合突起39が載置台31の各係合孔38から抜け出す高さ位置まで引き上げ、その後、車体前方側に向けて引き出すようにする。すると、その操作とともに、左右の第3係合手段37によるグリル15の左右上端部と支持枠32の上部との係合連結が解除され、また、各第2係合手段36によるグリル15の左右後端部と左右のサイドカバー14の前端部との挟持連結が解除されることになる。その結果、グリル15をトラクタの前端部から簡単に取り外すことができる。
【0036】
なお、グリル15をトラクタの前端部から取り外す場合には、前もって、グリル15に備えた左右のサイドランプ62の各バルブ63から、それらの接続端子64に接続したカプラ66を切り離しておく必要がある。
【0037】
一方、前述した組み付け状態において、グリル15の姿勢を所定の起立姿勢から車体前方に傾倒させた傾倒姿勢に切り換える場合には、保持機構により上部カバー16を所定の開き姿勢に固定保持した後に、載置台31によるグリル15の支持状態が、傾倒阻止状態から傾倒許容状態に切り換わるように、グリル15を、その姿勢を所定の起立姿勢に設定したまま、各係合突起39における起立保持部67の各係合孔38に対する内嵌が解除され、かつ、各係合突起39の傾倒許容部68が各係合孔38に挿通する状態となる高さ位置まで少し引き上げる。また、その引き上げとともに、左右の第3係合手段37におけるグリル15側の係合突起42と支持枠32側の各係合孔43との係合が解除されるように、各第3係合手段37の係合片41を上方に向けて弾性変形させて、左右の第3係合手段37によるグリル15の左右上端部と支持枠32の上部との連結を解除する。その後、各第2係合手段36によるグリル15の左右後端部と左右のサイドカバー14の前端部との連結が解除されるように、グリル15を、左右の第1係合手段35を支点して車体前方に向けて傾倒させる。
【0038】
これにより、グリル15を、左右のサイドカバー14および支持枠32に連結される所定の起立姿勢から、その上方側ほど左右のサイドカバー14および支持枠32から車体前方側に大きく離間させる傾倒姿勢に簡単に切り換えることができる。そして、グリル15を傾倒姿勢に切り換えた状態では、グリル15とバッテリ33およびリザーブタンク34との間に、それらの上方側ほど大きく離間する隙間が形成されることになる。
【0039】
その結果、バッテリ33における電解液の貯留量やリザーブタンク34における冷却液の貯留量を確認するなどのメンテナンス作業を行う場合には、上記の操作に基づいてグリル15を所定の起立姿勢から傾倒姿勢に切り換えることにより、グリル15をトラクタの前端部から取り外す場合よりもより簡単な操作で、かつ、グリル15をトラクタの前端部から取り外す際に、左右のサイドランプ62に対する電線65の切り離しを忘れることに起因した断線などを招くことなく、グリル15とバッテリ33およびリザーブタンク34との間に形成される隙間から、バッテリ33における電解液の貯留量やリザーブタンク34における冷却液の貯留量を容易に目視確認することができる。
【0040】
また、グリル15を傾倒姿勢に切り換えた状態では、左右のサイドカバー14からグリル15および上部カバー16が離間することになる。これにより、左右の各サイドカバー14の前下部に備えた係合ピン27を、前部フレーム19の左右両端部に備えた係合リング26に対して抜き差しし、かつ、左右の各サイドカバー14の前上部に備えた係合突起29を、支持フレーム21の左右上端部に備えた係合孔30に対して抜き差しする上下方向に、各サイドカバー14の前部側を変位させることができ、また、左右の各サイドカバー14の後端部に備えた上下の係合リング25に、センターピラー17の左右前端部に備えた係合ピン23を抜き差しさせる前後方向に、各サイドカバー14の全体を変位させることができ、トラクタに対して左右のサイドカバー14を簡単に着脱することができる。
【0041】
その結果、エンジン1やエンジン1の周囲に配備されたラジエータ2などの周辺機器に対するメンテナンス作業を行う場合には、上記の操作に基づいてグリル15を所定の起立姿勢から傾倒姿勢に切り換えることにより、グリル15をトラクタの前端部から取り外す場合よりもより簡単な操作で、かつ、グリル15をトラクタの前端部から取り外す際に、左右のサイドランプ62に対する電線65の切り離しを忘れることに起因した断線などを招くことなく、左右のサイドカバー14を簡単に取り外すことができるようになり、これにより、エンジン1の横側方を大きく開放することができ、エンジン1やその周辺機器に対するメンテナンス作業が行い易くなる。
【0042】
しかも、グリル15を傾倒姿勢に切り換えた状態では、グリル15に備えた各係合突起39の抜止部69によって、グリル15の載置台31からの抜け出しが阻止されることになり、これにより、グリル15を傾倒姿勢に切り換えた状態でのメンテナンス作業やサイドカバー14の着脱などにおいて、グリル15が載置台31から不測に脱落する虞を防止することができ、その脱落に起因して、左右のサイドランプ62に対する電線65が切断されるなどの不都合が生じる虞を回避することができる。
【0043】
なお、上記の構成においては、載置台31が、グリル15が立設される支持部材として機能することになる。
【0044】
〔別実施形態〕
【0045】
〔1〕本発明を、トラクタ以外の例えば草刈機や田植機などの作業車に適用するようにしてもよい。
【0046】
〔2〕上記の実施形態では、車体の前端部にグリル15を配備したものを例示したが、車体の後端部にグリル15を配備するようにしてもよい。
【0047】
〔3〕上記の実施形態では、載置台31を、グリル15が立設される支持部材として機能させたものを例示したが、載置台31以外の例えば前部フレーム19などを支持部材として機能させるようにしてもよい。
【0048】
〔4〕上記の実施形態では、グリル15の下端部に左右一対の係合突起39を備え、かつ、支持部材31に左右一対の係合孔38を形成したものを例示したが、グリル15の下端部に左右一対の係合孔38を形成し、かつ、支持部材31に左右一対の係合突起39を備えるようにしてもよい。また、グリル15または支持部材31に、単一あるいは3つ以上の係合孔38および係合突起39を備えるようにしてもよい。
【0049】
〔5〕係合突起39の形状としては、起立保持部67、傾倒許容部68および抜止部69を備える形状であれば種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】原動部の縦断側面図
【図3】グリルの傾倒状態を示す原動部の縦断側面図
【図4】サイドカバーを取り外した状態を示す原動部の縦断側面図
【図5】グリルの起立状態を示す要部の縦断側面図
【図6】グリルの傾倒状態を示す要部の縦断側面図
【図7】原動部の縦断正面図
【図8】グリルと載置台および支持枠との連結構造を示す要部の正面図
【図9】グリルの支持構造を示す要部の斜視図
【図10】サイドカバーとセンターピラーとの連結構造を示す要部の縦断側面図
【図11】サイドカバーとセンターピラーとの連結構造を示す要部の横断平面図
【図12】サイドカバーと前部フレームとの連結構造を示す要部の縦断側面図
【図13】グリルおよびサイドカバーの支持枠との連結構造を示す要部の縦断正面図
【図14】グリルと支持枠とサイドカバーとの連結構造を示す要部の横断平面図
【図15】グリルおよびサイドカバーの支持枠との連結構造を示す
【図16】グリルの係合突起と載置台の係合孔との係合構造を示す要部の正面図
【符号の説明】
【0051】
15 グリル
31 支持部材
38 係合孔
39 係合突起
68 傾倒許容部
69 抜止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後一側端に、通風用のグリルを着脱可能に立設してある作業車のグリル取り付け構造であって、
前記グリルの下端部と前記グリルが立設される支持部材とのいずれか一方に係合孔を形成し、かつ、他方に前記係合孔に対して係脱可能な係合突起を備え、
前記係合突起に、係合孔に内嵌されることによりグリルを所定の起立姿勢に保持する起立保持部と、前記係合孔との係合状態において前記グリルの車体前後方向への傾倒を許容する傾倒許容部と、前記グリルの傾倒姿勢での前記係合突起の前記係合孔からの抜け出しを阻止する抜止部とを備えてあることを特徴とする作業車のグリル取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−284910(P2008−284910A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129482(P2007−129482)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】