説明

信号処理回路、信号処理方法、再生装置

【課題】パイプライン処理によるPLLの処理速度の高速化と収束性能の向上との両立を図る。
【解決手段】例えば二次のPLLにおいて、ループフィルタの入力に対して、該ループフィルタの出力の移動平均を負帰還すると共に、該ループフィルタの積分項に対して所定ゲインを与えたものを正帰還する。具体的には、フィードバック制御ループとしての閉ループ全体の遅延量をDとしたとき、上記ループフィルタの出力の「D−1」回の移動平均を上記ループフィルタの入力に負帰還し、上記ループフィルタの積分項に対しDをゲインとして乗じたものを上記ループフィルタの入力に正帰還する。これにより、フィードバック制御ループ内に生じる遅延成分を補償することができ、パイプラインディレイの補償が可能となる。つまりこれにより、パイプライン処理によるPLLの処理速度の高速化と収束性能の向上との両立が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタフィードバック制御ループを形成する信号処理回路として、特にループディレイの補償を行う信号処理回路とその方法に関する。また、そのような信号処理回路を、記録媒体からの読出信号についての位相と周波数の制御を行うPLL回路に適用した再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平8−107352号公報
【特許文献2】特開2007−122774号公報
【特許文献3】米国特許第6236343号明細書
【0003】
例えばCD(Compact Disc),DVD(Digital Versatile Disc),BD(Blu-Ray Disc)などの光ディスク記録媒体やHDD(Hard Disk Drive)など磁気記録媒体について再生を行うシステムや、データ通信システムなどでは、読出信号、受信信号をデジタルサンプリングするようにされたものがある。このような読出信号、受信信号についてのサンプリングにあたっては、本来のサンプリングタイミングにおけるサンプリング値が得られるようにするにあたり、PLL(Phase Looked Loop)回路を用いるようにされている。すなわち、このPLL回路により、入力信号のサンプリングタイミングを適切なタイミングに制御する、或いは入力信号の波形補間を行う(後述するITR方式)ことで、本来のサンプリングタイミングにおけるサンプリング値が得られるようにしているものである。
【0004】
ここで、このようなデジタルサンプリング時に用いられるPLL回路としては、近年の記録媒体の高記録密度化、データ通信速度の高速化に対応するために、処理速度の高速化が要求されている。このために、PLL回路では、パイプライン処理を適用するのが一般的となっている。
【0005】
しかしながら、パイプライン処理を用いた場合、パイプラインディレイによりフィードバック制御ループに相応のループディレイが生じてしまう。すなわち、このループディレイがPLLの引き込み性能を悪化させてしまう。ループディレイは、制御ループの位相余裕を失わせる要因となるもので、具体的には引き込み速度の低下(収束時間の遅延化)を招くもとなる。また、特に周波数誤差が生じた場合に、PLLがそれを引き込むことのできる範囲をキャプチャレンジ(Capture Range)と呼ぶが、上記ループディレイが長くなるに従ってキャプチャレンジも縮小化してしまうことになる。
【0006】
一方、このような現状に対し従来では上記の各特許文献に示される各種の技術が提案されている。
これらの文献のうち、特許文献1は、位相同期の高速化を図る技術に関するものである。
また、本出願人による特許文献2は、周波数誤差を先に引き込んだ後に、位相誤差を引き込むことによりキャプチャレンジの拡大化を図る技術を提案したものである。
【0007】
これら特許文献1、又は特許文献2に記載の技術によれば、ループディレイに伴う引き込み速度の低下、又はキャプチャレンジの縮小化に対する一応の対策を講じることができる。しかしながら、上述したループディレイに係る問題の根本的な解決を図ることはできない。
つまり、特許文献1に記載の発明では、再生波形に周波数誤差が存在した場合には、位相を高速に引き込んでも、周波数誤差のために引き込みきれず、特にループディレイが長い場合には破綻を来してしまう虞がある。すなわち、位相同期の高速化が図られる一方で、キャプチャレンジ側が犠牲となってしまう。
また、特許文献2に記載の発明は、周波数誤差収束の後に位相誤差収束を行うため、それぞれの収束時間の和が最終的な収束時間となるものであり、従って周波数誤差・位相誤差を同時に引き込む時間に比べて収束時間が長くなってしまうという問題を有している。すなわち、キャプチャレンジの拡大化の一方で、収束時間側を犠牲とするものとなっている。
【0008】
ループディレイに起因した収束時間の遅延化・キャプチャレンジの縮小化の問題の解決を図るにあたっては、ループディレイそのものを補償することが有効である。そこで、先に挙げた特許文献3や、下記の各参考文献では、カルマンフィルタを利用してPLLのループディレイを補償する技術を提案している。

・参考文献1・・・“Application of Kalman Filters With a Loop Delay in Synchronization”Ara Patapoutian,IEEE Transactions on Communications, Vol.50, No.5, May 2002
・参考文献2・・・“Timing Recovery Loop Delay Compensation by Optimal Loop Gains”Jin Xie and B.V.K. Vijaya Kumar Data Strage Center(DSSC),Electrical and Computer Engineering Department Carnegie Mellon University, IEEE ICC2006 Proceedings
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献3や各参考文献に記載の手法では、ループディレイの補償にあたり、VCO(Voltage Controlled Oscillator)やNCO(Number Control Oscillator)の出力をループフィルタの入力に帰還する必要がある。これらVCOやNCOの出力は、上記各文献のように物理モデルで扱う限りにおいては積算位相で表されるものとなるが、上記のようにVCOやNCOの出力をループフィルタの入力に帰還する構成を実際に回路実装するとしたときには、VCO、NCOの出力は積算位相ではない情報に変換しなければならい。具体的に、VCOを用いる構成とする場合では、周波数制御信号としてのVCOの出力信号について、そのエッジ位置を物理的に測定して位相量の情報に変換するための周波数/位相変換器を要するものとなる。また、ITR(Interpolated Timing Recovery)方式として上記NCOを用いる構成とする場合は、A/D変換器においてデータレートよりもやや高速にオーバーサンプリングを行うようにされるが、この関係から、NCOの出力をループフィルタの入力に帰還するとしたときには、該ループフィルタに帰還されるNCO出力についてオーバーサンプリングレートの割り算を行って、オーバーサンプリングしていない場合の通常の位相情報に戻すための位相情報変換器が必要となる。
【0010】
上記のようなVCO出力のエッジ位置を物理的に測定して位相情報に変換する周波数/位相変換器は、これを実際の構成として実現することは非常に困難となる。また、NCOを用いる場合の上記位相情報変換器としても、現実に構成することは非常に困難である。
すなわち、これらの点より上記特許文献3や各参考文献に記載される従来のループディレイ補償の手法では、それを現実に実現することが非常に困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような問題点に鑑み、本発明では、フィードバック制御ループ内に生じるループディレイを補償して収束性能の向上を図るための構成を、現実的なものとして実現できるようにすることを目的とする。
このために、本発明では信号処理回路として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の信号処理回路は、ループフィルタを備えると共に、目標値と制御値との誤差を検出して該誤差の値が所定値となるように制御を行うフィードバック制御ループが形成されるようにして構成された信号処理回路であり、上記フィードバック制御ループに形成される開ループが、上記フィードバック制御ループとしての閉ループ全体の遅延と上記ループフィルタ、及び最後段の単純積分とで表現されるようにして構成されている。
その上で、上記ループフィルタの出力の移動平均を計算する移動平均計算手段と、上記ループフィルタ内で演算された値に所定のゲインを与える乗算手段と、上記移動平均計算手段による計算結果と上記乗算手段による計算結果とが上記ループフィルタの入力に同時に帰還されるようにして上記ループフィルタの前段に設けられた合成手段とを備えるものである。
【0012】
また、本発明では信号処理方法として以下のようにすることとした。
すなわち、ループフィルタを備えると共に、目標値と制御値との誤差を検出して該誤差の値が所定値となるように制御を行うフィードバック制御ループにおいて、上記フィードバック制御ループに形成される開ループが、上記フィードバック制御ループとしての閉ループ全体の遅延と上記ループフィルタ、及び最後段の単純積分とで表現されるようにして構成されている場合において、
上記ループフィルタの出力の移動平均と、上記ループフィルタ内で演算された値に所定のゲインを与えたものとを上記ループフィルタの入力に同時に帰還するようにしたものである。
【0013】
また、本発明では再生装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の再生装置は、記録媒体に対する少なくとも再生を行う再生装置であって、上記記録媒体に記録された信号を読み出す読出手段を備える。
また、比例及び積分フィルタを備えて構成されたループフィルタが備えられて2次遅れ系の制御システムとしての構成を有し、上記読出手段により得られる読出信号について位相と周波数の制御を行うPLL回路を備える。
そして、上記PLL回路は、フィードバック制御ループに形成される開ループが、上記フィードバック制御ループとしての閉ループ全体の遅延と上記ループフィルタ、及び最後段の単純積分とで表現されるようにして構成され、且つ、以下の各手段を備える。
すなわち、上記ループフィルタの出力の移動平均を計算する移動平均計算手段と、上記ループフィルタの積分項に対して所定のゲインを与える乗算手段と、上記移動平均計算手段による計算結果と上記乗算手段による計算結果とが上記ループフィルタの入力に同時に帰還されるようにして上記ループフィルタの前段に設けられた合成手段とを備えるものである。
【0014】
上記のように本発明では、ループフィルタの出力の移動平均と、ループフィルタ内で演算される値に所定のゲインを乗じたものとを、ループフィルタの入力に帰還するものとしている。後述もするが、このような構成とすることで、フィードバック制御ループ内に生じるループディレイを補償することができる。このとき、ループディレイの補償にあたっては、上記のようにしてループフィルタにて得られる値のみに基づく成分をループフィルタの入力に帰還するものとすればよい。これにより上記本発明によれば、ループディレイの補償にあたり、従来のようにVCOやNCOの出力をループフィルタに帰還する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ループディレイの補償にあたり、従来のようにVCOやNCOの出力をループフィルタに帰還する必要がないものとでき、ループディレイ補償は、ループフィルタで得られる値のみに基づいて行うことができる。この結果、従来必要とされていた周波数/位相変換器や位相情報変換器など、実際に実現することが困難な構成を付加する必要はなくなり、ループディレイ補償を行う構成をより現実的なものとして実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
[再生装置の全体構成]
図1は、本発明の再生装置の一実施形態としての、ディスクドライブ装置の内部構成を示したブロック図である。
先ず、本例のディスクドライブ装置としては、図示する光ディスク50として、BD(Blu-ray Disc:登録商標)の再生が可能に構成される。この場合、ディスクドライブ装置としては、データ再生のみが可能な再生専用装置とされる場合を例示する。再生可能な光ディスク50としては、ピット・ランドの組み合わせでデータが記録された再生専用のROMディスクのみならず、記録可能型として、ライトワンス型やリライタブル型の光ディスク50にも対応する。つまり、BDの場合ではBD−R(ライトワンス型)やBD−RE(リライタブル型)などが該当する。
【0017】
図1において、光ディスク50は、ディスクドライブ装置に装填されると図示しないターンテーブルに積載され、スピンドルモータ2によって一定線速度(CLV)で回転駆動される。
再生時には、光ピックアップ(光学ヘッド)1によって光ディスク50上のトラックにピット或いはマークで記録された信号の読出が行われる。
なお、光ディスク50には、再生専用の管理情報として、例えばディスクの物理情報等がエンボスピット又はウォブリンググルーブによって記録されるが、これらの情報の読出も光ピックアップ1により行われる。さらに記録可能型の光ディスク50に対しては、グルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報が記録されているが、その読み出しも光ピックアップ1によって行うことができる。
【0018】
光ピックアップ1内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、レーザ光を対物レンズを介してディスク記録面に照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系等が形成される(図示は省略)。この場合のレーザダイオードは、波長λ=405nmによるレーザ光を出力可能に構成される。
光ピックアップ1内において、上記対物レンズは2軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
またこの場合、光ピックアップ1内には、BDとしての光ディスク50に対応可能とすべく、球面収差補正機構が備えられている。
また、図示するようにして光ピックアップ1全体はスレッド機構3によりディスク半径方向に移動可能とされている。
【0019】
光ディスク50からの反射光情報は上記フォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路4に供給される。
マトリクス回路4には、上記フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。すなわち、光ディスク50からの読出信号(再生信号)に相当するRF信号(再生データ信号RF)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEなどを生成する。
さらに、グルーブのウォブリングに係る信号、すなわちウォブリングを検出するための信号としてプッシュプル信号PPを生成する。
マトリクス回路4から出力されるRF信号はデータ信号処理部5へ、フォーカスエラー信号FE及びトラッキングエラー信号TEはサーボ回路11へ、プッシュプル信号PPはウォブル信号処理回路7へ、それぞれ供給される。
【0020】
データ信号処理部5は、上記RF信号についてのPLL(Phase Locked Loop)処理、及びPRML(Pertial Response Maximum Likelihood)復号方式による2値化処理を行う。PRML復号処理の実現にあたっては、RF信号をデジタルサンプリングするようにされる。そのサンプリング値として、本来のサンプリングタイミングにおけるサンプリング値が得られるようにするにあたって、上記PLL処理が実行される。
データ信号処理部5においては、上記2値化処理により2値データ列DDが得られる。この2値データ列DDはデコーダ6に供給される。
なお、このデータ信号処理部5の内部構成については後述する。
【0021】
デコーダ6は、上記データ信号処理部5で得られた2値データ列DDについての復調を行う。すなわち、データ復調、デインターリーブ、ECCデコード、アドレスデコード等を行う。これによって光ディスク50からの再生データを得る。
デコーダ6で再生データにまでデコードされたデータは、ホストインターフェース15に転送され、システムコントローラ10の指示に基づいてホスト機器100に転送される。
ホスト機器100とは、例えばコンピュータ装置やAV(Audio-Visual)システム機器などである。
【0022】
光ディスク50が記録可能型ディスクである場合、その再生時にADIP情報の処理が行われる。
すなわちグルーブのウォブリングに係る信号としてマトリクス回路4から出力されるプッシュプル信号PPは、ウォブル信号処理回路7においてデジタル化されたウォブルデータとされる。またPLL処理によりプッシュプル信号に同期したクロックが生成される。
ウォブルデータはADIP復調回路8でMSK復調、STW復調され、ADIPアドレスを構成するデータストリームに復調されてアドレスデコーダ9に供給される。
アドレスデコーダ9は、供給されるデータについてのデコードを行い、アドレス値を得て、システムコントローラ10に供給する。
【0023】
サーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEから、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。即ちフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに応じてフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号を生成し、光ピックアップ1内の二軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。これによって光ピックアップ1、マトリクス回路4、サーボ回路11、二軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
またサーボ回路11は、システムコントローラ10からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
【0024】
またサーボ回路11は、システムコントローラ10からの指示に応じて、フォーカスサーボループにフォーカスバイアスを与える。
またサーボ回路11は、システムコントローラ10からの指示に応じて、光ピックアップ1が備える、上述した球面収差補正機構に対して球面収差補正のための駆動信号を供給する。
【0025】
またサーボ回路11は、トラッキングエラー信号TEの低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号を生成し、スレッドドライバ14によりスレッド機構3を駆動する。スレッド機構3には、図示しないが、光ピックアップ1を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、光ピックアップ1の所要のスライド移動が行われる。
【0026】
スピンドルサーボ回路12はスピンドルモータ2をCLV回転させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路12は、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報として得て、これを所定のCLV基準速度情報と比較することで、スピンドルエラー信号を生成する。
或いは、光ディスク50が再生専用のROMディスクである場合は、例えばデータ信号処理部5のPLL処理に基づき生成される再生クロックが現在のスピンドルモータ2の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成する。
そしてスピンドルサーボ回路12は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルドライバ13によりスピンドルモータ2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路12は、システムコントローラ10からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0027】
以上のようなサーボ系及び記録再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ10により制御される。
システムコントローラ10は、ホストインターフェース15を介して与えられるホスト機器100からのコマンドに応じて各種処理を実行する。
例えば、ホスト機器100から、光ディスク50に記録されている或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合、システムコントローラ10は指示されたアドレスを目標(ターゲット)としてシーク動作制御を行う。即ちサーボ回路11に指示を行って、リードコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとする光ピックアップ1のアクセス動作を実行させる。
その後、その指示されたデータ区間のデータをホスト機器100に転送するために必要な動作制御を行う。すなわち光ディスク50からの信号読み出し動作、及び読出信号についてのデータ信号処理部5、デコーダ6における再生処理を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0028】
なお、この図1の例では、ホスト機器100に接続されるディスクドライブ装置として説明したが、本発明の再生装置としては他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインターフェース部位の構成が、図1とは異なるものとなる。つまり、ユーザの操作に応じて再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。
もちろん再生装置の構成例としては他にも多様に考えられ、例えば記録が可能な構成とすることもできる。すなわち、本発明の再生装置としては、記録再生装置の形態もあり得る。
【0029】
[データ信号処理部の内部構成]

続いて、図1に示したデータ信号処理部5の内部構成について説明する。
先にも述べたように、このデータ信号処理部5は、RF信号をデジタルサンプリングし、そのサンプリング値に基づきPRML復号方式による2値化処理を行うように構成される。そして、RF信号のサンプリングにあたっては、本来のサンプリングタイミングにおけるサンプリング値が得られるようにするため、PLLが用いられている。
【0030】
この場合のPLL回路としては、一般的な構成として、次の2通りのうちの何れかが採用される。
1つは、図2に示されるようにVCO(Voltage Controlled Oscillator)を用いる構成である。この場合は、VCOの出力に基づいて、RF信号をサンプリングするA/D変換器20のサンプリングタイミングを制御することになる。
また、もう1つには、いわゆるITR(Interpolated Timing Recovery)方式として、図3に示されるようにInterporator28を用いて位相誤差検出結果に応じたRF信号の補間処理を行うことで、タイミング同期を図るようにする構成を挙げることができる。
【0031】
先ずは、図2に示すVCOを用いるPLL回路とする場合の構成例について説明する。
この図2に示される構成例において、先の図1に示したマトリクス回路4からのRF信号は、A/D変換器20に入力される。A/D変換器20は、後述するVCO26が出力するクロック信号に基づくサンプリング周期で、RF信号のサンプリングを行う。
【0032】
A/D変換器20によりデジタルサンプリングされたRF信号は、PR等化器(PR-EQ)21に入力される。
PR等化器21は、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成され、RF信号をPR等化する。このPR等化器21よるPR等化後のRF信号については、信号RF−EQと表記する。
【0033】
上記信号RF−EQは、最尤復号器22に供給され、最尤復号処理により2値データ列DDに変換されて出力される。
【0034】
また、信号RF−EQは、分岐して位相誤差検出器23に対しても供給される。
位相誤差検出器23は、上記信号RF−EQとしての、PR等化後のRF信号のサンプリング値に基づき、現位相と所定の目標位相(本来のサンプリングタイミング)との位相誤差を計算により求める。
【0035】
上記位相誤差検出器23により得られた位相誤差の情報はLPF(Low Pass Filter)24に供給される。
LPF24は、いわゆるループフィルタ(Loop Filter)であり、上記位相誤差検出器23より供給される位相誤差の低域成分を抽出することで、本来のサンプリングタイミングが得られるように補正するための周波数制御信号を生成する。
【0036】
LPF24にて計算された周波数制御信号は、D/A変換器25にてアナログ信号に変換された後、VCO26に入力される。
VCO26は、入力される上記周波数制御信号に基づき、自らが出力するクロック信号の周波数を変化させる。このクロック信号は、その立ち上がりエッジ、或いは立ち下がりエッジによりサンプリングタイミングを表す情報として、上述したA/D変換器20に入力される。
【0037】
なお、この図2に示す構成において、PLLとしてのフィードバック制御ループを形成する要素は、A/D変換器20→PR等化器21→位相誤差検出器23→LPF24→D/A変換器25→VCO26となるが、この図からも明らかなように、VCOを用いる構成とする場合には、フィードバック制御ループがアナログ・デジタル混合の構成となる。
【0038】
続いて、図3に示すITR方式が採用される場合の構成例について説明する。
なお図3において、図2で既に説明したものと同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
この図3に示す構成例は、先の図2の構成例に対して、A/D変換器20が発振器27が出力する固定の周波数によるクロック信号に基づきRF信号のサンプリングを行うようにされる点と、A/D変換器20とPR等化器21との間にInterpolater28が挿入される点と、さらにLPF24による周波数制御信号に基づき上記Interpolater28による補間動作を制御するためのNCO(Number Control Oscillator)29が設けられる点とが異なる。
【0039】
このITR方式については、詳しくは下記の参考文献3に記載されているが、基本的には、上記のようにして入力されるRF信号を固定のサンプリング周期でサンプリングし、サンプリング後のRF信号に対してLPF24による周波数制御信号に基づく補間処理を行うことで、本来のサンプリングタイミングにおけるサンプリング値が得られるようにタイミング同期を図るものとなる。

参考文献3・・・特開2005−108295号公報
【0040】
ここで、本例のように記録媒体の再生系におけるPLLにITR方式を採用する場合には、ダウンサンプリングが起こらないように、入力波形をデータレートよりも若干高い周波数でオーバーサンプリングするようにされる。このため、上記発振器27の発振周波数としては、データレートに対して例えば1.1倍などとなる周波数(オーバーサンプリング周波数)が設定される。
【0041】
また、上記NCO29は、基本的には上述したVCO26と同様の機能を担うものとなるが、NCO29の出力は周波数情報ではなく、位相情報となる点が異なる。この位相情報としては、上述のようにA/D変換器20にてオーバーサンプリングを行っていることに対応させるべく、クロック周期内における位相量を表す情報を求めることになる。
【0042】
Interpolater28は、上記NCO29で計算された位相情報に基づき、A/D変換器20から入力されるRF信号の補間動作を行う。この補間動作により、本来のサンプリングタイミングにおけるサンプリング値が得られるようになり、結果として、VCO26を用いる場合と同様の作用が得られる。
【0043】
なお、この図3に示されるITR方式を採用した構成では、フィードバック制御ループを構成する要素はInterpolater28→RF等化器21→位相誤差検出器23→LPF24→NCO29となる。図示もしているように、これらの要素は全てデジタル回路で構成されるものであり、従ってITR方式の場合は、PLLをオールデジタルで構成することができる。
【0044】
ここで、本実施の形態としてのPLL回路は、図2、図3に示されるLPF24の内部構成に特徴を有するものとなる。本実施の形態のLPF24の内部構成については後に改めて説明する。
【0045】
[従来におけるループディレイ補償]

ここで、先に述べたようにして、本実施の形態のように記録媒体からの読出信号についてタイミング同期を行うPLL回路としては、処理速度の高速化を図るべくパイプライン処理を採用するのが一般的となっているが、パイプライン処理を行う場合、パイプラインディレイによりフィードバック制御ループには相応のループディレイが生じ、このループディレイがPLLの引き込み性能を悪化させることが問題となる。このようなループディレイは、制御ループの位相余裕を失わせる要因となるもので、具体的には引き込み速度の低下(収束時間の遅延化)や、キャプチャーレンジ(Capture Range)の縮小化を招くものとなる。
【0046】
このような問題点を解決するための従来技術として、例えば先に挙げた特許文献3や参考文献1,2では、ループディレイを補償する技術が提案されている。すなわち、性能悪化要因であるループディレイについて直接的に補正を行うことで、パイプライン処理の導入による処理速度の高速化とPLLの収束性能の向上との両立を図るというものである。
【0047】
ここで、このようなループディレイ補償を行う従来技術について、その具体的な構成を順を追って説明していく。
先ず、一般的なフィードバック制御ループをシステム系と観測系の動的モデルで表すことを考えてみる。
システム系は、以下の[式1]で表される。

【数1】

また、観測系は以下の[式2]で表される。

【数2】

なお、これら[式1][式2]において、xkはシステムにおける状態空間を表現する状態ベクトル、Fはシステム行列、ykは観測ベクトル、Hは観測行列、wkは外乱やノイズ、vkはフィードバック制御中のダイナミックな挙動を示す統計的分散により定義される項である。
【0048】
図4に、フィードバックループにループディレイのある制御系として、ループディレイ成分(図中遅延ブロック31)をすべて目標誤差検出直後に集めた制御系のモデルを示す。図示するようにフィードバックループへの入力はyk、誤差検出のための減算ブロック30の出力はrk、遅延ブロック31の出力はrk-D、ループフィルタ(Loop Filter)32の出力はyk-D-1である。
目標値との差分は以下の[式3]で表わされる。

【数3】

【0049】
ここで、状態空間におけるシステム系として、rk-Dにより制御されるモデルを考えてみる。先の[式1]の右辺の第二項の統計項を無視して、変形すると以下の[式4]で更新されることになる。

【数4】

この[式4]における右辺の第二項はループディレイを考慮した項であり、以下の[式5][式6]のように定義される。

【数5】

【数6】

[式5]におけるkkは時刻kにおけるループフィルタのゲインを表しており、u(k)はステップ関数である。また、[式6]は、理想的にループディレイがない場合を想定して、制御値の1時刻差分の目標誤差で制御するというループディレイ補償の目的を表している。但し、実際の系で得られる誤差はrk-Dであるので、これを用いてyk-Dの1時刻差分を与えている。
【0050】
ここで、重要なことは、上記[式6]に従ってループフィルタの構成を変更することと、上記[式5]によりループフィルタゲインを適切に変更することによって、ループディレイを補正できるということである。
【0051】
次に、二次制御ループのPLLモデルに当てはめてみる。二次遅れ系で位相と周波数を制御することから、次の[式7]のようなベクトルをもった状態空間を考えればよい。

【数7】

θkは位相、fkは周波数を示す。
【0052】
また、観測系は位相制御であることを考えると、yk=θkであるため、観測行列Hは次の[式8]のように定義される。

【数8】

【0053】
また、先の[式1]において、外乱のない収束状態を考えると、システム行列Fは[式9]のようになる。

【数9】

【0054】
以上より、二次のPLLにおいて、先の[式6]、すなわちループディレイ補償を行うための演算式は、次の[式10]とおくことができる。

【数10】

【0055】
ここで、一般に二次のPLLは、ループディレイ成分を位相誤差検出直後に集中させると、次の図5に示すモデルになる。
この図5において、PLLへの入力はθkであり、該入力θkは位相誤差を検出するための減算ブロック33に入力される。減算ブロック33の出力rkは、遅延ブロック34でループディレイ成分が与えられ、rk-DとしてLPF35(ループフィルタ)に入力される。
ここで、上記遅延ブロック34にて与えるループディレイは、パイプラインディレイを始めとして、フィードバック制御ループ(閉ループ)に生じるディレイ成分をまとめて示したものである。例えば、図2、図3の構成によれば、フィードバック制御ループ内にはPR等化器21も含まれるが、このPR等化器21の等化処理は、位相誤差検出の性能向上に寄与するように作用するものであり、伝達関数として見れば、遅延の要素としてしか表現されない。遅延ブロック34で与えるループディレイ量「D」としては、このようなPR等化器のディレイ分も含めたものとなる。
【0056】
LPF35内には、上記遅延ブロック34の出力rk-Dに係数αを与える乗算ブロック35a(比例フィルタ:周波数制御側)と共に、上記出力rk-Dに係数βを与える乗算ブロック35bと該乗算ブロック35bの出力を積分する加算ブロック35cと遅延ブロック35dと(積分フィルタ:位相制御側)が設けられる。図示するように加算ブロック35cは、上記乗算ブロック35bの出力と、自らの出力が上記遅延ブロック35dで1時刻分遅延された成分とを加算する。
また、LPF35内には、上記乗算ブロック35aの出力と上記加算ブロック35cの出力とを加算する加算ブロック35eが設けられる。
上記加算ブロック35eの出力がLPF35の出力となる。LPF35の出力は、図示するようにδθk-D-1で表される。
【0057】
LPF35の出力δθk-D-1は、先の図2に示したVCO26、又は図3に示したNCO29をモデル化したものであるVCO/NCO36に入力される。VCO/NCO36は、上記出力δθk-D-1を積分する加算ブロック36a・遅延ブロック36b、及び上記加算ブロック36aの出力に1時刻分の遅延を与える遅延ブロック36cを備える。上記加算ブロック36aは、上記LPF35の出力δθk-D-1と自らの出力θk-Dが上記遅延ブロック36bで1時刻分遅延された成分とを加算する。この加算ブロック36aの出力θk-Dが上記遅延ブロック36cで1時刻分の遅延が与えられてVCO/NCO36から出力される。このVCO/NCO36の出力は、θk-D-1で表される。
なお、この図からも明らかなように、先の図2、図3に示したVCO26、NCO29は、モデル化すると単純積分で表されるものである。
【0058】
VCO/NCO36の出力θk-D-1は、上述した減算ブロック33に入力される。減算ブロック33は、入力θkから該θk-D-1を減算する。
【0059】
先の各文献で提案されている従来技術は、このようにして表されるPLLモデルについて、先の[式10]を満足するように変更を加えることでループディレイ補償を実現しようとするものである。
その具体的なモデルを次の図6に示す。
この図6に示されるように、従来技術としてのPLLモデルは、先の図5に示すモデルに対し、図中の破線により示す系を追加したものとなる。具体的に、この場合のPLLモデルでは、ループディレイとしての遅延ブロック34とLPF35との間に加算ブロック41が追加され、この加算ブロック41により、上記LPF35の入力に対し、以下の3つの成分を帰還するものとしている。すなわち、図中のVCO/NCO36→遅延ブロック37→加算ブロック41の系により、VCO/NCO36の出力θk-D-1に対しループディレイとしての遅延を与えたθk-2D-1を正帰還し、また、VCO/NCO36→減算ブロック38→加算ブロック41の系によりVCO/NCO36の出力θk-D-1を負帰還し、さらに、遅延ブロック39→乗算ブロック40→減算ブロック38→加算ブロック41の系により、LPF35内の加算器35cの出力を1時刻分遅延させた成分(fk-D-1)にループディレイ量「D」をゲインとして乗じた成分(D・fk-D-1)を正帰還するものとしている。つまり、LPF35の積分項にループディレイ量「D」をゲインとして乗じた成分を正帰還している。
【0060】
この図6に示す、先の[式10]を満足するモデルとすることで、ループディレイの補償を行うことが可能となる。
【0061】
しかしながら、これはあくまでモデルとして捉えた場合であり、実際に図6に示すモデルに基づきPLL回路を構成するとしたときには、以下のような問題が生じることになる。
【0062】
図7は、図6に示されるモデルに基づき、先の図2に示したようにVCO26を用いたPLL回路を実現するとした場合の実際の構成例を示した図である。なお、図7において、既に図2において説明した部分については同一符号を付して説明を省略する。
この場合、図2に示した構成との比較では、LPF24ではなく図6に示したLPF35に相当するループフィルタが設けられる点と、図6に示したループディレイ補償のための遅延ブロック37、遅延ブロック39、乗算ブロック40、減算ブロック38、加算ブロック40に相当する構成(以下、遅延器37、遅延器39、乗算器40、減算器38、加算器40と称する)が設けられる点が異なる。また、実際の構成においては、VCO26の出力を上記遅延器37、上記減算器38にそれぞれ供給するための系において、周波数/位相情報変換器45とA/D変換器46とが挿入されることになる。
【0063】
ここで、VCO26の出力は周波数制御情報である。これに対し、ループフィルタ(LPF35)で扱う情報は位相情報である。従って、VCO26の出力をループフィルタの入力に帰還するためには、実際の構成では、周波数制御信号としてのVCO26の出力信号について、そのエッジ位置を物理的に測定して位相量の情報に変換する必要がある。このため、該周波数/位相情報の変換を行う、周波数/位相変換器45を設ける必要がある。
しかしながら、このような周波数/位相変換器45は、現実に構成することは非常に困難である。
【0064】
また、図8は、図6に示したモデルに基づき、図3のようなITR方式によるPLL回路を実現するとしたときの実際の構成例を示している。なお、図8において、既に図3にて説明した部分については同一符号を付して説明を省略する。
この場合としても、図3の構成との比較では、LPF24ではなく図6に示したLPF35が設けられる点と、図6に示したループディレイ補償のための遅延ブロック37、遅延ブロック39、乗算ブロック40、減算ブロック38、加算ブロック40に相当する構成(遅延器37、遅延器39、乗算器40、減算器38、加算器40)が設けられる点が異なる。
【0065】
また、NCO29としては、伝達関数ブロックではなく実際の構成として表した場合は、先の図6に示した加算ブロック36a、遅延ブロック36b、遅延ブロック36c(以下、それぞれ加算器36c、遅延器36b、遅延器36cと称する)に加えて、図のような加算器29aと乗算器29bが設けられる。具体的に、この場合のLPF35の出力は、NCO29内の上記加算器29a→乗算器29bを介して加算器36aに入力される。加算器29aは、LPF35の出力に対して「1」を加算する。乗算器29bは、上記加算器29aの出力に対して係数εを与える。
ここで、ITR方式の場合、A/D変換器20におけるRF信号のサンプリングは固定のオーバーサンプリング周波数に基づき行われる。この関係から、実際のNCO29の演算としては、次の[式11]のようにオーバーサンプリングレートで積算してからクロック周期内のエッジに対する位相量に変換するための剰余演算を行うことになる。

【数11】

ここで、係数εはオーバーサンプリングレート、mod-1は整数1での剰余演算を表す。例えばオーバーサンプリングレートがデータレートの1.1倍とされる場合には、ε=1.1と設定されるものである。
このような演算を実現するための構成として、NCO29には上記加算器29aと乗算器29bが設けられることになる。
【0066】
また、ITR方式のPLL回路とする場合には、ループディレイ補償のためにVCO29の出力を帰還する系において、図示するように位相抽出器を挿入する必要がある。
ここで、上記説明からも理解されるように、NCO29の出力はオーバーサンプリングクロックの1周期内で位相量を表す情報となる(オーバーサンプリング位相情報)。すなわち、これを図示すれば、次の図9に示すものとなる。図示されるようにNCO29の出力は、オーバーサンプリングクロックの1周期csごとに、該1周期cs内での位相を表す情報となる。
このようなオーバーサンプリング位相情報としては、実際の回路実装上、オーバーフローやアンダーフローを考慮した場合には、或る範囲(ウィンドウ)内で位相を表現する情報とする必要がある。例えば図9に示されるようにして、−0.5〜+0.5の範囲で表現することになる。すなわち、このようなオーバーサンプリング位相情報としては、例えば+0.5に達したら次の周期における−0.5から表現するという、位相飛び越し処理されたものとなる。
これに対し、LPF35で扱うのは、次の図10に示されるような通常の位相情報(オーバーサンプリングしていない場合の位相情報)である。すなわち、各時刻での位相量を表す情報である。
このため、ループディレイ補償のためにNCO29の出力をループフィルタの入力に帰還するにあたっては、先の図9のようなオーバーサンプリング位相情報を、図10に示す通常の位相情報に変換する位相抽出器47を設ける必要がある。
【0067】
しかしながら、このような位相抽出器47としても、現実の構成として実現するのが非常に困難となる。具体的に、図9のように或る周期で位相が飛び越した表現となっている情報を、位相飛び越し情報に基づいて図10のような通常の位相情報に変換するためには、先の[式11]に示した演算の逆演算という、非常に複雑な処理を要するものとなり、その実現は非常に困難である。
【0068】
以上のように、ループディレイを補償するための従来技術としての図6のモデルは、実際の回路実装を想定した場合にはその実現が非常に困難であり、また、仮に実現が可能であったとしても非常に複雑な処理を要するものとなってしまう。すなわち、何れにしても図6に示した従来技術では、ループディレイ補償のための構成を現実的なものとして実現することが困難となる。
【0069】
[実施の形態としてのループディレイ補償]

ここで、上記による従来技術の問題は、何れもループディレイ補償にあたってVCOやNCOの出力をループフィルタに帰還するようにされていることに起因している。
そこで本出願人は、先の[式10]を変形することで、VCOやNCOの出力をループフィルタに帰還する必要のないモデルの導出を試みた。
【0070】
先ず、そのようなモデルの導出にあたり、本出願人は、VCO/NCO36としての伝達関数ブロックに着目した。このVCO/NCO36の遅延成分のみに着目してZ変換で表すと、次の[式12]のように表すことができる。

【数12】

【0071】
この前提を踏まえ、先の[式10]におけるディレイ補償の項を変形してみる。
先ず、以下の[式13]により示される、[式10]におけるディレイ補償の項を、「θk-D-1」で整理して[式14]とおく。

【数13】

【数14】

【0072】
ここで、先の図6によると、上記[式14]の第四項「θk-D-1」は、LPF35の出力(δθk-D-1)に対してVCO/NCO36の伝達関数を掛け合わせたものとなる。このことから、先の[式12]より、[式14]は次の[式15]とおくことができる。

【数15】

【0073】
さらに、上記[式15]について、第三項(1−Z-D)を因数分解して次の[式16]とおく。

【数16】

この[式16]を整理すると、次の[式17]とおくことができる。

【数17】

【0074】
この[式17]によれば、VCOやNCOの出力はもはやディレイ補償には必要なく、ループフィルタ内で得られる成分のみに基づいてディレイ補償の項を表現することができるようになる。
【0075】
上記[式17]に従って開ループのモデルを描くと、次の図11のようになる。
なお、図11において、既に図6にて説明した部分と同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
図示するようにして、本実施の形態のPLLモデルでは、先の図5、図6ではLPF35と示した[乗算ブロック35a、乗算ブロック35b、加算ブロック35c、遅延ブロック35d、加算ブロック35e](以下、ループフィルタブロックと呼ぶ)の出力δθk-D-1について、[式17]の第三項で表される伝達関数を与えるための移動平均ブロック24cと、上記ループフィルタブロック内の加算ブロック35cの出力を入力して[式17]の第一項・第二項としての成分を得るための遅延ブロック24a及び乗算ブロック24bと、さらに、上記移動平均ブロック24cからの出力と上記乗算ブロック24bからの出力を[式17]に従って上記ループフィルタブロックの入力に帰還させるための加減算ブロック24dが設けられる。
【0076】
上記移動平均ブロック24cでは、上記出力δθk-D-1に対し、[式17]の第三項で表される信号特性の畳み込みを行うことになる。すなわち、この移動平均ブロック24cでは、出力δθk-D-1について「D−1」回の移動平均が求められることに相当する。換言すれば、「閉ループ全体の遅延量−1」回の移動平均が計算されるものである。
【0077】
上記遅延ブロック24aは、上記加算ブロック35cの出力に対して1時刻分の遅延を与え、上記乗算ブロック24bは、上記遅延ブロック24aの出力に対し、ループディレイ量「D」をゲインとして乗じる。
また、上記加減算ブロック24dは、遅延ブロック34からの出力rk-Dを入力し、該出力rk-Dに対して、上記移動平均ブロック24cの出力は減算し、上記乗算ブロック24bの出力は加算する。この加算ブロック24dの出力がループフィルタブロック内の乗算ブロック35a、35bにそれぞれ入力される。
【0078】
なお、ここでは図示の都合上、上記ループフィルタブロックに加えて、ディレイ補償のための移動平均ブロック24c、遅延ブロック24a、乗算ブロック24b、及び加減算ブロック24dも含めた全体をLPF24として表しているが、もちろん、図5、図6と同様に、ループフィルタブロックとしての部分のみをLPFとして捉えることも可能である。
【0079】
図12、図13は、図11に示したモデルに基づきループディレイ補償を行うにあたっての、実際のPLL回路の構成例を示した図である。
図12はVCO26を用いる場合、図13はITR方式を採用する場合の構成を示している。なお、これらの図において、既にこれまでに説明した部分と同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
先ず、図12のVCO26を用いる場合の構成としては、先の図2に示した構成におけるLPF24を、図11に示したLPF24内の各ブロックで表される演算を行うように構成する。具体的に、この図12に示されるLPF24の内部構成としては、図11に示した乗算ブロック35a、乗算ブロック35b、加算ブロック35c、遅延ブロック35d、加算ブロック35e、及び移動平均ブロック24c、遅延ブロック24a、乗算ブロック24b、加減算ブロック24dの各ブロックに相当する構成(以下、それぞれ乗算器35a、乗算器35b、加算器35c、遅延器35d、加算器35e、移動平均計算部24c、遅延器24a、乗算器24b、加減算部24dとする)を、図11に示される接続形態により接続したものとなる。
この場合、上記移動平均計算部24cとしては、例えばFIRフィルタで構成することができる。
【0081】
また、図13に示すITR方式を採用する場合としても、先の図3に示した構成におけるLPF24の内部構成を、図12に示されるLPF24と同様の構成とすればよい。
なお、確認のために述べておくと、この場合もNCO29の内部構成は、先の図8にて説明したものと同様となる。
【0082】
これら図12、図13からも明らかなように、本実施の形態としてのモデルに基づきループディレイ補償を行うものとすれば、LPF24内で完結してループディレイ補償を行うことができ、VCO26を用いる場合であれば物理的にクロックの周期を測定するような周波数/位相変換器45を設ける必要はなく、また、ITR方式を採用する場合であれば、[式11]の逆演算という複雑な処理を行う位相抽出器47を不要とすることができる。
このことから、本実施の形態によれば、ループディレイを補償することで処理速度の向上と収束性能の向上との両立を図るPLL回路を、現実的な構成として実現することができる。
【0083】
[シミュレーション結果]

以下、上記により説明した本実施の形態としてのPLL回路の効果について説明する。
なお、以下では図13に示したITR方式を採用するPLL回路についてシミュレーションを行った結果を説明するが、図12のようにVCO26を用いる場合にも同様の結果が得られる。
【0084】
以下のシミュレーションでは、PLL回路への入力波形として、1−7PP(RLL(1,7)PP、RLL:Run Length Limited,PP:Parity preserve/prohibit)変調符号にNRZ(Non Return to Zero)変調を施したデータに対しPR(0.25, 0.5, 0.25)による畳み込みを行った、PR(1,2,1)理想波形を入力した。また、オーバーサンプリングレートは1.05に設定した。
【0085】
ここで、一般に二次のPLLは、ダンピングファクタζと角自然周波数ωnによってその挙動を表すことができる。先の図12や図13などにおけるループフィルタの係数α、βの値は、この挙動に対して次の[式18]「式19」によって一意的に求めることができるものである。

【数18】

【数19】

但し、これらの式において、Kiは位相誤差ゲインであり、1−7PPのランダムパターンに対して実験的に求めることができ、予め測定しておくことができる。この場合、Kiは0.49274である。
【0086】
先ず、図14に、収束特性についてのシミュレーション結果を示す。
この図14では、横軸を時間、縦軸を位相誤差としてPLLの収束特性(位相誤差検出結果の挙動)を示している。
なお、この図14では、周波数誤差が-0.5%の場合の結果を示している。ここで周波数誤差とは、入力波形に含まれるデータの周波数とPLLに予め設定されている中心周波数との誤差を、上記中心周波数に対する比で定義したものである。
【0087】
図14において、十字印でプロットしたものが本実施の形態のPLL回路についてのシミュレーション結果を示すものである。この結果を得るにあたっては、PLL定数をζ=1.5、ωn=2.273E-02[rad/sec](サンプリング周波数を1.0として規格化)に設定した。また、ループディレイ量はD=30である。
また、比較として、図14の丸印のプロットは、同じくループディレイ量D=30としたときの、ディレイ補償を行わない場合の結果を示している。この丸印による結果を得るにあたっては、ζ=1.0, ωn=1.515E-02[rad/sec]を設定した。
さらに、参考として、図中の四角印によりループディレイがない場合(D=0)のPLL定数をζ=1.0, ωn=1.515E-02[rad/sec]としたときの結果も併せて示している。
【0088】
図14において、本来、ループディレイがない場合には、四角印の結果のようにオーバーシュートがない挙動を示すべきものとなる。しかしながら、ループディレイが存在すると、ディレイ補償なしの場合(丸印)には振動成分が現れ、不安定な制御状況となる。
これに対し、本実施の形態のディレイ補償によって、また、適切なPLL定数を与えることにより、十字印の結果が示すように、振動性の不安定成分を抑えた良好な挙動が得られることがわかる。
【0089】
このように不安定成分の抑制が図られることから、図中の矢印で比較するように、本実施の形態の場合の方がループディレイ補償を行わない場合よりも収束時間が短縮化されていることわかる。
なお、この場合、収束時間は位相誤差検出結果が±0.05%の範囲内に収束するまでの時間として定義したものである。
【0090】
また、図15は、キャプチャレンジについてのシミュレーション結果を示している。
ここで、キャプチャレンジとは、PLLが所定時間内に収束可能な周波数誤差範囲により定義したものである。
図15では、横軸を周波数誤差(正規化周波数誤差)、縦軸を収束時間(チャンネルビット数cbs)として周波数誤差に対する収束時間の変化特性を示している。図中の丸印と実線の組み合わせで示す結果がディレイ補償あり(本実施の形態)の場合の結果を示し、菱形と破線の組み合わせで示す結果がディレイ補償なしの場合の結果を示している。
【0091】
ここでは、図中の一点鎖線(収束判定)により示す、収束時間が1000チャンネルビット以下となる周波数誤差の範囲をキャプチャレンジとして定義した。図15に示す結果によれば、ディレイ補償なしの場合のキャプチャレンジはおよそ1.1%であるのに対し、ディレイ補償を行う本実施の形態の場合、キャプチャレンジはおよそ2.2%と、約2倍に拡大されていることがわかる。
【0092】
さらに、ζ及びωnを変化させたときのキャプチャレンジをコンター(等高線)で表した結果を次の図16、図17に示す。図16はディレイ補償なしの場合の結果を、また図17はディレイ補償を行う本実施の形態の場合の結果を示している。
これらの図は、ループディレイ量D=30とした場合の結果を示したものである。なお、各図では、図中に付した番号が若い領域ほどキャプチャレンジが広いことを表す。
【0093】
図16によれば、ディレイ補償を行わない場合には、PLL定数を変化させても1〜1.2%以上のキャプチャレンジが得られる領域は存在しないが、図17の本実施の形態の場合には、PLL定数を適切に選ぶことによって、2〜2.2%の領域が得られることがわかる。つまり、これら図16、図17に示す結果からも、本実施の形態のディレイ補償によってキャプチャレンジの拡大が図られることがわかる。
【0094】
<変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明してきた具体例に限定されるべきものではない。
例えば、これまでの説明では、本発明が光ディスク記録媒体について再生を行うシステムに適用される場合を例示したが、例えばHDD(Hard Disk Drive)など磁気記録媒体について再生を行うシステムに対しても好適に適用することができる。
【0095】
また、記録媒体について再生を行うシステム以外にも、データ通信システムにおいて受信信号についてのタイミング同期を図る場合などにも本発明は好適に適用できる。
【0096】
本発明としては、ループフィルタを備えて目標値と制御値との誤差を検出して該誤差の値が所定値となるように制御を行うフィードバック制御ループとして、該フィードバック制御ループに形成される開ループが、フィードバック制御ループとしての閉ループ全体の遅延と上記ループフィルタ、及び最後段の単純積分とで表現される場合において好適に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態としての信号処理回路を備えて構成される再生装置の内部構成について示したブロック図である。
【図2】VCOを用いた場合の実施の形態としての信号処理回路を含んで構成されるデータ信号処理部の内部構成を示したブロック図である。
【図3】ITR方式を採用した場合の実施の形態としての信号処理回路を含んで構成されるデータ信号処理部の内部構成を示したブロック図である。
【図4】ループディレイを目標誤差検出直後に集めたフィードバック系モデルを示した図である。
【図5】一般的なPLLのモデルを示した図である。
【図6】ループディレイを補償する従来のPLLのモデルを示した図である。
【図7】従来のPLLモデルに基づきディレイ補償を行うための実際の回路構成例(VCOを用いる場合)について示した図である。
【図8】従来のPLLモデルに基づきディレイ補償を行うための実際の回路構成例(ITR方式を採用する場合)について示した図である。
【図9】オーバーサンプリング位相情報について説明するための図である。
【図10】ループフィルタで扱われるべき位相情報について説明するための図である。
【図11】ループディレイ補償を行う実施の形態としてのPLLモデルを示した図である。
【図12】実施の形態のPLLモデルに基づきディレイ補償を行うための実際の回路構成例(VCOを用いる場合)について示した図である。
【図13】実施の形態のPLLモデルに基づきディレイ補償を行うための実際の回路構成例(ITR方式を採用する場合)について示した図である。
【図14】実施の形態のPLLモデルによる収束特性についてのシミュレーション結果を説明するための図である。
【図15】実施の形態のPLLモデルのキャプチャレンジについてのシミュレーション結果を説明するための図である。
【図16】PLL定数を変化させたときのキャプチャレンジを等高線で表した結果として、ディレイ補償を行わない場合の結果を示した図である。
【図17】PLL定数を変化させたときのキャプチャレンジを等高線で表した結果として、本実施の形態の場合の結果を示した図である。
【符号の説明】
【0098】
1 光ピックアップ、2 スピンドルモーター、3 スレッド機構、4 マトリクス回路、5 データ信号処理部、6 デコーダ、7 ウォブル信号処理回路、8 ADIP復調回路、9 アドレスデコーダ、10 システムコントローラ、11 サーボ回路、12 スピンドルサーボ回路、13 スピンドルドライバ、14 スレッドドライバ、15 ホストI/F、20 A/D変換器、21 PR等化器(PR-EQ)、22 最尤復号器、23 位相誤差検出器、24 LPF、24a 遅延ブロック(遅延器)、24b 乗算ブロック(乗算器)、24c 移動平均ブロック(移動平均計算部)、24d 加減算ブロック(加減算部)、25 D/A変換器、26 VCO、27 発振器、28 Interpolator、29 NCO、29a 加算ブロック(加算器)、29b 乗算ブロック(乗算器)、33 減算ブロック、34 遅延ブロック、35a,35b 乗算ブロック(乗算器)、35c,35e,36a 加算ブロック(加算器)、35d,36b,36c 遅延ブロック(遅延器)、50 光ディスク、100 ホスト機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループフィルタを備えると共に、目標値と制御値との誤差を検出して該誤差の値が所定値となるように制御を行うフィードバック制御ループが形成されるようにして構成された信号処理回路であり、上記フィードバック制御ループに形成される開ループが、上記フィードバック制御ループとしての閉ループ全体の遅延と上記ループフィルタ、及び最後段の単純積分とで表現されるようにして構成されている信号処理回路であって、
上記ループフィルタの出力の移動平均を計算する移動平均計算手段と、
上記ループフィルタ内で演算された値に所定のゲインを与える乗算手段と、
上記移動平均計算手段による計算結果と上記乗算手段による計算結果とが上記ループフィルタの入力に同時に帰還されるようにして上記ループフィルタの前段に設けられた合成手段と、
を備えることを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
上記ループフィルタが比例及び積分フィルタで構成された2次遅れ系の制御システムが形成されており、
上記乗算手段は、
上記ループフィルタの積分項に対して上記所定のゲインを与える、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項3】
上記移動平均計算手段は、上記ループフィルタの出力について「上記閉ループ全体の遅延量−1」回の移動平均を計算し、
上記乗算手段は、上記ループフィルタの積分項に対し「上記閉ループ全体の遅延量」を上記ゲインとして乗じ、
上記合成手段は、上記移動平均計算手段による計算結果が上記ループフィルタの入力に負帰還され、且つ上記乗算手段による計算結果が上記ループフィルタの入力に正帰還されるようにして加減算を行うように構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の信号処理回路。
【請求項4】
入力信号の位相と周波数について制御を行うPLL回路として構成されることを特徴とする請求項3に記載の信号処理回路。
【請求項5】
ループフィルタを備えると共に、目標値と制御値との誤差を検出して該誤差の値が所定値となるように制御を行うフィードバック制御ループにおいて、上記フィードバック制御ループに形成される開ループが、上記フィードバック制御ループとしての閉ループ全体の遅延と上記ループフィルタ、及び最後段の単純積分とで表現されるようにして構成されている場合において、
上記ループフィルタの出力の移動平均と、上記ループフィルタ内で演算された値に所定のゲインを与えたものとを上記ループフィルタの入力に同時に帰還する、
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項6】
記録媒体に対する少なくとも再生を行う再生装置であって、
上記記録媒体に記録された信号を読み出す読出手段と、
比例及び積分フィルタを備えて構成されたループフィルタが備えられて2次遅れ系の制御システムとしての構成を有し、上記読出手段により得られる読出信号について位相と周波数の制御を行うPLL回路とを備えると共に、
上記PLL回路は、
フィードバック制御ループに形成される開ループが、上記フィードバック制御ループとしての閉ループ全体の遅延と上記ループフィルタ、及び最後段の単純積分とで表現されるようにして構成され、且つ、
上記ループフィルタの出力の移動平均を計算する移動平均計算手段と、
上記ループフィルタの積分項に対して所定のゲインを与える乗算手段と、
上記移動平均計算手段による計算結果と上記乗算手段による計算結果とが上記ループフィルタの入力に同時に帰還されるようにして上記ループフィルタの前段に設けられた合成手段とを備える、
ことを特徴とする再生装置。
【請求項7】
上記移動平均計算手段は、上記ループフィルタの出力について「上記閉ループ全体の遅延量−1」回の移動平均を計算し、
上記乗算手段は、上記ループフィルタの積分項に対し「上記閉ループ全体の遅延量」を上記ゲインとして乗じ、
上記合成手段は、上記移動平均計算手段による計算結果が上記ループフィルタの入力に負帰還され、且つ上記乗算手段による計算結果が上記ループフィルタの入力に正帰還されるようにして加減算を行うように構成される、
ことを特徴とする請求項6に記載の再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−171247(P2009−171247A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7251(P2008−7251)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】