説明

偏光制御ユニット、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法

【課題】 入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出することのできる偏光制御ユニット。
【解決手段】 本発明の偏光制御ユニット(2)は、光軸(AX)を横切る方向に光学軸を有する第1デポラライザ(22b)と、第1デポラライザの射出側に配置されて光軸を横切る方向に光学軸を有する第2デポラライザ(22b)と、光軸廻りに回転可能な1/2波長板(24)とを備えている。第1デポラライザおよび第2デポラライザのうちの少なくとも一方は、第1デポラライザの光学軸と第2デポラライザの光学軸との光軸廻りの角度を変更するために回転可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光制御ユニット、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のデバイスをリソグラフィー工程で製造するのに使用される露光装置の照明光学系に好適な偏光制御ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の典型的な露光装置においては、光源から射出された光が、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズ(またはマイクロレンズアレイなど)を介して、多数の光源からなる実質的な面光源としての二次光源を形成する。二次光源からの光はコンデンサー光学系を介して所定のパターンが形成されたマスクを重畳的に照明し、マスクのパターンを透過した光は投影光学系を介してウェハ(感光性基板)上に結像する。こうして、ウェハ上には、マスクパターンが投影露光(転写)される。
【0003】
マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細パターンをウェハ上に正確に転写するにはウェハ上において均一な照度分布を得ることが不可欠である。従来、照明光学系の比較的上流側において光源からの光を所望の直線偏光状態の光または非偏光状態の光に変換し、所望の直線偏光状態または非偏光状態に変換された光を、複数の光学素子を介してマスクへ導いている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2006/0055834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術では、所望の直線偏光状態または非偏光状態の光を照明光学系の上流側において生成しても、照明光学系の下流側の光路中または投影光学系の光路中に光の偏光状態を変化させる光学素子が介在すると、感光性基板上では所望の直線偏光状態または非偏光状態で光が結像しなくなり、ひいてはマスクのパターン像を所要のコントラストで感光性基板上に形成することが困難である。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出することのできる偏光制御ユニットを提供することを目的とする。また、本発明は、入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出する偏光制御ユニットを用いて、所望の偏光状態の光で被照射面を照明することのできる照明光学系を提供することを目的とする。また、本発明は、所要の偏光状態の光で被照射面のパターンを照明する照明光学系を用いて、所望の偏光状態でパターンを感光性基板上に結像させることのできる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出する偏光制御ユニットであって、
前記偏光制御ユニットの光路内に配置されて、光軸を横切る方向に光学軸を有する第1デポラライザと、
前記第1デポラライザの射出側の前記光路内に配置されて、前記光軸を横切る方向に光学軸を有する第2デポラライザと、
前記光路内に配置されて、前記光軸廻りに回転可能な1/2波長板とを備え、
前記第1デポラライザおよび前記第2デポラライザのうちの少なくとも一方は、前記第1デポラライザの光学軸と前記第2デポラライザの光学軸との前記光軸廻りの角度を変更するために回転可能に構成されていることを特徴とする偏光制御ユニットを提供する。
【0008】
本発明の第2形態では、光源からの光により被照射面を照明する照明光学系において、
前記光源と前記被照射面との間の光路中に配置された第1形態の偏光制御ユニットを備えていることを特徴とする照明光学系を提供する。
【0009】
本発明の第3形態では、所定のパターンを照明するための第2形態の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0010】
本発明の第4形態では、第3形態の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の照明光学系に設けられた偏光制御ユニットは、光路中に直列に配置された一対のデポラライザと光軸廻りに回転可能な1/2波長板とを備えている。そして、一方のデポラライザの光学軸と他方のデポラライザの光学軸との光軸廻りの角度が変更可能に構成されている。したがって、一対のデポラライザの光学軸の光軸廻りの相対角度を変化させることにより、入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出することができる。
【0012】
すなわち、本発明の照明光学系では、入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出する偏光制御ユニットの作用により、偏光制御ユニットの下流側の光路中に光の偏光状態を変化させる光学素子が介在していても、所望の偏光状態の光で被照射面を照明することができる。また、本発明の露光装置では、所要の偏光状態の光で被照射面のパターンを照明する照明光学系を用いて、所望の偏光状態でパターンを感光性基板上に結像させることができ、良好なデバイスを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの露光面(転写面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
【0014】
図1を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源LSから露光光(照明光)が供給される。光源LSとして、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源LSから射出された光束は、整形光学系1、偏光制御ユニット2、および回折光学素子3を介して、アフォーカルレンズ4に入射する。
【0015】
整形光学系1は、光源LSからのほぼ平行な光束を所定の矩形状の断面を有する光束に変換して偏光制御ユニット2へ導く機能を有する。偏光制御ユニット2は、入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出する機能を有する。偏光制御ユニット2の具体的な構成および作用については後述する。アフォーカルレンズ4は、その前側焦点位置と回折光学素子3の位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面5の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。
【0016】
回折光学素子3は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。以下、説明を簡単にするために、回折光学素子3は、輪帯照明用の回折光学素子であるものとする。輪帯照明用の回折光学素子3は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に輪帯状の光強度分布を形成する機能を有する。
【0017】
したがって、回折光学素子3に入射したほぼ平行光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に輪帯状の光強度分布を形成した後、輪帯状の角度分布でアフォーカルレンズ4から射出される。アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aと後側レンズ群4bとの間の光路中において、その瞳位置またはその近傍には、円錐アキシコン系6が配置されている。円錐アキシコン系6の構成および作用については後述する。
【0018】
アフォーカルレンズ4を介した光は、σ値(σ値=照明光学系のマスク側開口数/投影光学系のマスク側開口数)可変用のズームレンズ7を介して、オプティカルインテグレータとしてのマイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)8に入射する。マイクロフライアイレンズ8は、例えば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であって、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。
【0019】
マイクロフライアイレンズを構成する各微小レンズは、フライアイレンズを構成する各レンズエレメントよりも微小である。また、マイクロフライアイレンズは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、正屈折力を有するレンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。なお、マイクロフライアイレンズ8として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号公報に開示されている。
【0020】
所定面5の位置はズームレンズ7の前側焦点位置またはその近傍に配置され、マイクロフライアイレンズ8の入射面はズームレンズ7の後側焦点位置またはその近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ7は、所定面5とマイクロフライアイレンズ8の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ4の瞳面とマイクロフライアイレンズ8の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。
【0021】
したがって、マイクロフライアイレンズ8の入射面上には、アフォーカルレンズ4の瞳面と同様に、たとえば光軸AXを中心とした輪帯状の照野が形成される。この輪帯状の照野の全体形状は、ズームレンズ7の焦点距離に依存して相似的に変化する。マイクロフライアイレンズ8に入射した光束は二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の位置には、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、すなわち光軸AXを中心とした輪帯状の実質的な面光源からなる二次光源(瞳強度分布)が形成される。
【0022】
マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍には、必要に応じて、輪帯状の二次光源に対応した輪帯状の開口部(光透過部)を有する照明開口絞り9が配置されている。照明開口絞り9は、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。照明開口絞り9は、投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。
【0023】
マイクロフライアイレンズ8および照明開口絞り9を経た光は、コンデンサー光学系10を介して、マスクブラインド11を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド11には、マイクロフライアイレンズ8の微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド11の矩形状の開口部(光透過部)を経た光は、前側レンズ群12aと後側レンズ群12bとからなる結像光学系12を介して、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系12は、マスクブラインド11の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
【0024】
マスクステージMS上に保持されたマスクMには、転写すべきパターンが形成されている。マスクMのパターンを透過した光は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが逐次露光される。
【0025】
本実施形態の露光装置は、ウェハWに対する照明光(露光光)の偏光状態を計測(測定)する偏光計測部13を備えている。偏光計測部13は、投影光学系PLを経た光に基づいて、投影光学系PLの像面(マスクMのパターン面と共役な面)における光の偏光状態を計測する。偏光計測部13の具体的な構成および作用については、たとえば特開2005−5521号公報に開示されている。偏光計測部13の計測結果は、制御部14に供給される。制御部14は、偏光計測部13の計測結果に基づいて偏光制御ユニット2を制御する。
【0026】
円錐アキシコン系6は、光源側から順に、光源側に平面を向け且つマスク側に凹円錐状の屈折面を向けた第1プリズム部材6aと、マスク側に平面を向け且つ光源側に凸円錐状の屈折面を向けた第2プリズム部材6bとから構成されている。そして、第1プリズム部材6aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材6bの凸円錐状の屈折面とは、互いに当接可能なように相補的に形成されている。また、第1プリズム部材6aおよび第2プリズム部材6bのうち少なくとも一方の部材が光軸AXに沿って移動可能に構成され、第1プリズム部材6aと第2プリズム部材6bとの間隔が可変に構成されている。
【0027】
ここで、第1プリズム部材6aと第2プリズム部材6bとが互いに当接している状態では、円錐アキシコン系6は平行平面板として機能し、形成される輪帯状の二次光源に及ぼす影響はない。しかしながら、第1プリズム部材6aと第2プリズム部材6bとを離間させると、輪帯状の二次光源の幅(輪帯状の二次光源の外径と内径との差の1/2)を一定に保ちつつ、輪帯状の二次光源の外径(内径)が変化する。すなわち、輪帯状の二次光源の輪帯比(内径/外径)および大きさ(外径)が変化する。
【0028】
ズームレンズ7は、輪帯状の二次光源の全体形状を相似的に拡大または縮小する機能を有する。たとえば、ズームレンズ7の焦点距離を最小値から所定の値へ拡大させることにより、輪帯状の二次光源の全体形状が相似的に拡大される。換言すると、ズームレンズ7の作用により、輪帯状の二次光源の輪帯比が変化することなく、その幅および大きさ(外径)がともに変化する。このように、円錐アキシコン系6およびズームレンズ7の作用により、輪帯状の二次光源の輪帯比と大きさ(外径)とを制御することができる。
【0029】
輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、複数極照明(2極照明、4極照明、8極照明など)用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、複数極照明を行うことができる。複数極照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに複数極状(2極状、4極状、8極状など)の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、複数極照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ8の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした複数の所定形状(円弧状、円形状など)の照野からなる複数極状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ複数極状の二次光源が形成される。
【0030】
また、輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、円形照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、通常の円形照明を行うことができる。円形照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに円形状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、円形照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ8の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした円形状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ円形状の二次光源が形成される。また、輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、適当な特性を有する回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、様々な形態の変形照明を行うことができる。回折光学素子3の切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。
【0031】
図2は、本実施形態の偏光制御ユニットの内部構成を概略的に示す図である。図2を参照すると、偏光制御ユニット2は、光の入射側(光源側)から順に、1/4波長板21と、第1プリズム組立体22と、第2プリズム組立体23と、1/2波長板24とにより構成されている。1/4波長板21は、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成されて、入射する楕円偏光の光を直線偏光の光に変換する機能を有する。1/2波長板24は、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成されて、入射する直線偏光の偏光方向を変化させる機能を有する。
【0032】
第1プリズム組立体22は、デポラライザ(偏光解消素子)として機能する第1偏角プリズム22bと、その入射側に配置されて第1偏角プリズム22bによる偏角作用を補正する第1補正偏角プリズム22aとにより構成されている。第1偏角プリズム22bは、例えば複屈折性の結晶材料である水晶により形成され、その結晶光学軸が光軸AXと直交するように配置されている。第1補正偏角プリズム22aは、例えば非複屈折性材料である石英により形成され、第1偏角プリズム22bと相補的な形状を有する。第1補正偏角プリズム22aと第1偏角プリズム22bとは、光軸AX廻りに一体的に回転するように構成されている。
【0033】
同様に、第2プリズム組立体23は、デポラライザとして機能する第2偏角プリズム23bと、その入射側に配置されて第2偏角プリズム23bによる偏角作用を補正する第2補正偏角プリズム23aとにより構成されている。第2偏角プリズム23bは、例えば水晶により形成され、その結晶光学軸が光軸AXと直交するように配置されている。第2補正偏角プリズム23aは、例えば石英により形成され、第2偏角プリズム23bと相補的な形状を有する。第2補正偏角プリズム23aと第2偏角プリズム23bとは、光軸AX廻りに一体的に回転するように構成されている。
【0034】
このように、偏光制御ユニット2では、第1偏角プリズム22bの結晶光学軸と第2偏角プリズム23bの結晶光学軸との光軸AX廻りの角度が変更可能に構成されている。光源LSとしてKrFエキシマレーザ光源やArFエキシマレーザ光源を用いる場合、これらの光源から射出される光は典型的には95%以上の偏光度を有し、ほぼ直線偏光状態である。しかしながら、光源LSと偏光制御ユニット2との間の光路中に配置された光学素子などの影響により、1/4波長板21には楕円偏光状態の光が入射する可能性がある。
【0035】
偏光度Vは、次の式(a)により表わされる。式(a)において、S0は全強度を、S1は水平直線偏光強度マイナス垂直直線偏光強度を、S2は45度直線偏光強度マイナス135度直線偏光強度を、S3は右まわり円偏光強度マイナス左まわり円偏光強度をそれぞれ表わしている。
V=(S12+S22+S321/2/S0 (a)
【0036】
偏光制御ユニット2では、楕円偏光状態の光が入射しても、1/4波長板21の作用により変換された直線偏光状態の光が第1プリズム組立体22に入射する。以下、図3および図4を参照して偏光制御ユニット2の作用を説明するが、説明を単純化するために、図3および図4ではY方向に偏光した直線偏光状態の光が1/4波長板21をそのまま通過し、Y方向直線偏光状態で第1プリズム組立体22に入射するものとする。
【0037】
図3に示す偏光制御ユニット2の状態では、第1偏角プリズム22bの結晶光学軸がY方向と平行な方向に設定され、第2偏角プリズム23bの結晶光学軸がX方向およびY方向と45度をなす方向に設定されている。したがって、1/4波長板21を経たY方向直線偏光状態の光は、結晶光学軸が光軸AX廻りに相対的に45度をなす一対のデポラライザ22b,23bの作用により非偏光状態に変換される。一対のプリズム組立体22,23を経た非偏光状態の光は、1/2波長板24をそのまま通過し、非偏光状態の光、すなわち偏光度が0の光として射出される。
【0038】
図4に示す偏光制御ユニット2の状態では、第1偏角プリズム22bの結晶光学軸および第2偏角プリズム23bの結晶光学軸がともにY方向と平行な方向に設定されている。したがって、1/4波長板21を経たY方向直線偏光状態の光は、結晶光学軸が光軸AX廻りに相対的に0度をなす一対のデポラライザ22b,23bをそのまま通過する。一対のプリズム組立体22,23を経たY方向直線偏光状態の光は、1/2波長板24の作用により所望の方向(1/2波長板24の結晶光学軸の方向)に偏光した直線偏光状態の光、すなわち偏光度が1の光として射出される。
【0039】
なお、図示を省略したが、例えば第1偏角プリズム22bの結晶光学軸がY方向と平行な方向に設定され、第2偏角プリズム23bの結晶光学軸がX方向と平行に設定されている場合、すなわち第1偏角プリズム22bの結晶光学軸と第2偏角プリズム23bの結晶光学軸とが光軸AX廻りに相対的に90度をなす場合も、1/4波長板21から入射したY方向直線偏光状態の光は一対のデポラライザ22b,23bをそのまま通過する。その結果、1/2波長板24の作用により所望の方向に偏光した直線偏光状態の光が、偏光制御ユニット2から射出される。
【0040】
仮に、偏光制御ユニット2が従来技術と同様に、所望の直線偏光状態の光(すなわち偏光度が1の光)または非偏光状態の光(すなわち偏光度が0の光)しか生成しない場合、偏光制御ユニット2の下流側の光路中に配置されて光の偏光状態を変化させる光学素子の影響により、ウェハW上では所望の直線偏光状態または非偏光状態で光が結像しなくなり、ひいてはマスクMのパターン像を所要のコントラストでウェハW上に形成することが困難である。すなわち、使用する露光装置が異なると、同じマスクを使用しても、ウェハW上に転写されるパターンのコントラストを一定にすることが困難である。
【0041】
特に、光路折り曲げミラーとして使用される平面反射鏡では、入射光の角度範囲が広く、反射面に対するS偏光とP偏光とで反射率が比較的大きく異なり且つ反射率の差が変動し易い。このため、例えば偏光制御ユニット2により非偏光状態の光、すなわち偏光度が0の光を生成しても、光路折り曲げミラーを介してウェハWに達する光は、0よりもある程度大きい偏光度を有し且つS偏光成分よりもP偏光成分の少ない部分偏光状態になってしまう。同様に、例えば偏光制御ユニット2により直線偏光状態の光、すなわち偏光度が1の光を生成しても、偏光状態を変化させる光学素子の影響により、ウェハWに達する光は1よりもある程度小さい偏光度を有する部分偏光状態になってしまう。
【0042】
本実施形態の偏光制御ユニット2では、上述したように、デポラライザとして機能する第1偏角プリズム22bの結晶光学軸と第2偏角プリズム23bの結晶光学軸との光軸AX廻りの角度が変更可能に構成されている。したがって、図3に示す状態から、第1偏角プリズム22bおよび第2偏角プリズム23bのうちの少なくとも一方(すなわち第1プリズム組立体22および第2プリズム組立体23のうちの少なくとも一方)を光軸AX廻りに所要角度だけ回転させて、第1偏角プリズム22bの結晶光学軸と第2偏角プリズム23bの結晶光学軸との光軸AX廻りの角度を45±α度に設定することにより、角度αの大きさに応じた分だけ1よりも小さい偏光度を有する部分偏光状態を生成することができる。
【0043】
また、図4に示す状態から、第1偏角プリズム22bおよび第2偏角プリズム23bのうちの少なくとも一方を光軸AX廻りに所要角度だけ回転させて、第1偏角プリズム22bの結晶光学軸と第2偏角プリズム23bの結晶光学軸との光軸AX廻りの角度を0±α度に設定することにより、角度αの大きさに応じた分だけ0よりも大きい偏光度を有する部分偏光状態を生成することができる。すなわち、本実施形態の偏光制御ユニット2では、第1偏角プリズム22bの結晶光学軸と第2偏角プリズム23bの結晶光学軸との光軸AX廻りの角度を0度から45度の範囲(あるいは45度から90度の範囲)で所要の値に設定することにより、入射光の偏光度を0から1の範囲で変化させて所望の偏光度を有する光に変換して射出することができる。
【0044】
一例として、マスクMのパターンを非偏光状態でウェハW上に結像させたい場合には、光路中に介在する光路折り曲げミラーの影響などを考慮し、偏光制御ユニット2がS偏光成分よりもP偏光成分を多く含む部分偏光状態の光を積極的に生成することにより、マスクMのパターン像を所望の非偏光状態で所要のコントラストでウェハW上に形成することができる。すなわち、露光装置毎に偏光制御ユニット2で生成すべき所要の部分偏光状態を予め把握し、偏光制御ユニット2から射出される光の偏光度を適宜制御すれば、使用する号機に依存することなくウェハW上の転写パターンのコントラストを一定にすることができる。
【0045】
一般的に、本実施形態の露光装置では、制御部14が、偏光計測部13を用いてウェハWに対する照明光の偏光状態を随時計測し、マスクMのパターンを経た光がウェハW(すなわち投影光学系PLの像面)上に所望の偏光状態で結像することを確認する。投影光学系PLの像面に達する光が所望の偏光状態でない場合、制御部14は、偏光制御ユニット2中の1/4波長板21、第1プリズム組立体22、第2プリズム組立体23、および1/2波長板24のうちの少なくとも1つを光軸AX廻りに適宜回転させることにより、偏光制御ユニット2から射出される光の偏光度を調整し、ひいては投影光学系PLの像面に達する光を所望の偏光状態に調整する。
【0046】
以上のように、本実施形態の偏光制御ユニット2では、入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出することができる。したがって、本実施形態の照明光学系(1〜12)では、入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出する偏光制御ユニット2の作用により、偏光制御ユニット2の下流側の光路中に光の偏光状態を変化させる光学素子が介在していても、所望の偏光状態の光でマスクMのパターン面(被照射面)を照明することができる。また、本実施形態の露光装置(1〜WS;13,14)では、所要の偏光状態の光でマスクMのパターン面を照明する照明光学系(1〜12)を用いて、所望の偏光状態でマスクパターンをウェハW上に結像させることができ、ひいてはマスクMのパターン像を所要のコントラストでウェハW上に形成することができる。
【0047】
なお、上述の説明では、デポラライザとして機能する一対の偏角プリズム22b,23bが水晶により形成されている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえばフッ化マグネシウムや方解石のような複屈折性の結晶材料を用いて2つの偏角プリズムを形成することもできる。あるいは、非複屈折性の材料に外部応力を作用させることによって得られた複屈折性材料などを用いることもできる。
【0048】
また、上述の説明では、デポラライザとして機能する一対の偏角プリズム22b,23bが、それぞれ光軸AXを中心として回転自在に構成されている。しかしながら、これに限定されることなく、一対の偏角プリズム22b,23bのうちの一方を光軸AX廻りに固定とし、他方を光軸AX廻りに回転可能に構成することもできる。すなわち、偏光制御ユニット中の一対のデポラライザを形成する材料、一対のデポラライザの移動形態などについては様々な変形例が可能である。
【0049】
一般に、本発明の偏光制御ユニットは、光軸を横切る方向に光学軸を有する第1デポラライザと、第1デポラライザの射出側の光路内に配置されて光軸を横切る方向に光学軸を有する第2デポラライザとを含み、第1デポラライザおよび第2デポラライザのうちの少なくとも一方は、第1デポラライザの光学軸と第2デポラライザの光学軸との光軸廻りの角度を変更するために回転可能に構成されていることが重要である。
【0050】
また、上述の説明では、第1偏角プリズム22bの入射側に第1補正偏角プリズム22aを配置し、第2偏角プリズム23bの入射側に第2補正偏角プリズム23aを配置している。しかしながら、これに限定されることなく、一対の第1偏角プリズムおよび一対の補正偏角プリズムの配置については様々な形態が可能である。また、上述の説明では、第1偏角プリズム22bによる偏角作用を補正する第1補正偏角プリズム22aと、第2偏角プリズム23bによる偏角作用を補正する第2補正偏角プリズム23aとが個別の部材として構成されている。しかしながら、これに限定されることなく、第1偏角プリズム22bと第2偏角プリズム23bとによる合成偏角作用を補正する1つの補正偏角プリズムを配置することもできる。いずれの場合も、デポラライザとして機能する一対の偏角プリズム22bと23bとを互いに隣接して配置することにより、第1偏角プリズム22bからの光が位相作用を受けずに第2偏角プリズム23bに入射するので、所望の偏光度を得るための第1および第2偏角プリズム22b、23bの光軸廻りの相対角度が明らかになり、偏光度を制御するためのパラメータを簡素にできるという利点が得られる。
【0051】
また、上述の説明では、第2プリズム組立体23の射出側に、1/2波長板24を配置している。しかしながら、これに限定されることなく、1/2波長板24の配置については様々な形態が可能である。ただし、例えばデポラライザとして機能する一対の偏角プリズム22b,23bを経た偏光度がほぼ0の光に残存している直線偏光成分の向きを調整するような場合、一対の偏角プリズム22b,23bの後側に配置された1/2波長板24の結晶光学軸の向きを調整する方が制御を簡素化することができる。
【0052】
また、上述の説明では、第1プリズム組立体22の入射側に1/4波長板21を配置しているが、偏光制御ユニット2に入射する光が所定方向に偏光したほぼ直線偏光である場合には、1/4波長板の設置を省略することもできる。
【0053】
なお、上述の実施形態において、偏光制御ユニット2よりも後側の照明瞳の位置に所要の位相部材、旋光部材などを付設することにより、いわゆる周方向偏光状態でウェハW上に光を結像させて、ウェハW上に形成されるパターン像のコントラストをさらに向上させることもできる。周方向偏光状態を実現するための周方向偏光用部材の具体的な構成および作用は、米国特許公開第2006/0170901号公報および米国特許公開第2007/0146676号公報に開示されている。なお、照明瞳とは、照明瞳と被照射面(露光装置の場合にはマスクまたはウェハ)との間の光学系の作用によって、被照射面が照明瞳のフーリエ変換面となるような位置として定義される。
【0054】
本実施形態では、上述したように、マイクロフライアイレンズ8により形成される二次光源を光源として、照明光学系(1〜12)の被照射面に配置されるマスクMをケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系(1〜12)の照明瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。
【0055】
なお、瞳強度分布とは、照明光学系(1〜12)の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。マイクロフライアイレンズ8による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ8の入射面および当該入射面と光学的に共役な面における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。したがって、本実施形態では、アフォーカルレンズ4の瞳位置またはその近傍、マイクロフライアイレンズ8の入射面の近傍の位置などに、上述の周方向偏光用部材を配置することができる。
【0056】
また、上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。このような可変パターン形成装置を用いれば、パターン面が縦置きでも同期精度に及ぼす影響を最低限にできる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含むDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いることができる。DMDを用いた露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレットおよびこれに対応する米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、DMDのような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。なお、パターン面が横置きの場合であっても可変パターン形成装置を用いても良い。ここでは、米国特許公開第2007/0296936号公報の教示を参照として援用する。
【0057】
また、上述の実施形態では、オプティカルインテグレータとして、マイクロフライアイレンズ8を用いているが、その代わりに、内面反射型のオプティカルインテグレータ(典型的にはロッド型インテグレータ)を用いても良い。この場合、ズームレンズ7の後側にその前側焦点位置がズームレンズ7の後側焦点位置と一致するように集光レンズを配置し、この集光レンズの後側焦点位置またはその近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置する。このとき、ロッド型インテグレータの射出端が照明視野絞り11の位置になる。ロッド型インテグレータを用いる場合、このロッド型インテグレータの下流の視野絞り結像光学系12内の、投影光学系PLの開口絞りの位置と光学的に共役な位置を照明瞳面と呼ぶことができる。また、ロッド型インテグレータの入射面の位置には、照明瞳面の二次光源の虚像が形成されることになるため、この位置およびこの位置と光学的に共役な位置も照明瞳面と呼ぶことができる。
【0058】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0059】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図5は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図5に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。
【0060】
ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0061】
図6は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図6に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルター形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。
【0062】
ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0063】
ステップS52のカラーフィルター形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルターを形成する。
【0064】
ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルターとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルターとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0065】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0066】
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
【0067】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開第WO99/49504号パンフレットに開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開第WO99/49504号パンフレット、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報の教示を参照として援用する。
【0068】
また、上述の実施形態において、回折光学素子3に代えて、或いは加えて、たとえばアレイ状に配列され且つ傾斜角および傾斜方向が個別に駆動制御される多数の微小な要素ミラーにより構成されて入射光束を反射面毎の微小単位に分割して偏向させることにより、光束の断面を所望の形状または所望の大きさに変換する空間光変調素子を用いても良い。このような空間光変調素子を用いた照明光学系は、例えば特開2002−353105号公報に開示されている。
【0069】
また、上述の実施形態において、米国公開公報第2006/0170901号及び第2007/0146676号に開示されるいわゆる偏光照明方法を適用することも可能である。ここでは、米国特許公開第2006/0170901号公報及び米国特許公開第2007/0146676号公報の教示を参照として援用する。
【0070】
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスク(またはウェハ)を照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク(またはウェハ)以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態の偏光制御ユニットの内部構成を概略的に示す図である。
【図3】本実施形態の偏光制御ユニットの作用を説明する第1の図である。
【図4】本実施形態の偏光制御ユニットの作用を説明する第2の図である。
【図5】半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【図6】液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
2 偏光制御ユニット
3 回折光学素子
4 アフォーカルレンズ
6 円錐アキシコン系
7 ズームレンズ
8 マイクロフライアイレンズ(オプティカルインテグレータ)
10 コンデンサー光学系
11 マスクブラインド
12 結像光学系
13 偏光計測部
14 制御部
21 1/4波長板
22,23 プリズム組立体
22b,23b デポラライザ
24 1/2波長板
LS 光源
M マスク
MS マスクステージ
PL 投影光学系
W ウェハ
WS ウェハステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を所望の偏光度を有する光に変換して射出する偏光制御ユニットであって、
前記偏光制御ユニットの光路内に配置されて、光軸を横切る方向に光学軸を有する第1デポラライザと、
前記第1デポラライザの射出側の前記光路内に配置されて、前記光軸を横切る方向に光学軸を有する第2デポラライザと、
前記光路内に配置されて、前記光軸廻りに回転可能な1/2波長板とを備え、
前記第1デポラライザおよび前記第2デポラライザのうちの少なくとも一方は、前記第1デポラライザの光学軸と前記第2デポラライザの光学軸との前記光軸廻りの角度を変更するために回転可能に構成されていることを特徴とする偏光制御ユニット。
【請求項2】
前記第1デポラライザは複屈折性の結晶材料で形成された第1偏角プリズムを有し、前記第2デポラライザは複屈折性の結晶材料で形成された第2偏角プリズムを有することを特徴とする請求項1に記載の偏光制御ユニット。
【請求項3】
前記第1偏角プリズムおよび前記第2偏角プリズムは、結晶光学軸が前記光軸と直交するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の偏光制御ユニット。
【請求項4】
前記第1偏角プリズムおよび前記第2偏角プリズムのうちの少なくとも一方は、前記光軸廻りに回転可能に構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の偏光制御ユニット。
【請求項5】
前記第1偏角プリズムによる偏角作用を補正する第1補正偏角プリズムと、前記第2偏角プリズムによる偏角作用を補正する第2補正偏角プリズムとをさらに備えていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の偏光制御ユニット。
【請求項6】
前記第1補正偏角プリズムおよび前記第2補正偏角プリズムは非複屈折性材料で形成され、
光の入射側から、前記第1補正偏角プリズム、前記第1偏角プリズム、前記第2偏角プリズム、および前記第2補正偏角プリズムの順に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の偏光制御ユニット。
【請求項7】
前記第1補正偏角プリズムおよび前記第2補正偏角プリズムは非複屈折性材料で形成され、
前記第1偏角プリズムと前記第2偏角プリズムとは互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項5に記載の偏光制御ユニット。
【請求項8】
前記1/2波長板は、前記第2デポラライザの射出側の前記光路内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の偏光制御ユニット。
【請求項9】
前記第1デポラライザの入射側の前記光路内に配置されて前記光軸廻りに回転可能な1/4波長板をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の偏光制御ユニット。
【請求項10】
光源からの光により被照射面を照明する照明光学系において、
前記光源と前記被照射面との間の光路中に配置された請求項1乃至9のいずれか1項に記載の偏光制御ユニットを備えていることを特徴とする照明光学系。
【請求項11】
前記被照射面または前記被照射面と光学的に共役な面における光の偏光状態を計測する偏光計測部と、
前記偏光計測部の計測結果に基づいて前記偏光制御ユニットを制御する制御部とをさらに備えていることを特徴とする請求項10に記載の照明光学系。
【請求項12】
所定のパターンを照明するための請求項10または11に記載の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置。
【請求項13】
前記所定のパターンの像を前記感光性基板上に形成する投影光学系を備えていることを特徴とする請求項12に記載の露光装置。
【請求項14】
前記偏光計測部は、前記投影光学系を経た光に基づいて、前記投影光学系の像面における光の偏光状態を計測することを特徴とする請求項13に記載の露光装置。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれか1項に記載の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−141091(P2010−141091A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315425(P2008−315425)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】