説明

保温材付きホース

【課題】従来に比べ寿命を長くすることができる保温材付きを得る。
【解決手段】保温層20の表面を保護層22で覆うことで、保温層20を物理的衝撃等から保護することができ、保温層22が露出した状態のホースよりも寿命を長くすることができる。また、保温層20を、発泡材料の発泡層としているため、保温層20では外部からの摺擦などの外力により切れや欠けなどが発生しやすいが、表面を保護層22で覆うため、発泡層に欠陥を生じることが無く、継続した保温効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温材付きホースに関する。
【背景技術】
【0002】
水を主成分とした流体を流動させるホースは、自動車関連、設備関連など広い分野で使用されているが、水を主成分とした流体は、その温度がマイナスになると、凍結することになる。このため、ゴムや樹脂で作られたスポンジが保温材として使用される。しかし、このスポンジは、物理的衝撃に弱く、使用環境で他のものとの接触により、スポンジの切れや欠けなどの不良が発生し、十分な保温性能が確保できなくなる。
【特許文献1】特開2005−188577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記事実を考慮し、従来に比べ寿命を長くすることができる保温材付きホースを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、保温材付きホースにおいて、管体を覆い管体内を流動する流体を保温する発泡層と、前記発泡層の表面に設けられた非発泡層と、を有することを特徴とする。
【0005】
請求項1に記載の発明では、発泡層の表面を非発泡層で覆い、発泡層を保護することで、発泡層を外力(外部からの摺擦力など)から保護することができ、発泡層が露出した状態の保温材付きホースよりも寿命を長くすることができる。また、発泡層では外力により切れや欠けなどが発生しやすいが、発泡層の表面を非発泡層で覆うため、このような問題が生じることはなく、継続した保温効果を得ることができる。さらに、非発泡層では水分の浸入を防止することができるため、水分の浸食による発泡層の劣化を防止することができる。
【0006】
また、非発泡層によって発泡層の表面を保護するようにすることで、流体を保温する保温層と該保温層を保護する保護層とで同じ材料を用いることができる。このため、非発泡層と発泡層とで別の材料を用いる場合と比較して、装着作業などの工程が無くなる分、作業工数を削減することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の保温材付きにおいて、前記非発泡層の厚みが0.3mm以上であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、発泡層を保護するのに最低限必要な非発泡層の厚みを規定している。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の保温材付きにおいて、前記管体が、流体が流れる内面層と、前記内面層を覆う外面層と、前記外面層と前記内面層の間に設けられ管体の強度を上げる補強層と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明では、管体の外面層と内面層の間に補強層を設けることで、管体の強度を上げている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の保温材付きにおいて、前記発泡層を形成する材料が、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の保温材付きにおいて、前記管体の外周面から前記非発泡層の両端部の表面をシール手段で覆ったことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明では、管体の外周面から非発泡層の両端部の表面をシール手段で覆うことで、発泡層の両端面に露出する複数の空隙を該シール手段で塞ぐことができる。このため、該空隙を通じて発泡層内へ水分が浸入する虞がない。また、発泡層と管体との間に生じる隙間も塞がれるため、該隙間へ水分が浸入する虞もない。したがって、管体の保温性能の低下を抑えることができる。ここで、シール手段として、テープ、伸縮チューブ等が挙げられるが、接着剤によるシールでも良い。
【0014】
また、このシール手段によって、非発泡層及び発泡層を管体に固定させることができるが、非発泡層の両端部にシール手段を設けるだけで、非発泡層及び発泡層を管体に固定させることができるため、非発泡層及び発泡層の全長に渡って管体に固定させる場合と比較して、取付けが容易である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の保温材付きにおいて、前記シール手段が、熱によって収縮する熱収縮チューブであることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明では、シール手段を、熱によって収縮する熱収縮チューブとしている。非発泡層及び発泡層と管体とは外径が異なるため、熱収縮チューブを用いることによって、これらの外形に合わせて、熱収縮チューブが非発泡層、発泡層及び管体の表面に張り付いた状態となるため、確実にシールすることができる。また、熱収縮チューブでは、非発泡層及び発泡層と管体の外径差に合わせて適切な熱収縮率を有するチューブを選択することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜7の何れか1項に記載の保温材付きにおいて、前記流体がクーラント液又は尿素水であることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明では、発泡材料としてEPDMを用いることで、流体にクーラント液又は尿素水など、水を主成分とした流体に対し、非常に良好な耐性を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記構成としたので、従来に比べ寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態に係る保温材付きホースについて説明する。
【0021】
図1(A)、(B)に示すように(なお、図1(A)は保温材付きホース30の縦断面図であり、(B)は保温材付きホース30の横縦断面図である)、保温材付きホース30を構成する管体12は、内部にクーラント液、尿素水等の液体が流動可能な筒状の内面層14と、該内面層14の外側に設けられた外面層16と、この外面層16と内面層14との間に設けられ、有機繊維又は金属繊維等による編組構造体である補強層18と、を有し、これらが加硫一体化されて形成されている。
【0022】
ここで、内面層14と補強層18と外面層16は、それぞれ独立に単層であってもよく、目的もしくは必要に応じてそれぞれが複数の層から構成されていてもよい。また、内面層14と補強層18と外面層16を2層以上有していてもよく、更に目的に応じてその他の層、例えばライナー層や中間層や塗装層等を有していてもよい。
【0023】
具体的には、例えば、内面層14−補強層18−外面層16という構成の他に、図示はしないが内面層−補強層−外面層−最外層や、内面層−補強層−中間層−補強層−外面層の様な形態を取ることもできるし、場合によっては、内面層及び外面層の選択材料によっては補強層が不要となる場合もある。
【0024】
そして、この管体12の外側には、発泡材料の発泡層で形成された筒状の保温層20が設けられており、管体12内を流動する流体を保温するようにしている。また、保温層20の外側には、発泡材料の非発泡層で形成された保護層22が設けられており、外力(外部からの摺擦力など)から保温層20を保護する。
【0025】
ここで、保温層20と保護層22は、異なる発泡材料を用いても良いが、本実施例では、同じ発泡材料を用いて発泡の有無によって区別している。そして、例えば、発泡材料として、EPDMゴムを用いた場合、保温層20と保護層22としてのそれぞれの機能を満足させるため、保温層20は2mm以上必要であり、好ましくは4mm以上必要である。また、保護層22は0.3mm以上必要であり、好ましくは0.5mm以上必要である。さらに、保温層20の内径は管体12の外径よりも約1mm大きくなるようにしている。
【0026】
一方、保温層20及び保護層22は、管体12の長さよりも短くなっており、両端部が露出している。そして、この管体12の端部に継手などが取付けられるようになっている。
【0027】
また、保温層20及び保護層22は、管体12へ外挿させるが、保温層20及び保護層22を管体12へ外挿させた状態で、管体12の両端部では、保護層22の外周面から保護層22の端面、保温層20の端面及び管体12の外周面に架けて、EPDM、ポリオレフィン、フッ素系ポリマー、熱可塑性エラストマー等からなる熱収縮チューブ24(シール手段)が覆われている。
【0028】
熱収縮チューブ24の内径は、収縮前の状態では、保護層22の外径よりも大きく、保温層20、保護層22の端部及び管体12の端部を含むようにして外挿可能となっている。そして、熱収縮チューブ24を保温層20、保護層22の端部及び管体12へ外挿させた状態で、工業用ドライヤー、赤外線ヒーター、電熱器、電気炉、トーチランプ、インスタントガストーチ、ガスバーナーなどにより熱収縮チューブ24に熱を与えると、該熱収縮チューブ24は、保温層20、保護層22及び管体12の外形に合わせて(保温層20、保護層22及び管体12の表面を覆うように張り付いた状態となる)熱収縮する。これにより、この熱収縮チューブ24を介して、保温層20及び保護層22が管体12に固定される。
【0029】
次に、内面層14、外面層16、補強層18、保温層20及び保護層22について好適な材料の具体例を挙げる。
【0030】
(内面層、外面層)
本実施形態における保温材付きホース30を構成する内面層14及び外面層16としては、その材質に特に制限は設けられず、該保温材付きホース30内を流動する物質の物理的及び化学的性状等を勘案して適宜に選択できる。それらの中でも、気密性(物質の非透過性)及び柔軟性(可撓性)や耐久性等を兼備するゴム材料組成物からなる材料が好適に用いられる。
【0031】
上記ゴム材料組成物を構成するゴム成分としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ヒドリンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、イソブチレン−イソプレン共重合体ゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタン系ゴム、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム、等が挙げられる。これらのゴム成分は1種を単独でも、2種以上の任意のブレンド物としても使用できる。
【0032】
上記のゴム成分の中でも、気密性の観点からはブチルゴム(IIR)が好ましく、耐油性の観点からはアクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ヒドリンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、シリコン系ゴム、フッ素系ゴムが好ましく、耐熱性の観点からは、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)が好ましく、低温可撓性の観点からは、シリコン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)が好ましい。
【0033】
更に、保温材付きホース30の内面層用ゴム組成物としては、材料強度や耐久性及び押出し成形性等を考慮して、ゴム工業界で一般に用いられている公知のゴム配合薬品やゴム用充填材を、本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。この様な配合薬品及び充填材としては、例えば、カーボンブラックやシリカ、炭酸カルシウム等の無機充填材;プロセスオイル、可塑剤、軟化剤;硫黄等の加硫剤;酸化亜鉛、ステアリン酸等の加硫助剤;ジベンゾチアジルジスルフィド等の加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフェンアミド等の老化防止剤;酸化防止剤、オゾン劣化防止剤等の添加剤;等を適宜に使用することができる。これらの配合薬品及び充填材は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0034】
(補強層)
本実施形態における保温材付きホース30を構成する補強層18としては、その材質及び構造等に特に制限は設けられず、目的及び必要等に応じて適宜に選択できる。それらの中でも、可撓性及び軽量性を保持しながら補強性能を効果的に付与できる観点より、繊維材料が好適に用いられる。
【0035】
本実施形態において、補強層18に用いる上記繊維材料としては、有機繊維又は金属繊維もしくはこれらの組み合わせよりなる編組構造体が好ましく、例えば、好ましくはスパイラル状又はブレード状に編上げたもので、上述の内面層14の外周面上に配置される。この繊維補強層に用いられる繊維や編み方は特に限定されるものではなく、適宜に用途に応じ選定することができる。また、交互に巻き付けた各繊維層の間に接着用のゴムシーツを挿入してもよい。
【0036】
上記有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、等が挙げられる。本実施形態に用いる有機繊維として好ましいものは、150℃で30分間加熱した後の熱収縮量が、加熱前と比較して0.3%以上、好ましくは1%以上のものである。この様に熱収縮性及び耐久性等を鑑みると、特にポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。また必要及び目的に応じて、上記に挙げた繊維を2種以上組み合わせた混紡糸を用いてもよい。
【0037】
尚、上記熱収縮性を増加させるために、補強用繊維に予め加熱延伸処理を施して、所望の熱収縮率が得られる様な処理を行ってもよい。また加硫時において、内面層14と補強層18、補強層18と外面層16等との接着性を向上させる為に、補強用繊維には予め接着処理剤や薬剤等を用いてもよい。具体的には、上記の加熱延伸処理の前に接着処理剤液(例えば、RFL樹脂分散液、或いは、第1液としてエポキシ樹脂液、第2液としてRFL樹脂分散液)にディップして用いるのが好ましい。
【0038】
また、本実施形態の補強層18に用いる上記金属繊維としては、ブラスメッキを施した鋼線ワイヤーやステンレスワイヤー等の金属繊維が好ましい。
【0039】
上記に挙げた補強繊維の太さや編み上げ本数等については、使用時の圧力に応じて適宜に決定することができるが、補強性や可撓性及び耐久性等を鑑みると、反対方向に2層以上巻き付けるのが好ましい。ここで、必要に応じて補強層の外側に、押え糸を配設しても構わない。また、上記補強繊維の太さとしては、500〜7000デニールが好ましく、1000〜4000デニールのものが更に好ましい。
【0040】
(保温層、保護層)
本実施形態における保温材付きホース30を構成する保温層20及び保護層22としては、保温性能及び可撓性と軽量性の観点より、発泡材料、特に独立気泡を有する発泡材料が好ましく、更には、発泡ゴム材料からなるものがより好ましい。保護層22は全く発泡していない非発泡層であり、保温層20と、異なる発泡材料を用いても良いが、本実施例では、同じ発泡材料を用いて発泡の有無によって区別する。
【0041】
本実施形態の保温層20及び保護層22に用いられる上記発泡ゴム材料としては、ゴム成分として、例えば、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ヒドリンゴム、スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、イソブチレン−イソプレン共重合体ゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタン系ゴム、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム、等が挙げられる。
【0042】
上記ゴム成分の中でも、保温性能や耐熱性及び製造適性の観点より、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ヒドリンゴム、及びスチレンゴムの内、少なくとも1種のゴム成分を含む発泡ゴム材料が好ましい。
【0043】
本実施形態の上記発泡ゴム材料には、均一に且つ効率よく発泡させる為に、発泡剤及び発泡助剤を用いるのが好ましい。この様な発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、P,P’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられる。
【0044】
上記の発泡剤の中でも、発泡性や製造適性を考慮すると、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましく、特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。これらの発泡剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
更に、均一で効率的な発泡を行う為に、発泡助剤を用い、上記発泡剤と併用するのが好ましい。この様な発泡助剤としては、例えば、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等、通常、発泡製品の製造に用る助剤等が挙げられる。これらの中でも、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛等が好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
また、本実施形態の発泡ゴム材料としては、通常、ゴム組成物に配合される補強剤としてのカーボンブラック及び/又はシリカを配合することができる。更に、公知の各種添加剤及び充填材として、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、ポロセスオイル、充填剤、可塑化剤、軟化剤、老化防止剤、酸化防止剤、その他ゴム用に一般的に配合される各種の配合薬品を適宜に添加することができる。これらの添加剤及び充填材の配合量は、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0047】
尚、保温性能と強度及び耐久性を両立させる観点より、本実施形態の保温層20に用いられる上記発泡材料の発泡密度としては、0.1〜0.5g/cc(みかけ比重)が好ましく、更に0.15〜0.35g/ccがより好ましい。該発泡密度が0.1g/cc未満であると、機械的強度や耐久性が不足する場合があり、また該発泡密度が0.5g/ccを越えると、保温性能が不足する場合があり、いずれの場合も好ましくない。
【0048】
次に、本実施形態に係る保温材付きホースの作用について説明する。
【0049】
図1に示すように、本実施形態では、管体12の外側に、発泡材料の発泡層で形成された保温層20を設け、該保温層20の外側には、発泡材料の非発泡層で形成された保護層22を設けている。
【0050】
このように、保温層20の表面を保護層22で覆うことで、保温層20を外力(外部からの摺擦力など)から保護することができ、保温層20が露出した状態のホース(図示省略)よりも寿命を長くすることができる。
【0051】
また、保温層20を、発泡材料の発泡層としているため、保温層20では外力により切れや欠けなどが発生しやすいが、表面を保護層22で覆うため、このような問題が生じることはなく、継続した保温効果を得ることができる。さらに、保護層22では非発泡層としているため、水分の浸入を防止することができ、水分の浸食による保温層20の劣化を防止することができる。
【0052】
また、非発泡層によって保温層20の表面を保護するようにすることで、保温層20と保護層22とで同じ材料を用いることができる。このため、保護層22と保温層20とで別の材料を用いる場合と比較して、装着作業などの工程が無くなる分、作業工数を削減することができる。
【0053】
ここで、本実施形態では、発泡材料としてEPDMゴムを用い、保温層20と保護層22としてのそれぞれの機能を満足させるため、保温層20は発泡密度が、0.1〜0.5g/ccの状態で、厚みが2mm以上必要とし、好ましくは4mm以上必要としている。保温層20の厚みは、管体12内の流体に対する保温効果に大きく影響するため、保温層20が2mm未満では、管体12内の流体を保温するという機能を十分に満足させることができないからである。
【0054】
また、保護層22は0.3mm以上必要とし、好ましくは0.5mm以上必要としている。保護層22の厚みは、保温層20を外力から保護するという効果に大きく影響する。このため、保護層22の厚さが、0.3mm未満では、非発泡層としての機械的強度が十分ではなく、保温層20を外力から保護するという機能を十分に満足させることができないからである。
【0055】
ここで、非発泡層の評価として以下の試験を実施した。外径16mm、長さ300mmのホースに、保温層20である発泡層の厚みを5mmとし、保護層22である非発泡層の厚みを0.15mm、0.3mm、0.5mm、1.0mmとした内径17.5mm、長さ200mmの保温材を取付けた。この保温材付きホースをU字状に曲げて、#40のサンドぺーパに曲げ頂点が当るようにして、以下の振動条件でホースを振動させて、保温材表面の摩耗状態を評価した。
【0056】
振動条件は、振幅:±7mm、周波数:5Hz、温度:30℃、時間:24時間であり、結果は表1に示す通りである。つまり、前述したように、保護層である非発泡層が0.3mm以上あると、表面の摩滅も大幅に軽減でき、高い保護機能を得ることが分かる。

【表1】

【0057】
なお、これらの厚みは、発泡材料としてEPDMゴムを用いた場合によるものであり、発泡密度や発泡させる材料によっては若干異なる場合もある。
【0058】
また、保温層20の内径を管体12の外径よりも大きくしている。このように、管体12の外径に対して保温層20の内径が大きい場合、管体12と保温層20の間には隙間が生じることになり、該隙間内に水分が浸入し、保温層20による保温効果を低下させる原因となる。このため、該隙間はできるだけない方が良いが、ホース外径に対して保温層20の内径が同等以下であると保温層20の外挿作業がし難くなる。したがって、保温層20の外挿作業を考慮すると、管体12と保温層20の間には若干の隙間を設けた方が良い。
【0059】
そして、本実施形態では、保温層20の内径を管体12の外径よりも約1mm大きくし、保温層20及び保護層22を管体12へ外挿させた状態で、管体12の両端部を、保護層22の外周面から保護層22の端面、保温層20の端面及び管体12の外周面に架けて熱収縮チューブ24で覆っている。
【0060】
これにより、管体12と保温層20の間の隙間を塞ぎ、該隙間内への水分の浸入を防止することができ、管体12の保温性能の低下を抑えることができる。また、保温層20の両端面では、複数の空隙26が生じているため、該空隙26内へ水分が浸入する虞も生じるが、熱収縮チューブ24によって保温層20の両端面も塞がれる。
【0061】
さらに、熱収縮チューブ24を介して、保護層22及び保温層20を管体12に固定させることができる。このように、管体12の両端部に熱収縮チューブ24を熱収縮させるだけで、保護層22及び保温層20を管体12に固定させることができるため、管体12の全長全てに渡って保護層22及び保温層20を管体12に固定させる場合と比較して、取付けが容易である。
【0062】
また、保護層22及び保温層20と管体12とは外径が異なるため、熱収縮チューブ24を使用することによって、これらの外形に合わせて、熱収縮チューブ24が保護層22及び保温層20と管体12の外周面に張り付いた状態となるため、確実にシールすることができる。また、熱収縮チューブ24では、保護層22及び保温層20と管体12の外径差に合わせて、適切な熱収縮率を有するチューブを選択することができる。
【0063】
また、ここでは、管体12の両端部に熱収縮チューブ24を設けたが、図2(A)、(B)に示すように(なお、図2(A)は保温材付きホース30の縦断面図であり、(B)は保温材付きホース30の横縦断面図である)、保護層22及び保温層20全体を熱収縮チューブ24で覆うようにしても良い。
【0064】
ところで、本実施形態では、シール手段として、熱収縮チューブ24を用いたが、管体12と保温層20の間の隙間、及び保温層20の両端面の空隙26を塞ぐことができると共に、保護層22及び保温層20を管体12に固定させることができれば良いため、これに限るものではない。
【0065】
例えば、図示はしないが、保護層22及び保温層20と管体12の外形に合わせて形成され伸縮可能な弾性部材であるキャップ状のカバー部材やシールテープ、伸縮チューブ等を用いても良いし、接着剤を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(A)は本実施の形態に係る保温材付きホースの縦断面図であり、(B)は保温材付きホースの横縦断面図である。
【図2】(A)は本実施の形態に係る保温材付きホースの縦断面図であり、(B)は保温材付きホースの横縦断面図である。
【符号の説明】
【0067】
10 保温材付きホース
12 管体
14 内面層(管体)
16 外面層(管体)
18 補強層(管体)
20 保温層(発泡層)
22 保護層(非発泡層)
24 熱収縮チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体を覆い管体内を流動する流体を保温する発泡層と、前記発泡層の表面に設けられた非発泡層と、を有することを特徴とする保温材付きホース。
【請求項2】
前記非発泡層の厚みが0.3mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の保温材付きホース。
【請求項3】
前記管体が、流体が流れる内面層と、前記内面層を覆う外面層と、前記外面層と前記内面層の間に設けられ管体の強度を上げる補強層と、を含んで構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の保温材付きホース。
【請求項4】
前記発泡層を形成する材料が、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の保温材付きホース。
【請求項5】
前記管体の外周面から前記非発泡層の両端部の表面をシール手段で覆ったことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の保温材付きホース。
【請求項6】
前記シール手段が、熱によって収縮する熱収縮チューブであることを特徴とする請求項5に記載の保温材付きホース。
【請求項7】
前記流体がクーラント液又は尿素水であることを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の保温材付きホース。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−24839(P2009−24839A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190978(P2007−190978)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】