説明

作業車両

【課題】 車台と、この車台上に搭載した作業機器との間に、互いに同調して該作業機器を駆動し得る一対の油圧シリンダを互いに並列に介装し、その両油圧シリンダの作動油室を油圧源又は油溜に選択的に接続し得る給排油路にカウンタバランス弁を設けた作業車両において、カウンタバランス弁と一方の油圧シリンダとの間の油路が万一破損しても、他方の油圧シリンダ内の圧油漏洩を抑えて、両油圧シリンダが同時に急激に暴走するのを防止でき、しかも左右の油圧シリンダの同調作動を可能とする。
【解決手段】 メイン給排油路52,52′に、一対の油圧シリンダ7,7に対し共通のカウンタバランス弁54,54′が設けられると共に、それら油圧シリンダ7,7にそれぞれ対応した分岐給排油路53,53′に、油圧シリンダ7,7からの油の戻りを規制し得るパイロットチェック弁55,55′がそれぞれ設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同調作動する左右一対の油圧シリンダにより作業機器を駆動するようにした作業車両、例えば、車台上に搭載されるコンテナを、その車台と地上との間で積み降ろししたり或いはダンプさせたりすることができるようにしたコンテナ荷役車両として好適な作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車台上に搭載した荷役フレームにダンプアームが後方に傾動可能に設けられると共に、そのダンプアームにリフトアームが前後方向に起伏回動可能に設けられ、このリフトアームが、コンテナを係脱可能に連結し得るフックアームを備え、そのリフトアームを起伏駆動すべく左右に並列する左右一対の油圧シリンダが該リフトアームと荷役フレーム間に設けられ、その両油圧シリンダの作動に基づくリフトアームの単独の起伏回動により、コンテナを荷役フレームと地上との間で積み降ろしできるようにし、また同じく両油圧シリンダの作動に基づくリフトアームとダンプアームとの一体傾動により、その両アーム上に搭載されるコンテナをダンプさせるようにした、脱着式コンテナを備えた荷役車両は公知である(下記の特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−95007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記特許文献1に開示される作業車両では、各油圧シリンダに背圧が作用しても該シリンダ(従ってコンテナ)が急激に暴走するのを防止するために、該シリンダを油圧源又は油溜に選択的に接続する給排油路の途中にカウンタバランス弁を設けるようにしていた。
【0004】
ところがその従来のものでは、一対の油圧シリンダに対して共通のカウンタバランス弁を用いていたため、そのカウンタバランス弁と一方の油圧シリンダとの間の油路が万一破損すると、その破損部より両方の油圧シリンダ内の圧油が漏れて、両油圧シリンダが同時に暴走する虞れがあった。
【0005】
そこでこのような問題を解決するために、各々の油圧シリンダ毎にカウンタバランス弁を配設して、両油圧シリンダが同時に暴走しないようにすることが考えられるが、カウンタバランス弁を一対の油圧シリンダ毎に独立して設けた場合には、その各々のカウンタバランス弁の個体差(製造誤差等に因る性能のばらつき)に起因して一対の油圧シリンダへの作動油流量が微妙に変化するため、左右の油圧シリンダが同調して伸縮作動せず、リフトアームを円滑に作動させる上で不利になる等の、別の問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、前記問題を何れも解消できるようにした、新規な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、車台と、この車台上に搭載した作業機器との間に、互いに同調して該作業機器を駆動し得る一対の油圧シリンダを相互に並列に介装し、その両油圧シリンダの作動油室を、カウンタバランス弁を有する給排油路を経由して、油圧源又は油溜に選択的に接続し得るようにした作業車両において、前記給排油路は、切換弁を介して油圧源又は油溜に接続されるメイン給排油路と、そのメイン給排油路より分岐して前記一対の油圧シリンダの作動油室にそれぞれ接続される分岐給排油路とを含み、そのメイン給排油路に、一対の油圧シリンダに対し共通のカウンタバランス弁が設けられると共に、それら油圧シリンダにそれぞれ対応した分岐給排油路に、油圧シリンダからの油の戻りを規制し得るパイロットチェック弁がそれぞれ設けられることを特徴としている。
【0008】
また請求項2の発明は、車台と、この車台上に搭載した作業機器との間に、互いに同調して該作業機器を駆動し得る一対の油圧シリンダを相互に並列に介装し、その両油圧シリンダの作動油室を、カウンタバランス弁を有する給排油路を経由して、油圧源又は油溜に選択的に接続し得るようにした作業車両において、前記給排油路は、切換弁を介して油圧源又は油溜に接続されるメイン給排油路と、そのメイン給排油路より分岐して前記一対の油圧シリンダの作動油室にそれぞれ接続される分岐給排油路とを含み、前記一対の油圧シリンダに各々対応し互いに独立したカウンタバランス弁が、それら油圧シリンダの作動油室に連なる分岐給排油路にそれぞれ設けられると共に、それらカウンタバランス弁よりも油圧シリンダ側の分岐給排油路の相互間が、両端又は両端の近傍に絞り手段を各々有する連通油路を介して連通していることを特徴とする。
【0009】
さらに請求項3の発明は、前記請求項1又は2に記載の作業車両であって、車台上に搭載した荷役フレームにダンプアームが後方に傾動可能に設けられると共に、そのダンプアームに前記作業機器としてのリフトアームが前後方向に起伏回動可能に設けられ、このリフトアームは、コンテナを係脱可能に連結し得るフックアームを備え、そのリフトアームを起伏駆動すべく左右に並列する前記一対の油圧シリンダが該リフトアームと荷役フレーム間に設けられ、その両油圧シリンダの作動に基づくリフトアームの単独の起伏回動により、コンテナを荷役フレームと地上との間で積み降ろしできるようにし、また同じく両油圧シリンダの作動に基づくリフトアームとダンプアームとの一体傾動により、その両アーム上に搭載されるコンテナをダンプできるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように請求項1の発明によれば、メイン給排油路に、一対の油圧シリンダに対して共通のカウンタバランス弁が設けられると共に、それら油圧シリンダにそれぞれ対応した分岐給排油路に、油圧シリンダからの油の戻りを規制し得るパイロットチェック弁が設けられるので、一対の油圧シリンダに対し同じカウンタバランス弁を共用しても、そのカウンタバランス弁と一方の油圧シリンダとの間の油路が万一破損した場合に、両方の油圧シリンダ内の圧油が漏れて両油圧シリンダが同時に暴走する事態の発生を効果的に防止できる。また一対の油圧シリンダ相互の連通関係がカウンタバランス弁に邪魔されずに維持されるため、一対の油圧シリンダへの作動油流量が微妙に変化することを回避できて、左右の油圧シリンダの同調作動が可能となり、作業機器を常に円滑に作動させることができる。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、一対の油圧シリンダに各々対応し互いに独立したカウンタバランス弁が、それら油圧シリンダの作動油室に連なる分岐給排油路にそれぞれ設けられているので、カウンタバランス弁と一方の油圧シリンダとの間の油路が万一破損しても、他方の油圧シリンダ内の圧油漏洩が効果的に抑えられて、両油圧シリンダが同時に急激に暴走するのを未然に防止することができる。しかもその両カウンタバランス弁よりも油圧シリンダ側の分岐給排油路の相互間が連通油路を介して連通しているため、一対の油圧シリンダにそれぞれ対応したカウンタバランス弁相互に多少の個体差(製造誤差等に因る性能のばらつき)が有っても、一対の油圧シリンダへの作動油流量が微妙に変化することを回避できて、左右の油圧シリンダの同調作動が可能となり、作業機器を常に円滑に作動させることができる。またその連通油路の中間部が万一破損しても、その両端又は両端近傍の絞り手段により両油圧シリンダ内の圧油が急激に漏れて両油圧シリンダが暴走するのを効果的に防止できる。
【0012】
さらに請求項3の発明によれば、脱着式コンテナを備えた荷役車両において、コンテナを荷役フレームと地上との間で積み降ろしたり或いはコンテナをダンプさせたりする際に、作業機器としてのリフトアーム、延いてはコンテナの急激な暴走を回避することができ、また左右の油圧シリンダを同調作動させてリフトアームを円滑に起伏回動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0014】
図1〜図8は、本発明の第1実施例を示すものであり、図1は、コンテナ荷役車両のコンテナ積込み完了時(走行時)の状態を示す全体側面図、図2は、図1の2矢視の荷役車両の一部拡大平面図、図3は、図2の3−3線に沿う荷役車両の一部側面図、図4は、リフトシリンダ及びこれに関連する油圧配管を示す要部平面図(図3の4矢視拡大図)、図5は、リフトシリンダを作動させる油圧回路の一例を示す回路図、図6は、コンテナの積込(降ろし)途中の状態を示す荷役車両の側面図、図7は、コンテナの積込み開始直前(降ろし直後)の状態を示す荷役車両の側面図、図8は、コンテナのダンプ時の荷役車両の側面図である。また図9及び図10は本発明の第2実施例を示すものであって、図9は、図4に対応した平面図、図10は、図5に対応した回路図である。
【0015】
先ず、第1実施例を説明するに、図1〜図4において、作業車両としてのコンテナ荷役車両Vの車台F上には、荷役フレーム1が一体的に搭載されている。荷役フレーム1は、前後方向に長い方形の枠状に形成されており、その後端左右には、左右案内ローラ2,2が回転自在に軸架され、これらの案内ローラ2,2は、荷役フレーム1上に脱着可能に搭載される後述のコンテナCtを誘導案内する。荷役フレーム1の後部には、ダンプアーム3が後方に傾動可能に設けられており、このダンプアーム3の後端は、前記左右案内ローラ2,2の回転軸線と同じ軸線回りに前後方向に傾動できるように荷役フレーム1に軸支されている。
【0016】
前記ダンプアーム3の前端部寄りの中間部にはブラケットを介して、単一の角筒体よりなるリフトアーム4の後端、すなわち基端が前後方向に起伏回動自在に軸支9されている。このリフトアーム4は、荷役フレーム1の左右中間部を前後方向に延びており、その後部はダンプアーム3と前後方向に重なり合っているが、その大部分はダンプアーム3よりも前方に延長されている。
【0017】
荷役フレーム1の前部と、リフトアーム4の中間部との間には、車両左右方向に互いに並列に配置される左右一対の第1及び第2リフトシリンダ7,7が介装、連結され、その各リフトシリンダ7は、複動式の油圧シリンダより構成される。これらのリフトシリンダ7,7は、リフトアーム4の左右両側を前後方向に延びており、それらの同調伸縮作動により、リフトアーム4を回動中心(軸支9部)回りに前後に起伏回動させることができる。即ち、各リフトシリンダ7のシリンダバレル7B内は、ピストンロッド7Rに連結されるピストン7Pにより一対の作動油室、即ちピストンロッド側の先部油室Cbと、その反対側の基部油室Caとに区画されており、基部油室Caに作動油を供給することにより、リフトシリンダ7は伸長してリフトアーム4を後方側へ起立回動させることができ、また、先部油室Cbに作動油を供給することにより、リフトシリンダ7を収縮してリフトアーム4を前方側に伏倒回動させることができる。
【0018】
リフトアーム4の先部には、フックアーム5の基端が前後方向に移動可能に支持(図示例では前後方向に回動自在に軸支13)されている。このフックアーム5は、側面から見てL字状に形成されており、その上端にフック6が一体に設けられる。このフック6は、コンテナCtの前面上部に設けたリフトバー17に係脱可能である。
【0019】
フックアーム4の先部前面には、案内部材Gが固定されている。この案内部材Gは、リフトアーム4の回動中心と略同心、すなわち軸支9部と略同心の半径とする円弧面23がフックアーム5の長手方向に沿って形成されている。案内部材Gの先端は前記フック6の近傍まで延びており、また、リフトアーム4が後方回動終端位置(図7参照)にあるときに、案内部材Gは、反転してその基端(上端)が地上GRに設置されるコンテナCtのリフトバー17よりも上方位置になるように、その長さが設定されている。
【0020】
またリフトアーム4の先部と、フックアーム5の中間部との間には、フックアーム5の揺動駆動手段、即ち複動式油圧シリンダよりなるスイングシリンダ8が介装、連結されており、このスイングシリンダ8の伸縮作動により、フックアーム5を車台Fの前後方向に移動(揺動)させることができ、これによりコンテナCtを、荷役フレーム1上を後方に移動させることができる。
【0021】
次に図5も併せて参照して、左右一対の第1及び第2リフトシリンダ7,7を作動させる油圧回路の一例を説明する。油圧源としての油圧ポンプPの吐出側に連なる吐出油路50と、油溜としての油タンクTに連なる還流油路51とは、切換弁Vtと給排油路Lとを介して左右一対の第1及び第2リフトシリンダ7,7に接続される。その切換弁Vtは、図示例では中立位置と、その一方側に在って両リフトシリンダ7を共に伸長作動させる第1切換位置と、その他方側に在って両リフトシリンダ7を共に収縮作動させる第2切換位置とを選択的に切換可能な3位置電磁切換弁より構成されており、作業員により随時に遠隔操作できるようになっている。
【0022】
その給排油路Lは、切換弁Vtを介して吐出油路50(従って油圧ポンプP)及び還流油路51(従って油タンクT)に接続される一対のメイン給排油路52,52′よりなるメイン給排系Lmと、そのメイン給排系Lm(即ち各々のメイン給排油路52,52′)より二股状に分岐した第1及び第2分岐給排系Ls,Lsとより構成され、その各々の分岐給排系Lsは、一対の分岐給排油路53,53′より構成される。そして、その第1及び第2分岐給排系Ls,Lsの各一対の分岐給排油路53,53′は、複動式油圧シリンダである第1及び第2リフトシリンダ7,7の各基部油室Ca及び各先部油室Cbにそれぞれ接続される。
【0023】
またメイン給排系Lmには、各々のリフトシリンダ7,7に背圧が作用してもその暴走を防止するために、その第1及び第2リフトシリンダ7,7に対し共通1個のカウンタバランス弁装置Vcbが設けられる。このカウンタバランス弁装置Vcbは、メイン給排系Lmを構成する一対のメイン給排油路52,52′にそれぞれ介装される第1及び第2カウンタバランス弁54,54′を、車体適所に設置した共通のカウンタバランス弁ハウジングに並列に内蔵して構成される。
【0024】
さらに第1リフトシリンダ7に対応した第1分岐給排系Lsには、第1パイロットチェック弁装置Vchが設けられており、その第1パイロットチェック弁装置Vchは、これが設けられる第1分岐給排系Lsの一対の分岐給排油路53,53′にそれぞれ介装される一対のパイロットチェック弁55,55′を、第1リフトシリンダ7のシリンダバレル7Bの基部に設置した共通の第1パイロットチェック弁ハウジングに並列に内蔵して構成される。また上記と同様に、第2リフトシリンダ7に対応した第2分岐給排系Lsには、第2パイロットチェック弁装置Vchが設けられており、その第2パイロットチェック弁装置Vchは、これが設けられる第2分岐給排系Lsの一対の分岐給排油路53,53′にそれぞれ介装される一対のパイロットチェック弁55,55′を、第2リフトシリンダ7のシリンダバレル7Bの基部に設置した共通の第2パイロットチェック弁ハウジングに並列に内蔵して構成される。
【0025】
そして、その各パイロットチェック弁装置Vchにおけるパイロットチェック弁55,55′は、平時は第1及び第2リフトシリンダ7,7からの油の戻りを規制し、またリフトシリンダ7の伸縮作動時にはその作動油圧を直接受けて或いはパイロット圧として受けることで開弁動作するように配設されており、これにより、該パイロットチェック弁55,55′の特設によってもリフトシリンダ7の通常の伸縮作動に支障を生じないようにしている。尚、図5中、参照符号R1〜R3は、リリーフ弁である。
【0026】
而して本実施例では、給排油路Lのメイン給排系Lmに、一対のリフトシリンダ7,7に対し共通のカウンタバランス弁装置Vcbが設けられると共に、それらリフトシリンダ7,7にそれぞれ対応した分岐給排系Ls,Lsに、平時はリフトシリンダ7,7からの油の戻りを規制し得るパイロットチェック弁装置Vchが、対応するシリンダの作動油圧により開弁するように設けられるので、一対のリフトシリンダ7,7に対しカウンタバランス弁装置Vcbが共通1個だけしか設けられていなくても、そのカウンタバランス弁装置Vcbと一方のリフトシリンダ7との間の油路が万一破損した場合に、両方のリフトシリンダ7,7内の圧油が漏れて両リフトシリンダ7,7が同時に暴走する事態の発生を効果的に防止できる。また一対のリフトシリンダ7,7の対応する作動油室相互の連通関係がカウンタバランス弁装置Vcbに邪魔されずに維持されるため、一対のリフトシリンダ7,7への作動油流量が微妙に変化することを回避できて、左右のリフトシリンダ7,7の同調作動が可能となり、作業機器としてのリフトアーム4(延いてはコンテナCt)を円滑に起伏駆動することができる。
【0027】
また、図2,3に示すように、リフトアーム4、フックアーム5およびダンプアーム3の左右両側には、それらに跨がってリフトアーム4とダンプアーム3とを前後方向に直線状に一体に固縛し、またその固縛を解除するようにした左右一対の固縛機構LOが設けられる。各固縛機構LOは、リフトアーム4の後部一側に回動自在に軸支される固縛フック10と、ダンプアーム3の前端一側に設けられてその固縛フック10が係脱自在に係合し得る被係止部11と、前記固縛フック10の中間部とフックアーム5の基端とをそれぞれピン連結する長さ調整可能なロッド12とより構成されており、図3に示すように、フックアーム5が起立位置すなわち格納位置にあるとき、ロッド12が後方に押され、固縛フック10は固縛方向に回動されて被係止部11と係合し、これによりリフトアーム4とダンプアーム3とが前後方向に直線状に一体に固縛される。
【0028】
また、前記スイングシリンダ8の伸長作動によりフックアーム5が後方に揺動(図6,7参照)されると、ロッド12が前方に引かれて固縛フック10は固縛解除方向に回動されて被係止部11より離脱し、これによりリフトアーム4とダンプアーム3との固縛が解除され、それらのアーム4,3はそれぞれ別々の回動が許容される。
【0029】
図1に示すように、車台Fの後部にはアウトリガー15が設けられ、このアウトリガー15は、コンテナCtを積み降ろし、あるいはダンプさせるとき、作動されて荷役車両Vを安定させる。一方、荷役車両Vの車台F上に搭載されるコンテナCtは有蓋の箱状に形成されており、その前面両側は、補強桁14により補強され、その開放後面は、リヤゲート16により閉じられ、またその前壁上部には、前記フックアーム5のフック6と係脱可能な係合部、すなわちリフトバー17が設けられ、またその底部の前後にはキャスタよりなる複数の走行輪18が軸支されている。
【0030】
つぎに、この実施例の作用について説明する。
【0031】
〔車台F上のコンテナCtを地上に降ろす場合〕
図1に示すように、荷役車両Vの車台F上にコンテナCtが積込まれている状態(車両の走行状態)からスイングシリンダ8の伸長作動によりフックアーム5を後方に揺動すると、コンテナCtはこのフックアーム5により左右案内ローラ2,2上を後方に押されて後方に移動し、引き続くフックアーム5の後方揺動に伴い前述したように固縛機構LOが解除されてリフトアーム4とダンプアーム3との固定が解除されるので、リフトアーム4はダンプアーム3に対して自由に回動できるようになる。つぎに、リフトシリンダ7を伸長作動させると、リフトアーム4はフックアーム5と共に起立回動する。これによりコンテナCtは左右案内ローラ2,2に案内されて車台F上を後方に移動し、コンテナCtは左右案内レール2,2の回転中心を支点として後方に傾動し、その後部下縁は地上GRに着地する(図6参照)。
【0032】
リフトシリンダ7が伸長を継続して最伸長して後方回動終端位置(図7実線位置)に至れば、フックアーム5は下向きとなって、コンテナCtは地上GRに降ろされる。ここで荷役車両が前進することでフックアーム5先端のフック6がリフトバー17より外れ、コンテナCtは荷役車両Vから分離される。
【0033】
〔コンテナCtを荷役フレーム1上に載せたままダンプさせる場合〕
荷役フレーム1上にコンテナCtが搭載されている状態、すなわちフックアーム5が格納位置にある状態(図1の状態)のままリフトシリンダ7を伸長すれば、前記固縛機構LOは固縛状態を維持してダンプアーム3とリフトアーム4とを一体に固縛されているので、図8に示すように、それら両アーム3,4は一体となって後方に傾動しコンテナCtをダンプ上げさせることができ、コンテナCt内の収容物を外部に排出することができる。またリフトシリンダ7を収縮作動させれば、コンテナCtをダンプ下げして荷役フレーム1上に降ろすことができる。
【0034】
〔地上の降ろされたコンテナCtを車台F上に積込む場合〕
地上に降ろされているコンテナCtの前方に、適宜の間隔をあけて荷役車両Vを縦列停車させたのち、リフトシリンダ7によりリフトアーム4をフックアーム5と共に後方終端位置までフル回動させる。この回動操作は、前述のコンテナCtの降ろし操作の場合と同じである。
【0035】
つぎに、図7実線に示すように、荷役車両Vを後退させ、フックアーム5の先部前面の案内部材Gの円弧面23を、コンテナCtのリフトバー17に当接させる。このとき、リフトアーム4が後方回動終端位置に回動されたときの円弧面23の上端は、コンテナCtのリフトバー17よりも上方位置に設定されていることにより、リフトアーム4は回動調整を行う必要がない。
【0036】
ついで、リフトシリンダ7の収縮作動によりリフトアーム4をフックアーム5と共に前方に回動させる。このとき、案内部材Gの円弧面23は、リフトアーム4の回動中心、すなわち軸支9部と略同心の円弧面23に形成されているので、リフトアーム4の前方回動に伴い、フックアーム4は、案内部材Gの円弧面23とリフトバー17との相対摺動により、案内されながら円弧面23に沿う円弧軌跡に沿ってスムーズに上方に移動し、フック6を、コンテナCtのリフトバー17に的確に係合させることができる。
【0037】
引き続くリフトアーム4の前方回動によれば、図7実線位置より鎖線位置に示すように、コンテナCtは荷役フレーム1上に積込まれてその上を前方に移動し、最後にスイングシリンダ8の収縮作動により、フックアーム5は格納位置に揺動して、図1に示すように、荷役車両VへのコンテナCtの積込みを完了する。
【0038】
次に図9,10を参照して、本発明の第2実施例を説明する。この実施例は、左右一対の第1及び第2リフトシリンダ7,7を作動させる油圧回路の構成だけが前実施例と相違するので、その相違部分だけを以下に説明し、前実施例と同様の機能部品については前実施例と同じ参照符号を付すに留めて説明を省略する。
【0039】
即ち、本実施例では、左右一対の第1及び第2リフトシリンダ7,7に各々対応し互いに独立した第1及び第2カウンタバランス弁装置Vcb,Vcbが、それらリフトシリンダ7,7の各作動油室Ca,Cbに連なる第1及び第2分岐給排系Ls,Lsにそれぞれ設けられている。その第1カウンタバランス弁装置Vcbは、第1分岐給排系Lsを構成する一対の分岐給排油路53,53′にそれぞれ介装される第1及び第2カウンタバランス弁54,54′を、第1リフトシリンダ7のシリンダバレル7Bの基部に設置した共通の第1カウンタバランス弁ハウジングに並列に内蔵して構成されており、また上記と同様に、第2カウンタバランス弁装置Vcbは、第2分岐給排系Lsを構成する一対の分岐給排油路53,53′にそれぞれ介装される第1及び第2カウンタバランス弁54,54′を、第2リフトシリンダ7のシリンダバレル7Bの基部に設置した共通の第2カウンタバランス弁ハウジングに並列に内蔵して構成される。
【0040】
そして、第1及び第2カウンタバランス弁装置Vcb,Vcbよりもリフトシリンダ7,7側の第1及び第2分岐給排系Ls,Lsの相互間は、一対の連通油路56,56′よりなる連通手段Lcを介して連通しており、その連通手段Lc(即ち一対の連通油路56,56′)の両端又は両端の近傍には、その流路を絞る絞り手段としての絞り弁57,58;57′,58′がそれぞれ配設されている。
【0041】
而してこの第2実施例では、一対の第1及び第2リフトシリンダ7,7に各々対応し互いに独立した第1及び第2カウンタバランス弁装置Vcb,Vcbが、それらリフトシリンダ7,7の各作動油室Ca,Cbに連なる第1及び第2分岐給排系Ls,Lsにそれぞれ設けられると共に、それらカウンタバランス弁装置Vcb,Vcbよりもリフトシリンダ7,7側の分岐給排系Ls,Ls(即ち一対の分岐給排油路53,53′)の相互間が前記連通手段Lc(即ち一対の連通油路56,56′)を介して連通しているので、カウンタバランス弁装置Vcb,Vcbと一方のリフトシリンダ7との間の油路が万一破損しても、他方のリフトシリンダ7内の圧油漏洩が効果的に抑えられて、両リフトシリンダ7,7が同時に急激に暴走するのを未然に防止することができる。
【0042】
しかもその両カウンタバランス弁装置Vcb,Vcbよりもリフトシリンダ側の分岐給排系Ls,Ls(一対の分岐給排油路53,53′)の相互間が連通手段Lc(一対の連通油路56,56′)を介して連通しているため、第1及び第2カウンタバランス弁装置Vcb,Vcbに多少の個体差(製造誤差等に因る性能のばらつき)が有っても、一対のリフトシリンダ7,7への作動油流量が微妙に変化することを回避できて、左右のリフトシリンダ7,7の同調作動が可能となり、作業機器としてのリフトアーム4(延いてはコンテナCt)を円滑に起伏駆動することができる。またその連通手段Lc(即ち一対の連通油路56,56′)の中間部が万一破損しても、その両端又は両端近傍の絞り弁57,58;57′,58′により両リフトシリンダ7,7内の圧油が急激に漏れて両リフトシリンダ7,7が暴走するのを効果的に防止できる。
【0043】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0044】
たとえば、前記実施例では、コンテナを車台と地上間で積み降ろしできる外、ダンプもできるようにしたコンテナ荷役車両に本発明を実施した場合を説明したが、コンテナをダンプさせないコンテナ荷役車両にも本発明(請求項1,2)を実施することが可能であり、また、コンテナ荷役車両以外の車両であって、同調作動する一対の油圧シリンダで駆動される作業機器を装備した種々の作業車両、例えばダンプカー、クレーン車、コンクリートポンプ車等に本発明(請求項1,2)を実施するようにしてもよい。
【0045】
また前記実施例では、フックアームをリフトアームに前後揺動可能に軸支したものを示したが、本発明(請求項3)ではフックアームをリフトアームに前後摺動可能に支持してもよく、また固定式としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施例に係るコンテナ荷役車両であって、コンテナの積込み完了時(走行時)の状態を示す全体側面図
【図2】図1の2矢視の荷役車両の一部拡大平面図
【図3】図2の3−3線に沿う荷役車両の一部側面図
【図4】リフトシリンダ及びこれに関連する油圧配管を示す要部平面図(図3の4矢視拡大図)
【図5】リフトシリンダを作動させる油圧回路の一例を示す回路図
【図6】コンテナの積込(降ろし)途中の状態を示す荷役車両の側面図
【図7】コンテナの積込み開始直前(降ろし直後)の状態を示す荷役車両の側面図
【図8】コンテナのダンプ時の荷役車両の側面図
【図9】本発明の第2実施例を示す、図4に対応した平面図
【図10】本発明の第2実施例を示す、図5に対応した回路図
【符号の説明】
【0047】
1・・・・・荷役フレーム
4・・・・・リフトアーム(作業機器)
5・・・・・フックアーム
6・・・・・フック
7・・・・・リフトシリンダ(油圧シリンダ)
52,52′・・メイン給排油路
53,53′・・分岐給排油路
54,54′・・カウンタバランス弁
55,55′・・パイロットチェック弁
57,58;57′,58′・・絞り弁(絞り手段)
Ca・・・・基部油室(作動油室)
Cb・・・・先部油室(作動油室)
Ct・・・・コンテナ
F・・・・・車台
GR・・・・地上
P・・・・・油圧ポンプ(油圧源)
T・・・・・油タンク(油溜)
Vt・・・・切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台(F)と、この車台(F)上に搭載した作業機器(4)との間に、互いに同調して該作業機器(4)を駆動し得る一対の油圧シリンダ(7,7)を相互に並列に介装し、その両油圧シリンダ(7,7)の作動油室(Ca,Cb)を、カウンタバランス弁(54,54′)を有する給排油路(L)を経由して、油圧源(P)又は油溜(T)に選択的に接続し得るようにした作業車両において、
前記給排油路(L)は、切換弁(Vt)を介して油圧源(P)又は油溜(T)に接続されるメイン給排油路(52,52′)と、そのメイン給排油路(52,52′)より分岐して前記一対の油圧シリンダ(7,7)の作動油室(Ca,Cb)にそれぞれ接続される分岐給排油路(53,53′;53,53′)とを含み、
そのメイン給排油路(52,52′)に、一対の油圧シリンダ(7,7)に対し共通のカウンタバランス弁(54,54′)が設けられると共に、それら油圧シリンダ(7,7)にそれぞれ対応した分岐給排油路(53,53′;53,53′)に、油圧シリンダ(7,7)からの油の戻りを規制し得るパイロットチェック弁(55,55′;55,55′)がそれぞれ設けられることを特徴とする、作業車両。
【請求項2】
車台(F)と、この車台(F)上に搭載した作業機器(4)との間に、互いに同調して該作業機器(4)を駆動し得る一対の油圧シリンダ(7,7)を相互に並列に介装し、その両油圧シリンダ(7,7)の作動油室(Ca,Cb)を、カウンタバランス弁(54,54′)を有する給排油路(L)を経由して、油圧源(P)又は油溜(T)に選択的に接続し得るようにした作業車両において、
前記給排油路(L)は、切換弁(Vt)を介して油圧源(P)又は油溜(T)に接続されるメイン給排油路(52,52′)と、そのメイン給排油路(52,52′)より分岐して前記一対の油圧シリンダ(7,7)の作動油室(Ca,Cb)にそれぞれ接続される分岐給排油路(53,53′;53,53′)とを含み、
前記一対の油圧シリンダ(7,7)に各々対応し互いに独立したカウンタバランス弁(54,54′;54,54′)が、それら油圧シリンダ(7,7)の作動油室(Ca,Cb)に連なる分岐給排油路(53,53′;53,53′)にそれぞれ設けられると共に、それらカウンタバランス弁(54,54′;54,54′)よりも油圧シリンダ(7,7)側の分岐給排油路(53,53′;53,53′)の相互間が、両端又は両端の近傍に絞り手段(57,58;57′,58′)を各々有する連通油路(56,56′)を介して連通していることを特徴とする、作業車両。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の作業車両であって、
車台(F)上に搭載した荷役フレーム(1)にダンプアーム(3)が後方に傾動可能に設けられると共に、そのダンプアーム(3)に前記作業機器としてのリフトアーム(4)が前後方向に起伏回動可能に設けられ、このリフトアーム(4)は、コンテナ(Ct)を係脱可能に連結し得るフックアーム(5)を備え、そのリフトアーム(4)を起伏駆動すべく左右に並列する前記一対の油圧シリンダ(7,7)が該リフトアーム(4)と荷役フレーム(1)間に設けられ、その両油圧シリンダ(7,7)の作動に基づくリフトアーム(4)の単独の起伏回動により、コンテナ(Ct)を荷役フレーム(1)と地上(GR)との間で積み降ろしできるようにし、また同じく両油圧シリンダ(7,7)の作動に基づくリフトアーム(4)とダンプアーム(3)との一体傾動により、その両アーム(4,3)上に搭載されるコンテナ(Ct)をダンプできるようにしたことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−51879(P2006−51879A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234465(P2004−234465)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)
【Fターム(参考)】