説明

保護層でコーティングされている熱電材料

熱電モジュールの一部を形成するための形状の熱電材料であって、湿気、酸素、化学薬品または熱による劣化を防止するために保護層でコーティングされている熱電材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気、酸素、化学薬品または熱による劣化を防止するために保護層でコーティングされている熱電材料、この熱電材料を含む熱電モジュール、ならびにこれら熱電材料およびモジュールを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電発電機およびペルチェ配置それら自体がここしばらくの間に知られるようになり、片側が加熱され反対側が冷却されるpおよびnドープ半導体により外部回路を通して電荷が輸送され、回路における負荷によって電気仕事を行うことができる。このプロセスにおいて実現される熱エネルギーから電気エネルギーへの変換効率は、カルノー効率によって熱力学的に制限される。したがって、高温側が1000K、「低温」側が400Kの温度では、効率(1000−400):1000=60%が可能となるはずである。しかしながら、これまで最大6%の効率しか得られていない。
【0003】
一方、そのような配置に直流を流すと、一方の側からもう一方の側へ熱が輸送される。そのようなペルチェ配置がヒートポンプとして働くため、装置部品、車両または建物を冷却するために適している。供給されるエネルギー等量に対応するよりも多くの熱が絶えず輸送されるため、ペルチェ原理による加熱も従来の加熱よりも好ましい。
【0004】
例えば、George S.Nolas、Joe PoonおよびMercouri Kanatzidis.、Recent Developments in Bulk Thermoelectric Materials、MRS Bulletin、31巻、2006年、199〜206ページによって、効果および材料についてじっくりと検討されている。
【0005】
現在のところ、例えば、直流を生成するための宇宙探査において、パイプラインの陰極腐食防止のために、ライトブイおよびラジオブイへのエネルギー供給のために、またラジオおよびテレビを作動させるために熱電発電機が使用される。熱電発電機の利点は、その著しい信頼性にある。例えば、それら熱電発電機は、大気中水分などの大気条件に関係なく作動し、フォールト・プローン物質移動はなく、正しくは電荷移動のみである。水素から、天然ガス、ガソリン、ケロシン、ディーゼル燃料、また菜種油、メチルエステルなど生物学的に得られる燃料に至るまで任意の燃料を使用することが可能である。
【0006】
したがって、熱電エネルギー変換は、水素経済や再生可能エネルギーからのエネルギー生成など将来の要求に著しく柔軟に適合する。
【0007】
特に魅力的な用途は、自動車、加熱システムまたは発電所において(廃)熱を電気エネルギーに変換するための使用である。これまでに利用されている熱エネルギーは、熱電発電機によって今でも少なくとも部分的に回収することができるが、既存の技術では10%をはるかに下回る効率しか実現されないため、エネルギーの大部分は依然として利用されていない。したがって廃熱の利用には、はるかに高い効率に向かう原動力もある。
【0008】
太陽エネルギーの電気エネルギーへの直接変換も、非常に魅力的となるはずである。パラボラトラフなどの集光器が、太陽エネルギーを熱電発電機へと集光することができ、この熱電発電機により電気エネルギーが生成される。
【0009】
しかしながら、ヒートポンプとして使用するためにはより高い効率も必要となる。
【0010】
熱電活性物質は、その効率に関して本質的に評価される。この点についての熱電材料の特性は、Z因子(性能指数)として知られているところである。
【0011】
【数1】

【0012】
式中Sはゼーベック係数、σは電気伝導率、Kは熱伝導率である。性能指数が最大値をとるように、熱伝導率が非常に低く、電気伝導率が非常に高く、ゼーベック係数が非常に大きい熱電材料が選択される。
【0013】
積S2・σは力率と称され、熱電材料の比較に役立つ。
【0014】
加えて、無次元の積Z・Tも多くの場合、比較の目的で報告される。これまでに知られている熱電材料のZ・Tの最大値は、最適温度で約1である。この最適温度を超えると、Z・Tの値は多くの場合1よりもはるかに低い。
【0015】
より正確な分析により、効率が下記式から計算されることが示される。
【0016】
【数2】

【0017】
式中、
【0018】
【数3】

【0019】
(Mat.Sci.and Eng.B29(1995年)228も参照のこと)
【0020】
したがって目的は、Zが最大値で実現可能な高次の温度差がある熱電材料を提供することである。固体物理学の観点からすると、ここでは多くの問題を克服しなければならない。
【0021】
高いσには、材料中で高い電子移動度が必要となる。すなわち、電子(またはp導電材料中では正孔)が原子芯に強く束縛されていてはいけない。電気伝導率σが高い材料は通常熱伝導率も高く(ヴィーデマン=フランツ則)、Zに好ましい影響を及ぼすことが許されない。現在使用されているBi2Te3などの材料には既に妥協がある。例えば、合金化によって電気伝導率をそれほどでないにせよ熱伝導率よりも低下させる。したがって、合金、例えば、(Bi2Te390(Sb2Te35(Sb2Se35またはBi12Sb23Te65の使用を選択する。
【0022】
高い効率の熱電材料では、好ましくはさらに境界条件を満たさなければならない。例えば、それら熱電材料は、作動条件下で何年にもわたって顕著な効率損失なしで機能することができるように、十分に熱安定がなければならない。これにより、高温でそれ自体が熱安定性を有し、安定的な相組成であって、隣接している接点材料への合金成分の拡散が無視できる相が必要となる。
【0023】
熱電モジュールにおいては、金属/半導体材料が電極(発生電流の輸送用)によって共に連結され、他の外部部品から電気的に絶縁されている。電極は、熱源から熱電材料への優れた熱流を可能とすべき電気絶縁体材料によって支持されている。通常、熱電モジュールでは、発生電圧の短絡を防止するために、電気絶縁特性を有する支持体として、例えばSiO2、Al23またはAlN製のセラミック板が組み込まれる。熱源から熱電材料への優れた熱流には、熱伝導性に優れた基板が極めて重要であり、部品の優れた連結には熱損失が最小限であることが極めて重要である。加えて、いくつかの用途、例えば、可動または振動部品を有する用途には、モジュールおよびその部品の優れた機械的安定性も必要となる。
【0024】
400℃を超える高温が、熱電材料の長期安定性に影響を及ぼす。昇華が劣化のメカニズムであり、これにより熱電デバイスの性能が急速に低下し、nまたはp半導体脚部の相方による汚染が生じ、その結果、熱電特性の、またモジュール性能の長期劣化が生じる。さらに、熱電材料は400℃を超える温度で酸化するが、これによりさらに熱電デバイスの効率および耐久性が低下する。したがって、熱電モジュールにおける熱電材料の酸化、昇華および汚染を最小限に抑えるシステムが必要となる。
【0025】
米国特許第2006/0090475号および第2006/0157101号は、熱電デバイスに混濁したエアロゲルを用いて昇華を抑制するためのシステムおよび方法に関する。昇華を抑制し、熱電モジュールにおいて断熱性を提供するために、不透明または反射成分で混濁させたエアロゲルが、熱電材料間の中間層として使用される。
【0026】
本発明者により、米国の文献に従って使用されるエアロゲルは、熱電材料の劣化に対する最善の保護を依然として提供しないことが見出された。エアロゲルを使用することによって昇華は抑制されたが、酸化、熱応力または湿気による劣化、化学的汚染を防止することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、湿気、酸素、化学薬品または熱による劣化からよりよく保護される熱電材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的は、熱電モジュールの一部を形成するための形状の熱電材料によって、本発明に従って実現される。この熱電材料は、湿気、酸素、化学薬品または熱による劣化を防止するために保護層でコーティングされている。
【0029】
層厚さは、コーティング材料よって必要に応じて調節することができる。この厚さは、湿気、酸素、化学薬品または熱による劣化の実質的な防止が実現されるように選択される。
【0030】
本発明による保護層は、すべての適切な保護層から選択することができる。好ましくは、保護層はセラミック材料またはセラミック材料とガラスとの混合物を含有し、そこに金属を混合することができる。あるいは、金属、金属合金、半金属、半導体、グラファイト、グラフェン、グラファン、導電性セラミックスおよびその組合せの層で熱電材料をコーティングすることもできる。層厚さは、最小限の電気および熱分路がもたらされるように選択される。金属コーティングの表面酸化および内側金属層を覆う酸化層の形成により、熱電脚部の保護が強化される。
【0031】
あるいは、金属もしくは金属合金、半金属、半導体、グラファイト、グラフェン、導電性セラミックスまたはこれらの組合せの内側層と、セラミック材料またはセラミック材料とガラスとの混合物を含有し、そこに金属を混合することができる外側コーティングとで熱電材料がコーティングされる。内側層は熱電材料と直接接触するが、外側層は内側層上をコーティングする。内側層の目的は、熱膨張係数の不一致により生じるクラックがより少ない外側層のより優れた付着力を実現することである。
【0032】
代替案として、金属とセラミックス(またはガラス)とを組み合わせて、熱電材料上の保護コーティングの熱膨張係数を調節することができる。例えば、金属粉末をセラミックまたはガラスと混合することができる。混合物中の金属の量は、好ましくは50%以下、より好ましくは20%以下である。
【0033】
その結果、熱電材料の膨張係数と同様の膨張係数、低い熱伝導率および低い電気伝導率を有するコーティング層によって、劣化から熱電材料が保護される。層の組成は、優れた付着力と、優れた熱および機械的安定性が得られるように選択される。
【0034】
本発明はまた、導電性接点によって直列に接続されている一連のp型およびn型の半導体を備える熱電モジュールに関し、導電性接点は、抵抗表面層によって導電性接点から電気的に絶縁されている、熱伝導率が中程度〜高い基板によって支持されている。この熱電モジュールにおいて、p型およびn型の半導体の熱電材料が、上記で定義したように保護層でコーティングされている。
【0035】
この目的はさらに、上記で定義したような熱電材料を作製する方法によって実現される。この方法は、例えば、電気泳動析出、溶射、スパッタリング、電気化学析出またはディップコーティングによって、熱電材料に保護コーティング層を塗布するステップを含む。さらに、層厚さにより十分な保護機能が確保され、また層厚さが好ましくは5%未満の熱分流器および1%未満の電気分流器を備えるのであれば、公知の薄膜析出技術を適用することもできる。条件を満たした保護層により、5000時間の動作時間中5%未満の昇華損失が確保されると考えられる。
【0036】
上記目的はさらに、ヒートポンプとして使用するための、着座家具、車両および建物の環境制御のための、冷蔵庫および(洗濯)乾燥機における、物質分離のためのプロセスにおける流れの同時加熱および冷却のための、熱源を利用するまたは電子部品を冷却するための発電機としての、上記熱電モジュールの使用によって実現される。
【0037】
上記目的はさらに、上記で定義したような少なくとも1つの熱電モジュールを備えるヒートポンプ、冷却器、冷蔵庫、(洗濯)乾燥機、熱源を利用するための発電機、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための発電機によって実現される。
【0038】
本発明によれば、特に、ガラスと組み合わせたセラミック材料により、熱電材料上に緻密で薄い電気絶縁バリア層が形成されることがわかった。本発明による熱電モジュールは、適切な強度特性を有し、最大600℃までの連続動作温度において安定である。
【0039】
好ましくは、セラミック材料またはガラスはんだ、またはガラスとセラミック材料との混合物のコーティングによって保護層が形成される。このセラミック材料は、優れた絶縁特性を有する幅広いセラミック材料から選択することができる。好ましくは、セラミック材料が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、ホウ素、ストロンチウム、バリウム、リン、鉛、テルリウム、ゲルマニウム、セレン、アンチモン、バナジウム、ハフニウム、タンタル、亜鉛、ランタン、イットリウム、マグネシウム、カルシウムの酸化物、またはこれらの混合物を含む。セラミック材料は、ガラス95〜5重量%に対してセラミック材料5〜95重量%の比率、好ましくはセラミック材料10〜90重量%およびガラス90〜10重量%、特にセラミック材料20〜80重量%およびガラス80〜20重量%でガラスとの混合物として使用することができる。さらに、保護層として塗布される配合物中の添加剤として、エアロゲルもうまく使用することができることがわかった。
【0040】
保護層は、金属もしくは金属合金、半金属、半導体、グラファイト、電気伝導性セラミックスまたはこれらの組合せ、好ましくは金属もしくは金属合金であっても、それらを含んでいてもよい。好ましくは、Ni、Mo、W、Fe、Au、Fe、Ti、Pd、Al、Ag、Siまたはこれらの合金からなる群から選択される。
【0041】
本発明のさらに好ましい一実施形態においては、金属もしくは金属合金、半金属、半導体、グラファイト、グラフェン、グラファン、電気伝導性セラミックスまたはこれらの組合せの内側層を、セラミック材料またはセラミック材料とガラスとの混合物の外側コーティングと組み合わせる。この外側層は、内側層の部分酸化によっても生成することができる(例えば、アルミニウムによる熱電材料のコーティングの後の部分酸化による緻密な酸化アルミニウム保護層)。
【0042】
保護層の厚さは、好ましくは10nm〜500μmの範囲である。
【0043】
セラミックまたはセラミックガラスでは、コーティング層の厚さが好ましくは1〜50μmである。金属コーティングでは、層厚さが好ましくは100nm〜10μm、より好ましくは500nm〜1μmである。
【0044】
本発明に従って好ましく使用されるセラミックガラスは、Al、Siおよび/またはPbの酸化物のようなセラミック添加剤を用いてガラスから作製することができる。ガラスにより均一なコーティングがもたらされ、組み込んだセラミック粒子により、クラックの形成なく熱膨張が可能となる。セラミックス(例えば、アルミナでは30W/mK)と比較してガラスの熱伝導率(1W/mK)が低いため、熱分路を最小限に抑えるためにガラスの割合が高いことが望ましい。セラミックスは、ガラスの膨張係数を向上させるために、特に膨張係数が異なることによるガラスコーティングと熱電材料との間の機械的応力を最小限に抑えるために添加する。好ましくは、セラミックガラスコーティングはアルカリ金属の酸化物をほんの少ししか、または全く含まない。これは、例えば、PbTe熱電材料にNaをドープしてp型半導体を得ることができるため、有利である。その結果、Na2Oのようなアルカリ金属セラミックスを含有するセラミックスを有するPbTe脚部のコーティングにより、熱電特性を劣化させるNaによりPbTeが汚染される。したがって、本発明によれば、保護層は好ましくはアルカリ金属を含まない。
【0045】
本発明の一態様による熱電材料の金属または金属合金コーティングは、通常の薄層蒸着法によって作製することができる。そのような方法の例として、電気化学析出、スパッタリング、MBE、PVD、CVD、化学析出、ディップコーティングおよび焼結、加圧成形および/またはエッチング/切断、ディップコーティング、スピンコーティング、材料上の薄板金属の圧延等がある。金属層1層のみを形成することも可能であるが、同じまたは異なる金属のいくつかの連続層を形成することもさらに可能である。例えば、Ptの薄層を堆積させて熱電材料脚を保護し、その後PbTe材料によりもPtにより付着するNi層を堆積させた。
【0046】
金属層は、熱電脚部の表面を完全に、または電極に電気的に接触していない脚部の一部のみを覆うことができる。より優れた酸化防止には、完全なコーティングが好ましい。
【0047】
金属層に代えて、TCO、ITO、AZO、ATO、FTOまたはドープTiO2のようなセラミック酸化物によって熱電材料をコーティングすることもできる。しかしながら、電気伝導性セラミックスよりも金属がより好ましい。
【0048】
本発明により、保護層の単純な塗布によって、熱電材料の保護が可能となる。熱電脚部を直接コーティングすることも、または作製したロッドをまずコーティングし、その後熱電材料脚部へと切断することもできる。保護層の塗布は、熱電材料脚部の任意の幾何学的形状で、例えば、立方形、板状、円筒形、環形状等で可能である。脚部のサイズは、熱電モジュールの特性用途の必要性に応じて調節することができる。
【0049】
本発明によれば、固体マトリックスに被覆熱電材料を埋め込む、固定するまたは挿入することが可能であり、マトリックス材料は熱伝導率および電気伝導率が低く、好ましくはセラミックス、ガラス、雲母、エアロゲル、またはこれらの材料の組合せである。このマトリックスによりモジュールの安定性がもたらされ、モジュール製造がより容易となり、加えて、湿気、酸素または化学薬品のような外部要因による劣化および汚染から熱電系(材料および接点)が保護される。
【0050】
このマトリックスを、2つの電気的に絶縁されている(金属)基板間に固定または挿入して(欧州特許出願第09157158.8号に開示されている発明に従って)完全な熱電モジュールを形成することができる。電極は絶縁されている基板上に、または熱電材料上に塗布することができる。このマトリックスは、熱伝導率が低い材料または材料混合物で構成され、熱がマトリックス中ではなく熱電材料中流れるようにする。上記材料が好ましいが、熱伝導率が低い任意の非導電性材料を使用することができる。
【0051】
熱電材料としては、本発明に従ってすべての熱電材料を使用することができる。典型的な熱電材料は、例えば、米国特許第5448109号、国際公開第2007/104601号、国際公開第2007/104603号に開示されている。
【0052】
熱電材料は、好ましくは半導体、金属、金属合金、半金属またはこれらの組合せである。半導体であるスクッテルダイト、クラスレート、ハーフホイスラー金属間化合物合金、ジントル相、アンチモン化亜鉛、カルコゲニド、シリコンゲルマニウムおよびテルル化鉛ベースとする材料が好ましい。
【0053】
それら自体は当業者に公知であって、例えば、国際公開第98/44562号、米国特許第5448109号、欧州特許出願公開第1102334号または米国特許第5439528号に記載されている方法によって、これら半導体材料を組み合わせて熱電発電機またはペルチェ配置を形成することができる。
【0054】
熱電発電機またはペルチェ配置の化学組成を変化させることによって、数多くの可能な用途において異なる要件を満たす異なる系を提供することが可能である。したがって、本発明による熱電発電機またはペルチェ配置により、これらの系の適用範囲が広がる。
【0055】
本発明はまた、
・ヒートポンプとしての、
・着座家具、車両および建物の環境制御のための、
・冷蔵庫および(洗濯)乾燥機において、
・吸収、乾燥、結晶化、蒸発、蒸留など、物質分離のためのプロセスにおける流れの同時加熱および冷却のための、
・太陽エネルギー、地熱、化石燃料の燃焼熱、車両および固定ユニットにおける廃熱源、液体物質の蒸発時におけるヒートシンク、生物学的熱源などの熱源の利用のための発電機としての、
・電子部品を冷却するための、
・例えば、自動車、加熱システムまたは発電所において熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための発電機としての、
本発明による熱電モジュールの使用に関する。
【0056】
本発明はさらに、少なくとも本発明による熱電モジュールを1つ備えるヒートポンプに、冷却器に、冷蔵庫に、(洗濯)乾燥機に、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための発電機に、または熱源を利用するための発電機に関する。
【0057】
本発明を、以下に記載の実施例を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0058】
(a)セラミックコーティング
粉末材料は、MEL Chemicals製のイットリア部分安定化酸化ジルコニウムおよび住友化学株式会社製の酸化アルミニウムであった。これら材料のアミルアルコール懸濁液を、振動エネルギーミルで粉砕した。PbTe熱電材料にEPDを行った。析出電位は30Vであった。約1分間析出を行い、その後被覆材料を浴から取り出し、乾燥させた。
【0059】
コーティング厚さは、析出物の重量および面積の測定値から決定し、約5μmであった。
【0060】
(b)ガラス−セラミック複合コーティング
ガラスを粉末に粉砕し、住友化学株式会社製のアルミナ粉末と混合し、アルコールに分散させることによって、EPDに適している複合ガラス−セラミック粉末懸濁液を生成した。この複合材料中で使用するガラスは、SiO2が46%、B23が25%、Al23が10%、Na2Oが4%、CaOが3%、SrOが6%、BaOが6%の組成を有するアルミノほう酸ナトリウムガラスであった。コーティングは均一で付着力を有し、テクスチャがなく、また細孔も微小クラックもなかった。ガラス/アルミナコーティングの厚さは7μmであった。
【0061】
(c)焼成ガラスコーティング
10gのガラスを粉末に粉砕し、20mlの水に分散させることによって、ガラス粉末の懸濁液を生成した。使用するガラスは、PbOが80重量%、SiO2が20%の近似組成の酸化鉛フリットであった。直径10mm×長さ10mmのPbTeの円筒形ペレットを、ガラス懸濁液中でディップコーティングし、700℃まで2分間加熱し、急冷させた。焼成したコーティングは、付着性を有し、完全に被覆されて視覚的には均一で、細孔も欠陥もなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電モジュールの一部を形成するための形状の熱電材料であって、湿気、酸素、化学薬品または熱による劣化を防止するために保護層でコーティングされている熱電材料。
【請求項2】
前記コーティングが、セラミック材料またはセラミック材料とガラスとの混合物を含有し、前記コーティングに金属を混合することができる、請求項1に記載の熱電材料。
【請求項3】
金属、金属合金、半金属、半導体、グラファイト、グラフェン、グラファン、電気伝導性セラミックスまたはこれらの組合せの層でコーティングされている、請求項1に記載の熱電材料。
【請求項4】
金属、金属合金、半金属、半導体、グラファイト、グラフェン、グラファン、電気伝導性セラミックスまたはこれらの組合せの内側層と、セラミック材料またはセラミック材料とガラスとの混合物を含有し、金属を混合することができる外側層とでコーティングされている、請求項1から3のいずれか1項に記載の熱電材料。
【請求項5】
前記セラミック材料が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、ホウ素、ストロンチウム、バリウム、リン、鉛、テルリウム、ゲルマニウム、セレン、アンチモン、バナジウム、ハフニウム、タンタル、亜鉛、ランタン、イットリウム、マグネシウム、カルシウムの酸化物、またはこれらの混合物を含む、請求項2または4に記載の熱電材料。
【請求項6】
前記金属が、Ni、Mo、W、Fe、Au、Fe、Ti、Pd、Al、Ag、Siまたはそれらの合金からなる群から選択される、請求項3または4に記載の熱電材料。
【請求項7】
前記保護層の厚さが10nm〜500μmの範囲にある、請求項1から6のいずれか1項に記載の熱電材料。
【請求項8】
導電性接点によって直列に接続されている一連のp型およびn型の半導体を備える熱電モジュールであって、前記導電性接点は、抵抗表面層によって前記導電性接点から電気的に絶縁されている、熱伝導率が中程度の基板から高程度の基板と接触し、前記p型およびn型の半導体の熱電材料が、請求項1から7のいずれか1項に記載の保護層でコーティングされている熱電モジュール。
【請求項9】
前記基板が金属、金属合金、半金属、半導体、グラファイト、セラミックスまたはこれらの組合せである、請求項8に記載の熱電モジュール。
【請求項10】
前記熱電材料が固体マトリックスに埋め込まれ、固定され、または挿入され、マトリックス材料は熱伝導率および電気伝導率が低く、好ましくはセラミックス、ガラス、雲母、エアロゲル、またはこれらの材料の組合せである、請求項8または9に記載の熱電モジュール。
【請求項11】
前記熱電材料に前記保護コーティング層を塗布するステップを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の熱電材料を作製する方法。
【請求項12】
ヒートポンプとして使用するための、着座家具、車両および建物の環境制御のための、冷蔵庫および(洗濯)乾燥機における、物質分離のためのプロセスにおける流れの同時加熱および冷却のための、熱源を利用する発電機としての、または電子部品を冷却するための、請求項8から10のいずれか1項に記載の熱電モジュールの使用法。
【請求項13】
請求項8から10のいずれか1項に記載の熱電モジュールを少なくとも1つ備える、ヒートポンプ、冷却器、冷蔵庫、(洗濯)乾燥機、熱源を利用するための発電機、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための発電機。

【公表番号】特表2012−523110(P2012−523110A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502636(P2012−502636)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054199
【国際公開番号】WO2010/115776
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】