説明

保護薄層で被覆された光触媒層を備えた基材、特にガラス基材

本発明は、光触媒性および汚れ防止性を持ち二酸化チタン(TiO)を主体とする層を少なくとも一部に備えた基材を含む構造体に関する。この構造体の特徴は、光触媒層にシリコンおよび酸素を含有する無孔質の薄層が被覆されており、該薄層がTiOの光触媒活性を維持しつつ化学的および機械的に光触媒層を保護することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる汚れ防止機能または自浄機能を付与するための光触媒被膜を備えたガラス基材、ガラス・セラミック基材、プラスチック基材などの基材に関する。
【0002】
これらの基材の主要な用途の1つはグレージングであり、これは多種多様な状況で適用され、例えば実利性を狙ったグレージングから家庭用電気器具まで、自動車のグレージングから建築用のグレージングまでと様々である。
【0003】
更に、ミラータイプ(家庭用ミラーやドライブ用ミラー)の反射性グレージングや、照明付きタイプの不透明化グレージングにも適用される。
【0004】
同様に、本発明は、特に建築材料(金属、タイルなど)として用いられるセラミック基材のような不透明基材にも適用される。望ましくは、基材の性質に係らず、実質的に平坦な基材や僅かに湾曲した基材にも適用される。
【背景技術】
【0005】
光触媒被膜は、特にアナターゼ型に結晶化した酸化チタン系の光触媒被膜について、既に検討が進められている。これは有機物や微生物に起因する汚れをUV照射により分解する能力が非常に有用である。更に親水性を持つことが多いので、水スプレーによって、あるいは戸外グレージングの場合には降雨によって、鉱物系の汚れを除去できる。
【0006】
このタイプの被膜は、汚れ防止機能、殺菌性、殺藻性を発揮するものについて、例えばWO97/10186に幾つかの実例が記載されている。
【0007】
光触媒層は保護されていないと時間経過に伴い損耗し、活性が失われたり、構造体の工学的品質が失われたり(曇りや着色が発生)、更には層の剥離さえも起きる。
【0008】
光触媒層の厚さが減少すると、層の部分劣化により起き易い着色は少なくなり、時間経過に伴う変色は少なくなる。しかし。厚さ減少は層の性能にとって致命的になる。
【0009】
そのため、光触媒層を機械的および化学的に保護する必要があり、光触媒層の機能が完全に維持されるように層の厚さを薄くする必要がある。
【0010】
ヨーロッパ特許公開公報EP−A−0820967には、透明基材と、該透明基材上に形成した光触媒の透明膜と、該光触媒膜に形成され親水性の表面を持つ透明多孔質鉱物酸化物膜とを備えた曇り防止素子が開示されている。
【0011】
特開2002−047032号公報には、光触媒膜で被覆した基材を製造する方法が開示されており、アナターゼ結晶構造を持つTiOの5〜10nmのナノ粒子をスプレーガンで散布し、加熱し、スパッタリングにより堆積させ、SiO膜でTiO粒子を被覆する。
【0012】
上記いずれの構造も十分な効果は得られなかった。その理由は先ず第一に、保護被膜が気孔を含み多孔質であるため光触媒層に対する保護効果が不十分だからであり、第二に、光触媒材料が不十分なために連続層が形成されなかったからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願第1発明は、二酸化チタン(TiO)基の汚れ防止光触媒層を表面の少なくとも一部に備えた基材を含む構造体において、
シリコンおよび酸素を含有する非多孔質薄層が、上記光触媒層を被覆し、上記TiOの光触媒作用を維持し、かつ下層の該光触媒層を機械的および化学的に保護する被覆能力を持つことを特徴とする構造体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
二酸化チタン基の層を形成する条件、すなわち出発生成物、任意の溶媒、熱処理などは、光触媒汚れ防止機能を得るために公知の方法で調整する必要がある。
【0016】
望ましくは、上記のシリコンおよび酸素を含有する薄層は連続膜である。特に、シリコンおよび酸素を含有する薄層が、下層の上記光触媒層の表面凹凸に適合していることが有利である。
【0017】
望ましくは、シリコンおよび酸素を含有する薄層が、SiO、SiOC、SiON、SiOxでx<2、SiOCHのうちから選択した少なくとも1種のシリコン・酸素化合物の層であり、特に望ましくはSiOである。
【0018】
本発明の構造の有利な形態によれば、シリコンおよび酸素を含有する薄層が、AlおよびZrOから選択した少なくとも1種の化合物を伴う少なくとも1種のシリコン酸素化合物の層であり、上記化合物が化学的に不活性であって加水分解耐性を高める。Alの役割は、周知のように不活性な酸化物として化学的な耐性を増加させる。
【0019】
一般に、〔Alおよび/またはZr〕/Siの原子比は1以下であり、望ましくは、Al/Si比は0.03〜0.5、特に0.05〜0.1であり、Zr/Si比は0.05〜0.4である。
【0020】
シリコンおよび酸素を含有する薄層の厚さは、15nm以下であってよく、特別に10nm以下、特に8nm以下、望ましくは5nm以下、または約5nm、特に2〜3nm以下である。
【0021】
上記の薄層は、潤滑効果を持つと共に、掻き疵や摩耗に対する抵抗力を高めるという機械的な役割がある。
【0022】
しかし、上記の機械的および化学的な耐性の向上は、光触媒活性の低下という損害を伴って得られるわけではない。その理由は、最終的に得られるTiO基層の光触媒活性はSiO被覆層でマスクされると低下すると予想されるけれども、SiOが親水性であるため汚れがSiOの均一膜中に希釈され、TiOによる汚れの分解が容易になるので、TiO基層の光触媒活性は維持され、あるいは高まりさえするからである。
【0023】
二酸化チタン基層は、TiO単独から成るか、または、Nと、Nb、Ta、Vのような5価のカチオンと、Feと、Zrとから選択した少なくとも1種のドーパントをドープしたTiOから成る。一実施形態においては、このTiO基層は、ゾル・ゲル法または化学蒸着などの熱分解法または室温真空スパッタリング、必要に応じてマグネトロンスパッタリングおよび/またはイオンビームスパッタリング、によって堆積させられており、スパッタリングは金属またはx<2であるTiOxのターゲットを用いて酸化雰囲気中で行なうかTiOターゲットを用いて不活性雰囲気中で行われていて、該スパッタリングにより生成したTiOは熱処理を施されて光触媒活性を持つ結晶状態となっている。
【0024】
望ましくは、シリコンおよび酸素を含有する薄層は、室温真空スパッタリングにより、必要に応じてマグネトロンスパッタリングおよび/またはイオンビームスパッタリングにより、Alを8at%ドープしたSiをターゲットとして用い、Al/O雰囲気中で、圧力0.2Paにて、堆積させられている。
【0025】
一実施形態において、TiO基上層がヘテロエピタキシャル成長によりアナターゼ型結晶として生成するのを促進する結晶構造を持つ下地層が該TiO層の直下にあり、該下地層は特にATiOから成り、Aがバリウムまたはストロンチウムである。この下地層の厚さは重要ではなく、例えば10nm〜100nmであってよい。
【0026】
例えば、基材は、平面状または曲面状の単層または積層したガラス、ガラス・セラミックまたはポリカーボネートのような硬質熱可塑性プラスチックのシートから成るか、または、ガラス・セラミックファイバーから成り、該シートまたはファイバーには、必要に応じて、上記TiO基層の堆積前または該TiO基層のヘテロエピタキシャル成長による結晶化を促進する層の堆積前に少なくとも1層の他の機能層を付与されている(1層以上の場合、多層積層構造と呼ぶ)。
【0027】
シートの適用は上述したとおりである。ファイバーの適用は、空気や水の濾過用や殺菌用がある。
【0028】
機能層または他の機能層は、光学機能性を持つ層、熱制御層、導電層から選択され、また、機材がガラスまたはガラス・セラミックで作られている場合には、ガラスまたはガラス・セラミックからのアルカリ金属の移動に対するバリアとして作用する層からも選択される。
【0029】
光学機能性を持つ層としては、反射防止層、光濾過層、彩色層、散乱層などがある。例えば、SiO、Si、TiO、SnO、ZnOが該当する。
【0030】
熱制御層としては、特に太陽熱制御層または低e(低放射率)層がある。
【0031】
導電層としては、加熱層、アンテナ層、帯電防止層などがあり、導電ワイヤのアレーもこれらに含まれる。
【0032】
基材がガラスまたはガラス・セラミックで作られている場合には、ガラスまたはガラス・セラミックからのアルカリ金属の移動に対するバリアとして作用する少なくとも1層の機能層を、光触媒層の下に、または光触媒層の結晶化を促進する下地層がある場合には該下地層の下に、配置することができる。他の機能層(光学機能層、熱制御層、導電層)を設ける場合には、上記のバリア層の上に設ける。
【0033】
アルカリ金属は、温度が600℃を超えると移動し易い。後続の熱処理の際にアルカリ金属に対するバリア層となる層が知られており、例えばSiO、SiOC、SiOxNy、Siの層で、厚さが例えば5nm以上あるいは10nm以上、多くの場合に50nm以上であるものが国際公開公報WO02/24971に記載されている。
【0034】
一例として、ガラスまたはガラス・セラミック基材、特にシート状の基材に、ガラスまたはガラス・セラミックからのアルカリ金属の移動に対するバリアとなる層を付与し、次いで1層、2層、または3層の光学機能層を設ける。
【0035】
本願第2発明は、上述したような構造体の製造方法であり、ガラスまたはガラス・セラミックまたは硬質ポリカーボネートプラスチックで作られたシート状の基材上に、またはガラスファイバーまたはガラス・セラミックファイバー上に、任意にドープしたTiO層を堆積させ、該堆積条件では該任意にドープしたTiO層に光触媒性が付与されなかった場合には熱処理を施して光触媒性を付与し、次いで、上述したSiおよび酸素を含有する薄層を該光触媒層上に堆積させることを特徴とする。
【0036】
特に、上記TiO層および上記シリコンおよび酸素を含有する薄層の堆積を、連続して、室温で、真空スパッタリングにより、必要に応じてマグネトロンスパッタリングおよび/またはイオンビームスパッタリングにより、同じチャンバ内で行い、該堆積は下記条件で行い:
◇ 上記TiO基層の堆積には、スパッタリング電源はACまたはDC電源、圧力は1〜3mbar、酸素/不活性ガス(アルゴン)雰囲気中、Tiターゲットまたはx=1.5〜2であるTiOxターゲットを用い、
◇ 上記シリコンおよび酸素を含有する薄層の堆積には、スパッタリング電源はAC電源、圧力は0.1〜1.0Pa、Ar/O雰囲気中、高シリコン含有量のターゲットを用い、
任意に、上記TiO層の堆積前に、該TiO層がヘテロエピタキシャル成長によりアナターゼ型に結晶化するのを促進する下地層を堆積させる。
【0037】
シリコンおよび酸素を含有する無孔質薄層を堆積させる条件は当業者に公知であり、特に低圧で高出力条件(Thornton diagram)である。
【0038】
ガラス基材またはガラス・セラミック基材に被覆を行なう場合に、上記TiO層またはこれに随伴する上記下地層を付与する前に、ガラスまたはガラス・セラミック中のアルカリ金属の移動に対するバリアとなる少なくとも1層を上記基材に堆積させ、次いで任意に焼鈍処理または強靭化処理を、上記TiO層およびその上の上記シリコン基層の堆積の完了後に行い、該焼鈍処理は250℃〜550℃、望ましくは350℃〜500℃で行い、該強靭化処理は600℃以上で行う。
【0039】
更に本発明の別の実施形態として、アルカリ金属の移動に対するバリアとなる上記少なくとも1層を任意に付与した後、上記TiO層またはこれに随伴する上記下地層を付与する前に、光学機能性を持つ層、熱制御層、導電層のうちの少なくとも1つの機能層を堆積させ、この機能層の堆積は、望ましくは真空スパッタリングにより、必要に応じてマグネトロンスパッタリングおよび/またはイオンビームスパッタリングにより行なう。
【0040】
本発明は更に、上記規定した本発明の構造体を少なくとも1つの面に備えた単層または多層のグレージング、特に自動車用または建造物用のグレージングであって、上記少なくとも1つの面が外面であるか、更に任意に内面でもある、単層または多層のグレージングにも関する。
【0041】
上記のグレージングの面のうち、本発明の構造体を備えていない面は、他の機能層を少なくとも1つ備えていてもよい。
【0042】
このグレージングは「自浄」グレージングとして適用でき、特に、曇り防止用、結露防止用、汚れ防止のグレージングや、二重グレージングタイプの建築用グレージング、あるいは、自動車のフロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、ドライビングミラーなどに用いる自動車用グレージング、更に、列車、航空機、船舶用のグレージング、また一般用グレージングとして、水族館、店舗ウィンドウ、温室、内装設備、都市設備(バスシェルター、広告パネルなど)、ミラー類、ディスプレー用スクリーン(コンピュータ、テレビ、電話)、更に、電気的に制御可能なグレージングとしてエレクトロクロミックグレージング、液晶グレージング、エレクトロルミネセンスグレージング、光起電力グレージングとして適用できる。
【0043】
以下に、本発明の範囲を限定しない実施例により本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0044】
〔実施例1aおよび1b(本発明例):ガラス/Al:SiO/TiO/Al:SiO積層構造〕
厚さ4mmのガラスシート上に下記の層を順次堆積した。
【0045】
◇ AlドープしたSiO下地層(厚さ150nm)
◇ TiO層(厚さ100nm)実施例1a、または(厚さ20nm)実施例1b
◇ AlドープしたSiOカバー層(厚さ2nm)
Al:SiO下地層は、Al:Siターゲット(Al含有量8at%)を用い、出力2000W、Arガス流量15sccm、Oガス流量15sccm、圧力2×10−3mbarで堆積させた。
【0046】
TiO層は、TiOxターゲットを用い、出力2000W、Arガス流量200sccm、Oガス流量2sccm、圧力23×10−3mbarで堆積させた。
【0047】
Al:SiOカバー層は、Al:Siターゲット(Al含有量8at%)を用い、出力1000W、Arガス流量15sccm、Oガス流量15sccm、圧力2×10−3mbarで堆積させた。
【0048】
〔実施例2および2b(比較例):ガラス/Al:SiO/TiO積層構造〕
実施例1a、1bと同様の積層構造を作製した。ただし、Al:SiOカバー層は省略した。
【0049】
〔実施例3(比較例):ガラス/Al:SiO/TiO/Al:Si積層構造〕
実施例1a、1bと同様の積層構造を作製した。ただし、Al:SiOカバー層は省略し、Al:Si(厚さ2nm)を堆積させた。この堆積は、Al:Siターゲット(Al含有量8at%)を用い、出力1000W、Arガス流量18sccm、Nガス流量12sccm、圧力2×10−3mbarで行なった。
【0050】
〔実施例4:オペル試験での耐性〕
実施例1aの積層構造体は実施例2aの積層構造体に対して、オペル試験(積層構造体の表面をフエルトパッドで乾式摩擦する試験)に対する耐性が飛躍的に向上した。
【0051】
実施例2aに対して実施例3は何ら変化が認められなかった。
【0052】
更に、実施例1a、2a、3について、上記のオペル試験の前と後で、ステアリン酸光崩壊試験(SAT)により、TiO層の光触媒活性を評価し、その後、国際公報WO00/75087に記載されている赤外伝播を行なった。
【0053】
結果を表1に示す。この表には、オペル試験により起きた層側面での反射における比色変化(ΔE)、オペル試験で発生した曇り現象、オペル試験後の層剥離の観察結果についても示してある。
【0054】
【表1】

【0055】
〔実施例5:テーバ試験〕
実施例1bの積層構造体は実施例2bの積層構造体に対して、テーバ試験耐性(摩耗抵抗=摩耗ホイールの通過に対する抵抗)が向上した。
【0056】
テーバ試験で500回転後に、実施例2bの層に剥離が生じた。実施例1bの積層構造体は、200回転後に0.8%の曇り現象が、500回転後に2%の曇り現象が観察された。
【0057】
〔実施例6:NSF試験〕
実施例1aの積層構造体は実施例2aの積層構造体に比べて、NSF(中性塩霧)試験に対する耐性が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン(TiO)基の汚れ防止光触媒層を表面の少なくとも一部に備えた基材を含む構造体において、
シリコンおよび酸素を含有する無孔質薄層が、上記光触媒層を被覆し、上記TiOの光触媒作用を維持し、かつ下層の該光触媒層を機械的および化学的に保護する被覆能力を持つことを特徴とする構造体。
【請求項2】
請求項1において、上記シリコンおよび酸素を含有する薄層が連続膜であることを特徴とする構造体。
【請求項3】
請求項1または2において、上記シリコンおよび酸素を含有する薄層が、下層の上記光触媒層の表面凹凸に適合していることを特徴とする構造体。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項において、上記シリコンおよび酸素を含有する薄層が、SiO、SiOC、SiON、SiOxでx<2、SiOCHのうちから選択した少なくとも1種のシリコン・酸素化合物の層であることを特徴とする構造体。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項において、上記シリコンおよび酸素を含有する薄層が、AlおよびZrOから選択した少なくとも1種の化合物を伴う少なくとも1種のシリコン酸素化合物の層であることを特徴とする構造体。
【請求項6】
請求項5において、〔Alおよび/またはZr〕/Siの原子比が1以下であることを特徴とする構造体。
【請求項7】
請求項5または6において、Al/Si比が0.03〜0.5、特に0.05〜0.1であることを特徴とする構造体。
【請求項8】
請求項5から7までのいずれか1項において、Zr/Si比が0.05〜0.4であることを特徴とする構造体。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項において、上記シリコンおよび酸素を含有する薄層の厚さが、15nm以下、特別に10nm以下、特に8nm以下、望ましくは5nm以下、または約5nm、特に2〜3nm以下であることを特徴とする構造体。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項において、上記ニ酸化チタン基層が、TiO単独から成るか、または、Nと、Nb、Ta、Vのような5価のカチオンと、Feと、Zrとから選択した少なくとも1種のドーパントをドープしたTiOから成ることを特徴とする構造体。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項において、上記TiO基層が、ゾル・ゲル法または化学蒸着などの熱分解法または室温真空スパッタリング、必要に応じてマグネトロンスパッタリングおよび/またはイオンビームスパッタリング、によって堆積させられており、スパッタリングは金属またはx<2であるTiOxのターゲットを用いて酸化雰囲気中で行なうかTiOターゲットを用いて不活性雰囲気中で行われていて、該スパッタリングにより生成したTiOは熱処理を施されて光触媒活性を持つ結晶状態となっていることを特徴とする構造体。
【請求項12】
請求項1から11において、上記シリコンおよび酸素を含有する薄層が、室温真空スパッタリングにより、必要に応じてマグネトロンスパッタリングおよび/またはイオンビームスパッタリングにより、Alを8at%ドープしたSiをターゲットとして用い、Al/O雰囲気中で、圧力0.2Paにて、堆積させられていることを特徴とする構造体。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項において、上記TiO基上層がヘテロエピタキシャル成長によりアナターゼ型結晶として生成するのを促進する結晶構造を持つ下地層が該TiO層の直下にあり、該下地層は特にATiOから成り、Aがバリウムまたはストロンチウムであることを特徴とする構造体。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項において、上記基材が、平面状または曲面状の単層または積層したガラス、ガラス・セラミックまたはポリカーボネートのような硬質熱可塑性プラスチックのシートから成るか、または、ガラス・セラミックファイバーから成り、該シートまたはファイバーには、必要に応じて、上記TiO基層の堆積前または該TiO基層のヘテロエピタキシャル成長による結晶化を促進する層の堆積前に少なくとも1層の他の機能層を付与されていることを特徴とする構造体。
【請求項15】
請求項14において、上記機能層または上記他の機能層は、光学機能性を持つ層、熱制御層、または導電層のうちから選択されるか、または、上記基材がガラスまたはガラス・セラミックで作られている場合には上記ガラスまたはガラス・セラミックからのアルカリ金属の移動に対するバリアとなる層からも選択されることを特徴とする構造体。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載の構造体を製造する方法において、ガラスまたはガラス・セラミックまたは硬質ポリカーボネートプラスチックで作られたシート状の基材上に、またはガラスファイバーまたはガラス・セラミックファイバー上に、任意にドープしたTiO層を堆積させ、該堆積条件では該任意にドープしたTiO層に光触媒性が付与されなかった場合には熱処理を施して光触媒性を付与し、次いで、上記Siおよび酸素を含有する薄層を該光触媒層上に堆積させることを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項17】
請求項16において、上記TiO層および上記シリコンおよび酸素を含有する薄層の堆積を、連続して、室温で、真空スパッタリングにより、必要に応じてマグネトロンスパッタリングおよび/またはイオンビームスパッタリングにより、同じチャンバ内で行い、該堆積は下記条件で行い:
◇ 上記TiO基層の堆積には、スパッタリング電源はACまたはDC電源、圧力は1〜3mbar、酸素/不活性ガス(アルゴン)雰囲気中、Tiターゲットまたはx=1.5〜2であるTiOxターゲットを用い、
◇ 上記シリコンおよび酸素を含有する薄層の堆積には、スパッタリング電源はAC電源、圧力は0.1〜1.0Pa、Ar/O雰囲気中、高シリコン含有量のターゲットを用い、
任意に、上記TiO層の堆積前に、該TiO層がヘテロエピタキシャル成長によりアナターゼ型に結晶化するのを促進する下地層を堆積させることを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項18】
請求項16または17において、ガラス基材またはガラス・セラミック基材に被覆を行なう場合に、上記TiO層またはこれに随伴する上記下地層を付与する前に、ガラスまたはガラス・セラミック中のアルカリ金属の移動に対するバリアとなる少なくとも1層を上記基材に堆積させ、次いで任意に焼鈍処理または強靭化処理を、上記TiO層およびその上の上記シリコン基層の堆積の完了後に行い、該焼鈍処理は250℃〜550℃、望ましくは350℃〜500℃で行い、該強靭化処理は600℃以上で行うことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項19】
請求項16から18までのいずれか1項において、アルカリ金属の移動に対するバリアとなる上記少なくとも1層を任意に付与した後、上記TiO層またはこれに随伴する上記下地層を付与する前に、光学機能性を持つ層、熱制御層、導電層のうちの少なくとも1つの機能層を堆積させ、この機能層の堆積は、望ましくは真空スパッタリングにより、必要に応じてマグネトロンスパッタリングおよび/またはイオンビームスパッタリングにより、行なうことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項20】
請求項1から15までのいずれか1項記載の構造体を少なくとも1つの面に備えた単層または多層のグレージング、特に自動車用または建造物用のグレージングであって、上記少なくとも1つの面が外面であるか、更に任意に内面でもあることを特徴とする単層または多層のグレージング。

【公表番号】特表2007−512154(P2007−512154A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536149(P2006−536149)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050531
【国際公開番号】WO2005/040056
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】