説明

作業車輌

【課題】燃料ストップソレノイドを有するエンジンとHSTを変速させる変速用電動アクチュエータと左右の旋回用電動モータと作業クラッチ用電動アクチュエータと制御装置とを備えた作業車輌において、所定エラー発生時にはエンジンの強制停止により走行安全性を高めると共にエンジン負荷状態に拘わらず前記エンジンの強制停止を可能とする。
【解決手段】制御装置は、エンジンの強制停止を行うフェール制御の実行に際し、変速作動側センサ又は変速出力側センサからの信号に基づき車輌が前進走行中であり且つ作業クラッチ操作側センサ又は作業クラッチ作動側センサからの信号に基づき作業部が駆動中である場合にはエンジン高負荷状態であると判断し、作業クラッチ機構が動力遮断状態となるように作業クラッチ用電動アクチュエータを作動させてから所定時間経過後に燃料ストップバルブへの通電を行ってエンジンを強制的に出力停止状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行系伝動経路にHSTからの回転動力及び左右一対の旋回用電動モータからの回転動力を合成して左右一対の走行装置へ向けて出力する左右一対の差動機構が介挿され且つ作業機系伝動経路に作業クラッチ機構が介挿され、前記HSTの出力調整部材を作動させる変速用電動アクチュエータ,前記一対の旋回用電動モータ及び前記作業クラッチ機構の伝動状態を切り換える作業クラッチ用電動アクチュエータが制御装置によって作動制御されるように構成された除雪機等の作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
走行系伝動経路にHSTからの回転動力及び左右一対の旋回用電動モータからの回転動力を合成して左右一対の走行装置へ向けて出力する左右一対の差動機構が介挿され且つ作業機系伝動経路に作業クラッチ機構が介挿され、前記HSTの出力調整部材を作動させる変速用電動アクチュエータ,前記一対の旋回用電動モータ及び前記作業クラッチ機構の伝動状態を切り換える作業クラッチ用電動アクチュエータが制御装置によって作動制御されるように構成された除雪機の形態をなす作業車輌が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、前記作業車輌は、エンジンと、左右一対の走行装置と、前記エンジンから作動的に回転動力を入力するHSTと、左右一対の旋回用電動モータと、前記HSTからの走行回転動力及び対応する前記旋回用電動モータからの旋回回転動力を合成して対応する前記走行装置へ向けて出力する左右一対の差動機構と、人為操作可能な変速操作部材と、前記HSTの出力調整部材を作動させる変速用電動アクチュエータと、前記変速操作部材の操作状態を検出する変速操作側センサと、前記出力調整部材の作動状態を検出する変速作動側センサと、前記HSTの出力状態を検出する変速出力側センサと、人為操作可能な左右一対の旋回操作部材と、前記一対の旋回操作部材の操作状態を検出する左右一対の旋回操作側センサと、前記左右一対の旋回用電動モータの出力状態を検出する左右一対の旋回出力側センサと、前記エンジンから作業部へ至る作業系伝動経路に介挿された作業クラッチ機構と、人為操作可能な作業クラッチ操作部材と、前記作業クラッチ操作部材の操作状態を検出する作業クラッチ操作側センサと、前記作業クラッチ機構の伝動状態を切り換える作業クラッチ用電動アクチュエータと、前記作業クラッチ機構の伝動状態を検出する作業クラッチ作動側センサと、制御装置とを備えており、前記制御装置は、前記作業クラッチ操作部材の操作状態に応じて前記作業クラッチ機構の伝動状態が切り換わるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータを作動制御しつつ、前記HSTの出力状態が前記変速操作部材の操作状態に応じて変化するように前記変速用電動アクチュエータを作動制御し且つ前記左右一対の旋回用電動モータの出力状態が前記左右一対の旋回操作部材の操作状態に応じて変化するように前記左右一対の旋回用電動モータを作動制御するように構成されている。
【0004】
前記作業車輌は、前記操作部材と対応するアクチュエータとの間を機械的なリンク構造で作動連結する必要がない為、設計自由度を向上させることができるが、その反面、電気系統等にエラーが発生すると前記アクチュエータが制御不能状態となる事態が生じ得る。
特に、種々のエラーのうち重大なエラーが生じた場合には走行安全性の観点から前記エンジンを強制的に駆動停止状態とすることが望ましい。
【0005】
ところで、前記エンジンには、燃料供給ラインに介挿された燃料ストップソレノイドを有し、前記燃料ストップソレノイドが通電されることで前記燃料供給ラインが遮断状態とされた前記エンジンが出力停止状態とされるものが存在する。
このようなタイプのエンジンにおいては、前記エンジンが高負荷状態の際には前記燃料供給ラインの燃料の流れが前記燃料ストップソレノイドの遮断力よりも強くなり、前記燃料ストップソレノイドに通電を行っても前記燃料供給ラインを遮断できない事態が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−055924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、通電により燃料供給ラインを遮断する燃料ストップソレノイドを有するエンジンと、前記エンジンから作動的に回転動力を入力するHSTと、左右一対の旋回用電動モータと、前記HST及び前記一対の旋回用電動モータからの回転動力を合成する左右一対の差動機構と、前記エンジンから作業部へ至る伝動経路に介挿された作業クラッチ機構と、前記HSTの出力調整部材を作動させる変速用電動アクチュエータ,前記一対の旋回用電動モータ及び前記作業クラッチ機構を作動させる作業クラッチ用電動アクチュエータの作動制御を司る制御装置とを備えた作業車輌において、所定のエラー発生時には前記エンジンを強制的に出力停止状態とすることで走行安全性を高めると共に、前記エンジンの負荷状態に拘わらず前記エンジンの強制的な出力停止を確実に行える作業車輌の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成する為に、燃料供給ラインに介挿された燃料ストップソレノイドを有し、前記燃料ストップソレノイドへの通電により燃料供給が遮断されて出力停止状態となるように構成されたエンジンと、左右一対の走行装置と、前記エンジンから作動的に回転動力を入力するHSTと、左右一対の旋回用電動モータと、前記HSTからの走行回転動力及び対応する前記旋回用電動モータからの旋回回転動力を合成して対応する前記走行装置へ向けて出力する左右一対の差動機構と、人為操作可能な変速操作部材と、前記HSTの出力調整部材を作動させる変速用電動アクチュエータと、前記変速操作部材の操作状態を検出する変速操作側センサと、前記出力調整部材の作動状態を検出する変速作動側センサと、前記HSTの出力状態を検出する変速出力側センサと、人為操作可能な左右一対の旋回操作部材と、前記一対の旋回操作部材の操作状態を検出する左右一対の旋回操作側センサと、前記左右一対の旋回用電動モータの出力状態を検出する左右一対の旋回出力側センサと、前記エンジンから作業部へ至る作業系伝動経路に介挿された作業クラッチ機構と、人為操作可能な作業クラッチ操作部材と、前記作業クラッチ操作部材の操作状態を検出する作業クラッチ操作側センサと、前記作業クラッチ機構の伝動状態を切り換える作業クラッチ用電動アクチュエータと、前記作業クラッチ機構の伝動状態を検出する作業クラッチ作動側センサと、前記作業クラッチ操作部材の操作状態に応じて前記作業クラッチ機構の伝動状態が切り換わるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータを作動制御しつつ、前記変速作動側センサ又は前記変速出力側センサからの検出信号に基づくHST実出力が前記変速操作側センサからの検出信号に基づくHST目標出力と一致するように前記変速用電動アクチュエータを作動制御し且つ前記左右一対の旋回出力側センサからの検出信号に基づく左右旋回用電動モータ実出力がそれぞれ前記左右一対の旋回操作側センサからの検出信号に基づく左右旋回用電動モータ目標出力と一致するように前記左右一対の旋回用電動モータを作動制御する通常制御を実行する制御装置とを備えた作業車輌であって、前記制御装置は、前記通常制御の実行中において、前記変速操作側センサからの検出信号の変化に応じて前記変速用電動モータに制御信号を出力しているにも拘わらず所定時間内に前記変速作動側センサからの検出信号に変化が生じない第1エラーが発生すると、前記燃料ストップソレノイドへの通電を行って前記エンジンを強制的に出力停止状態とするフェール制御を実行するように構成され、前記制御装置は、前記フェール制御の実行に際し、前記変速作動側センサ又は前記変速出力側センサからの信号に基づき車輌が前進走行中であり且つ前記作業クラッチ操作側センサ又は前記作業クラッチ作動側センサからの信号に基づき前記作業部が駆動中である場合にはエンジン高負荷状態であると判断し、エンジン高負荷状態の場合には前記作業クラッチ機構が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータを作動させてから所定時間経過後に前記燃料ストップバルブへの通電を行って前記エンジンを強制的に出力停止状態とする作業車輌を提供する。
【0009】
好ましくは、前記制御装置は、前記第1エラー又は所定時間内に前記変速作動側センサ及び前記変速出力側センサの双方からの検出信号の入力が無い第2エラーの何れかが発生すると前記フェール制御を実行するように構成される。この場合において、前記制御装置は、前記フェール制御の実行に際し、前記変速作動側センサ及び前記変速出力側センサの双方からの検出信号の入力が無い場合には車輌が前進走行中であると擬制するように構成され得る。
【0010】
好ましくは、前記制御装置は、前記第1エラー,前記第2エラー又は前記変速操作側センサからの検出信号に基づくHST目標出力と前記変速作動側センサ又は前記変速出力側センサからの検出信号に基づくHST実出力との変位が所定時間を経過しても所定範囲を越えている第3エラーの何れかが発生すると前記フェール制御を実行するように構成され得る。
【0011】
好ましくは、前記制御装置は、前記第1〜第3エラー又は前記変速作動側センサからの検出信号が所定範囲を超えている第4エラーの何れかが発生すると前記フェール制御を実行するように構成され得る。
【0012】
好ましくは、前記制御装置は、前記第1〜第4エラー又は前記旋回操作側センサからの検出信号に基づく旋回用電動モータ目標出力と前記旋回出力側センサからの検出信号に基づく旋回用電動モータ実出力との変位が所定時間を経過しても所定範囲を超えている第5エラーの何れかが発生すると前記フェール制御を実行するように構成され得る。
この場合、前記制御装置は、前記第1〜第4エラーに基づく前記フェール制御の実行に際しエンジン高負荷状態の場合には前記作業クラッチ機構が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータを作動させてから所定時間経過後に前記燃料ストップバルブへの通電を行って前記エンジンを強制的に出力停止状態とし、前記第5エラーに基づく前記フェール制御の実行に際しエンジン高負荷状態の場合には前記作業クラッチ機構が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータを作動させ及び/又は前記HSTが中立状態となるように前記変速用電動アクチュエータを作動させてから所定時間経過後に前記燃料ストップバルブへの通電を行って前記エンジンを強制的に出力停止状態とするように構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る作業車輌においては、通常制御の実行中において所定エラーが発生すると、制御装置が燃料ストップソレノイドへの通電を行ってエンジンを強制的に出力停止状態とするフェール制御を実行するように構成されている。従って、走行安全性を向上させることができる。
さらに、本発明に係る作業車輌においては、前記制御装置は、前記フェール制御の実行に際し前記エンジンが高負荷状態の場合には作業クラッチ機構が動力遮断状態となるように作業クラッチ用電動アクチュエータを作動及び/又はHSTが中立状態となるように変速用電動アクチュエータを作動させてから所定時間経過後に前記燃料ストップバルブへの通電を行って前記エンジンを強制的に出力停止状態とするように構成されている。従って、前記エンジンの負荷状態に拘わらず、所定エラーの発生時には確実に前記エンジンを出力停止状態とさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る作業車輌の概略側面図である。
【図2】図2は、図1に示す前記作業車輌の概略平面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示す前記作業車輌の伝動模式図である。
【図4】図4は、図1〜図3に示す前記作業車輌における制御装置のシステムブロック図である。
【図5】図5は、前記制御装置に収納された制御プログラムのフローチャートの一部である。
【図6】図6は、前記フローチャートの残りの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る作業車輌の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1〜図3は、それぞれ、本実施の形態に係る作業車輌1の概略側面図,概略平面図及び伝動模式図である。
【0016】
図1及び2に示すように、本実施の形態に係る前記作業車輌1は歩行型除雪機の形態をなしている。
詳しくは、前記作業車輌1は、機体フレーム10と、前記機体フレーム10に支持されたエンジン20と、左右一対の走行部30L,30Rと、前記機体フレーム10の前方側に配設され且つ前記エンジン20からの回転動力によって駆動される作業部40と、前記エンジン20から前記走行部30L,30Rへ至る伝動経路に介挿されたトランスミッション50と、前記機体フレーム10の後方側に配設された操作部70とを備えている。
【0017】
前記除雪機の形態をなす前記作業車輌1においては、前記作業部40は、走行路面上における雪を集約して放出する除雪部とされている。
【0018】
具体的には、前記作業部40は、図1〜図3に示すように、前記機体フレーム10の前方側に配設された掻き込みオーガ41と、前記掻き込みオーガ41を囲繞するオーガハウジング42と、前記オーガハウジング42に連通された状態で後方へ延びるブロアハウジング43と、前記ブロアハウジング43に内装されたブロア44と、前記ブロア44の上方に配設されたシュータ45とを備えている。
【0019】
前記掻き込みオーガ41は、前記エンジン20から伝達される回転動力によって機体幅方向に沿った回転軸回りに回転駆動されて、走行路上における雪を機体幅方向中央に掻き集めて前記ブロアハウジング43内の前記ブロア44に向けて送るように構成されている。
具体的には、前記掻き込みオーガ41は、前記エンジン20に作動連結された状態で機体幅方向に沿うように前記オーガハウジング42に軸線回り回転可能に支持されたオーガ駆動軸41aと、前記オーガ駆動軸41aの外周面に螺旋状に設けられた突起41bとを備えている。
【0020】
前記オーガハウジング42は、前下方が開放された状態で前記掻き込みオーガ41を囲繞している。
前記ブロアハウジング43は、基端側が前記機体フレーム10に連結され且つ先端側が前記オーガハウジング42に連結された状態で、前記ブロア44を収容している。
【0021】
前記ブロア44は、前記エンジン20から伝達される回転動力によって駆動され、前記掻き込みオーガ41から前記ブロアハウジング43内に搬送されてきた雪を前記シュータ45に向けて跳ね飛ばすように構成されている。
【0022】
前記シュータ45は、前記ブロア44によって飛ばされた雪の放出ガイドとして作用する。
具体的には、前記シュータ45は基端部が前記ブロアハウジング43に連結された筒状部材とされている。
本実施の形態においては、前記シュータ45は、前記ブロアハウジング43の上面に略垂直方向に沿った回転軸回り回転可能に連結された基端側部材と、基端側部材に対して略水平方向に沿った回転軸回り回動可能に連結された先端側部材とを有しており、前記シュータ45を介して放出される雪の放出方向及び放出角度が調整可能とされている。
【0023】
前記作業部40は、図3に示すように、作業機系伝動機構100を介して前記エンジン20から回転動力を入力している。
詳しくは、図1及び図2に示すように、前記エンジン20は、前記作業部40の後方において前記機体フレーム10に支持されたエンジン本体21と、前記エンジン本体21から前方へ突出されたエンジン出力軸22とを有している。
そして、前記作業機系伝動機構100は、前記エンジン出力軸22と前記作業部40の入力軸40aとを作動連結している。
【0024】
本実施の形態においては、前記作業機系伝動機構100は、図1及び図3に示すように、プーリ・ベルト式伝動機構とされている。
詳しくは、前記作業機系伝動機構100は、図1及び図3に示すように、前記エンジン出力軸22に相対回転不能に支持された作業機系駆動側プーリ101と、前記作業機40の入力軸40aに相対回転不能に支持された作業機系従動側プーリ102と、前記駆動側及び従動側プーリ101,102に巻き回された作業機系無端帯103とを有している。
【0025】
なお、本実施の形態においては、図1に示すように、前記エンジン出力軸22は、中間部位において前記機体フレーム10に連結されたブラケット11に軸受け(図示省略)を介して支持されており、前記作業機系駆動側プーリ101は前記エンジン出力軸22のうち前記ブラケット11より前方側に位置する部分に支持されている。
【0026】
さらに、本実施の形態に係る前記作業車輌1は、図1及び図3に示すように、前記作業機系伝動機構100の伝動状態を選択的に係脱する作業クラッチ機構105を備えている。
前記作業クラッチ機構105は、例えば、前記エンジン出力軸22と前記作業機系駆動側プーリ101との間に配設され、前記作業機系駆動側プーリ101を前記エンジン出力軸22に対して相対回転不能とするクラッチ係合状態と前記作業機系駆動側プーリ101を前記エンジン出力軸22に対して相対回転自在とするクラッチ遮断状態とをとり得るように構成される。
【0027】
前記トランスミッション50は、前記エンジン20より後方側において前記機体フレーム10に支持されている。
前記トランスミッション50は、図1〜図3に示すように、前記エンジン20からの回転動力を無段変速するHST510と、左右一対の旋回用電動モータ520L,520Rと、前記HST510からの走行回転動力及び対応する前記旋回用電動モータ520L,520Rからの旋回回転動力を合成して対応する前記走行部30L,30Rへ向けて出力する左右一対の差動機構530L,530Rと、前記差動機構503L,530Rを収容するミッションケース550とを備えている。
【0028】
前記HST510は、図3に示すように、前記エンジン20に作動連結されたポンプ軸511と、前記ポンプ軸511に相対回転不能に支持された油圧ポンプ512と、前記油圧ポンプ512に一対のHSTライン519を介して流体接続された油圧モータ514と、前記油圧モータ514を相対回転不能に支持するモータ軸513と、前記油圧ポンプ512及び前記油圧モータ514のうち可変容積型とされた少なくとも一方(本実施の形態においては前記油圧ポンプ512であり、以下、可変容積部材という)の吸引/吐出量及び吸引/吐出方向を変化させる出力調整部材515とを備えている。
【0029】
本実施の形態においては、前記HST510は、前記ミッションケース550の後端面に支持されており、前記ポンプ軸511は、前記ミッションケース550から前方へ延びる走行系伝動軸115及び走行系第1伝動機構110を介して前記エンジン出力軸22に作動連結されている。
【0030】
詳しくは、前記ミッションケース550には、後端部が前記ポンプ軸511に軸線回り相対回転不能に連結され且つ前端部が前記ミッションケース550から前方へ延在された前記走行系伝動軸115が支持されている。
なお、前記走行系伝動軸115は、図1に示すように、前端部が前記ブラケット11に軸受けされている。
【0031】
前記走行系第1伝動機構110は、前記エンジン出力軸22と前記走行系伝動軸115とを作動連結している。
本実施の形態においては、図1及び図3に示すように、前記走行系第1伝動機構110はプーリ・ベルト伝動機構とされている。
【0032】
詳しくは、前記走行系第1伝動機構110は、図1及び図3に示すように、前記エンジン出力軸22に相対回転不能に支持された走行系駆動側プーリ111と、前記走行系伝動軸115に相対回転不能に支持された走行系従動側プーリ112と、前記駆動側及び従動側プーリ111,112に巻き回された走行系無端帯113とを有している。
なお、本実施の形態において、前記走行系駆動側プーリ111は、図1に示すように、前記エンジン出力軸22のうち前記ブラケット11より後方側に位置する部分に支持されている。
【0033】
本実施の形態においては、前記油圧ポンプ512及び前記油圧モータ514はアキシャルピストン型とされている。
従って、前記出力調整部材515は、揺動軸回りの傾転位置に応じて前記可変容積部材(本実施の形態においては前記油圧ポンプ512)の吸引/吐出量及び吸引/吐出方向を変化させる可動斜板(図示せず)と、自己の軸線回りの回動に応じて前記可動斜板が前記揺動軸回りに傾転するように前記可動斜板に連結された制御軸515a(図2参照)とを有している。
なお、図2中の符号515bは、前記制御軸515aに相対回転不能に支持された制御アームである。
【0034】
前記出力調整部材515は以下のように作動する。
前記可動斜板が前記揺動軸回り中立位置に位置されると、前記ポンプ軸511が軸線回りに回転駆動されても、前記油圧ポンプ512が圧油を吐出せず、従って、前記油圧モータ514及び前記モータ軸513の回転が停止されるHST中立状態が現出される。
【0035】
前記可動斜板が前記中立位置から前記揺動軸回り一方側へ傾転されると、前記油圧ポンプ512が前記可動斜板の傾転方向に応じた方向に前記可動斜板の傾転角度に応じた量の圧油を吐出し、これにより、前記油圧モータ514及び前記モータ軸513が前記可動斜板の傾転方向に応じた第1回転方向へ前記可動斜板の傾転角度に応じた回転速度で回転する。
つまり、前記可動斜板が前記中立位置から前記揺動軸回り一方側へ傾転されると、前記モータ軸513は車輌前進方向又は車輌後進方向の一方(例えば前進方向)に、前記可動斜板の傾転角度に応じた回転速度で回転する。
【0036】
前記可動斜板が前記中立位置から前記揺動軸回り他方側へ傾転されると、前記油圧ポンプ512が前記可動斜板の傾転方向に応じた方向に前記可動斜板の傾転角度に応じた量の圧油を吐出し、これにより、前記油圧モータ514及び前記モータ軸513が前記可動斜板の傾転方向に応じた第2回転方向へ前記可動斜板の傾転角度に応じた回転速度で回転する。
つまり、前記可動斜板が前記中立位置から前記揺動軸回り他方側へ傾転されると、前記モータ軸513は車輌前進方向又は車輌後進方向の他方(例えば後進方向)に、前記可動斜板の傾転角度に応じた回転速度で回転する。
【0037】
次に、前記左右一対の差動機構530L,530Rについて説明する。
なお、前記左右一対の差動機構530L,530Rは、前記作業車輌1の長手方向中央面を基準にして互いに対して対称とされている。
従って、図中、左側の差動機構530L及び右側の差動機構530Rの構成部材に対して末尾の文字をそれぞれL及びRとした同一符号を用いている。
【0038】
前記左側の差動機構530Lは、前記HST510から作動的に回転動力を入力する第1要素と、対応する左側の旋回用電動モータ520Lから作動的に回転動力を入力する第2要素と、対応する左側の走行部30Lへ回転動力を出力する第3要素とを備えている。
【0039】
同様に、前記右側の差動機構530Rは、前記HST510から作動的に回転動力を入力する第1要素と、対応する右側の旋回用電動モータ520Rから作動的に回転動力を入力する第2要素と、対応する右側の走行部30Rへ回転動力を出力する第3要素とを備えている。
【0040】
斯かる構成を備えた前記作業車輌1においては、前記旋回用電動モータ520L,520Rから対応する前記差動機構530L,530Rの前記第2要素へ入力される回転動力が旋回用の制動回転動力として作用する。即ち、左側及び右側の前記旋回用電動モータ520L,520Rから対応する前記差動機構530L,530Rの前記第2要素に回転動力を入力することで、前記左右一対の差動機構530L,530Rの第3要素間に回転速度差を生じさせ、これにより、前記作業車輌1の左又は右旋回を現出させる。
【0041】
本実施の形態においては、図3に示すように、サンギヤ531L(531R),リングギヤ535L(535R)及びキャリア534L(534R)がそれぞれ前記第1〜第3要素として作用している。
【0042】
即ち、前記差動機構30L(30R)は、前記HST510の前記モータ軸513に作動連結された前記サンギヤ531L(531R)と、前記サンギヤ531L(531R)の回りを公転し得るように該サンギヤ531L(531R)と噛合する遊星ギヤ532L(532R)と、前記遊星ギヤ532L(532R)を相対回転自在に支持すると共に該遊星ギヤ532L(532R)の公転に従って前記サンギヤ531L(531R)の回りを公転する前記キャリア534L(534R)と、前記遊星ギヤ532L(532R)と噛合する内歯を有し且つ外周面において対応する前記旋回用電動モータ520L(520R)に作動連結された前記リングギヤ535L(535R)とを備えている。
【0043】
本実施の形態においては、前記サンギヤ531L(531R)は、前記ミッションケース550内に収容された走行系第2伝動機構120を介して前記モータ軸513に作動連結されている。
【0044】
詳しくは、図3に示すように、前記走行系第2伝動機構120は、機体幅方向に沿うように前記ミッションケース550に収容された第1伝動軸121と、機体幅方向に沿い且つ両端部に前記左右一対の差動機構の前記サンギヤがそれぞれ相対回転不能に支持された第2伝動軸125と、前記モータ軸513及び前記第1伝動軸121を作動連結する上流側伝動機構122と、前記第1及び第2伝動軸121,125を作動連結する下流側伝動機構126とを有している。
【0045】
本実施の形態においては、前記モータ軸513は車輌前後方向に沿っている。
従って、前記上流側伝動機構122は、前記モータ軸513における前記ミッションケース550内に突入された端部に相対回転不能に支持された駆動側ベベルギヤ122aと、前記駆動側ベベルギヤ122aに噛合された状態で前記第1伝動軸121に相対回転不能に支持された従動側ベベルギヤ122bとを含んでいる。
なお、前記モータ軸513から前記第1伝動軸121に回転動力が減速伝達されるように、前記駆動側ベベルギヤ122aが小径とされ且つ前記従動側ベベルギヤ122bが大径とされている。
【0046】
前記下流側伝動機構126は、前記第1伝動軸121に相対回転不能に支持された駆動側スプロケット126aと、前記第2伝動軸125に相対回転不能に支持された従動側スプロケット126bと、前記駆動側スプロケット126a及び前記従動側スプロケット126bに巻き回されたチェーン126cとを備えている。
なお、前記第1伝動軸121から前記第2伝動軸125へ回転動力が減速伝達されるように、前記駆動側スプロケット126aが小径とされ且つ前記従動側スプロケット126bが大径とされている。
【0047】
好ましくは、前記モータ軸513から前記左右一対の差動機構530L,530Rのサンギヤ531L,531Rへ至る伝動経路に選択的に制動力を付加し得るブレーキ機構130が備えられる。
本実施の形態においては、図3に示すように、前記ブレーキ機構130は、前記第1伝動軸121に選択的に制動力を付加し得るように構成されている。
【0048】
本実施の形態においては、前記リングギヤ535L(535R)は、対応する前記旋回用電動モータ520L(520R)の出力軸522L(522R)に作動連結されている。
詳しくは、前記左右一対の旋回用電動モータ520L,520Rは、それぞれ、前記ミッションケース550の外側面に支持された電動モータ本体521L,521Rと、先端部が前記ミッションケース550内に突入された出力軸522L,522Rとを有している。
【0049】
前記旋回用電動モータ520L(520R)の前記出力軸522L(522R)には、ウォームアップギヤ523L(523R)が相対回転不能に設けられており、対応する前記差動機構530L(530R)の前記リングギヤ531L(531R)の外周面に前記ウォームアップギヤ523L(523R)と噛合するギヤが設けられている。
【0050】
なお、前記左右一対の旋回用電動モータ520L,520Rは、前記作業車輌1に備えられた発電機25及びバッテリ26からの電力によって駆動される。
図4に、前記作業車輌1に備えられる下記制御装置400のシステムブロック図を示す。
即ち、前記作業車輌1は、図4に示すように、前記エンジン20の回転動力によって電力を発生させる発電機25と、前記発電機25によって発生された電力を蓄電するバッテリ26とを備えており、前記一対の旋回用電動モータ520L,520Rは前記バッテリ26(及び前記発電機25)を駆動源として作動する。なお、図4中の符号28は前記エンジン20を始動させる為のスタータである。
【0051】
前記キャリア534L(534R)には、対応する前記走行部30L(30R)の走行駆動軸31L(31R)が連結されている。
本実施の形態においては、前記走行部30L(30R)はクローラ式走行装置を有している。
【0052】
詳しくは、前記走行部30L(30R)は、図1〜図3に示すように、対応する前記差動機構530L(530R)の前記キャリア534L(534R)に連結された状態で機体幅方向に沿った前記走行駆動軸31L(31R)と、前記走行駆動軸31L(31R)に相対回転不能に支持された駆動スプロケット32L(32R)と、前記走行駆動軸31L(31R)から機体前後方向に離間された位置で機体幅方向に沿うように配設された走行従動軸33L(33R)と、前記走行従動軸33L(33R)に相対回転不能に支持された従動スプロケット34L(34R)と、前記駆動スプロケット32L(32R)及び前記従動スプロケット34L(34R)に巻き回されたクローラ35L(35R)とを備えている。
当然ながら、前記走行部30L(30R)が、前記クローラ式走行装置に代えて、ホイール式走行装置を有することも可能である。
【0053】
前記左右一対の走行部30L,30Rは、図2に示すように、さらに、左右一対のトラックフレーム38L,38Rを有している。
前記トラックフレーム38L(38R)の機体前後方向一方側(本実施の形態においては後方側)には、対応する前記走行駆動軸31L(31R)が軸受け(図示せず)を介して軸線回り回転可能に挿通され、且つ、機体前後方向他方側(本実施の形態においては前方側)には、対応する前記走行従動軸33L(33R)が軸受け(図示せず)を介して軸線回り回転可能に挿通されている。
【0054】
本実施の形態においては、前記左右一対の走行部30L,30Rは、前記作業車輌1に備えられる油圧シリンダ装置90によって前記機体フレーム10に対して前記走行駆動軸31L,31R回りに相対移動し得るようになっている。
詳しくは、前記一対のトラックフレーム38L,38Rは、図2に示すように、機体前後方向他方側(本実施の形態においては前方側)寄りの部分において連結フレーム39を介して互いに連結されている。
そして、前記油圧シリンダ装置90は、一端側が前記機体フレーム10に直接又は間接的に連結され、且つ、他端側が前記連結フレーム39に連結されている。
【0055】
前記操作部70は、図1及び図2に示すように、前記機体フレーム10から後方且つ上方へ延びるように前記機体フレーム10に立設されたハンドルフレーム71と、前記HST510の出力状態を変化させる為に前記ハンドルフレーム71に直接又は間接的に設けられた人為操作可能な変速操作部材72と、前記左右一対の旋回用電動モータ520L,520Rの出力状態をそれぞれ独立して変化させる為に前記ハンドルフレーム71に直接又は間接的に設けられた人為操作可能な左右一対の旋回操作部材73L,73Rとを備えている。
【0056】
前記変速操作部材72は、好ましくは、前記HST510を中立状態とさせて前記作業車輌1の走行を停止させる中立位置、前記作業車輌1の車速が前進側に最大となる前進側最高速位置、前記前進側最高速位置より遅い所定の前進側最高作業速位置、前記作業車輌1の車速が後進側に最大となる後進側最高速位置及び前記後進側最高速位置より遅い所定の後進側最高作業速位置にそれぞれ係止可能とされる。
前記好ましい形態は、例えば、前記変速操作部材72をガイドするシフトゲート(図示せず)を、前記各操作位置に段部を有する階段状に形成することによって容易に実現可能である。
【0057】
本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、前記変速操作部材72は、前記ハンドルフレーム71に支持された操作ボックス700に設けられている。
前記操作ボックス700には、さらに、前記作業クラッチ機構105を人為操作する為の作業クラッチ操作部材74も設けられている。
【0058】
前記左右一対の旋回操作部材73L,73Rは、互いに対して機体幅方向に離間された状態で前記ハンドルフレーム71に設けられている。
詳しくは、前記ハンドルフレーム71は、下端部が前記機体フレーム10に支持され且つ上端部が把持部とされた左右一対の支持フレーム710L,710Rを有している。
【0059】
そして、前記左右一対の旋回操作部材73L,73Rは、それぞれ、基端部が対応する前記支持フレーム710L,710Rの把持部に機体幅方向に沿った支持軸回り揺動可能に連結されており、人為操作に応じて自由端部が前記把持部に対して接離するようになっている。
【0060】
好ましくは、前記旋回操作部材73L(73R)の自由端部を対応する前記支持フレーム710L(710R)の前記把持部から離間する方向へ付勢する戻しバネ(図示せず)が備えられる。
斯かる構成においては、人為操作力によって前記戻しバネの付勢力に抗して前記旋回操作部材73L(73R)を対応する前記支持フレーム710L(710R)の前記把持部に近接させることで該旋回操作部材73L(73R)が作動位置に位置され、且つ、人為操作力を解除することで該旋回操作部材73L(73R)が非作動位置に位置される。
なお、図1中の符号26aは、前記支持フレーム710L,710Rに架設されたバッテリ台である。
【0061】
次に、本実施の形態に係る前記作業車輌1の制御構造について説明する。
図4に示すように、前記作業車輌1は、さらに、前記変速操作部材72の操作状態を検出する変速操作側センサ410と、前記HST510の出力調整部材515を作動させる変速用電動アクチュエータ80と、前記HST510の出力状態を検出する変速出力側センサ420と、前記出力調整部材515の作動状態を検出する変速作動側センサ425と、前記一対の旋回操作部材73L,73Rの操作状態を検出する左右一対の旋回操作側センサ430L,430Rと、前記左右一対の旋回用電動モータ520L,520Rの出力状態を検出する左右一対の旋回出力側センサ440L,440Rと、前記作業クラッチ操作部材74の操作状態を検出する作業クラッチ操作側センサ460と、前記作業クラッチ機構105の伝動状態を切り換える作業クラッチ用電動アクチュエータ600と、前記作業クラッチ機構105の伝動状態を直接又は間接的に検出する作業クラッチ作動側センサ470と、前記変速用電動アクチュエータ80,前記一対の旋回用電動アクチュエータ520L,520R及び前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600の作動制御を司る制御装置400とを備えている。
【0062】
前記変速用電動アクチュエータ80及び前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600は、前記制御装置400からの制御信号によって作動制御される限り、種々の形態をとり得る。
例えば、前記変速用電動アクチュエータ80及び前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600は、電動モータ、又は、電磁弁及び油圧アクチュエータの組み合わせ体とされ得る。
なお、前記変速用電動アクチュエータ80及び前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600は、前記バッテリ26(及び前記発電機25)を駆動源として作動する。
【0063】
前記制御装置400は、前記作業クラッチ操作部材74の操作状態に応じて前記作業クラッチ機構105の伝動状態が切り換わるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600を作動制御しつつ、前記変速出力側センサ420(又は前記HST作動側センサ425)の検出信号に基づくHST実出力が前記変速操作側センサ410の検出信号に基づくHST目標出力と一致するように前記変速用電動アクチュエータ80を作動制御し且つ前記左右一対の旋回出力側センサ440L,440Rの検出信号に基づく左右旋回用電動モータ実出力が前記左右一対の旋回操作側センサ430L,430Rの検出信号に基づく左右旋回用電動モータ目標出力と一致するように前記左右一対の旋回用電動モータ520L,520Rを作動制御する通常制御を行うように構成されている。
【0064】
詳しくは、前記制御装置400は、前記各種センサ等から入力される信号に基づいて演算処理を実行する制御演算手段を含む演算部401(以下CPUという)と、制御プログラムや制御データ等を記憶するROM,設定値等を電源を切っても失われない状態で保存し且つ前記設定値等が書き換え可能とされたEEPROM及び前記演算部による演算中に生成されるデータを一時的に保持するRAM等を含む記憶部402とを備えている。
【0065】
前記制御装置400は、前記記憶部402に収納された前記制御データとして、前記変速操作部材72の操作状態に応じたHST目標出力に関する変速制御データと、前記左右一対の旋回操作部材73L,73Rの操作状態に応じた左右旋回用電動モータ目標出力に関する旋回制御データとを有している。
前記変速制御データ及び前記旋回制御データは、例えば、制御用換算式又はLUT(ルックアップテーブル)とされる。
【0066】
前記変速操作側センサ410は、例えば、前記変速操作部材72の操作位置を検出するポテンショセンサ、又は、前記変速操作部材72の操作方向及び操作量を累積的に検出するセンサとされる。
前記変速作動側センサ425は、例えば、前記変速用電動アクチュエータ80の作動位置を検出するポテンショセンサ426、又は、前記出力調整部材515の作動位置(前記制御軸515a又は前記制御軸515aに連結される前記制御アーム515bの位置)を検出するポテンショセンサ427とされる。
前記変速出力側センサ420は、例えば、前記モータ軸513から前記第2伝動軸125へ至る伝動経路の何れかの回転部材の回転方向及び回転速度を検出する回転センサとされる。
【0067】
前記左右一対の旋回操作側センサ430L,430Rは、例えば、前記左右一対の旋回操作部材73L,73Rの操作位置を検出するポテンショセンサ、又は、前記旋回操作部材73L,73Rの操作量を累積的に検出するセンサとされる。
前記左右一対の旋回出力側センサ440L,440Rは、例えば、前記出力軸522L,522Rの回転速度を検出する回転センサとされる。
【0068】
前記作業クラッチ操作側センサ460は、例えば、前記作業クラッチ操作部材74の操作位置を検出するポテンショセンサ又は前記作業クラッチ操作部材74の操作位置に応じてON/OFF信号を検出する接触スイッチとされる。
前記作業クラッチ作動側センサ470は、例えば、前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600の作動位置を検出するポテンショセンサ471、又は、前記作業クラッチ機構105の従動側から前記作業機40へ至る伝動部材の回転有無を検出するセンサ472とされる。
【0069】
前記制御装置400は、前記通常制御の実行中において、下記所定エラーが発生すると前記エンジン20を強制的に出力停止状態とさせて前記作業車輌1を停止させるフェール制御を実行するように構成されている。
【0070】
即ち、前述の通り、本実施の形態に係る前記作業車輌1においては、前記変速用電動アクチュエータ80,前記左右一対の旋回用電動モータ520L,520R及び前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600を含むアクチュエータは、対応する前記操作部材72,73L,73R,74に機械的なリンク構造で作動連結されるのではなく、対応する前記操作部材72,73L,73R,74の操作に基づいて前記制御装置400によって電気的に作動制御されている。
【0071】
斯かる構成の前記作業車輌1においては、前記機械的なリンク構造の不要化によって設計自由度の向上を図ることができるという効果が得られる一方で、電気系統にエラーが発生すると前記操作部材72,73L,73R,74を適切に操作したとしても前記アクチュエータが制御不能状態となり得る。
【0072】
この点に鑑み、本実施の形態に係る前記作業車輌1は、所定エラーの発生時には前記制御装置400が前記エンジン20を強制的に出力停止状態とさせるフェール制御を実行するように構成されている。
【0073】
詳しくは、図4に示すように、前記エンジン20は、燃料供給ラインに介挿された燃料ストップソレノイド20aを有している。前記燃料ストップソレノイド20aは、通電されることで前記燃料供給ラインを遮断して前記エンジン20を出力停止状態とするように構成されている。
従って、前記制御装置400は、所定エラーの発生時には前記燃料ストップソレノイド20aに通電するように制御する。
なお、前記燃料ストップソレノイド20aに印可される電力は前記バッテリ26(又は前記発電機25)から供給される。
【0074】
前記所定エラーは、走行安全性の観点により予め定められ、エラーデータとして前記記憶部402に記憶される。
具体的には、前記所定エラーには、
・前記変速操作側センサ410からの検出信号の変化に応じて前記変速用電動モータ80に制御信号を出力しているにも拘わらず所定時間内に前記変速作動側センサ425(又は前記変速出力側センサ420)からの検出信号に変化が生じない第1エラー、
・所定時間内に前記変速作動側センサ425及び前記変速出力側センサ420の双方からの検出信号の入力が無い第2エラー、
・前記変速操作側センサ410からの検出信号に基づくHST目標出力と前記変速出力側センサ420(又は前記変速作動側センサ425)からの検出信号に基づくHST実出力との変位が所定時間を経過しても所定範囲を越えている第3エラー、
・前記変速作動側センサ425(又は前記変速出力側センサ420)からの検出信号が所定範囲を超えている第4エラー、及び
・前記旋回操作側センサ430L,430Rからの検出信号に基づく旋回用電動モータ目標出力と前記旋回出力側センサ440L,440Rからの検出信号に基づく旋回用電動モータ実出力との変位が所定時間を経過しても所定範囲を超えている第5エラー
が含まれる。
【0075】
これらの第1〜第5エラーの何れかが発生すると走行安全性が損なわれる恐れがある為、前記制御装置400は前記燃料ストップソレノイド20aに電力を印可して前記エンジン20を強制的に出力停止状態とする。
【0076】
なお、前記第3エラーにおいては、HST実出力がHST目標出力に対して過回転の場合に特に走行安全性が損なわれる。
同様に、前記第5エラーにおいては、旋回用電動モータ実出力が旋回用電動モータ目標出力に対して過回転の場合に特に走行安全性が損なわれる。
【0077】
前記所定時間を短く設定し過ぎるとエラーの誤検出を招く為、各エラーにおける前記所定時間は走行安全性に対する各エラーの重要度に応じて設定することができる。
前記第1エラーにおける前記所定時間は、前記出力調整部材515を動作可能範囲一方側から他方側へ動作させる為に要する時間に基づき、例えば0.5秒に設定され得る。
前記作業車輌の車速制御が不能となる前記第3エラーと前記作業車輌の旋回制御が不能となる前記第5エラーとを比較すると、意に反した旋回が生じ得る前記第5エラーの方が走行安全性の観点においては重要となる。
従って、前記第5エラーにおける前記所定時間は前記第3エラーにおける前記所定時間より短く設定される。例えば、前記第3エラーにおける前記所定時間は2秒とされ、前記
第5エラーにおける前記所定時間は1.5秒とされ得る。
又、前記第3及び第5エラーにおける前記所定範囲並びに前記第4エラーにおける前記所定範囲は共にHST実出力又は旋回用電動モータ実出力の値としてあり得ない値が設定される。
前記所定時間及び前記所定範囲は、例えば、設定値等を電源を切っても失われない状態で保存し且つ前記設定値等が書き換え可能とされたEEPROMに保存され、必要及び/又は所望により変更される。
【0078】
ところで、本実施の形態におけるように、前記エンジン20が通電により燃料供給を遮断する前記燃料ストップソレノイド20aを備えている形態においては、前記エンジン20が高負荷状態の際には前記燃料ストップソレノイド20aに通電を行っても前記燃料供給ラインを遮断できない事態が生じ得る。
【0079】
即ち、前記エンジン20が高負荷状態の為に前記燃料供給ラインに大流量の燃料が流れている場合には、燃料流れが前記燃料ストップソレノイド20aによる遮断力を上回り、これにより、前記燃料ストップソレノイド20aに通電を行っても、前記エンジン20を停止できない事態が生じ得る。
【0080】
そこで、本実施の形態に係る作業車輌1においては、前記制御装置400は、前記フェール制御の実行に際し、前記エンジン20が高負荷状態であるか否かを判断し、前記エンジン20が高負荷状態の場合には前記エンジン20の負荷を低減させてから所定時間経過後に前記燃料ストップソレノイド20aへの通電処理を実行するように構成されている。
【0081】
具体的には、前記制御装置400は、前記変速作動側センサ425又は前記変速出力側センサ420からの信号に基づき車輌が前進走行中であり且つ前記作業クラッチ操作側センサ460又は前記作業クラッチ作動側センサ470からの信号に基づき前記作業機20が駆動中である場合には前記エンジン20が高負荷状態であると判断するように構成されている。
【0082】
なお、前記第2エラーの発生時には、前記制御装置400は、前記変速作動側センサ425及び前記変速出力側センサ420の双方から検出信号を入力することはできず、車輌が前進走行中であるか否かの判断を行うことができない。
従って、前記制御装置400は、前記フェール制御の実行に際し前記変速作動側センサ425及び前記変速出力側センサ420の双方からの検出信号の入力が無い場合には車輌が前進走行中であると擬制するように構成されている。
【0083】
前記エンジン20の負荷を低減させる具体的な手段として、前記制御装置400は、前記作業クラッチ機構105が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600を作動させる制御、及び/又は、前記HST510が中立状態となるように前記変速用電動アクチュエータ80を作動させること制御を実行するように構成されている。
【0084】
なお、前記変速作動側センサ425又は前記変速出力側センサ420に関連したエラーが発生している場合には、前記HST510を中立状態とさせる制御を実行することができない。
従って、前記第1〜第4エラーに基づく前記フェール制御の実行に際しエンジン高負荷状態の場合には、前記制御装置400は、前記作業クラッチ機構105が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600を作動させてから所定時間経過後に前記燃料ストップバルブ20aへの通電を行って前記エンジン20を強制的に出力停止状態とするように構成されている。
【0085】
一方、前記第5エラー発生時においては、前記HST510を中立状態とさせる制御が可能である。
従って、前記第5エラーに基づく前記フェール制御の実行に際しエンジン高負荷状態の場合には、前記制御装置400は、前記作業クラッチ機構105が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600を作動させ及び/又は前記HST510が中立状態となるように前記変速用電動アクチュエータ80を作動させてから所定時間経過後に前記燃料ストップバルブ20aへの通電を行って前記エンジン20を強制的に出力停止状態とするように構成されている。
【0086】
前記エンジン20の負荷を低減させてから前記燃料ストップソレノイド20aへの通電を行うまでの前記所定時間は適宜設定されて、前記記憶部402(好ましくはEEPROM)に記憶される。
例えば、前記所定時間は1〜5秒とされる。
【0087】
本実施の形態に係る作業車輌1は、図1〜図2及び4に示すように、さらに、前記走行系伝動経路の動力伝達を係脱させる為の走行クラッチ操作部材75と、前記走行クラッチ操作部材75の操作状態を検出する走行クラッチセンサ450とを備えている。
【0088】
前記走行クラッチ操作部材75は、前記操作部70に備えられるデッドマンクラッチレバーとされている。
詳しくは、前記ハンドルフレーム71には、図1及び図2に示すように、前記左右一対の支持フレーム710L,710Rの自由端部同士を連結する機体幅方向に沿った連結フレーム711が備えられる。
【0089】
前記デッドマンクラッチレバーの形態をなす前記走行クラッチ操作部材75は、前記連結フレーム711から離間する方向へ付勢部材(図示せず)によって付勢された状態で、前記連結フレーム711から離間されたクラッチ解除位置及び前記連結フレームに近接されたクラッチ係合位置をとり得るように車輌幅方向に沿った回動軸回りに揺動可能に前記ハンドルフレーム71に支持される。
【0090】
即ち、前記デッドマンクラッチレバーの形態をなす前記走行クラッチ操作部材75は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結フレーム711と共に把持されることでクラッチ係合位置に位置し、且つ、把持状態から解放されることで前記付勢部材の付勢力によってクラッチ解除位置に位置する。
【0091】
前記制御装置400は、前記走行クラッチセンサ450からの信号に基づき前記走行クラッチ操作部材75がクラッチ解除位置に位置されたと判断すると、前記変速操作部材72の操作状態に拘わらず前記HST510の中立状態を前記HST目標出力として前記変速用電動アクチュエータ80の作動制御を実行する。
【0092】
ここで、前記制御装置400に記憶されている制御プログラムについて説明する。
図5及び図6に、前記制御プログラムのフローチャートを示す。
前記制御プログラムは、前記エンジン20の駆動開始(及び場合によってはモード選択スイッチへの人為操作)に伴ってスタートする。
【0093】
まず、前記通常制御における走行系の制御について説明する。
ステップ10において、前記走行クラッチセンサ450からの信号に基づき前記走行系伝動経路を動力伝達状態とすべきか否かが判断され、YESの場合(即ち、前記走行クラッチ操作部材75がクラッチ係合位置に位置されている場合)にはステップ11へ移行し、NOの場合(即ち、前記走行クラッチ操作部材75がクラッチ解除位置に位置されている場合)にはステップ21へ移行する。
【0094】
ステップ11においては、前記変速出力側センサ420(及び/又は前記HST作動側センサ425)からの信号と前記変速操作側センサ410からの信号とに基づき算出される前記HST実出力及び前記HST目標出力間の偏差が所定の不感帯範囲を越えているか否かが判断され、YESの場合(即ち、前記変速操作部材72が操作された場合)にはステップ12へ移行し、NOの場合(即ち、前記変速操作部材72が操作されていない場合)にはステップ13へ移行する。
【0095】
ステップ12においては、前記制御装置400は、前記HST実出力を前記HST目標出力へ近づける方向へ前記変速用電動モータ80を駆動させる制御信号を出力する。
前記制御信号は、例えば、前記偏差の大きさに応じたパルス幅を有するパルス幅変調制御信号とされる。
なお、前記制御装置400の前記記憶部402には、前記偏差の大きさとパルス幅との関係に関する(演算式又はルックアップテーブル等の)制御データが収納されている。
【0096】
ステップ13においては、前記左右の旋回出力側センサ440L,440Rからの信号と前記左右の旋回操作側センサ430L,430Rからの信号とに基づき算出される左右の旋回用電動モータ実出力及び左右の旋回用電動モータ目標出力間の偏差が所定の不感帯範囲を越えているか否かが判断され、YESの場合(即ち、前記左右の旋回操作部材73L,73Rが操作された場合)にはステップ14へ移行し、NOの場合(即ち、前記左右の旋回操作部材73L,73Rが操作されていない場合)には後述するステップ50へ移行する。
【0097】
ステップ14においては、前記制御装置400は、前記左右の旋回用電動モータ実出力を前記左右の旋回用電動モータ目標出力へ近づける方向へ前記左右の旋回用電動モータ520L,520Rを駆動させる制御信号を出力する。
前記制御信号は、例えば、前記偏差の大きさに応じたパルス幅を有するパルス幅変調制御信号とされる。
なお、前記制御装置400の前記記憶部402には、前記偏差の大きさとパルス幅との関係に関する(演算式又はルックアップテーブル等の)制御データが収納されている。
【0098】
ステップ10においてNOの場合(即ち、前記走行クラッチ操作部材75がクラッチ解除位置に位置されている場合)には、前述の通り、ステップ21へ移行する。
【0099】
ステップ21においては、前記変速出力側センサ420(及び/又は前記HST作動側センサ425)からの信号に基づき算出されるHST実出力とHST中立出力との間の偏差が不感帯範囲を越えている否かが判断され、YESの場合(即ち、前記HST510が中立状態に無い場合)にはステップ22へ移行し、NOの場合(即ち、前記HST510が中立状態の場合)にはステップ23へ移行する。
【0100】
ステップ22においては、前記制御装置400は、前記HST実出力を前記HST目標出力であるHST中立出力へ近づける方向へ前記変速用電動モータ80を駆動させる制御信号を出力する。
前記制御信号は、例えば、前記偏差の大きさに応じたパルス幅を有するパルス幅変調制御信号とされる。
なお、前記制御装置400の前記記憶部402には、前記偏差の大きさとパルス幅との関係に関する(演算式又はルックアップテーブル等の)制御データが収納されている。
【0101】
ステップ23においては、前記制御装置400は、前記左右の旋回用電動モータ520L,520Rを停止させる制御信号を出力する。
その後、下記ステップ50へ移行する。
【0102】
次に、前記通常制御における作業機系の制御について説明する。
ステップ30において、前記作業クラッチ操作側センサ460からの信号に基づき前記作業機系伝動経路を動力伝達状態とすべきか否かが判断され、YESの場合(即ち、前記作業クラッチ操作部材74がクラッチ係合位置に位置されている場合)にはステップ31へ移行し、NOの場合(即ち、前記作業クラッチ操作部材74がクラッチ解除位置に位置されている場合)にはステップ32へ移行する。
【0103】
ステップ31及びステップ32においては、前記制御装置400は、前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600をそれぞれ係合動作又は解除動作させる。
その後、下記ステップ50へ移行する。
【0104】
次に、前記フェール制御について説明する。
ステップ50において、前記第1〜第5エラーのうちの少なくとも一のエラーが発生しているか否かが判定される。
【0105】
ステップ50においてNOの場合(即ち、前記第1〜第5エラーの何れも発生していない場合)には、ステップ60へ移行する。
ステップ60においては、前記制御プログラムを終了するか否かが判断される。前記制御プログラムを終了するか否かは、例えば、前記エンジン20が停止したか否かに基づき判断される。
ステップ60においてYESの場合には前記制御プログラムが終了され、NOの場合には前記ステップ10及びステップ30へ戻る。
【0106】
一方、ステップ50においてYESの場合(即ち、前記第1〜第5エラーのうちの少なくとも一のエラーが発生している場合)には、ステップ51へ移行する。
【0107】
ステップ51においては、前記エンジン20が高負荷状態にあるか否かが判定される。
具体的には、前記制御装置400は、前述の通り、車輌が前進走行中若しくは前進走行中と擬制される状態で前記作業機20が駆動中であるか否かに基づき、前記エンジン20の負荷状態を判定する。
【0108】
ステップ51においてNOの場合(即ち、前記エンジン20が高負荷状態ではない場合)には、ステップ54へ移行して、前記燃料ストップソレノイド20aに通電処理を行い、前記燃料供給ラインを遮断して、前記エンジン20を出力停止状態とする。
前記エンジン20が高負荷状態にない場合には、前記燃料供給ラインにはそれ程大流量の燃料は流れていない。従って、前記燃料ストップソレノイド20aに直ちに通電を行うことで、前記燃料供給ラインを遮断することができる。
【0109】
ステップ51においてYESの場合(即ち、前記エンジン20が高負荷状態の場合)には、ステップ52へ移行する。
ステップ52においては、前記エンジン20の負荷を低減させる制御が実行される。
具体的には、前記制御装置400は、前述の通り、前記作業クラッチ機構105が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータ600を作動させる制御、及び/又は、前記HST510が中立状態となるように前記変速用電動アクチュエータ80を作動させる制御を実行することで、前記エンジン20の負荷を低減させる。
【0110】
その後、ステップ53で所定時間(例えば1〜5秒)経過後に、ステップ54へ移行する。
【0111】
このように、フェール制御の実行に際し前記エンジン20が高負荷状態にある場合には、前記エンジン20の負荷を低減させてから所定時間経過後に前記燃料ストップソレノイド20aに通電を行うことで、前記燃料供給ラインを確実に遮断させることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 作業車輌
20 エンジン
20a 燃料ストップソレノイド
30L,30R 左右の走行装置
72 変速操作部材
73L,73R 左右の旋回操作部材
74 作業クラッチ操作部材
80 変速用電動モータ
105 作業クラッチ機構
400 制御装置
410 変速操作側センサ
420 変速出力側センサ
425 変速作動側センサ
430L,430R 左右の旋回操作側センサ
440L,440R 左右の旋回出力側センサ
460 作業クラッチ操作側センサ
470 作業クラッチ作動側センサ
510 HST
515 出力調整部材
520L,520R 左右の旋回用電動モータ
530L,530R 左右の差動機構
600 作業クラッチ用電動アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給ラインに介挿された燃料ストップソレノイドを有し、前記燃料ストップソレノイドへの通電により燃料供給が遮断されて出力停止状態となるように構成されたエンジンと、左右一対の走行装置と、前記エンジンから作動的に回転動力を入力するHSTと、左右一対の旋回用電動モータと、前記HSTからの走行回転動力及び対応する前記旋回用電動モータからの旋回回転動力を合成して対応する前記走行装置へ向けて出力する左右一対の差動機構と、人為操作可能な変速操作部材と、前記HSTの出力調整部材を作動させる変速用電動アクチュエータと、前記変速操作部材の操作状態を検出する変速操作側センサと、前記出力調整部材の作動状態を検出する変速作動側センサと、前記HSTの出力状態を検出する変速出力側センサと、人為操作可能な左右一対の旋回操作部材と、前記一対の旋回操作部材の操作状態を検出する左右一対の旋回操作側センサと、前記左右一対の旋回用電動モータの出力状態を検出する左右一対の旋回出力側センサと、前記エンジンから作業部へ至る作業系伝動経路に介挿された作業クラッチ機構と、人為操作可能な作業クラッチ操作部材と、前記作業クラッチ操作部材の操作状態を検出する作業クラッチ操作側センサと、前記作業クラッチ機構の伝動状態を切り換える作業クラッチ用電動アクチュエータと、前記作業クラッチ機構の伝動状態を検出する作業クラッチ作動側センサと、前記作業クラッチ操作部材の操作状態に応じて前記作業クラッチ機構の伝動状態が切り換わるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータを作動制御しつつ、前記変速作動側センサ又は前記変速出力側センサからの検出信号に基づくHST実出力が前記変速操作側センサからの検出信号に基づくHST目標出力と一致するように前記変速用電動アクチュエータを作動制御し且つ前記左右一対の旋回出力側センサからの検出信号に基づく左右旋回用電動モータ実出力がそれぞれ前記左右一対の旋回操作側センサからの検出信号に基づく左右旋回用電動モータ目標出力と一致するように前記左右一対の旋回用電動モータを作動制御する通常制御を実行する制御装置とを備えた作業車輌であって、
前記制御装置は、前記通常制御の実行中において、前記変速操作側センサからの検出信号の変化に応じて前記変速用電動モータに制御信号を出力しているにも拘わらず所定時間内に前記変速作動側センサからの検出信号に変化が生じない第1エラーが発生すると、前記燃料ストップソレノイドへの通電を行って前記エンジンを強制的に出力停止状態とするフェール制御を実行するように構成され、
前記制御装置は、前記フェール制御の実行に際し、前記変速作動側センサ又は前記変速出力側センサからの信号に基づき車輌が前進走行中であり且つ前記作業クラッチ操作側センサ又は前記作業クラッチ作動側センサからの信号に基づき前記作業部が駆動中である場合にはエンジン高負荷状態であると判断し、エンジン高負荷状態の場合には前記作業クラッチ機構が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータを作動させてから所定時間経過後に前記燃料ストップバルブへの通電を行って前記エンジンを強制的に出力停止状態とすることを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1エラー又は所定時間内に前記変速作動側センサ及び前記変速出力側センサの双方からの検出信号の入力が無い第2エラーの何れかが発生すると前記フェール制御を実行するように構成され、さらに、前記フェール制御の実行に際し、前記変速作動側センサ及び前記変速出力側センサの双方からの検出信号の入力が無い場合には車輌が前進走行中であると擬制するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業車輌。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1エラー,前記第2エラー又は前記変速操作側センサからの検出信号に基づくHST目標出力と前記変速作動側センサ又は前記変速出力側センサからの検出信号に基づくHST実出力との変位が所定時間を経過しても所定範囲を越えている第3エラーの何れかが発生すると前記フェール制御を実行するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の作業車輌。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1〜第3エラー又は前記変速作動側センサの検出信号が所定範囲を超えている第4エラーの何れかが発生すると前記フェール制御を実行するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の作業車輌。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1〜第4エラー又は前記旋回操作側センサからの検出信号に基づく旋回用電動モータ目標出力と前記旋回出力側センサからの検出信号に基づく旋回用電動モータ実出力との変位が所定時間を経過しても所定範囲を超えている第5エラーの何れかが発生すると前記フェール制御を実行するように構成され、さらに、前記第1〜第4エラーに基づく前記フェール制御の実行に際しエンジン高負荷状態の場合には前記作業クラッチ機構が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータを作動させてから所定時間経過後に前記燃料ストップバルブへの通電を行って前記エンジンを強制的に出力停止状態とし、前記第5エラーに基づく前記フェール制御の実行に際しエンジン高負荷状態の場合には前記作業クラッチ機構が動力遮断状態となるように前記作業クラッチ用電動アクチュエータを作動させ及び/又は前記HSTが中立状態となるように前記変速用電動アクチュエータを作動させてから所定時間経過後に前記燃料ストップバルブへの通電を行って前記エンジンを強制的に出力停止状態とすることを特徴とする請求項4に記載の作業車輌。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−202028(P2010−202028A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49250(P2009−49250)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】