説明

作業車両の油圧回路

【課題】制御を簡易にして、製造コストを増大させることなく、エンジンストールの発生を抑制することができる作業車両の油圧回路を提供する。
【解決手段】ロードセンシングシステムを具備する作業車両1の油圧回路であって、第一油圧ポンプ47、複数の作業用油圧アクチュエータ、及び第一油圧ポンプ47の斜板角度R1を変更して第一油圧ポンプ47の吐出量を調節する流量調節手段である第一流量調節手段50、を備える第一油圧ユニット40と、エンジン9の実回転数Nを検出する回転数検出手段81と、エンジン9のアクセル開度Snを検出するアクセル開度検出手段82と、アクセル開度Snからエンジン9の目標回転数Nsを設定し、実回転数Nが目標回転数Nsよりも低い場合、実回転数Nと目標回転数Nsとが一致するように第一流量調節手段50によって第一油圧ポンプ47の斜板角度R1を制御する制御手段83と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の油圧回路の技術に関し、より詳細には、可変容量型の油圧ポンプ及び作業用油圧アクチュエータを具備する作業車両の油圧回路の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンによって駆動され、作動油を複数の作業用油圧アクチュエータにそれぞれ方向切換弁を介して供給する可変容量型の油圧ポンプの吐出量を、前記複数の作業用油圧アクチュエータにかかる負荷圧力のうちの最大負荷圧力に基づいて制御するロードセンシングシステムを具備する作業車両の油圧回路において、流量調節装置によって油圧ポンプの吐出量を制御する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の作業車両の油圧回路は、エンジンの負荷率と負荷率設定ダイヤルによって設定された設定負荷率との差、及びエンジン回転数とエンジンのアクセルレバーによって設定された設定回転数(目標回転数)との差に基づいて、エンジン回転数が設定回転数と一致するように、油圧ポンプの吐出量を流量調節装置によって制御する。
油圧ポンプの吐出量は、駆動させる作業用油圧アクチュエータ数の増加や、作業用油圧アクチュエータにかかる負荷圧力の上昇等によって増加する。これにより、油圧ポンプからエンジンに加わる負荷が増加して、負荷率が増加し、エンジン回転数が低くなる。エンジン負荷率が設定された負荷率より高くなり、エンジン回転数が目標回転数よりも低くなると、流量調節手段である圧力調整電磁弁により油圧ポンプの吐出量が減少されて、油圧ポンプからエンジンに加わる負荷を低減する。このようにして、この作業車両の油圧回路は、油圧ポンプの吐出量をエンジン負荷率、及びエンジン回転数が設定値と一致するように制御することで、エンジンストールの発生を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−249875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の作業車両の油圧回路は、流量調節手段によって油圧ポンプの吐出量を調節するために、エンジン負荷率及びエンジン回転数を利用する。一般に、エンジンにはエンジン回転数を検出する手段が具備されているため、エンジン回転数は容易に検出することができる。しかし、エンジン負荷率は、例えば電子ガバナを有する燃料噴射装置や、コモンレール式燃料噴射装置の燃料噴射量を燃料噴射量検出手段により検出してその検出値から取得する必要がある。つまり、エンジン負荷を取得するための手段を別途設けなければならない。そのため、特許文献1に記載の作業車両の油圧回路は、製造コストが増大するとともに、制御が複雑になる問題がある。
【0006】
本発明の目的は、制御を簡易にして、製造コストを増大させることなく、エンジンストールの発生を抑制することができる作業車両の油圧回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、出力特性がドループ特性であるエンジンによって駆動され、作動油を複数の作業用油圧アクチュエータにそれぞれ方向切換弁を介して供給する可変容量型の油圧ポンプの吐出量を、前記複数の作業用油圧アクチュエータにかかる負荷圧力のうちの最大負荷圧力に基づいて制御するロードセンシングシステムを具備する作業車両の油圧回路であって、前記油圧ポンプ、前記複数の作業用油圧アクチュエータ、及び前記油圧ポンプの斜板角度を変更して当該油圧ポンプの吐出量を調節する流量調節手段を備える油圧ユニットと、前記エンジンの実回転数を検出する回転数検出手段と、前記エンジンのアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、前記アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度から前記エンジンの目標回転数を設定し、前記回転数検出手段によって検出された実回転数が前記目標回転数よりも低い場合、前記実回転数と前記目標回転数とが一致するように前記流量調節手段によって前記油圧ポンプの斜板角度を制御する制御手段と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記油圧ユニットを複数具備し、前記各油圧ユニットは、前記油圧ポンプの斜板角度を検出する斜板角度検出手段を備え、前記制御手段は、前記複数の油圧ユニットのうち、前記斜板角度検出手段によって検出された前記油圧ポンプの斜板角度が前記油圧ポンプの最大斜板角度よりも小さい油圧ユニットの油圧ポンプの斜板角度のみを前記実回転数と前記目標回転数とが一致するように前記流量調節手段によって制御するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、エンジンの負荷を取得するための手段の有無にかかわらず、油圧ポンプの吐出量をエンジンの実回転数のみに基づいて制御して、エンジンストールの発生を抑制することができる。つまり、制御を簡易にして、製造コストを増大させることなく、エンジンストールの発生を抑制することができる。
【0012】
請求項2においては、回転数検出手段によって検出された実回転数が目標回転数よりも低い場合に、一の油圧ユニットで油圧ポンプの斜板角度が最大斜板角度であり、他の油圧ユニットで油圧ポンプの斜板角度が最大斜板角度でないとき、一の油圧ユニットにおける油圧ポンプの斜板角度が最大斜板角度に維持されたまま、他の油圧ユニットにおける流量調節手段により油圧ポンプの斜板角度が小さくされて、この油圧ポンプの吐出量が減少することとなる。したがって、当該作業用油圧アクチュエータの要求流量が油圧ポンプの最大斜板角度における吐出量よりも多く、その吐出圧力が低下している場合に、この油圧ポンプの吐出圧力がさらに低下して作業用アクチュエータが停止するのを回避しながら、エンジンの実回転数を目標回転数まで増加させ、エンジンストールの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧回路を具備する旋回作業車の全体的な構成を示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る油圧回路の全体的な構成を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係る油圧回路のうち第一油圧ユニット等を示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係る油圧回路のうち第二油圧ユニット等を示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係る第一油圧ユニットの左走行モータ用方向切換弁を示す拡大図。
【図6】本発明の一実施形態に係る制御構成を示すブロック図。
【図7】本発明の一実施形態に係る油圧回路の制御手順を示すフローチャート図。
【図8】本発明の別実施形態に係る油圧回路の全体的な構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る油圧回路100を具備する旋回作業車1について説明する。なお、本実施形態においては、旋回作業車1を作業車両の一実施形態として説明するが、作業車両はこれに限るものではなく、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であっても良い。
【0015】
旋回作業車1は、主として走行装置2、旋回装置3、及び作業装置4を具備する。
【0016】
走行装置2は、主として左右一対のクローラ5・5、左走行用油圧モータ5L、及び右走行用油圧モータ5Rを具備する。
走行装置2は、左走行用油圧モータ5Lにより機体左側のクローラ5を、右走行用油圧モータ5Rにより機体右側のクローラ5を、それぞれ駆動することで、旋回作業車1を前後進及び旋回させることができる。
【0017】
旋回装置3は、主として旋回台6、旋回モータ7、操縦部8、及びエンジン9を具備する。
旋回台6は、旋回装置3の主たる構造体となるものである。旋回台6は、走行装置2の上方に配置され、走行装置2に旋回可能に支持される。旋回装置3は、旋回モータ7を駆動することで、当該旋回台6を走行装置2に対して旋回させることができる。また、旋回台6上には、種々の操作具を備える操縦部8、動力源となるエンジン9等が配置される。操縦部8には、エンジン9のアクセル開度を変更するアクセルレバー8aが備えられる。作業者は、アクセルレバー8aを操作することによってエンジン9の出力を変更することができる。エンジン9は、負荷の増減に応じてエンジン9の回転数Nを漸減又は漸増させるドループ特性を有する。
【0018】
作業装置4は、主としてブーム10、アーム11、バケット12、ブームシリンダ13、アームシリンダ14、及びバケットシリンダ15を具備する。
ブーム10は、その一端部が旋回台6の前部に枢支され、伸縮自在に駆動するブームシリンダ13によって回動される。より詳細には、ブームシリンダ13が伸ばされた場合、ブーム10は上方に回動され、ブームシリンダ13が縮められた場合、ブーム10は下方に回動される。
アーム11は、その一端部がブーム10の他端部に枢支され、伸縮自在に駆動するアームシリンダ14によって回動される。より詳細には、アームシリンダ14が伸ばされた場合、アーム11は下方(アーム11の他端側がブーム10に近接する方向)に回動され、アームシリンダ14が縮められた場合、アーム11は上方(アーム11の他端側がブーム10から離間する方向)に回動される。
バケット12は、その一端部がアーム11の他端部に支持されて、伸縮自在に駆動するバケットシリンダ15によって回動される。より詳細には、バケットシリンダ15が伸ばされた場合、バケット12は下方(バケット12の他端側がアーム11に近接する方向)に回動され、バケットシリンダ15が縮められた場合、バケット12は上方(バケット12の他端側がアーム11から離間する方向)に回動される。
以上の如く、作業装置4は、バケット12を用いて土砂等の掘削を行う多関節構造を構成している。
【0019】
なお、本実施形態に係る旋回作業車1に具備する作業装置は、バケット12を有して掘削作業を行う作業装置4としているが、これに限定するものではなく、例えば油圧ブレーカーを有して破砕作業を行う作業装置であっても良い。
【0020】
次に、図2から図6を用いて、旋回作業車1が具備する油圧回路100について説明する。油圧回路100は、作業用油圧アクチュエータへ供給される作動油の方向を切り換える作業用方向切換弁に設けられる絞りの後に、圧力補償弁が接続された、いわゆるアフターオリフィス型のロードセンシングシステムを構成している。当該ロードセンシングシステムによって、作業用油圧アクチュエータに加わる負荷圧力に応じて第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68による作動油の吐出量を制御し、消費エネルギーの効率化を図ることができる。
【0021】
なお、以下では説明の便宜上、左走行モータ用方向切換弁41、及び右走行モータ用方向切換弁61、ブームシリンダ用方向切換弁42、バケットシリンダ用方向切換弁43、アームシリンダ用方向切換弁62、旋回モータ用方向切換弁63、及びPTO用方向切換弁64を総称して、単に「作業用方向切換弁」と記す。左走行モータ用圧力補償弁44、ブームシリンダ用圧力補償弁45、バケットシリンダ用圧力補償弁46、右走行モータ用圧力補償弁65、アームシリンダ用圧力補償弁66、旋回モータ用圧力補償弁67、及びPTO用圧力補償弁74を総称して、単に「圧力補償弁」と記す。左走行用油圧モータ5L、及び右走行用油圧モータ5R、ブームシリンダ13、アームシリンダ14、バケットシリンダ15、旋回モータ7、及びPTO用ポート16に接続されるアタッチメントを総称して「作業用油圧アクチュエータ」と記す。
【0022】
油圧回路100は、主として第一油圧ユニット40、第二油圧ユニット60、回転数検出手段81、アクセル開度検出手段82、制御手段83、及びパイロット油圧ポンプ84を具備する。
【0023】
図2、図3、及び図5に示すように、第一油圧ユニット40は、作業用油圧アクチュエータ(左走行用油圧モータ5L、ブームシリンダ13、バケットシリンダ15)等を駆動するものであり、第二油圧ユニット60と独立した閉ループ油圧回路として構成される。第一油圧ユニット40は、コントロールバルブ30(第一方向切換弁群31)、第一油圧ポンプ47、第一斜板角度検出手段48、及び第一流量調節手段50を具備する。
【0024】
コントロールバルブ30は、作動油の流れを切り換えるものである。コントロールバルブ30は、旋回装置3に取り付けられる。コントロールバルブ30は、主として第一油圧ユニット40の第一方向切換弁群31、及び第二油圧ユニット60の第二方向切換弁群32を具備する。
【0025】
図2及び図3に示すように、第一油圧ユニット40の第一方向切換弁群31は、主として左走行モータ用方向切換弁41、ブームシリンダ用方向切換弁42、及びバケットシリンダ用方向切換弁43を具備する。
【0026】
左走行モータ用方向切換弁41は、左走行用油圧モータ5Lに供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
左走行モータ用方向切換弁41には、左走行モータ用圧力補償弁44が接続される。左走行モータ用圧力補償弁44は、左走行モータ用方向切換弁41に設けられる絞り41c(又は、絞り41f)の後の圧力を所定値に補償するものである。
【0027】
以下では、図5を用いて、左走行モータ用方向切換弁41及び左走行モータ用圧力補償弁44について詳細に説明する。
【0028】
左走行モータ用方向切換弁41は、スプールを摺動させることによりポジション41X(中立位置)、ポジション41Y、又はポジション41Zに切り換えることが可能である。左走行モータ用方向切換弁41のパイロットポート41a及びパイロットポート41bのいずれにもパイロット圧が付与されない場合、スプリングの付勢力により、当該左走行モータ用方向切換弁41はポジション41Xに保持される。左走行モータ用方向切換弁41のパイロットポート41aにパイロット圧が付与された場合、当該左走行モータ用方向切換弁41はポジション41Yに切り換えられる。左走行モータ用方向切換弁41のパイロットポート41bにパイロット圧が付与された場合、当該左走行モータ用方向切換弁41はポジション41Zに切り換えられる。
【0029】
左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Xにある場合、作動油は、油路47bから左走行用油圧モータ5Lに供給されない。
【0030】
左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Yにある場合、作動油は、油路47bから左走行モータ用方向切換弁41のスプール内に設けられる絞り41c、及び油路41dを介して左走行モータ用圧力補償弁44に供給される。
【0031】
左走行モータ用圧力補償弁44に供給された作動油は、左走行モータ用圧力補償弁44から油路51aを介して再び左走行モータ用方向切換弁41に供給される。
【0032】
油路44aを介して左走行モータ用方向切換弁41に供給された作動油は、油路5aを介して左走行用油圧モータ5Lに供給される。当該油路5aを介して供給される作動油によって、左走行用油圧モータ5Lは一方向に回転駆動される。また、左走行用油圧モータ5Lから排出される作動油は、油路5bを介して左走行モータ用方向切換弁41に戻される。
【0033】
油路5bを介して左走行モータ用方向切換弁41に戻された作動油は、当該左走行モータ用方向切換弁41から油路41e、及び戻り油路17aを介して作動油タンク17(図2参照)に戻される。
【0034】
左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Zにある場合、作動油は、油路47bから左走行モータ用方向切換弁41のスプール内に設けられる絞り41f、及び油路41dを介して左走行モータ用圧力補償弁44に供給される。
【0035】
左走行モータ用圧力補償弁44に供給された作動油は、当該左走行モータ用圧力補償弁44から油路51aを介して再び左走行モータ用方向切換弁41に供給される。
【0036】
油路44aを介して左走行モータ用方向切換弁41に供給された作動油は、油路5bを介して左走行用油圧モータ5Lに供給される。当該油路5bを介して供給される作動油によって、左走行用油圧モータ5Lは他方向に回転駆動される。また、左走行用油圧モータ5Lから排出される作動油は、油路5aを介して左走行モータ用方向切換弁41に戻される。
【0037】
油路5aを介して左走行モータ用方向切換弁41に戻された作動油は、当該左走行モータ用方向切換弁41から油路41e、及び戻り油路17aを介して作動油タンク17に戻される。
【0038】
左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Y又はポジション41Zにある場合、油路41dの圧力は、左走行モータ用圧力補償弁44によって所定値に補償される。
詳細には、左走行用油圧モータ5L、ブームシリンダ13、及びバケットシリンダ15にかかる負荷圧力のうち最大の負荷圧力(以下、単に「第一最大負荷圧力」と記す)が、油路23bを介して左走行モータ用圧力補償弁44に付与される。左走行モータ用圧力補償弁44は、油路41dの圧力を、当該第一最大負荷圧力よりも、当該左走行モータ用圧力補償弁44が備えるスプリングによって設定される値だけ高い圧力になるように補償する。
【0039】
図3に示すように、ブームシリンダ用方向切換弁42は、ブームシリンダ13に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
ブームシリンダ用方向切換弁42には、ブームシリンダ用圧力補償弁45が接続される。ブームシリンダ用圧力補償弁45は、ブームシリンダ用方向切換弁42に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0040】
ブームシリンダ用方向切換弁42及びブームシリンダ用圧力補償弁45の構成は、左走行モータ用方向切換弁41及び左走行モータ用圧力補償弁44の構成と略同一である。
【0041】
ブームシリンダ用方向切換弁42のパイロットポート42a又はパイロットポート42bにパイロット圧が付与された場合、当該ブームシリンダ用方向切換弁42は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路47bを介して供給される作動油は、ブームシリンダ13に供給される。これによって、ブームシリンダ13が伸縮し、ブーム10が上方又は下方に回動される。
【0042】
バケットシリンダ用方向切換弁43は、バケットシリンダ15に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
バケットシリンダ用方向切換弁43には、バケットシリンダ用圧力補償弁46が接続される。バケットシリンダ用圧力補償弁46は、バケットシリンダ用方向切換弁43に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0043】
バケットシリンダ用方向切換弁43及びバケットシリンダ用圧力補償弁46の構成は、ブームシリンダ用方向切換弁42及びブームシリンダ用圧力補償弁45の構成と略同一である。
【0044】
バケットシリンダ用方向切換弁43のパイロットポート43a又はパイロットポート43bにパイロット圧が付与された場合、当該バケットシリンダ用方向切換弁43は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路47bを介して供給される作動油は、バケットシリンダ15に供給される。これによって、バケットシリンダ15が伸縮し、バケット12が上方(バケット12の他端側がアーム11から離間する方向)又は下方(バケット12の他端側がアーム11に近接する方向)に回動される。
【0045】
第一油圧ポンプ47は、エンジン9によって駆動され、作動油を吐出する。第一油圧ポンプ47は、可動斜板47aの斜板角度(傾斜角度)R1を変更することによって吐出量を変更可能な可変容量型のポンプである。第一油圧ポンプ47から吐出された作動油は、油路47bを介して第一方向切換弁群31へと供給される。
【0046】
第一斜板角度検出手段48は、第一油圧ポンプ47の可動斜板47aの斜板角度R1を検出するものである。第一斜板角度検出手段48は、後述の第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のポジションを検出するポジションセンサーから構成される。第一斜板角度検出手段48は、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51に配置される。なお、本実施形態において、第一斜板角度検出手段48をポジションセンサーとしたが、可動斜板47aの斜板角度R1を検出できるものであればよい。
【0047】
図2、図3及び図5に示すように、第一流量調節手段50は、第一油圧ポンプ47の吐出量を調節するものである。第一流量調節手段50は、主として、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51、第一圧力サーボ弁52、第一電磁比例減圧弁53を具備する。
【0048】
第一ポンプ流量制御アクチュエータ51は、第一油圧ポンプ47の可動斜板47aに連結され、可動斜板47aの斜板角度R1を変更することで、第一油圧ポンプ47の吐出量を制御するものである。
第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のピストンロッドは、第一油圧ポンプ47の可動斜板47aに連結される。
第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のボトム室は、油路51aを介して第一圧力サーボ弁52と接続される。
第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のロッド室には、ピストンロッドの収縮方向、すなわち第一油圧ポンプ47の吐出量を増加させる方向に付勢する戻しばねが内装されている。
【0049】
第一圧力サーボ弁52は、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51に供給される作動油の流量を変更することで、作業用油圧アクチュエータ(左走行用油圧モータ5L、ブームシリンダ13、及びバケットシリンダ15)にかかる第一最大負荷圧力と第一油圧ポンプ47の吐出圧力との差圧を所定値に保持するものである。第一圧力サーボ弁52は、スプールを摺動させることによりポジション52X、又はポジション52Yに切り換えることが可能である。
【0050】
第一圧力サーボ弁52は、油路47cを介して油路47bと接続される。第一圧力サーボ弁52の第一パイロットポート52aは、油路52dを介して油路47bと接続される。第一圧力サーボ弁52の第二パイロットポート52bは、油路52eを介して圧力補償弁(左走行モータ用圧力補償弁44、ブームシリンダ用圧力補償弁45、及びバケットシリンダ用圧力補償弁46)と接続される。第一圧力サーボ弁52の第三パイロットポート52cは、油路84aを介してパイロット油圧ポンプ84と接続される。
【0051】
第一パイロットポート52aに付与されるパイロット圧(第一油圧ポンプ47の吐出圧力)と第二パイロットポート52bに付与されるパイロット圧(第一最大負荷圧力)との差圧が所定値より小さい場合、すなわち、作業用油圧アクチュエータの負荷が増加して第一最大負荷圧力が上昇した場合、又は第一油圧ポンプ47の吐出量が作業用油圧アクチュエータを作動させるために必要な作動油の流量よりも少ない場合、第一圧力サーボ弁52はポジション52Xに切り換えられる。
第一パイロットポート52aに付与されるパイロット圧と第二パイロットポート52bに付与されるパイロット圧との差圧が所定値より大きい場合、すなわち、作業用油圧アクチュエータの負荷が減少して第一最大負荷圧力が低下した場合、又は第一油圧ポンプ47の吐出量が作業用油圧アクチュエータを作動させるために必要な作動油の流量よりも多い場合、第一圧力サーボ弁52はポジション52Yに切り換えられる。
【0052】
第一圧力サーボ弁52がポジション52Xにある場合、第一油圧ポンプ47の吐出圧力は、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のボトム室に付与されない。また、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のボトム室内の作動油は油路51a、第一圧力サーボ弁52、及び油路52fを介して作動油タンク17に戻される。この結果、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51は、戻しばねの付勢力によって第一油圧ポンプ47の可動斜板47aの斜板角度R1を変更して第一油圧ポンプ47の吐出量を増加させる。すなわち、前記差圧を所定値となるように大きくする。
第一圧力サーボ弁52がポジション52Yにある場合、第一油圧ポンプ47の吐出圧力は、油路47b、油路47c、第一圧力サーボ弁52、及び油路51aを介して第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のボトム室に付与される。この結果、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51は、第一油圧ポンプ47の吐出圧力によって第一油圧ポンプ47の可動斜板47aの斜板角度R1を変更して第一油圧ポンプ47の吐出量を減少させる。すなわち、前記差圧を所定値となるように小さくする。
つまり、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51は、第一油圧ポンプ47の吐出圧力と第一最大負荷圧力との差圧を所定値に保持するように、第一油圧ポンプ47の可動斜板47aの斜板角度R1を制御する。
【0053】
第一電磁比例減圧弁53は、第一圧力サーボ弁52に付与されるパイロット圧を減圧するものである。第一電磁比例減圧弁53は油路84aの中途部に配置される。第一電磁比例減圧弁53は制御手段83と接続され、制御手段83からの制御信号に基づいて、第一圧力サーボ弁52の第三パイロットポート52cに付与されるパイロット圧を減圧することができる。すなわち、第一圧力サーボ弁52は、制御手段83からの制御信号に基づいて駆動される第一電磁比例減圧弁53によって各ポジションに切り換え可能となっている。
【0054】
図2、及び図4に示すように、第二油圧ユニット60は、作業用油圧アクチュエータ(右走行用油圧モータ5R、旋回モータ7、アームシリンダ14、及びPTO用ポート16)等を駆動するものであり、閉ループ油圧回路として構成される。第二油圧ユニット60は、コントロールバルブ30(第二方向切換弁群32)、第二油圧ポンプ68、第二斜板角度検出手段69、及び第二流量調節手段70を具備する。
【0055】
図2及び図4に示すように、第二油圧ユニット60の第二方向切換弁群32は、主として右走行モータ用方向切換弁61、アームシリンダ用方向切換弁62、旋回モータ用方向切換弁63、及びPTO用方向切換弁64を具備する。
【0056】
右走行モータ用方向切換弁61は、右走行用油圧モータ5Rに供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
右走行モータ用方向切換弁61には、右走行モータ用圧力補償弁65が接続される。右走行モータ用圧力補償弁65は、右走行モータ用方向切換弁61に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0057】
右走行モータ用方向切換弁61のパイロットポート61a又はパイロットポート61bにパイロット圧が付与された場合、当該右走行モータ用方向切換弁61は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路68bを介して供給される作動油は、右走行用油圧モータ5Rに供給される。これによって、右走行用油圧モータ5Rが回転駆動される。
【0058】
右走行モータ用方向切換弁61が中立位置から他のポジションに切り換えられた場合、当該右走行モータ用方向切換弁61に設けられる絞り後の圧力は、右走行モータ用圧力補償弁65によって所定値に補償される。
詳細には、右走行用油圧モータ5R、アームシリンダ14、旋回モータ7、及びPTO用ポート16にかかる負荷圧力のうち最大の負荷圧力(以下、単に「第二最大負荷圧力」と記す)が、右走行モータ用圧力補償弁65に付与される。右走行モータ用圧力補償弁65は、右走行モータ用方向切換弁61に設けられる絞りの後の圧力を、当該第二最大負荷圧力よりも、当該右走行モータ用圧力補償弁65が備えるスプリングによって設定される値だけ高い圧力になるように補償する。
【0059】
アームシリンダ用方向切換弁62は、アームシリンダ14に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
アームシリンダ用方向切換弁62には、アームシリンダ用圧力補償弁66が接続される。アームシリンダ用圧力補償弁66は、アームシリンダ用方向切換弁62に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0060】
アームシリンダ用方向切換弁62のパイロットポート62a又はパイロットポート62bにパイロット圧が付与された場合、当該アームシリンダ用方向切換弁62は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路68bを介して供給される作動油は、アームシリンダ14に供給される。これによって、アームシリンダ14が伸縮し、アーム11が上方(アーム11の他端側がブーム10から離間する方向)又は下方(アーム11の他端側がブーム10に近接する方向)に回動される。
【0061】
旋回モータ用方向切換弁63は、旋回モータ7に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
旋回モータ用方向切換弁63には、旋回モータ用圧力補償弁67が接続される。旋回モータ用圧力補償弁67は、旋回モータ用方向切換弁63に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0062】
旋回モータ用方向切換弁63及び旋回モータ用圧力補償弁67の構成は、アームシリンダ用方向切換弁62及びアームシリンダ用圧力補償弁66の構成と略同一である。
【0063】
旋回モータ用方向切換弁63のパイロットポート63a又はパイロットポート63bにパイロット圧が付与された場合、当該旋回モータ用方向切換弁63は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路68bを介して供給される作動油は、旋回モータ7に供給される。これによって、旋回モータ7が回転駆動される。
【0064】
PTO用方向切換弁64は、PTO用ポート16に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
PTO用方向切換弁64には、PTO用圧力補償弁74が接続される。PTO用圧力補償弁74は、PTO用方向切換弁64に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0065】
ここで、PTO用ポート16とは、旋回作業車1の外部に動力を取り出すためのものである。例えば、芝刈り機、ブレーカー等のアタッチメントをPTO用ポート16に接続し、当該PTO用ポート16を介してアタッチメントに作動油を供給することで、当該アタッチメントを駆動させることができる。
【0066】
PTO用方向切換弁64のパイロットポート64a又はパイロットポート64bにパイロット圧が付与された場合、当該PTO用方向切換弁64は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路68bを介して供給される作動油は、PTO用ポート16に供給される。
【0067】
第二油圧ポンプ68は、エンジン9によって駆動され、作動油を吐出する。第二油圧ポンプ68は、可動斜板68aの斜板角度(傾斜角度)R2を変更することによって吐出量を変更可能な可変容量型のポンプである。第二油圧ポンプ68から吐出された作動油は、油路68bを介して第二方向切換弁群32へと供給される。
【0068】
第二斜板角度検出手段69は、第二油圧ポンプ68の可動斜板68aの斜板角度R2を検出するものである。第二斜板角度検出手段69は、後述の第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のポジションを検出するポジションセンサーから構成される。第一斜板角度検出手段48は、後述の第二ポンプ流量制御アクチュエータ71に配置される。なお、本実施形態において、第二斜板角度検出手段69をポジションセンサーとしたが可動斜板68aの斜板角度R2を検出できるものであればよい。
【0069】
図2、図4に示すように、第二流量調節手段70は、第二油圧ポンプ68の吐出量を調節するものである。第二流量調節手段70は、主として、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71、第二圧力サーボ弁72、第二電磁比例減圧弁73を具備する。
【0070】
第二ポンプ流量制御アクチュエータ71は、第二油圧ポンプ68の可動斜板68aに連結され、可動斜板68aの斜板角度R2を変更することで、当該第二油圧ポンプ68の吐出量を制御するものである。
第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のピストンロッドは第二油圧ポンプ68の可動斜板68aに連結される。
第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のボトム室は、油路71aを介して第二圧力サーボ弁72と接続される。
第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のロッド室には、ピストンロッドの収縮方向に付勢する戻しばねが内装されている。
【0071】
第二圧力サーボ弁72は、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71に供給される作動油の流量を変更することで、作業用油圧アクチュエータ(右走行用油圧モータ5R、旋回モータ7、アームシリンダ14、及びPTO用ポート16)にかかる第二最大負荷圧力と第二油圧ポンプ68の吐出圧力との差圧を所定値に保持するものである。第二圧力サーボ弁72は、スプールを摺動させることによりポジション72X、又はポジション72Yに切り換えることが可能である。
【0072】
第二圧力サーボ弁72は、油路68cを介して介して油路68bと接続される。第二圧力サーボ弁72の第一パイロットポート72aは、油路72dを介して介して油路68bと接続される。第二圧力サーボ弁72の第二パイロットポート72bは、油路72eを介して圧力補償弁(右走行モータ用圧力補償弁65、アームシリンダ用圧力補償弁66、旋回モータ用圧力補償弁67、及びPTO用圧力補償弁74)と接続される。第二圧力サーボ弁72の第三パイロットポート72cは、油路84bを介してパイロット油圧ポンプ84と接続される。
【0073】
第一パイロットポート72aに付与されるパイロット圧(第二油圧ポンプ68の吐出圧力)と第二パイロットポート72bに付与されるパイロット圧(第二最大負荷圧力)との差圧が所定値よりも小さい場合、すなわち、作業用油圧アクチュエータの負荷が増加して第二最大負荷圧力が上昇した場合、又は第二油圧ポンプ68の吐出量が作業用油圧アクチュエータを作動させるために必要な作動油の流量よりも少ない場合、第二圧力サーボ弁72はポジション72Xに切り換えられる。
第一パイロットポート72aに付与されるパイロット圧と第二パイロットポート72bに付与されるパイロット圧との差圧が所定値よりも大きい場合、すなわち、作業用油圧アクチュエータの負荷が減少して第二最大負荷圧力が低下した場合、又は第二油圧ポンプ68の吐出量が作業用油圧アクチュエータを作動させるために必要な作動油の流量よりも多い場合、第二圧力サーボ弁72はポジション72Yに切り換えられる。
【0074】
第二圧力サーボ弁72がポジション72Xにある場合、第二油圧ポンプ68の吐出圧力は、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のボトム室に付与されない。また、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のボトム室内の作動油は油路71a、第二圧力サーボ弁72、及び油路72fを介して作動油タンク17に戻される。この結果、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71は、戻しばねの付勢力によって第二油圧ポンプ68の可動斜板68aの斜板角度R2を変更して第二油圧ポンプ68の吐出量を増加させる。すなわち、前記差圧を所定値となるように大きくする。
第二圧力サーボ弁72がポジション72Yにある場合、第二油圧ポンプ68の吐出圧力は、油路68b、油路68c、第二圧力サーボ弁72、及び油路71aを介して第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のボトム室に付与される。この結果、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71は、第二油圧ポンプ68の吐出圧力によって第一油圧ポンプ47の可動斜板68aの斜板角度R2を変更して第二油圧ポンプ68の吐出量を減少させる。すなわち、前記差圧を所定値となるように小さくする。
つまり、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71は、第二油圧ポンプ68の吐出圧力と第二最大負荷圧力との差圧を所定値に保持するように、第二油圧ポンプ68の可動斜板68aの斜板角度R2を制御する。
【0075】
第二電磁比例減圧弁73は、第二圧力サーボ弁72に付与されるパイロット圧を減圧するものである。第二電磁比例減圧弁73は油路84bの中途部に配置される。第二電磁比例減圧弁73は制御手段83と接続され、制御手段83からの制御信号に基づいて、第二圧力サーボ弁72の第三パイロットポート72cに付与されるパイロット圧を減圧することができる。すなわち、第二圧力サーボ弁72は、制御手段83からの制御信号に基づいて駆動される第二電磁比例減圧弁73によって各ポジションに切換可能となっている。
【0076】
上述の如く、第一流量調節手段50は、第一最大負荷圧力と第一油圧ポンプ47の吐出圧力との差圧を所定値に保持することができる。第二流量調節手段70は、第二最大負荷圧力と第二油圧ポンプ68の吐出圧力との差圧を所定値に保持することができる。これによって、作業用油圧アクチュエータにかかる負荷圧力の大きさに応じて第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68による吐出量を最適な値に制御することができ、消費エネルギーの効率化を図ることができる。
また、アフターオリフィス型のロードセンシングシステムによって、各作業用方向切換弁にそれぞれ設けられる絞りの前後差圧は所定値に補償されている。
詳細には、各作業用方向切換弁にそれぞれ設けられる絞りの前の圧力は、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51又は第二ポンプ流量制御アクチュエータ71によって、第一最大負荷圧力又は第二最大負荷圧力よりも所定値だけ高い圧力に保持される。また、作業用方向切換弁にそれぞれ設けられる絞りの後の圧力は、各圧力補償弁によって、第一最大負荷圧力又は第二最大負荷圧力よりも所定値だけ高い圧力に保持される。
したがって、各作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量は、当該作業用油圧アクチュエータに対応する作業用方向切換弁のスプールストローク量(作業用方向切換弁により形成される油路の開口面積)にのみ依存する。すなわち、各作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧を制御することで、当該作業用方向切換弁に対応する作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を精度良く制御することができる。
【0077】
回転数検出手段81は、エンジン9の実回転数Nを検出するものである。回転数検出手段81は、ロータリーエンコーダから構成され、エンジン9の出力軸に設けられる。なお、回転数検出手段81は、本実施形態においては、ロータリーエンコーダから構成しているが、これは特に限定するものではなく、実回転数Nを検出することができるものであればよい。
【0078】
アクセル開度検出手段82は、エンジン9のアクセル開度Snを検出するものである。アクセル開度検出手段82は、角度センサーから構成され、アクセルレバー8aに設けられる。なお、アクセル開度検出手段82を、本実施形態においては、角度センサーから構成しているが、これは特に限定するものではなく、アクセルレバー8aの操作量、すなわちアクセル開度Snを検出することができるものであればよい。
【0079】
図6に示すように、制御手段83は、第一流量調節手段50によって第一油圧ポンプ47の斜板角度R1を制御し、第二流量調節手段70によって第二油圧ポンプ68の斜板角度R2を制御するものである。制御手段83は、アクセル開度Snと目標回転数Nsとの関係を示す目標回転数マップ、実回転数Nと目標回転数Nsとの偏差に基づいて第一電磁比例減圧弁53及び第二電磁比例減圧弁73の制御を行うための種々のプログラムが格納される。また、制御手段83は、これらのプログラム等に従って所定の演算を行うことができ、当該演算の結果等を記憶することができる。目標回転数Nsは、あるアクセル開度Snに対して、エンジン9の出力が最大となる回転数に基づいて設定される回転数である。
【0080】
制御手段83は、主として記憶部83a、制御部83b、入力部83c、出力部83d等を具備する。制御手段83は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0081】
制御手段83の入力部83cは、第一斜板角度検出手段48及び第二斜板角度検出手段69に接続され、第一斜板角度検出手段48及び第二斜板角度検出手段69が検出する第一油圧ポンプ47の可動斜板47aの斜板角度R1及び第二油圧ポンプ68の可動斜板68aの斜板角度R2を取得することが可能である。
【0082】
制御手段83の入力部83cは、回転数検出手段81に接続され、回転数検出手段81が検出するエンジン9の実回転数Nを取得することが可能である。
【0083】
制御手段83の入力部83cは、アクセル開度検出手段82に接続され、アクセル開度検出手段82が検出するエンジン9のアクセル開度Snを取得することが可能である。
【0084】
制御手段83の制御部83bは、入力部83c及び出力部83dと接続され、入力部83cが取得した斜板角度R1、斜板角度R2、実回転数N、アクセル開度Snを取得し、出力部83dに制御信号を伝達することが可能である。
【0085】
制御手段83の記憶部83aは、制御部83bと接続され、制御部83bが取得した情報や、算出した結果を記憶することが可能である。
【0086】
制御手段83の出力部83dは、第一電磁比例減圧弁53及び第二電磁比例減圧弁73に接続され、第一電磁比例減圧弁53及び第二電磁比例減圧弁73に制御信号を伝達することが可能である。
【0087】
図2、図3及び図5に示すように、パイロット油圧ポンプ84は、エンジン9によって駆動され、作動油を吐出することにより、油路84a及び油路84b内にパイロット圧を発生させる。油路84aは、第一電磁比例減圧弁53を介して第一圧力サーボ弁52の第三パイロットポート52cに接続される。油路84bは、第二電磁比例減圧弁73を介して第二圧力サーボ弁72の第三パイロットポート72cに接続される。油路84a及び油路84b内のパイロット圧は、リリーフ弁85により所定の圧力に保持される。
【0088】
以下では、図7を用いて、上述の如く構成される油圧回路100の動作態様について説明する。
【0089】
第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68のうち、少なくともいずれか一つの油圧ポンプの吐出量が増加すると、当該油圧ポンプからエンジン9に加わる負荷が増加し、ドループ特性線に従いエンジン9の実回転数Nが低くなる。
制御手段83は、エンジン9の実回転数Nとアクセル開度Snにおける目標回転数Nsとを比較する。制御手段83は、実回転数Nが目標回転数Nsよりも低くなると、目標回転数Nsと実回転数Nとの偏差ΔN(=Ns−N)に基づいて以下の数1に示す制御演算値PIを算出する。ここでk1、k2は定数である。さらに、算出した制御演算値PIに基づいて電磁比例制御弁53・73への指令電流値Ipを算出する。この場合、指令電流値Ipの算出には制御演算値PIと指令電流値Ipとの関係を示すマップを用いて算出しても、以下の数2に示す式にて算出してもよい。ここでL1、L2は定数である。次に、制御手段83は、可動斜板47aの現在の斜板角度R1と、第一油圧ポンプ47の吐出量が最大となる最大斜板角度R1mとを比較するとともに、可動斜板68aの現在の斜板角度R2と、第二油圧ポンプ68の吐出量が最大となる最大斜板角度R2mとを比較する。制御手段83は、第一油圧ユニット40と第二油圧ユニット60とのうち、現在の斜板角度R1・R2が最大斜板角度R1m・R2mよりも小さい、即ち斜板角度R1・R2が最大斜板角度R1m・R2mでない油圧ポンプ47・68が属する油圧ユニット40・60の電磁比例制御弁53・73を指令電流値Ipによって制御する。
【数1】

【数2】

【0090】
以下では、油圧回路100の制御態様について具体的に説明する。
【0091】
制御手段83は、各油圧ポンプ47・68の吐出量が多くなったとき、以下のステップで第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68の斜板角度R1・R2を小さくする。
【0092】
まず、ステップS110において、制御手段83は、第一斜板角度検出手段48が検出する第一油圧ポンプ47の可動斜板47aの斜板角度R1、第二斜板角度検出手段69が検出する第二油圧ポンプ68の可動斜板68aの斜板角度R2、回転数検出手段81が検出するエンジン9の実回転数N、アクセル開度検出手段82が検出するエンジン9のアクセル開度Snを取得する。制御手段83は、取得した斜板角度R1、斜板角度R2、実回転数N、及びアクセル開度Snを記憶する。
【0093】
ステップS120において、制御手段83は、取得して記憶したアクセル開度Snに基づいて、目標回転数Nsを目標回転数マップM1から算出して設定する。制御手段83は、算出した目標回転数Nsを記憶する。
【0094】
ステップS130において、制御手段83は、取得して記憶した実回転数Nが設定した目標回転数Nsよりも低いか否か判定する。
その結果、実回転数Nが目標回転数Nsよりも低いと判定した場合、制御手段83はステップをステップS140に移行させる。
一方、実回転数Nが目標回転数Ns以上と判定した場合、制御手段83はステップをステップS110に戻す。
【0095】
ステップS140において、制御手段83は、取得して記憶した実回転数N、及び設定した目標回転数Nsに基づいて、前述の数1に示す制御演算値PIを算出する。制御手段83は、算出した制御演算値PIを記憶部83aに記憶する。
【0096】
ステップS150において、制御手段83は、算出して記憶した制御演算値PIに基づいて、前述の数2に示す指令電流値Ipを算出する。制御手段83は、算出した指令電流値Ipを記憶部83aに記憶する。
【0097】
ステップS160において、制御手段83は、算出して記憶した斜板角度R1が最大斜板角度R1mよりも小さいか否か判定する。
その結果、斜板角度R1が最大斜板角度R1mよりも小さいと判定した場合、制御手段83はステップをステップS170に移行させる。
一方、斜板角度R1が最大斜板角度R1mよりも小さくないと判定した場合、制御手段83はステップをステップS370に移行させる。
【0098】
ステップS170において、制御手段83は、制御部83bによって、取得して記憶した斜板角度R2が最大斜板角度R2mよりも小さいか否か判定する。
その結果、斜板角度R2が最大斜板角度R2mよりも小さいと判定した場合、制御手段83はステップをステップS180に移行させる。
一方、斜板角度R2が最大斜板角度R2mよりも小さくないと判定した場合、制御手段83はステップをステップS280に移行させる。
【0099】
ステップS180において、制御手段83は、算出して記憶した指令電流値Ipに基づいて、第一電磁比例減圧弁53及び第二電磁比例減圧弁73を制御して第一圧力サーボ弁52及び第二圧力サーボ弁72のパイロット圧を所定圧だけ増圧させる。
これにより、第一圧力サーボ弁52がポジション52Yに切り換えられて、斜板角度R1が小さくなるとともに、第二圧力サーボ弁72がポジション72Yに切り換えられて、斜板角度R2が小さくなる。そして、第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68の吐出量が減少して、第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68からエンジン9に加わる負荷が減少し、エンジン9の実回転数Nが目標回転数Nsに向かって増加することとなる。
その後、制御手段83は、ステップをステップS110へ戻す。
【0100】
ステップS280において、制御手段83は、算出して記憶した指令電流値Ipに基づいて、第一電磁比例減圧弁53を制御して第一圧力サーボ弁52のパイロット圧を所定圧だけ増圧させる。
これにより、第一圧力サーボ弁52がポジション52Yに切り換えられて、斜板角度R1が小さくなる。そして、第一油圧ポンプ47の吐出量が減少して、第一油圧ポンプ47からエンジン9に加わる負荷が減少し、エンジン9の実回転数Nが目標回転数Nsに向かって増加することとなる。
その後、制御手段83は、ステップをステップS110へ戻す。
【0101】
ステップS370において、制御手段83は、取得して記憶した斜板角度R2が最大斜板角度R2mよりも小さいか否か判定する。
その結果、斜板角度R2が最大斜板角度R2mよりも小さいと判定した場合、制御手段83はステップをステップS380に移行させる。
一方、斜板角度R2が最大斜板角度R2mよりも小さくないと判定した場合、制御手段83はステップS480に移行させる。
【0102】
ステップS380において、制御手段83は、制御部83bによって、記憶部83aが記憶している指令電流値Ipに基づいて、第二電磁比例減圧弁73を制御して第二圧力サーボ弁72のパイロット圧を所定圧だけ増圧させる。
これにより、第二圧力サーボ弁72がポジション72Yに切り換えられて、斜板角度R2が小さくなる。そして、第二油圧ポンプ68の吐出量が減少して、第二油圧ポンプ68からエンジン9に加わる負荷が減少し、エンジン9の実回転数Nが目標回転数Nsに向かって増加することとなる。
その後、制御手段83は、ステップをステップS110へ戻す。
【0103】
ステップS480において、制御手段83は、算出して記憶した指令電流値Ipに基づいて、第一電磁比例減圧弁53及び第二電磁比例減圧弁73を制御して第一圧力サーボ弁52及び第二圧力サーボ弁72のパイロット圧を所定圧だけ増圧させる。
これにより、第一圧力サーボ弁52がポジション52Yに切り換えられて、斜板角度R1が小さくなるとともに、第二圧力サーボ弁72がポジション72Yに切り換えられて、斜板角度R2が小さくなる。そして、第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68の吐出量が減少して、第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68からエンジン9に加わる負荷が減少し、エンジン9の実回転数Nが目標回転数Nsに向かって増加することとなる。
その後、制御手段83は、ステップをステップS110へ戻す。
【0104】
制御手段83は、回転数検出手段81によって検出されたエンジン9の実回転数Nが目標回転数Nsよりも低くなると、油圧ポンプ68の斜板角度R2のみが最大斜板角度R2mである場合は、第一流量調節手段50によって第一油圧ポンプ47の吐出量を減少させる。油圧ポンプ47の斜板角度R1のみが最大斜板角度R1mである場合は、第二流量調節手段70によって第二油圧ポンプ68の吐出量を減少させる。また、油圧ポンプ47・68の斜板角度R1・R2が最大斜板角度R1m・R2mである場合は、第一流量調節手段50及び第二流量調節手段70によって、油圧ポンプ47・68の吐出量を同じ割合で減少させる。制御手段83は、実回転数Nと目標回転数Nsとが一致するまでこのようなステップを繰り返して、第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68からエンジン9に加わる負荷を減少させる。
【0105】
以下では、図8を用いて、本発明に係る油圧回路の別実施形態に係る油圧回路200について説明する。
【0106】
別実施形態に係る油圧回路200が油圧回路100(図2参照)と異なる点は、第一油圧ユニット40において、第一流量調節手段50に、第一圧力サーボ弁52及び第一電磁比例減圧弁53に代えて、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51に供給される作動油の流量を変更する手段として第一電磁サーボ弁91を具備している点である。また、第二油圧ユニット60において、第二流量調節手段70に、第二圧力サーボ弁72及び第二電磁比例減圧弁73に代えて、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71に供給される作動油の流量を変更する手段として第二電磁サーボ弁92を具備している点である。
よって以下では、一実施形態に係る油圧回路100と異なる点についてのみ説明し、油圧回路100と略同一の構成の部材には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0107】
第一電磁サーボ弁91は、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51に供給される作動油の流量を変更することで、作業用油圧アクチュエータにかかる第一最大負荷圧力と第一油圧ポンプ47の吐出圧力との差圧を所定値に保持するものである。第一電磁サーボ弁91は、スプールを摺動させることによりポジション91X、又はポジション91Yに切り換えることが可能である。
【0108】
第一電磁サーボ弁91は、油路47cを介して油路47bと接続される。第一電磁サーボ弁91の第一パイロットポート91aは、油路91dを介して油路47bと接続される。第一電磁サーボ弁91の第二パイロットポート91bは、油路91eを介して介して圧力補償弁(左走行モータ用圧力補償弁44、ブームシリンダ用圧力補償弁45、及びバケットシリンダ用圧力補償弁46)と接続される。
【0109】
第一電磁サーボ弁91がポジション91Xにある場合、第一油圧ポンプ47の吐出圧力は、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のボトム室に付与されない。また、第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のボトム室内の作動油は油路51a、第一電磁サーボ弁91、及び油路91fを介して作動油タンク17に戻される。
第一電磁サーボ弁91がポジション91Yにある場合、第一油圧ポンプ47の吐出圧力は、油路47b、油路47c、第一電磁サーボ弁91、及び油路51aを介して第一ポンプ流量制御アクチュエータ51のボトム室に付与される。
第一電磁サーボ弁91は制御手段83と接続され、制御手段83からの制御信号に基づいて、第一電磁サーボ弁91のポジションを切り換えることが可能である。すなわち、第一電磁サーボ弁91は、制御手段83からの制御信号に基づいて各ポジションに切り換えられる。
【0110】
第二電磁サーボ弁92は、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71に供給される作動油の流量を変更することで、作業用油圧アクチュエータにかかる第二最大負荷圧力と第二油圧ポンプ68の吐出圧力との差圧を所定値に保持するものである。第二電磁サーボ弁92は、スプールを摺動させることによりポジション92X、又はポジション92Yに切り換えることが可能である。
【0111】
第二電磁サーボ弁92は、油路68cを介して油路68bと接続される。第二電磁サーボ弁92の第二パイロットポート92aは、油路92dを介して油路68bと接続される。第二電磁サーボ弁92の第二パイロットポート92bは、油路92eを介して介して圧力補償弁(右走行モータ用圧力補償弁65、アームシリンダ用圧力補償弁66、旋回モータ用圧力補償弁67、及びPTO用圧力補償弁74)と接続される。
【0112】
第二電磁サーボ弁92がポジション92Xにある場合、第二油圧ポンプ68の吐出圧力は、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のボトム室に付与されない。また、第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のボトム室内の作動油は油路71a、第二電磁サーボ弁92、及び油路92fを介して作動油タンク17に戻される。
第二電磁サーボ弁92がポジション92Yにある場合、第二油圧ポンプ68の吐出圧力は、油路68b、油路68c、第二電磁サーボ弁92、及び油路71aを介して第二ポンプ流量制御アクチュエータ71のボトム室に付与される。
第二電磁サーボ弁92は制御手段である制御手段83と接続され、制御手段83からの制御信号に基づいて、第二電磁サーボ弁92のポジションを切り換えることが可能である。すなわち、第二電磁サーボ弁92は、制御手段83からの制御信号に基づいて各ポジションに切り換えられる。
【0113】
制御手段83の出力部83dは、第一電磁サーボ弁91及び第二電磁サーボ弁92に接続され、第一電磁サーボ弁91及び第二電磁サーボ弁92に制御信号を伝達することが可能である。
【0114】
上述の如く構成された油圧回路200において、制御手段83は、エンジン9の実回転数Nを目標回転数Nsに維持するために第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68の吐出量を変更する場合、実回転数Nと目標回転数Nsとの偏差に基づいて算出された指令電流値Ipによって第一電磁サーボ弁91及び第二電磁サーボ弁92を制御する。これによって、部品点数の増加を抑制して、油圧回路200を簡素化することができる。また、圧力サーボ弁から電磁サーボ弁に置き換えたことで応答速度を向上させることができる。
【0115】
以上の如く、旋回作業車1の油圧回路100又は油圧回路200は、出力特性がドループ特性であるエンジン9によって駆動され、作動油を複数の作業用油圧アクチュエータ(左走行用油圧モータ5L、及び右走行用油圧モータ5R、ブームシリンダ13、アームシリンダ14、バケットシリンダ15、旋回モータ7、及びPTO用ポート16に接続されるアタッチメント)にそれぞれ方向切換弁(右走行モータ用方向切換弁61、ブームシリンダ用方向切換弁42、バケットシリンダ用方向切換弁43、アームシリンダ用方向切換弁62、旋回モータ用方向切換弁63、及びPTO用方向切換弁64)を介して供給する可変容量型の油圧ポンプである第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68の吐出量を、前記複数の作業用油圧アクチュエータにかかる負荷圧力のうちの最大負荷圧力(第一最大負荷圧力、及びに第二最大負荷圧力)に基づいて制御するロードセンシングシステムを具備する作業車両の油圧回路であって、第一油圧ポンプ47(第二油圧ポンプ68)、前記複数の作業用油圧アクチュエータ、及び第一油圧ポンプ47(第二油圧ポンプ68)の斜板角度R1(R2)を変更して第一油圧ポンプ47(第二油圧ポンプ68)の吐出量を調節する流量調節手段である第一流量調節手段50(第二流量調節手段70)、を備える第一油圧ユニット40(第二油圧ユニット60)と、エンジン9の実回転数Nを検出する回転数検出手段81と、エンジン9のアクセル開度Snを検出するアクセル開度検出手段82と、アクセル開度検出手段82によって検出されたアクセル開度Snからエンジン9の目標回転数Nsを設定し、回転数検出手段81によって検出された実回転数Nが目標回転数Nsよりも低い場合、実回転数Nと目標回転数Nsとが一致するように第一流量調節手段50(第二流量調節手段70)によって第一油圧ポンプ47(第二油圧ポンプ68)の斜板角度R1(R2)を制御する制御手段83と、を具備するものである。
このように構成することにより、旋回作業車1に搭載するエンジン9が、エンジン9の負荷を取得するための手段を備えても備えなくても、旋回作業車1の油圧回路100又は油圧回路200を構成することが可能となる。そして、第一油圧ポンプ47(第二油圧ポンプ68)の吐出量を、第一流量調節手段50(第二流量調節手段70)の第一電磁比例減圧弁53(第二電磁比例減圧弁73)によりエンジン9の実回転数のみに基づいて制限して、エンジンストールの発生を抑制することができる。つまり、制御を簡易にして、製造コストを増大させることなく、エンジンストールの発生を抑制することができる。
【0116】
また、第一油圧ユニット40及び第二油圧ユニット60を具備し、第一油圧ユニット40及び第二油圧ユニット60は、第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68の斜板角度R1・R2を検出する第一斜板角度検出手段48及び第二斜板角度検出手段69をそれぞれ備え、制御手段83は、第一油圧ユニット40及び第二油圧ユニット60のうち、第一斜板角度検出手段48及び第二斜板角度検出手段69によって検出された第一油圧ポンプ47及び第二油圧ポンプ68の斜板角度R1・R2が、最大斜板角度R1m・R2mよりも小さい油圧ユニット40・60の油圧ポンプ47・68の斜板角度R1・R2のみを実回転数Nと目標回転数Nsとが一致するように第一流量調節手段50(第二流量調節手段70)によって制御するものである。
このように構成することにより、例えば、回転数検出手段81によって検出された実回転数Nが目標回転数Nsよりも低い場合に、第一油圧ユニット40において、第一油圧ポンプ47の斜板角度R1が最大斜板角度R1mであり、第二油圧ユニット60において、第二油圧ポンプ68の斜板角度R2が最大斜板角度R2mでないとき、第一油圧ポンプ47の吐出量が維持されたまま、第二油圧ユニット60における第二流量調節手段70により第二油圧ポンプ68の斜板角度R2が小さくされ、第二油圧ポンプ68の吐出量が減少することとなる。したがって、作業用油圧アクチュエータの要求流量が第一油圧ポンプ47の吐出量よりも多く、第一油圧ポンプ47の吐出圧力が低下している場合に、第一油圧ポンプ47の吐出圧力がさらに低下して作業用アクチュエータが停止するのを回避しながら、エンジン9の実回転数Nを目標回転数Nsまで増加させ、エンジンストールの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0117】
5L 左走行用油圧モータ(作業用油圧アクチュエータ)
5R 右走行用油圧モータ(作業用油圧アクチュエータ)
7 旋回モータ(作業用油圧アクチュエータ)
9 エンジン
13 ブームシリンダ(作業用油圧アクチュエータ)
14 アームシリンダ(作業用油圧アクチュエータ)
15 バケットシリンダ(作業用油圧アクチュエータ)
16 PTO用ポート(作業用油圧アクチュエータ)
40 第一油圧ユニット
47 第一油圧ポンプ
48 第一斜板角度検出手段
50 第一流量調節手段
60 第二油圧ユニット
68 第二油圧ポンプ
69 第二斜板角度検出手段
70 第二流量調節手段
81 回転数検出手段
82 アクセル開度検出手段
83 制御手段
R1 斜板角度
R2 斜板角度
N 実回転数
Ns 目標回転数
Sn アクセル開度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力特性がドループ特性であるエンジンによって駆動され、作動油を複数の作業用油圧アクチュエータにそれぞれ方向切換弁を介して供給する可変容量型の油圧ポンプの吐出量を、前記複数の作業用油圧アクチュエータにかかる負荷圧力のうちの最大負荷圧力に基づいて制御するロードセンシングシステムを具備する作業車両の油圧回路であって、
前記油圧ポンプ、前記複数の作業用油圧アクチュエータ、及び前記油圧ポンプの斜板角度を変更して当該油圧ポンプの吐出量を調節する流量調節手段を備える油圧ユニットと、
前記エンジンの実回転数を検出する回転数検出手段と、
前記エンジンのアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
前記アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度から前記エンジンの目標回転数を設定し、前記回転数検出手段によって検出された実回転数が前記目標回転数よりも低い場合、前記実回転数と前記目標回転数とが一致するように前記流量調節手段によって前記油圧ポンプの斜板角度を制御する制御手段と、を具備する作業車両の油圧回路。
【請求項2】
前記油圧ユニットを複数具備し、
前記各油圧ユニットは、前記油圧ポンプの斜板角度を検出する斜板角度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記複数の油圧ユニットのうち、前記斜板角度検出手段によって検出された前記油圧ポンプの斜板角度が、前記油圧ポンプの最大斜板角度よりも小さい油圧ユニットの油圧ポンプの斜板角度のみを前記実回転数と前記目標回転数とが一致するように前記流量調節手段によって制御する請求項1に記載の作業車両の油圧回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−196116(P2011−196116A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65015(P2010−65015)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】