説明

倒立振子型移動体

【課題】搭乗者の意思に基づく走行指令に従ってバランスを保ちながら走行制御が行われる倒立振子型移動体において、搭乗者の意思に基づく操縦モードと、搭乗者の意思に基づかない自動運転モードとを実現することができる倒立振子型移動体を提供する。
【解決手段】搭乗者の意思に基づく走行指令に従ってバランスを保ちながら車体の走行制御が行われる倒立振子型移動体において、制御装置から出力される操作信号に従って搭乗者の重心位置を調節するための重心位置調節手段を備え、制御装置は、搭乗者の意思に基づかないで所定の走行制御を行う自動運転モードへの切り換え指令が生成されたときに、目標となる走行状態が実現される重心位置となるように重心位置調節手段を制御し、重心位置に基づく走行指令に従って車輪駆動手段の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭乗者の意思に基づく走行指令に従ってバランスを保ちながら走行制御が行われる倒立振子型移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、転倒しやすい不安定車両を、バランスを保ちながら安定して走行するように構成した倒立振子型移動体が知られている。この倒立振子型移動体の一態様として、同一軸線上に配置された一対の車輪を備え、搭乗者による重心移動に基づいて一対の車輪を回転駆動させる電動モータの出力を制御して、車体のバランスを保ちながら走行する同軸二輪車がある。
【0003】
このような同軸二輪車は、搭乗者の重心移動に基づいて生成される前進又は後進のための走行目標値に追従する並進運動制御と、不安定車両が転倒しないようにフィードバック制御あるいはロバスト制御が行われる倒立制御との重ね合わせによって走行制御が実行されるようになっている。(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−305082号公報
【特許文献2】特開2004−295430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような同軸二輪車をはじめとしてこれまでに開発されている倒立振子型移動体は、搭乗者の体重移動に基づいて走行制御が行われる操縦モードで制御されるものとなっている。一方、このような倒立振子型移動体において、他の移動体との通信や、走行情報の入力、あるいは、センサ等による環境認知などに基づき、何らかのアルゴリズムで生成された走行目標値を用いて、搭乗者の意思によらないで走行制御を行う自動運転モードを切り換えながら利用することが可能となれば、倒立振子型移動体の使用場面が格段に広げられ、さらに有用なものとなる。
【0006】
しかしながら、上述したとおり、倒立振子型移動体の走行制御は、並進運動制御と倒立制御との重ね合わせによって行われるために、自動運転モードでの走行制御中に搭乗者が体重移動すると、それに応じて車体が転倒しないように倒立制御が実行されて並進運動制御に影響を及ぼすこととなる。例えば、自動運転モードにおいて生成された走行目標値が、減速あるいは停止せよという目標値であった場合に、搭乗者が前方に傾動して重心が前方に移動すると、倒立制御では車体が転倒しないように前進の指令が出力される。
【0007】
このように、自動運転モードにおいて並進運動制御と倒立制御とが矛盾した指令を出力する可能性がある状態では、操縦モードと自動運転モードとを切換可能な倒立振子型移動体を実現することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明の発明者らはこのような問題に鑑みて、自動運転モードでの走行制御が実行される期間においては、搭乗者の重心位置が、目標となる走行状態を実現するための重心位置となるように、重心位置を調節可能にすることによりこのような問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
したがって、本発明は、搭乗者の意思に基づく走行指令に従ってバランスを保ちながら走行制御が行われる倒立振子型移動体において、搭乗者の意思に基づく操縦モードと、搭乗者の意思に基づかない自動運転モードとを実現することができる倒立振子型移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、搭乗者が搭乗する搭乗部を有する車体と、同一軸線上に配置されるとともに車体に回転可能に支持された一対の車輪と、車輪を回転駆動させる車輪駆動手段と、搭乗者の重心位置を検出するための重心位置検出手段と、搭乗者の意思に基づく走行指令に従ってバランスを保ちながら車体を走行させるために車輪駆動手段の制御を行う制御装置と、を備えた倒立振子型移動体において、制御装置から出力される操作信号に従って搭乗者の重心位置を調節するための重心位置調節手段を備え、制御装置は、搭乗者の意思に基づかないで所定の走行制御を行う自動運転モードへの切り換え指令が生成されたときに、目標となる走行状態が実現される重心位置となるように重心位置調節手段を制御し、重心位置に基づく走行指令に従って車輪駆動手段の制御を行うことを特徴とする倒立振子型移動体が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0010】
すなわち、本発明の倒立振子型移動体は、重心位置を調節する重心位置調節手段を備えており、自動運転モード中には、重心位置に従って出力される車輪駆動手段の制御信号が目標走行状態に応じた値となるように、制御装置によって重心位置調節手段の制御が行われる。そのために、移動体の転倒を防ぐための倒立制御の出力と、所定の走行状態を得るための並進運動制御の出力との矛盾を生じさせることなく、倒立振子型移動体を自動運転モードで走行制御することができる。したがって、操縦モードと自動運転モードとを切換可能な倒立振子型移動体を実現することができる。
【0011】
また、本発明の倒立振子型移動体を構成するにあたり、制御装置は、目標となる走行状態を実現するための目標重心位置と、重心位置検出手段を用いて検出される重心位置と、に基づいて、重心位置調節手段の操作量を決定することが好ましい。
【0012】
本発明において、目標重心位置と現在の重心位置とに基づき重心位置調節手段の操作量が決定されるように制御装置を構成することにより、目標重心位置とのずれに応じて重心位置が調節され、重心位置を目標重心位置に速やかに移動させることができる。
【0013】
また、本発明の倒立振子型移動体を構成するにあたり、自動運転モードが障害回避運転を自動で行う自動障害回避運転モードを含み、倒立振子型移動体は、周囲に存在する障害情報を検知するための障害検出手段を備え、制御装置は、倒立振子型移動体の走行情報及び障害情報に基づいて自動障害回避運転モードに切り換え、障害回避のための操作信号を出力することが好ましい。
【0014】
本発明において、自動運転モードとして自動障害回避運転モードで走行制御できるように倒立振子型移動体を構成することにより、走行中に、人や障害物、段差等が迫ってきた場合に、それらの障害を回避する運転が行われ、衝突や転倒を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の倒立振子型移動体を構成するにあたり、自動運転モードが他の移動体との協調運転を自動で行う自動協調運転モードを含み、制御装置は、協調運転を開始する指令を受けて自動協調運転モードに切り換え、他の移動体の走行情報に応じて操作信号を出力することが好ましい。
【0016】
本発明において、自動運転モードとして自動協調運転モードで走行制御できるように倒立振子型移動体を構成することにより、搭乗者自ら重心移動をすることなく、他の移動体に追従して走行することができるようになる。
【0017】
また、本発明の倒立振子型移動体を構成するにあたり、自動運転モードが目的地までの自動ガイド運転を行う自動ガイド運転モードを含み、制御装置は、自動ガイド運転を開始する指令を受けて自動ガイド運転モードに切り換え、セットされた目標走行情報に応じて操作信号を出力することが好ましい。
【0018】
本発明において、自動運転モードとして自動ガイド運転で走行制御できるように倒立振子型移動体を構成することにより、搭乗者自ら重心移動をすることなく、所定の目的地に向けて走行することができるようになる。
【0019】
また、本発明の倒立振子型移動体を構成するにあたり、重心位置調節手段が、操作信号に基づいて水平方向に対する搭乗部の傾斜角度を調節する手段を有する搭乗部傾斜角可変機構によって構成されることが好ましい。
【0020】
本発明において、水平方向に対する搭乗部の傾斜角度を変えられる機構によって重心位置調節手段を構成することにより、搭乗部が平面方向に移動することがないために移動体の平面方向の大きさが大きくなることを防ぐことができるとともに、重心位置を様々な方向に移動させることができる。
【0021】
また、本発明の倒立振子型移動体を構成するにあたり、重心位置調節手段が、操作信号に基づいて前記車体に対する搭乗部の位置を調節とする手段を有する搭乗部位置可変機構によって構成されることが好ましい。
【0022】
本発明において、車体に対する搭乗部の位置を変えられる機構によって重心位置調節手段を構成することにより、搭乗部を平面的にスライドさせて重心位置を直接移動させることができるようになり、重心位置の調節を容易に行うことができる。
【0023】
また、本発明の倒立振子型移動体を構成するにあたり、重心位置調節手段が、車体に対する位置が可変に構成された慣性体と、操作信号に基づいて慣性体の位置を調節する位置調節手段と、によって構成されることが好ましい。
【0024】
本発明において、車体に対する位置が可変な慣性体を用いて重心位置調節手段を構成することにより、搭乗部を動かすことなく重心位置を移動させることができ、搭乗者への違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態にかかる倒立振子型移動体の正面図及び側面図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる倒立振子型移動体の制御回路図である。
【図3】本発明にかかる倒立振子型移動体の制御方法の一例を説明するためのフローチャート図である。
【図4】第1の実施の形態にかかる倒立振子型移動体の制御方法における自動運転切換判定の一例を説明するためのフローチャート図である。
【図5】第1の実施の形態にかかる倒立振子型移動体の制御方法における目標走行状態の決定方法の一例を説明するためのフローチャート図である。
【図6】第2の実施の形態にかかる倒立振子型移動体の正面図及び側面図である。
【図7】第2の実施の形態にかかる倒立振子型移動体の制御回路図である。
【図8】第2及び第3の実施の形態にかかる倒立振子型移動体の制御方法における自動運転切換判定の一例を説明するためのフローチャート図である。
【図9】第3の実施の形態にかかる倒立振子型移動体の正面図及び側面図である。
【図10】第3の実施の形態にかかる倒立振子型移動体の制御回路図である。
【図11】構成の異なる重心位置検出手段を備えた倒立振子型移動体の正面図及び側面図である。
【図12】構成の異なる重心位置検出手段を備えた倒立振子型移動体の正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面を参照して、本発明にかかる倒立振子型移動体に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、以下の実施の形態は、本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては同一の部材が示され、適宜説明が省略されている。
【0027】
[第1の実施の形態]
まず、本発明にかかる第1の実施の形態の倒立振子型移動体(以下、単に「移動体」と称する場合がある。)として、自動運転モードとしての自動障害回避運転モードでの走行制御を実行可能に構成された倒立振子型移動体について説明する。
【0028】
1.倒立振子型移動体の構成
図1(a)は本実施形態の移動体10の正面図を示し、図1(b)は移動体10の側面図を示している。また、図2は本実施形態の移動体10の制御回路図を示している。
【0029】
この移動体10は、車体11と、左右一対の車輪13L,13Rと、ハンドル15とを備えた同軸二輪車として構成されている。一対の車輪13L,13Rは、移動体10の前後方向に対して直交する左右方向の両側において同一軸線上に配置されるとともに、車体11に対して回転可能に支持されている。また、一対の車輪13L,13Rは、モータボックス17内に収容された車輪駆動手段としての左輪駆動モータ31、右輪駆動モータ32に接続されている。
【0030】
車体11の上面には、搭乗者が搭乗時に両足を載せる搭乗部19が設けられている。この搭乗部19には重心位置調節手段が設けられている。本実施形態の移動体10では、水平方向に対する傾斜角度を調節することによって重心位置を調節できるようになっている。
【0031】
図1(a)及び(b)に示す移動体10の例では、弾性的に搭乗部19を支持する複数のコイルスプリング23と、それぞれ垂直方向に伸縮可能な複数のシリンダA35、シリンダB36、シリンダC37・・・によって搭乗部19が支持され、各シリンダA35、シリンダB36、シリンダC37・・・の伸縮量をそれぞれ調節することによって搭乗部19の傾斜角度が可変とされた機構となっている。このように重心位置調節手段を構成することにより、搭乗部19が平面方向に移動しない構成となり、移動体10の平面方向の大きさが大きくなることを防ぐことができる。
【0032】
この重心位置調節手段としての複数のシリンダA35、シリンダB36、シリンダC37・・・は、電動式、油圧式、空圧式等の公知のシリンダを用いることができる。また、傾斜角度を可変とする機構の構成は、上述の例に制限されるものではない。
【0033】
また、車体11には搭乗者の重心位置を検出するための重心位置検出手段25が備えられている。重心位置検出手段25は、例えば、搭乗部19の上面あるいは内部に設けられた感圧センサが用いられる。感圧センサを用いる場合には、検出される圧力分布に基づいて搭乗者の重心位置を検出することができる。重心位置検出手段25は、感圧センサ以外にも、重心位置に応じた静電容量を検知することで重心位置を検出するように構成される歪ゲージや、角速度センサを用いて構成されて搭乗部19の水平方向に対する傾斜角度を検出することで重心位置を検出するように構成される傾斜角センサ又はジャイロセンサを用いることもできる。
【0034】
また、本実施形態の移動体10には、周囲に存在する障害の情報を検知するための障害検出手段27が備えられている。この障害物検出手段27は、移動体10の走行方向に存在する人や障害物、段差等、移動体10の走行に障害となるものの情報を検出するために用いられる。障害検出手段27の代表的な例としては、超音波や赤外線、レーザ、レーダー、ミリ波等の電磁波や光学波を送受信することで障害を検知するセンサ等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
また、倒立振子型移動体10には、一対の車輪13L,13Rを駆動する左輪駆動モータ31及び右輪駆動モータ32や、搭乗部19の傾斜角を調節するシリンダA35、シリンダB36、シリンダC37・・・の駆動制御を行う制御装置50が備えられている。制御装置50は、基本的に、重心位置検出手段25を用いて検出される搭乗者の重心位置に従って、バランスを保ちながら移動体10が前進又は後退するように左輪駆動モータ31及び右輪駆動モータ32の出力を制御するように構成されている。これらの左輪駆動モータ31及び右輪駆動モータ32の出力を決定する基となる搭乗者の重心位置は、操縦モードにおいては搭乗者がその意思に基づいて所望の位置に置かれる一方、自動運転モードにおいては制御装置50がシリンダA35、シリンダB36、シリンダC37・・・の伸縮量を調節することによって移動させられる。
【0036】
制御装置50は、例えば、マイクロコンピュータ(CPU)を有する演算回路51と、プログラムメモリやデータメモリその他のRAMやROMを有する記憶手段53等を備えて構成されている。この制御装置50は、障害情報を検出する障害検出手段27からの検出信号と、重心位置検出手段25からの検出信号とを受信可能になっている。また、制御装置50には、左輪駆動モータ31及び右輪駆動モータ32をそれぞれ駆動するモータ駆動回路41,42と、搭乗部19の傾斜角度を調節するためのシリンダA35、シリンダB36、シリンダC37・・・をそれぞれ駆動するシリンダ駆動回路45,46,47・・・とが接続されている。
【0037】
モータ駆動回路41,42は、一対の車輪13L,13Rの回転速度や回転方向等を個別に制御するものであり、左輪駆動モータ31及び右輪駆動モータ32が個別に接続されている。シリンダ駆動回路45,46,47・・・は、シリンダA35、シリンダB36、シリンダC37・・・の伸縮を個別に制御するものであり、シリンダA35、シリンダB36、シリンダC37・・・が個別に接続されている。
【0038】
2.倒立振子型移動体の制御方法
次に、本実施形態の倒立振子型移動体10の制御方法を、図3〜図5のフローチャート図に基づいて説明する。
【0039】
まず、図3のステップS1において、制御装置50は、移動体10の制御モードを自動運転モードに切り換えるか否かを判定する。ここで、図4は、自動障害回避運転モードでの走行制御を実行可能な本実施形態の移動体10による、自動障害回避運転モードへの切り換え判定の具体的なフローの一例を示している。
【0040】
図4において、まず、ステップS11では、制御装置50は障害検出手段の検出信号に基づいて、移動体10から障害までの距離を算出する。次いで、ステップS12において、制御装置50は各車輪の回転速度や回転方向等の現在の移動体10の走行状態を読み込む。その後、ステップS13において、制御装置50は、ステップS11で検出された距離と、ステップS12で読み込まれた走行状態とに基づいて演算を行い、障害までの到達時間を予測する。
【0041】
到達予測時間が得られると、ステップS14において、制御装置50は到達予測時間が閾値Ta以下であるか否かを判定する。このときの閾値Taは、自動障害回避運転モードに切り換える時期を規定するものであり、あらかじめ安全性等を考慮して適宜設定することができる。
【0042】
そして、ステップS14においてYesと判定された場合、すなわち、障害到達予測時間が閾値Ta以下となっている場合には、ステップS15に進み、制御装置50は自動運転モードを選択して自動運転切換判定を終了する。一方、ステップS14においてNoと判定された場合、すなわち、障害到達予測時間が閾値Taを超えている場合には、ステップS16に進み、制御装置50は操縦モードを選択して自動運転切換判定を終了する。このような例によって、図3のステップS1の判定が行われる。
【0043】
図3に戻り、ステップS1の判定結果がNoであった場合には、ステップS10に進み、制御装置50は制御モードを操縦モードに切り換え、あるいは、維持する。この場合には、制御装置50は、ステップS7に進んで重心位置検出手段25の検出信号に基づき現在の搭乗者の重心位置を検出する。このときの重心位置は、搭乗者の意思に基づいて所望の位置に調節されたものとなっている。
【0044】
重心位置が検出された後、制御装置50は、ステップS8において、一対の車輪13L,13Rを駆動する左輪駆動モータ31、右輪駆動モータ32の目標出力を演算によって求める。例えば、あらかじめ制御装置50の記憶手段53に記憶された出力マップ情報に基づいて目標出力を算出する。このとき、重心位置だけでなく、さらに単位時間当たりの重心の移動量(重心移動速度)を考慮して、目標出力を算出するようにしてもよい。
【0045】
次いで、ステップS9において、ステップS8で求められた左輪駆動モータ31、右輪駆動モータ32の目標出力を、電流値を表す制御信号に変換して、モータ駆動回路41,42に対して出力する。その結果、一対の車輪13L,13Rがそれぞれ左輪駆動モータ31,右輪駆動モータ32によって回転駆動され、搭乗者の意思に応じた走行状態が実現される。
【0046】
一方、ステップS1の判定結果がYesであった場合には、ステップS2に進み、制御装置50は制御モードを自動運転モードに切り換え、あるいは、維持する。この場合には、制御装置50は、ステップS3に進んで目標走行状態に基づく目標重心位置を演算により求める。ここで、図5は、自動障害回避運転モードでの走行制御を実行可能な本実施形態の移動体10における、目標走行状態の決定方法の具体的なフローの一例を示している。
【0047】
図5において、まずステップS21では、制御装置50は、図4のステップS13で算出された到達予測時間が閾値Tb以上であるか否かを判定する。このときの閾値Tbは、移動体10が障害にどの程度近づいているかを判定するためのものであって、自動回避運転によって移動体10を一旦減速させるか、あるいは速やかに停止させるかを切り分けるための基準として用いられる。この閾値Tbについても、あらかじめ安全性等を考慮して適宜設定される。
【0048】
ステップS21においてYesと判定された場合にはステップS22に進み、制御装置50は、移動体10を減速させる制御の実行を選択して、目標走行状態の設定を行う。減速のさせ方は特に制限されるものではなく、種々の態様が考えられる。例えば、移動体10の速度があらかじめ決められた速度となるように制御したり、現在の移動体10の速度を基準として所定割合又は所定量まで減速されるように制御したりすることができる。さらには、一対の車輪13L,13Rをそれぞれ異なる出力で制御して、移動体10を旋回させるようにしてもよい。
【0049】
一方、ステップS21においてNoと判定された場合にはステップS23に進み、制御装置50は、移動体10を速やかに停止させる制御の実行を選択して、目標走行状態の設定を行う。停止のさせ方についても特に制限されるものではなく、種々の態様が考えられる。
【0050】
図3に戻り、ステップS3では、図5の例のようにして設定された目標走行状態が実現されるための目標重心位置が求められる。例えば、あらかじめ制御装置50の記憶手段53に記憶された重心位置マップ情報に基づいて目標重心位置を算出する。この重心位置マップ情報は、一対の車輪13L,13Rを駆動する左輪駆動モータ31、右輪駆動モータ32の目標出力と、移動体10のバランスとに従って目標重心位置が決定されるものとなっている。あるいは、所定の計算式によって目標重心位置を算出するようにしてもよい。
【0051】
次いで、制御装置50は、ステップS4において、重心位置検出手段25の検出信号に基づいて現在の重心位置を検出した後、ステップS5において、現在の重心位置が目標重心位置にずらされるように、各シリンダ35,36,37・・・の操作量を演算によって求める。このときの演算方法については特に制限されるものではないが、例えば、水平方向に延在するXY平面上におけるX軸方向への移動量とY軸方向への移動量とを求め、これらの情報に基づいて各シリンダ35,36,37・・・の操作量を決定することができる。
【0052】
次いで、ステップS6において、制御装置50は、各シリンダ35,36,37・・・の操作量を、それぞれのシリンダ35,36,37・・・の駆動部の制御信号に変換して、シリンダ駆動回路45,46,47・・・に対して出力する。その結果、重心位置が移動し始める。
【0053】
その後、制御装置50は、上述したステップS7〜ステップS9の手順に沿って、一対の車輪13L,13Rを駆動する左輪駆動モータ31、右輪駆動モータ32の出力を重心位置に応じて求めるとともに、電流値を表す制御信号に変換して、モータ駆動回路41,42に対して出力する。このときの重心位置は、搭乗者の意思に基づかないものであって、制御装置50によって調節されたものとなっている。
【0054】
ステップS9でモータ駆動回路41,42に対して制御信号が出力された後は、再びステップS1に戻り、これまで説明した手順に沿って演算処理が繰り返される。
なお、ステップS2で移動体10の制御モードを自動運転モードに切り換える際に、同時に、移動体10が障害に接近していることを搭乗者に対して知らせるために、操作盤等への表示や警告ランプの点灯を行ったり、警報音を発生させたりしてもよい。
【0055】
以上説明した本実施形態の移動体10によれば、搭乗者の意思に基づいて移動体10が走行している間に、移動体10が人や障害物に衝突したり、段差等に乗り上げたりする状況が予測される場合には、制御モードが自動運転モードに切り換えられる。この自動運転モードは、目標走行状態に基づいて重心位置を移動させて、左輪駆動モータ31及び右輪駆動モータ32の出力を制御するものであるために、並進運転制御の出力と倒立制御の出力とが矛盾を生じた状態になることはない。したがって、搭乗者の意思に基づく走行中に、衝突等を自動で回避することができる移動体10を実現することができるようになる。
【0056】
また、移動体10を減速、旋回、又は停止させる制御を実行することによって、障害を回避するだけでなく、仮に移動体10が障害に衝突等する場合であっても、衝突時の被害を軽減することができるようになる。
【0057】
また、本実施形態の移動体10では、現在の重心位置を目標重心位置に移動させるために、水平方向に延在するXY平面上におけるX軸方向の移動量とY軸方向の移動量とに基づいて重心位置調節手段の操作量を決定するように構成されているために、重心位置を速やかに、かつ、正確に目標重心位置へと移動させることができる。したがって、衝突等を回避するための走行状態を精度よく実現することができる。
【0058】
[第2の実施の形態]
次に、本発明にかかる第2の実施の形態の倒立振子型移動体として、自動運転モードとしての自動協調運転モードでの走行制御を実行可能に構成された倒立振子型移動体について説明する。
【0059】
1.倒立振子型移動体の構成
図6(a)は本実施形態の移動体100の正面を示し、図6(b)は移動体100の側面図を示している。また、図7は本実施形態の移動体100の制御回路図を示している。
【0060】
移動体100の外観構成に関し、移動体100には第1の実施の形態の移動体10における障害検出手段27が備えられていない一方で、自動運転切換スイッチ103と、通信用アンテナ101とが備えられている。
【0061】
自動運転切換スイッチ103は、自動協調運転を実行する指令を入力するためのスイッチであって、搭乗者等によってスイッチング操作が行われる。この自動運転切換スイッチ103はスイッチボタン式のものや、タッチパネル式のもの等、種々の態様のものによって構成され、その態様は特に制限されるものではない。さらに、切換スイッチを用いないで、外部からの指令信号によって自動協調運転を実行する指令が生成されるようにすることもできる。ただし、搭乗者によって操作可能な切換スイッチであれば、自動協調運転の開始又は停止を搭乗者の意思によって決定することができる。
【0062】
通信用アンテナ101は、自動協調運転を実行するにあたって、他の移動体から送信される走行情報を受信する。走行情報としては、例えば、他の移動体における一対の車輪の駆動状態に関する情報や、車輪を回転駆動するための制御信号あるいは駆動信号などが挙げられる。また、他の移動体も本実施形態の移動体100として構成されている場合には、目標重心位置の情報を用いることもできる。さらに、他の移動体は倒立振子型移動体に限られるものではないため、その他の情報を用いてもよい。
【0063】
なお、移動体100が自動協調運転を実行する際の主たる移動体となる場合には、通信用アンテナ101を介して、他の移動体に向けて自車の走行情報が送信される。
【0064】
これらの自動運転切換スイッチ103及び通信用アンテナ101は制御装置50に接続されており、制御装置50は、自動運転切換スイッチ103のスイッチ操作によって生成される指令信号が入力されるようになっているとともに、通信用アンテナ101によって受信される他の移動体の走行情報を検出可能になっている。
【0065】
これ以外の外観構成に関する構成要素については、第1の実施の形態の移動体10と同様に構成することができるためにここでの説明は省略する。
【0066】
2.倒立振子型移動体の制御方法
次に、本実施形態の倒立振子型移動体100の制御方法について説明する。
本実施形態の移動体100の制御方法は、基本的に図3のフローチャートに示す手順に沿って実行される。ただし、自動協調運転モードでの走行制御を実行可能な本実施形態の移動体100による自動協調運転モードへの切換判定を行うステップS1と、目標走行状態に基づく目標重心位置の演算を行うステップS3とについては、第1の実施の形態の移動体10で実施される演算処理とは異なっている。
【0067】
図8は、自動協調運転モードでの走行制御を実行可能な本実施形態の移動体100による、自動協調運転モードへの切換判定の具体的なフローの一例を示している。図8において、まず、ステップS31では、制御装置50は、自動協調運転モードへの切換指令信号が入力されているか否かを判定する。このステップS31でYesと判定された場合には、ステップS32に進み、制御装置50は自動運転モードを選択して自動運転切換判定を終了する。一方、ステップS31でNoと判定された場合には、ステップS33に進み、制御装置50は操縦モードを選択して自動運転切換判定を終了する。本実施形態の移動体100では、このような例によって、図3のステップS1の判定が行われる。
【0068】
また、本実施形態の移動体100では、通信用アンテナ101を介して受信される他の移動体の走行状態が目標走行状態とされ、これに応じた目標重心位置がステップS3で求められるようになっている。このとき、目標走行状態に応じた目標重心位置を求める際に参照される重心位置マップ情報は、静止状態(移動体100の速度=ゼロ)において一対の車輪13L,13Rが配置された軸線上に重心位置が位置するとともに、走行方向や旋回方向、加速度に応じて重心位置が決定されるものとなっている。これ以外の各ステップでの演算処理については、第1の実施の形態と同様の方法によって実行される。
【0069】
以上説明した本実施形態の移動体100によれば、搭乗者の意思に基づいて移動体100の走行制御を行う操縦モードと、他の移動体に協調して走行制御を行う自動運転モードとを選択的に実行することができる。この自動運転モードは、他の移動体の走行情報に基づく目標走行状態に基づいて重心位置を移動させて、左輪駆動モータ31及び右輪駆動モータ32の出力を制御するものであるために、並進運転制御の出力と倒立制御の出力とが矛盾を生じた状態になることはない。
【0070】
また、本実施形態の移動体100においても、現在の重心位置を目標重心位置に移動させるために、水平方向に延在するXY平面上におけるX軸方向の移動量とY軸方向の移動量とに基づいて重心位置調節手段の操作量を決定するように構成されることで、重心位置を速やかに、かつ、正確に目標重心位置へと移動させることができ、他の移動体との協調運転を精度よく実現することができる。
【0071】
[第3の実施の形態]
次に、本発明にかかる第3の実施の形態の倒立振子型移動体として、自動運転モードとしての自動ガイド運転モードでの走行制御を実行可能に構成された倒立振子型移動体について説明する。
【0072】
1.倒立振子型移動体の構成
図9(a)は本実施形態の移動体150の正面を示し、図9(b)は移動体150の側面図を示している。また、図10は本実施形態の移動体150の制御回路図を示している。
【0073】
移動体150の外観構成に関し、移動体150には第1の実施の形態の移動体10における障害検出手段27が備えられていない一方で、自動運転切換スイッチ153と、GPSアンテナ151と、目的地設定操作パネル155とが備えられている。
【0074】
自動運転切換スイッチ153は、自動ガイド運転を実行する指令を入力するためのスイッチであって、搭乗者等によってスイッチング操作が行われる。この自動運転切換スイッチ153は、第2の実施の形態と同様に、スイッチボタン式のものや、タッチパネル式のもの等、種々の態様のものによって構成され、その態様は特に制限されるものではない。さらに、切換スイッチを用いないで、外部からの指令信号によって自動ガイド運転を実行する指令が生成されるようにすることもできる。ただし、搭乗者によって操作可能な切換スイッチであれば、自動ガイド運転の開始又は停止を搭乗者の意思によって決定することができる。
【0075】
GPSアンテナ151は、自動ガイド運転を実行するにあたって、移動体150の現在位置を検出するために用いられるものであって、公知のGPSアンテナを使用することができる。
【0076】
目的地設定操作パネル155は、例えばタッチパネルによって構成され、搭乗者等によって目的地や走行ルート、速度等の走行状態をあらかじめ設定するために用いられる。さらに、目的地設定操作パネル155による設定によらずに、あらかじめ目的地までの走行状態を設定したデータ情報を制御装置50に記憶させることができるように構成することもできる。
【0077】
これらの自動運転切換スイッチ153、GPSアンテナ151及び目的地設定操作パネル155はそれぞれ制御装置50に接続されており、制御装置50は、自動運転切換スイッチ153のスイッチ操作によって生成される指令信号が入力されるようになっているとともに、GPSアンテナ151によって受信される位置情報及び目的地設定操作パネル155を用いて設定された走行情報を検出可能になっている。
【0078】
これ以外の外観構成に関する構成要素については、第1の実施の形態の移動体10と同様に構成することができるためにここでの説明は省略する。
【0079】
2.倒立振子型移動体の制御方法
次に、本実施形態の倒立振子型移動体150の制御方法について説明する。
本実施形態の移動体150の制御方法は、基本的に図3のフローチャートに示す手順に沿って実行される。ただし、自動ガイド運転モードでの走行制御を実行可能な本実施形態の移動体150による自動ガイド運転モードへの切換判定を行うステップS1と、目標走行状態に基づく目標重心位置の演算を行うステップS3とについては、第1の実施の形態の移動体10で実施される演算処理とは異なっている。
【0080】
本実施形態の移動体150では、第2の実施の形態の移動体100と同様に、図8のフローチャートで示される手順に沿って、図3のステップS1の切換判定が行われる。すなわち、制御装置50は、自動ガイド運転モードへの切換指令信号が入力されている場合には、自動運転モードを選択して自動運転切換判定を終了する。一方、制御装置50は、自動ガイド運転モードへの切換指令信号が入力されていない場合には、操縦モードを選択して自動運転切換判定を終了する。
【0081】
また、本実施形態の移動体150において、ステップS3では、目的地設定操作パネル155を用いて設定された目的地、走行ルート、速度等や、GPSアンテナ151によって検出される現在地情報に基づく演算処理によって目標走行状態が求められるとともに、これに応じた目標重心位置が求められるようになっている。このとき、目標走行状態に応じた目標重心位置を求める際に参照される重心位置マップ情報は、静止状態(移動体150の速度=ゼロ)において一対の車輪13L,13Rが配置された軸線上に重心位置が位置するとともに、走行方向や旋回方向、加速度に応じて重心位置が決定されるものとなっている。これ以外の各ステップでの演算処理については、第1の実施の形態と同様の方法によって実行される。
【0082】
以上説明した本実施形態の移動体150によれば、搭乗者の意思に基づいて移動体150の走行制御を行う操縦モードと、あらかじめ設定された目的地までの走行制御を行う自動運転モードとを選択的に実行することができる。この自動運転モードは、あらかじめ設定される目的地や走行ルート等に基づく目標走行状態に基づいて重心位置を移動させて、左輪駆動モータ31及び右輪駆動モータ32の出力を制御するものであるために、並進運転制御の出力と倒立制御の出力とが矛盾を生じた状態になることはない。
【0083】
また、本実施形態の移動体150においても、現在の重心位置を目標重心位置に移動させるために、水平方向に延在するXY平面上におけるX軸方向の移動量とY軸方向の移動量とに基づいて重心位置調節手段の操作量を決定するように構成されることで、重心位置を速やかに、かつ、正確に目標重心位置へと移動させることができ、目的地までのガイド運転を精度よく実現することができる。
【0084】
[他の実施の形態]
これまでに説明した本発明の実施の形態は、以下のように変形して構成することもできる。
【0085】
これまでの実施の形態の移動体10,100,150では、重心位置調節手段として、水平方向に対する搭乗部19の傾斜角度を調節することによって重心位置を調節する機構を用いているが、重心位置調節手段の具体的な構成はこの例に限られるものではない。
【0086】
例えば、図11は、車体11に対する搭乗部19の位置を相対的に移動させて重心位置調節する機構によって構成された重心位置調節手段を備えた移動体の例を示している。この重心位置調節手段は、複数の球体73によって搭乗部19を支持するとともに、制御装置50からの操作信号によって互いに直交する方向に伸縮可能な駆動部71,72によって車体11に対する搭乗部19の位置を調節するように構成されている。
【0087】
このように重心位置調節手段を構成することにより、搭乗部19を平面的にスライドさせて重心位置を直接移動させることができるようになり、重心位置の調節を容易に行うことができる。そして、このような重心位置調節手段によっても、目標走行状態に見合った位置に重心位置を移動させて移動体の自動運転を行うことができるようになり、操縦モードと自動運転モードとを切換可能な移動体を実現することができる。
【0088】
また、重心位置調節手段の別の例として、図12は、車体に対する位置を相対的に移動可能な慣性体83と、慣性体83の位置を調節する駆動部81,82とによって構成された重心位置調節手段を備えた移動体の例を示している。この重心位置調節手段は、移動体の左右方向に延びる回転軸84に慣性体83を懸下させ、回転軸84を軸回転させることで移動体の前後方向に移動させる駆動部81と、回転軸84を移動体の左右方向に移動させることで慣性体83を左右方向に移動させる駆動部82とによって、慣性体83の位置を調節し、重心位置を調節するように構成されている。
【0089】
このように重心位置調節手段を構成することにより、搭乗部19を動かすことなく重心位置を移動させることができ、搭乗者への違和感を低減することができる。そして、このような重心位置調節手段によっても、目標走行状態に見合った位置に重心位置を移動させて移動体の自動運転を行うことができるようになり、操縦モードと自動運転モードとを切換可能な移動体を実現することができる。
【0090】
また、これまでに説明した実施の形態においては、重心位置を検出する手段として、感圧センサ25や歪ゲージ以外に、搭乗部19の傾斜角度を検出する傾斜角度センサ又はジャイロセンサを例示したが、ハンドル15の傾斜角度を検出する傾斜角度センサやジャイロセンサ等を用いて重心位置を検出するようにしてもよい。
【0091】
また、これまでに説明した第1〜第3の実施の形態の移動体10,100,150によって実行される自動運転モードのすべてを、あるいは、いずれか二つを実行可能な移動体として構成することもできる。自動運転の目的については特に制限されるものではない。
【0092】
また、これまでの実施の形態で説明した移動体10,100,150は、搭乗者の意思に基づく走行制御が実行される操縦モードにおいても搭乗者の重心位置に基づいて走行制御が行われるように構成されているが、操縦モードにおける搭乗者の意思を走行指令として生成する手段はこれに限られるものではなく、例えば、搭乗者による操縦桿の操作に基づいて走行指令が生成されるものであってもよい。操縦モードでの走行制御が操縦桿の操作によって行われる移動体の場合には、自動運転モードへの切り換え後においては、重心位置調節手段を制御して重心位置を調節しながら、この重心位置に基づいて走行制御が行われるように構成される。
【0093】
さらにまた、移動体の態様についても、本実施形態で例示した同軸二輪車以外にも、搭乗者の重心位置に従って走行制御が行われるものであれば、円筒状の一輪の回転体を用いた移動体や、球形の回転体を用いた移動体等、倒立振子型移動体全般に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
10:倒立振子型移動体、11:車体、13L,13R:車輪、15:ハンドル、17:モータボックス、19:搭乗部、23:コイルスプリング、25:重心位置検出手段、27:障害検出手段、31:左輪駆動モータ(車輪駆動手段)、32:右輪駆動モータ(車輪駆動手段)、35:シリンダA(重心位置調節手段)、36:シリンダB(重心位置調節手段)、37:シリンダC(重心位置調節手段)、41,42:モータ駆動回路、45,46,47:シリンダ駆動回路、50:制御装置、51:演算回路、53:記憶手段、71,72:駆動部、73:球体、81,82:駆動部、83:慣性体、84:回転軸、100:倒立振子型移動体、101:通信用アンテナ、103:自動運転切換スイッチ、150:倒立振子型移動体、151:GPSアンテナ、153:自動運転切換スイッチ、155:目的地設定操作パネル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者が搭乗する搭乗部を有する車体と、
同一軸線上に配置されるとともに前記車体に回転可能に支持された一対の車輪と、
前記車輪を回転駆動させる車輪駆動手段と、
前記搭乗者の重心位置を検出するための重心位置検出手段と、
前記搭乗者の意思に基づく走行指令に従ってバランスを保ちながら前記車体を走行させるために前記車輪駆動手段の制御を行う制御装置と、
を備えた倒立振子型移動体において、
前記制御装置から出力される操作信号に従って前記搭乗者の重心位置を調節するための重心位置調節手段を備え、
前記制御装置は、前記搭乗者の意思に基づかないで所定の走行制御を行う自動運転モードへの切り換え指令が生成されたときに、目標となる走行状態が実現される重心位置となるように前記重心位置調節手段を制御し、前記重心位置に基づく走行指令に従って前記車輪駆動手段の制御を行うことを特徴とする倒立振子型移動体。
【請求項2】
前記制御装置は、前記目標となる走行状態を実現するための目標重心位置と、前記重心位置検出手段を用いて検出される重心位置と、に基づいて、前記重心位置調節手段の操作量を決定することを特徴とする請求項1に記載の倒立振子型移動体。
【請求項3】
前記自動運転モードが障害回避運転を自動で行う自動障害回避運転モードを含み、
前記倒立振子型移動体は、周囲に存在する障害情報を検知するための障害検出手段を備え、
前記制御装置は、前記倒立振子型移動体の走行情報及び前記障害情報に基づいて前記自動障害回避運転モードに切り換え、障害回避のための前記操作信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の倒立振子型移動体。
【請求項4】
前記自動運転モードが他の移動体との協調運転を自動で行う自動協調運転モードを含み、
前記制御装置は、前記協調運転を開始する指令を受けて前記自動協調運転モードに切り換え、前記他の移動体の走行情報に応じて前記操作信号を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の倒立振子型移動体。
【請求項5】
前記自動運転モードが目的地までの自動ガイド運転を行う自動ガイド運転モードを含み、
前記制御装置は、前記自動ガイド運転を開始する指令を受けて前記自動ガイド運転モードに切り換え、セットされた目標走行情報に応じて前記操作信号を出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の倒立振子型移動体。
【請求項6】
前記重心位置調節手段が、前記操作信号に基づいて水平方向に対する前記搭乗部の傾斜角度を調節する手段を有する搭乗部傾斜角可変機構によって構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の倒立振子型移動体。
【請求項7】
前記重心位置調節手段が、前記操作信号に基づいて前記車体に対する前記搭乗部の位置を調節とする手段を有する搭乗部位置可変機構によって構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の倒立振子型移動体。
【請求項8】
前記重心位置調節手段が、前記車体に対する位置が可変に構成された慣性体と、前記操作信号に基づいて前記慣性体の位置を調節する手段と、によって構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の倒立振子型移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−126224(P2012−126224A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278700(P2010−278700)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】