説明

保護ダイオードを伴った半導体発光装置及びその製造方法

【課題】保護ダイオードを伴なった半導体発光装置の小型化及び低コスト化が要求されている。
【解決手段】導電性基板1と発光ダイオード半導体領域2及び保護ダイオード半導体領域3とを貼合せ金属領域5を介して貼合せる。保護ダイオード半導体領域3と導電性基板1との間に絶縁層4を配置する。発光ダイオード半導体領域2のp型半導体層14を基板1に接続し、保護ダイオード半導体領域3のn型半導体層19を接続導体8を介して基板1に接続する。発光ダイオード半導体領域2のn型半導体層16と保護ダイオード半導体領域3のp型半導体層17とを第1の電極6に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオードを過電圧から保護するための保護ダイオードを伴った半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子として、窒化物半導体材料を使用した発光ダイオードが注目されている。この発光ダイオードによれば、365nm〜550nm程度の範囲内の波長の光を発生させることができる。
【0003】
ところで、この種の窒化物半導体材料を使用した発光ダイオードは、静電破壊耐量が比較的小さいので、これに例えば100Vよりも高いサージ電圧が印加されると、発光ダイオードが破壊する。静電保護の為、発光ダイオードに対して保護ダイオードやコンデンサ等の保護素子を並列に接続することが知られている。しかし、発光ダイオードと個別に形成された保護素子とを同一パッケージに収容した構造を採用すると、保護素子を伴なった半導体発光装置の部品点数及び組立費用及び寸法の増大を招く。
【0004】
上記問題を解決するために、単一の半導体基板内に発光ダイオードと保護ダイオードとの両方を設けることが特許文献1(特開平10-200159号公報)及び特許文献2(特開平10−65215号公報)において提案されている。しかし、特許文献1及び2に開示されている半導体発光素子は、発光ダイオードと保護ダイオードが絶縁性を有するサファイヤ基板の上に形成されているので、発光ダイオードと保護ダイオードとの相互接続を容易に達成できないという問題、及び発光ダイオードの順方向電圧を小さくすることが困難であるという問題を有する。即ち、サファイヤ基板を使用する場合には、サファイヤ基板に隣接する半導体層に横方向への突出部分即ち肩部を設け、ここに電極を形成しなければならない。従って、平面的に見て半導体層の面積が大きくなり、半導体発光素子の小型化が阻害されるばかりでなく、発光ダイオードのアノードとカソードとの間の順方向の抵抗及び電圧の増大を招く。
【特許文献1】特開平10−200159号公報
【特許文献2】特開平10−65215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、小型化が可能であると共に製造が容易である保護ダイオードを伴った半導体発光装置が要求されていることである。従って、本発明の目的は、上記要求に応えることができる保護ダイオードを伴った半導体発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するための本発明は、導電性基板と、前記導電性基板の一方の主面の第1の部分の上に配置された第1導電型の第1の半導体層と前記第1の半導体層に上に直接に又は別の半導体層を介して配置された第2導電型の第2の半導体層とを有している発光ダイオード半導体領域と、前記導電性基板の一方の主面の第2の部分の上に配置された絶縁層と、前記絶縁層の上に配置され且つ前記第1の半導体層と同一の材料で形成されている第3の半導体層と前記第3の半導体層の上に直接に又は別の半導体層を介して配置され且つ前記第2の半導体層と同一の材料で形成されている第4の半導体層とを有している保護ダイオード半導体領域と、前記第2の半導体層と前記第3の半導体層との両方に接続されている電極と、前記第4の半導体層と前記導電性基板とを電気的に接続している接続導体とを備えていることを特徴とする保護ダイオードを伴った半導体発光装置に係わるものである。
【0007】
なお、請求項2に示すように、前記電極は、前記第2の半導体層に接続された発光ダイオード接続部分と、前記第3の半導体層に電気的に接続された保護ダイオード接続部分と、平面的に見て前記保護ダイオード半導体領域を覆うように配置され且つ前記発光ダイオード接続部分及び前記保護ダイオード接続部分に接続されたパッド部分とから成ることが望ましい。
また、請求項3に示すように、更に、前記第2の半導体層の上に配置され且つ前記電極の前記発光ダイオード接続部分に接続されている光透過性導電膜又は光透過孔を有する導電膜を有していることが望ましい。
また、請求項4に示すように、更に、前記絶縁層と前記第3の半導体層との間に配置された金属層を有し、前記電極の前記保護ダイオード接続部分が前記金属層を介して前記第3の半導体層に接続されていることが望ましい。
また、請求項5に示すように、前記第3の半導体層は前記第4の半導体層が設けられていない部分を有しており、前記電極の前記保護ダイオード接続部分は前記第3の半導体層の前記第4の半導体層が設けられていない部分に接続されていることが望ましい。
また、請求項6に示すように、更に、前記絶縁層と前記第3の半導体層との間に配置された第1の金属層と、前記導電性基板の一方の主面の第2の部分の隣の第3の部分の上に配置された第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層の上に配置された第2の金属層と、前記第2の金属層の上に配置され且つ前記第1の半導体層と同一の材料で形成されている第5の半導体層と前記第5の半導体層の上に直接に又は別の半導体層を介して配置され且つ前記第2の半導体層と同一の材料で形成されている第6の半導体層とを有している第2の保護ダイオード半導体領域と、前記第3の半導体層に前記第1の金属層を介して接続された一端部分と前記第6の半導体層に接続された他端部分とを有する第2の接続導体とを有し、前記電極の前記保護ダイオード接続部分が前記第2の金属層に接続されていることが望ましい。
また、請求項7に示すように、更に、前記導電性基板の一方の主面の第2の部分の隣の第3の部分の上に配置され且つ前記絶縁層よりも高い誘電率を有しているコンデンサ用誘電体層を有し、前記電極は、更に、コンデンサ用誘電体層に接続されたコンデンサ接続部分を有していることが望ましい。
また、請求項8に示すように、更に、前記電極の前記保護ダイオード接続部分と前記第3の半導体層との間に接続され且つ前記第3及び第4の半導体層に基づく第1の保護ダイオードと反対の極性を有し且つ前記第1及び第2の半導体層に基づく発光ダイオードに所定値以上の逆方向電圧が印加された時に導通する特性を有している第2の保護ダイオード、例えば、定電圧ダイオード又はショットキーダイオード、を有していることが望ましい。
また、請求項9に示すように、保護ダイオードを伴った半導体発光装置の製造方法は、導電性基板を用意する工程と、第1導電型の第1の半導体層と前記第1の半導体層に上に直接に又は別の半導体層を介して配置された第2導電型の第2の半導体層とを有し且つ発光機能を有している半導体基板を用意する工程と、前記導電性基板の一方の主面の一部分又は前記半導体基板の一方の主面の一部分上に絶縁層を形成する工程と、前記導電性基板の一方の主面と前記半導体基板の一方の主面とを前記絶縁層を介して貼合せて貼合体を得る工程と、前記半導体基板の前記絶縁層の上の部分をこの他の部分から分離する溝を前記半導体基板に形成し、前記半導体基板の前記絶縁層の上の部分に保護ダイオード半導体領域を得、この他の部分に発光ダイオード半導体領域を得る工程と、前記保護ダイオード半導体領域の前記第2の半導体層を前記導電性基板に接続するための接続導体を形成する工程と、前記発光ダイオード半導体領域の前記第2の半導体層と前記保護ダイオード半導体領域の前記第1の半導体層との両方に電気的に接続された電極を形成する工程とを備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば次の効果が得られる。
(1) 導電性基板が発光ダイオードと保護ダイオードとの共通の電極として機能するので、保護ダイオードを伴なった半導体発光装置の小型化が可能になり且つ製造が容易になる。
(2) 電極機能を有する導電性基板が発光ダイオード半導体領域における第1の半導体層の一方の主面の全体に接続されているので、発光ダイオードの順方向の電圧及び抵抗を低くすることができる。
(3) 保護ダイオードを構成する第3及び第4の半導体層が発光ダイオードを構成する第1及び第2の半導体層と同一材料で形成されているにも拘わらず、保護ダイオード半導体領域と導電性基板との間に絶縁層が配置されているので、発光ダイオードに対して保護ダイオードを逆方向並列に接続することが可能になり、発光ダイオードを逆方向の過電圧から保護することができる。
また、請求項2の発明によれば、パッド部分の下に保護ダイオード半導体領域が配置されるので、保護ダイオードを設けることによる大型化を阻止又は抑制することができる。
また、本願の方法の発明によれば、保護ダイオード半導体領域と導電性基板との間に絶縁層を容易に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図1〜図18を参照して本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1に示す本発明の実施例1に従う半導体発光装置は、図7に示すように発光ダイオードDLとこれを過電圧から保護するための保護ダイオードDPとが並列且つ逆極性に接続された回路を得るために、大別して発光ダイオードDLと保護ダイオードDPとの共通電極としての機能を有する導電性基板1と、窒化物半導体から成る発光ダイオード半導体領域2と、平面的に見て発効ダイオード半導体領域2の中央に配置され且つ発光ダイオード半導体領域2と同一の窒化物半導体から成る保護ダイオード半導体領域3と、保護ダイオード半導体領域3と導電性基板1との間に配置された絶縁層4と、発光ダイオード半導体領域2及び保護ダイオード半導体領域3と導電性基板1との間に配置された貼合せ金属領域5と、発光ダイオード半導体領域2と保護ダイオード半導体領域3との両方に接続された第1の電極6と、導電性基板1の下面に設けられた第2の電極7と、保護ダイオード半導体領域3と導電性基板1との間を電気的に接続するための接続導体と8と、保護ダイオード半導体領域3と接続導体8及び第1の電極6との間にそれぞれ配置された第1の保護絶縁膜9と、接続導体8と発光ダイオード半導体領域5及び第1の電極6との間にそれぞれ配置された第2の保護絶縁膜10と、発光ダイオード半導体領域2の上に配置された光透過性を有する第3の保護絶縁膜11とから成る。以下、これ等を詳しく説明する。
【0011】
導電性基板1は例えばボロン、インジウム等のp型不純物を含む単結晶シリコンから成り、一方の主面12と他方の主面13とを有している。この導電性基板1は例えば5×1018〜5×1019cm-3程度の不純物濃度と0.0001Ω・cm〜0.01Ω・cm程度の抵抗率を有し、第1及び第2の電極6〜7間の電流通路として機能する。更に導電性基板1は、発光ダイオード半導体領域2及び保護ダイオード半導体領域3の機械的支持体として機能するために例えば200〜500μm程度の厚みを有する。
【0012】
発光ダイオード半導体領域2は、導電性基板1の一方の主面12の外周側部分(第1の部分)の上に貼合せ金属領域5を介して配置されたp型の第1の半導体層14と非ドープ半導体から成る活性層15とn型の第2の半導体層16とから成る。
【0013】
p型の第1の半導体層14は、p型クラッド層と呼ばれるものであって、
化学式 AlxInyGa1-x-yN、
ここでx及びyは0≦x<1、
0≦y<1、
x+y≦1
を満足する数値
で示される窒化物半導体にp型不純物をドーピングしたものから成ることが望ましい。この実施例の第1の半導体層14は厚さ500nmのp型GaNで形成されている。
【0014】
ダブルへテロ構造を形成するためにp型の第1の半導体層14の上に配置された非ドープ半導体から成る活性層15は、
化学式 AlxInyGa1-x-yN、
ここでx及びyは0≦x<1、
0≦y<1、を満足する数値、
で示される窒化物半導体から成る事が望ましい。なお、図1では活性層15が1つの層で概略的に示されているが、実際には周知の多重量子井戸構造を有している。勿論活性層15を1つの層で個性することもできる。また、活性層15に第1及び第2の半導体層14、16よりも少ない量のn型またはp型不純物を添加することもできる。また、活性層15を省いてホモへテロ構造にすることもできる。
【0015】
活性層15の上に配置されたn型の第2の半導体層16は、n型クラッド層と呼ぶことができるものであって、
化学式 AlabGa1-a-b
ここで、前記MはIn(インジウム)とB(ボロン)とから選択された少なくとも1種の元素、
前記a及びbは、 0≦a≦1、
0≦b<1、
a+b≦1
を満足させる数値、
で示される窒化物半導体から成る事が望ましく、この実施例ではn型GaNから成る。
【0016】
保護ダイオード半導体領域3は、導電性基板1の一方の主面12の中央部分(第2の部分)の上に絶縁層4と貼合せ金属領域5とを介して配置され、且つ図2に示すように平面的に見て発光ダイオード半導体領域2よりも内側に配置され且つリング状に形成されている。この保護ダイオード半導体領域3は発光ダイオード半導体領域2と同時に形成されたものであって、順次に配置されたp型の第3の半導体層17と非ドープ半導体層18とn型の第4の半導体層19とから成る。p型の第3の半導体層17はp型の第3の第1の半導体層14と同一材料(窒化物半導体)で形成され、非ドープ半導体層18は活性層15と同一材料で形成され、n型の第4の半導体層19はn型の第2の半導体層16と同一の材料で形成されている。
【0017】
貼合せ金属領域5は、導電性基板1と発光ダイオード半導体領域2との間に順次に配置された第1、第2、第3及び第4の発光ダイオード部分金属層20a、21a、22a、23aと、導電性基板1と保護ダイオード半導体領域3との間に絶縁層4を介して配置された第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20b、21b、23bとから成る。第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20b、21b、23bは、第1、第2、及び第4の発光ダイオード部分金属層20a、21a、23aと同時に形成されている。絶縁層4は第2の保護ダイオード金属層21bと第3の保護ダイオード金属層23bとの間に配置されている。説明の都合上、互いに分離して示されている第1、第2、第3及び第4の発光ダイオード部分金属層20a、21a、22a、23aは実際には相互に機械的及び電気的に結合されており、まとめて1つの層で示すことも可能なものである。また、互いに分離して示されている第1及び第2の保護ダイオード部分金属層20b、21bも実際には相互に機械的及び電気的に結合されており、まとめて1つの層で示すことも可能なものである。第1、第2、第3及び第4の発光ダイオード部分金属層20a,21a、22a、23aは、導電性基板1よりは高い熱伝導率を有し且つ導電性基板1よりも大きい光反射率を有する例えば、Au(金)、又はAg又はAu合金、又はAg合金等の金属又は合金であることが望ましい。
【0018】
第1の電極6は、ワイヤ等の導電体部材をボンディングするためのパッド部分24と、このパッド部分24の外周端近くから下方に突出している発光ダイオード接続部分25と、パッド部分24の中央から下方に突出している保護ダイオード接続部分26とから成る。
【0019】
第1の電極6のパッド部分24は、図2から明らかなように平面的に見て、発光ダイオード半導体領域2の一部のみを覆い且つ保護ダイオード半導体領域3の全部を覆い且つAl(アルミニウム)ワイヤ又はAu(金)ワイヤ等の導電体部材をボンディングすることができる寸法(面積及び厚み)を有している。従って、発光ダイオード半導体領域2から発生した光に対してパッド部分24は実施的に不透過性を有する。
【0020】
第1の電極6の発光ダイオード接続部分25は、光透過性導電膜27を介して発光ダイオード半導体領域2のn型の第2の半導体層16に接続されている。なお、第2の半導体層16に第1の電極6の発光ダイオード接続部分25を直接に接続することもできる。しかし、この場合には発光ダイオード半導体領域2における電流の均一性が悪化する。光透過性導電膜27は、n型の第2の半導体層16の上面の大部分に形成されて且つここに電気的に接続されているので、発光ダイオード半導体領域2における電流の均一性の向上に寄与する。発光ダイオード半導体領域2から発生した光を外部に取り出すことを可能にするために光透過性導電膜27は、例えば厚さ100nm程度の酸化インジウムと酸化錫との混合物(ITO)の膜とすることが望ましい。しかし、光透過性導電膜27をTi、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Ag、Auから選択された1種の金属、又はこれ等の合金から成る光透過性を有する比較的薄い膜によって形成することもできる。
なお、図1では、光透過性導電膜27を第1の電極6とは別のものとして示したが、これを第1の電極6の一部と見なし、第1の電極6の発光ダイオード接続部分25と光透過性導電膜27とを合せて発光ダイオード接続導体部分と見なすこともできる。
【0021】
第1の電極6の保護ダイオード接続部分26は、保護ダイオード半導体領域3の中央に形成された孔28に挿入され且つ貼合せ金属領域5における第3の保護ダイオード部分金属層23bを介して保護ダイオード半導体領域3のp型の第3の半導体層17に電気的に接続されている。
【0022】
接続導体8は、図7に示す等価回路を形成するために保護ダイオード半導体領域3のn型の第4の半導体層19と導電性基板1とを電気的に接続している。第1の保護絶縁膜9は、保護ダイオード半導体領域3の外周面及び第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20b、21b、23bの側面と接続導体8との間、及び保護ダイオード半導体領域3の内周面と第1の電極6の保護ダイオード接続部分26との間に設けられている。従って、保護ダイオード半導体領域3の外周面及び第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20b、21b、23bと接続導体8との間、及び保護ダイオード半導体領域3の内周面と第1の電極6の保護ダイオード接続部分26との間は、第1の保護絶縁膜9によって電気的絶縁されている。また、第2の保護絶縁膜10は、発光ダイオード半導体領域2及び第1の接続電極6と導体8との間に設けられているので、これ等の間は電気的に絶縁されている。
光透過性を有する第3の保護絶縁膜11は、光透過性導電膜27の上に配置されている。なお、製造工程を簡略化するために第2及び第3の保護絶縁膜10、11を同一材料で同時に形成することが望ましい。
【0023】
第2の電極7は金属層からなり、導電性基板1の他方の主面13の全面に形成されている。この第2の電極7は導電性基板1と貼合せ金属領域5を介して発光ダイオード半導体領域2のp型の第1の半導体層14に接続されていると共に、導電性基板1と接続導体層8とを介して保護ダイオード3のn型の第4の半導体層19にも接続されている。
なお、第2の電極7を導電性基板1の一方の主面12の外周部分上に配置することもできる。また、独立した第2の電極7を省き、導電性基板又は貼合せ金属領域5を第2の電極として兼用することもできる。
【0024】
図7は図1の半導体装値の等価回路を示す。発光ダイオードDLは発光ダイオード半導体領域2に対応し、保護ダイオードDPは保護ダイオード半導体領域3に対応し、第1の端子T1は第1の電極6に対応し、第2の端子T2は第2の電極7に対応している。保護ダイオードDPは発光ダイオードDLに対応して逆の極性を有して並列に接続されている。保護ダイオードDPの順方向の立ち上り電圧(導通開始電圧)よりも高い逆方向電圧が発光ダイオードDLに印加されると、保護ダイオードDPが導通して、発光ダイオードDLに印加される逆方向電圧が保護ダイオードDPの順方向の立ち上り電圧(導通開始電圧)に制限される。これにより、発光ダイオードDLを逆方向の過電圧(例えばサージ電圧)から保護することができる。なお、発光ダイオードDLが順方向駆動された時には保護ダイオードDPが逆バイアスの状態となるので、保護ダイオードDPの電流は比較的小さい。
【0025】
次に、図1の半導体装置の製造方法の1例を図3〜図6を参照して説明する。
なお、図3〜図6において図1と実質的に同一の部分には同一の参照符号が付されている。
【0026】
まず、図3に示すシリコンから成る導電性基板1の一方の主面12に貼合せ
用の第1の金属層20を設け、他方の主面13に第2の電極7を設ける。なお、後述する貼合せ工程の後に第2の電極7を設けることもできる。
【0027】
次に、図4に示す成長用基板30を用意する。成長用基板30は、この上に半導体を気相成長させることができるものであればどのようなものでも良く、例えば、GaAs等の3−5族半導体、又はシリコン、又はサファイヤ等から選択される。
【0028】
次に、成長用基板30の上にn型半導体層16´と非ドープ半導体層15´とp型半導体層14´とを順次に周知の気相成長法で形成して半導体基板31を得る。なお、成長用基板30とn型半導体層16´との間にバッファ層を配置することもできる。図4のn型半導体層16´は図1のn型の第2の半導体層16とn型の第4の半導体層19とを得るためのものであって、これ等と同一材料から成る。従って、このn型半導体を第2の半導体層と呼ぶこともできる。非ドープ半導体層15´は図1の活性層15と非ドープ半導体層18を得るためのものであって、これ等と同一の材料から成る。p型半導体層14´は、図1のp型の第1の半導体層14とp型の第3の半導体層17とを得るためのものであって、これ等と同一材料から成る。従って、このp型半導体層14´を第1の半導体層と呼ぶこともできる。
【0029】
次に、図4に示すように、p型半導体装置14´の上面全体に第2の金属層23を設ける。
次に、第2の金属層23の上面全体に絶縁層を設け、これを選択的にエッチングすることによって絶縁層4を得る。
次に、第2の金属層23及び絶縁層4の上に絶縁層4と同一又はほぼ同一の厚みを有する金属層を設け、しかる後、この金属層の絶縁層4の上の部分を選択的に除去して図4に示す第3の金属層22を得る。
次に、第3の金属層22及び絶縁層4の上に第4の金属層21を設ける。
なお、各金属層20、21、22、23及び絶縁層4は例えば周知のスパッタリング方法で形成する。
【0030】
次に、図3の導電性基板1側の第1の金属層20と、図4の半導体基板31側の第4の金属層21とを図5に示すように重ね合せて加圧接触させ且つ熱処理を施して第1及び第4の金属層20、21を貼合わせる。
【0031】
次に、成長用基板30を切削又はエッチング除去する。なお、図5に示す貼付け工程前に成長用基板30を除去することもできる。
【0032】
次に、半導体基板31及び貼合せ金属領域5を選択的に除去して図6に示すリング状の溝32を形成し、且つ半導体基板31の中央部分を除去して孔28を形成する。これにより、リング状溝32の外周側に発光ダイオードのためのp型の第1の半導体層14と活性層15とn型の第2の半導体層16から成る発光半導体領域2が得られ、リング状溝32の内周側に保護ダイオードのためのp型の第3の半導体層17と非ドープ半導体層18とn型の第4の半導体層19とから成る保護ダイオード半導体領域3が得られる。また、第1、第2、第3及び第4の発光ダイオード部分金属層20a、21a、22a、23aと、第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20b、21b、23bが得られる。孔28はその底面に第3の保護ダイオード部分金属層23bが露出するように半導体基板31のみを除去することによって得る。
なお、図6の第1、第2、第3及び第4の発光ダイオード部分金属層20a、21a、22a、23aは図5の第1、第4、第3及び第2の金属層20、21、22、23に基づいて形成されている。また、図6の第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20b、21b、23bは、図5の第1、第4及び第2の金属層20、21、23に基づいて形成されている。また、図6のp型の第1及び第3の半導体層14、17は、図5のp型半導体層14´に基づいて形成されている。また、図6の活性層15及び非ドープ半導体層18は図5の非ドープ半導体層15´に基づいて形成されている。また図6のn型の第2及び第4の半導体層16、19は図5のn型半導体層16´に基づいて形成されている。
【0033】
次に、図1に示す第1の保護絶縁膜9を例えばスパッタリング法によって形成する。
次に、接続導体8を例えば蒸着で形成する。
次に、光透過性導電膜27を例えば蒸着によって形成する。なお、接続導体8を光透過性導電膜と同一材料で同時に形成することもできる。
次に、第2及び第3の保護絶縁膜10、11を例えばスパッタリング法で形成する。
次に第1の電極6を例えば蒸着によって形成し、図1に示す半導体発光装置を得る。
【0034】
本実施例は次の効果を有する。
(1) 導電性基板1が発光ダイオードのアノード電極と保護ダイオードのカソード電極との両方の機能を有するので、保護ダイオードを伴なった半導体発光装置の小型化及び低コスト化が達成される。
(2) 導電性基板1が使用され、これが貼合せ金属領域5を介して発光ダイオードの第1の半導体層14の下面全体に結合されているので、発光ダイオードの順方向電圧及び抵抗をサファイア基板を使用する従来の発光ダイオードよりも小さくすることができる。また、放熱性においても本実施例の導電性基板1は従来のサファイヤ基板よりも優れている。
(3) 保護ダイオード半導体領域3は、発光ダイオード半導体領域2と同一材料で同時に形成されているので、保護ダイオード半導体領域3を容易に得ることができ、保護ダイオードの製造コストの低減を図ることができる。
(4) 第3の半導体層17、非ドープ半導体層18、及び第4の半導体層19から成る保護ダイオード半導体領域3は、絶縁層4によって導電性基板1から電気的に分離されているので、発光ダイオードDLに対して保護ダイオードDPを容易に並列に接続することが可能になる。
(5) 保護ダイオード半導体領域域3は平面的に見てパッド部分24に覆われるように配置されているので、保護ダイオードを伴なった半導体発光装置の大型化を阻止又は抑制することができる。
【実施例2】
【0035】
次に、図8及び図9を参照して実施例2に従う半導体発光装置を説明する。但し、図8及び図9並びに後述する図10〜図18において図1〜図7と実質的に同一の部分及び図1〜図18の実施例の相互間において実質的に同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
図8にその一部が示されている半導体発光装置は、変形された保護ダイオード半導体領域3aと変形された第1の電極6aとを有し、この他は図1と同一に形成されている。
変形された保護ダイオード半導体領域3aは図1のリング状の保護ダイオード半導体領域3を図9に示すように半円形にしたものに相当する。
【0037】
図8の変形された第1の電極6aは、発光ダイオード半導体領域2と保護ダイオード半導体領域3aとを区画する溝32の中に配置された突出部40を有する。
【0038】
変形された保護ダイオード半導体領域3aのp型の第3の半導体層17と非ドープ半導体18とn型の第4の半導体層19とは、発光ダイオード半導体領域2のp型の第1の半導体層14と活性層15とn型の第2の半導体層16と同一材料で同時に形成されたものであり、且つ第1の電極6aのパッド部分24に覆われるように配置され且つ絶縁層4によって導電性基板1から電気的に分離されている。従って、図8の実施例2によっても図1の実施例と同一の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0039】
図10に示す実施例3の半導体発光装置は、変形された第1及び第2の保護ダイオード半導体領域3b1,3b2と変形された第1の電極6bとを有し、この他は図1と実質的に同一に形成されている。
【0040】
図10の第1及び第2の保護ダイオード半導体領域3b1,3b2は、図1の保護ダイオード半導体領域3を分断したものに相当し、導電性基板1の第2及び第3の部分の上に絶縁層4を含む第1及び第2の貼合せ部分42,43を介して配置されている。第1及び第2の保護ダイオード半導体領域3b1,3b2は、第1及び第2の保護ダイオードを得るために図1の保護ダイオード領域3と同様にp型の第3の半導体層17と非ドープ半導体層18とn型の第4の半導体層19とをそれぞれ有する。なお、第2の保護ダイオード半導体領域3b2の第3及び第4の半導体層17,19は、特許請求の範囲で第5及び第6の半導体層と呼ばれている。
第1及び第2の貼合せ部分42,43は同一の積層構造を有し、第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20b、21b、23b及び絶縁層4を溝41で分断することによって形成されている。なお、特許請求の範囲では第1の貼合せ部分42の第3の保護ダイオード部分金属層23bが第1の金属層と呼ばれ、第2の貼合せ部分43の第3の保護ダイオード部分金属層23bが第2の金属層と呼ばれている。
【0041】
第1の電極6bと導電性基板1との間に第1の保護ダイオード半導体領域3b1に基づくの第1の保護ダイオードと第2の保護ダイオード半導体領域3b2に基づく第2の保護ダイオードとの直列回路を接続するために、第1の保護ダイオード半導体領域3b1のn型の第4の半導体層19が第1の接続導体8によって導電性基板1に接続され、第1の保護ダイオード半導体領域3b1のp型の第3の半導体層17が第1の貼合せ部分42の第3の保護ダイオード部分金属層23bと第2の接続導体8aとを介して第2の保護半導体領域3b2のn型の第4の半導体層19に接続されている。また、第2の保護半導体領域3b2のp型の第3の半導体層17は第2の貼合せ部分43の第3の保護ダイオード部分金属層23bを介して第1の電極6bの保護ダイオード接続部分26に接続されている。
第1の電極6bは、発光ダイオード半導体領域2と第1及び第2の保護ダイオード半導体領域3b1,3b2とを区画する溝32に挿入された突出部分40と、第1及び第2の保護ダイオード半導体領域3b1,3b2の相互間に挿入された突出部分44を有する。
【0042】
図8の半導体発光装置の等価回路は、図7の保護ダイオードDpを図8の第1及び第2の保護ダイオード半導体領域3b1,3b2に基づく第1及び第2の保護ダイオードの直列回路に置き換えたものに相当する。従って、発光ダイオードDLを順方向駆動している時に第1及び第2の保護ダイオード半導体領域3b1,3b2を通って流れる漏れ電流を、図1の1つの保護ダイオード半導体領域3を通って流れる漏れ電流よりも小さくすることができる。
なお、図10の第1及び第2の保護ダイオード半導体領域3b1,3b2の各層17,18,19は、発光ダイオード半導体領域2の各層14,15,16と同一の半導体材料で形成され、且つ絶縁層4によって導電性基板1から電気的に分離され且つ第1の電極6bによって覆われているので、図10の実施例3によっても図1の実施例1と同一の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0043】
図11の実施例4の半導体発光装置は、変形された保護ダイオード半導体領域3cと変形された第1の電極6cを有する他は、図1と同一に構成されている。変形された保護ダイオード半導体領域3cは、図1の保護ダイオード半導体領域3と同様にp型の第3の半導体層17と非ドープ半導体層18とn型の第4の半導体層19とを有する。しかし、図11においては、保護ダイオード半導体領域3cのp型の第1の半導体領域17の露出部分50が設けられ、ここに第1の半導体領域17の露出部分とオーミック接触する金属層26aを介して第1の電極6cの保護ダイオード接続部分26が接続されている。従って、図11の実施例4では、第3の保護ダイオード部分金属層23bは保護ダイオードの電気的接続に関与していない。
【0044】
図11の第1の電極6cは、図8と同様に溝32に挿入された突出部分40を有する点を除いて図1と実質的に同一に形成されている。
図11の実施例4の半導体発光装置の基本的構造は図1と同一であるので、図1の実施例1と同一の効果を有する。
なお、金属層26aを第1の半導体領域17の露出部分とショットキー接触する材料で形成することもできる。この場合も、基本的構造は図1と同一であるので、図1の実施例と同一の効果を有する。但し、正確には保護ダイオードとしてのショットキーダイオードを含む後述する実施例7と等価な回路になり、実施例7と同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0045】
図12に示す実施例5の半導体発光装置は、変形された保護ダイオード半導体領域3aと、変形された貼合せ金属領域5aと、変形された第1の電極6dと、追加された高誘電体層4aとを有し、この他は図1と実質的に同一に形成されている。
【0046】
変形された保護ダイオード半導体領域3aは、図8の保護ダイオード半導体領域3aと同様に形成されている。
【0047】
変形された貼合せ金属領域5aは、図1と同様に形成された第1、第2、第3及び第4の発光ダイオード部分金属層20a,21a,22a,23aから成る第1の部分51と、図1と同様に形成された第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20b,21b,23bから成る第2の部分52とを有する他に、第1、第2及び第3のコンデンサ部分金属層20c,21c,23cから成る第3の部分53を有する。なお、貼合せ金属領域5aの第2の部分52には図1と同様に絶縁層4が含まれ、また第3の部分53にはコンデンサ用誘電体層4aが含まれている。第1、第2及び第3の部分51,52,53は、溝32,54,55によって電気的に分離されている。
【0048】
第3の部分53の第1、第2及び第3のコンデンサ部分金属層20c,21c,23cは、第2の部分52の第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20d,21b,23bと同一材料で同時に形成されている。コンデンサ用誘電体層4aは、絶縁層4よりも高い誘電率を有する例えば、BaTiO3等の高誘電率材料で形成されている。コンデンサ用誘電体層4aは第2及び第3のコンデンサ部分金属層21c,23cで挟まれ、これ等と共にコンデンサを構成している。
【0049】
第1の電極6dはコンデンサ接続部分56を有し、このコンデンサ接続部分56が第3のコンデンサ部分金属層23cに接続されている。従って、コンデンサ用誘電体層4aに基づく保護コンデンサは第1の電極6dと導電性基板1との間に接続され且つ保護ダイオード半導体領域3dの保護ダイオードに対して並列に接続されている。
【0050】
図12の実施例5は、図1の実施例1と同一の効果を有する他に、コンデンサ用誘電体層4aに基づく過電圧吸収効果を得ることができる。なお、コンデンサ用誘電体層4aは第1の電極6dの下に配置されているので、半導体発光装置の小型に保つことができる。
【実施例6】
【0051】
図13に示す実施例6の半導体発光装置は、変形された第1の保護ダイオード半導体領域3aと変形された第1の電極6eと追加された第2の保護ダイオード半導体領域60とを有し、この他は図1と同一に形成されている。
【0052】
第1の保護ダイオード半導体領域3aは、図7の保護ダイオードDpと同一機能を有する第1の保護ダイオードを構成している。
【0053】
図13の第2の保護ダイオード半導体領域60は、定電圧ダイオードを構成するものであってp型半導体薄膜61とn型半導体薄膜62とから成る。p型及びn型半導体薄膜61,62は、例えばアモルファス(非晶質)シリコンから成り、例えばCVDで形成される。勿論、各半導体薄膜61,62はアモルファスシリコン以外の半導体材料であっても良いし、またCVD以外のスパッタ、印刷等の別の方法で形成しても良い。p型半導体薄膜61は、第3の保護ダイオード部分金属層23bの上に配置され、n型半導体薄膜62は、p型半導体薄膜61と第1の電極6eの保護ダイオード接続部分26との間に配置されている。従って、第2の保護ダイオード半導体領域60に基づく第2の保護ダイオードは、第1の保護ダイオード半導体領域3aに基づく第1の保護ダイオードに対して逆の極性を有して直列に接続され、この直列回路が発光ダイオードに対して並列に接続されている。
【0054】
第2の保護ダイオード半導体領域60に基づく第2の保護ダイオードは、所定値以上の逆方向電圧が印加された時にツエナー降伏又はアバランシェ降伏してほぼ一定電圧になる特性を有する。従って、発光ダイオード半導体領域2に所定値以上の逆方向電圧(例えばサージ電圧)が印加された時に、第2の保護ダイオードが導通状態、且つ順方向バイアス状態の保護ダイオード半導体領域3aの第1の保護ダイオードも導通状態となり、発光ダイオードの電圧が所定値以下に抑えられる。
【0055】
第2の保護ダイオード半導体領域60は、第1の電極6eのパッド部分24の下に形成されているので、半導体発光装置の大型化を招かない。なお、実施例6の半導体発光装置は、第1の保護ダイオード半導体領域3aを有するので、実施例1と同様な効果も有する。
【実施例7】
【0056】
図14に示す実施例7の半導体発光装置は、変形された保護ダイオード半導体領域3aと変形された第1の電極6fと追加された第2の保護ダイオードとしてのショットキーダイオード70を有し、この他は図1と同一に形成されている。
【0057】
ショットキーダイオード70は、第3の保護ダイオード部分金属層23bの上に配置されたp型半導体層71と、p型半導体層71と第1の電極6fの保護ダイオード接続部分26との間に配置され且つp型半導体層71にショットキー接触している金属層72とから成る。p型半導体層71は、図5に示すp型半導体層14´を残存させたものであり、窒化物半導体から成る。しかし、p型半導体層71をアモルファスシリコン等の別の半導体材料で形成することもできる。
【0058】
図14のショットキーダイオード70は、図13の第2の保護ダイオード半導体領域60の第2の保護ダイオードと同様に保護ダイオード半導体領域3aの保護ダイオードに対して逆の極性を有して直列に接続されている。ショットキーダイオード70は図13の実施例6の第2の保護ダイオード半導体領域60と同様の効果を有する。
また、保護ダイオード半導体領域3aと共にショットキーダイオード70は第1の電極65のパッド部分24の下に配置されているので、実施例7は実施例1と同様な効果も有する。
【実施例8】
【0059】
図15に示す実施例8の半導体発光装置は、変形された半導体基板1aと変形された保護ダイオード半導体領域3aと変形された第1の電極6gと追加された第2の保護ダイオード80と追加された接続導体83とを有し、この他は図1と同一に形成されている。
【0060】
図15の保護ダイオード半導体領域3aは図8及び図9で同一の参照符号で示すものと実質的に同一に形成されている。
【0061】
図15の半導体基板1aは、n+型シリコン半導体から成る。第2の保護ダイオード80は、n+型半導体基板1aの中に拡散で形成されたp+型半導体領域81とこのp+型半導体領域81の中に拡散で形成されたn+型半導体領域82とから成る。n+型半導体領域82には第1の電極6gの保護ダイオード接続部分26がオーミック接触し、p型半導体領域81と第3の保護ダイオード部分金属層23bとの間が第2の接続導体83で接続されている。従って、第2の保護ダイオード80は、図13の第2の保護ダイオード半導体領域60の第2の保護ダイオードと同様に保護ダイオード半導体領域3aの第1の保護ダイオードに対して逆の極性を有して直列に接続されている。第2の保護ダイオード80は図13の第2の保護ダイオードと同様に定電圧特性を有し、且つ第1の電極6gのパッド部分24の下に配置されているので、図15の実施例8は図13の実施例6と同一の効果を有する。
【実施例9】
【0062】
図16に示す実施例9の半導体発光装置は、変形された保護ダイオード半導体領域3aを変形された第1の電極6hによって覆われない位置に移動した点において図1の実施例1と相違している。即ち、図16においては第1、第2及び第3の保護ダイオード部分金属層20b,21b,23bと絶縁層4とから成る貼合せ部分とこの上の保護ダイオード半導体領域3aが、第1の電極6hの下に配置されずに発光ダイオード半導体領域2の外周側部分に配置されている。また、パッド部分24を有する第1の電極6hの下面全体が光透過性導電膜27に接続されている。図8と同様に形成された保護ダイオード半導体領域3aのn型の第4の半導体層19は接続導体8を介して導電性基板1に接続されている。p型の第3の半導体層17は第3の保護ダイオード部分金属層23bと接続導体90と光透過性導電膜27とを介して第1の電極6hに接続されている。従って、図16の発光ダイオード半導体領域2の発光ダイオードと保護ダイオード半導体領域3aの保護ダイオードとの電気的接続関係は図7の等価回路と同一である。
【0063】
図16の実施例9の半導体発光装置は、図1の実施例1における第1の電極6の下に保護ダイオード半導体領域3を配置することによって得られた小型化の効果を除いて図1の実施例1と同一の効果を有する。
【実施例10】
【0064】
図17は実施例10の変形された貼合せ金属領域5bを図6と同様に示すものである。図17の貼合せ金属領域5bは、図1の貼合せ金属領域5から第2の発光ダイオード部分金属層21aと第2の保護ダイオード部分金属層21bとを省き、その他は図1と同一に形成したものに相当する。従って、図17では発光ダイオード部分金属層20a,22aの相互間、及び保護ダイオード部分金属層20bと絶縁層4との間が貼合せ面となっている。
【0065】
図17の保護ダイオード部分金属層20bと絶縁層4との貼合せ部分の結合強度は、図1の第1及び第2の保護ダイオード部分金属層20b,21bの貼合せ部分の結合強度よりも低くなるが、図1の第2の発光ダイオード部分金属層21a及び第2の保護ダイオード部分金属層21bを省いた分だけコストの低減を図れる。
【0066】
なお、図17の変形として発光ダイオード部分金属層22a,23aの相互間及び絶縁層4と保護ダイオード部分金属層23bの相互間を貼合せ面とすることもできる。また、図17の貼合せ構造を図8〜図16の実施例にも適用することができる。
【実施例11】
【0067】
図18は実施例11の変形された貼合せ金属領域5cを図6と同様に示すものである。図18の貼合せ金属領域5cは、図1の貼合せ金属領域5から第2及び第3の発光ダイオード部分金属層21a,22aと第2の保護ダイオード部分金属層21bとを省き、且つ絶縁膜4を導電性基板1の一方の主面12上に直接に設け、この他は図1と構成したものに相当する。この図18では2つの発光ダイオード部分金属層20a,23aの相互間と、2つの保護ダイオード部分金属層20b,23bの相互間とが貼合せ面となる。また、この実施例11では導電性基板1の一方の主面12の上に絶縁層4が設けられ、この上に第1の保護ダイオード部分金属層20bが設けられている。第1の発光ダイオード部分金属層20aは第1の保護ダイオード部分金属層20bと同時に形成されている。
【0068】
図18の実施例11は、貼合せ金属領域5cにおける金属層の数を実施例1に比べて少なくできるという利点を有する。
なお、図18の貼合せ構造を図8〜図16の実施例にも適用することができる。
【0069】
本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、例えば次の変形が可能なものである。
(1) 導電性基板1を単結晶シリコン以外の多結晶シリコン又はSiC等のシリコン化合物、又は3−5族化合物半導体、又は金属とすることができる。また、導電性基板1が金属基板の場合には第2の電極7を金属基板の一部で形成することができる。
(2) 図1〜図15の実施例では保護ダイオード半導体領域3,3a,3bが発光ダイオード半導体領域2の中央に配置され且つこの全部が第1の電極6〜6gで覆われているが、保護ダイオード半導体領域3,3a,3bを発光ダイオード半導体領域2の中央以外の部分に配置し且つこの一部のみを第1の電極6〜6gで覆うようにすることもできる。
(3) 各実施例の発光ダイオード半導体領域2及び発光ダイオード半導体領域3,3a,3bの各層の導電型を各実施例と逆にすることができる。
(4) 光透過性導電膜27を、格子状又は網目状又はストライプ状の様に孔を有する導電膜に置き換え、この孔を有する導電膜を第1の電極6〜6gに接続することができる。また、光透過性導電膜27を省いて第1の電極6〜6gを発光ダイオード半導体領域2に直接に接続することもできる。
(5) 貼合せ金属領域5を省いて導電性基板1と半導体基板31とを貼合せることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例1に従う半導体発光装置を示す中央縦断面図である。
【図2】図1の半導体発光装置の導電性基板及び半導体領域を縮小して示す平面図である。
【図3】図1の半導体発光装置の製造工程中の金属層と第2の電極とを伴なった導電性基板を示す断面図である。
【図4】図1の半導体発光装置を製造するために成長用基板の上に複数の半導体層と複数の金属層と絶縁層とを設けたものを示す断面図である。
【図5】図3に示すものと図4に示すものとを貼合せた貼合せ体を示す断面図である。
【図6】図5から成長用基板を除去し、半導体領域を発光ダイオード半導体領域と保護ダイオード半導体領域とに分離したものを示す断面図である。
【図7】図1の半導体発光装置の等価回路図である。
【図8】実施例2の半導体発光装置の一部を示す断面図である。
【図9】図8の発光ダイオード半導体領域と保護ダイオード半導体領域とを示す平面図である。
【図10】実施例3の半導体発光装置の一部を示す断面図である。
【図11】実施例4の半導体発光装置の一部を示す断面図である。
【図12】実施例5の半導体発光装置の一部を示す断面図である。
【図13】実施例6の半導体発光装置の一部を示す断面図である。
【図14】実施例7の半導体発光装置の一部を示す断面図である。
【図15】実施例8の半導体発光装置の一部を示す断面図である。
【図16】実施例9の半導体発光装置を示す断面図である。
【図17】実施例10の半導体発光装置の一部を図6と同様に示す断面図である。
【図18】実施例11の半導体発光装置の一部を図6と同様に示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 導電性基板
2 発光ダイオード半導体領域
3,3a,3b 保護ダイオード半導体領域
4 絶縁層
5,5a,5b,5c 貼合せ金属領域
6〜6g 第1の電極
7 第2の電極
24 パッド部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板と、
前記導電性基板の一方の主面の第1の部分の上に配置された第1導電型の第1の半導体層と前記第1の半導体層に上に直接に又は別の半導体層を介して配置された第2導電型の第2の半導体層とを有している発光ダイオード半導体領域と、
前記導電性基板の一方の主面の第2の部分の上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層の上に配置され且つ前記第1の半導体層と同一の材料で形成されている第3の半導体層と前記第3の半導体層の上に直接に又は別の半導体層を介して配置され且つ前記第2の半導体層と同一の材料で形成されている第4の半導体層とを有している保護ダイオード半導体領域と、
前記第2の半導体層と前記第3の半導体層との両方に接続されている電極と、
前記第4の半導体層と前記導電性基板とを電気的に接続している接続導体と
を備えていることを特徴とする保護ダイオードを伴った半導体発光装置。
【請求項2】
前記電極は、前記第2の半導体層に接続された発光ダイオード接続部分と、前記第3の半導体層に電気的に接続された保護ダイオード接続部分と、平面的に見て前記保護ダイオード半導体領域を覆うように配置され且つ前記発光ダイオード接続部分及び前記保護ダイオード接続部分に接続されたパッド部分とから成ることを特徴とする請求項1記載の保護ダイオードを伴った半導体発光装置。
【請求項3】
更に、前記第2の半導体層の上に配置され且つ前記電極の前記発光ダイオード接続部分に接続されている光透過性導電膜又は光透過孔を有する導電膜を有していることを特徴とする請求項2記載の保護ダイオードを伴った半導体発光装置。
【請求項4】
更に、前記絶縁層と前記第3の半導体層との間に配置された金属層を有し、前記電極の前記保護ダイオード接続部分が前記金属層を介して前記第3の半導体層に接続されていることを特徴とする請求項2又は3記載の保護ダイオードを伴った半導体発光装置。
【請求項5】
前記第3の半導体層は前記第4の半導体層が設けられていない部分を有しており、前記電極の前記保護ダイオード接続部分は前記第3の半導体層の前記第4の半導体層が設けられていない部分に接続されていることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の保護ダイオードを伴った半導体発光装置。
【請求項6】
更に、前記絶縁層と前記第3の半導体層との間に配置された第1の金属層と、
前記導電性基板の一方の主面の第2の部分の隣の第3の部分の上に配置された第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の上に配置された第2の金属層と、
前記第2の金属層の上に配置され且つ前記第1の半導体層と同一の材料で形成されている第5の半導体層と前記第5の半導体層の上に直接に又は別の半導体層を介して配置され且つ前記第2の半導体層と同一の材料で形成されている第6の半導体層とを有している第2の保護ダイオード半導体領域と、
前記第3の半導体層に前記第1の金属層を介して接続された一端部分と前記第6の半導体層に接続された他端部分とを有する第2の接続導体と
を有し、前記電極の前記保護ダイオード接続部分が前記第2の金属層に接続されていることを特徴とする請求項1記載の保護ダイオードを伴った半導体発光装置。
【請求項7】
更に、前記導電性基板の一方の主面の第2の部分の隣の第3の部分の上に配置され且つ前記絶縁層よりも高い誘電率を有しているコンデンサ用誘電体層を有し、
前記電極は、更に、コンデンサ用誘電体層に接続されたコンデンサ接続部分を有していることを特徴とする請求項2又は3記載の保護ダイオードを伴った半導体発光装置。
【請求項8】
更に、前記電極の前記保護ダイオード接続部分と前記第3の半導体層との間に接続され且つ前記第3及び第4の半導体層に基づく第1の保護ダイオードと反対の極性を有し且つ前記第1及び第2の半導体層に基づく発光ダイオードに所定値以上の逆方向電圧が印加された時に導通する特性を有している第2の保護ダイオードを有していることを特徴とする請求項2又は3記載の保護ダイオードを伴った半導体発光装置。
【請求項9】
導電性基板を用意する工程と、
第1導電型の第1の半導体層と前記第1の半導体層に上に直接に又は別の半導体層を介して配置された第2導電型の第2の半導体層とを有し且つ発光機能を有している半導体基板を用意する工程と、
前記導電性基板の一方の主面の一部分又は前記半導体基板の一方の主面の一部分上に絶縁層を形成する工程と、
前記導電性基板の一方の主面と前記半導体基板の一方の主面とを前記絶縁層を介して貼合せて貼合体を得る工程と、
前記半導体基板の前記絶縁層の上の部分をこの他の部分から分離する溝を前記半導体基板に形成し、前記半導体基板の前記絶縁層の上の部分に保護ダイオード半導体領域を得、この他の部分に発光ダイオード半導体領域を得る工程と、
前記保護ダイオード半導体領域の前記第2の半導体層を前記導電性基板に接続するための接続導体を形成する工程と、
前記発光ダイオード半導体領域の前記第2の半導体層と前記保護ダイオード半導体領域の前記第1の半導体層との両方に電気的に接続された電極を形成する工程と
を備えていることを特徴とする保護ダイオードを伴った半導体発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−157926(P2007−157926A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349526(P2005−349526)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】