説明

個人認証付電子決済カード及びそれを使用した電子決済方法

【課題】生体認証方式を採用する個人認証付電子決済カード(ICカード)の認証において
、本人及び本人以外の委任を受けた特定の登録者も使用可能な個人認証付電子決済カード
及び当該個人認証付電子決済カードを使用した電子決済方法を提供する。
【解決手段】電子決済に使用する個人認証付電子決済カード(1)であって、前記個人認証
付電子決済カードには、電子決済を必要とする商品の購入をした本人の電子決済に関する
少なくともIDを含む本人データ(1-2a)及び本人の生体認証データ(1-2b)と、前記本人から
電子決済の権限を委任することが可能な、少なくとも1名の登録者の生体認証データ(1-
2c,1-2d)とが格納され、前記個人認証付電子決済カードに格納されている生体情報を読
出して電子決済に伴う個人認証を実行することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証付電子決済カード(ICカード)及びそれを使用して購買した商品の
受取時における電子決済方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品の購入時若しくは受渡時における購入商品の電子決算に使用されるICカードとして
、ICカード自身に指紋データを登録させ、指紋センサにより読み取ったデータと比較して
一致したときにのみカードを利用可能にする技術が知られている。(特許文献1参照)
【0003】
従来のICカードとしては、ICカード内の不揮発性メモリに使用者の指紋を登録するとと
もに、使用時には、感熱材に使用者の指紋を転写した上で、ICカード読取器によって、感
熱材の指紋を読み取り、不揮発性メモリに登録された使用者の指紋と照合することにより
、使用者のみがそのICカードを使用でき、第三者による不正使用を防止することが知られ
ている。また、指紋に代えて、声紋等によって使用者本人であるかどうかを認証する生体
情報による認証方式も知られている。
【0004】
また、インターネットや携帯電話を使用商品の購入システムとして、購入した商品の自
宅等における受取時に、電子決済を行うことも知られている。
【特許文献1】特開平09−171547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のICカードを使用した生体認証方式や声紋等による生体認証方式では、セキュリテ
ィの面からICカードを使用できるのは、使用者のみに限定され、それ以外の者が使用でき
ないという問題があった。
しかし、上述のインターネットや携帯電話を使用した商品購入システムを利用して、購
入した商品の自宅等における受取時に電子決済を実行する際に、商品を購入した本人が在
宅ではない場合がある。
その場合に、商品を購入した本人以外の家族等の関係者でも、商品を購入した本人のIC
カード若しくは口座に基づく電子決済ができないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、生体認証方式を採用する個人認証付電子決済カード(ICカード)の認
証において、本人及び本人以外の委任を受けた特定の登録者も使用可能な個人認証付電子
決済カード及び当該個人認証付電子決済カードを使用した電子決済方法を提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の個人認証付電子決済カードは、
電子決済に使用する個人認証付電子決済カードであって、前記個人認証付電子決済カー
ドには、電子決済を必要とする商品の購入をした本人の電子決済に関する少なくともIDを
含む個人データ及び本人の生体認証データと、前記本人から電子決済の権限を委任するこ
とが可能な、少なくとも1名の登録者の生体認証データとが格納され、前記個人認証付電
子決済カードに格納されている生体情報を読出して電子決済に伴う個人認証を実行とする
ことを特徴とする。
【0008】
また、前記個人認証は、当該電子決済に伴う本人の委任をした場合に限って、前記委任
された登録者の生体情報を読出可能にして、電子決済に伴う個人認証を実行とすることを
特徴とする。
また、前記生体認証データには、指紋、掌紋、虹彩、顔、静脈パターン、音声、耳型、
DNAの内の少なくとも一つから選択されることを特徴とする。
また、前記電子決済には、当該個人認証付電子決済カードに予め予納された金額内での
電子決済、又は、当該個人認証付電子決済カードに登録された金融機関の口座からの電子
決済が含まれることを特徴とする。
【0009】
また、前記個人認証付電子決済カードには、委任された登録者毎に委任条件が付与され
ていることを特徴とする。
また、前記付与された委任条件は、1回の電子決済の最大金額であることを特徴とする

また、前記付与された委任条件は、電子決済可能な期間であることを特徴とする請求項
5に記載の個人認証付電子決済カード。
また、前記個人認証付電子決済カードは、本人カードと、登録者カードが個別に発行さ
れることを特徴とする。
また、前記個人認証付電子決済カードは、前記購入した商品の受取時の決済に使用され
ることを特徴とする。
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の電子決済方法は、
個人認証付電子決済カードを使用した電子決済方法であって、
商品を購入した本人が、電子決済に関する前記登録者の少なくとも1名に対する委任の
有無及び委任条件を設定する委任設定ステップと、
前記購入した商品の受取時に、前記委任設定ステップで、委任の設定がなされた場合に
のみ、前記個人認証付電子決済カードから、委任された登録者の生体情報を読出として、
電子決済に伴う個人認証を実行するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の個人認証付電子決済カードには、本人及び本人以外の委任を受けた特定の登録
者の生体認証データが個人認証付電子決済カード本体に格納されているので、ホストコン
ピュータへのアクセス無しに、既に予納された金額の範囲内であれば、本人のみでなく、
委任された者でも電子決済端末での電子決済が可能である。
また、委任をする場合でも、対象者毎に、委任条件として1回の電子決済の最大金額、
電子決済可能な期間等自由に決定できるので、個人認証付電子決済カードの利用の範囲を
従来のカードに比較して拡大できる。
また、個人認証を実行するための生体情報として、指紋、掌紋、虹彩、顔、静脈パター
ン、音声、耳型、DNAの内の少なくとも一つを選択できるので、電子決済端末の設置場
所等の条件に合致した生体情報を選択できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の生体情報を読出して電子決済に伴う個人認証を実行に使用する個人認証付電子
決済カードの説明に先立て、従来の個人認証付ICカードの構成を図2を用いて説明する。
図2において、1は従来の電子決済に伴う個人認証を実行に使用する個人認証付ICカー
ドの構成を示す図である。
1の個人認証付ICカードは、制御部1-1、記憶部1-2及びアンテナ1-3を有する。
記憶部1-2には、少なくとも当該ICカードを保有する本人のID、金融機関の口座データ
及び/又は予納金額データが個人データとして1-2aに格納されている。
なお、本発明では、IDとは、当該顧客を一意に識別できる識別情報(例えば、数値やア
ルファベット等で構成されるコードである。この識別情報を「顧客(本人)ID」という。

また、記憶部1-2には、本人の個人認証を実行するために、生体情報として、例えば指
紋データが1-2bに格納されている。
また、アンテナ1-3は図示しない外部機器(電子決済処理装置)と当該ICカードとの間
の電子決済処理に伴うデータの送受を非接触状態で行うための送受信アンテナであって、
ICカードが接触式通信の場合には、アンテナは省略されて、前記外部機器の代わりにカー
ド挿入孔(接触端子)が設けられる。
【0013】
従来のICカードでは、本人だけが当該ICカードを使用する前提で設計されているため、
記憶部1-2に記憶されるデータとして、当該ICカードを保有する本人の少なくともIDを含
む本人データと当該本人が契約している金融機関の口座データ、予納金額データ及び、本
人の認証データ(指紋データ)だけであった。
【0014】
次に、本発明の生体情報を読出して電子決済に伴う個人認証の実行に使用する個人認証
付電子決済カード(ICカード)構成を図1を用いて説明する。
図1において、1は電子決済に伴う個人認証の実行に使用する個人認証付電子決済カー
ドである。
1の個人認証付電子決済カードは、従来のICカードと同様に、制御部1-1、記憶部1-2及
びアンテナ1-3を有する。
記憶部1-2には、当該個人認証付電子決済カードを保有する本人のIDを含む本人データ
と、当該本人が契約している金融機関の口座データ及び/又は予納金額データが1-2aに格
納されている。
また、記憶部1-2には、本人の個人認証を実行するために、生体情報として、指紋、掌
紋、虹彩、顔、静脈パターン、音声、耳型、DNAの内の少なくとも一つが1-2bに格納さ
れている。
【0015】
記憶部1-2には更に、本人から委任を受けることが可能な登録者の個人認証を実行する
ために、生体情報として、指紋、掌紋、虹彩、顔、静脈パターン、音声、耳型、DNAの
内の少なくとも一つが1-2c及び1-2dに格納されている。
また、前記記憶部の1-2c及び1-2dには、本人から当該登録者毎に委任の条件として電子
決済の実行可能な期間、1回の電子決済での最大金額等の委任条件が格納されている。
また、アンテナ1-3は、図示しない外部機器(電子決済処理装置)と当該個人認証付電
子決済カードとの間の電子決済処理に伴うデータの送受を非接触状態で行うための送受信
アンテナである。個人認証付電子決済カードが接触式通信の場合には、アンテナは省略さ
れて、代わりに前記外部機器にカード挿入孔(接触端子)が設けられる。
なお、以上のような記憶部1-2に本人や登録者の個人認証に関する情報が格納されてい
るカードは、本人カード、登録者カードとして別々に発行されても良いし、1枚のカード
として発行されても良い。
【0016】
次に、本発明の個人認証付電子決済カードを使用した電子決済方法の手順を図3のフロ
ーチャートを用いて説明する。
・インターネット又は携帯電話を使用した商品購入システムを利用して、本発明の個人認
証付電子決済カードの保有者が商品の自宅等における受取時に電子決済を実行する契約で
商品を購入する。(ステップS1)
・当該購入時又は事前に購入した商品の受取りを本発明の個人認証付電子決済カードに予
め登録された登録者に委任するか否かの設定をする。(ステップS2)
・前記委任を設定するには、電子決済の実行可能な期間、1回の電子決済での最大金額等
の委任条件を設定する。(ステップS3)
・上記ステップS1〜ステップS3は、商品購入時の手順である。
【0017】
・自宅等(必ずしも自宅である必要はなく、他の予め決められた場所でも良い。)で購入
した商品を受取る。(ステップS4)
・そこで、本発明の個人認証付電子決済カードと、電子決済端末との間で電子決済処理に
必要なデータ伝送を実行する。
・先ず、受取人が個人認証付電子決済カードの保有本人か否かの判断をする。(本人カー
ドと、登録者カードが個別に発行される場合)(ステップS5)
・ステップS5の判断が、No(本人以外)の場合には、本人から委任されているか否かの判
断をする。(ステップS6)
・ステップS6での判断がYes(受取人が委任されている)の場合には、受取人(登録者)
の委任条件の設定が委任期間内であるか否かの判断をする。(ステップS7)
・ステップS7での判断がYes(委任期間内)の場合には、委任条件の設定の1回の電子決
済の最大金額内であるか否かの判断をする。(ステップS8)
・ステップS8での判断がYes(1回の電子決済の最大金額内である)の場合は、受取人の
認証データである生体情報として、指紋、掌紋、虹彩、顔、静脈パターン、音声、耳型、
DNAの内の少なくとも一つ)を記録部1-2c(又は1-2d)から読出す。(ステップS9)
・ステップS9で読出した認証データと、前記電子決済端末で読取った受取人本人の認証デ
ータと一致するか否かの判断をする。(ステップS10)
・ステップS11での判断がYesの場合には、電子決済が実行される。(ステップS11)
【0018】
・電子決済の結果は、個人認証付電子決済カードの本人口座データ(予納金額データ)に
反映される。
・ステップS5の判断がYes(本人)の場合は、ステップS9の手順として、
・ステップS8での判断がYes(1回の電子決済の最大金額内である)の場合は、本人の認
証データである生体情報として、指紋、掌紋、虹彩、顔、静脈パターン、音声、耳型、D
NAの内の少なくとも一つ)を記録部1-2aから読出して以下の手順を実行する。
・ステップS6、ステップS7、ステップS8の判断が、Noの場合は、ステップS5に戻る。
【0019】
上述のごとく、生体認証方式を採用する個人認証付電子決済カードの認証を利用した購
入商品の電子決済を、本人及び本人以外の委任を受けた特定の登録者でも当該個人認証付
電子決済カードを使用して電子決済が実現できる。
【0020】
図3の手順では、本発明の個人認証付電子決済カードを商品の電子決済を行う際に使用
するものとして開示しているが、本発明の個人認証付電子決済カードは、本人が委任した
登録者の認証手段としてその他の利用分野にも適用可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の電子決済に伴う個人認証の実行に使用する個人認証付電子決済カードの構成を示す図である。
【図2】従来の電子決済に伴う個人認証の実行に使用する個人認証付ICカードの構成を示す図である。
【図3】本発明の個人認証付電子決済カードを使用した電子決済方法の手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1:個人認証付電子決済カード
1-1:制御部(CPU)
1-2:記憶部
1-2a:本人データ
1-2b:本人生体認証データ
1-2c:登録者(a)生体認証データ
1-2d:登録者(b)生体認証データ
1-3:アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子決済に使用する個人認証付電子決済カードであって、
前記個人認証付電子決済カードには、
電子決済を必要とする商品の購入をした本人の電子決済に関する少なくともIDを含む個
人データ及び本人の生体認証データと、前記本人から電子決済の権限を委任することが可
能な、少なくとも1名の登録者の生体認証データとが格納され、
前記個人認証付電子決済カードに格納されている生体情報を読出して電子決済に伴う個
人認証を実行とすることを特徴とする個人認証付電子決済カード。
【請求項2】
前記個人認証は、当該電子決済に伴う本人の委任をした場合に限って、前記委任された
登録者の生体情報を読出可能にして、電子決済に伴う個人認証を実行とすることを特徴と
する請求項1に記載の個人認証付電子決済カード。
【請求項3】
前記生体認証データには、指紋、掌紋、虹彩、顔、静脈パターン、音声、耳型、DNA
の内の少なくとも一つから選択されることを特徴とする請求項1に記載の個人認証付電子
決済カード。
【請求項4】
前記電子決済には、当該個人認証付電子決済カードに予め予納された金額内での電子決
済、又は、当該個人認証付電子決済カードに登録された金融機関の口座からの電子決済が
含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の個人認証付電子決済カー
ド。
【請求項5】
前記個人認証付電子決済カードには、委任された登録者毎に委任条件が付与されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の個人認証付電子決済カード。
【請求項6】
前記付与された委任条件は、1回の電子決済の最大金額であることを特徴とする請求項
5に記載の個人認証付電子決済カード。
【請求項7】
前記付与された委任条件は、電子決済可能な期間であることを特徴とする請求項5に記
載の個人認証付電子決済カード。
【請求項8】
前記個人認証付電子決済カードは、本人カードと、登録者カードが個別に発行されるこ
とを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の個人認証付電子決済カード。
【請求項9】
前記個人認証付電子決済カードは、前記購入した商品の受取時の決済に使用されること
を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の個人認証付電子決済カード。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の個人認証付電子決済カードを使用した電子決済方法であって、
商品を購入した本人が、電子決済に関する前記登録者の少なくとも1名に対する委任の
有無及び委任条件を設定する委任設定ステップと、
前記購入した商品の受取時に、前記委任設定ステップで、委任の設定がなされた場合に
のみ、前記個人認証付電子決済カードから、委任された登録者の生体情報を読出として、
電子決済に伴う個人認証を実行するステップを含むことを特徴とする電子決済方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−152841(P2010−152841A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332975(P2008−332975)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】