説明

偏光板の製造方法

【課題】加熱乾燥工程終了直後に十分な接着強度を有し、しかも他工程で使用可能な偏光板を製造する方法を提供すること。
【解決手段】ポリビニルアルコール系偏光子の両面にポリビニルアルコール系水性接着剤を介してノルボルネン系保護フィルムが貼着されてなる偏光板の製造方法において、ポリビニルアルコール系水性接着剤中のポリビニルアルコール成分が水100重量部に対して1.0〜2.5重量部であり、該ポリビニルアルコール系水性接着剤を塗布した後、前記偏光子と保護フィルムとを重ね合わせ、次いで前記偏光子と保護フィルムの合計厚みの25%〜70%になるように間隙を調節したニップロールを通過させ、しかる後に加熱乾燥させることを特徴とする偏光板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子の両面にノルボルネン系保護フィルムが貼着されてなる偏光板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター、卓上電子計算機、電子時計、ワードプロセッサ−、自動車や機械類の計器類等に液晶表示装置が用いられ、これに伴い高偏光性能を有する偏光板の需要も増大している。ほとんどの場合、偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素などで染色を行った後、架橋剤を用いて架橋を行い、一軸延伸したものである。ところが、ポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子は、透過軸方向に対する機械的強度が弱く、しかも熱や水分によって収縮したり、偏光機能が低下し易いため、通常、その両面に各種フィルムからなる保護層を接着剤により積層して偏光板としたものが用いられている。保護層には、複屈折がないこと、透過率が高いこと、耐熱性・耐吸湿性が良好で、機械的強度が高いこと、温度・湿度の変化による収縮率が小さいこと、表面が平滑で、解像度が高いこと、粘着剤との密着性が良好であること、外観性に優れていること、などの性能が要求されるが、従来は、複屈折性が小さく、しかも外観の良好なセルローストリアセテート(以下、TACと略記)の溶液流延フィルムが主として使用されている。
【0003】
しかしながら、TACフィルムは防湿性が不充分であるため、TACフィルムを保護層とする偏光板は、高温高湿下で偏光性能が急激に低下してしまうという問題をはじめ、ガスバリヤー性が不充分であり、透過した酸素によってヨウ素や染料などの二色性物質が変質し易いこと、耐熱性が充分ではないこと、さらに、物理的強度が不足しているため40μm以下の薄膜では強度および耐久性が不十分であり、80μmの厚さのものを使用する必要がある点などの問題があった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、透湿度が小さく、機械的強度、耐熱性、光学特性に優れたノルボルネン系樹脂フィルムを偏光板の保護フィルムとして使用することが提案されている。例えば、特許文献1には、ポリビニルアルコール系偏光子と、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる保護フィルムとの接着にポリウレタン系接着剤を使用することにより、PVA系偏光子の変色及び退色が起こらず、保護フィルムと十分な接着力を有し、高温多湿下の耐久性に優れた偏光板が得られることが記載されている。また、特許文献2には、接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤と、例えば、アクリル系主剤とイソシアネート系硬化剤を主成分とする2液タイプの接着剤の混合物を用い、ポリビニルアルコール系接着剤原液又は2液タイプ接着剤原液が完全には乾燥していない状態で積層することで複雑な工程を必要とせずに耐湿熱性に優れた偏光板が得られることが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、ポリビニルアルコール系シートと熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シートとの接着にアクリル系粘着剤層を用いて加熱加圧することにより、接着強度が高く、透明性に優れ、優れた光学特性、耐久性を有する偏光板が得られることが記載されている。
このような特許文献1〜3には、ポリビニルアルコール系水性接着剤以外の接着剤(特許文献1、3)、若しくはポリビニルアルコール系水性接着剤と他の接着剤との混合物(特許文献2)を使用する技術が開示されており、従来のTACフィルムの接着に用いられていたポリビニルアルコール系水性接着剤を使用するものではなく、しかも特許文献1の場合はラミネート後、45℃で72時間もかけて、特許文献2の場合は接着後40℃で24時間放置して水分を乾燥除去する必要があった。他方、特許文献4には、ポリビニルアルコール系偏光子とノルボルネン系樹脂からなる保護フィルムの貼り合わせにポリビニルアルコール系接着剤を使用することが記載されているが、この場合は、ポリビニルアルコール系接着剤を塗布した後、乾燥させてから貼り合わすものであり、ポリビニルアルコール系接着剤を塗布した後未乾燥状態で貼り合わせるものではなかった。
したがって、ポリビニルアルコール系水性接着剤が未乾燥の状態でノルボルネン系保護フィルムを積層し、乾燥することで、そのまま他工程で使用可能な偏光板を製造する方法は未だ提案されていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−321432号公報
【特許文献2】特開2000−321430号公報
【特許文献3】特開平5−212828号公報
【特許文献4】特開2002−90546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子の両面にノルボルネン系保護フィルムを貼着した偏光板の接着に、従来使用が困難とされていたポリビニルアルコール系水性接着剤を使用した場合であっても、加熱乾燥工程終了直後に十分な接着強度を有し、しかも他工程で使用可能な偏光板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到った。すなわち、本発明は、(1)ポリビニルアルコール系偏光子の両面にポリビニルアルコール系水性接着剤を介してノルボルネン系保護フィルムが貼着されてなる偏光板の製造方法において、ポリビニルアルコール系水性接着剤中のポリビニルアルコール成分が水100重量部に対して1.0〜2.5重量部であり、該ポリビニルアルコール系水性接着剤を塗布した後、前記偏光子と保護フィルムとを重ね合わせ、次いで前記偏光子と保護フィルムの合計厚みの25%〜70%になるように間隙を調節したニップロールを通過させ、しかる後に加熱乾燥させることを特徴とする偏光板の製造方法、
(2)ポリビニルアルコール系水性接着剤が、水、ポリビニルアルコール系樹脂、グリオキザール及び硬化促進剤を含有していることを特徴とする(1)記載の偏光板の製造方法、
(3)加熱乾燥の温度が55〜90℃であることを特徴とする(1)又は(2)記載の偏光板の製造方法、
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の製造方法で製造される偏光板、
(5)(4)記載の偏光板を用いた液晶表示装置、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法により、従来、TACの接着に用いられていたポリビニルアルコール系水性接着剤をノルボルネン系保護フィルムの接着にも使用することが可能となった。特に、塗布後、ポリビニルアルコール系水性接着剤が未乾燥の状態のままで貼り合せすることができるのでTACフィルムに使用していたラインがそのまま使用でき、しかも乾燥終了後そのまま他工程で使用可能な偏光板を製造することができるという利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明で使用するポリビニルアルコール系偏光子は、ポリビニルアルコール系の高分子フィルムに、ヨウ素又は二色性染料を吸着させる染色工程、ほう酸や、ほう砂等の硼素化合物で架橋する架橋工程、および一軸延伸する延伸工程(染色、架橋、延伸の各工程は、別々に行う必要はなく同時に行ってもよく、また、各工程の順番も特に規定するものではない。)の後に、乾燥することで製造することができる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化したポリマー素材であるが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のような酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有しても構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性ポリビニルアルコールも用いることができるが、ポリビニルアルコールを使用することが最も好ましい。また、ポリビニルアルコール系偏光子の厚みは10〜30μm、特に20μmが好ましい。
【0011】
本発明において保護フィルムとして用いられるノルボルネン系樹脂フィルムは、特に限定されるものではなく、ノルボルネン系樹脂、好ましくは熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を製膜したものが好適に用いられる。
【0012】
上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂、ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとエチレンやエチレン以外のα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーとを付加共重合させた樹脂等が挙げられる。
【0013】
上記ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン環を有するモノマーであれば良いが、なかでも、耐熱性に優れ、線膨張率の低いノルボルネン系樹脂や保護フィルムを得られることから、三環体以上の多環体ノルボルネン系モノマーを用いることが好ましい。
【0014】
上記ノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体モノマー;ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体モノマー;テトラシクロドデセンなどの四環体モノマー;シクロペンタジエン三量体などの五環体モノマー;テトラシクロペンタジエンなどの七環体モノマー;これらのメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、エチリデン基などのアルキリデン基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基等による置換体;これらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等の炭素および水素以外の元素を含有する基、いわゆる極性基による置換体等が挙げられる。また、上記ノルボルネン系モノマーのなかでも、入手が容易であって、優れた反応性を有し、耐熱性に優れることから、三環体モノマー、四環体モノマー、五環体モノマー等が好適に用いられる。これらのノルボルネン系モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0015】
これらのノルボルネン系モノマーから得られる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、公知であり、また、商業的に入手できる。公知の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、特開平1−240517号公報に記載されているもの等が挙げられる。また、商業的に入手できる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ジェイエスアール社製の商品名「アートン」、日本ゼオン社製の商品名「ゼオノア」、三井化学社製の商品名「APEL」等が挙げられる。これらの熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0016】
ノルボルネン系樹脂フィルムは、延伸して位相差が付与されたものであってもよく、また、接着面の反対側に、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。ノルボルネン系樹脂フィルムの偏光フィルムと接着する面には、易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理等のドライ処理、アルカリ処理等の化学処理、易接着剤層を形成するコーティング処理等があげられる。
また、ノルボルネン系樹脂フィルムの厚みは未延伸フィルムの場合で15〜180μm、延伸フィルムの場合で10〜100μmである。
【0017】
本発明で使用する接着剤はポリビニルアルコール系水性接着剤である。ポリビニルアルコール系接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤は、部分鹸化ポリビニルアルコールや完全鹸化ポリビニルアルコールのほか、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液でありうる。また、水溶性エポキシ化合物、ジアルデヒド、イソシアネートなどの架橋剤を含有していてもよい。本発明においては、ポリビニルアルコール系水性接着剤として、ポリビニルアルコールの水溶液に、更に架橋剤としてのジアルデヒドであるグリオキザール及び硬化触媒としての塩化亜鉛、塩化コバルト等を配合したものを用いるのが好ましい。
【0018】
本発明において、ポリビニルアルコール系水性接着剤中のポリビニルアルコール成分が、水100重量部に対して1.0〜2.5重量部、好ましくは1.5〜2.0重量部である必要がある。ポリビニルアルコール成分が、水100重量部に対して2.5重量部を超えると、水性接着剤の粘度が高くなりそのため接着層が厚くなって、全体の水分量が増えるので十分な接着強度が得られない。また、薄く塗ろうとすれば、塗りムラが生じて接着強度が低くなる。逆に、ポリビニルアルコール成分が1.0重量部未満では、接着剤中の樹脂濃度が低すぎて十分な接着強度が得られない。
すなわち、ノルボルネン系保護フィルムのように透湿性の低い保護フィルムを使用した場合、ポリビニルアルコール系水性接着剤中の水分が除去しにくいので、ポリビニルアルコール成分を増やすことで、水分量を減らしてみても接着強度の向上に効果がない。一方、ポリビニルアルコール成分の少ない、すなわち水分量の多い本発明の接着剤の場合、後述するニップロールの間隙を調整する方法との組み合わせで驚くべきことに良好な接着性を示すことが判明したのである。
【0019】
次に、本発明の偏光板を製造方法について図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明を説明する模式図である。
まず、偏光子1、及び偏光子1の両面に保護フィルムとしてのノルボルネン系保護フィルム2、3を連続的に供給し、それらを重ね合わせる前に接着剤塗布装置4を用いてポリビニルアルコール系接着剤を塗布する。接着剤を塗布する方法は、図1には接着剤供給ノズルを使用しているが、特に制限はなく、その他にも、ロールコーティング装置、グラビアコーティング装置、スプレーコーティング装置などが使用できる。
次いで、ノルボルネン系保護フィルム2/接着剤/偏光子1/接着剤/ノルボルネン系保護フィルム3となるように重ね合わせ、重ね合わされた状態でロール5、6からなるニップロールを通過させる。この際に、ニップロールの間隙(ロール5とロール6間の隙間)をノルボルネン系保護フィルム2、偏光子1、ノルボルネン系保護フィルム3の合計厚みの25〜70%、好ましくは30〜50%にすることが好ましい。このような間隙に調整したニップロールを通すことで、保護フィルムと偏光子間に圧力が加わり、余分な接着剤が除去され、接着剤層が薄膜となるので、結果的に界面に存在する水分を減らすことができる。特に、水性接着剤の粘度が低いほど、すなわち接着剤濃度が低いほど効果的である。この間隔が25%未満では間隙が狭すぎて通過させるのが困難となるので好ましくなく、間隙が70%を超えると加熱乾燥後であっても十分な接着強度を示さないので好ましくない。
また、本発明において使用するニップロールは、圧力を加えること、偏光板の表面平滑性を保つことから、ロール5、ロール6共に、金属製の芯部にゴム層でコーティングされた弾性ロールを使用するのが好ましい。さらに、このような弾性ロールを使用することにより、フィルムが変形することなく、しかも偏光板を傷つけなくてすむので、光学特性に影響がない。なお、ニップロールの間隙を25〜70%にして、従来公知のTACフィルムを通過させた場合は、ポリビニルアルコール系偏光子の表面状態がそのまま偏光板の表面に浮き出てくることから、偏光板として使用できない。よって、本発明の方法では、偏光子の両面に、ノルボルネン系保護フィルムを使用する場合にのみ適用できる。
【0020】
偏光子1の両面にノルボルネン系保護フィルム2,3を積層した状態で、乾燥装置7を通過させて加熱乾燥することで本発明の偏光板を得ることができる。加熱乾燥温度は、偏光板を十分乾燥させしかも偏光子中のヨウ素が昇華して偏光板の性能が低下するのを防止するために55℃〜90℃の範囲にすることが好ましい。ここで、乾燥装置7としては特に制限はなく、例えば、空気対流式乾燥機、循環式温風乾燥機が使用される。また、必要に応じて、乾燥装置7を複数区画とし、各々の温度を調整することで最適の乾燥条件とすることも勿論可能である。
【0021】
本発明の方法で得られる偏光板は、携帯電話、テレビ、産業機械の表示板等に用いられる液晶表示装置に使用することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、得られた偏光板は、以下の方法で評価した。
<接着性>
偏光板の接着性は、巻き取り工程直後における偏光板の剥がし易さで評価した。
偏光板の偏光子と保護フィルムの間に刃金を挿し込んだ際の剥がれやすさを◎、○、×の3段階で評価した。
◎:偏光子と保護膜が一体化しており刃金を挿し込むことができなかった。
○:偏光子と保護膜の間に刃金を挿し込むことはできたが、容易に剥がれなかった。
×:偏光子と保護膜が容易に剥がれた。
<性能発現性>
偏光板の性能発現性は、巻き取り直後における偏光板が偏光板として使用可能かどうかについて着色の度合いをで○、×の2段階で評価した。
○:偏光板として問題のない性能を有していた。
×:青色に変色して、偏光板として使用できなかった。
【0023】
実施例1−9、比較例1−4
表1に示す、厚さ20μmのポリビニルアルコール(PVA)偏光子、ノルボルネン系(NB)保護フィルム、ポリビニルアルコール系水性接着剤(水性接着剤)を用い、クリーンルーム内でPVA偏光子の両面に水性接着剤を塗布し、保護フィルム1、保護フィルム2をPVA偏光子の両面に重ね合わせ、表1に示す間隙に調整したニップロールを通過させた後、乾燥装置(平均乾燥温度は80℃)の中で加熱乾燥して偏光板を製造した。得られた偏光板の接着性、性能発現性を同じく表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1から、本発明に係る水100重量部に対してPVAが2.5重量部以下である水性接着剤を使用して、ニップロールの間隙が偏光子と保護フィルムの合計厚みの25%〜70%に調整した実施例1〜9の場合は、接着性、性能発現性が良好であった。
一方、比較例4からも明らかなように、ニップロールの間隙が偏光子と保護フィルムの合計厚みの70%を超える場合は、水100重量部に対してPVAが2.5重量部以下である水性接着剤を使用しても、接着性が悪く、偏光子に含有しているヨウ素が水分に溶け出して青変するので性能発現性も悪かった。
また、比較例1〜3から明らかなように、水100重量部に対してPVAが3.0重量部以上の場合は、ニップロールの間隙が偏光子と保護フィルムの合計厚みが本発明に係る範囲であっても、接着性が悪く、偏光子に含有しているヨウ素が水分に溶け出して青変するので性能発現性も悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明で製造した偏光板を使用すると、従来のTAC系保護フィルムを使用した偏光板に比べて耐熱性に優れている。液晶表示装置の表示をONにすると偏光板が熱をもつので、熱をもつ状態でも保護フィルムが縮んだりしない本発明で製造した偏光板は、大型テレビなどの液晶表示装置に使用すると好適である。
また、本発明で製造した偏光板を使用すると、従来のTAC系保護フィルムを使用した偏光板に比べて寸法安定性に優れており、白ぬけ現象が起こりにくい。例えば、テレビのサイズが大型であればあるほど、従来のTAC系保護フィルムを使用した場合、表示装置の額縁の白ぬけ現象がおこるが、本発明で製造した偏光板であれば白ぬけ現象が起こりにくく、好ましく使用される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の製造方法を示す模式的側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ポリビニルアルコール系偏光子
2 ノルボルネン系保護フィルムA
3 ノルボルネン系保護フィルムB
4 接着剤塗布装置
5 ロール
6 ロール
7 乾燥装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系偏光子の両面にポリビニルアルコール系水性接着剤を介してノルボルネン系保護フィルムが貼着されてなる偏光板の製造方法において、ポリビニルアルコール系水性接着剤中のポリビニルアルコール成分が水100重量部に対して1.0〜2.5重量部であり、該ポリビニルアルコール系水性接着剤を塗布した後、前記偏光子と保護フィルムとを重ね合わせ、次いで前記偏光子と保護フィルムの合計厚みの25%〜70%になるように間隙を調節したニップロールを通過させ、しかる後に加熱乾燥させることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系水性接着剤が、水、ポリビニルアルコール系樹脂、グリオキザール及び硬化促進剤を含有していることを特徴とする請求項1記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
加熱乾燥の温度が55〜90℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の偏光板の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法で製造される偏光板。
【請求項5】
請求項4記載の偏光板を用いた液晶表示装置。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−90271(P2008−90271A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147666(P2007−147666)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)
【Fターム(参考)】