説明

保持容器及び保持容器ユニット

【課題】ウエハが保持容器の中で動きにくく、ウエハを保持したときにたわみにくく、且つウエハに傷が入りにくいような保持容器を提供する。
【解決手段】この保持容器は、内部にウエハを収容する略円形の貫通穴状収容部を有するスペーサと、前記スペーサの一方の面に当接し且つ第1切欠きを有する第1保持板と、前記スペーサの他方の面に当接し且つ第2切欠きを有する第2保持板と、からなり、前記第1切欠きは、前記第1保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持可能な形状を有し、前記第2切欠きは、前記第2保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持可能な形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを保持するための保持容器及び保持容器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハはシリコン等の単結晶を薄くスライスして製造されるものであるが、脆性が高い上に汚染による物性への影響が大きいため、各種処理工程や輸送中において、その破損や汚染を防止するために最大限の努力が払われなければならない。
【0003】
特に近年では、12インチ(300mm)の最大径をもつウエハが実用化される等、電子デバイスに用いられるウエハの大型化及び薄型化は進行しており、これらウエハの保持及び搬送にも一層の工夫が求められている。こうした大型のウエハを搬送し、保管し、又は処理するために保持する保持容器としては、例えば以下の特許文献1及び2で開示されたものが知られている。
【0004】
特許文献1には、薄板を個別に保持する一側固定保持部と、一側固定保持部と互いに嵌合することで外部環境と隔離して収納空間に薄板を保持する他側固定保持部と、を備えた処理トレイを複数枚積層した薄板保持容器が開示されている。この薄板保持容器によれば、薄板の枚数に応じて処理トレイの枚数を任意に設定することができるとともに、積層された処理トレイを任意の位置で分離することにより、任意の位置で薄板を出し入れすることができる。
【0005】
特許文献2には、外部機械装置側に嵌合するためのベーストレイと、各ベーストレイの間に挿入されて薄板を収納するための載置トレイと、各載置トレイの間やベーストレイと載置トレイとの間を結合し又は結合解除する結合・解除手段とを備え、載置トレイの側面の対向する2箇所の位置に、外部機械装置側の処理アームが嵌合して把持する把持部が形成されている薄板保持容器が開示されている。この薄板保持容器によれば、処理アームが載置トレイの把持部に嵌合して把持することで、把持部の2つの傾斜面によって載置トレイの上下方向の位置決めがなされるため、薄板を正確に位置決めすることができ、薄板の受け渡しを容易に行い、吸着位置のずれ等による薄板の破損を防止することができる。
【特許文献1】特開2007−103454号公報
【特許文献2】特開2007−153390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の保持容器では、保持容器を鋳型によって成型する必要があり、その作製工程が複雑になる問題点があった。また、ウエハは収納空間内に留められるものの、収納空間内ではウエハに遊びが生じるため、薄板保持容器の取扱いによってウエハが保持容器の中で動き易く、保持容器に衝撃が与えられるとウエハに傷が入り、又はウエハに割れが生じる問題点があった。
【0007】
さらに、近年のウエハの大型化の進行により、ウエハの取扱いはより困難なものになっており、大型のウエハでは保持した際のたわみの量が格段に大きくなるため、こうしたたわみをも考慮した保持容器をも求められていた。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされてものであって、その目的とするところは、鋳型を用いた成型を必要とせず作製が容易であり、ウエハが保持容器の中で動きにくく、ウエハを保持したときにたわみにくく、且つウエハに傷が入りにくいような保持容器及び保持容器ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ウエハを保持することのできる保持容器につき種々の検討を行った。その中で、ウエハを収容するスペーサの両側の面に、切欠きを有する保持板を積層することにより、ウエハが保持容器の中で動きにくく、ウエハを保持したときにたわみにくく、且つウエハに傷が入りにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1) 内部にウエハを収容する略円形の貫通穴状収容部を有するスペーサと、前記スペーサの一方の面に当接し且つ第1切欠きを有する第1保持板と、前記スペーサの他方の面に当接し且つ第2切欠きを有する第2保持板と、からなり、前記第1切欠きは、前記第1保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持可能な形状を有し、前記第2切欠きは、前記第2保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持可能な形状を有することを特徴とする保持容器。
【0011】
(1)の発明によれば、ウエハをスペーサの貫通穴状収容部に収容するとともに、ウエハの両面を第1保持板及び第2保持板で保持することにより、スペーサによってウエハの面方向への移動を抑えるとともに、第1保持板及び第2保持板の一方に押さえ役目を持たせ、他方に保持の役目を持たせることができるため、ウエハを保持容器の中で動きにくくすることができる。
【0012】
また、(1)の発明によれば、第1保持板及び第2保持板に第1切欠き及び第2切欠きをそれぞれ設けることにより、ウエハの表面と保持容器との接触が低減されるため、ウエハの表面に傷が入りにくくすることができる。
【0013】
さらに、(1)の発明によれば、ウエハを保持する第1保持板及び第2保持板に第1切欠き及び第2切欠きを設けることにより、ウエハと保持板との接触面積を減らすことができ、ウエハと保持板との接触によって生じるウエハのキズや汚れを減らすことができるため、ウエハの清浄度を保ち、保持後の洗浄工程を軽減し又は削減することができる。
【0014】
ここで、本発明の保持容器は、板状材をカットして切欠きを設けることで保持容器の各構成部材を作製し、これら構成部材を積層することで保持容器を作製することができる。これにより、鋳型による成型によらなくとも保持容器を容易に作製することができる。
【0015】
なお、本発明における「切欠き」は、第1保持板及び第2保持板を外縁から切欠いた形状を有するものに限定されず、第1保持板及び第2保持板の外縁と重ならない形状を有するものであってもよく、例えば貫通穴及び有底穴も切欠きに含まれる。
【0016】
(2) 前記第1保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持する第1保持部位が4箇所以上形成され、前記第2保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持する第2保持部位が4箇所以上形成されることを特徴とする(1)記載の保持容器。
【0017】
(2)の発明によれば、第1保持部位及び第2保持部位を各々4箇所以上に設けることで、少なくとも4方向からウエハが保持される。そのため、ウエハに生じるたわみをより小さくすることができ、ウエハの表面と保持容器との接触によるウエハの割れや傷を軽減することができる。
【0018】
ここで、第1保持部位及び第2保持部位は、貫通穴状収容部の周縁に沿って交互に形成することができる。これにより、ウエハが第1保持部位及び第2保持部位によって互い違いに保持される。ウエハに外部から力が作用した場合に、保持板と接触する方向(保持方向)でウエハが保持されつつ、保持板と接触していない方向(空き方向)に力が逃げていく。そのため、ウエハへのチッピングの発生を低減することができる。
【0019】
また、第1切欠き及び第2切欠きがウエハを間にして対向する重なり部位を有する保持容器とすることもできる。これにより、重なり部位が第1保持板及び第2保持板に上下から挟まれるため、ウエハが厚さ方向に遊ばないようにすることができ、特に小さい径のウエハを保持した場合にも、ウエハを保持容器の中で動きにくくすることができる。
【0020】
また、スペーサに設けられる貫通穴状収容部の周縁の形状が円形である場合には、第1切欠き及び第2切欠きが、中心が貫通穴状収容部の中心と同軸となるような正多角形状である保持容器とすることもできる。これにより、ウエハが保持板と接触する部分と、保持板と接触していない部分とが、貫通穴状収容部の中心を軸としてラジアル方向について等間隔に設けられるため、ラジアル方向について均等な保持状態でウエハを保持することができる。
【0021】
さらに、第1切欠き及び第2切欠きが、中心が貫通穴状収容部の中心と同軸となるような正多角形状である場合、第2切欠きが、第1切欠きの中心を軸に
【数1】

[nは正多角形の角の数とする]
回転させた形状を有する保持容器とすることもできる。これにより、第1保持部位及び第2保持部位が貫通穴状収容部に交互に隣接し易くなるため、ウエハへのチッピングの発生を低減することができる。
【0022】
(3) 前記貫通穴状収容部の内部への外気の流通を抑制する構造をさらに備えることを特徴とする(1)又は(2)記載の保持容器。
【0023】
(3)の発明によれば、貫通穴状収容部の内部への外気の流通を抑制する構造にすることにより、ウエハを保持している際に埃等が侵入し難くなるため、ウエハを清浄な状態で保持することができる。
【0024】
ここで、ウエハの面方向から貫通穴状収容部の内部に流通する外気を抑制する構造としては、保持板の外周と重ならないように切欠きが設けられた構造、保持板を構成する保持部材の頂点が互いに接する構造、及び、保持板及びスペーサの外周に沿って外枠が設けられた構造を挙げることができる。一方、ウエハの厚さ方向から貫通穴状収容部の内部に流通する外気の流通を抑制する構造としては、保持板のうちスペーサと反対側の面に、例えば硬質材料からなる板状部材が設けられた構造を挙げることができる。
【0025】
より具体的には、第1保持板及び第2保持板の少なくとも一方が複数の三角形をした保持部材からなり、隣接する保持部材の頂点が互いに接する保持容器とすることができる。これにより、隣接する保持部材の間に間隙が生じ難くなるため、ウエハの面方向から貫通穴状収容部の内部に流通する外気を抑制し、ウエハを清浄な状態で保持することができる。
【0026】
さらに、隣接する保持部材の頂点が互いに接する場合、第1切欠き及び第2切欠きの正多角形状の中心が貫通穴状収容部の中心と同軸であり、保持部材の三角形の角が、それぞれ
【数2】

[nは前記正多角形の角の数とする]
である保持容器とすることができる。これにより、保持板が各々表裏反転した構造になるため、保持部材を合同な三角形にして保持部材の共通化を図ることができる。
【0027】
また、この保持部材の頂点が接する部分に、硬質材料からなるコーナー板を有する保持容器とすることもできる。これにより、強度的に弱い保持部材の頂点がコーナー板によって補強される。そのため、保持容器を長く用いたとしても、保持容器の内部に形成された空間の密閉性を維持することができ、ウエハを清浄な状態で保持することができる。
【0028】
また、第1保持板及び第2保持板の外縁に沿って、外枠を有する保持容器とすることもできる。これにより、外枠の内側にあるスペーサの貫通穴状収容部がウエハの面方向について覆われるため、ウエハの面方向から貫通穴状収容部の内部に流通する外気を抑制し、ウエハを清浄な状態で保持することができる。
【0029】
また、第1保持板のうちスペーサと反対側の面に当接する第1硬質板と、第2保持板のうちスペーサと反対側の面に当接する第2硬質板とを有する保持容器とすることもできる。これにより、切欠きがウエハの厚さ方向について硬質板で覆われるとともに、保持板が硬質板によって支持される。そのため、ウエハの厚さ方向から切欠きを通じた外気の流通を抑制することができるとともに、保持板の材質としてより衝撃を吸収し易い材質を用いることができる。
【0030】
なお、第1保持板及び第2保持板の少なくとも一方が三角形状をした複数の保持部材からなり、保持部材が互いに離れている保持容器とすることもできる。これにより、保持板のうちウエハを保持していない部分が省略されるため、保持容器をウエハの表面と平行な方向についてコンパクトな構造にすることができる。
【0031】
(4) 前記第1保持板及び前記第2保持板の厚さが3mm以上であることを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載の保持容器。
【0032】
(4)の発明によれば、第1保持板及び第2保持板の厚さを3mm以上とすることにより、ウエハの中心部がたわんだ場合、ウエハを偏って保持した場合、及びウエハが保持板に沈み込んだ場合に、ウエハの表面が保持板の切欠きを超えて他のウエハや部材に接触することを低減することができる。
【0033】
(5) 前記スペーサの厚さから前記ウエハの厚さを引いた値が300μm以下であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか記載の保持容器。
【0034】
(5)の発明によれば、スペーサの厚さからウエハの厚さを引いた値を300μm以下とすることにより、水平にしたウエハをウエハの下側にある保持板で保持した場合に、ウエハ自体の反りやウエハを保持した際のたわみによって浮き上がるウエハの外周が、ウエハの上側にある保持板によって押さえられるため、ウエハの中心部に生じるたわみを軽減することができる。
【0035】
(6) 前記スペーサが硬質材料からなることを特徴とする(1)から(5)のいずれか記載の保持容器。
【0036】
(6)の発明によれば、スペーサを硬質材料から形成することにより、第1保持板及び第2保持板の間にウエハの厚さに応じたスペースを確実に持たせることができるため、ウエハに上部から重さが掛かることによるウエハへのダメージが及ばないようにすることができる。
【0037】
(7) (1)から(6)のいずれか記載の保持容器が複数重畳されてなる保持容器ユニットであって、前記スペーサ、前記第2保持板、第1硬質板、及び前記第1保持板が順に積層された繰返し単位を繰返し積層することにより、隣接する前記繰返し単位におけるそれぞれの前記第1硬質板に挟まれて前記保持容器が形成されることを特徴とする保持容器ユニット。
【0038】
(7)の発明によれば、上記繰返し単位を複数有することにより、一つの保持容器ユニットにウエハを保持するスペーサが複数設けられるため、ウエハを一つの保持容器ユニットにバッチ単位で収容することができ、保持容器ユニットをウエハの厚さ方向についてコンパクトにすることができる。
【0039】
(8) 前記第1硬質板、前記第1保持板、前記スペーサ、及び前記第2保持板の互いに対応する位置に貫通穴を設けることを特徴とする(7)記載の保持容器ユニット。
【0040】
(8)の発明によれば、保持容器ユニットのうち互いに対応する位置に貫通穴を設けることにより、貫通穴に連結支持棒や回動軸が挿入できるため、保持容器ユニットをより取扱い易くすることができる。
【0041】
このとき、貫通穴に連結支持棒を挿入することにより、保持板がウエハからずれ難くなるため、ウエハへの傷の発生を低減することができる。
【0042】
また、貫通穴に回動軸を挿入することにより、回動軸を中心に硬質板、保持板、及びスペーサからなる繰返し単位が水平方向に回動可能になるため、保持容器ユニットの各スペーサへのウエハの装填及び取出しを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、ウエハを収容するスペーサの両側の面に、切欠きの設けられた保持板を有する保持容器により、ウエハが保持容器の中で動きにくく、ウエハを保持したときにたわみにくく、ウエハに傷が入りにくく、且つ保持後の洗浄工程を軽減し又は削減することのできる保持容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0045】
本発明の保持容器は、内部にウエハを収容する略円形の貫通穴状収容部を有するスペーサと、前記スペーサの一方の面に当接し且つ第1切欠きを有する第1保持板と、前記スペーサの他方の面に当接し且つ第2切欠きを有する第2保持板と、からなり、前記第1切欠きは、前記第1保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持可能な形状を有し、前記第2切欠きは、前記第2保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持可能な形状を有することを特徴とする。
【0046】
[用語の定義]
本発明における「多角形状」及び「正多角形状」とは、単に多角形及び正多角形の形状に限られず、各辺をそれぞれ延長したときに多角形及び正多角形となるような形状も含むものである。
【0047】
また、本発明における「切欠き」とは、第1保持板及び第2保持板を外縁から切欠いた形状を有するものに限られず、第1保持板及び第2保持板の外縁と重ならない形状を有するものであってもよく、例えば貫通穴及び有底穴も含むものである。
【0048】
以下、必要に応じて図1〜図18を参照しながら、本発明の保持容器の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。尚、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0049】
≪保持容器の基本形態≫
本発明の第一実施形態は、スペーサ4と、第1切欠き31を有する第1保持板3と、第2切欠き51を有する第2保持板5と、を備える保持容器1である。図1は保持容器1の各部品の一例を示す斜視図であり、図2は保持容器1の一例を示す(a)正面図、及び(b)A−A’面で切断した断面図であり、図3は保持容器1の変形例である保持容器1a1〜1a11の第1切欠き31a1〜31a11及び第2切欠き51a1〜51a11を例示する正面図である。
【0050】
[スペーサ]
本実施形態の保持容器1は、内部にウエハWを収容する略円形の貫通穴状収容部41を設けたスペーサ4を有する。
【0051】
ここで、スペーサ4の厚さは、ウエハWの板厚よりも厚くなるようにする。より具体的には、スペーサ4の厚さは、ウエハWの板厚より200μm以上厚いことが好ましい。保持容器1aで保持するウエハWには、100μm未満の範囲で歪みが生じていることがあり、さらにウエハWを保持する際に外周が100μm以下の範囲で盛り上がることがあるが、これにより、ウエハWに歪み及び/又は盛り上がりが生じても、ウエハWへの傷を低減することができる。また、スペーサ4の厚さは、ウエハWの板厚よりも300μm以下厚いこと、換言すれば、スペーサ4の厚さからウエハWの厚さを引いた値が300μm以下であることが好ましい。これにより、水平にしたウエハWを保持した場合に、ウエハW自体の反りやウエハWを保持した際のたわみによって浮き上がるウエハWの外周が、ウエハWの上側にある保持板(図1の第2保持板5)によって押さえられるため、ウエハWの中心部に生じるたわみを軽減することができる。また、スペーサ4の厚さを上記範囲内にすることで、ウエハWに対する加工の前後を通して、共通の保持容器1を用いることができる。
【0052】
スペーサ4に形成する貫通穴状収容部41の周縁の形状は、ウエハWの形状と略同一の形状にすることができ、より具体的には略円形にすることができる。また、スペーサ4に形成する貫通穴状収容部41のウエハWの面方向についての大きさは、ウエハWの直径と等しいことが好ましいが、5mm以上10mm以下の範囲で遊びを設けてもよい。ここで、遊びの大きさを5mm以上にすることで、ウエハWに加工による直径の変化や直径のばらつきが生じても、ウエハWをより確実に保持することができる。一方で、遊びの大きさを10mm以下にすることで、保持容器1を縦置きにした場合や、ウエハWが保持容器1の中で偏った場合にも、ウエハWの保持状態への影響を少なくすることができる。なお、貫通穴状収容部41の周縁の一部を削るようにスペーサ4に溝を設けた場合は、ウエハWの大きさと貫通穴状収容部41の大きさとの間で遊びが小さいときにも、保持容器1からウエハWを容易に取り出すことができる。
【0053】
スペーサ4の材質は、硬質材料からなることが好ましく、より具体的には、硬質塩化ビニル樹脂、硬質ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、発泡ポリウレタン樹脂、又はアクリル樹脂等からなることが好ましい。これにより、上方向から荷重が掛かってもウエハWの厚さに応じたスペースが確保されるため、荷重によるウエハWへのダメージを軽減することができる。
【0054】
なお、スペーサ4の外形形状は、例えば図1及び図2に示すような矩形形状にすることができるが、これに限定されるものではない。
【0055】
[第1保持板及び第2保持板]
本実施形態の保持容器1は、スペーサ4の一方の面に当接する第1保持板3と、スペーサ4の他方の面に当接する第2保持板5と、を有する。これにより、ウエハWの両面が対向する第1保持板3及び第2保持板5によって保持されるため、保持容器1でウエハWを安定して保持することができる。また、保持容器1を略水平に設置した場合に、下側の保持板3又は5によってウエハWが保持されつつ、ウエハW自体の反りやウエハWのたわみにより浮き上がるウエハWの外周が、上側の保持板3又は5によって押さえられるため、ウエハWに生じるたわみを軽減することができる。
【0056】
これらの保持板3及び5には、第1切欠き31及び第2切欠き51を設ける。すなわち、第1切欠き31は、第1保持板3をウエハWの下側に位置させたときにウエハWを保持可能な形状を有するように設けられ、第2切欠き51は、第2保持板5をウエハWの下側に位置させたときにウエハWを保持可能な形状を有するように設けられる。このとき、スペーサ4並びに保持板3及び5の積層方向から見た場合に、貫通穴状収容部41の内側に第1切欠き31の周縁の少なくとも一部が位置し、且つ貫通穴状収容部41の内側に第2切欠き51の周縁の少なくとも一部が位置する。これにより、ウエハWと保持板3及び5との接触面積が小さくなり、ウエハWと保持板3及び5との接触によって生じるウエハWのキズや汚れが低減されるため、ウエハWの清浄度を保ち、保持後の洗浄工程を軽減し又は削減することができる。
【0057】
切欠き31及び51の形状は、ウエハWとの接触面積を減少する形状であれば特に限定されない。例えば、図3(a)から(g)のように直線で囲まれた形状であってもよく、図3(h)から(j)のような曲線で囲まれた形状であってもよく、図3(k)のような直線及び曲線で囲まれた形状であってもよい。その中でも、貫通穴状収容部41の周縁の形状が円形である場合には、図3(a)から(f)に示すように、切欠き31a1〜31a6及び51a1〜51a6の形状が、中心が貫通穴状収容部41の円形の中心と同軸となるような正多角形状であることがより好ましい。これにより、ウエハWが保持板3a1〜3a6又は5a1〜5a6と接触する部分と、保持板3a1〜3a6及び5a1〜5a6と接触しない部分とが、貫通穴状収容部41の円形の中心を軸としてラジアル方向について等間隔に設けられるため、ラジアル方向について均等な保持状態でウエハWを保持することができる。その中でも特に、図3(a)から(e)に示すように、第2切欠き51a1〜51a5が第1切欠き31a1〜31a5の中心を軸に
【数3】

[nは前記正多角形の角の数とする]
回転した形状を有することが最も好ましい。これにより、第1保持板3をウエハWの下側に位置させたときにウエハWを保持する第1保持部位H1、及び、第2保持板5をウエハWの下側に位置させたときにウエハWを保持する第2保持部位H2が、貫通穴状収容部41と交互に隣接し易くなる。
【0058】
このとき、第1保持板3をウエハWの下側に位置させたときにウエハWを保持する第1保持部位H1が4箇所以上形成され、第2保持板5をウエハWの下側に位置させたときにウエハWを保持する第2保持部位H2が4箇所以上形成されることが好ましい。これにより、ウエハWが第1保持部位H1及び第2保持部位H2によって少なくとも4方向で保持されるため、ウエハWに生じるたわみを小さくし、ウエハWの表面と保持容器1との接触によるウエハWの割れや傷を軽減することができる。
【0059】
切欠き31及び51のウエハWの面方向についての大きさは、保持板3及び5でウエハWを保持することができる大きさであればよく、図3(a)から(e)に示すように、第1切欠き31a1〜31a5及び第2切欠き51a1〜51a5の大きさが略同一であってもよく、第1切欠き31及び第2切欠き51の大きさが異なっていてもよい。なお、切欠き31及び51には、図1及び図2に示すような、保持板3及び5の外縁と重ならない形状も含まれる。ここで、保持板3及び5の外縁と重ならないように切欠き31及び51を設けた場合には、ウエハWの面方向から切欠き31及び51を通じる空気の流通を抑制することができる。
【0060】
保持板3及び5の材質は、各々同一であることが好ましく、具体的には衝撃を吸収する材料から形成することが好ましい。衝撃を吸収する材料としては、発泡ポリウレタン、ポリエチレンフォーム、低反発ウレタン等を挙げることができる。これらの衝撃を吸収する材料を用いることで、ウエハWへの傷や割れを低減することができる。その一方で、ウエハW及び保持容器1を水に漬ける場合には、水によって衝撃が吸収されるため、硬質塩化ビニル樹脂、硬質ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、又はアクリル樹脂等の硬質材料も用いることができる。
【0061】
図2(b)に示す保持板3及び5の厚さTは、3mm以上とすることが好ましい。その理由を説明するため、保持板3又は5に見立てた硬質アクリル板上に厚さの異なる3枚のウエハWafer1〜3を装填し(ウエハWの厚さは、Wafer1<Wafer2<Wafer3である)、Wafer1〜3を各々4方向から保持した場合における、硬質アクリル板と接触する方向(保持方向)及び硬質アクリル板と接触していない方向(空き方向)についての、Wafer1〜3の中心からの距離とたわみの大きさの関係を図4(a)〜(c)にそれぞれ示す。図4(a)〜(c)より、Wafer1〜Wafer3はいずれも中央部がたわんでおり、最もたわみが大きいWafer1の中央部におけるたわみの大きさは200μm程度であった(図4(a)参照)。これに、硬質アクリル板の周辺(保持方向のEdge部分)における反りあがりを含めても、ウエハWの面内におけるたわみの変化は最大250μmであると見積もられる。さらに、発泡PPや低反発ウレタン等の柔らかい材質を保持板3又は5に用いた場合の保持板3及び5の沈み込みや、ウエハWの一方向が保持されなった場合におけるウエハWの外周の垂れ下がりを勘案しても、保持板3及び5の厚さTを3mm以上とすることにより、ウエハWが切欠き31及び51を通じて保持容器1の外部に接触しないようにすることができる。
【0062】
なお、本発明の各実施形態では、保持板3及び5並びにスペーサ4の外縁形状は、各々同じ形状で図示しているが、これに限定されず、貫通穴状収容部41の内側に第1保持部位H1及び第2保持部位H2が形成されていればよい。
【0063】
≪第1切欠き及び第2切欠きが貫通穴状収容部の外側で交差する保持容器≫
本発明の第二実施形態は、スペーサ4並びに保持板3b及び5bの積層方向から見た場合に、保持板3b及び5bに設けられた第1切欠き31b及び第2切欠き51bが、貫通穴状収容部41の外側で各々交差する保持容器1bである。図5は保持容器1bの一例を示す(a)正面図、及び(b)B−B’面における断面図である。
【0064】
[スペーサ]
本実施形態の保持容器1bは、ウエハWを収容するための貫通穴状収容部41を設けるスペーサ4を有する。このスペーサ4は、上記第一実施形態と同様のものを用いることができる。
【0065】
[第1保持板及び第2保持板]
本実施形態の保持容器1bでは、図5に示すように、保持板3b及び5bに設けられた第1切欠き31b及び第2切欠き51bが、貫通穴状収容部41の外側で各々交差する。このとき、ウエハWは、第1保持部位H1及び第2保持部位H2によって互い違いに保持される。これにより、ウエハWに外部から力が作用しても、保持板3b及び/又は5bとウエハWとが接触する方向(保持方向)でウエハWが保持されるとともに、保持板3b及び5bとウエハWとが接触していない方向(空き方向)に力が逃げていくため、ウエハWへのチッピングの発生を低減することができる。
【0066】
≪第1切欠き及び第2切欠きが貫通穴状収容部の内側で交差する保持容器≫
本発明の第三実施形態は、スペーサ4並びに保持板3c及び5cの積層方向から見た場合に、保持板3c及び5cに設けられた第1切欠き31c及び第2切欠き51cが、貫通穴状収容部41の内側で各々交差する保持容器1cである。図6は保持容器1cの一例を示す(a)正面図及び(b)C−C’面における断面図である。
【0067】
[スペーサ]
本実施形態の保持容器1cは、ウエハWを収容するための貫通穴状収容部41を設けるスペーサ4を有する。このスペーサ4は、上記第一実施形態と同様のものを用いることができる。
【0068】
[第1保持板及び第2保持板]
本実施形態の保持容器1cでは、図6に示すように、保持板3c及び5cに設けられた第1切欠き31c及び第2切欠き51cが、貫通穴状収容部41の内側で各々交差する。このとき、貫通穴状収容部41を間にして第1保持板3c及び第2保持板5cが対向する、重なり部位Kが形成される。これにより、重なり部位Kが保持板3c及び5cに上下から挟まれてウエハWが厚さ方向に遊び難くなるため、特に小さい径のウエハWを保持しても、ウエハWを保持容器1cの中で動き難くすることができる。
【0069】
≪隣接する保持部材の頂点が互いに接する保持容器≫
本発明の第四実施形態は、保持板3d及び5dの少なくとも一方が複数の三角形をした保持部材33d及び53dからなり、隣接する保持部材33d及び53dの頂点が互いに接するようにした保持容器1dである。図7は保持容器1dの各部品の一例を示す斜視図であり、図8は保持容器1dの変形例である保持容器1d1〜1d3の第1切欠き31d1〜31d3及び第2切欠き51d1〜51d3を例示する正面図である。
【0070】
[スペーサ]
本実施形態の保持容器1dは、ウエハWを収容するための貫通穴状収容部41を設けるスペーサ4を有する。このスペーサ4は、上記≪保持容器の基本形態≫と同様のものを用いることができる。
【0071】
[第1保持板及び第2保持板]
本実施形態の保持容器1dでは、例えば図7に示すように、保持板3及び5の少なくとも一方を、複数の三角形をした保持部材33d及び53dで形成し、隣接する保持部材33d及び53dの頂点が互いに接するように保持部材33d及び53dを設ける。これにより、保持板3d及び5dを作製し易くすることができるとともに、切欠き31d及び51dを通じた外気の流通を抑制し、保持容器1dの内部に形成された空間の密閉性を得易くすることができる。
【0072】
このとき、保持板3d及び5dに設ける切欠き31d及び51dが、貫通穴状収容部41の中心と同軸の中心を有する正多角形状をしており、保持部材33d及び53dの三角形の角が、それぞれ
【数4】

[nは切欠き31d及び51dを構成する正多角形の角の数とする]
であることが好ましい。これにより、保持板3d及び5dが表裏反転した構造になるため、保持部材33d及び53dを合同な三角形にして保持部材33d及び53dの共通化を図ることができる。例えば、図8(a)のように、切欠き31d1及び51d1の外縁形状を正方形とする場合は、保持部材33d1及び53d1の三角形の内角をそれぞれ22.5°、67.5°、及び90°とすることで、上記条件が満たされる。この他、保持板3d及び5d並びに切欠き31d及び51dの外縁形状を正n角形とする場合の、保持部材33d及び53dの三角形の内角について、以下の表1に示す。
【表1】

【0073】
なお、図8(b)に示すように、保持板3d2及び切欠き31d2の外縁形状、又は保持板5d2及び切欠き51d2の外縁形状は、互いに異なった数の角を有する正多角形であってもよい。また、図8(c)及び(d)に示すように、一方の保持板(例えば保持板5d3及び5d4)を二等辺三角形状の保持部材(例えば保持部材53d3及び53d4)から構成するとともに、他方の保持板(例えば保持板3d3及び3d4)の外縁に沿うように切欠き(例えば切欠き31d3及び31d4)を設けてもよい。
【0074】
≪コーナー板を有する保持容器≫
本発明の第五実施形態は、第1保持板3e及び第2保持板5eの少なくとも一方を構成する保持部材33e及び53eが接する部分にコーナー板52を有する保持容器1eである。図9は保持容器1eの各部品の一例を示す斜視図を示す。
【0075】
[スペーサ及び保持板]
本実施形態の保持容器1eは、上記第一実施形態と同様のスペーサ4を有し、上記第四実施形態と同様の第1保持板3e及び第2保持板5eを有する。
【0076】
[コーナー板]
本実施形態の保持容器1eでは、図9に示すように、保持部材33e及び53eが接する部分にコーナー板32及び52が設けられる。これにより、強度的に弱い保持部材33e及び53eの頂点が補強されるとともに、保持容器1eの内部に形成された空間の密閉性が高められるため、保持容器1eの内部への埃等の侵入を低減し、より清浄な状態でウエハWを保持することができる。ここで、コーナー板32及び52の材料としては、例えば硬質塩化ビニル樹脂、硬質ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、又はアクリル樹脂等の硬質材料を用いることができる。
【0077】
≪隣接する保持部材の頂点が互いに離れる保持容器≫
本発明の第六実施形態の保持容器1fは、保持板3f及び5fの少なくとも一方が複数の三角形をした保持部材33f及び53fからなり、隣接する保持部材33f及び53fの頂点が互いに離れるように構成される。図10は保持容器1fの各部品の一例を示す斜視図を示す。
【0078】
[スペーサ]
本実施形態の保持容器1fは、ウエハWを収容するための貫通穴状収容部41を設けるスペーサ4を有する。このスペーサ4は、上記≪保持容器の基本形態≫と同様のものを用いることができる。
【0079】
[第1保持板及び第2保持板]
本実施形態の保持容器1fでは、例えば図10に示すように、切欠き31f及び51fを有する保持板3f及び5fの少なくとも一方が、複数の三角形の保持部材33f及び53fから構成されており、隣接する保持部材33f及び53fの頂点が互いに離れている。これにより、保持板3f及び5fのうちウエハWを保持していない部分を省略することができ、保持容器1fをウエハWの表面と平行な方向についてコンパクトにすることができる。
【0080】
≪硬質板を有する保持容器≫
本発明の第七実施形態は、第1保持板3に当接する第1硬質板2と、第2保持板5に当接する第2硬質板6を有する保持容器1gである。図11は保持容器1gの各部品の一例を示す斜視図を示す。
【0081】
[スペーサ及び保持板]
本実施形態の保持容器1gは、上記第一実施形態と同様のスペーサ4を有し、上記第一実施形態から第六実施形態のいずれかと同様の第1保持板3及び第2保持板5を有する。
【0082】
[第1硬質板及び第2硬質板]
本実施形態の保持容器1gは、第1保持板3のうちスペーサ4と反対側の面に当接する第1硬質板2と、第2保持板5のうちスペーサ4と反対側の面に当接する第2硬質板6とを有する。これにより、保持板3及び5が硬質板2及び6によって支持されるため、保持板3及び5の材質により衝撃を吸収し易い材質を用いることができる。また、特に第五実施形態又は第六実施形態のように、保持板3及び5の少なくとも一方が複数の保持部材33及び53から構成される場合には、保持部材33及び53の硬質板2及び6への積層が可能であるため、保持部材33及び53を取扱い易くすることができる。それとともに、保持板3及び5の切欠き31及び51を通じた外気の流通を抑制することができる。ここで、硬質板2及び6を保持板3及び5に積層する方法は、特に限定するものではないが、例えば第一保持板3及び第一硬質板2の一方に凸部を設け、第一保持板3及び第一硬質板2の他方に及び凹部を設け、これらを嵌合して積層してもよい。これらを嵌合して積層することで、保持板3及び5と硬質板2及び6との間が横方向に動き難くなるため、硬質板2及び6が設けられたと保持容器1gを一体的に取扱うことができる。また、第1硬質板2の上に第1保持板3を積層し、その上にさらにスペーサ4を積層して下盤を形成し、スペーサ4の内径にウエハWを装填し、第2硬質板6の上に第2保持板5を積層した蓋をスペーサ4の上に被せて保持容器1gを作製してもよい。
【0083】
硬質板2及び6の形状は、各々同一の形状であることが好ましく、保持板3及び5、並びにスペーサ4と同一の形状であることがより好ましい。また、硬質板2及び6の材料も各々同一の材料であることが好ましく、硬質板2及び6の材料の具体例としては、硬質塩化ビニル樹脂、硬質ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、又はアクリル樹脂等の硬質材料を用いることができる。硬質板2及び6に硬質材料を用いることで、保持容器1gの全体の形状を保持し易くすることができる。
【0084】
硬質板2及び6の厚さは、硬質板2及び6がある程度の強度を持ち、且つ硬質板2及び6がたわまない程度であればよく、具体的には3mm以上であることが好ましい。
【0085】
≪外枠を有する保持容器≫
本発明の第八実施形態は、第1保持板3及び第2保持板5の側面に硬質材料からなる外枠8を設けて、切欠き31及び51を通じた外気の流通を抑制する保持容器1hである。図12は保持容器1hの一例の斜視図を示す。
【0086】
[スペーサ及び保持板]
本実施形態の保持容器1hは、上記第一実施形態と同様のスペーサ4を有し、上記第一実施形態から第六実施形態のいずれかと同様の第1保持板3及び第2保持板5を有する。
【0087】
[外枠]
本実施形態の保持容器1hは、例えば図12に示すように、保持板3及び5の外縁に沿って外枠8を有する。これにより、外枠8の内側にあるスペーサ4の貫通穴状収容部41がウエハWの面方向について密閉され、ウエハWを保持する際のウエハWの面方向からの埃等の侵入が低減されるため、ウエハWをより清浄な状態で保持することができる。外枠8の材料としては、硬質塩化ビニル樹脂、硬質ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、又はアクリル樹脂等の硬質材料を用いることができる。
【0088】
≪複数の繰返し単位を有する保持容器ユニット≫
本発明の第九実施形態から第十三実施形態は、保持容器が複数重畳されてなる保持容器ユニットに関する実施形態である。このうち、第九実施形態は、第1保持板3及び第2保持板5、並びに、第1硬質板2及び第2硬質板6からなる繰返し単位11iを複数有する保持容器ユニット12iである。図13は保持容器ユニット12iを構成する各繰返し単位11iの一例を示す斜視図を示す。
【0089】
[スペーサ、保持板及び硬質板]
本実施形態の保持容器ユニット12iは、上記第一実施形態と同様のスペーサ4を有し、上記第一実施形態から第六実施形態のいずれかと同様の第1保持板3及び第2保持板5を有し、上記第七実施形態の第1硬質板2及び第2硬質板6を有する。
【0090】
この保持容器ユニット12iでは、スペーサ4、第1保持板3、第1硬質板2、第2硬質板6、及び第2保持板5が順に積層された繰返し単位11iを複数有する。これにより、隣接する繰返し単位11iにおけるそれぞれの第1硬質板2及び第2硬質板6に挟まれて保持容器が形成されるため、複数のウエハWをバッチ単位で取り扱うことができる。このとき、保持容器ユニット12iを構成する繰返し単位11iは、図13に示すように、第1硬質板2に第1保持板3及びスペーサ4を順に積層して下盤111を構成するとともに、第2硬質板6の他方の面に第2保持板5が積層して蓋112を構成することがより好ましい。これにより、繰返し単位11iを構成する各部材を取り扱い易くすることができる。
【0091】
≪複数の繰返し単位を有する保持容器ユニット≫
本発明の第十実施形態は、第1保持板3及び第2保持板5、並びに、第1硬質板2からなる繰返し単位11jを複数有する保持容器ユニット12jである。図14は保持容器ユニット12jを構成する各繰返し単位11jの一例を示す断面図を示す。
【0092】
[スペーサ、保持板及び硬質板]
本実施形態の保持容器ユニット12jは、上記第一実施形態と同様のスペーサ4を有し、上記第一実施形態から第六実施形態のいずれかと同様の第1保持板3及び第2保持板5を有し、上記第七実施形態の第1硬質板2を有する。
【0093】
この保持容器ユニット12jでは、スペーサ4、第1保持板3、第1硬質板2、及び第2保持板5が順に積層された繰返し単位11jを複数有する。これにより、隣接する繰返し単位11jにおけるそれぞれの第1硬質板2に挟まれて保持容器が形成されるとともに、第2硬質板が省略されるため、保持容器ユニット12jをウエハWの厚さ方向についてコンパクトにすることができる。このとき、保持容器ユニット12jを構成する繰返し単位11jは、図14に示すように、第1硬質板2の一方の面に第1保持板3及びスペーサ4が積層され、第1硬質板2の他方の面に第2保持板5が積層されることが好ましい。これにより、繰返し単位11jごとの取扱いをより容易にすることができる。
【0094】
≪貫通穴が設けられた保持容器ユニット≫
本発明の第十一実施形態は、第1硬質板2、第1保持板3、スペーサ4、及び第2保持板5の互いに対応する位置に貫通穴13を設ける保持容器ユニット12kである。図15は保持容器ユニット12kを構成する各繰返し単位11の一例を示す斜視図を示す。
【0095】
[スペーサ、保持板及び硬質板]
本実施形態の保持容器ユニット12kは、上記第一実施形態のスペーサ4、上記第一実施形態から第六実施形態のいずれかの形態の第1保持板3及び第2保持板5、並びに上記第八実施形態の第1硬質板2が設けられた、上記第九実施形態又は第十実施形態のいずれかの形態の繰返し単位11を有する。
【0096】
この保持容器ユニット12kでは、第1硬質板2、保持板3及び5、並びにスペーサ4のうちウエハWと干渉しない位置、より好ましくは第1硬質板2、保持板3及び5、並びにスペーサ4の互いに対応する位置に、各々貫通穴13を設ける。これにより、以下に述べる連結支持棒7又は回動軸9を貫通穴13に挿入することができる。但し、本発明における貫通穴13は、穴の形態に限定されるものではなく、連結支持棒7又は回動軸9が連通する位置に設けた切欠き等も含むものとする。
【0097】
≪連結支持棒が設けられた保持容器ユニット≫
本発明の第十二実施形態は、第1硬質板2、第1保持板3、スペーサ4、及び第2保持板5に設けた貫通穴13に連結支持棒7を設ける保持容器ユニット12lである。図16は保持容器ユニット12lの各部品の一例を示す斜視図を示す。図17は連結支持棒7を有する保持容器ユニット12lの一例を示す(a)斜視図及び(b)断面図を示す。
【0098】
[スペーサ、保持板及び硬質板]
本実施形態の保持容器ユニット12lは、上記第一実施形態のスペーサ4、上記第一実施形態から第六実施形態のいずれかの形態の第1保持板3及び第2保持板5、並びに上記第八実施形態の第1硬質板2が設けられた、上記第九実施形態又は第十実施形態のいずれかの形態の繰返し単位11を有する。ここで、第1硬質板2、保持板3及び5、並びにスペーサ4には、第十一実施形態の貫通穴13を各々設ける。
【0099】
[連結支持棒]
この貫通穴13には、図16(a)及び(b)に示すように、連結支持棒7を挿入して、複数の繰返し単位11を連通する。これにより、繰返し単位11を構成する保持板3及び5並びに第1硬質板2が、ウエハWの表面と平行な方向に動き難くなるため、ウエハWへの傷の発生を低減し、保持容器ユニット12lを取扱い易くすることができる。ここで、連結支持棒7の直径は、保持容器ユニット12lをバッチ単位で扱う際の荷重に耐えられる大きさが必要であり、例えば直径25mm以上であることが好ましい。
【0100】
≪回動軸が設けられた保持容器ユニット≫
本発明の第十三実施形態は、第1硬質板2、第1保持板3、スペーサ4、及び第2保持板5に設けた貫通穴13に連結支持棒7を設ける保持容器ユニット12mである。図18は回動軸9を有する保持容器ユニット12mの一例を示す(a)斜視図及び(b)断面図を示す。
【0101】
[スペーサ、保持板及び硬質板]
本実施形態の保持容器ユニット12mは、上記第一実施形態のスペーサ4、上記第一実施形態から第六実施形態のいずれかの形態の第1保持板3及び第2保持板5、並びに上記第八実施形態の第1硬質板2が設けられた、上記第九実施形態又は第十実施形態のいずれかの形態の繰返し単位11を有する。ここで、第1硬質板2、保持板3及び5、並びにスペーサ4には、第十一実施形態の貫通穴13を各々設ける。
【0102】
[回動軸]
この貫通穴13には、図18(a)及び(b)に示すように、回動軸9を挿入する。これにより、回動軸9を中心に繰返し単位11の一部又は全部が水平方向に回動可能になるため、保持容器ユニット12mの各スペーサ4にウエハWを装填し易くし、各スペーサ4からウエハWを取出し易くすることができる。このとき、スペーサ4の上側の面及び第2保持板5の下側の面の互いに対応する位置に、ピンやリング等により浅い凹凸を設けることで、回動した繰返し単位11と他の繰返し単位11とを容易に重ね合わせることができる。ここで、回動軸9の直径は、繰返し単位11を回動してウエハWを取り出す際の荷重に耐えられる大きさが必要であり、例えば直径25mm以上であることが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0104】
[実施例1]
本実施例では、ウエハを収容する貫通穴状収容部を設ける矩形のスペーサを有する保持容器を作製した。
【0105】
一辺550mmの正方形の形状を有する、厚さ2mmのアクリル樹脂からなる第1硬質板を形成した。この第1硬質板の一方の側に、縦385mm、横165mmの直角三角形状をしたアクリル樹脂からなる保持部材を、スペーサの四隅に沿って4枚積層し、正方形状の第1切欠きを有する正方形の形状をした第1保持板を形成した。この保持部材の直角三角形の一方の角は22.5°であり、他方の角は67.5°である。ここで、第1保持板を構成する4個の保持部材が接する部分には、アクリル樹脂からなる、縦50mm、横50mmの三角形状をした厚さ2mmのコーナー板を嵌め込んだ。そして、この第1保持板が露出する面に、中央に直径450mmの円形の周縁を有する貫通穴状収容部が設けられた、一辺が550mmの正方形の形状をした厚さ1.2mmのアクリル樹脂からなるスペーサを積層し、下盤を形成した。
【0106】
また、一辺550mmの正方形の形状を有する、厚さ2mmのアクリル樹脂からなる第2硬質板の一方の側に、縦385mm、横165mmの直角三角形状をした保持部材を、スペーサの四隅に沿って4枚積層し、正方形状の第2切欠きを有する正方形の形状をした第2保持板を形成した。ここで、第2保持板は、スペーサ及び保持板の積層方向から見た場合に、互いに交差するように第2硬質板上に配置した。そして、第2保持板を構成する4個の保持部材が接する部分には、第1保持板側と同様にコーナー板を嵌め込み、蓋を形成した。
【0107】
本実施例では、硬質板及びスペーサの四隅の角と、保持板を構成する直角三角形の直角な角には、それらの角から縦方向に50mm、横方向に50mm内側に入ったところを中心にして、直径25mmの円形の貫通穴を形成した。
【0108】
そして、下盤のスペーサに直径450mmのウエハを嵌め込み、その上に蓋をかぶせてウエハを保持するとともに、四隅にあけられた穴に直径25mmの連結支持棒を連通し、複数の保持容器を有する保持容器ユニットを作製した。
【0109】
その結果、第1切欠き及び第2切欠きは、その正方形状の四辺が貫通穴状収容部の外側で互いに交差しており、第2切欠きは第1切欠きについて貫通穴状収容部の中心を軸に45°回転した形状となった。この保持容器ユニットで保持したウエハは、保持容器の中で動きにくく、ウエハを保持したときにたわみにくく、且つウエハに傷が入りにくいものになった。
【0110】
[実施例2]
スペーサ及び硬質板の外形の一辺の長さを400mmとするとともに、スペーサの貫通穴状収容部の周縁の形状を直径300mmの円形とし、保持板を形成する直角三角形状の保持部材を縦385mm、横165mmとして、実施例1と同様に、スペーサ、第1保持板、及び第1硬質板から下盤を構成し、第2保持板及び第2硬質板から蓋を構成して保持容器を作製した。ここで、硬質板及びスペーサの四隅の角と、保持部材の直角な角とで、互いに対応する位置に、直径25mmの円形の貫通穴を形成した。
【0111】
そして、保持容器の下盤のスペーサに直径300mmのウエハを嵌め込み、その上に蓋をかぶせてウエハを保持するとともに、四隅にあけられた穴に直径25mmの連結支持棒を連通し、複数の保持容器を有する保持容器ユニットを作製した。
【0112】
その結果、実施例1と同様に、保持したウエハが保持容器の中で動きにくく、ウエハを保持したときにたわみにくく、且つウエハに傷が入りにくいような保持容器及び保持容器ユニットを作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】第一実施形態における保持容器の各部品の一例を示す斜視図を示す。
【図2】第一実施形態における保持容器の一例を示す(a)正面図、及び(b)A−A’面で切断した断面図を示す。
【図3】第一実施形態における保持容器の変形例の第1切欠き及び第2切欠きを例示する正面図を示す。
【図4】ウエハ厚さとウエハ中心の下方向へのたわみ量の測定値との関係を示す。
【図5】第二実施形態における保持容器の一例を示す(a)正面図、及び(b)B−B’面で切断した断面図を示す。
【図6】第三実施形態における保持容器の一例を示す(a)正面図、及び(b)C−C’面で切断した断面図を示す。
【図7】第四実施形態における保持容器の各部品の一例を示す斜視図を示す。
【図8】第四実施形態における保持容器の変形例の第1切欠き及び第2切欠きを例示する正面図を示す。
【図9】第五実施形態における保持容器の各部品の一例を示す斜視図を示す。
【図10】第六実施形態における保持容器の各部品の一例を示す斜視図を示す。
【図11】第七実施形態における保持容器の各部品の一例を示す斜視図を示す。
【図12】第八実施形態における保持容器の一例を示す斜視図を示す。
【図13】第九実施形態における保持容器ユニットを構成する各繰返し単位の一例を示す斜視図を示す。
【図14】第十実施形態における保持容器ユニットを構成する各繰返し単位の一例を示す(a)斜視図及び(b)断面図を示す。
【図15】第十一実施形態における保持容器ユニットを構成する各繰返し単位の一例を示す斜視図を示す。
【図16】第十二実施形態における保持容器ユニットの各部品の一例を示す斜視図を示す。
【図17】第十二実施形態における保持容器ユニットの一例を示す(a)斜視図及び(b)断面図を示す。
【図18】第十三実施形態における保持容器ユニットの一例を示す(a)斜視図及び(b)断面図を示す。
【符号の説明】
【0114】
1 保持容器
2 第1硬質板
3 第1保持板
31 第1切欠き
32 コーナー板
4 スペーサ
41 貫通穴状収容部
5 第2保持板
51 第2切欠き
52 コーナー板
6 第2硬質板
7 連結支持棒
8 外枠
9 回動軸
11 繰返し単位
12 保持容器ユニット
H1、H2 保持部位
T 厚さ
K 重なり部位
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にウエハを収容する略円形の貫通穴状収容部を有するスペーサと、
前記スペーサの一方の面に当接し且つ第1切欠きを有する第1保持板と、
前記スペーサの他方の面に当接し且つ第2切欠きを有する第2保持板と、からなり、
前記第1切欠きは、前記第1保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持可能な形状を有し、
前記第2切欠きは、前記第2保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持可能な形状を有することを特徴とする保持容器。
【請求項2】
前記第1保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持する第1保持部位が4箇所以上形成され、前記第2保持板を前記ウエハの下側に位置させたときに前記ウエハを保持する第2保持部位が4箇所以上形成されることを特徴とする請求項1記載の保持容器。
【請求項3】
前記貫通穴状収容部の内部への外気の流通を抑制する構造をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2記載の保持容器。
【請求項4】
前記第1保持板及び前記第2保持板の厚さが3mm以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の保持容器。
【請求項5】
前記スペーサの厚さから前記ウエハの厚さを引いた値が300μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の保持容器。
【請求項6】
前記スペーサが硬質材料からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の保持容器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか記載の保持容器が複数重畳されてなる保持容器ユニットであって、
前記スペーサ、前記第2保持板、第1硬質板、及び前記第1保持板が順に積層された繰返し単位を繰返し積層することにより、隣接する前記繰返し単位におけるそれぞれの前記第1硬質板に挟まれて前記保持容器が形成されることを特徴とする保持容器ユニット。
【請求項8】
前記第1硬質板、前記第1保持板、前記スペーサ、及び前記第2保持板の互いに対応する位置に貫通穴を設けることを特徴とする請求項7記載の保持容器ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−272349(P2009−272349A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119326(P2008−119326)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000184713)SUMCO TECHXIV株式会社 (265)
【Fターム(参考)】