説明

信号伝送装置

【課題】伝送線路の受信側端部において、適正な波形の信号の受信を可能にする。
【解決手段】電子内視鏡挿入部先端に内視鏡画像撮影用の撮像素子を配置する。この撮像素子を含む負荷回路31に、負荷回路31の入力インピーダンスとは異なる特性インピーダンスZoを有する伝送線路30の一端を接続する。電子内視鏡の先端部から、プロセッサ装置との接続に用いるコネクタ部にまで配設された伝送線路30の他端に撮像素子の駆動パルス信号を出力するドライブ回路20を接続する。ドライブ回路20に低出力インピーダンスのリニア増幅器33を設け、リニア増幅器33と伝送線路30の間にR=Zoのマッチング回路(抵抗)を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを通して電気信号を伝送するための信号伝送装置に関し、特に電子内視鏡の撮像素子に係る信号伝送に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡では、挿入部先端に設けられた撮像素子からの画像信号をスコープ基端部に接続されるプロセッサ装置へと送り、所定の画像処理を施した後、モニタに表示する。挿入部先端は極めてスペースが限られるため、撮像素子を駆動するための駆動回路は、プロセッサ装置やスコープ基端部側の適当な場所(プロセッサ装置への接続を行うコネクタ部など)に配置される。このため、駆動信号は例えば数メートルにおよぶ信号ケーブルを通して撮像素子へと送られる。また、検出された画像信号も、同様に数メートルの信号ケーブルを介してプロセッサ装置やスコープ基端部に配置されたアナログフロントエンド回路等へと送られる。
【0003】
信号伝送においては、一般にインピーダンスマッチングの問題が発生するが、特に電子内視鏡においては伝送距離が長いため反射や損失による波形の劣化の問題が顕著となる。このようなことから、電子内視鏡では、撮像素子側に、インピーダンスを整合させるためのマッチング回路を設け、駆動回路側には、ドライブ能力の高い(多くの電流を流せる)スイッチ回路を抵抗とコンデンサで構成されたダンピング回路とともに設けたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−045071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、撮像素子側におけるインピーダンスマッチングは簡単ではなく、必ずしも反射を十分に抑えられるとは言えない。このため、駆動信号には反射波が重畳して波形に歪みが発生する。また、駆動回路側に設けられるダンピング回路は、信号ケーブルの長さに応じて定数を変更する必要があるため、種類の異なる電子内視鏡毎にダンピング回路のコンデンサや抵抗を変更する必要がある。更に、伝送距離が数メートルにおよぶため伝送路の損失による波形劣化も存在する。
【0006】
本発明は、伝送線路の受信側端部において、適正な波形の信号の受信が可能な簡略な構成の信号伝送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の信号伝送装置は、所定の特性インピーダンスを有する伝送線路と、伝送線路の受信側端部に接続され、入力インピーダンスが特性インピーダンスと整合しない負荷回路と、伝送線路の送信側端部に接続される信号送信回路とを備え、信号送信回路は、低出力インピーダンス回路と、伝送線路の特性インピーダンスと整合を行うマッチング回路とを備え、マッチング回路は低出力インピーダンス回路と伝送線路との間に配置されることを特徴としている。
【0008】
信号送信回路は、伝送線路の伝送損失により受信側端部に現れる信号波形の歪みを補償するように、信号送信回路において出力信号の波形の整形行う機能を備えることが好ましく、波形の整形には、例えば信号の高域成分を強調する特性を持つ回路が用いられる。
【0009】
負荷回路は撮像素子を備え、信号送信回路からは撮像素子の駆動パルス信号が出力される。また、信号伝送装置は、例えば電子内視鏡のスコープ本体において用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、伝送線路の受信側端部において、適正な波形の信号の受信が可能な簡略な構成の信号伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である伝送装置を用いた電子内視鏡の構成を示す模式的な外観図である。
【図2】図1に示されたスコープ本体の電気的および光学的な構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の伝送経路の構成を示すブロック図である。
【図4】伝送線路の両端においてインピーダンスマッチングが採られていないときの信号反射の様子を模式的に示す。
【図5】図4のリニア増幅器の出力端Pからステップ信号Voutが出力されたときの端部P1、P2における電圧Vmo、VLの時系列変化を示したグラフである。
【図6】本実施形態の信号伝送装置における信号反射の様子を模式的に示す。
【図7】図6のリニア増幅器の出力端Pからステップ信号Voutが出力されたときの端部P1、P2における電圧Vmo、VLの時系列変化を示したグラフである。
【図8】端部P1における反射が存在する場合と、存在しない場合の各々について、一定周期のパルス信号(Vout)に対する端部P1および端部P2の電圧波形Vmo、VLの時系列変化を模式的に示したグラフである。
【図9】信号送信回路のインピーダンスマッチングを考慮した第2実施形態の信号伝送装置のブロック図である。
【図10】インピーダンスマッチングは考慮しているが、出力パルス信号に波形整形が行われていない場合に、伝送損失による影響を受けた点P、P1、P2における電圧Vout、Vmo、VLの波形を示すグラフである。
【図11】インピーダンスマッチングと伝送損失を考慮した本実施形態の波形整形が出力パルス信号に施されたときの電圧Vout、Vmo、VLの波形を示すグラフである。
【図12】第2実施形態の変形形のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である伝送装置を用いた電子内視鏡の構成を示す模式的な外観図である。
【0013】
電子内視鏡システムは、スコープ本体10と、スコープ本体10が接続され、各種画像処理を行うとともに、スコープ本体10に照明光を供給するプロセッサ装置と、プロセッサ装置に接続され、スコープ本体10で撮影された映像などを表示するモニタ装置などから一般に構成される。図1には、スコープ本体10の外観が示される。
【0014】
スコープ本体10は、体内や管孔内に挿入される管状の挿入部11と、挿入部11の基端部に設けられる操作部12と、操作部12をプロセッサ装置(図示せず)に連結するためのコネクタ部13と、操作部12とコネクタ部13の間を連絡する連結管14とから構成される。従来周知のように、挿入部11の先端部11Aには撮像素子(図2参照)が設けられ、先端部11Aから照射される照明光により、被写体の映像が撮像素子により撮像される。なお、照明光は通常スコープ本体10内に配設されたライトガイドを通してプロセッサ装置から供給される。
【0015】
図2は、図1に示されたスコープ本体10の電気的、光学的な構成を模式的に示すブロック図である。
【0016】
本実施形態のコネクタ部13には、例えばI/Oポート15、制御回路16、システムクロックジェネレータ17、信号処理回路(DSP)18、電源回路19、ドライブ回路20、アナログフロントエンド(AFE)25などが設けられる。コネクタ部13は、I/Oポート15を介してプロセッサ装置(図示せず)に電気的に接続され、I/Oポート15には、制御回路16、システムクロックジェネレータ17、信号処理回路(DSP)18、電源回路19等が接続される。
【0017】
制御回路16はスコープ本体10全般の制御を行い、システムクロックジェネレータ17は、スコープ本体10内で必要とされる様々なクロックパルスの生成を行う。例えば、システムクロックジェネレータ17からは、ドライブ回路20や、信号処理回路(DSP)18、更にはアナログフロントエンド(AFE)25などにも、それぞれ必要とされるタイミングの信号が出力される。
【0018】
挿入部11(図1参照)の先端部11Aには、CCDやCMOSなどの撮像素子21が設けられる。被写体像は、撮像レンズ22を介して撮像素子21において撮像される。撮像素子21は、連絡管14、操作部12、挿入部11を通して配線される信号ケーブル(センサクロック伝送経路)23を介してドライブ回路20に接続され、垂直同期信号、水平同期信号などの駆動パルス信号は、ドライブ回路20から伝送される。なお、信号ケーブルには例えば所定の特性インピーダンスを有する同軸ケーブルが用いられる。
【0019】
撮像素子21で撮像された画像信号は、挿入部11、操作部12、連絡管14を通して配線される信号ケーブル(映像信号伝送経路)24を介して、コネクタ部13のアナログフロントエンド(AFE)25へと伝送される。アナログフロントエンド25は、例えば初段増幅回路、相関二重サンプリング回路、ADコンバータを備え、所定のタイミングで画像信号をサンプリングし、信号ケーブル24を通して受信されたアナログの画像信号をデジタル信号に変換する。アナログフロントエンド25においてデジタル化された映像信号は、信号処理回路(DSP)18において信号処理が施され、I/Oポート15を介してプロセッサ装置(図示せず)へと出力される。
【0020】
なお、撮像素子21には、電源回路19から電力が供給される。また、照明光は、プロセッサ装置(図示せず)内に設けられた光源部から供給され、コネクタ部13から連絡管14、操作部12、挿入部11を通して先端部11Aまで配設されるライトガイド26を介して先端部11Aにまで伝送され、先端部11Aに設けられた照明レンズ27を介して照射される。
【0021】
次に図3を参照して第1実施形態の信号伝送装置について説明する。図3において、伝送線路30は、センサクロック伝送経路23に含まれる特性インピーダンスZoの伝送線路である。伝送線路30の一端は、撮像素子21を含む負荷回路31に接続され、他端はドライブ回路20に接続される。第1実施形態において、ドライブ回路20は、マッチング回路32およびリニア増幅器などの低出力インピーダンス回路33から構成される。
【0022】
負荷回路31には、伝送線路30のインピーダンスに整合した終端回路は設けられず、インピーダンスマッチングは行われない。一方、ドライブ回路20では、伝送線路30の特性インピーダンスZoに整合するマッチング回路32(抵抗R=Zo)が、伝送線路30と低出力インピーダンス回路33の間の低出力インピーダンス回路33に近接した位置に配置される。
【0023】
すなわち、システムクロックジェネレータ17のロジック回路から送出された撮像素子21の駆動パルス信号は、低出力インピーダンスのリニア増幅器33において増幅された後、マッチング回路32を介して伝送線路30へと出力され、伝送線路30を通して撮像素子21を含む負荷回路31へと伝送される。
【0024】
次に図4〜図8を参照して、第1実施形態の信号伝送装置を用いたときの作用および効果について説明する。
【0025】
図4は、伝送線路30の両端においてインピーダンスマッチングが行われていないときの信号反射の様子を模式的に示している。なお、図4の例では、撮像素子21を含む負荷回路34のインピーダンスZLが伝送線路30の特性インピーダンスZoよりも大きく、ドライブ回路35のマッチング回路36のインピーダンスZmが特性インピーダンスZoよりも小さい場合を想定している(ZL>Zo>Zm)。
【0026】
したがって、伝送線路30の両端であるドライブ回路35(マッチング回路36)側の端部P1と、負荷回路34側の端部P2では、それぞれ信号の反射が繰り返し発生する。なお、図4の例では、端部P1での反射係数ρm=(Zm−Zo)/(Zm+Zo)であり、端部P2での反射係数ρL=(ZL−Zo)/(ZL+Zo)であり、Zo>Zmであることから、端部P1における反射では、反射波は逆位相となる。
【0027】
図5は、図4のリニア増幅器(低出力インピーダンス回路)33の出力端Pからステップ信号Voutが出力されたときの端部P1、P2における電圧Vmo、VLの時系列変化を示したグラフである。
【0028】
図4に示されるように、時刻T11は、端部P1からステップ信号が出力されたとき(出力端Pからステップ信号が出力されたときに略対応)を示しており、時刻T21は、このステップ信号が、伝送線路30を通して最初に端部P2に到達し、かつ反射される時刻を示している。また、T12は、時刻T21に端部P2で反射されたステップ信号が、伝送線路30を通して端部P1に到達し再反射される時刻である。以下同様に、反射信号が端部P2に到達し反射される時刻を順次T22、T23、・・・と表し、端部P1に到達し反射される時刻を順次T13、T14、・・・と表している。なお、図5に示される時間Tdは、信号が信号ケーブル(伝送線路30)を伝送されるのに要する伝搬時間である。また、図4、5では、伝送線路30における損失が全くないと仮定されている。
【0029】
図5に示されるように、伝送線路30の両端においてインピーダンスが整合されていない場合には、伝送される信号が、両端部P1、P2において繰り返し反射され、それらが本来の信号に重畳されるため、信号波形は大きく崩れ、負荷回路34に適正な信号を伝送できない。
【0030】
一方、本実施形態では、負荷回路31については、インピーダンスマッチングが行われず、そのインピーダンスZLは、伝送線路30の特性インピーダンスZoよりも大きいままとされているが(ZL>Zo)、ドライブ回路20のマッチング回路32のインピーダンスZmは、伝送線路30の特性インピーダンスZoに等しい値とされている(Zm=Zo)。
【0031】
これにより、本実施形態では、伝送線路30の端部P2では、信号の反射が発生するが、端部P1では信号の反射が起こらない。すなわち、端部P2の反射係数ρL=(ZL−Zo)/(ZL+Zo)、端部P1の反射係数ρm=0である。なお、図6、図7は、それぞれ、図4、図5に対応し、図6は、本実施形態の信号伝送装置における信号反射の様子を模式的に示す。図7は、そのときにリニア増幅器(低出力インピーダンス回路)33の出力端Pからステップ信号Voutが出力されたときの端部P1、P2における電圧Vmo、VLの時系列変化を示したグラフである。
【0032】
図6に示されるように、信号は端部P2のみで反射され、端部P1では反射されないので、反射の影響は端部P1でのみ現れる。すなわち、端部P2の電圧Vmoは、端部P2での反射の影響を時刻T12で一度受けるが、端部P2では反射波の影響を受けることはない。また、本実施形態では、ドライブ回路20にリニア増幅器などの低出力インピーダンス回路を用いるため、端部P1側に反射波が戻って来ても波形に影響を及ぼすことはない。
【0033】
例えば、本実施形態のように、撮像素子の駆動パルスの伝送では、送信端(端部P1)側の波形が崩れていても、受信端(端部P2)側の波形が整っていれば撮像素子の駆動に問題はなく信号伝送の目的を達成し得る。なお、図8に、端部P1における反射が存在する場合と、反射が存在しない場合の各々について、送信信号(Vout)が一定周期のパルス信号であるときの端部P1および端部P2の電圧波形Vmo、VLを時系列グラフとして示す。図8の電圧波形Vmo、VLにおいて、破線は端部P1における反射が存在する場合(送信側のインピーダンスマッチングなし)を示し、実線は反射が存在しない場合(送信側のインピーダンスマッチングあり)を示す。
【0034】
図8に示されるように、パルス信号においても、マッチング回路32(図6参照)によるインピーダンスマッチングが行われていないと、受信側の端部P2においてパルス波形に乱れが発生する。しかし、受信側のインピーダンスマッチングが行われなくとも、送信側でインピーダンスマッチングが行われていれば、送信側の端部P1の電圧Vmoは反射の影響を受けるものの、受信側の端部P2の電圧VLについては、ロジック回路から出力されたパルス波形と同じ波形が維持される。
【0035】
以上のように、第1実施形態の信号伝送装置では、従来のように送信端側にダンピング回路を設け、受信端側を伝送線路とインピーダンスマッチングさせるのではなく、送信側を、マッチング回路を介して低出力インピーダンス回路に接続される構成とすることにより、受信端側のマッチングは行わずに、伝送線路の反射の影響を受信側に与えることを防止できる。これにより極めて簡略な構成で、受信側から反射の影響を排除することが可能となる。また、ダンピング回路を使用したときのように、伝送線路の長さに対応して定数を変更する必要もない。
【0036】
なお、上記説明では、低出力インピーダンス回路の出力インピーダンスがマッチング回路の抵抗に比べて極めて小さいと考えて、マッチング回路のインピーダンスZmをZoに等しいとした。しかし、マッチング回路のインピーダンスは、伝送線路側から送信端側を見たときのインピーダンスが伝送線路の特性インピーダンスと略等しくなるように設定されればよい。
【0037】
また、負荷回路31のインピーダンスZLは、伝送線路30の特性インピーダンスZoよりも大きいとしたが(ZL>Zo)、「ZL<Zo」の場合でも受信端側での反射波の位相が逆転するだけで送信端側におけるインピーダンスマッチングの効果が無くなるわけではない。つまり、負荷回路のインピーダンスを考慮する必要はないということである。
【0038】
次に、図9〜図11を参照して、本発明の第2実施形態の信号伝送装置について説明する。図9は第2実施形態の信号伝送装置のブロック図であり、第2実施形態においては、第1実施形態とドライブ回路の構成が異なる。すなわち、第1実施形態のドライブ回路20は、マッチング回路32と低出力インピーダンス回路(例えばリニア増幅器)33で構成されが、第2実施形態のドライブ回路40では、低出力インピーダンス回路(例えばリニア増幅器)33とロジック回路との間に波形整形回路が設けられる。なお、その他の構成は、第1実施形態と略同様であり、以下の説明においては、同一の構成については同一参照符号を用い、その説明を省略する。
【0039】
第1実施形態では、伝送線路30における伝送損失がないものとして説明を行ったが、伝送線路30は数メートルにおよぶため、伝送損失によりパルス波形には歪みが発生する。第2実施形態では、伝送損失による受信端におけるパルス波形の歪みを考慮して(例えば伝送線路の長さ等に基づいて)、これを補償するように、送信側の波形整形回路においてパルス信号を予め整形する。すなわち、整形されて出力されたパルス信号が伝送線路30を通して受信端に到達したときに、その波形がロジック回路から出力されたパルス信号の波形となるように波形整形回路においてロジック回路からのパルス信号が整形される。
【0040】
図10に、出力パルス信号に波形整形が行われていない場合における伝送損失による影響を点P、P1、P2(図6参照)における電圧Vout、Vmo、VLの波形として示す。ここでは、伝送損失があるときの波形が実線で示され、伝送損失がないときの理想的な波形が破線で示される。なお、ここでは送信端側でインピーダンスマッチングが行われ送信端での再反射が起こらないことを前提として説明している。
【0041】
また、図11には、伝送損失を考慮した本実施形態の波形整形が出力パルス信号に施されたときの電圧Vout、Vmo、VLの形状が実線で示され、波形整形を行わないときの電圧Vout、Vmo、VLの形状が破線で示される。
【0042】
第2実施形態の波形整形回路41には、例えば微分構成の回路など、一般的にハイパスフィルタと呼ばれる信号の高域成分を通過、または強調する回路が含まれる。システムクロックジェネレータ17のロジック回路からのパルス信号は、波形整形回路41において整形された後、リニア増幅器33において増幅され、マッチング回路32を経て、伝送線路30へと出力される。第2実施形態の波形整形回路41では、例えば受動型の微分回路であるCR回路が含まれ、ロジック回路からのパルス信号の高域成分が強調された波形に変換される。
【0043】
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、簡略な構成で送信されるパルス信号から受信端における反射の影響を除去することができるとともに、第2実施形態では、更に伝送損失の影響による受信端におけるパルス波形の歪も取り除くことができる。
【0044】
次に図12を参照して、第2実施形態の変形例について説明する。第2実施形態では、受動型の微分回路であるCR回路が増幅器の手前に配置されたが、本変形例のドライブ回路42では、リニア増幅器33およびCR回路41に替えて、オペアンプを用いた波形整形回路43が用いられる。すなわち、変形例では、増幅と波形整形とを兼ねた波形整形回路43が、第2実施形態の低出力インピーダンス回路に対応する。なお、その他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0045】
以上のように、変形例においても第2実施形態と同様の効果を得ることができ、送信端における反射を抑えるとともに伝送損失に対する補正を行うことにより図11に示されるように、受信端に入力されるパルス信号の波形をロジック回路からの出力された波形に維持することが可能となる。また、第2実施形態や変形例に替えて、D/Aコンバータ等を用いて波形形成を行う構成とすることも可能である。
【0046】
なお、本実施形態では、撮像素子の駆動パルスを送信する伝送線路について説明を行ったが、本発明の信号伝送装置は、これに限定されるものではなく、伝送路の受信側でのインピーダンスマッチングが難しい場合であって、受信端での波形のみが維持されればよい場合であれば有効であり、特に伝送路が長い場合に有効である。つまり、画像信号の伝送にも有効であり、内視鏡先端部11Aのスペースが許せば図2における映像信号伝送経路24に適応することも可能である。
【0047】
なお、本明細書に記載される回路構成や光学的な構成、光源の配置等も、例示的なものであり、本実施形態に限定されるものではない。また、本発明の信号伝送装置は、例えば伝送距離が長い電子内視鏡以外の装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 スコープ本体
11 挿入部
11A 先端部
12 操作部
13 コネクタ部
14 連結管
20、35、40、42 ドライブ回路
21 撮像素子
23 センサクロック伝送経路
30 伝送線路
31 負荷回路
32 マッチング回路
33 リニア増幅器(低出力インピーダンス回路)
41、43 波形整形回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の特性インピーダンスを有する伝送線路と、
前記伝送線路の受信側端部に接続され、入力インピーダンスが前記特性インピーダンスと整合しない負荷回路と、
前記伝送線路の送信側端部に接続される信号送信回路とを備え、
前記信号送信回路が、低出力インピーダンス回路と、前記特性インピーダンスと整合を行うマッチング回路とを備え、前記マッチング回路が、前記低出力インピーダンス回路と前記伝送線路との間に配置される
ことを特徴とする信号伝送装置。
【請求項2】
前記信号送信回路が、前記伝送線路の伝送損失により前記受信側端部に現れる信号波形の歪みを補償するように、前記信号送信回路において出力信号の波形の整形行う機能を備えることを特徴とする請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記波形の整形に信号の高域成分を強調する特性を持つ回路を用いることを特徴とする請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
前記負荷回路が撮像素子を備え、前記信号送信回路からは前記撮像素子の駆動パルス信号が出力されることを特徴とする請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
前記信号伝送装置が電子内視鏡のスコープ本体において用いられることを特徴とする請求項4に記載の信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−10855(P2011−10855A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157515(P2009−157515)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】