説明

侵入物体識別装置

【課題】移動する物体や人でも適用可能な小型かつ低消費電力で駆動することのできる侵入物体識別装置を得る。
【解決手段】予め登録された識別情報に対応して送信用漏洩同軸ケーブル1から放射された電波を反射するときの反射強度を変化させる電波反射手段3を設ける。受信用漏洩同軸ケーブル2によって、送信用漏洩同軸ケーブル1から放射された電波と電波反射手段3で反射された反射波とを受信し、識別情報抽出手段400は、受信用漏洩同軸ケーブル2で受信された合成波の信号レベルの変化に基づいて、電波反射手段3の識別情報を抽出する。識別情報照合手段500は、抽出された識別情報と予め登録されている識別情報とを照合し、その照合結果を表示手段600または警報発生手段700に送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、監視区域内に侵入した物体から識別情報を送信することで侵入物体の識別を行う侵入物体識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、侵入物体識別装置として、スペクトラム拡散された電波を利用した侵入検知器と識別情報送信器を用いて侵入検知と侵入識別を行うようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
このような侵入物体識別装置は、侵入検知器の一方の漏洩同軸ケーブルから放射される第1の擬似雑音符号でスペクトラム拡散された電波を受信し、第2の擬似雑音符号でスペクトラム拡散された識別用の信号を放射する。識別情報送信器から放射された信号を侵入検知器の他方の漏洩同軸ケーブルで受信し、受信レベルの変動より識別情報送信器の有無の特定を行う。ここで、識別情報送信器は、一方の漏洩同軸ケーブルから放射されたスペクトラム拡散信号を受信する受信機と、第1の擬似雑音符号に同期させた第2の擬似雑音符号でスペクトラム拡散された信号を発生する装置と、スペクトラム拡散した信号を所定量だけ増幅して他方の漏洩同軸ケーブルに送信する送信機とで構成されていた。
【0003】
【特許文献1】特開2004−117175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、識別情報送信器は、送受信アンテナ、送受信部、擬似雑音符号同期回路、擬似雑音符号発生部、拡散回路部で構成されていることから、装置の構成が複雑で消費電力が大きくバッテリーで長期間駆動させることができない。そのため、移動する物体および人に携帯させることができないという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、移動する物体や人でも適用可能な小型かつ低消費電力で駆動することのできる侵入物体識別装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る侵入物体識別装置は、予め登録された識別情報に対応して電波送信手段から放射された電波を反射するときの反射強度を変化させる電波反射手段を設け、電波送信手段から放射された電波と電波反射手段で反射された反射波とを電波受信手段で受信し、識別情報抽出手段により、電波受信手段の信号レベルの変化に基づいて、電波反射手段に対応した識別情報を抽出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の侵入物体識別装置は、予め登録された識別情報に対応して電波送信手段から放射された電波を反射するときの反射強度を変化させる電波反射手段を用いて、識別情報の抽出を行うようにしたので、移動する物体や人でも適用可能な小型かつ低消費電力で駆動することのできる侵入物体識別装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による侵入物体識別装置を示す構成図である。
図において、侵入物体識別装置は、送信用漏洩同軸ケーブル1、受信用漏洩同軸ケーブル2、電波反射手段3、信号送信手段100、信号受信手段200、侵入検知手段300、識別情報抽出手段400、識別情報照合手段500、表示手段600、警報発生手段700を備えている。
【0009】
送信用漏洩同軸ケーブル1及び受信用漏洩同軸ケーブル2は、それぞれ電波を放射する電波送信手段と、電波送信手段から放射された電波と電波反射手段3の反射波を受信する電波受信手段である。これら送信用漏洩同軸ケーブル1及び受信用漏洩同軸ケーブル2は、監視区域にほぼ平行に敷設された漏洩伝送路である。電波反射手段3は、例えば、人間等の識別対象が所持するもので、予め登録されている識別情報に対応して、送信用漏洩同軸ケーブル1から放射された電波を反射するときの反射強度を変化させるよう構成されている。尚、侵入物体4は、電波反射手段3を所持しない識別対象を示している。
【0010】
図2は、電波反射手段3の一例を示す構成図である。
電波反射手段3は、図示のように、共振回路800とスイッチ駆動回路811と信号発生器812とを備えている。共振回路800は、ループアンテナ801と可変コンデンサ802とスイッチ803とからなる。可変コンデンサ802とスイッチ803とは並列接続され、この並列回路にループアンテナ801が接続されて固有の周波数での共振回路を構成している。ここで、可変コンデンサ802の容量を変化させることで、共振周波数の調整を行うことができる。共振周波数はループアンテナ801で受信する周波数としている。
【0011】
スイッチ803はこの共振回路800の駆動制御を行うためのスイッチである。送信用漏洩同軸ケーブル1から放射された電波をループアンテナ801で受信した時、スイッチ803がオフなら共振回路800は調整した周波数で共振する。また、スイッチ803がオンなら共振回路800は共振しない。共振回路800が共振している時と共振していない時で、反射強度が異なる。スイッチ803のオン/オフを繰り返すことにより、反射強度を変化させることができる。スイッチ駆動回路811は、このスイッチ803のオン/オフ制御を行うものである。また、信号発生器812は、識別情報を蓄積しており、送信したい識別情報に基づいた所定のスイッチオン/オフのパターンを生成し、スイッチ駆動回路811にこのパターンを伝送するよう構成されている。
【0012】
信号送信手段100は、擬似雑音符号発生部101とスペクトラム拡散部102と送信部103で構成され、送信用漏洩同軸ケーブル1への送信信号を生成するものである。擬似雑音符号発生部101は、第一の擬似雑音符号を発生させるものであり、スペクトラム拡散部102は、第一の疑似雑音符号を用いて侵入物体検知用の送信信号を生成するもので、送信部103はスペクトラム拡散部102で生成された送信信号を送信用漏洩同軸ケーブル1に対して送信するものである。
【0013】
信号受信手段200は、受信用漏洩同軸ケーブル2の受信信号から、電波反射手段3を所持する識別対象や侵入物体4に対応した信号レベルの変化を測定したり、送信用漏洩同軸ケーブル1及び受信用漏洩同軸ケーブル2におけるこれら電波反射手段3や侵入物体4の距離を測定したりするものであり、受信部201、スペクトラム逆拡散部203、遅延時間制御部202、測位部204、受信信号レベル測定部205を備えている。受信部201は、受信用漏洩同軸ケーブル2で受信された電波を受信するもので、この受信信号はスペクトラム逆拡散部203に入力されるよう構成されている。遅延時間制御部202は、擬似雑音符号発生部101における第一の擬似雑音符号の位相を遅延時間tだけ遅らせた第二の擬似雑音符号を生成し、スペクトラム逆拡散部203と測位部204とに出力するものである。
【0014】
スペクトラム逆拡散部203は、第二の疑似雑音符号に基づいて受信部201からの信号をスペクトラム逆拡散し、受信信号を生成するものである。測位部204は、遅延時間tを変化させほぼ全スロットから放射された各電波の受信信号レベルを得るものである。即ち、遅延時間tと漏洩同軸ケーブルのスロット位置とはほぼ対応していることから、遅延時間tを変化させることで測位データを得る。受信信号レベル測定部205は、スペクトラム逆拡散部203で生成された受信信号の信号レベルを取得するものである。そして、これら受信信号レベル測定部205の受信信号レベルと測位部204の測位データは侵入検知手段300に入力されるよう構成されている。
【0015】
尚、遅延時間制御部202と測位部204とによって、電波送信手段から放射された電波が電波反射手段3で反射され電波受信手段で受信するまでの電波伝搬遅延時間を測定する電波伝搬遅延時間計測手段が構成され、測位部204によって、電波伝搬遅延時間に基づいて、電波反射手段3から電波送信手段及び電波受信手段までの距離を計測する測距手段が構成されている。
【0016】
侵入検知手段300は、受信信号レベル測定部205の受信信号レベルと測位部204の測位データに基づいて、侵入物体4が存在するか否かを判定するものであり、受信信号レベル記録部301と受信信号レベル比較部302から構成される。受信信号レベル記録部301は、受信信号レベルと測位データを記録するものである。受信信号レベル比較部302は、受信信号レベルの変化と所定の閾値とを比較し、侵入の有無を判定するものである。受信信号レベル比較部302で侵入有と判定された時、受信信号レベルのデータは識別情報抽出手段400に入力されるよう構成されている。
【0017】
識別情報抽出手段400は、侵入検知手段300から出力された受信信号レベルのデータを解析し、その解析結果を識別情報照合手段500に出力するものである。識別情報照合手段500は、識別情報抽出手段400で解析された識別情報が予め登録されている識別情報であるか否かを判定するものであり、識別情報照合部501と識別情報データベース502を備えている。識別情報照合部501は、解析結果と識別情報データベース502を照合し、電波反射手段3から送信された識別情報か否か判定する。識別情報と判定された時、識別情報を表示手段600に入力する。識別情報でないと判別した時、判別不可の信号を警報発生手段700に出力する。識別情報データベース502は、予め登録された識別情報を格納するデータベースである。
【0018】
表示手段600は、例えば、ディスプレイからなり、識別情報照合手段500から出力された識別情報を画面表示するといった識別情報の表示を行うものである。また、警報発生手段700は、識別情報照合手段500から判別不可信号が出力された場合、警報を出力するものである。
【0019】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
信号送信手段100は第一の擬似雑音符号でスペクトラム拡散された侵入物体検知用の送信信号を生成し、送信用漏洩同軸ケーブル1に送信信号を送信する。即ち、擬似雑音符号発生部101で発生させた第一の擬似雑音符号を用いてスペクトラム拡散部102で侵入物体検知用の送信信号を生成し、送信部103を介して送信用漏洩同軸ケーブル1に送信信号を送信する。
送信信号は、送信用漏洩同軸ケーブル1から電波として放射する。この時、電波は送信用漏洩同軸ケーブル1のスロット位置に応じて遅れて放射する。そして、スロット位置に応じた遅延時間に対応して電波は受信用漏洩同軸ケーブル2に入射する。
【0020】
一方、電波反射手段3によって電波は反射され第二の反射波が発生する。電波反射手段3は第二の反射波の反射強度を送信したい識別情報に基づいて変化させる。
図3は、識別情報のパターンの一例を示す説明図である。
このような識別情報を0と1とで表現し、信号発生器812は、この識別情報のパターンを繰り返し発生させる。これにより、スイッチ駆動回路811は、識別情報のパターンに従ってスイッチ803をオン/オフ制御し、共振回路800の共振状態がパターンに従って変化する。このような第二の反射波は送信用漏洩同軸ケーブル1から放射された電波に合成され、これが受信用漏洩同軸ケーブル2で受信される。
【0021】
受信用漏洩同軸ケーブル2に入射された電波は信号受信手段200に入力される。信号受信手段200の受信部201で受信した電波はスペクトラム逆拡散部203に入力される。遅延時間制御部202は、第一の擬似雑音符号の位相を遅延時間tだけ遅らせた第二の擬似雑音符号を生成しスペクトラム逆拡散部203に出力する。スペクトラム逆拡散部203では、第二の疑似雑音符号に基づいて受信部201からの受信信号をスペクトラム逆拡散した受信信号を生成する。生成した受信信号は受信信号レベル測定部205に入力され受信信号レベルが得られる。遅延時間tを変化させることで、受信信号レベル測定部205では、ほぼ全スロットから放射された各電波の受信信号レベルを得る。また、遅延時間tと漏洩同軸ケーブルのスロット位置とはほぼ対応していることから、測位部204で測位データを得る。受信信号レベルと測位データは侵入検知手段300に入力される。
【0022】
侵入検知手段300の受信信号レベル記録部301は、受信信号レベルと測位データを記録する。
図4は、受信信号レベルと距離の関係を示す説明図である。
図4(a)に示すように、監視区域内に、電波反射手段3を所持する識別対象や侵入物体4が存在すると、これらの物体によって電波は反射され、物体がある位置では反射波が電波に合成され、受信信号レベルが変化する。波形5と波形6のように、物体がある位置における受信信号レベルにピークが観測される。受信信号レベル比較部302は、受信信号レベルの変化と所定の閾値を比較し、侵入の有無を判定する。侵入有と判定された時、受信信号レベルのデータは識別情報抽出手段400に入力される。
【0023】
識別情報抽出手段400は、侵入検知手段300からの受信信号を解析して識別情報を抽出する。即ち、電波反射手段3で反射強度を変化させた第二の反射波が電波に合成された時の受信信号レベルは、図4(b)に示すように、波形5は波形6と比較して大きく変化し、かつ、固有の変化を示す。尚、波形5は電波反射手段3を所持する識別対象の受信信号レベル、波形6は電波反射手段3を所持しない侵入物体4の受信信号レベルを示しており、波形5aは共振した場合、波形5bは共振していない場合の信号レベルである。識別情報抽出手段400はこのような変化する受信信号レベルを解析し、解析結果を識別情報照合手段500に出力する。
【0024】
識別情報照合手段500は、識別情報抽出手段400からの受信信号を入力すると、識別情報照合部501は識別情報データベース502の登録識別情報に基づき、電波反射手段3の識別情報が、予め登録されている識別情報に一致するかを照合する。識別情報データベース502に登録されている識別情報に一致したと判定した場合、識別情報を表示手段600に入力する。一方、識別情報でないと判別した時、判別不可の信号を警報発生手段700に出力する。
【0025】
表示手段600は、識別情報照合手段500から送出された識別情報を画面表示する。また、警報発生手段700は、識別情報照合手段500から判別不可信号が入力されると警報を発令する。
【0026】
上記の電波反射手段3の電源は以下のように実現してもよい。
図5は、電源供給装置の一例を示す構成図である。
図示の電源供給装置は、正弦波発生器7、パワーアンプ8、アンテナ9、整流回路10、電圧安定回路11を用いたものである。正弦波発生器7及びパワーアンプ8は電力供給手段を構成するものであり、正弦波発生器7は正弦波を発生させ、パワーアンプ8は、正弦波発生器7で発生した正弦波を増幅して送信用漏洩同軸ケーブル1に供給するものである。アンテナ9は送信用漏洩同軸ケーブル1からの電波を受信する電波受信手段を構成する。整流回路10及び電圧安定回路11は発電手段を構成するものであり、整流回路10はアンテナ9で受信した電波を整流し、電圧安定回路11は、整流回路10で整流された直流電圧を安定化させて電波反射手段3を供給するものである。
【0027】
また、電波反射手段3に、小型バッテリーや太陽電池など自然現象を利用した発電機を搭載させても良い。
更に、電波反射手段3は、識別対象者の帽子やベルトにループコイルを取り付け、他の回路をICチップ化することで実現してもよい。
また、上記実施の形態1では、スペクトラム拡散された電波を用いたが、例えば、特開平10−95338号公報等に示されているようなパルス電波など測距が行える電波を使用しても実施可能である。
【0028】
また、漏洩同軸ケーブルの代わりにアンテナを用いることもできる。この場合、アンテナ間を通過する若しくはアンテナの周辺に接近する電波反射手段3を所持する識別対象や侵入物体4に対して作用する。電波反射手段3を有した識別対象が通過若しくは接近すれば、上記実施の形態1で説明したように、その存在を検知する共に、識別情報を読み取ってデータベースと照合することにより、登録物体か否かを判別できる。一方、電波反射手段3を有していない侵入物体4が通過若しくは接近すれば、電界変動のみが観測され、識別情報は読取れないため、不審物体と判別できる。
【0029】
以上のように、実施の形態1の侵入物体識別装置によれば、電波を放射する電波送信手段と、予め登録された識別情報に対応して電波送信手段から放射された電波を反射するときの反射強度を変化させる電波反射手段と、電波送信手段から放射された電波と電波反射手段で反射された反射波とを受信する電波受信手段と、電波受信手段の信号レベルの変化に基づいて、電波反射手段に対応した識別情報を抽出する識別情報抽出手段とを備えたので、移動する物体や人でも適用可能な小型かつ低消費電力で駆動することのできる侵入物体識別装置を得ることができる。
【0030】
また、実施の形態1の侵入物体識別装置によれば、電波反射手段は、電波送信手段から放射される電波に共振する共振回路を備え、共振回路の共振の有無を識別情報に対応して変化させるようにしたので、簡単な構成で小型かつ低消費電力で駆動可能な電波反射手段を実現することができる。
【0031】
また、実施の形態1の侵入物体識別装置によれば、電波送信手段を介して電波反射手段に電力を供給する電波を送信する電力供給手段と、電波送信手段から放射された電力供給のための電波を受信する電力供給用電波受信手段と、電力供給用電波受信手段で受信した電波から、電波反射手段を駆動するための電力を取り出す発電手段とを備えたので、電波反射手段にバッテリー等の電源を持つ必要がなく、更に電波反射手段の小型化を図ることができる。
【0032】
また、実施の形態1の侵入物体識別装置によれば、識別情報抽出手段で抽出された識別情報と、予め登録されている識別情報とを照合し、これらの識別情報が一致した場合は識別情報を出力し、一致しない場合は判別不可を出力する識別情報照合手段と、識別情報照合手段から識別情報が出力された場合は、識別情報を表示する表示手段と、識別情報照合手段で判別不可が出力された場合、警報を出力する警報発生手段とを備えたので、識別対象が不審物体か否かを容易に知ることができる。
【0033】
また、実施の形態1の侵入物体識別装置によれば、電波送信手段及び電波受信手段は、漏洩同軸ケーブルで構成されているので、広範囲な監視区域を容易に得ることができる。
【0034】
また、実施の形態1の侵入物体識別装置によれば、電波送信手段から放射された電波が電波反射手段で反射され電波受信手段で受信するまでの電波伝搬遅延時間を測定する電波伝搬遅延時間計測手段と、電波伝搬遅延時間に基づいて、電波反射手段から電波送信手段及び電波受信手段までの距離を計測する測距手段とを備えたので、電波反射手段の位置を容易に知ることができる。
【0035】
また、実施の形態1の侵入物体識別装置によれば、電波反射手段は、漏洩同軸ケーブルから放射された電波の擬似雑音符号と同期することなく反射波の強度を変化させることで識別情報を送信できるので、長い漏洩同軸ケーブルを施設した際、遠方でも識別情報を送信することができる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態2は、電波反射手段3としてミラーの回転によって反射波の強度を変化させるようにしたものである。
【0037】
送信用漏洩同軸ケーブル1や受信用漏洩同軸ケーブル2と電波反射手段3との関係、及び、信号送信手段100、信号受信手段200といった図面上の構成は、実施の形態1と同様であるため図1を援用して説明する。
図6は、実施の形態2における電波反射手段3の構成を示す説明図である。
電波反射手段3は、図示のように、ミラー901、回転軸902、駆動モータ903、モータ駆動回路904、信号発生器905から構成されている。
ミラー901は回転軸902に取り付けられている。回転軸902は駆動モータ903によって回転する。駆動モータ903の回転速度および回転角度は、モータ駆動回路904によって制御される。信号発生器905は、識別情報を蓄積しており、送信したい識別情報に基づいた所定のモータ駆動パターンを生成し、モータ駆動回路904にパターンを伝送する。即ち、実施の形態2の電波反射手段3は、送信用漏洩同軸ケーブル1から放射される電波を反射し、かつ、その反射方向を変更可能なミラー901を備え、このミラー901の反射方向を識別情報に対応して変化させるようにしたものである。侵入物体識別装置におけるその他の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0038】
次に、実施の形態2の動作について説明する。
図7は、実施の形態2におけるミラー901の回転角度と受信信号レベルとの関係を示す説明図である。
図7(a)(b)において、Aに示す場合は、ミラー901による反射波が同相で電波が合成された合成波が受信用漏洩同軸ケーブル2に入力される場合であり、Bに示す場合は、ミラー901による反射波が電波に合成されない場合である。Aの場合は、受信信号レベルが上がり、Bの場合は受信信号レベルが下がる波形となる。信号発生器905は、識別情報に対応した信号を発生させ、モータ駆動回路904は、この信号に対応して駆動モータ903の駆動を行う。これにより、識別情報に対応して図7(b)に示すような受信信号レベルの変化が得られることから、上記実施の形態1と同様に、登録物体か否かの判別を行うことができる。
尚、実施の形態2における電波反射手段3として、小型ミラーを用いてICチップに組み込んで構成してもよい。
【0039】
以上のように、実施の形態2の侵入物体識別装置によれば、電波反射手段は、電波送信手段から放射される電波を反射し、かつ反射方向を変更可能なミラーを備え、ミラーの反射方向を識別情報に対応して変化させるようにしたので、識別情報に基づいて反射波の強度を変化させるときにミラー面の変化を利用していることから、非常に低消費電力で駆動できる効果がある。
【0040】
実施の形態3.
実施の形態3は、電波反射手段3をアンテナと反射器、終端器を用いて構成するようにしたものである。実施の形態3においても、図面上の全体構成は実施の形態1と同様であるため、図1を援用して説明する。
【0041】
図8は、実施の形態3における電波反射手段3の構成を示す説明図である。
電波反射手段3は、図示のように、アンテナ911、スイッチ912、反射器913、終端器914、スイッチ駆動回路915、信号発生器916から構成されている。アンテナ911は、送信用漏洩同軸ケーブル1から放射された電波を受信するアンテナであり、反射器913はアンテナ911で受信した電波を反射させる反射器、終端器914はアンテナ911で受信した電波を終端(吸収)させる終端器、スイッチ912は、アンテナ911に対して、反射器913または終端器914を切り替えて接続するためのスイッチである。また、スイッチ駆動回路915は、終端器914を駆動する回路であり、信号発生器916は、所定の識別情報に対応した信号を発生させ、スイッチ駆動回路915に供給するものである。その他の各構成は実施の形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0042】
このように構成された電波反射手段3では、アンテナ911で受信した電波を反射器913で反射しアンテナ911から再放射するか、終端器914で吸収させ再放射させないかをスイッチ912で選択する。
このスイッチ912の切替えにより反射波の強度を変化させることが可能であり、スイッチ912を識別情報に基づいて制御すれば、識別情報に従って反射波の強度を変化させることができる。信号発生器916には識別情報が蓄積されており、この情報はスイッチ駆動回路915に出力され、スイッチ駆動回路915はこの情報に基づきスイッチ912を制御する。
【0043】
また、この動作はアンテナ911側から見たスイッチ912のインピーダンスを識別情報に基づいて変化させることと等価であり、インピーダンスを変化させる手段であればこれ以外の方法を用いても良い。例えば、ダイオードやトランジスタなどのアクティブ素子を利用して制御電圧に対するインピーダンスの変化を利用してもよい。即ち、アンテナ911に接続したアクティブ素子の入力インピーダンスを、アンテナ911の出力インピーダンスに整合をとると電波は反射せずにアクティブ素子側に流れるので、機能的には終端器914として働き、アンテナ911の出力インピーダンスと不整合状態にすると、電波が反射するため、機能的には反射器913として働く。
【0044】
以上のように、実施の形態3の侵入物体識別装置によれば、電波反射手段は、電波送信手段から放射される電波を受信するアンテナと、アンテナで受信した電波を再反射させる反射器と、アンテナで受信した電波を吸収する終端器とを備え、アンテナに対して反射器と終端器との接続状態を識別情報に対応させて切り替えるようにしたので、識別情報に基づいて反射波の強度を変化させるときに装置内のインピーダンスの変化を利用していることから、非常に低消費電力で駆動できる効果がある。
【0045】
実施の形態4.
実施の形態4は、電波反射手段3において、反射させる電波の位相を変化させることによって識別情報を送出するようにしたものである。実施の形態4においても、図面上の全体構成は実施の形態1と同様であるため、図1を援用して説明する。
【0046】
図9は、実施の形態4における電波反射手段3の構成を示す説明図である。
電波反射手段3は、図示のように、アンテナ911、スイッチ912、第1の反射器917、第2の反射器918、スイッチ駆動回路915、信号発生器919から構成されている。アンテナ911、スイッチ912、スイッチ駆動回路915は実施の形態3における構成と同様である。第1の反射器917及び第2の反射器918は、それぞれアンテナ911から再反射させる電波の位相が異なる反射器である。例えば、第1の反射器917は0度の位相で反射させ、第2の反射器918は180度の位相で反射させるよう構成されている。また、信号発生器919は、識別情報に対応した位相の回転を行うよう信号を発生させるものである。また、その他の各構成は識別情報抽出手段400が、受信信号の位相の変化に基づいて識別情報を抽出する点以外は、実施の形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0047】
このように構成された電波反射手段3では、アンテナ911で受信した電波を第1の反射器917で反射させるか、第2の反射器918で反射させるかをスイッチ912で選択する。このスイッチ912の切替えにより反射波の位相を変化させることが可能であり、スイッチ912を識別情報に基づいて制御すれば、識別情報に従って反射波の位相を変化させることができる。信号発生器919には識別情報が蓄積されており、この情報はスイッチ駆動回路915に出力され、スイッチ駆動回路915はこの情報に基づきスイッチ912を制御する。
【0048】
また、このような位相の変化を含む電波を受信用漏洩同軸ケーブル2で受信した場合の信号受信手段200及び侵入検知手段300の処理は上記各実施の形態と同様である。識別情報抽出手段400では、位相の変化を検出し、この変化に対応した識別情報を抽出する。これ以降の処理は各実施の形態と同様である。
【0049】
以上のように、実施の形態4の侵入物体識別装置によれば、電波を放射する電波送信手段と、予め登録された識別情報に対応して電波送信手段から放射された電波を反射するときの位相を変化させる電波反射手段と、電波送信手段から放射された電波と電波反射手段で反射された反射波とを受信する電波受信手段と、電波受信手段で受信された信号の位相の変化に基づいて、電波反射手段に対応した識別情報を抽出する識別情報抽出手段とを備えたので、識別情報に基づいて反射波の位相を変化させていることから、電波反射手段を非常に低消費電力で駆動できる効果がある。
【0050】
実施の形態5.
実施の形態5は、電波反射手段3の実装例を示すものである。
図10は、電波反射手段3の実装の一例を示す説明図である。
図において、ヘルメット921は、識別対象者が被るものであり、このヘルメット921の外周に沿って電波反射手段3のアンテナ922が取り付けられている。また、制御回路923は、ICチップ等で構成され、電波反射手段3のスイッチや信号発生器、スイッチ駆動回路といった上記各実施の形態におけるアンテナ以外の構成を含むものである。
また、このような電波反射手段3をヘルメット921以外にも、例えば、識別対象者が着用する安全帯ジャケットなどに取り付けてもよい。更に、荷物の場合は荷物を一周するように取り付けても良い。
【0051】
また、実施の形態2のようにミラー901を用いるものでは、小形ミラーをヘルメット921の周囲に配置することで同様の効果を得ることができる。
【0052】
以上のように、実施の形態5の侵入物体識別装置によれば、電波反射手段は、識別対象の周囲に亘って配置されているようにしたので、例えば、識別対象者が電波反射手段を用いる場合、識別対象者の体がどのような向きになっても確実に識別情報を読み取ることができ、電波反射手段を有しているにもかかわらず、識別情報が読取れないため不審物体と誤判定されるといったことを防ぐことができる。
【0053】
尚、上記実施の形態2〜5においても、実施の形態1で説明したように、電波反射手段3に対する電源供給手段の適用やパルス電波等の使用、及び、漏洩同軸ケーブルの代わりにアンテナを用いるといった構成を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の実施の形態1による侵入物体識別装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による侵入物体識別装置の電波反射手段の構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1による侵入物体識別装置の識別情報の一例を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による侵入物体識別装置の受信信号レベルと距離との関係を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1による侵入物体識別装置の電源供給装置の構成図である。
【図6】この発明の実施の形態2による侵入物体識別装置の電波反射手段の構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2による侵入物体識別装置のミラーの回転角度と受信信号レベルとの関係を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態3による侵入物体識別装置の電波反射手段の構成図である。
【図9】この発明の実施の形態4による侵入物体識別装置の電波反射手段の構成図である。
【図10】この発明の実施の形態5による侵入物体識別装置の電波反射手段の実装の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 送信用漏洩同軸ケーブル、2 受信用漏洩同軸ケーブル、3 電波反射手段、7 正弦波発生器、8 パワーアンプ、9,911,922 アンテナ、10 整流回路、11 電圧安定回路、202 遅延時間制御部、204 測位部、205 受信信号レベル測定部、300 侵入検知手段、400 識別情報抽出手段、500 識別情報照合手段、600 表示手段、700 警報発生手段、800 共振回路、811,915 スイッチ駆動回路、812,905,916,919 信号発生器、901 ミラー、903 駆動モータ、904 モータ駆動回路、912 スイッチ、913 反射器、914 終端器、917 第1の反射器、918 第2の反射器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射する電波送信手段と、
予め登録された識別情報に対応して前記電波送信手段から放射された電波を反射するときの反射強度を変化させる電波反射手段と、
前記電波送信手段から放射された電波と前記電波反射手段で反射された反射波とを受信する電波受信手段と、
前記電波受信手段の信号レベルの変化に基づいて、前記電波反射手段に対応した識別情報を抽出する識別情報抽出手段とを備えた侵入物体識別装置。
【請求項2】
電波反射手段は、電波送信手段から放射される電波に共振する共振回路を備え、当該共振回路の共振の有無を識別情報に対応して変化させることを特徴とする請求項1記載の侵入物体識別装置。
【請求項3】
電波反射手段は、電波送信手段から放射される電波を反射し、かつ当該反射方向を変更可能なミラーを備え、当該ミラーの反射方向を識別情報に対応して変化させることを特徴とする請求項1記載の侵入物体識別装置。
【請求項4】
電波反射手段は、電波送信手段から放射される電波を受信するアンテナと、当該アンテナで受信した電波を再反射させる反射器と、前記アンテナで受信した電波を吸収する終端器とを備え、前記アンテナに対して前記反射器と前記終端器との接続状態を識別情報に対応させて切り替えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の侵入物体識別装置。
【請求項5】
電波を放射する電波送信手段と、
予め登録された識別情報に対応して前記電波送信手段から放射された電波を反射するときの位相を変化させる電波反射手段と、
前記電波送信手段から放射された電波と前記電波反射手段で反射された反射波とを受信する電波受信手段と、
前記電波受信手段で受信された信号の位相の変化に基づいて、前記電波反射手段に対応した識別情報を抽出する識別情報抽出手段とを備えた侵入物体識別装置。
【請求項6】
電波反射手段は、識別対象の周囲に亘って配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の侵入物体識別装置。
【請求項7】
電波送信手段を介して電波反射手段に電力を供給する電波を送信する電力供給手段と、
前記電波送信手段から放射された電力供給のための電波を受信する電力供給用電波受信手段と、
前記電力供給用電波受信手段で受信した電波から、前記電波反射手段を駆動するための電力を取り出す発電手段とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の侵入物体識別装置。
【請求項8】
識別情報抽出手段で抽出された識別情報と、予め登録されている識別情報とを照合し、これらの識別情報が一致した場合は当該識別情報を出力し、一致しない場合は判別不可を出力する識別情報照合手段と、
前記識別情報照合手段から識別情報が出力された場合は、当該識別情報を表示する表示手段と、
前記識別情報照合手段で判別不可が出力された場合、警報を出力する警報発生手段とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の侵入物体識別装置。
【請求項9】
電波送信手段及び電波受信手段は、漏洩同軸ケーブルで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の侵入物体識別装置。
【請求項10】
電波送信手段から放射された電波が電波反射手段で反射され電波受信手段で受信するまでの電波伝搬遅延時間を測定する電波伝搬遅延時間計測手段と、
前記電波伝搬遅延時間に基づいて、前記電波反射手段から前記電波送信手段及び電波受信手段までの距離を計測する測距手段とを備えたことを特徴とする請求項9記載の侵入物体識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−322274(P2007−322274A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153752(P2006−153752)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】