説明

作業車両のフレーム構造

【課題】作業車両のフレーム製造には高い剛性を必要とすることから、コスト多く必要となる。そこで、容易な構成により作業車両フレームの剛性を向上させるとともに、製造にかかるコストを低減することを課題とする。
【解決手段】作業車両1のフレーム9の構造において、作業車両フレーム9の側部を舟形に構成するとともに、正面視において該フレーム9下部幅を上下方向の中央部よりも狭く構成し、フロントローダ2を支持するマスト板63とフロントアクスル取付け板部75までを一体として、作業車両フレーム9の側部を構成するサイドフレーム62と、マスト板63とを、側面視において横T字状に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のフレーム構造の技術に関し、より詳しくは軽量かつ高剛性の作業車両フレームを容易かつ安価に構成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両のフレームとしては、角パイプやI字型鋼を組み合わせたものが知られている。(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2004−1769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
主に角パイプやI字鋼を用いたフレームは、加工が困難であり、組み立てに多くの労力を必要とする。また、製造に高いコストが必要となる。そこで、容易な構成により作業車両フレームの剛性を向上させるとともに、製造にかかるコストを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するべく、次のような手段をとる。
請求項1に記載のごとく、作業車両のフレーム構造において、作業車両フレームの側部を舟形に構成するとともに、正面視において該フレーム下部幅を上下方向の中央部よりも狭く構成する。
【0005】
請求項2に記載のごとく、作業車両のフレーム構造において、フロントローダを支持するマスト板とフロントアクスル取付け板部までを一体として、作業車両フレームの側部を構成するサイドフレームと、マスト板とを、側面視において横T字状に接続する。
【0006】
請求項3に記載のごとく、上記マスト板とサイドフレームとを接続部において重ねて溶接することにより固定する。
【0007】
請求項4に記載のごとく、マスト板とサイドフレームとの接続方法において、マスト板とサイドフレームとが重なる部位に孔を設け、プラグ溶接を行う。
【0008】
請求項5に記載のごとく、作業車両のフレーム構造において、フロントアーム用のマストの背面に仕切り板を設け、内部に作業機用の配管を通す。
【0009】
請求項6に記載のごとく、作業車両のフレーム構造において、フレームの外側に張り出したマスト部の底面にフレームと接続する板体を設けて、作業車両に装着されるタンクを吊設する。
【0010】
請求項7に記載のごとく、作業車両のフレーム構造において、フロントアクスル取付け板上部に前後方向に延出される2本の板体を設け、フロントフレームもしくはサイドフレームの側板と、コの字状に取付けられた作業車両フレームの前面の板に取付け、箱形状を構成する。
【0011】
請求項8に記載のごとく、上記2本の板はフロントアクスルのオシレートストッパを兼ねる。
【0012】
請求項9に記載のごとく、作業車両のフレーム構造において、フレームの前端を接続する正面板にタイダウン用の孔を設ける。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の作業車両のフレーム構造とするので、作業車両のフレームの剛性を確保しながら、操向輪との干渉を避けることが出来る。
【0014】
請求項2に記載の作業車両のフレーム構造とするので、フレーム構成部材を減少でき、サイドフレームとマスト板との接触面積を大きく取り、接続部の剛性を向上できる。
【0015】
請求項3に記載の作業車両のフレーム構造とするので、必要な個所に効果的に補強を行える。
【0016】
請求項4に記載の作業車両のフレーム構造とするので、強度を落とすことなく、シャーシの内側への配管などを通すことが出来る。
【0017】
請求項5に記載の作業車両のフレーム構造とするので、容易な構成で、省スペース化を行いながら、配管の保護が可能となる。
【0018】
請求項6に記載の作業車両のフレーム構造とするので、大容量のタンクを設置可能となる。
【0019】
請求項7に記載の作業車両のフレーム構造とするので、シャシ前部の剛性を向上し、マストに接続されるローダなどが受ける荷重を前輪に伝えやすくなる。
【0020】
請求項8に記載の作業車両のフレーム構造とするので、部品点数の削減を行える。
【0021】
請求項9に記載の作業車両のフレーム構造とするので、低コストで、強固に作業車両を固定可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、屈曲させた板体を組み合わせることにより、作業車両のフレームを構成する。
【実施例1】
【0023】
[全体構成]
本発明の実施の一形態である作業車について説明する。
図1は作業車の全体側面図。
図1に示す作業車両1はトラクターローダーバックホーであり、ローダー2および掘削装置3が装着されている。作業車両1の中央には操縦部4が設けられており、操縦部4の前方にローダー2が、後方に掘削装置3が配設されている。そして、作業車両1には、前輪8・8および後輪7・7が装着されており、ローダー2および掘削装置3を装着した状態で走行可能に構成されている。
操縦部4には、ステアリングハンドル5および操縦席6が配設されており、座席6の側方には走行操作装置およびローダー2の操作装置が配設されている。これにより、操縦部4において、作業車両1の操向操作およびローダー2の操作を可能としている。
積み込み装置であるローダー2は、作業車両1の側部に接続して前方に延出されており、先端にバケットが装着されている。作業車両1のシャーシであるフレーム9の前部にはエンジンが配設されており、フレーム9上に配設したボンネット30がこれを覆っている。ローダー2はボンネット30の外側に配設されている。
掘削装置3は作業車両1の後部に着脱自在に装着され、掘削装置3の操作は操縦席6の後方に配設された操作装置により行われる。
操縦部4の側方には、作動油タンク90が配設されており、作動油タンク90は操縦部4のへの乗降時の階段を兼ねるものであり、操縦部4の反対側には、燃料タンクにより構成される階段が設けられている。
【0024】
[フレーム構成]
次に、作業車両のフレーム構成について説明する。
図2は作業車両のフレームを示す平面図。
図3は同じく側面図。
図4は同じく正面図。
図5は作業車両フレームの上斜め前方よりの斜視図。
図6は作業車両フレームの下斜め後方よりの斜視図。
作業車両のフレーム9は、主に、前後方向に左右平行に配設されたサイドフレーム62・62と、サイドフレーム62の前部に接続するフロントフレーム63・63、フロントフレーム63・63の前部を接続するフロントプレート61とにより構成されている。そして、フロントフレーム63の外側面には、マスト部64が構成され、フロントフレーム63・63間はリブ65により接続されている。
サイドフレーム62・62間には接続部材である中間仕切り74が配設され、フレーム9をラダー構造としている。中間仕切り74は、サイドフレーム62・62間において、エンジン配設部とトランスミッション配設部とを仕切るクロスメンバ部材であり、フレーム9の略中央部に配設されている。
そして、サイドフレーム62には、外側方に向けてビーム62bが延出されている。ビーム62bは左右方向に延出されており、サイドフレーム62に対してほぼ直角に構成されている。ビーム62bは断面形状がC字状に構成されており、操縦部4の床部を支持する。
【0025】
フロントフレーム63はフレーム9の前下部から後斜め上方に向けて延出されている。そして、サイドフレーム62との接続部より上方に延出されており、上方に延出された部分にマスト部64が取付けられている。フロントフレーム63・63間にはエンジンが配設され、ボンネット30が配設される。そして、マスト部64にはローダー2の昇降機構が接続され、このマスト部64によりローダー2を支持する。
マスト部64の下部であるマスト下部64bは側方に突出した部材により構成されている。マスト下部64bは側面形状が略L字を寝かせた形状の部材により構成されており、マスト部64にかかる上下方向の力を受ける構成となっている。マスト下部64bは、作業車両のシャーシであるフレーム9において、外側に張り出し、マスト底面とフレーム側面とをつなぐ。すなわち、マスト部64の底面に接続し、フロントフレーム63の外側面に接続している。
作業車両1において、マスト下部64bおよびビーム62bにより、燃料タンクおよび作動油タンク90が吊り下げ状態で取付けられる。燃料タンクおよび作動油タンク90は、それぞれ、作業車両の側部において同一側に配設されたマスト下部64bおよびビーム62bの側部に接続して支持される。これにより、燃料タンクおよび作動油タンク90の支持構造を簡便にでき部品点数を低減できる。そして、タンク上部の接続部が同一であれば、容量の異なるタンクでも容易に取付けることが出来る。さらに、剛性の高いフレームを利用して支持することができる。また、ローダー2の昇降機構が接続するマストの底部を構成するマスト下部64bの底面にタンクを取付けるので、マストにより突出した部位の下方を有効に利用することができ、作業車両をコンパクトに構成できる。
【0026】
フロントプレート61はフロントフレーム63・63の前部を接続し、作業車両のシャーシであるフレーム9の前面を構成する。フロントプレート61の左右の下部には、タイダウン用の孔61b・61bが設けられている。タイダウン用の孔61bは、作業車両1を搬送する場合に、固定用のローブなどを取付ける孔である。この孔61bをフロントプレート61の左右に孔を設けることにより構成するので、耐久性の高いダイダウン用の孔を構成できる。そして、タイダウン用の孔61bが前後方向に向けて開けられており、孔にかけたロープにねじれなどが生じにくい。そしてフロントプレート61に他の部材を溶接することなくタイダウン用の孔を設けるので、フロントプレート61において突起物を構成することがなく、作業車両の前面の美観が向上する。
そして、フロントプレート63の中央上部には切欠き部が構成されており、ボンネット30の保持機構の組み付け作業を容易にしている。
そして、フロントプレート63の側部は、フロントフレーム63の側面形状に沿って構成されており、正面視において下方に向かうほど左右の幅が狭くなるように構成されている。
【0027】
[前部の補強]
次に、フレームの構成についてより詳しく説明する。
図7はフロントフレームとサイドフレームの接続構成を示す側面一部断面図。
図8は作業車両フロント部分の構成を示す斜視一部断面図。
図9はフレーム左側前部の構成を示す斜視図。
図10はフレーム前下部の構成を示す斜視図。
図11は同じく底面図。
作業車両1のシャーシであるフレーム9は主に平板および曲がった板体を接合することにより構成されている。そして、フレーム9の各所に補強を行うことにより、作業車両のフレームを容易にかつ製造にかかるコストの低減を図っている。曲がった板部材は曲げ加工などにより容易に構成可能であり、フレームにI字鋼などを使う場合に比べて、作業車両の製造コストを低減でき、加工も容易となる。
フレーム9は下部が舟形に構成されており、正面視において下部がだんだん狭くなる構成となっている。すなわち、フレーム9の下部の両側面がそれぞれ内側に傾斜した構成となっている。このように、フレーム9を構成することにより、前輪8近傍の空間を十分に確保することができ、前輪8の操舵角を大きくとることができる。
フレーム9においては、サイドフレーム62の下部が内側に曲がった形状に構成されており、上下端部は内側水平方向に曲がっている。サイドフレーム62を内側に曲げることにより、サイドフレーム62の正面方向における有効断面積を増大させ、サイドフレーム62の剛性を向上できる。これにより、フレームの剛性を向上させながら、操向輪とフレームとの干渉を避けることが出来る。
【0028】
フロントフレーム63も下部において、サイドフレーム62と同様に内側に曲がった形状となっている。フロントフレーム63は内側面をサイドフレーム62の外側面に接合しており、フレーム9の前部を構成する。フロントフレーム63は後上部にマスト部64を接続し、前下部にフロントアクスルの左右方向に配設される取付け板75・76(図10、図11)を接続している。取付け板75の上面には、板体77・77が接続しており、板体77・77は前後に、平行に配設されている。板体77の上面にはサイドフレーム62が接続し、下面には取付け板75が接続し、前面にはフロントプレート61が接続する。板体77・77はフロントフレーム63・63間に配設されている。
取付け板75は、板体77、フロントフレーム63にそれぞれ接続されており、板体76はフロントプレート61、フロントフレーム63に接続されている。これにより、フロントアクスル取付け部であるフレーム9の前下部の剛性が向上する。フレーム9の前下部において、板体77・77と取付け板75・76とを「井」字状に組み付け、フロントプレート61、フロントフレーム63・63、サイドフレーム62・62に接続し、箱形状の部位を構成するので、簡便な構成でフレーム前部の剛性を向上できる。
フロントアクスルを取付ける取付け板75・76は、フロントアクスルのオシレートストッパ(左右揺動ストッパ)を兼ねるものであり、フロントアクスルの揺動量を当接により規制するものである。これにより、フロントアクスル周りの部材点数を減少できる。
【0029】
フロントフレーム63は上部においてローダー2を支持するマストの一部を構成するとともに、下部においてフロントアクスルを支持する部材の一部を構成している。このように、マスト支持部材とフロントアクスル支持部材とをフロントフレーム63により一体的に構成することにより、負荷がかかった場合の応力を分散してフレームの耐荷重性能を向上できる。
フロントフレーム63によりマスト部64とフロントアクスルとが一体の部材により接続されるので、マスト部64の受けた荷重をフロントアクスルに直接伝達することができ、作業車両のフレームにひずみを与えにくい構成にできる。
【0030】
フロントフレーム63とサイドフレーム62とは、図7に示すように、交差した状態で接合される。フロントフレーム63とサイドフレーム62とは横T字状もしくは横「イ」字状に両者の板面を合わせて接続するものであり、フロントフレーム63の内側にサイドフレーム62が装着される。両板体の一方、本実施れいではサイドフレーム62の両者が重なる略中央部に開口部62c・62dが設けられており、開口部62c・62dの内周縁においてフロントフレーム63と溶接を行う。すなわち、フロントフレーム63とサイドフレーム62とは重ねた状態でプラグ溶接される。これにより、フロントフレーム63とサイドフレーム62とを容易に接続するとともに、接合による横幅の増大を回避できる。
【0031】
フロントフレーム63とサイドフレーム62との接合部は、プラグ溶接を利用するので、プラグ溶接に利用した開口部を配管経路としても利用することができる。図8に示すように、サイレンサ12に接続する尾管12bが開口部63cをとおりフレーム外に延出されている。図9に示すように、サイドフレーム62の開口部62cとフロントフレーム63の開口部63cとが一致しており、フレームの内側と外側とを連通する孔が構成される。作業車両1の前部において、フレーム9上にボンネット30が配設されている。ボンネット30は樹脂で中空構造となっている。ボンネット30はフレーム9上に配設されるエンジンを被装する。ボンネット30内には、エンジンとともに、ラジエータ、マフラー12、エアクリナ34などのエンジンの付属機器も配設されている。ボンネット30はフレーム9に対して開閉自在に構成されており、ボンネット30の前部を上方に回動することにより開く構成となっている。ボンネット30とフレーム9間にはリブ65に装着されたシール33・32が配設される。そして、作業車両1の前部には、カバー36が配設され、フロントプレート61の切欠き部を覆う構成となっている。
機体左側のフロントフレーム63には開口部63cが設けられており、開口部63cの位置はサイドフレーム62の開口部62cに一致しており、開口部63cと開口部62cとの縁部においてプラグ溶接が行われ、サイドフレーム62とフロントフレーム63とが接続される。開口部63cには、作業車両のマフラー12に接続する尾管12bが通されており、ボンネット30外にエンジンの排気を行う構成となっている。フレームのプラグ溶接部の空間を利用して、配管経路に用いるので、フレーム9への影響を与えることなく配管用の空間を確保することができる。
【0032】
[中央部および後部の補強]
次に、機体中央部におけるフレームの補強構成について説明する。
図12はサイドフレームの構成を示す側面図。
図13は図12におけるB−B線断面図。
図14はフレーム後部の構成を示す斜視図。
サイドフレーム62は正面視において、縦長のC字形状に構成されている。サイドフレーム62には補強材が装着されており、上部にパイプ66が、後部に後部補強部材68が、後下部には側面視三角形状の補強材67が取付けられている。そして、サイドフレーム62の中央下面にはサイドフレーム62の延出方向に沿って、下部補強部材69が取付けられている。
サイドフレーム62の上部には、パイプ66が取付けられている。パイプ66は断面視四角形状に構成されており、エンジン配置部からトランスミッション取付け部に渡り構成されている。パイプ66はサイドフレーム62の上部の折り返し部内側面に溶接等により取付けられており、サイドフレーム62の上部前端から後部補強部材68までサイドフレーム62に装着されている。そして、サイドフレーム62の中央部に配設される中間仕切り74を貫通した状態で配設される。これにより、作業車両のシャーシフレームにおいて大きな応力がかかる部位を効果的に補強できる。角パイプを用いて補強を行うので、長い範囲にわたる取付けも容易に行うことができる。
【0033】
サイドフレーム62の後部には後部補強部材68が装着されており、後部補強部材68の下方においてリアアクスルが固定される。そして、サイドフレーム62において、後部補強部材68を配設する部位には開口部が設けらており、サイドフレーム62の外側よりリアアクスルの取付け作業が可能となっている。
そして、後部補強部材68と中間仕切り板74との間には補強材67が装着されており、補強材67は後部補強部材68と中間仕切り板74とに接続している。補強材67は断面形状が逆L字形状に構成されている。補強材67はサイドフレーム62の下部折り曲げ部および内側面に接続しており、開口側をサイドフレーム62に向けて装着されている。そして、補強材67装着部において、サイドフレーム62とにより断面形状が四角の部位が構成される。これにより、サイドフレーム62の駆動力の反動や、ヒッチにかかる荷重を受ける部位の剛性を向上できる。そして、作業車両のシャーシフレームにおいて大きな応力がかかる部位を効果的に補強できる。
【0034】
下部補強部材69は正面視において逆L字形状に構成されており、下方への延出部が機体内側(サイドフレーム62の開口側)に位置している。下部補強部材69は作業車両においてエンジン配置部からトランスミッション取付け部に渡り配設される。サイドフレーム62の下面に下部補強部材69を取付けることにより、作業車両のシャーシフレームにおいて大きな応力がかかる部位を効果的に補強でき、組み立て容易な構成であって、剛性の高いフレームを効率的に構成できる。
【0035】
[トランスミッション取付け構成]
次に、作業車両のフレーム9へのトランスミッションの取付け構成について説明する。
図15はトランスミッションのフレームへの取付け構成を示す模式図。
図16はリアアクスルの取付け構成を示す模式図。
トランスミッション10は、サイドフレーム62の後部に固設された後延出部72のステー73を介して取付けられている。トランスミッション10はリアアクスル以外に、側部フレーム62から延出された正面視L字形状のステー73によりトランスミッション10の下面もしくは側面を固定される。図15に示す実施例においては、ステー73の下端がトランスミッション10の下面に接続している。ステー73を介してトランスミッション10をサイドフレーム62に固定するので、装着可能なトランスミッションのバリエーションを広げることが出来、車両フレームに汎用性を持たせることが出来る。そして、ステー73がトランスミッション10より受ける力の一部を変形などにより吸収することができる。また、トランスミッション10より過剰な負荷がかかる場合においても、ステー73が塑性変形してサイドフレーム62が保護される。
【0036】
図16に示すトランスミッション10は、平面視においてリアアクスルケースを含める駆動力の伝導経路が門形に構成されている。後輪7の車軸に接続されるリアアクスルケース11の前部に左右方向に配設される伝導ケース10bの外側端が接続され、伝導ケース10bの内側端がトランスミッション10に接続している。これが左右対称に構成されており、平面視において門形を形成している。そして、リアアクスルケース11が変速機構のファイナルとり、このリアアクスルケース11にステー71を介してサイドフレーム62が接続する。ステー71の上端はサイドフレーム62の外側面に固定されており、下端はリアアクスルケース11の後部に固定される。このようにリアアクスルケース11を支持することにより、ステー71がリアアクスルケース11より受ける力の一部を変形などにより吸収することができる。また、リアアクスルケース11より過剰な負荷がかかる場合においても、ステー71が塑性変形してサイドフレーム62が保護される。そして、リアアクスルケース11の支持剛性をステー71として選択する部材の特性により変更することができる。
【0037】
[マスト部の配管]
次に、マスト部64の構成について説明する。
図17はマスト部64の内部構成を示す側面一部断面図。
マスト部64は平面視L字形状に構成されており、フロントフレーム63の外側面に接続するとともに、マスト下部64bの上面に接続している。そして、マスト部64とフロントフレーム63との間に仕切り板64fが配設されている。仕切り板64fはマスト部64の内側において、マスト部64との間に空間を構成しており、マスト部64の剛性を向上させる構成となっている。そして、この空間を利用して配管79を配設する。
マスト部64の内側面とフロントフレーム63の外側面とにはそれぞれ対応する位置にボス80・80・80が配設されており、ローダー2の昇降装置を両持ちにより支持する構成となっている。仕切り板64fはボス80・・に沿って取付けられており、ボス80の支持剛性向上に寄与する構成となっている。仕切り板64fの上部には開口部64gが構成されており、マスト下部64bの上面には開口部64hが構成されている。仕切り板64fとマスト部64とで囲まれる空間を通る配管は、開口部64gおよび開口部64gから取り出されている。両持ちのマスト構造の間に仕切り板64fを設け、下面から配管をいれてマスト仕切り板64fの裏側面に配管を通し、仕切り板64f正面に開口部64gを設け、配管79を通すので、配管79の保護およびマスト部64近傍の空間を有効に利用でき、作業車両をコンパクトに構成できる。
【0038】
[ボスの補強]
次に、ボス80の補強構成について説明する。
図18はボスの補強構成を示す図。図18(a)はボスの補強構成を示す斜視図、図18(b)はボスの補強構成を示す正面図。
ボス80はなだらかな山形状となっており、すそ部において左右のボス80・80を補強部材81により接続する。補強部材81はボス80の下側部分に接続するものであり、正面視において略U字状に構成されている。ボス80と補強部材81とは溶接により接続されるものであり、ボス80・80と補強部材91とが一体的に構成されている。また、ボス80を、補強部材81を接続した形状で、予め一体的に構成することも可能である。補強部材81はマスト部64の仕切り板64fの前面に取付けられ、左右のボス80・80にも接続する構成となっている。補強部材81は、中央のボス80・80以外に上下に配設したボス80に取付けることも可能である。
このように、ボス80に補強部材を接続することにより、容易にボス80およびマスト部64の補強を行うことができる。
【0039】
[タンク取付け構成]
次に、作業車両に配設されるタンクの構成について説明する。
図19はタンクの取付け構成を示す斜視図。
図20は同じく側面図。
作業車両1の操縦部4の側方には、作動油タンク90と燃料タンク91とが配設されている。作動油タンク90と燃料タンク91とは、フレーム9の側方において、フレーム9より側方に突出した部材に吊設される。本実施例においては、側方に突出した部材として、マスト下部64bとビーム62bとを用いるものであり、これらの下面に作動油タンク90、燃料タンク91が装着される。
マスト下部64bとビーム62bとは、ともにフレーム9を構成するサイドフレーム62より側方に突出した構成となっている。マスト下部64bはサイドフレーム62およびマスト部64に接続しており、マスト部64の剛性向上に寄与している。
作動油タンク90および燃料タンク91の上面には、螺孔を有する接続部96・96が設けられており、タンクの接続部に、マスト下部64bの底面およびビーム62bの底面を介して、ボルトを螺装することにより、タンクがマスト下部64bの底面およびビーム62bの底面に締結される構成となっている。接続部96は作動油タンク90および燃料タンク91の上面において左右方向に配設されており、一つの接続部に対して複数のボルトを螺装する構成となっている。接続部96がタンク上面において左右方向に配設されるので、タンクの外側端部に力がかかる場合においても、高い剛性を示すと共に、操縦者の乗降に対しても耐久性を維持できる。
本実施例では、作業車両のフレーム9の右側部に作動油タンク90が、左側部に燃料タンク91がそれぞれ配設されている。作動油タンク90と燃料タンク91とは、正面視階段状(L字状)に構成されており、下部が上部よりも側方(機体外側)に突出した形状となっている。これにより、高さが低くても十分なタンク容量を確保することができ、操縦部4の近傍において燃料タンク91および作動油タンク90をコンパクトに構成できる。
そして、操縦部4への乗降においてタンクの階段面をステップとして利用できる。また、作動油タンク90と燃料タンク91との角部には、それぞれ滑り止め94が装着され、乗降時の安定性を確保している。
【0040】
燃料タンク91には、注入口93が斜め外側上方に向けて凸設されており、注入口93は燃料タンク91の上部91aと下部92bとの間に設けられている。そして、燃料タンク91外側部の直角に形成した部位に配設されている。燃料タンク91の上面にはバッテリ98が配設されている。バッテリ98はマスト下部64bとビーム62bとの間に配設されている。
このように、作動油タンク90および燃料タンク91を配設するので、操縦部4への乗降時において、作動油タンク90および燃料タンク91を乗降用の階段として利用することができる。また、乗降時に作動油タンク90もしくは燃料タンク91を踏んで乗降するので、踏みつけた時の音により、作動油もしくは燃料量の変化を聴覚により認識することができる。そして、フレーム9の隙間を利用して、バッテリ98を配設することができ、フレーム9側方の空間を有効に利用することができる。
なお、燃料タンク91上に配設されるバッテリ98は作業車両1に装着されるカバーにより被装され、雨水や土砂より保護される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】作業車の全体側面図。
【図2】作業車両のフレームを示す平面図。
【図3】同じく側面図。
【図4】同じく正面図。
【図5】作業車両フレームの上斜め前方よりの斜視図。
【図6】作業車両フレームの下斜め後方よりの斜視図。
【図7】フロントフレームとサイドフレームの接続構成を示す側面一部断面図。
【図8】作業車両フロント部分の構成を示す斜視一部断面図。
【図9】フレーム左側前部の構成を示す斜視図。
【図10】フレーム前下部の構成を示す斜視図。
【図11】同じく底面図。
【図12】サイドフレームの構成を示す側面図。
【図13】図12におけるB−B線断面図。
【図14】フレーム後部の構成を示す斜視図。
【図15】トランスミッションのフレームへの取付け構成を示す模式図。
【図16】リアアクスルの取付け構成を示す模式図。
【図17】マスト部64の内部構成を示す側面一部断面図。
【図18】ボスの補強構成を示す図。
【図19】タンクの取付け構成を示す斜視図。
【図20】同じく側面図。
【符号の説明】
【0042】
62 サイドフレーム
62b ビーム
63 フロントフレーム
64 マスト部
64b マスト下部
66 パイプ
67 補強部材
68 後部補強材
69 下部補強材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両のフレーム構造において、作業車両フレームの側部を舟形に構成するとともに、正面視において該フレーム下部幅を上下方向の中央部よりも狭く構成することを特徴とする作業車両のフレーム構造。
【請求項2】
作業車両のフレーム構造において、フロントローダを支持するマスト板とフロントアクスル取付け板部までを一体として、作業車両フレームの側部を構成するサイドフレームと、マスト板とを、側面視において横T字状に接続することを特徴とする作業車両のフレーム構造。
【請求項3】
上記マスト板とサイドフレームとを接続部において重ねて溶接することにより固定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両のフレーム。
【請求項4】
マスト板とサイドフレームとの接続方法において、マスト板とサイドフレームとが重なる部位に孔を設け、プラグ溶接を行うことを特徴とする請求項3に記載の作業車両のフレーム。
【請求項5】
作業車両のフレーム構造において、フロントアーム用のマストの背面に仕切り板を設け、内部に作業機用の配管を通すことを特徴とする作業車両のフレーム。
【請求項6】
作業車両のフレーム構造において、フレームの外側に張り出したマスト部の底面にフレームと接続する板体を設けて、作業車両に装着されるタンクを吊設することを特徴とする作業車両のフレーム構造。
【請求項7】
作業車両のフレーム構造において、フロントアクスル取付け板上部に前後方向に延出される2本の板体を設け、フロントフレームもしくはサイドフレームの側板と、コの字状に取付けられた作業車両フレームの前面の板に取付け、箱形状を構成することを特徴とする作業車両のフレーム。
【請求項8】
上記2本の板はフロントアクスルのオシレートストッパを兼ねることを特徴とする請求項7に記載の作業車両のフレーム。
【請求項9】
作業車両のフレーム構造において、フレームの前端を接続する正面板にタイダウン用の孔を設けることを特徴とする作業車両のフレーム構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−248497(P2006−248497A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72108(P2005−72108)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】