説明

保護体、基板積層体、貼り合わせ装置、剥離装置、および基板の製造方法

【課題】本発明の実施形態は、レーザ光を照射して基板から支持基板を剥離させる際の損傷を抑制することができる保護体、基板積層体、貼り合わせ装置、剥離装置、および基板の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、接合部を介して基板と支持基板とが貼り合わされた基板積層体の前記基板と前記支持基板との間に設けられ、前記支持基板を介して照射されたレーザ光が前記基板に到達するのを抑制することを特徴とする保護体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護体、基板積層体、貼り合わせ装置、剥離装置、および基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の半導体素子(半導体チップ)を積層し、ワイヤーボンディングやシリコン貫通電極(TSV;Through Silicon Via)などを用いて1つのパッケージ内に実装するマルチチップパッケージ(MCP;Multi Chip Package)が用いられるようになってきている。
この様なマルチチップパッケージに用いられる半導体素子は、通常の半導体素子よりも厚み寸法が薄くされるのが一般的である。
また、半導体装置の高集積化などの観点からも半導体素子の厚み寸法が薄くなる傾向にある。
【0003】
この様な厚み寸法の薄い半導体素子を製造するためには、例えば、ダイシングする前の基板の厚み寸法を薄くする必要がある。ところが、基板の厚み寸法を薄くすると機械的な強度が低下するので、基板の厚み寸法を薄く加工する際に基板が破損するおそれがある。 そのため、基板の厚み寸法を薄く加工する際に必要となる強度を付与するために、パターンが形成された基板(製品基板)と、支持基板とを貼り合わせて基板積層体を形成し、厚み寸法の加工後に基板から支持基板を剥離させる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1に開示された技術においては、支持基板と接着剤層との間に設けられた光熱変換層にレーザ光を照射して光熱変換層を分解し、基板から支持基板を剥離させるようにしている。
しかしながら、レーザの出力などによっては照射されたレーザ光やレーザ光による熱が基板上に形成されたパターンに到達するなどしてパターンや基板が損傷するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4405246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、レーザ光を照射して基板から支持基板を剥離させる際の損傷を抑制することができる保護体、基板積層体、貼り合わせ装置、剥離装置、および基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、接合部を介して基板と支持基板とが貼り合わされた基板積層体の前記基板と前記支持基板との間に設けられ、前記支持基板を介して照射されたレーザ光が前記基板に到達するのを抑制することを特徴とする保護体が提供される。
【0008】
また、他の実施形態によれば、接合部を介して基板と支持基板とが貼り合わされた基板積層体であって、前記基板と前記支持基板との間に上記の保護体を備えたことを特徴とする基板積層体が提供される。
【0009】
また、他の実施形態によれば、第1の基体を載置する載置部と、前記載置部に載置された前記第1の基体と所定の間隔をあけて対峙させて第2の基体を支持する支持部と、前記載置部と前記支持部とを接離方向に相対移動させる移動機構部と、を備え、前記第1の基体が、支持基板と、前記支持基板の前記第2の基体に対峙する側の主面に設けられた接合部と、前記第2の基体に対峙する側の主面に設けられた上記の保護体と、を有している場合には、前記第2の基体は基板であり、前記第1の基体が基板である場合には、前記第2の基体は、前記支持基板と、前記支持基板の前記第1の基体に対峙する側の主面に設けられた前記接合部と、前記第1の基体に対峙する側の主面に設けられた上記の保護体と、を有したこと、を特徴とする貼り合わせ装置が提供される。
【0010】
また、他の実施形態によれば、上記の基板積層体を載置する載置部と、前記基板積層体に設けられた接合部にレーザ光を照射する照射部と、前記基板積層体に設けられた接合部に剥離液を供給する剥離液供給部と、を備えたことを特徴とする剥離装置が提供される。
【0011】
また、他の実施形態によれば、支持基板の一方の主面または基板のパターンが形成された主面に、接合部と、上記の保護体と、を設ける工程と、前記接合部と前記保護体とを介して、前記支持基板と前記基板とを貼り合わせる工程と、前記接合部を硬化させる工程と、前記基板の厚み寸法が所定の寸法となるように加工する工程と、前記接合部にレーザ光を照射して支持基板を剥離する工程と、前記接合部に剥離液を供給して前記接合部と、前記保護体と、を剥離する工程と、を備えたことを特徴とする基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、レーザ光を照射して基板から支持基板を剥離させる際の損傷を抑制することができる保護体、基板積層体、貼り合わせ装置、剥離装置、および基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
【図2】第2の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
【図3】第3の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
【図4】第4の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
【図5】第5の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
【図6】第6の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
【図7】本実施の形態に係る貼り合わせ装置について例示をするための模式図である。
【図8】本実施の形態に係る剥離装置を例示するための模式図である。
【図9】本実施の形態に係る基板の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。
なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。 また、各図中の矢印X、Y、Zは互いに直交する三方向を表しており、例えば、X、Yは基板の主面と平行な方向、Zは基板の主面と直交する方向を表している。
また、一例として、レーザ光を照射して剥離を行う場合を例示するが、レーザ光の照射に限らず、熱線やレーザ光以外の高エネルギー線を照射して剥離を行う場合にも適用させることができる。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
なお、図1(a)は基板積層体の模式分解図、図1(b)は基板積層体の模式図である。この場合、図1(a)においては、煩雑化を避けるため接合部を省略して描いている。
図1に示すように、基板積層体1には、支持基板2、基板(製品基板)3、接合部4、保護体5が設けられている。
ここで、基板3のパターン3aが形成された主面とは反対側の主面には、はんだバンプが形成される場合がある。はんだバンプが形成される場合には、基板積層体1がはんだの溶融温度以上にまで加熱されるので、はんだの溶融温度までの耐熱性を有する接合部4とする必要がある。
この様な高い耐熱性を有する接合部4を剥離するためには、はんだの溶融温度を超える温度にまで接合部4を加熱する必要がある。
一方、基板3に形成されているはんだバンプの溶融を抑制したり、パターン3aへの損傷を抑制したりするためには、基板3の温度がはんだの溶融温度未満となるようにする必要がある。
【0016】
ところが、図1(b)に示すように、はんだの溶融温度を超える温度にまで加熱したい接合部4と、温度がはんだの溶融温度未満となるようにしたい基板3とは互いに接触している。そのため、接合部4をはんだの溶融温度を超える温度にまで加熱すると、基板3の温度がはんだの溶融温度を超えてしまうおそれがある。
また、基板3の温度がはんだの溶融温度以下となっていても、パターン3aにレーザ光が照射されると損傷が生ずるおそれもある。
この場合、レーザ光を透過させない接合部4とすることもできるが、接合部4の厚み寸法が大きくなったり、厚み寸法の精度や平面度が悪化するおそれがある。
そのため、本実施の形態においては、支持基板2と基板3との間に保護体5を設けることで、支持基板2に向けて照射されたレーザ光やレーザ光による熱が基板3に到達することを抑制するようにしている。
すなわち、保護体5は、接合部4を介して基板3と支持基板2とが貼り合わされた基板積層体の基板3と支持基板2との間に設けられ、支持基板2を介して照射されたレーザ光が基板3に到達するのを抑制する。
また、基板3の接合部が設けられる側に複数のパターン3aが形成されている場合には、支持基板2を介して照射されたレーザ光が複数のパターンが含まれる領域に到達するのを抑制するようにすることができる。
【0017】
支持基板2は、基板3の厚み寸法を薄く加工する際に必要となる強度を付与する。
支持基板2の大きさは特に限定されるわけではなく、基板3の大きさと略同一とすることができる。この場合、支持基板2の大きさが基板3の大きさよりも若干大きくなるようにすることができる。例えば、支持基板2の大きさが基板3の大きさよりも0.5mm〜1mm程度大きくなるようにすることができる。
【0018】
支持基板2の形状は特に限定されるわけではなく、基板3を支持できる形状であれば任意の形状とすることができる。ただし、支持基板2の形状と基板3の形状とが相似の関係となるようにすることが好ましく、一般的には基板3が円形(例えば、ウェーハなど)であることを考慮すると、支持基板2の形状は図1(a)に示すように円形とすることができる。
【0019】
支持基板2の材料は特に限定されず、基板3の厚み寸法を薄く加工する際に必要となる強度を付与できるものであればよい。例えば、ガラス、金属、セラミックスなどの無機材料、樹脂などの有機材料などとすることができる。
ただし、支持基板2と基板3とを貼り合わせた状態で基板3の厚み寸法を薄く加工する際に後述するエッチング液などがかかるので耐薬品性が高いものとすることができる。また、基板3から支持基板2を剥離させる際に支持基板2に向けて後述するレーザ光が照射されることを考慮すると耐熱性が高くレーザ光に対する透過率が高いものとすることができる。その様なものとしては、例えば、石英ガラスなどのガラスを例示することができる。
また、支持基板2の材料の熱膨張係数が基板3の材料の熱膨張係数に近ければ、例えば、レーザ光が照射された際などに発生する熱応力を抑制することができる。そのため、支持基板2は、基板3の材料の熱膨張係数になるべく近い熱膨張係数を有する材料から形成されるものとすることができる。
【0020】
基板3としては特に限定されるわけではなく、例えば、図1(b)に示すように、表面にパターン3a(例えば、回路パターン)が形成されたウェーハとすることができる。
基板3の材料としては特に限定されるわけではなく、例えば、基板3がウェーハである場合には、シリコンなどの半導体材料から形成されたものとすることができる。また、基板3の表面には酸化物や窒化物からなる層が形成されたものとすることもできる。
【0021】
接合部4は、支持基板2と基板3とを貼り合わせるために設けられている。接合部4は、接着剤を塗布し、これを硬化させることで形成されたものとすることができる。例えば、接合部4は、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレンなどやこれらの混合樹脂を主成分とする接着剤を塗布し、これを硬化させることで形成されたものとすることができる。
【0022】
接合部4の厚み寸法は特に限定されるわけではなく、基板3の厚み寸法を薄く加工する際に必要となる強度を付与できるような厚み寸法であればよい。例えば、接合部4の厚み寸法は数μm〜100μm程度とすることができる。
なお、例えば、基板3の厚み寸法を薄く加工する際に必要となる平面度が維持できれば、支持基板2や基板3の必ずしも全面に接合部4を設ける必要はない。
【0023】
また、接合部4の材料の熱膨張係数が基板3の材料の熱膨張係数に近ければ、例えば、レーザ光が照射された際などに発生する熱応力を抑制することができる。そのため、接合部4は、基板3の材料の熱膨張係数になるべく近い熱膨張係数を有する材料から形成されるものとすることができる。
【0024】
保護体5は、支持基板2と基板3との間に設けられている。
図1中のZ方向における保護体5の配設位置は特に限定されない。例えば、図1(b)に示すように、保護体5が支持基板2および基板3と接触しないような位置に保護体5を配設することもできるし、保護体5が支持基板2および基板3の少なくともいずれかと接触するような位置に保護体5を配設することもできる。ただし、基板3の表面にパターン3aが形成されている場合には、保護体5とパターン3aとが接触しないような位置に保護体5を配設するようにすることができる。
【0025】
保護体5の大きさは特に限定されるわけではなく、基板3の表面にパターン3aが形成されている場合には、パターン3aが形成されている領域を覆うことができる大きさとすることができる。この場合、保護体5の大きさがパターン3aが形成されている領域の大きさよりも0.5mm〜数mm程度大きいものとすることができる。
【0026】
保護体5の形状は特に限定されるわけではなく、基板3の表面にパターン3aが形成されている場合には、パターン3aが形成されている領域を覆うことができる形状とすることができる。
一般的には基板3が円形(例えば、ウェーハなど)であることを考慮すると、保護体5の形状は図1(a)に示すように円形とすることができる。
保護体5の材料は特に限定されるわけではなく、支持基板2を介して照射されたレーザ光やレーザ光による熱で分解され難いものとすることができる。また、保護体5の材料は、レーザ光を透過させないか、レーザ光の透過率が低いものとすることができる。また、後述するように、保護体5を剥離する際には薬液を用いる場合がある。そのため、保護体5の材料は、耐薬品性の高いものとすることができる。また、保護体5の材料の熱膨張係数が基板3の材料の熱膨張係数に近ければ、例えば、レーザ光が照射された際などに発生する熱応力を抑制することができる。そのため、保護体5の材料は、基板3の材料の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有するものとすることができる。また、保護体5が熱伝導率の低い材料から形成されるようにすれば、レーザ光が照射される側が接合部4を剥離するのに充分な温度となっていても、レーザ光が照射される側とは反対の側においては温度の上昇を抑制することができる。すなわち、保護体5が熱伝導率の低い材料から形成されるようにすれば、レーザ光による熱が基板3に到達することをさらに抑制することができる。そのため、保護体5の材料は、熱伝導率の低いものとすることができる。
保護体5の材料としては、例えば、ステンレスなどの金属、セラミックスなどの無機材料、耐熱性、耐薬品性の高い樹脂などを例示することができる。
保護体5の厚み寸法は特に限定されるわけではなく、レーザ光が照射されることや剥離された保護体5を再利用することなどを考慮して適宜決定することができる。
【0027】
図1に例示をしたように、保護体5は板状の形態を有したものとすることができる。例えば、孔部のない板状体とすることができる。
【0028】
本実施の形態によれば、支持基板2と基板3との間に保護体5を設けているので、支持基板2に向けて照射されたレーザ光やレーザ光による熱が基板3に到達することを抑制することができる。そのため、レーザ光を照射して基板3から支持基板2を剥離させる際に、支持基板2と保護体5との間に相当な出力のレーザ光を照射しても基板3やパターン3aに損傷を与えることを抑制することができる。
この場合、保護体5を孔のない板状体としているので、支持基板2の任意の位置にレーザ光を照射することができる。そのため、支持基板2に向けてレーザ光を照射する際の作業性を向上させることができる。
【0029】
[第2の実施形態]
図2は、第2の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
なお、図2(a)は基板積層体の模式分解図、図2(b)は基板積層体の模式図である。この場合、図2(a)においては、煩雑化を避けるため接合部を省略して描いている。
図2に示すように、基板積層体1aには、支持基板2、基板3、接合部4、保護体5aが設けられている。
保護体5aは、支持基板2と基板3との間に設けられている。
保護体5aの配設位置、大きさ、形状、材料、厚み寸法などは、前述した保護体5と同様とすることができる。
【0030】
図2に例示をしたように、保護体5aは複数の孔部5a1が設けられた板状の形態を有するものとすることができる。例えば、保護体5aは複数の孔部5a1が形成された板状体とすることができる。
後述するように、レーザ光を照射して支持基板2を剥離した後に、後述する剥離液を用いて保護体5aと残余の接合部4とを剥離する必要がある。
本実施の形態においては、保護体5aに複数の孔部5a1を形成しているので、孔部5a1を介して剥離液を浸透させることができる。すなわち、保護体5aと基板3との間に設けられている接合部4にも効率よく剥離液を浸透させることができる。
【0031】
孔部5a1の配設位置、大きさ、形状、数などは特に限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
この場合、孔部5a1の配設位置、大きさ、形状、数などを、基板3の表面に形成されたパターン3aに応じて規定するようにすることもできる。すなわち、支持基板2と基板3との間に保護体5aを設けた際に孔部5a1により画された空間にパターン3aが収まるように、孔部5a1の配設位置、大きさ、形状、数などを規定するようにすることもできる。
すなわち、複数の孔部5a1が設けられた板状の形態である場合には、孔部5a1の大きさは、複数のパターン3aのいずれか1つの大きさよりも大きいものとすることができる。
また、複数の孔部5a1のいずれか1つにより画された領域に複数のパターン3aのいずれか1つが含まれるようにすることができる。
その様にすれば、保護体5aとパターン3aとが接触することで発生する損傷を抑制することができる。
また、孔部5a1の配設位置、大きさ、形状、数などを、保護体5aのX、Y方向の機械的な強度を考慮して規定するようにすることもできる。前述したように、基板3にはんだバンプが形成されたり、基板3より支持基板2を剥離させるために支持基板2に向けてレーザ光が照射されたりすると、保護体5aと基板3との間に熱応力が発生する場合がある。この場合、保護体5aの材料の熱膨張係数が基板3の材料の熱膨張係数に近ければ熱応力の発生を抑制することができるが、すべての基板3の材料の熱膨張係数に対応させることが難しい場合もある。
この場合、孔部5a1を形成することで保護体5aのX、Y方向の機械的な強度を低下させることができれば、基板3の熱膨張に応じて保護体5aを膨張させることができる。その結果、保護体5aと基板3との間に発生する熱応力を低減させることができる。
【0032】
保護体5aに複数の孔部5a1を形成する方法には特に限定はないが、例えば、サンドブラスト法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、エンドミル加工などの機械的な加工法などとすることができる。
【0033】
なお、保護体5aには複数の孔部5a1が形成されているので、支持基板2を剥離する際には、孔部5a1を避けるようにしてレーザ光を照射するようにすることが好ましい。
また、孔部5a1を避けるようにして接合部4を設けるようにすることが好ましい。
【0034】
本実施の形態によれば、支持基板2と基板3との間に保護体5aを設けているので、支持基板2に向けて照射されたレーザ光やレーザ光による熱が基板3に到達することを抑制することができる。そのため、レーザ光を照射して基板3から支持基板2を剥離させる際に、支持基板2と保護体5aとの間に相当な出力のレーザ光を照射しても基板3やパターン3aに損傷を与えることを抑制することができる。
【0035】
またさらに、複数の孔部5a1が形成された保護体5aとしているので、孔部5a1を介して剥離液を浸透させることができる。また、孔部5a1により画された空間にパターン3aが収まるようにすれば、保護体5aとパターン3aとが接触することで発生する損傷を抑制することができる。また、孔部5a1を形成することで保護体5aのX、Y方向の機械的な強度を低下させることができるので、基板3の熱膨張に応じて保護体5aを膨張させることができる。その結果、保護体5aと基板3との間に発生する熱応力を低減させることができる。
【0036】
[第3の実施形態]
図3は、第3の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
なお、図3(a)は基板積層体の模式分解図、図3(b)は基板積層体の模式図である。この場合、図3(a)においては、煩雑化を避けるため接合部を省略して描いている。
図3に示すように、基板積層体1bには、支持基板2、基板3、接合部4a(第1の接合部)、接合部4b(第2の接合部)、保護体5aが設けられている。
【0037】
ここで、支持基板2と基板3とを貼り合わせた状態で基板3の厚み寸法を薄く加工する際には、ウェットエッチング法、研磨法、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などが用いられる。この場合、これらの方法において用いられるエッチング液、研磨液、CMP液などが基板3の表面に形成されているパターン3aに接触するとパターン3aに損傷が発生するおそれがある。
そのため、本実施の形態においては、基板3のパターン3aが形成された側の主面の周縁(以下においては、単に基板3の周縁と称する)に沿って設けられた接合部4aと、接合部4aよりも基板3の中心側に設けられた接合部4bと、を備えるようにしている。接合部4aは、パターン3aが形成された領域を囲うように閉ループ状に設けられている。そして、接合部4aは、接合部4bよりも耐薬品性が高いものとなっている。この場合、接合部4aは、エッチング液、研磨液、CMP液などにより分解されにくいものとすることができる。また、接合部4bは、接合部4aよりも容易に剥離させることができるものとすることができる。
接合部4aは、例えば、AS(アクリロニトリル・スチレン)系樹脂を含む接着剤により形成されたものとすることができる。
また、接合部4bは、例えば、水性接着剤により形成されたものとすることができる。
【0038】
この様にすれば、接合部4aによりエッチング液、研磨液、CMP液などが基板積層体1bの内部に侵入することを抑制することができる。
また、基板3から支持基板2を剥離させた後、保護体5aと残余の接合部4bを剥離する際には、水などを供給するなどして接合部4bを容易に剥離することができる。なお、基板3から支持基板2を剥離させる際には、接合部4aにレーザ光が照射されるので、接合部4aはレーザ光により分解された状態となる。そのため、基板3から支持基板2を剥離させた後に、接合部4bとともに接合部4aを容易に剥離することができる。
【0039】
本実施の形態によれば、図2に例示をしたものと同様の効果を享受することができる。 またさらに、接合部4bよりも耐薬品性が高い接合部4aを基板3の周縁に沿って設けているので、基板3の厚み寸法を薄く加工する際にエッチング液、研磨液、CMP液などが基板積層体1bの内部に侵入することを抑制することができる。そのため、エッチング液、研磨液、CMP液などが基板3の表面に形成されているパターン3aに接触することで発生する損傷を抑制することができる。
また、接合部4aよりも基板3の中心側に設けられた接合部4bは、接合部4aよりも容易に剥離させることができるものとしているので保護体5aと残余の接合部4bを剥離する際には、水などを供給するなどして接合部4bを容易に剥離することができる。この際、レーザ光により分解された状態となっている接合部4aも接合部4bとともに容易に剥離することができる。
【0040】
[第4の実施形態]
図4は、第4の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
なお、図4(a)は基板積層体の模式分解図、図4(b)は基板積層体の模式図である。この場合、図4(a)においては、煩雑化を避けるため接合部を省略して描いている。
図4に示すように、基板積層体1cには、支持基板2、基板3、接合部4a、接合部4b、保護体5bが設けられている。
【0041】
保護体5bは、支持基板2と基板3との間に設けられている。
図4に例示をしたように、保護体5bは網状の形態を有するものとすることができる。例えば、保護体5bは網目5b1が形成された網状体とすることができる。
すなわち、保護体5bは、図2、図3に例示をした板状の保護体5aとは網状であることが異なっている。そのため、保護体5bの配設位置、大きさ、形状、材料、厚み寸法などは保護体5aについて例示をしたものと同様とすることができる。また、網目5b1の配設位置、大きさ、形状、数などは孔部5a1について例示をしたものと同様とすることができる。
例えば、網状の形態である場合には、網状の形態の有する網目5b1の大きさは、複数のパターン3aのいずれか1つの大きさよりも大きくなるようにすることができる。
また、網状の形態の網目のいずれか1つにより画された領域に複数のパターン3aのいずれか1つが含まれるようにすることができる。
なお、網状体の作成には既知の技術を適用させることができるので、保護体5bの作成方法に関する説明は省略する。
本実施の形態によれば、図3に例示をしたものと同様の効果を享受することができる。
【0042】
[第5の実施形態]
図5は、第5の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
なお、図5(a)は基板積層体の模式分解図、図5(b)は基板積層体の模式図である。この場合、図5(a)においては、煩雑化を避けるため接合部を省略して描いている。
図5に示すように、基板積層体1dには、支持基板2、基板3、接合部4、保護体5cが設けられている。
【0043】
保護体5cは、支持基板2と基板3との間に設けられている。
そして、保護体5cは、基板3の支持基板2と対峙する側の主面上に設けられている。 保護体5cの大きさは特に限定されるわけではなく、基板3の表面にパターン3aが形成されている場合には、パターン3aが形成されている領域を覆うことができる大きさとすることができる。この場合、保護体5cの大きさがパターン3aが形成されている領域の大きさよりも0.5mm〜数mm程度大きいものとすることができる。
【0044】
保護体5cの形状は特に限定されるわけではなく、基板3の表面にパターン3aが形成されている場合には、パターン3aが形成されている領域を覆うことができる形状とすることができる。
保護体5cの材料は、支持基板2を介して照射されたレーザ光やレーザ光による熱で分解され易いものとすることができる。この場合、保護体5cの材料は、レーザ光を透過させないか、レーザ光の透過率が低いものとすることができる。また、保護体5cの材料は、レーザ光の吸収率が高いものとすることができる。
保護体5cの材料としては、例えば、ステンレス、クロム、アルミニウムなどの金属を例示することができる。
【0045】
保護体5cは、支持基板2の基板3に面する側の主面に設けられた膜状の形態を有したものとすることができる。この場合、保護体5cは、孔部のない膜状体とすることもできるし、孔部のある膜状体とすることもできる。この場合、保護体5cは、めっき法、スパッタリング法などの既知の成膜法を用いて基板3の主面上に形成するようにすることができる。
また、前述したように、保護体5cは、レーザ光が照射されることで分解されるものとすることができる。 保護体5cの厚み寸法は特に限定されるわけではなく、レーザ光の照射で容易に分解できる程度の厚み寸法とすることができる。
【0046】
なお、基板3から支持基板2を剥離させる際には、保護体5cにレーザ光が照射されるので、保護体5cはレーザ光により分解された状態となる。そのため、基板3から支持基板2を剥離させた後に、接合部4とともに分解された保護体5cを容易に剥離することができる。
【0047】
本実施の形態によれば、支持基板2と基板3との間に保護体5cを設けているので、支持基板2に向けて照射されたレーザ光やレーザ光による熱が基板3に到達することを抑制することができる。そのため、レーザ光を照射して基板3から支持基板2を剥離させる際に、支持基板2と保護体5cとの間にレーザ光を照射しても基板3やパターン3aに損傷を与えることを抑制することができる。
またさらに、膜状の保護体5cはレーザ光により分解された状態となっているので、接合部4に剥離液を容易に浸透させることができる。
【0048】
[第6の実施形態]
図6は、第6の実施形態に係る保護体、基板積層体を例示するための模式図である。
なお、図6(a)は基板積層体の模式分解図、図6(b)は基板積層体の模式図である。この場合、図6(a)においては、煩雑化を避けるため接合部を省略して描いている。
図6に示すように、基板積層体1eには、支持基板2、基板3、接合部4a、接合部4b、保護体5dが設けられている。
保護体5dは、支持基板2と基板3との間に設けられている。
【0049】
保護体5dの大きさ、形状、材料などは、前述した保護体5aと同様とすることができる。
図6に例示をしたように、保護体5dは複数の孔部5d1が形成された板状体とすることができる。この場合、孔部5d1の配設位置、大きさ、形状、数などは前述した孔部5a1と同様とすることができる。
【0050】
なお、図3に例示をしたものと同様に、基板3の表面にパターン3aが形成されている場合には、支持基板2と基板3との間に保護体5dを設けた際に孔部5d1により画された空間にパターン3aが収まるように、孔部5d1の配設位置、大きさ、形状、数などを規定するようにすることができる。その様にすれば、保護体5dとパターン3aとが接触することで発生する損傷を抑制することができる。
【0051】
図6に示すように、保護体5dは、図3に例示をした保護体5aとは配設形態が異なっている。
すなわち、保護体5dは、第1の主面5d2と、第1の主面5d2とは反対側の第2の主面5d3と、を有し、第1の主面5d1は基板3に当接し、第2の主面5d3は支持基板2に当接している。
そして、基板3の周縁に沿って設けられた接合部4aと、保護体5dの周端面(X、Y方向の面)との間に接合部4bが設けられている。
また、第1の主面5d2と基板3との間、および第2の主面5d3と支持基板2との間には、接合部が設けられないようにすることができる。
この場合、基板3と第1の主面5d2との間、支持基板2と第2の主面5d3との間に接合部4bを設けていないので、剥離工程における作業時間の短縮や生産性の向上などを図ることができる。
【0052】
本実施の形態によれば、図3に例示をしたものと同様の効果を享受することができる。
【0053】
またさらに、基板3と保護体5dとの間、支持基板2と保護体5dとの間に接合部4bを設けていないので、剥離工程における作業時間の短縮や生産性の向上などを図ることができる。
【0054】
なお、図1〜図6に例示をした保護体5、5a、5b、5c、5dと、接合部4、4a、4bとは任意に組み合わせて設けるようにすることができる。例えば、図1、図2、図5において例示をした接合部4の代わりに、接合部4a、4bを設けるようにすることもできる。
【0055】
次に、本実施の形態に係る貼り合わせ装置について例示をする。
[第7の実施形態]
図7は、本実施の形態に係る貼り合わせ装置について例示をするための模式図である。 図7に示すように、貼り合わせ装置10には、処理容器11、載置部12、支持部13、移動機構部14、排気部15が設けられている。
処理容器11は、気密構造となっており大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能となっている。処理容器11の側壁には、基体W1(第1の基体)、基体W2(第2の基体)の搬入搬出を行うための開口部11aが設けられ、開口部11aを気密に開閉可能な開閉扉11bが設けられている。また、処理容器11の底部には、処理容器11内の排気をするための開口部11cが設けられている。
【0056】
処理容器11の内部には、貼り合わされる一方の基体W1を載置、保持する載置部12が設けられている。載置部12の載置面(上面)は平坦面となっており、載置面に基体W1が載置されるようになっている。また、載置部12には静電チャックなどの図示しない保持部が設けられており、載置された基体W1を保持することができるようになっている。
この場合、基体W1は、前述した基板積層体のうち基板3を除いた部分とすることができる。すなわち、基体W1は、支持基板2の一方の主面上に前述した接合部と保護体とが設けられたものとすることができる。
【0057】
処理容器11の内部であって、載置部12の上方であって対向する位置には、貼り合わされる他方の基体W2を支持する支持部13が設けられる。
この場合、基体W2は、前述した基板3とすることができる。
支持部13は、載置部12に載置された基体W1と所定の間隔をあけて対峙させて基体W2を支持する。
支持部13には、真空チャックや静電チャックなどを用いることができる。
この支持部13は、移動機構部14の動作により、載置部12に対して接離方向に移動することができる。移動機構部14としては、エアシリンダなどを備えたものとすることができる。
また、図示しない画像処理部からの画像情報に基づいて、載置部12に載置された基体W1に対する基体W2の位置を調整する図示しない調整部を設けるようにすることができる。
【0058】
排気部15は、配管15aを介して開口部11cに接続されている。排気部15は、例えば、ドライポンプなどとすることができる。なお、基体W1と基体W2との貼り合わせは、必ずしも減圧雰囲気下で行う必要はなく、例えば、大気圧雰囲気下で行うこともできる。基体W1と基体W2との貼り合わせを減圧雰囲気下で行わない場合には、排気部15を設ける必要はなく、また、処理容器11をパーティクルなどの侵入が抑制される程度の気密構造とすればよい。
ここで、基体W1と基体W2の間に空気が巻き込まれることによりボイドが発生すると、基板3の厚み寸法を薄く加工する際に厚み寸法の加工精度が低下するおそれがある。この場合、基体W1と基体W2との貼り合わせを減圧雰囲気下で行ようにすれば、基体W1と基体W2との間に空気が巻き込まれることによるボイドの発生が抑制されるので、基板3の厚み寸法の加工精度を向上させることができる。
【0059】
次に、貼り合わせ装置10の作用について例示をする。
まず、図示しない搬送装置により基体W1が処理容器11内に搬入され、基体W1が載置部12に載置される。この際、接合部と保護体とが設けられた側の主面を上方に向けるようにして基体W1が載置部12に載置される。
次に、図示しない搬送装置により基体W2が処理容器11内に搬入され、基体W2が支持部13により支持される。この際、パターン3aが形成された主面を下方に向けるようにして基体W2が支持部13により支持される。
次に、図示しない搬送装置が処理容器11の外に退避した後、開閉扉11bが閉じられ処理容器11が密閉される。そして、処理容器11内が排気される。
次に、移動機構部14により、支持部13を下降させる。これにより、基体W1と基体W2とを貼り合わせることで前述した基板積層体となる積層体を形成する。
なお、支持部13に基体W1に対する基体W2の位置を調整する図示しない調整部が設けられている場合には、貼り合わせの前に図示しない調整部により基体W1に対する基体W2の位置が調整される。
【0060】
本実施の形態に係る貼り合わせ装置によれば、前述した基板積層体を効率よく製造することができる。また、接合部が設けられた支持基板2と、基板3とを減圧環境下で貼り合わせるようにすればボイドが発生することを抑制することができる。
【0061】
なお、基体W1を支持基板2の一方の主面上に接合部と保護体とが設けられたもの、基体W2を基板3としたがこれに限定されるわけではない。基体W1を基板3のパターン3aが形成された主面に接合部と保護体とが設けられたもの、基体W2を支持基板2とすることもできる。
例えば、基体W1が支持基板2と、支持基板2の基体W2に対峙する側の主面に設けられた接合部と、基体W2に対峙する側の主面に設けられた保護体と、を有している場合には、基体W2は基板3であり、基体W1が基板3である場合には、基体W2は、支持基板2と、支持基板2の基体W1に対峙する側の主面に設けられた接合部と、基体W1に対峙する側の主面に設けられた保護体とを有したものとすることができる。すなわち、支持基板、基板、接合部、保護体の組み合わせは任意のものとすることができる。
また、載置部12に対して支持部13側が接離動する構成を例示したが、載置部12側が支持部13に対して接離動するように構成することもできる。
【0062】
また、基体W1と基体W2とを貼り合わせた後に接合部の硬化を行うようにすることができる。接合部の硬化は、接合部の材料などに応じて適宜選択することができる。例えば、接合部が紫外線硬化樹脂からなる場合は紫外線を照射するようにすることができる。接合部が熱硬化樹脂からなる場合は加熱を行うようにすることができる。
なお、接合部の形成は、既知の塗布装置(例えば、ディスペンス装置、インクジェット装置など)を用いて行うようにすることができるので詳細な説明は省略する。
【0063】
次に、本実施の形態に係る剥離装置について例示をする。
[第8の実施形態]
図8は、本実施の形態に係る剥離装置を例示するための模式図である。
図8に示すように、剥離装置30には、照射部32、載置部33、剥離液供給部34、制御部35が設けられている。
照射部32は、載置部33に載置された基体Wに向けてレーザ光を照射する。基体Wは、前述した基板積層体とすることができる。
この場合、照射部32は、基体Wに設けられた接合部にレーザ光を照射する。
照射部32には、レーザ部25、アーム部26、駆動部27が設けられている。
アーム部26は、レーザ部25の出射面25aを載置台22の載置面22aに向けるようにしてレーザ部25を保持する。また、アーム部26の一端は駆動部27に接続されている。
【0064】
駆動部27は、例えば、サーボモータなどの制御モータなどから構成され、アーム部26を介してレーザ部25の位置を変化させる。すなわち、レーザ光の照射位置を変化させる。この場合、駆動部27は、例えば、揺動方向および水平方向の少なくともいずれかの方向にアーム部26を移動させるものとすることができる。また、アーム部26をさらに鉛直方向に移動させるものとすることもできる。なお、レーザ部25によりレーザ光の走査が可能な場合には、駆動部27を省略することもできる。
【0065】
載置部33は基体Wを載置、保持する。
載置部33には、載置台22、駆動部23、処理カップ24が設けられている。
載置台22は円板状を呈し、一方の主面が基体Wを載置する載置面22aとなっている。載置面22aの周縁には、基体Wの周端を支持する支持部22bが設けられている。この場合、載置面22aに載置された基体Wを保持するバキュームチャックなどの図示しない保持部を設けるようにすることができる。ただし、図示しない保持部は必ずしも必要ではなく、支持部22bにより基体Wの周端面を支持することで、載置面22aに載置された基体Wが保持されるようにしてもよい。
載置台22の他方の主面の中心には回転軸22cが設けられている。回転軸22cは駆動部23と接続され、載置面22aに保持された基体Wを回転軸22c周りに回転させることができるようになっている。
【0066】
駆動部23は、例えば、サーボモータなどの制御モータなどから構成され、載置台22を回転軸22c周りに回転させるとともに、回転数や、停止位置などの位置制御などができるようになっている。
処理カップ24は、載置台22の外周方向を覆うように設けられている。処理カップ24は、有底の円筒状を呈し、上面が開放されている。処理カップ24の底板の中央には、回転軸22cを挿通させるための孔24aが設けられている。底板には、排出口24bが設けられており、排出口24bには排出液配管38の一端が接続されている。処理カップ24の側壁上部には、剥離液が処理カップ24の上面から飛散することを抑制するために、先端が処理カップ24の中心に向けて傾斜している傾斜部24cが設けられている。
【0067】
剥離液供給部34は、基体Wに設けられた接合部に剥離液を供給する。
すなわち、剥離液供給部34は、支持基板2が剥離された状態において接合部に剥離液を供給する。
剥離液供給部34には、タンク17、送液配管18、送液部19、送液制御部20、剥離液ノズル21、排出液配管38、タンク39が設けられている。
タンク17は、剥離液を収納する。剥離液は、前述した接合部4、4a、4bを剥離することができるものとすることができる。ここで、接合部4aは耐薬品性が高いものとなっているが、剥離時においては接合部4aがレーザ光により分解された状態となるので、分解された状態の接合部4aを剥離することができる剥離液であればよい。剥離液は、例えば、純水、脱イオン化された純水などとすることができる。ただし、これらに限定されるわけではなく、接合部4、4a、4bの溶解性などに応じて適宜選択することができる。
【0068】
送液配管18の一端は剥離液ノズル21に接続され、送液配管18の他端はタンク17内の剥離液に浸漬する位置に設けられている。
送液部19は、送液配管18に設けられ、タンク17内に収納された剥離液を剥離液ノズル21に供給する。送液部19は、例えば、剥離液に対する耐性を有するポンプなどとすることができる。
送液制御部20は、送液配管18に設けられ、送液部19により送液される剥離液の供給と停止とを制御する。また、送液部19により送液される剥離液の流量を制御するようにすることもできる。
剥離液ノズル21の開口端は載置台22の載置面22aに向けて設けられており、基体W3(基板3が剥離された状態の基板積層体)に剥離液を供給することができるようになっている。剥離液ノズル21の開口端とは反対側の端部には送液配管18が接続されている。
【0069】
位置変化部28には、アーム部28a、駆動部28bが設けられている。
アーム部28aは、剥離液ノズル21の開口端を載置台22の載置面22aに向けるようにして剥離液ノズル21を保持する。また、アーム部28aの一端は駆動部28bに接続されている。
駆動部28bは、例えば、サーボモータなどの制御モータなどから構成され、アーム部28aを移動させることで、載置面22aに対する剥離液ノズル21の開口端位置を変化させる。この場合、駆動部28bは、基体W3に対する剥離液の供給位置を変化させるとともに、停止位置などの位置制御ができるようになっている。駆動部28bは、例えば、揺動方向および水平方向の少なくともいずれかの方向にアーム部28aを移動させるものとすることができる。また、アーム部28aをさらに鉛直方向に移動させるものとすることもできる。
【0070】
タンク39は、使用済みの剥離液を収納する。
排出液配管38は、一端が処理カップ24の排出口24bに接続され、他端がタンク39に接続されている。
【0071】
制御部35は、駆動部28b、送液部19、送液制御部20、駆動部23、レーザ部25、駆動部27と電気的に接続されている。そして、制御部35は、照射部32、載置部33、剥離液供給部34の動作を制御する。
次に、剥離装置30の作用について例示をする。
まず、図示しない搬送手段により基体Wが載置台22の載置面22aに載置される。載置面22aに載置された基体Wは、バキュームチャックなどの図示しない保持部により保持される。なお、バキュームチャックなどの図示しない保持部が設けられていない場合には、支持部22bにより基体Wの周端面が支持されることで、載置面22aに載置された基体Wが保持される。そのため、載置台22が回転した際に基体Wの位置がずれることを抑制することができる。
なお、基体Wを載置する際には、基板積層体の基板3側を載置面22aに載置するようにする。
【0072】
基板積層体が円板状の場合には、駆動部23により回転軸22cを回転させることで、載置面22aに保持された基体Wを所定の回転速度で回転させる。
そして、レーザ部25からレーザ光を出射させて、支持基板2を介して接合部にレーザ光を照射する。この場合、基体Wの回転方向位置やレーザ部25の水平方向位置を制御することで所望の位置にレーザ光が照射されるようにすることができる。なお、基体Wを回転させるようにすれば、レーザ部25の水平方向位置の制御を容易とすることができる。
【0073】
基板積層体が非円板状(例えば、矩形状など)の場合にも、レーザ部25からレーザ光を出射させて、支持基板2を介して接合部にレーザ光を照射するようにすることができる。この場合も、基体Wの回転方向位置やレーザ部25の水平方向位置を制御することで所望の位置にレーザ光が照射されるようにすることができる。
【0074】
なお、接合部4a、接合部4bが設けられている場合には、接合部4aと、接合部4bとでレーザ光の照射条件を変更することができる。例えば、接合部4aを照射する際のレーザ光の出力を高くしたり、照射時間を長くしたりすることができる。
また、保護体に孔が設けられている場合には、孔を避けた位置にレーザ光が照射されるようにすることが好ましい。
ここで、基体Wである基板積層体には保護体が設けられているので、支持基板2に向けて照射されたレーザ光やレーザ光による熱が基板3に到達することを抑制することができる。そのため、レーザ光を照射して基板3から支持基板2を剥離させる際に、支持基板2と保護体との間にレーザ光を照射しても基板3やパターン3aに損傷を与えることを抑制することができる。
【0075】
次に、支持基板2を剥離する。
レーザ光が照射されることで接合部が分解されるので、支持基板2を持ち上げるようにして剥離することができる。
なお、支持基板2の剥離は図示しないロボット装置などにより行うようにすることができる。
【0076】
次に、残余の接合部、保護体を剥離する。
残余の接合部、保護体を剥離する際には、まず、駆動部23により回転軸22cを回転させることで、載置面22aに保持された基体W3を所定の回転速度で回転させる。
そして、送液部19により、送液配管18を介してタンク17内に収納された剥離液が剥離液ノズル21に向けて送液される。この際、送液制御部20により送液される剥離液の流量が所定の値となるように制御される。
【0077】
送液された剥離液は剥離液ノズル21の開口端から基体W3の表面に供給される。この際、位置変化部28により基体W3に対する剥離液の供給位置が制御される。
例えば、剥離液ノズル21の開口端を、回転する基体W3の回転半径方向に移動させながら剥離液を供給したり、基体W3の回転中心付近の上方に剥離液ノズル21の開口端を固定した状態で剥離液を供給したりすることができる。
基体W3の表面面に供給された剥離液により、残余の接合部、保護体が剥離される。
この際、基体W3の回転を停止させ、図示しないロボット装置などにより保護体を機械的に剥離させた後に、残余の接合部の剥離を続行するようにすることができる。
また、保護体が剥離される前は回転速度を遅く、保護体が剥離された後は回転速度を速くするようにすることができる。
保護体に孔が形成されている場合には、孔部を介して剥離液を浸透させることができるので、作業時間の短縮や生産性の向上を図ることができる。
【0078】
基体W3に向けて供給された剥離液は遠心力により基体W3の外側に向けて排出される。基体W3の外側に向けて排出された剥離液は、処理カップ24により飛散が抑制され、処理カップ24の底板上に集められる。底板上に集められた剥離液は、排出口24b、排出液配管38を介してタンク39に排出される。
【0079】
本実施の形態に係る剥離装置によれば、前述した基板積層体の剥離を効率よく行うことができる。
なお、レーザ光を照射することで支持基板2を剥離する剥離装置と、剥離液を供給することで接合部、保護体を剥離する剥離装置とが一体的に設けられる場合を例示したが、これらが別々に設けられるようにすることもできる。
また、回転により基体W、W3の移動を行う場合を例示したが、基体W、W3の移動をXYテーブルなどで行うようにすることもできる。また、基体W、W3と、レーザ部25、剥離液ノズル21と、の相対的な位置を変化させることができるように、基体W、W3、およびレーザ部25、剥離液ノズル21の少なくともいずれかの位置を変化させることができるようになっていればよい。
また、1つの基体W3に対して剥離液が供給される枚様式の剥離装置を例示したが、例えば、複数の基体W3を剥離液に浸漬させるディップ式の剥離装置とすることもできる。
【0080】
次に、本実施の形態に係る基板の製造方法について例示をする。
[第9の実施形態]
図9は、本実施の形態に係る基板の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
まず、支持基板2の一方の主面または基板3のパターン3aが形成された主面に接合部と保護体とを設ける(ステップS1)。
例えば、図1、図2に例示をしたものの場合には、支持基板2の一方の主面上に接合部4を形成し、所定の位置に保護体5または保護体5aを載置する。その後、載置された保護体5または保護体5aを覆うようにして接合部4を再度形成する。
また、図3、図4に例示をしたものの場合には、支持基板2の一方の主面の周縁に沿って接合部4aを形成し、接合部4aよりも支持基板2の中心側に接合部4bを形成し、所定の位置に保護体5aまたは保護体5bを載置する。その後、載置された保護体5aまたは保護体5bを覆うようにして接合部4bを再度形成する。
また、図5に例示をしたものの場合には、支持基板2の一方の主面の所定の位置に保護体5cを成膜する。その後、成膜された保護体5cを覆うようにして接合部4を形成する。 また、図6に例示をしたものの場合には、支持基板2の一方の主面の所定の位置に保護体5dを載置する。その後、支持基板2の一方の主面の周縁に沿って接合部4aを形成し、接合部4aと保護体5dの周端面との間に接合部4bを形成する。
なお、支持基板2の一方の主面に接合部と保護体とを設ける場合を例示したが、基板3のパターン3aが形成された主面に接合部と保護体とを設けるようにすることもできる。ただし、図5に例示をしたものの場合には、支持基板2の一方の主面の所定の位置に保護体5cを成膜するようにする。
【0081】
次に、接合部と保護体とを介して、支持基板2と基板3とを貼り合わせることで積層体を形成する(ステップS2)。
貼り合わせは、例えば、前述した貼り合わせ装置10を用いて行うようにすることができる。そのため、貼り合わせの手順の詳細は省略する。
次に、形成された積層体の接合部を硬化させることで基板積層体を作成する(ステップS3)。
接合部の硬化は、接合部の材料などに応じて適宜選択することができる。例えば、接合部が紫外線硬化樹脂からなる場合は紫外線を照射するようにすることができる。接合部が熱硬化樹脂からなる場合は加熱を行うようにすることができる。
【0082】
次に、基板積層体に設けられた基板3の厚み寸法が所定の寸法となるように加工する(ステップS4)。
基板3の加工は、ウェットエッチング法、研磨法、CMP法などを用いて行うようにすることができる。なお、基板3の加工は、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
ここで、接合部4aが形成されている場合には、接合部4aによりエッチング液、研磨液、CMP液などが基板積層体の内部に侵入することを抑制することができる。
【0083】
次に、支持基板2、接合部、保護体を剥離する(ステップS5)。
この場合、接合部にレーザ光を照射して支持基板2を剥離する工程と、接合部に剥離液を供給して接合部と、保護体と、を剥離する工程と、を備えるようにすることができる。 支持基板2、接合部、保護体の剥離は、例えば、前述した剥離装置30を用いて行うようにすることができる。そのため、前述した剥離の工程の詳細は省略する。
以上のようにして、厚み寸法の薄い基板3を製造することができる。
本実施の形態によれば、レーザ光を照射して基板3から支持基板2を剥離させる際の損傷を抑制することができる。そのため、歩留まりや生産性などを向上させることができる。
【0084】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、基板積層体1、基板積層体1a〜1e、貼り合わせ装置10、剥離装置30が備える各要素の形状、寸法、材料、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0085】
1 基板積層体、1a〜1e 基板積層体、2 支持基板、3 基板、3a パターン、4 接合部、4a 接合部、4b 接合部、5 保護体、5a〜5d 保護体、5a1 孔部、5b1 網目、5d1 孔部、10 貼り合わせ装置、11 処理容器、12 載置部、13 支持部、14 移動機構部、15 排気部、30 剥離装置、32 照射部、33 載置部、34 剥離液供給部、35 制御部、W 基体、W1〜W3 基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部を介して基板と支持基板とが貼り合わされた基板積層体の前記基板と前記支持基板との間に設けられ、前記支持基板を介して照射されたレーザ光が前記基板に到達するのを抑制することを特徴とする保護体。
【請求項2】
前記基板の前記接合部が設けられる側には複数のパターンが形成され、前記支持基板を介して照射されたレーザ光が前記複数のパターンが含まれる領域に到達するのを抑制することを特徴とする請求項1記載の保護体。
【請求項3】
板状の形態、複数の孔部が設けられた板状の形態、および網状の形態、からなる群より選ばれたいずれかの形態を有したことを特徴とする請求項1または2に記載の保護体。
【請求項4】
前記複数の孔部が設けられた板状の形態である場合には、前記孔部の大きさは、前記複数のパターンのいずれか1つの大きさよりも大きいことを特徴とする請求項3記載の保護体。
【請求項5】
前記網状の形態である場合には、前記網状の形態の有する網目の大きさは、前記複数のパターンのいずれか1つの大きさよりも大きいことを特徴とする請求項3記載の保護体。
【請求項6】
前記支持基板の前記基板に面する側の主面に設けられた膜状の形態を有したことを特徴とする請求項1または2に記載の保護体。
【請求項7】
前記レーザ光が照射されることで分解されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の保護体。
【請求項8】
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面と、を有し、前記第1の主面は前記基板に当接し、前記第2の主面は前記支持基板に当接することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の保護体。
【請求項9】
接合部を介して基板と支持基板とが貼り合わされた基板積層体であって、
前記基板と前記支持基板との間に請求項1〜8のいずれか1つに記載の保護体を備えたことを特徴とする基板積層体。
【請求項10】
前記基板の前記接合部が設けられた側には複数のパターンが形成され、
前記接合部は、前記基板の前記パターンが形成された側の主面の周縁に沿って設けられた第1の接合部と、前記第1の接合部よりも前記基板の中心側に設けられた第2の接合部と、を有したことを特徴とする請求項9記載の基板積層体。
【請求項11】
前記第1の接合部は、前記第2の接合部よりも耐薬品性が高いことを特徴とする請求項10記載の基板積層体。
【請求項12】
前記保護体は、複数の孔部が設けられた板状の形態を有し、前記複数の孔部のいずれか1つにより画された領域に前記複数のパターンのいずれか1つが含まれたことを特徴とする請求項10または11に記載の基板積層体。
【請求項13】
前記保護体は、網状の形態を有し、前記網状の形態の網目のいずれか1つにより画された領域に前記複数のパターンのいずれか1つが含まれたことを特徴とする請求項10または11に記載の基板積層体。
【請求項14】
前記保護体は、第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面と、を有し、前記第1の主面と前記基板との間、および前記第2の主面と前記支持基板との間には、前記接合部が設けられないことを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つに記載の基板積層体。
【請求項15】
第1の基体を載置する載置部と、
前記載置部に載置された前記第1の基体と所定の間隔をあけて対峙させて第2の基体を支持する支持部と、
前記載置部と前記支持部とを接離方向に相対移動させる移動機構部と、
を備え、
前記第1の基体が、支持基板と、前記支持基板の前記第2の基体に対峙する側の主面に設けられた接合部と、前記第2の基体に対峙する側の主面に設けられた請求項1〜8のいずれか1つに記載の保護体と、を有している場合には、前記第2の基体は基板であり、
前記第1の基体が基板である場合には、前記第2の基体は、前記支持基板と、前記支持基板の前記第1の基体に対峙する側の主面に設けられた前記接合部と、前記第1の基体に対峙する側の主面に設けられた前記請求項1〜8のいずれか1つに記載の保護体と、を有したこと、を特徴とする貼り合わせ装置。
【請求項16】
請求項9〜14のいずれか1つに記載の基板積層体を載置する載置部と、
前記基板積層体に設けられた接合部にレーザ光を照射する照射部と、
前記基板積層体に設けられた接合部に剥離液を供給する剥離液供給部と、
を備えたことを特徴とする剥離装置。
【請求項17】
支持基板の一方の主面または基板のパターンが形成された主面に、接合部と、請求項1〜8のいずれか1つに記載の保護体と、を設ける工程と、
前記接合部と前記保護体とを介して、前記支持基板と前記基板とを貼り合わせる工程と、
前記接合部を硬化させる工程と、
前記基板の厚み寸法が所定の寸法となるように加工する工程と、
前記接合部にレーザ光を照射して支持基板を剥離する工程と、
前記接合部に剥離液を供給して前記接合部と、前記保護体と、を剥離する工程と、
を備えたことを特徴とする基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79856(P2012−79856A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222487(P2010−222487)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】