保持装置および保持方法
【課題】外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持しているときに、該支持膜を溶剤雰囲気などから保護し、該支持膜のたわみを抑制することができる保持技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る保持装置10は、ダイシングテープ(支持膜)3が接着されている側の面からウエハ(基板)2を吸引する第一吸引部11、ダイシングフレーム(枠部)4を支持するとともに、ダイシングテープ3のウエハ2が接着されていない側の面におけるウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆う構造体14、および、構造体14と、ダイシングフレーム4および第一領域の少なくとも一方との間を密閉する第二吸引部12を備えている。
【解決手段】本発明に係る保持装置10は、ダイシングテープ(支持膜)3が接着されている側の面からウエハ(基板)2を吸引する第一吸引部11、ダイシングフレーム(枠部)4を支持するとともに、ダイシングテープ3のウエハ2が接着されていない側の面におけるウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆う構造体14、および、構造体14と、ダイシングフレーム4および第一領域の少なくとも一方との間を密閉する第二吸引部12を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持する保持装置および保持方法に関するものであり、詳細には、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持装置および保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカード、携帯電話などの電子機器の薄型化、小型化、軽量化などが要求されている。これらの要求を満たすためには、組み込まれる半導体チップについても薄型の半導体チップを使用しなければならない。このため、半導体チップの基となる半導体ウエハの厚さ(膜厚)は現状では125μm〜150μmであるが、次世代のチップ用には25μm〜50μmにしなければならないといわれている。したがって、上記の膜厚の半導体ウエハを得るためには、半導体ウエハの薄板化工程が必要不可欠である。
【0003】
半導体ウエハの薄板化工程は次のように行なう。まず、半導体ウエハの回路形成面を覆うように、半導体ウエハを保護するためのサポートプレートを、両面に接着層を有するテープまたは接着剤を介して貼り付ける。次に、これを反転して、半導体ウエハの裏面をクラインダーによって研削して薄板化する。続いて、薄板化した半導体ウエハの裏面を、ダイシングフレームに保持されているダイシングテープ上に固定する。さらに、この状態で半導体ウエハの回路形成面を覆うサポートプレートを剥離した後、ダイシング装置によって各チップに分割する。
【0004】
上記のように薄板化工程を行った場合、サポートプレートを剥離したあと、半導体ウエハの回路形成面に、接着剤等が残存してしまう。このため、付着している接着剤等を除去して、半導体ウエハの回路形成面を清浄な面にしなければならない。つまり、半導体ウエハをダイシングテープ上に固定した状態で、半導体ウエハの回路形成面を覆うサポートプレートを剥離した後、ダイシング装置によって各チップに分割する前に、半導体ウエハの表面に対して洗浄処理をすることが必要である。
【0005】
この洗浄処理を行なう際や、その前のサポートプレートを剥離する際に、半導体ウエハを保持台等に載せて保持する場合がある。
【0006】
特許文献1には、従来技術に係る半導体ウエハの保持技術が記載されている。図12は、特許文献1に記載のウエハの加工装置90の概略構成を示す模式図であり、(a)は、加工装置90の側方断面図を示し、(b)は、加工装置90の上面図を示し、(c)は、加工装置90の斜視図を示す。
【0007】
図12(a)に示すように、加工装置90は、外周にダイシングフレーム4を備えているダイシングテープ3の中央部に接着されたウエハ2を保持する。詳細には、加工装置90は、チャックテーブル91によりウエハ2を、吸着パッド92によりダイシングフレーム4を吸引して被処理体1を保持している。ここで、ガイドロッド95が、吸着パッド92をチャックテーブル91の径方向に沿って移動自在に支持するため、加工装置90は、複数のサイズのダイシングフレームに対応可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−95953号公報(2009年5月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図12に示すような従来技術に係る保持装置を用いて、外周に枠部(ダイシングフレーム4)を備えている支持膜(ダイシングテープ3)の中央部に接着された基板(ウエハ2)を保持し、基板の洗浄処理などの溶剤雰囲気下でなされる処理を行った場合、溶剤雰囲気により支持膜が膨潤し、たわんでしまうという問題がある。すなわち、図1に示すような支持膜にたわみがない状態から、図2に示すような支持膜にたわみがある状態に変化してしまう。その結果、基板の真空吸着、搬送などにおいて障害が生じ得る。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持しているときに、該支持膜を溶剤雰囲気などから保護し、該支持膜のたわみを抑制することができる保持技術を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る保持装置は、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持装置であって、該支持膜が接着されている側の面から該基板を吸引する基板吸引手段、該枠部を支持するとともに、該支持膜の該基板が接着されていない側の面における該基板と該枠部とに挟まれた領域を覆う構造体、および、該構造体と該枠部との間を密閉する密閉手段を備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る保持方法は、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持方法であって、該支持膜が接着されている側の面から該基板を吸引する基板吸引工程、該支持膜の該基板が接着されていない側の面における該基板と該枠部とに挟まれた領域を構造体によって覆う被覆工程、および、該構造体と該枠部との間を密閉する密閉工程を含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持しているときに、該支持膜を溶剤雰囲気などから保護することで、該支持膜のたわみを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】支持膜のたわみがない被処理体の概略構成を示す図であり、(a)は、当該被処理体の側方図を示し、(b)は、(a)におけるA方向から当該被処理体を観察した図を示す。
【図2】支持膜のたわみがある被処理体の概略構成を示す図であり、(a)は、当該被処理体の側方図を示し、(b)は、(a)におけるA方向から当該被処理体を観察した図を示す。
【図3】支持膜のたわみがある被処理体において生じる問題を説明する模式図であり、(a)は、当該被処理体を真空吸着している状態を示し、(b)は、当該被処理体を搬送している状態を示す。
【図4】被処理体における支持膜のたわみ量の測定方法を説明する模式図であり、(a)は、支持膜のたわみがない被処理体を測定した場合の測定の様子を示し、(b)は、支持膜のたわみがある被処理体を測定した場合の測定の様子を示す。
【図5】溶剤雰囲気下における被処理体における支持膜のたわみ量の変化について、本発明の一実施例と比較例とを比較するグラフである。
【図6】本発明の一実施形態に係る保持装置の概略構成を示す模式図であり、(a)は、当該保持装置の側方断面図を示し、(b)は、当該保持装置の上面図を示し、(c)は、当該保持装置の斜視図を示す。
【図7】本発明の一実施形態に係る保持装置の構成のバリエーションを示す側方断面図であり、(a)は、第二吸引部が枠部および第一領域の両方を吸引する構成を示し、(b)は、第二吸引部が第一領域を吸引する構成を示す。
【図8】本発明の一実施形態に係る保持装置の概略構成を示す側方断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る保持装置の概略構成を示す側方断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る保持装置の概略構成を示す上面図である。
【図11】本発明の一実施形態における被処理体の処理方法の概要を説明する模式図である。
【図12】従来技術に係る保持装置の概略構成を示す模式図であり、(a)は、当該保持装置の側方断面図を示し、(b)は、当該保持装置の上面図を示し、(c)は、当該保持装置の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の一実施形態(第1実施形態)について、図面を参照して説明する。
【0016】
(被処理体)
図1は、本実施形態において保持対象となる被処理体1の概略構成を示す図である。図1(a)は、被処理体1の側方図を示し、図1(b)は、図1(a)におけるA方向から被処理体1を観察した図を示す。
【0017】
図1に示すように、被処理体1は、外周にダイシングフレーム4(枠部)を備えているダイシングテープ3(支持膜)の中央部に接着されたウエハ(基板)2である。ウエハ2は回路(素子)が形成される基板であり、半導体など従来公知の材質の基板を用いることができる。
【0018】
ダイシングテープ3は、ウエハ2の強度を補強するためにウエハ2の片面に接着される。ダイシングテープ3としては、例えばベースフィルムに粘着層が形成された構成のダイシングテープを用いることができる。ベースフィルムとしては、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリオレフィン又はポリプロピレン等の樹脂フィルムを用いることができる。
【0019】
また、ダイシングテープ3はウエハ2の外径よりも大きく、これらを接着させるとウエハ2の外縁にダイシングテープ3の一部が露出した状態になっている。また、ダイシングテープ3の露出面のさらに外縁には、ダイシングテープ3を支持するためのダイシングフレーム4が設けられている。図1に示すように、ウエハ2およびダイシングフレーム4は共に、ダイシングテープ3の同じ側に貼付されている。
【0020】
本実施形態では、特に、ウエハ製造工程において一時的に保持された支持板(サポートプレート、図示せず)を剥離した後のウエハ2を洗浄する用途に好適に用いることができる。
【0021】
つまり、ウエハ2の表面にはその製造工程において汚れが付着することがあるため、この付着物を除去してウエハ2の表面を清浄にしなくてはならない。特に、接着剤を介して接着させたサポートプレートを剥離すると、ウエハ2の表面に接着剤等が残存してしまう。そのため、ウエハ2をダイシングして各チップに分割する前に、ダイシングテープ3に固定した状態でウエハ2の表面を洗浄する必要がある。
【0022】
このような洗浄は、例えば、有機溶剤または水性溶剤を洗浄液として用い、ウエハ2に対して洗浄液を2流体ノズル等から吐出することによって行うことができる。
【0023】
このとき、洗浄液の吐出によって被処理体1の周囲に溶剤雰囲気が形成される。従来技術に係る保持装置を用いて被処理体1を保持していた場合、この溶剤雰囲気によってダイシングテープ3が膨潤し、ダイシングテープ3がたわむことがある。
【0024】
もちろん、本発明は、洗浄時におけるダイシングテープ3のたわみを抑制することに限定されず、ウエハ2の処理の際の溶剤雰囲気に起因するダイシングテープ3のたわみ一般を首尾よく抑制することができる。
【0025】
図2は、膨潤したダイシングテープ3’を有する被処理体1’の概略構成を示す図であり、(a)は、被処理体1’の側方図を示し、(b)は、(a)におけるA方向から被処理体1’を観察した図を示す。
【0026】
図2に示すように、被処理体1’では、ダイシングテープ3’のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた領域にたわみが生じている(図2(b)のBで示す部分)。このような被処理体1’は、以下のような問題を引き起こす場合がある。
【0027】
すなわち、図3(a)に示すように、被処理体1’をポーラスステージ(吸引部)5によって保持しようとしたときに、たわみの部分を首尾良く吸着させることが困難である。また、図3(b)に示すように、基板底部を保持する搬送ロボットアーム6を用いて被処理体1’を搬送する場合、カセット収納時に被処理体1’を置き、搬送ロボットアーム6を所定位置に戻すときに、たわみが原因で被処理体1’を引きずってしまうことがある。
【0028】
本実施形態に係る保持装置10によれば、このような問題を防ぎ、被処理体を好適に保持することができる。
【0029】
(溶剤)
溶剤雰囲気を形成する溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ウエハ2の洗浄のための洗浄液であり得る。そのような洗浄液としては、非水溶媒を含む限り特に限定されるものではなく、例えば、p−メンタン等のテルペン系溶剤を用いたの公知の洗浄液を用いることができる。テルペン系溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数3から15の分岐状の炭化水素;ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、メントール、イソメントール、ネオメントール、リモネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、1,4−テルピン、1,8−テルピン、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、ボルナン、ボルネオール、ノルボルナン、ピナン、α−ピネン、β−ピネン、ツジャン、α−ツジョン、β−ツジョン、カラン、ショウノウ、ロンギホレン、1,4−シネオール、1,8−シネオール等のモノテルペン類、アビエタン、アビエチン酸等のジテルペン類、等の環状の炭化水素(テルペン類)が挙げられる。
【0030】
また、被処理体1の処理のために特に溶剤を使用しない場合であっても、隣接する加工装置または洗浄装置等によって溶剤雰囲気が形成される場合もあり、保持装置10は、そのような場合にも好適に使用することができる。
【0031】
(保持装置)
図6は、本発明の一実施形態に係る保持装置10の概略構成を示す模式図である。図6(a)は、保持装置10の側方断面図を示し、図6(b)は、保持装置10の上面図を示し、図6(c)は、保持装置10の斜視図を示す。
【0032】
図6に示すように、保持装置10は、第一吸引部(第一吸引手段)11、第二吸引部(第二吸引手段)12、回転部(回転手段)13、構造体14、および、溶剤添加部(溶剤添加手段)16を備えている。第一吸引部11および第二吸引部12は、構造体14上に設けられている。
【0033】
第一吸引部11は、ダイシングテープ3が接着されている側の面からウエハ2を吸引する。吸引機構としては従来公知の吸引機構が設けられていればよい。例えば、吸着面上の気体を吸引するための吸引孔(図示せず)が設けられていてもよい。そして、この吸引孔は、真空ポンプなどの減圧手段に接続されており、ウェハ2を載置し、吸引手段を作動させることで、ウェハ2と吸着面との間が減圧された状態になり、これによって吸着することができる。吸引孔は、板状部材の所定の位置に孔を形成することで設けることができ、例えば、吸引孔はプレートを貫通する貫通孔であってもよい。また、ポーラスな材質を用いて形成してもよい。ポーラスな材質としては、たとえば、ポリプロピレン、カーボン、アルミニウム、セラミック等を例示することができる。これにより、ウェハ2は構造体14上に固定される。なお、第一吸引部11のウェハ2を載せる面は、特に限定されないが、ウエハ2の形状に類似していることが好ましく、例えば、円形状であり得る。
【0034】
第二吸引部12は、構造体14とダイシングフレーム4との間が密閉されるようにダイシングフレーム4を吸引する。吸引機構は、第一吸引部11と同様のものを用いることができる。図6(b)に示すように、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4が載置される領域に沿って配置されていることが好ましい。
【0035】
構造体14は、第一吸引部11を介してウエハ2を支持するとともに、第二吸引部12を介してダイシングフレーム4を支持する。そして、図6に示すように、構造体14は、ダイシングテープ3の下面(ウエハ2が接着されていない側の面)のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆っている。ここで、第二吸引部12により、構造体14とダイシングフレーム4との間が密閉されているため、溶剤雰囲気が、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域に到達することを阻止することができる。
【0036】
このように、保持装置10は、外周にダイシングフレーム4を備えているダイシングテープ3の中央部に接着されたウエハ2を保持する保持装置であって、ダイシングテープ3が接着されている側の面からウエハ2を吸引する第一吸引部11、ダイシングフレーム4を支持するとともに、ダイシングテープ3のウエハ2が接着されていない側の面におけるウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆う構造体14、および、構造体14とダイシングフレーム4との間を密閉する第二吸引部12を備えている。これにより、溶剤雰囲気が、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域に到達することを阻止して、ダイシングテープ3のたわみを抑制することができる。よって、保持装置10によれば、ダイシングテープ3のたわみに起因する様々な問題を防ぎ、被処理体1を好適に保持することができる。
【0037】
なお、保持装置10は、構造体14とダイシングフレーム4との間を密閉する機構を備えていればよく、そのような機構は第二吸引部12に限定されない。保持装置10は、第二吸引部12の代わりに、例えば、ダイシングフレーム4を、物理的な力または磁力により、構造体14に押しつけ、密閉する機構(密閉手段)を備えていてもよい。
【0038】
また、本実施形態において、構造体14は、第一吸引部11が設けられている部分と、第二吸引部12が設けられている部分とが、一体となっているが、これは特に限定されない。構造体14は、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆うような形状を有していれば、第一吸引部11が設けられている部分と、第二吸引部12が設けられている部分とが別部材によって構成されていてもよい。
【0039】
溶剤添加部16は、上述したような、被処理体1を処理するための溶剤を保持装置10に保持されている被処理体1に添加するための機構である。このような機構を、保持装置10が備えていることにより、溶剤を使用したウエハ2の洗浄などの処理を好適に行うことができる。溶剤添加部16は、例えば、ノズル等の吐出供給機構を備えていればよい。溶剤添加部16は、また、溶剤とともにエアーを吐出する二流体ノズルを備えていてもよい。
【0040】
ウエハ2の洗浄方法としては、特に限定されないが、溶剤添加部16から溶剤をウエハ2上に吐出させてもよい。このように、ウエハ2に対して溶剤を吐出することにより、ウエハ2上の残存物を流してウエハ2上から除去することができる(図11(d)、(e)を参照)。
【0041】
回転部13は、第一吸引部11がウエハ2を吸引している状態で、構造体14を回転させることにより、ウエハ2を基板面内方向に回転させる回転機構である。溶剤添加部16から溶剤をウエハ2に添加しつつ、ウエハ2を回転させることにより、いわゆるスピン洗浄を好適に行うことができる。これにより、遠心力によって溶剤を広範囲に広げてより効率よく洗浄することができる。このとき、溶剤添加部16を揺動(スイング)させながら溶剤を吐出してもよい(図11(d)、(e)を参照)。すなわち、一つの局面において、保持装置10は、基板の洗浄装置であり得る。ウェハ2の回転数は、用途等に応じて適宜設定すればよく、例えば、500min−1以上、3000min−1以下としてもよい。
【0042】
なお、構造体14は、図6(a)に示すように、ウエハ2を水平になるように設置したとき、ダイシングフレーム4がウエハ2よりも下側に位置するようにダイシングフレーム4を支持するようになっていることが好ましい。第二吸引部12が、ダイシングフレーム4を吸引しているため、この構成によれば、ダイシングテープ3が下向きに引っ張られるようになる。これにより、ウェハ2およびダイシングフレーム4の反り、ならびに、ダイシングテープ3のしわの影響を軽減することができる。
【0043】
また、このとき、図6(a)に示すように、構造体14の表面であって、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域に対向する面が、ウエハ2の基板面に対して下向きに傾斜している面を含んでいることが好ましい。構造体14がテーパ状に加工されていることにより、ダイシングテープ3との接触面に尖った部分が含まれないようにして、ダイシングテープ3の破損を避けることができる。
【0044】
(第二吸引部の変形例)
以上では、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4を吸引するようになっていたが、本実施形態はこれに限定されない。第二吸引部12は、ダイシングフレーム4およびダイシングテープ3の少なくとも一方を吸引するようになっていればよい。より詳しくは、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4、および、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域の少なくとも一方を吸引して、構造体14と、ダイシングフレーム4および当該第一領域の少なくとも一方との間を密閉するようになっていればよい。
【0045】
例えば、図7(a)に示すように、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4およびダイシングテープ3の両方を吸引するようになっていてもよい。また、例えば、図7(b)に示すように、第二吸引部12は、ダイシングテープ3のみを吸引するようになっていてもよい。
【0046】
このように、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4および第一領域の少なくとも一方を吸引して、構造体14と、ダイシングフレーム4および第一領域の少なくとも一方との間を密閉するようになっている。これにより、第一領域のうち、第二吸引部12によって密閉された部分の内側にある部分を、外部の溶剤雰囲気等から保護することができる。
【0047】
なお、第二吸引部12が第一領域を吸引する場合、第二吸引部12は第一領域の外周部を吸引するようになっていることがより好ましい。第二吸引部12が、第一領域の外周部、特に、第一領域のうち、ダイシングフレーム4の手前の部分を吸引するようになっていれば、第一領域のより多くの部分を、外部の溶剤雰囲気等から保護することができる。なお、第一領域の外周部とは、第一領域のうち、ウエハ2よりもダイシングフレーム4の方に近い部分を指す。
【0048】
また、上述したように、保持装置10は、第二吸引部12の代わりに、物理的な力または磁力により、所定の部材同士の間を密閉する機構(密閉手段)を備えていてもよい。このとき、当該密閉手段は、構造体14と、ダイシングフレーム4およびダイシングテープ3の少なくとも一方との間を密閉するようになっていればよい。
【0049】
また、後述する第2実施形態および第3実施形態において、図面上、第二吸引部12はダイシングフレーム4を吸引するように描かれている。しかし、第2実施形態および第3実施形態においても、本実施形態と同様に、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4およびダイシングテープ3の少なくとも一方を吸引するようになっていればよい。
【0050】
〔第2実施形態〕
図8は、本発明の一実施形態に係る保持装置20の概略構成を示す側方断面図である。以下、保持装置10と異なる部分についてのみ説明する。図8に示すように、保持装置20は、クランプ(加力手段)21を備えている点において、保持装置10と異なっている。
【0051】
クランプ21は、ダイシングフレーム4を押さえるためのものである。上述したように、第二吸引部12によりダイシングフレーム4と構造体14との間は密閉されているが、クランプ21は、第二吸引部12とは別に、ダイシングフレーム4に対して加力するものである。これにより、さらに好適にダイシングフレーム4と構造体14とを密着させ、密閉することができる。
【0052】
また、クランプ21は、第一吸引部11よりも外側に位置しており、図8に示すように、クランプ21は、図中Fの方向に回転することにより、ダイシングテープ3における第一吸引部11により吸引される部位よりも外側の部位であるダイシングフレーム4に対して、ウェハ2を水平になるように設置したときに鉛直下向きの方向となる力を加える。そして、当該力が加えられた部位が当該部位の内側より鉛直下側に位置するようにする。具体的には、押さえられた箇所が、その内側より下に位置するようになるまで、ダイシングフレーム4を押さえる。本発明において、力を加えられた部位の内側とは、その内側の領域の少なくとも一部であればよいが、内側全体よりも力を加えられた部位が下に位置するように押さえることがより好ましい。換言すれば、力を加えられた部位より上に位置する部位の面積が大きければ大きいほど、ダイシングテープ3が下向きへ引っ張られる力が強くなり、ウェハ2およびダイシングフレーム4の反り、ならびに、ダイシングテープ3のしわによる影響を軽減することができる。
【0053】
なお、クランプ21はバネ(弾性体;図示せず)を備えている。バネによる力が鉛直下向きに働き、ウェハ2に加えられる力が強くなる。
【0054】
また、ダイシングフレーム4上におけるクランプ21によって力が加わる箇所は、ウェハ2よりも下に位置している。このような構成にすることで、ダイシングテープ3を十分に引っ張ることができ、ウェハ2の固定をより強固にすることができる。
【0055】
以上に説明したクランプ21の機能によりダイシングテープ3は中心から外側および鉛直下向きに向かって引っ張られることになり、保持装置20は、ウェハ2およびダイシングテープ3の反りならびにダイシングテープ3にしわが有ったとしても、ウェハ2を良好に吸着して保持することができる。
【0056】
なお、本実施形態ではクランプ21がバネ(弾性体)を備える場合について説明したが、本発明に係る保持装置の加力部は弾性体を備えなくてもよい。ただし、より強い力で基板を押さえる観点から、本発明に係る保持装置の加力部は弾性体を備えることがより好ましい。
【0057】
また、本実施形態では、クランプ21がダイシングフレーム4を上から押さえる場合について説明したが、本発明に係る保持装置の加力部は、支持膜を上から押さえる形態でなくてもよい。例えば、加力部は支持膜を下から引っ張ってもよく、支持膜に鉛直下向きの力を加えることができる限り、加力部の形態は限定されない。また、加力部は、枠部だけでなく、基板そのものを併せて押さえる構成になっていてもよい。
【0058】
〔第3実施形態〕
図9は、本発明の一実施形態に係る保持装置30の概略構成を示す側方断面図である。以下、保持装置10と異なる部分についてのみ説明する。図9に示すように、保持装置30では、保護膜31をダイシングテープ3上に形成する点において、保持装置10と異なっている。
【0059】
図9に示すように、本実施形態において、保護膜31は、少なくともダイシングテープ3上の、ウエハ2が接着されている側の面におけるウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第二領域に、形成される。保護膜31を形成する保護膜形成部(保護膜形成手段)32(図示せず)および不要となった保護膜31を除去する保護膜除去部(保護膜除去手段)33(図示せず)については後述する。
【0060】
このように、ダイシングテープ3上に保護膜31を形成することにより、溶剤雰囲気がダイシングテープ3に到達することをさらに好適に阻止することができる。すなわち、本実施形態によれば、ダイシングテープ3のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれている部分において、その下面(ウエハ2が接着されていない側の面)を、構造体14および第二吸引部12によって溶剤雰囲気から遮蔽することに加えて、その上面(ウエハ2が接着されている側の面)を、保護膜31によって溶剤雰囲気から遮蔽するため、より好適に、ダイシングテープ3のたわみを抑制することができる。
【0061】
(保護膜)
保護膜31の組成物は、洗浄液に不溶な材料からなる構成であれば特に限定されないが、水溶性の材料からなることがより好ましい。そのような保護膜31の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、およびアミド系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の水溶性樹脂を用いることができる。
【0062】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン等のモノマーを構成成分とするポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0063】
ビニル系樹脂としては、例えば、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾリジノン、酢酸ビニル等のモノマーを構成成分とするポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0064】
セルロース系樹脂としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロール、セルロールアセテートヘキサヒドロフタレート、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
【0065】
さらに、アミド系樹脂の中で水溶性のものも用いることができる。その中でも、ビニル系樹脂が好ましく、特にポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールが好ましい。
【0066】
これらの水溶性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。上記樹脂の中でも、保護膜が形成されたダイシングテープの接着強度が、保護膜形成前の接着強度の値と比べて50%以下になる樹脂を用いればよく、30%以下になる樹脂を用いることがより好ましい。
【0067】
本実施形態に係る保護膜31は、様々な方法により形成することができる。例えば、上記組成物を液状のまま、ダイシングテープ3の露出面に塗布して保護膜31を形成する方法を用いてもよいし、予め可撓性フィルム等のフィルム上に上記組成物を含む保護層を形成した後、乾燥させておき、このフィルムを、ダイシングフレーム4の露出面に貼り付けて使用する方法を用いてもよい。また、溶剤雰囲気を伴う処理が完了し、不要となった保護膜31を除去する方法も特に限定されず、洗浄、剥離等の一般的な方法を用いることができる。
【0068】
また、保護膜31の形成および除去は、構造体14上に被処理体1が固定されている状態で行ってもよいし、他の場所において行ってもよい。以下、保護膜形成部32および保護膜除去部33を備えた保持装置全体の構成の一例について説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下では、本発明に係る保持装置を、基板の洗浄装置として構成した場合について説明しているが、本発明はこれに限定されない。
【0069】
(洗浄装置)
図10は、本発明の一実施形態に係る洗浄装置(保持装置)40の構成を示す上面図である。図10に示すように、洗浄装置40は、被処理体1を収納する被処理体収納部41、被処理体1を搬送する搬送手段42、被処理体1に保護膜31を形成する保護膜形成ユニット46、および、被処理体1を洗浄する洗浄ユニット47を備えている。以下、保持装置10と異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
搬送手段42は、被処理体1を、被処理体収納部41から保護膜形成ユニット46へ搬送し、さらに洗浄ユニット47へ搬送するようになっている。
【0071】
搬送手段42は、搬送ロボット44と、直線走行を実現するための走行路43とを有している。搬送ロボット44は、搬送ロボット44の軸を中心として回転可能であり、2つの連結アーム45aおよびハンド45bを有している。
【0072】
連結アーム45aは、関節における回転動作によって伸縮動作を実行するようになっている。ハンド45bは連結アーム45aの先端に設けられ、被処理体1を保持するようになっている。搬送ロボット44は、連結アーム45aの伸縮動作と軸を中心とした回転動作とによって、水平面内における被処理体1の移動を可能としている。
【0073】
保護膜形成ユニット46は、保護膜形成部32を備え、被処理体1に保護膜を形成するようになっている。具体的には、保護膜形成部32が、ウエハ2に接着されているダイシングテープ3の露出面に対して、保護膜31の材料組成物を塗布するようになっている。
【0074】
保護膜形成部32の構成は、例えば、ノズル等の吐出手段から液状の材料組成物を吐出するような構成にすればよい。しかし、保護膜形成部32の構成は、このように液状の材料組成物を吐出するような構成に限定されるものではなく、例えば、予めフィルム状に形成された保護膜31を貼り付けるような構成であってもよい。
【0075】
また、保護膜形成ユニット46は、例えば保護膜31の材料組成物を塗布する前に、ダイシングテープ3の露出面に紫外線を照射するようになっていてもよい。これにより、ダイシングテープ3の濡れ性を向上させることができる。
【0076】
洗浄ユニット47は、溶剤添加部16および保護膜除去部33を備え、被処理体1を洗浄するとともに、保護膜31を除去するようになっている。具体的には、溶剤添加部16を用いて被処理体1を洗浄した後に、保護膜除去部33がダイシングテープ3に形成された保護膜31を除去するようになっている。洗浄ユニット47は、また、第一吸引部11、第二吸引部12、および構造体14を備え、これにより被処理体1を好適に保持して、被処理体1の洗浄または保護膜31の除去の際に、ダイシングテープ3が溶剤雰囲気により膨潤してたるむことを好適に阻止することができる。
【0077】
保護膜除去部33の構成は、保護膜31の材料組成物又は形態に応じて適宜変更可能である。例えば、ノズル等の吐出供給手段を用いて保護膜31に水等の洗浄液を吐出するような構成でもよいし、保護膜31を構成するフィルムを剥離するような構成であってもよい。
【0078】
また、洗浄ユニット47は、保護膜除去部33による保護膜除去処理の後に、例えば、ウエハ2の表面をさらにドライ処理等をするようになっていてもよい。これにより、ウエハ2の表面をより清浄にすることができる。そのような処理としては、例えば、酸素プラズマを発生させて、ウエハ2の表面に残存している接着剤を除去するプラズマ処理が挙げられる。
【0079】
なお、保護膜形成ユニット46は、保護膜形成部32が保護膜31の材料組成物を塗布するとき、被処理体1を回転させるような構成になっていてもよい。同様に、洗浄ユニット47は、例えば回転部13により、被処理体1の洗浄および保護膜31の除去処理がそれぞれ行なわれるとき、被処理体1を回転させるような構成になっていてもよい。
【0080】
(洗浄方法)
次に、洗浄装置40の動作について、図2を参照して説明する。洗浄装置40は、例えば、サポートプレートが剥離された後の、ダイシングテープ3が接着されたウエハ2を被処理体1とすることができる。このような、ウエハ2の表面には、接着剤の残存接着剤、溶解残渣物等の付着物が付着している場合があり、洗浄することが好ましい。被処理体1は、最初、被処理体収納部41に収納されている(図11(a))。
【0081】
搬送手段42によって保護膜形成ユニット46に被処理体1が搬送されると、まず、保護膜形成部32が、ダイシングテープ3の露出面に保護膜の材料組成物を供給する(図11(b))。材料組成物の供給方法は特に限定されないが、例えば、図11(b)に示すように、ノズル状の保護膜形成部32から材料組成物を吐出させればよい。
【0082】
なお、材料組成物はダイシングテープ3の露出面が少なくとも被覆されるように供給されればよく、ダイシングフレーム4にまで達するか否かは特に限定されない。また、材料組成物を供給する前、例えば予めウエハ2の表面にマスキング処理を施しておいてもよい。これにより、洗浄対象となるウエハ2の表面に保護膜が形成されて十分な洗浄を行なえなくなることを防ぐことができる。
【0083】
また、材料組成物を供給しているとき、被処理体1を回転させてもよい。これにより、吐出した材料組成物をダイシングテープ3上に効率よく行き渡らせることができる。また、ダイシングテープ3に対して材料組成物を供給する前に、ダイシングテープに紫外線を照射してもよい。これにより、ダイシングテープへの材料組成物の濡れ性を向上させることができる。
【0084】
その後、図11(c)に示すように吐出した材料組成物を乾燥させて、保護膜31を形成する(保護膜形成工程)。乾燥は自然乾燥でよいが、例えば図11(c)に矢印で示すように被処理体を回転させながら乾燥さてもよい。なお、乾燥方法はこれに限定されるものではなく、例えば、オーブン又はホットプレート等を用いて乾燥させてもよいし、温風をあてて乾燥させてもよい。
【0085】
次に、搬送手段42により被処理体1を洗浄ユニット47に搬送し、溶剤を用いてウエハ2を洗浄する(洗浄工程)。洗浄の方法は、例えば、第1実施形態において説明したように行えばよい(図11(d)および(e))。このとき、洗浄の開始前に、第1実施形態と同様、第一吸引部11によってウエハ2を吸引し(基板吸引工程)、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を構造体14によって被覆し(被覆工程)、第二吸引部12によって、構造体14とダイシングフレーム4との間を密閉する(密閉工程)。これによって、洗浄時にダイシングテープ3が溶剤雰囲気によって膨潤することを避けることができる。
【0086】
ウエハ2の洗浄後、ダイシングテープ3に形成されている保護膜31を除去する(図11(f))。保護膜31の除去方法としては特に限定されないが、例えば、保護膜31が水溶性の材料からなる場合には、保護膜除去手段33をノズル状の液体吐出部とし、当該液体吐出部から保護膜31に対して水を吐出して、保護膜31を溶解させて除去すればよい。その後、被処理体を乾燥させる(図11(g))。乾燥の際、被処理体1をさらに回転させてもよい。保護膜除去手段33は、また、フィルム状に構成された保護膜31を爪付きアーム等によって物理的に取り除くものであってもよい。
【0087】
このように、ウエハ2の洗浄前に、第一吸引部11、第二吸引部12、および構造体14により、基板吸引工程、被覆工程および密閉工程を実施して、ダイシングテープ3下面の露出面を溶剤雰囲気から遮蔽し、さらに、ダイシングテープ3の上面の露出面を保護膜31によって保護することにより、ダイシングテープ3のたわみをより好適に抑制することができる。さらに、保護膜31は、ダイシングテープ3にウエハ2上から流れ出た溶解残渣物等が付着することを防ぐため、その後のダイシングプロセス時に、溶解残渣物等がウエハ2に再付着することを防ぐことができる。
【0088】
なお、上述した方法により洗浄した後のウエハ2のエッジ部分に接着剤等が残存していることがあるが、これは後のプロセスにおいて妨げにならない程度の量である。しかし、必要に応じてウエハ2のエッジ部に残存し得る残存接着剤を洗浄する工程を設けてもよい。当該工程としては、具体的には、例えば、被処理体1の乾燥前、ダイシングテープ3の露出面に水をかけながらウエハ2のエッジ部に洗浄液をかけて洗浄してもよいし、ブレード又はブラシにて除去してもよい。
【0089】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0090】
本発明に係る保持装置(実施例)および従来技術に係る保持装置(比較例)を用いてスピン洗浄を行い、それぞれの場合におけるダイシングテープのたわみ量の経時変化を測定した。
【0091】
実施例では、図6に示すような、ダイシングテープ3の下面におけるウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆う構造体14、および、構造体14とダイシングフレーム4との間を密閉する第二吸引部12を備えた保持装置を用いて被処理体1を保持し、スピン洗浄を所定時間行った。比較例では、そのような構造体14および第二吸引部12を備えていない従来技術に係る保持装置を用いて被処理体1を保持し、スピン洗浄を所定時間行った。
【0092】
ダイシングテープのたわみ量は、図4に示すような器具を用いて測定した。準備として、測定に供する被処理体1が備えるダイシングフレーム4の大きさに対応した位置決めブロック7を設置しておいた。スピン洗浄開始前、図4(a)に示すように、被処理体1を位置決めブロック7上に載置し、ウエハ2の下面の位置をマイクロメータ8を用いてウエハ2の下面の位置を測定して、初期値を取得した。そして、スピン洗浄終了後、図4(b)に示すように、保持装置から取り外した被処理体1を、同様に位置決めブロック7上に載置し、マイクロメータ8を用いてウエハ2の下面の位置を測定し、初期値からの変化を算出することによって、たわみ量Dを算出した。なお、位置決めブロック7上への被処理体1の載置の際には、位置決めブロック7の位置決め線などを利用することにより、ダイシングフレーム4の位置が毎回同一になるようにした。
【0093】
ウエハ2としては、12インチのベアガラスを用いた。ダイシングテープ3としては、市販のダイシングテープ(UC−353EP)を用いた。スピン洗浄では、スプレーユニット(二流体スプレー)を使用して、30mL/minのHCシンナー(炭化水素系シンナー)を、50L/minのエアーとともにウエハ2に吐出した。スピン洗浄における被処理体1の回転数は2000回転/minとし、5から60分間の範囲で測定を行った。結果を図5に示す。
【0094】
図5に示すように、実施例では、ダイシング(DC)テープ3のたわみ量が、比較例に比べ抑制されていた。図5中、Eは、比較例において、ダイシングテープ3のたわみ量が大きくなり過ぎたため、吸引部において吸着エラーが発生したことを示す。このように、本発明によれば、溶剤雰囲気に起因してダイシングテープがたわむことを抑制し、ダイシングテープのたわみに起因する問題を首尾よく避けることができた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、例えば、薄板化ウエハの表面処理等に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1、1’ 被処理体
2 ウエハ(基板)
3、3’ ダイシングテープ(支持膜)
4 ダイシングフレーム(枠部)
5 ポーラスステージ
6 搬送ロボットアーム
7 位置決めブロック
8 マイクロメータ
10、10’、10’’、20、30 保持装置
40 洗浄装置(保持装置)
11 第一吸引部(第一吸引手段)
12、12’、12’’ 第二吸引部(密閉手段、第二吸引手段)
13 回転部(回転手段)
14 構造体
16 溶剤添加部(溶剤添加手段)
21 クランプ(加力部)
31 保護膜
32 保護膜形成部(保護膜形成手段)
33 保護膜除去部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持する保持装置および保持方法に関するものであり、詳細には、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持装置および保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカード、携帯電話などの電子機器の薄型化、小型化、軽量化などが要求されている。これらの要求を満たすためには、組み込まれる半導体チップについても薄型の半導体チップを使用しなければならない。このため、半導体チップの基となる半導体ウエハの厚さ(膜厚)は現状では125μm〜150μmであるが、次世代のチップ用には25μm〜50μmにしなければならないといわれている。したがって、上記の膜厚の半導体ウエハを得るためには、半導体ウエハの薄板化工程が必要不可欠である。
【0003】
半導体ウエハの薄板化工程は次のように行なう。まず、半導体ウエハの回路形成面を覆うように、半導体ウエハを保護するためのサポートプレートを、両面に接着層を有するテープまたは接着剤を介して貼り付ける。次に、これを反転して、半導体ウエハの裏面をクラインダーによって研削して薄板化する。続いて、薄板化した半導体ウエハの裏面を、ダイシングフレームに保持されているダイシングテープ上に固定する。さらに、この状態で半導体ウエハの回路形成面を覆うサポートプレートを剥離した後、ダイシング装置によって各チップに分割する。
【0004】
上記のように薄板化工程を行った場合、サポートプレートを剥離したあと、半導体ウエハの回路形成面に、接着剤等が残存してしまう。このため、付着している接着剤等を除去して、半導体ウエハの回路形成面を清浄な面にしなければならない。つまり、半導体ウエハをダイシングテープ上に固定した状態で、半導体ウエハの回路形成面を覆うサポートプレートを剥離した後、ダイシング装置によって各チップに分割する前に、半導体ウエハの表面に対して洗浄処理をすることが必要である。
【0005】
この洗浄処理を行なう際や、その前のサポートプレートを剥離する際に、半導体ウエハを保持台等に載せて保持する場合がある。
【0006】
特許文献1には、従来技術に係る半導体ウエハの保持技術が記載されている。図12は、特許文献1に記載のウエハの加工装置90の概略構成を示す模式図であり、(a)は、加工装置90の側方断面図を示し、(b)は、加工装置90の上面図を示し、(c)は、加工装置90の斜視図を示す。
【0007】
図12(a)に示すように、加工装置90は、外周にダイシングフレーム4を備えているダイシングテープ3の中央部に接着されたウエハ2を保持する。詳細には、加工装置90は、チャックテーブル91によりウエハ2を、吸着パッド92によりダイシングフレーム4を吸引して被処理体1を保持している。ここで、ガイドロッド95が、吸着パッド92をチャックテーブル91の径方向に沿って移動自在に支持するため、加工装置90は、複数のサイズのダイシングフレームに対応可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−95953号公報(2009年5月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図12に示すような従来技術に係る保持装置を用いて、外周に枠部(ダイシングフレーム4)を備えている支持膜(ダイシングテープ3)の中央部に接着された基板(ウエハ2)を保持し、基板の洗浄処理などの溶剤雰囲気下でなされる処理を行った場合、溶剤雰囲気により支持膜が膨潤し、たわんでしまうという問題がある。すなわち、図1に示すような支持膜にたわみがない状態から、図2に示すような支持膜にたわみがある状態に変化してしまう。その結果、基板の真空吸着、搬送などにおいて障害が生じ得る。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持しているときに、該支持膜を溶剤雰囲気などから保護し、該支持膜のたわみを抑制することができる保持技術を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る保持装置は、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持装置であって、該支持膜が接着されている側の面から該基板を吸引する基板吸引手段、該枠部を支持するとともに、該支持膜の該基板が接着されていない側の面における該基板と該枠部とに挟まれた領域を覆う構造体、および、該構造体と該枠部との間を密閉する密閉手段を備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る保持方法は、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持方法であって、該支持膜が接着されている側の面から該基板を吸引する基板吸引工程、該支持膜の該基板が接着されていない側の面における該基板と該枠部とに挟まれた領域を構造体によって覆う被覆工程、および、該構造体と該枠部との間を密閉する密閉工程を含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持しているときに、該支持膜を溶剤雰囲気などから保護することで、該支持膜のたわみを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】支持膜のたわみがない被処理体の概略構成を示す図であり、(a)は、当該被処理体の側方図を示し、(b)は、(a)におけるA方向から当該被処理体を観察した図を示す。
【図2】支持膜のたわみがある被処理体の概略構成を示す図であり、(a)は、当該被処理体の側方図を示し、(b)は、(a)におけるA方向から当該被処理体を観察した図を示す。
【図3】支持膜のたわみがある被処理体において生じる問題を説明する模式図であり、(a)は、当該被処理体を真空吸着している状態を示し、(b)は、当該被処理体を搬送している状態を示す。
【図4】被処理体における支持膜のたわみ量の測定方法を説明する模式図であり、(a)は、支持膜のたわみがない被処理体を測定した場合の測定の様子を示し、(b)は、支持膜のたわみがある被処理体を測定した場合の測定の様子を示す。
【図5】溶剤雰囲気下における被処理体における支持膜のたわみ量の変化について、本発明の一実施例と比較例とを比較するグラフである。
【図6】本発明の一実施形態に係る保持装置の概略構成を示す模式図であり、(a)は、当該保持装置の側方断面図を示し、(b)は、当該保持装置の上面図を示し、(c)は、当該保持装置の斜視図を示す。
【図7】本発明の一実施形態に係る保持装置の構成のバリエーションを示す側方断面図であり、(a)は、第二吸引部が枠部および第一領域の両方を吸引する構成を示し、(b)は、第二吸引部が第一領域を吸引する構成を示す。
【図8】本発明の一実施形態に係る保持装置の概略構成を示す側方断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る保持装置の概略構成を示す側方断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る保持装置の概略構成を示す上面図である。
【図11】本発明の一実施形態における被処理体の処理方法の概要を説明する模式図である。
【図12】従来技術に係る保持装置の概略構成を示す模式図であり、(a)は、当該保持装置の側方断面図を示し、(b)は、当該保持装置の上面図を示し、(c)は、当該保持装置の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の一実施形態(第1実施形態)について、図面を参照して説明する。
【0016】
(被処理体)
図1は、本実施形態において保持対象となる被処理体1の概略構成を示す図である。図1(a)は、被処理体1の側方図を示し、図1(b)は、図1(a)におけるA方向から被処理体1を観察した図を示す。
【0017】
図1に示すように、被処理体1は、外周にダイシングフレーム4(枠部)を備えているダイシングテープ3(支持膜)の中央部に接着されたウエハ(基板)2である。ウエハ2は回路(素子)が形成される基板であり、半導体など従来公知の材質の基板を用いることができる。
【0018】
ダイシングテープ3は、ウエハ2の強度を補強するためにウエハ2の片面に接着される。ダイシングテープ3としては、例えばベースフィルムに粘着層が形成された構成のダイシングテープを用いることができる。ベースフィルムとしては、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリオレフィン又はポリプロピレン等の樹脂フィルムを用いることができる。
【0019】
また、ダイシングテープ3はウエハ2の外径よりも大きく、これらを接着させるとウエハ2の外縁にダイシングテープ3の一部が露出した状態になっている。また、ダイシングテープ3の露出面のさらに外縁には、ダイシングテープ3を支持するためのダイシングフレーム4が設けられている。図1に示すように、ウエハ2およびダイシングフレーム4は共に、ダイシングテープ3の同じ側に貼付されている。
【0020】
本実施形態では、特に、ウエハ製造工程において一時的に保持された支持板(サポートプレート、図示せず)を剥離した後のウエハ2を洗浄する用途に好適に用いることができる。
【0021】
つまり、ウエハ2の表面にはその製造工程において汚れが付着することがあるため、この付着物を除去してウエハ2の表面を清浄にしなくてはならない。特に、接着剤を介して接着させたサポートプレートを剥離すると、ウエハ2の表面に接着剤等が残存してしまう。そのため、ウエハ2をダイシングして各チップに分割する前に、ダイシングテープ3に固定した状態でウエハ2の表面を洗浄する必要がある。
【0022】
このような洗浄は、例えば、有機溶剤または水性溶剤を洗浄液として用い、ウエハ2に対して洗浄液を2流体ノズル等から吐出することによって行うことができる。
【0023】
このとき、洗浄液の吐出によって被処理体1の周囲に溶剤雰囲気が形成される。従来技術に係る保持装置を用いて被処理体1を保持していた場合、この溶剤雰囲気によってダイシングテープ3が膨潤し、ダイシングテープ3がたわむことがある。
【0024】
もちろん、本発明は、洗浄時におけるダイシングテープ3のたわみを抑制することに限定されず、ウエハ2の処理の際の溶剤雰囲気に起因するダイシングテープ3のたわみ一般を首尾よく抑制することができる。
【0025】
図2は、膨潤したダイシングテープ3’を有する被処理体1’の概略構成を示す図であり、(a)は、被処理体1’の側方図を示し、(b)は、(a)におけるA方向から被処理体1’を観察した図を示す。
【0026】
図2に示すように、被処理体1’では、ダイシングテープ3’のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた領域にたわみが生じている(図2(b)のBで示す部分)。このような被処理体1’は、以下のような問題を引き起こす場合がある。
【0027】
すなわち、図3(a)に示すように、被処理体1’をポーラスステージ(吸引部)5によって保持しようとしたときに、たわみの部分を首尾良く吸着させることが困難である。また、図3(b)に示すように、基板底部を保持する搬送ロボットアーム6を用いて被処理体1’を搬送する場合、カセット収納時に被処理体1’を置き、搬送ロボットアーム6を所定位置に戻すときに、たわみが原因で被処理体1’を引きずってしまうことがある。
【0028】
本実施形態に係る保持装置10によれば、このような問題を防ぎ、被処理体を好適に保持することができる。
【0029】
(溶剤)
溶剤雰囲気を形成する溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ウエハ2の洗浄のための洗浄液であり得る。そのような洗浄液としては、非水溶媒を含む限り特に限定されるものではなく、例えば、p−メンタン等のテルペン系溶剤を用いたの公知の洗浄液を用いることができる。テルペン系溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数3から15の分岐状の炭化水素;ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、メントール、イソメントール、ネオメントール、リモネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、1,4−テルピン、1,8−テルピン、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、ボルナン、ボルネオール、ノルボルナン、ピナン、α−ピネン、β−ピネン、ツジャン、α−ツジョン、β−ツジョン、カラン、ショウノウ、ロンギホレン、1,4−シネオール、1,8−シネオール等のモノテルペン類、アビエタン、アビエチン酸等のジテルペン類、等の環状の炭化水素(テルペン類)が挙げられる。
【0030】
また、被処理体1の処理のために特に溶剤を使用しない場合であっても、隣接する加工装置または洗浄装置等によって溶剤雰囲気が形成される場合もあり、保持装置10は、そのような場合にも好適に使用することができる。
【0031】
(保持装置)
図6は、本発明の一実施形態に係る保持装置10の概略構成を示す模式図である。図6(a)は、保持装置10の側方断面図を示し、図6(b)は、保持装置10の上面図を示し、図6(c)は、保持装置10の斜視図を示す。
【0032】
図6に示すように、保持装置10は、第一吸引部(第一吸引手段)11、第二吸引部(第二吸引手段)12、回転部(回転手段)13、構造体14、および、溶剤添加部(溶剤添加手段)16を備えている。第一吸引部11および第二吸引部12は、構造体14上に設けられている。
【0033】
第一吸引部11は、ダイシングテープ3が接着されている側の面からウエハ2を吸引する。吸引機構としては従来公知の吸引機構が設けられていればよい。例えば、吸着面上の気体を吸引するための吸引孔(図示せず)が設けられていてもよい。そして、この吸引孔は、真空ポンプなどの減圧手段に接続されており、ウェハ2を載置し、吸引手段を作動させることで、ウェハ2と吸着面との間が減圧された状態になり、これによって吸着することができる。吸引孔は、板状部材の所定の位置に孔を形成することで設けることができ、例えば、吸引孔はプレートを貫通する貫通孔であってもよい。また、ポーラスな材質を用いて形成してもよい。ポーラスな材質としては、たとえば、ポリプロピレン、カーボン、アルミニウム、セラミック等を例示することができる。これにより、ウェハ2は構造体14上に固定される。なお、第一吸引部11のウェハ2を載せる面は、特に限定されないが、ウエハ2の形状に類似していることが好ましく、例えば、円形状であり得る。
【0034】
第二吸引部12は、構造体14とダイシングフレーム4との間が密閉されるようにダイシングフレーム4を吸引する。吸引機構は、第一吸引部11と同様のものを用いることができる。図6(b)に示すように、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4が載置される領域に沿って配置されていることが好ましい。
【0035】
構造体14は、第一吸引部11を介してウエハ2を支持するとともに、第二吸引部12を介してダイシングフレーム4を支持する。そして、図6に示すように、構造体14は、ダイシングテープ3の下面(ウエハ2が接着されていない側の面)のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆っている。ここで、第二吸引部12により、構造体14とダイシングフレーム4との間が密閉されているため、溶剤雰囲気が、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域に到達することを阻止することができる。
【0036】
このように、保持装置10は、外周にダイシングフレーム4を備えているダイシングテープ3の中央部に接着されたウエハ2を保持する保持装置であって、ダイシングテープ3が接着されている側の面からウエハ2を吸引する第一吸引部11、ダイシングフレーム4を支持するとともに、ダイシングテープ3のウエハ2が接着されていない側の面におけるウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆う構造体14、および、構造体14とダイシングフレーム4との間を密閉する第二吸引部12を備えている。これにより、溶剤雰囲気が、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域に到達することを阻止して、ダイシングテープ3のたわみを抑制することができる。よって、保持装置10によれば、ダイシングテープ3のたわみに起因する様々な問題を防ぎ、被処理体1を好適に保持することができる。
【0037】
なお、保持装置10は、構造体14とダイシングフレーム4との間を密閉する機構を備えていればよく、そのような機構は第二吸引部12に限定されない。保持装置10は、第二吸引部12の代わりに、例えば、ダイシングフレーム4を、物理的な力または磁力により、構造体14に押しつけ、密閉する機構(密閉手段)を備えていてもよい。
【0038】
また、本実施形態において、構造体14は、第一吸引部11が設けられている部分と、第二吸引部12が設けられている部分とが、一体となっているが、これは特に限定されない。構造体14は、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆うような形状を有していれば、第一吸引部11が設けられている部分と、第二吸引部12が設けられている部分とが別部材によって構成されていてもよい。
【0039】
溶剤添加部16は、上述したような、被処理体1を処理するための溶剤を保持装置10に保持されている被処理体1に添加するための機構である。このような機構を、保持装置10が備えていることにより、溶剤を使用したウエハ2の洗浄などの処理を好適に行うことができる。溶剤添加部16は、例えば、ノズル等の吐出供給機構を備えていればよい。溶剤添加部16は、また、溶剤とともにエアーを吐出する二流体ノズルを備えていてもよい。
【0040】
ウエハ2の洗浄方法としては、特に限定されないが、溶剤添加部16から溶剤をウエハ2上に吐出させてもよい。このように、ウエハ2に対して溶剤を吐出することにより、ウエハ2上の残存物を流してウエハ2上から除去することができる(図11(d)、(e)を参照)。
【0041】
回転部13は、第一吸引部11がウエハ2を吸引している状態で、構造体14を回転させることにより、ウエハ2を基板面内方向に回転させる回転機構である。溶剤添加部16から溶剤をウエハ2に添加しつつ、ウエハ2を回転させることにより、いわゆるスピン洗浄を好適に行うことができる。これにより、遠心力によって溶剤を広範囲に広げてより効率よく洗浄することができる。このとき、溶剤添加部16を揺動(スイング)させながら溶剤を吐出してもよい(図11(d)、(e)を参照)。すなわち、一つの局面において、保持装置10は、基板の洗浄装置であり得る。ウェハ2の回転数は、用途等に応じて適宜設定すればよく、例えば、500min−1以上、3000min−1以下としてもよい。
【0042】
なお、構造体14は、図6(a)に示すように、ウエハ2を水平になるように設置したとき、ダイシングフレーム4がウエハ2よりも下側に位置するようにダイシングフレーム4を支持するようになっていることが好ましい。第二吸引部12が、ダイシングフレーム4を吸引しているため、この構成によれば、ダイシングテープ3が下向きに引っ張られるようになる。これにより、ウェハ2およびダイシングフレーム4の反り、ならびに、ダイシングテープ3のしわの影響を軽減することができる。
【0043】
また、このとき、図6(a)に示すように、構造体14の表面であって、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域に対向する面が、ウエハ2の基板面に対して下向きに傾斜している面を含んでいることが好ましい。構造体14がテーパ状に加工されていることにより、ダイシングテープ3との接触面に尖った部分が含まれないようにして、ダイシングテープ3の破損を避けることができる。
【0044】
(第二吸引部の変形例)
以上では、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4を吸引するようになっていたが、本実施形態はこれに限定されない。第二吸引部12は、ダイシングフレーム4およびダイシングテープ3の少なくとも一方を吸引するようになっていればよい。より詳しくは、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4、および、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域の少なくとも一方を吸引して、構造体14と、ダイシングフレーム4および当該第一領域の少なくとも一方との間を密閉するようになっていればよい。
【0045】
例えば、図7(a)に示すように、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4およびダイシングテープ3の両方を吸引するようになっていてもよい。また、例えば、図7(b)に示すように、第二吸引部12は、ダイシングテープ3のみを吸引するようになっていてもよい。
【0046】
このように、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4および第一領域の少なくとも一方を吸引して、構造体14と、ダイシングフレーム4および第一領域の少なくとも一方との間を密閉するようになっている。これにより、第一領域のうち、第二吸引部12によって密閉された部分の内側にある部分を、外部の溶剤雰囲気等から保護することができる。
【0047】
なお、第二吸引部12が第一領域を吸引する場合、第二吸引部12は第一領域の外周部を吸引するようになっていることがより好ましい。第二吸引部12が、第一領域の外周部、特に、第一領域のうち、ダイシングフレーム4の手前の部分を吸引するようになっていれば、第一領域のより多くの部分を、外部の溶剤雰囲気等から保護することができる。なお、第一領域の外周部とは、第一領域のうち、ウエハ2よりもダイシングフレーム4の方に近い部分を指す。
【0048】
また、上述したように、保持装置10は、第二吸引部12の代わりに、物理的な力または磁力により、所定の部材同士の間を密閉する機構(密閉手段)を備えていてもよい。このとき、当該密閉手段は、構造体14と、ダイシングフレーム4およびダイシングテープ3の少なくとも一方との間を密閉するようになっていればよい。
【0049】
また、後述する第2実施形態および第3実施形態において、図面上、第二吸引部12はダイシングフレーム4を吸引するように描かれている。しかし、第2実施形態および第3実施形態においても、本実施形態と同様に、第二吸引部12は、ダイシングフレーム4およびダイシングテープ3の少なくとも一方を吸引するようになっていればよい。
【0050】
〔第2実施形態〕
図8は、本発明の一実施形態に係る保持装置20の概略構成を示す側方断面図である。以下、保持装置10と異なる部分についてのみ説明する。図8に示すように、保持装置20は、クランプ(加力手段)21を備えている点において、保持装置10と異なっている。
【0051】
クランプ21は、ダイシングフレーム4を押さえるためのものである。上述したように、第二吸引部12によりダイシングフレーム4と構造体14との間は密閉されているが、クランプ21は、第二吸引部12とは別に、ダイシングフレーム4に対して加力するものである。これにより、さらに好適にダイシングフレーム4と構造体14とを密着させ、密閉することができる。
【0052】
また、クランプ21は、第一吸引部11よりも外側に位置しており、図8に示すように、クランプ21は、図中Fの方向に回転することにより、ダイシングテープ3における第一吸引部11により吸引される部位よりも外側の部位であるダイシングフレーム4に対して、ウェハ2を水平になるように設置したときに鉛直下向きの方向となる力を加える。そして、当該力が加えられた部位が当該部位の内側より鉛直下側に位置するようにする。具体的には、押さえられた箇所が、その内側より下に位置するようになるまで、ダイシングフレーム4を押さえる。本発明において、力を加えられた部位の内側とは、その内側の領域の少なくとも一部であればよいが、内側全体よりも力を加えられた部位が下に位置するように押さえることがより好ましい。換言すれば、力を加えられた部位より上に位置する部位の面積が大きければ大きいほど、ダイシングテープ3が下向きへ引っ張られる力が強くなり、ウェハ2およびダイシングフレーム4の反り、ならびに、ダイシングテープ3のしわによる影響を軽減することができる。
【0053】
なお、クランプ21はバネ(弾性体;図示せず)を備えている。バネによる力が鉛直下向きに働き、ウェハ2に加えられる力が強くなる。
【0054】
また、ダイシングフレーム4上におけるクランプ21によって力が加わる箇所は、ウェハ2よりも下に位置している。このような構成にすることで、ダイシングテープ3を十分に引っ張ることができ、ウェハ2の固定をより強固にすることができる。
【0055】
以上に説明したクランプ21の機能によりダイシングテープ3は中心から外側および鉛直下向きに向かって引っ張られることになり、保持装置20は、ウェハ2およびダイシングテープ3の反りならびにダイシングテープ3にしわが有ったとしても、ウェハ2を良好に吸着して保持することができる。
【0056】
なお、本実施形態ではクランプ21がバネ(弾性体)を備える場合について説明したが、本発明に係る保持装置の加力部は弾性体を備えなくてもよい。ただし、より強い力で基板を押さえる観点から、本発明に係る保持装置の加力部は弾性体を備えることがより好ましい。
【0057】
また、本実施形態では、クランプ21がダイシングフレーム4を上から押さえる場合について説明したが、本発明に係る保持装置の加力部は、支持膜を上から押さえる形態でなくてもよい。例えば、加力部は支持膜を下から引っ張ってもよく、支持膜に鉛直下向きの力を加えることができる限り、加力部の形態は限定されない。また、加力部は、枠部だけでなく、基板そのものを併せて押さえる構成になっていてもよい。
【0058】
〔第3実施形態〕
図9は、本発明の一実施形態に係る保持装置30の概略構成を示す側方断面図である。以下、保持装置10と異なる部分についてのみ説明する。図9に示すように、保持装置30では、保護膜31をダイシングテープ3上に形成する点において、保持装置10と異なっている。
【0059】
図9に示すように、本実施形態において、保護膜31は、少なくともダイシングテープ3上の、ウエハ2が接着されている側の面におけるウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第二領域に、形成される。保護膜31を形成する保護膜形成部(保護膜形成手段)32(図示せず)および不要となった保護膜31を除去する保護膜除去部(保護膜除去手段)33(図示せず)については後述する。
【0060】
このように、ダイシングテープ3上に保護膜31を形成することにより、溶剤雰囲気がダイシングテープ3に到達することをさらに好適に阻止することができる。すなわち、本実施形態によれば、ダイシングテープ3のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれている部分において、その下面(ウエハ2が接着されていない側の面)を、構造体14および第二吸引部12によって溶剤雰囲気から遮蔽することに加えて、その上面(ウエハ2が接着されている側の面)を、保護膜31によって溶剤雰囲気から遮蔽するため、より好適に、ダイシングテープ3のたわみを抑制することができる。
【0061】
(保護膜)
保護膜31の組成物は、洗浄液に不溶な材料からなる構成であれば特に限定されないが、水溶性の材料からなることがより好ましい。そのような保護膜31の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、およびアミド系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の水溶性樹脂を用いることができる。
【0062】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン等のモノマーを構成成分とするポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0063】
ビニル系樹脂としては、例えば、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾリジノン、酢酸ビニル等のモノマーを構成成分とするポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0064】
セルロース系樹脂としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロール、セルロールアセテートヘキサヒドロフタレート、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
【0065】
さらに、アミド系樹脂の中で水溶性のものも用いることができる。その中でも、ビニル系樹脂が好ましく、特にポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールが好ましい。
【0066】
これらの水溶性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。上記樹脂の中でも、保護膜が形成されたダイシングテープの接着強度が、保護膜形成前の接着強度の値と比べて50%以下になる樹脂を用いればよく、30%以下になる樹脂を用いることがより好ましい。
【0067】
本実施形態に係る保護膜31は、様々な方法により形成することができる。例えば、上記組成物を液状のまま、ダイシングテープ3の露出面に塗布して保護膜31を形成する方法を用いてもよいし、予め可撓性フィルム等のフィルム上に上記組成物を含む保護層を形成した後、乾燥させておき、このフィルムを、ダイシングフレーム4の露出面に貼り付けて使用する方法を用いてもよい。また、溶剤雰囲気を伴う処理が完了し、不要となった保護膜31を除去する方法も特に限定されず、洗浄、剥離等の一般的な方法を用いることができる。
【0068】
また、保護膜31の形成および除去は、構造体14上に被処理体1が固定されている状態で行ってもよいし、他の場所において行ってもよい。以下、保護膜形成部32および保護膜除去部33を備えた保持装置全体の構成の一例について説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下では、本発明に係る保持装置を、基板の洗浄装置として構成した場合について説明しているが、本発明はこれに限定されない。
【0069】
(洗浄装置)
図10は、本発明の一実施形態に係る洗浄装置(保持装置)40の構成を示す上面図である。図10に示すように、洗浄装置40は、被処理体1を収納する被処理体収納部41、被処理体1を搬送する搬送手段42、被処理体1に保護膜31を形成する保護膜形成ユニット46、および、被処理体1を洗浄する洗浄ユニット47を備えている。以下、保持装置10と異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
搬送手段42は、被処理体1を、被処理体収納部41から保護膜形成ユニット46へ搬送し、さらに洗浄ユニット47へ搬送するようになっている。
【0071】
搬送手段42は、搬送ロボット44と、直線走行を実現するための走行路43とを有している。搬送ロボット44は、搬送ロボット44の軸を中心として回転可能であり、2つの連結アーム45aおよびハンド45bを有している。
【0072】
連結アーム45aは、関節における回転動作によって伸縮動作を実行するようになっている。ハンド45bは連結アーム45aの先端に設けられ、被処理体1を保持するようになっている。搬送ロボット44は、連結アーム45aの伸縮動作と軸を中心とした回転動作とによって、水平面内における被処理体1の移動を可能としている。
【0073】
保護膜形成ユニット46は、保護膜形成部32を備え、被処理体1に保護膜を形成するようになっている。具体的には、保護膜形成部32が、ウエハ2に接着されているダイシングテープ3の露出面に対して、保護膜31の材料組成物を塗布するようになっている。
【0074】
保護膜形成部32の構成は、例えば、ノズル等の吐出手段から液状の材料組成物を吐出するような構成にすればよい。しかし、保護膜形成部32の構成は、このように液状の材料組成物を吐出するような構成に限定されるものではなく、例えば、予めフィルム状に形成された保護膜31を貼り付けるような構成であってもよい。
【0075】
また、保護膜形成ユニット46は、例えば保護膜31の材料組成物を塗布する前に、ダイシングテープ3の露出面に紫外線を照射するようになっていてもよい。これにより、ダイシングテープ3の濡れ性を向上させることができる。
【0076】
洗浄ユニット47は、溶剤添加部16および保護膜除去部33を備え、被処理体1を洗浄するとともに、保護膜31を除去するようになっている。具体的には、溶剤添加部16を用いて被処理体1を洗浄した後に、保護膜除去部33がダイシングテープ3に形成された保護膜31を除去するようになっている。洗浄ユニット47は、また、第一吸引部11、第二吸引部12、および構造体14を備え、これにより被処理体1を好適に保持して、被処理体1の洗浄または保護膜31の除去の際に、ダイシングテープ3が溶剤雰囲気により膨潤してたるむことを好適に阻止することができる。
【0077】
保護膜除去部33の構成は、保護膜31の材料組成物又は形態に応じて適宜変更可能である。例えば、ノズル等の吐出供給手段を用いて保護膜31に水等の洗浄液を吐出するような構成でもよいし、保護膜31を構成するフィルムを剥離するような構成であってもよい。
【0078】
また、洗浄ユニット47は、保護膜除去部33による保護膜除去処理の後に、例えば、ウエハ2の表面をさらにドライ処理等をするようになっていてもよい。これにより、ウエハ2の表面をより清浄にすることができる。そのような処理としては、例えば、酸素プラズマを発生させて、ウエハ2の表面に残存している接着剤を除去するプラズマ処理が挙げられる。
【0079】
なお、保護膜形成ユニット46は、保護膜形成部32が保護膜31の材料組成物を塗布するとき、被処理体1を回転させるような構成になっていてもよい。同様に、洗浄ユニット47は、例えば回転部13により、被処理体1の洗浄および保護膜31の除去処理がそれぞれ行なわれるとき、被処理体1を回転させるような構成になっていてもよい。
【0080】
(洗浄方法)
次に、洗浄装置40の動作について、図2を参照して説明する。洗浄装置40は、例えば、サポートプレートが剥離された後の、ダイシングテープ3が接着されたウエハ2を被処理体1とすることができる。このような、ウエハ2の表面には、接着剤の残存接着剤、溶解残渣物等の付着物が付着している場合があり、洗浄することが好ましい。被処理体1は、最初、被処理体収納部41に収納されている(図11(a))。
【0081】
搬送手段42によって保護膜形成ユニット46に被処理体1が搬送されると、まず、保護膜形成部32が、ダイシングテープ3の露出面に保護膜の材料組成物を供給する(図11(b))。材料組成物の供給方法は特に限定されないが、例えば、図11(b)に示すように、ノズル状の保護膜形成部32から材料組成物を吐出させればよい。
【0082】
なお、材料組成物はダイシングテープ3の露出面が少なくとも被覆されるように供給されればよく、ダイシングフレーム4にまで達するか否かは特に限定されない。また、材料組成物を供給する前、例えば予めウエハ2の表面にマスキング処理を施しておいてもよい。これにより、洗浄対象となるウエハ2の表面に保護膜が形成されて十分な洗浄を行なえなくなることを防ぐことができる。
【0083】
また、材料組成物を供給しているとき、被処理体1を回転させてもよい。これにより、吐出した材料組成物をダイシングテープ3上に効率よく行き渡らせることができる。また、ダイシングテープ3に対して材料組成物を供給する前に、ダイシングテープに紫外線を照射してもよい。これにより、ダイシングテープへの材料組成物の濡れ性を向上させることができる。
【0084】
その後、図11(c)に示すように吐出した材料組成物を乾燥させて、保護膜31を形成する(保護膜形成工程)。乾燥は自然乾燥でよいが、例えば図11(c)に矢印で示すように被処理体を回転させながら乾燥さてもよい。なお、乾燥方法はこれに限定されるものではなく、例えば、オーブン又はホットプレート等を用いて乾燥させてもよいし、温風をあてて乾燥させてもよい。
【0085】
次に、搬送手段42により被処理体1を洗浄ユニット47に搬送し、溶剤を用いてウエハ2を洗浄する(洗浄工程)。洗浄の方法は、例えば、第1実施形態において説明したように行えばよい(図11(d)および(e))。このとき、洗浄の開始前に、第1実施形態と同様、第一吸引部11によってウエハ2を吸引し(基板吸引工程)、ダイシングテープ3の下面のウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を構造体14によって被覆し(被覆工程)、第二吸引部12によって、構造体14とダイシングフレーム4との間を密閉する(密閉工程)。これによって、洗浄時にダイシングテープ3が溶剤雰囲気によって膨潤することを避けることができる。
【0086】
ウエハ2の洗浄後、ダイシングテープ3に形成されている保護膜31を除去する(図11(f))。保護膜31の除去方法としては特に限定されないが、例えば、保護膜31が水溶性の材料からなる場合には、保護膜除去手段33をノズル状の液体吐出部とし、当該液体吐出部から保護膜31に対して水を吐出して、保護膜31を溶解させて除去すればよい。その後、被処理体を乾燥させる(図11(g))。乾燥の際、被処理体1をさらに回転させてもよい。保護膜除去手段33は、また、フィルム状に構成された保護膜31を爪付きアーム等によって物理的に取り除くものであってもよい。
【0087】
このように、ウエハ2の洗浄前に、第一吸引部11、第二吸引部12、および構造体14により、基板吸引工程、被覆工程および密閉工程を実施して、ダイシングテープ3下面の露出面を溶剤雰囲気から遮蔽し、さらに、ダイシングテープ3の上面の露出面を保護膜31によって保護することにより、ダイシングテープ3のたわみをより好適に抑制することができる。さらに、保護膜31は、ダイシングテープ3にウエハ2上から流れ出た溶解残渣物等が付着することを防ぐため、その後のダイシングプロセス時に、溶解残渣物等がウエハ2に再付着することを防ぐことができる。
【0088】
なお、上述した方法により洗浄した後のウエハ2のエッジ部分に接着剤等が残存していることがあるが、これは後のプロセスにおいて妨げにならない程度の量である。しかし、必要に応じてウエハ2のエッジ部に残存し得る残存接着剤を洗浄する工程を設けてもよい。当該工程としては、具体的には、例えば、被処理体1の乾燥前、ダイシングテープ3の露出面に水をかけながらウエハ2のエッジ部に洗浄液をかけて洗浄してもよいし、ブレード又はブラシにて除去してもよい。
【0089】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0090】
本発明に係る保持装置(実施例)および従来技術に係る保持装置(比較例)を用いてスピン洗浄を行い、それぞれの場合におけるダイシングテープのたわみ量の経時変化を測定した。
【0091】
実施例では、図6に示すような、ダイシングテープ3の下面におけるウエハ2とダイシングフレーム4とに挟まれた第一領域を覆う構造体14、および、構造体14とダイシングフレーム4との間を密閉する第二吸引部12を備えた保持装置を用いて被処理体1を保持し、スピン洗浄を所定時間行った。比較例では、そのような構造体14および第二吸引部12を備えていない従来技術に係る保持装置を用いて被処理体1を保持し、スピン洗浄を所定時間行った。
【0092】
ダイシングテープのたわみ量は、図4に示すような器具を用いて測定した。準備として、測定に供する被処理体1が備えるダイシングフレーム4の大きさに対応した位置決めブロック7を設置しておいた。スピン洗浄開始前、図4(a)に示すように、被処理体1を位置決めブロック7上に載置し、ウエハ2の下面の位置をマイクロメータ8を用いてウエハ2の下面の位置を測定して、初期値を取得した。そして、スピン洗浄終了後、図4(b)に示すように、保持装置から取り外した被処理体1を、同様に位置決めブロック7上に載置し、マイクロメータ8を用いてウエハ2の下面の位置を測定し、初期値からの変化を算出することによって、たわみ量Dを算出した。なお、位置決めブロック7上への被処理体1の載置の際には、位置決めブロック7の位置決め線などを利用することにより、ダイシングフレーム4の位置が毎回同一になるようにした。
【0093】
ウエハ2としては、12インチのベアガラスを用いた。ダイシングテープ3としては、市販のダイシングテープ(UC−353EP)を用いた。スピン洗浄では、スプレーユニット(二流体スプレー)を使用して、30mL/minのHCシンナー(炭化水素系シンナー)を、50L/minのエアーとともにウエハ2に吐出した。スピン洗浄における被処理体1の回転数は2000回転/minとし、5から60分間の範囲で測定を行った。結果を図5に示す。
【0094】
図5に示すように、実施例では、ダイシング(DC)テープ3のたわみ量が、比較例に比べ抑制されていた。図5中、Eは、比較例において、ダイシングテープ3のたわみ量が大きくなり過ぎたため、吸引部において吸着エラーが発生したことを示す。このように、本発明によれば、溶剤雰囲気に起因してダイシングテープがたわむことを抑制し、ダイシングテープのたわみに起因する問題を首尾よく避けることができた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、例えば、薄板化ウエハの表面処理等に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1、1’ 被処理体
2 ウエハ(基板)
3、3’ ダイシングテープ(支持膜)
4 ダイシングフレーム(枠部)
5 ポーラスステージ
6 搬送ロボットアーム
7 位置決めブロック
8 マイクロメータ
10、10’、10’’、20、30 保持装置
40 洗浄装置(保持装置)
11 第一吸引部(第一吸引手段)
12、12’、12’’ 第二吸引部(密閉手段、第二吸引手段)
13 回転部(回転手段)
14 構造体
16 溶剤添加部(溶剤添加手段)
21 クランプ(加力部)
31 保護膜
32 保護膜形成部(保護膜形成手段)
33 保護膜除去部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持装置であって、
該支持膜が接着されている側の面から該基板を吸引する第一吸引手段、
該枠部を支持するとともに、該支持膜の該基板が接着されていない側の面における該基板と該枠部とに挟まれた第一領域を覆う構造体、および、
該構造体と、該枠部および該第一領域の少なくとも一方との間を密閉する密閉手段
を備えていることを特徴とする保持装置。
【請求項2】
上記基板の上記支持膜が接着されていない側の面に対して溶剤を添加する溶剤添加手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
上記第一吸引手段が上記基板を吸引している状態で、上記基板を基板面内方向に回転させる回転手段を備えており、
上記基板の洗浄装置であることを特徴とする請求項2に記載の保持装置。
【請求項4】
上記密閉手段が、上記枠部および上記第一領域の少なくとも一方を吸引する第二吸引手段を備えており、
該第二吸引手段が、上記構造体に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の保持装置。
【請求項5】
上記構造体は、上記基板を水平になるように設置したとき、上記枠部が上記基板よりも下側に位置するように上記枠部を支持することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の保持装置。
【請求項6】
上記構造体における上記領域に対向する面が、上記基板の基板面に対して下向きに傾斜している面を含んでいることを特徴とする請求項5に記載の保持装置。
【請求項7】
上記基板を水平になるように設置したとき、上記枠部に対して鉛直下向きの力を加える加力手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の保持装置。
【請求項8】
上記支持膜の上記基板が接着されている側の面における上記基板と上記枠部とに挟まれた第二領域に、保護膜を形成する保護膜形成手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の保持装置。
【請求項9】
外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持方法であって、
該支持膜が接着されている側の面から該基板を吸引する基板吸引工程、
該支持膜の該基板が接着されていない側の面における該基板と該枠部とに挟まれた第一領域を構造体によって覆う被覆工程、および、
該構造体と、該枠部および該第一領域の少なくとも一方との間を密閉する密閉工程
を含んでいることを特徴とする保持方法。
【請求項1】
外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持装置であって、
該支持膜が接着されている側の面から該基板を吸引する第一吸引手段、
該枠部を支持するとともに、該支持膜の該基板が接着されていない側の面における該基板と該枠部とに挟まれた第一領域を覆う構造体、および、
該構造体と、該枠部および該第一領域の少なくとも一方との間を密閉する密閉手段
を備えていることを特徴とする保持装置。
【請求項2】
上記基板の上記支持膜が接着されていない側の面に対して溶剤を添加する溶剤添加手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
上記第一吸引手段が上記基板を吸引している状態で、上記基板を基板面内方向に回転させる回転手段を備えており、
上記基板の洗浄装置であることを特徴とする請求項2に記載の保持装置。
【請求項4】
上記密閉手段が、上記枠部および上記第一領域の少なくとも一方を吸引する第二吸引手段を備えており、
該第二吸引手段が、上記構造体に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の保持装置。
【請求項5】
上記構造体は、上記基板を水平になるように設置したとき、上記枠部が上記基板よりも下側に位置するように上記枠部を支持することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の保持装置。
【請求項6】
上記構造体における上記領域に対向する面が、上記基板の基板面に対して下向きに傾斜している面を含んでいることを特徴とする請求項5に記載の保持装置。
【請求項7】
上記基板を水平になるように設置したとき、上記枠部に対して鉛直下向きの力を加える加力手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の保持装置。
【請求項8】
上記支持膜の上記基板が接着されている側の面における上記基板と上記枠部とに挟まれた第二領域に、保護膜を形成する保護膜形成手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の保持装置。
【請求項9】
外周に枠部を備えている支持膜の中央部に接着された基板を保持する保持方法であって、
該支持膜が接着されている側の面から該基板を吸引する基板吸引工程、
該支持膜の該基板が接着されていない側の面における該基板と該枠部とに挟まれた第一領域を構造体によって覆う被覆工程、および、
該構造体と、該枠部および該第一領域の少なくとも一方との間を密閉する密閉工程
を含んでいることを特徴とする保持方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【公開番号】特開2013−4666(P2013−4666A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133261(P2011−133261)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】
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