説明

偏光板

【課題】偏光子とアクリル重合体、脂環式構造含有重合体、またはポリカーボネートのいずれかの材質が最表層に形成された保護フィルムとの組み合わせの偏光板において、リワーク性が良好な偏光板を提供する。
【解決手段】
偏光子と保護フィルムの間に接着剤層が存在し、接着剤層がポリビニルアルコール類と、ウレタン樹脂とを含有する接着剤組成物により形成されていることを特徴とする偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子と保護フィルムとの接着性に優れた偏光板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は車載用や携帯情報端末用として用いられることが多くなり、液晶表示装置の高温および高温多湿環境下における信頼性が強く要望されている。従来、液晶表示装置は、透明電極を形成した2枚の電極基板間に液晶を封入した液晶セルの片側もしくは両側に偏光板を貼り付けて用いられており、この偏光板は、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着、延伸配向させて作製した偏光子の両面に保護フィルムを接着したものが一般的に使用されている。
【0003】
保護フィルムとしては、透湿性等の改善のため、環状オレフィン系樹脂を主成分とする保護膜を使用することがあるが、このような樹脂と偏光子との接着は必ずしも十分でなく、様々な接着剤が試みられてきた。
特許文献1では、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる保護フィルムとの接着にポリウレタン系接着剤を使用する方法を開示している。しかし、ポリウレタン系接着剤を使用して作製した偏光板では、接着力が不十分であるため液晶パネルと偏光板を積層する際のリワーク性に問題点がある。
特許文献2では、環状オレフィン系樹脂を主成分とする保護膜と偏光子との接着剤が、ポリビニルアルコール系接着剤とアクリル系主剤とイソシアネート系硬化剤を主成分とする2液タイプ接着剤の混合物である偏光板を開示しているが、硬化剤を仕使用しているため、接着剤の安定性が劣り作業性に問題がある。
特許文献3では、ポリビニル系偏光フィルムの片面又は両面にウレタン系接着剤とポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤層を介してシクロオレフィン系樹脂からなる保護フィルムを積層してなる偏光板を開示しているが、混合後の接着剤は極めて短時間に使用しなけらばならず、安定性が劣るため、作業性に問題があることが判る。
【特許文献1】特開2000−321432号公報
【特許文献2】特開2000−321430号公報
【特許文献3】特開2004−334168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、偏光子(A)とアクリル重合体、脂環式構造含有重合体、またはポリカーボネートのいずれかの材質が少なくとも偏光子側の最表層に形成された保護フィルム(B)との組み合わせの偏光板において、リワーク性に優れる偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリビニールアルコール類と、ウレタン樹脂との組み合わせの接着剤を使用することによって、偏光子とアクリル重合体、脂環式構造重合体、またはポリカーボネートのいずれかの材質のフィルムが形成された保護フィルムとの、接着性がよく、接着剤の安定性が優れているため作業性が向上することを見出し、さらに検討した結果、完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
<1>偏光子(A)と、
アクリル系重合体、脂環式構造含有重合体、またはポリカーボネートのいずれかの材質のフィルムが少なくとも偏光子側の最表面に形成された保護フィルム(B)とを含む偏光板であって、
偏光子(A)と保護フィルム(B)の間に接着剤層が存在し、
接着剤層がポリビニルアルコール類とウレタン樹脂とを含有する接着剤組成物により形成されていることを特徴とする偏光板。
<2>ポリビニルアルコール類が変性ポリビニルアルコール樹脂であることを特徴とする上記偏光板。
<3>保護フィルム(B)が、延伸されたフィルムであることを特徴とする上記偏光板。
<4>前記偏光子(A)と保護フィルム(B)の間に、ポリビニルアルコール類とウレタン樹脂を含む水溶液を介在させて、圧着させて製造することを特徴とする上記偏光板の製造方法。
<5>ポリビニールアルコール類とウレタン樹脂を含む水溶液を介在させる前の、前記保護フィルム(B)の表面の水接触角が50度以下である上記製造方法。
【発明の効果】
【0007】
偏光子とアクリル重合体、脂環式構造重合体、またはポリカーボネートのいずれかの材質のフィルムが積層された保護フィルムを含む偏光板において、接着性、接着剤の安定性が優れた偏光板を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)偏光子
本発明で用いられる偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素、二色性染料などの二色性物質からなる偏光子が好適である。
【0009】
(2)保護フィルム
本発明で用いられる保護フィルムの平均厚みは、通常5μm〜1mm、好ましくは20〜200μmである。保護フィルムの厚みが厚過ぎたり薄過ぎたりすると加工性が悪くなり好ましくない。また、保護フィルムは透明であり、400〜700nmの可視領域の光の透過率が80%以上で、平滑であるものが好ましい。
保護フィルムとしては、(a)アクリル重合体、脂環式構造含有重合体、ポリカーボネートの中から選択される樹脂からなる単層フィルム、(b)アクリル重合体、脂環式構造含有重合体、ポリカーボネートの中から選択される樹脂からなる層を、少なくとも片側の最表面に形成した多層フィルムを用いることができる。なお、片側のみの最表面に積層する場合、その面が偏光子側となる。
【0010】
(a)単層フィルム
単層フィルムの平均厚みは、通常5μm〜1mm、好ましくは20〜200μmである。単層フィルムの厚みが厚過ぎたり薄過ぎたりすると加工性が悪くなり好ましくない。これらのうち、脂環式構造含有重合体が加工性の観点から好適である。
【0011】
本発明に好適に用いられる脂環式構造含有重合体は、主鎖及び/または側鎖にシクロアルカン構造を有する重合体である。機械的強度や耐熱性などの観点から、主鎖にシクロアルカン構造を含有する重合体が好適である。また、シクロアルカン構造としては、単環、多環(縮合多環、橋架け環など)が挙げられる。シクロアルカン構造の一単位を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、樹脂フィルムの機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。また、本発明で使用される脂環式構造含有重合体は、通常、熱可塑性の樹脂である。
【0012】
脂環式構造含有重合体は、通常、シクロアルカン構造を有する繰り返し単位を脂環式構造含有重合体の主鎖における全繰り返し単位中に通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%有する。シクロアルカン構造を有する繰り返し単位の割合がこれらの範囲にあれば樹脂フィルムの耐熱性に優れる。
【0013】
脂環式構造含有重合体は、通常、環構造を有するオレフィンを付加重合又は開環重合し、そして必要に応じて不飽和結合部分及び芳香環部分を水素化することによって得られる。
【0014】
脂環式構造含有重合体を得るために使用される環構造を有するオレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロペンテンなどの脂環族ビニル化合物等が挙げられる。環構造を有するオレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
環構造を有するオレフィンと共重合可能な単量体を必要に応じて付加共重合させること
ができる。その具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;1,3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
環構造を有するオレフィンの重合は公知の方法に従って行うことができる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜5MPaの重合圧力で重合させる。水素化反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。
【0017】
脂環式構造含有重合体の具体例としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素化物、ノルボルネン系単量体の付加重合体及びその水素化物、ノルボルネン系単量体とビニル化合物(エチレンや、α−オレフィンなど)との付加重合体及びその水素化物、単環シクロアルケンの重合体及びその水素化物、脂環式共役ジエン系単量体の重合体及びその水素化物、ビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物、芳香族ビニル化合物の重合体の芳香環を水素化した物などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物(=エチレンやα−オレフィンなど)との付加重合体、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素化物が好ましく、特にノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物が好ましい。前記の脂環式構造含有重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
上記脂環式構造含有樹脂としては、例えば、日本ゼオン社より商品名「ZEONOR」、「ZEONEX」、ジェイエスアール社より商品名「ARTON」、三井石油化学社より商品名「APEL]などが上市されている。
【0019】
本発明で使用されるアクリル重合体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体;アルキル基の水素がOH基、COOH基もしくはNH2基などの官能基によって置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体;または(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレン、酢酸ビニル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの不飽和結合を有するビニル系モノマーとの共重合体を挙げることができる。熱可塑性アクリル重合体としては、これらのうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性アクリル重合体はポリメタクリル酸メチルおよびポリメタクリル酸ブチルが単量体単位として含まれているものがより好ましい。
【0020】
本発明で使用されるポリカーボネートとは、炭酸とグリコール又は2価フェノールとのポリエステルであり、通常炭酸と2、2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(通称ビスフェノール−A)とを構造単位とする芳香族ポリカーボネートが多様されている。本発明ではこれに限定されるわけではなく、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、1,1−ビス(3−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、1、1−ビス(3,5−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類からなる群から選択される少なくとも1種の2価フェノールをモノマー成分とする共重合ポリカーボネート、ホモポリマー、フェノール−Aをモノマー成分とするポリカーボネートとの混合物、上記2価フェノールとビスフェノール−Aとをモノマー成分とする共重合ポリカーボネートを使用することができる。
【0021】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカンの具体例としては、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5,5−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチルシクロペンタン等が挙げられる。
【0022】
1,1−ビス(3−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカンとしては、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン基で置換された1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、例えば、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5,5−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチルシクロペンタン等が挙げられる。
【0023】
1、1−ビス(3,5−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカンとしては、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン基で置換された1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、例えば、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−エチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチルシクロペンタン等が挙げられる。
【0024】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0025】
さらに、他のビスフェノール成分として、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、4,4’−(α−メチルベンジリデン)ビスフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘブタン、4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)2,5−ジメチルヘブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)4−フルオロフェニルメタン、2,2’−ビス(3−フルオロー4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0026】
上記ポリカーボネートは、上記ビスフェノール成分の他に、酸成分のコモノマーとして少量の脂肪族、芳香族ジカルボン酸を用いたポリエステルカーボネートを含む。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、p−キシレングリコール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1、1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン、2、2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン、等を挙げることができる。この中で、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0027】
本発明に用いる樹脂は、その分子量によって特に制限されない。樹脂の分子量は、シクロヘキサンまたはトルエンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、ポリスチレン(溶媒がトルエンの場合)換算又はポリイソプレン(溶媒がシクロヘキサンの場合)換算の重量平均分子量(Mw)で、通常1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜250,000の範囲である。樹脂の重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあるときには、耐熱性、接着性、表面平滑性などがバランスされ好適である。
樹脂の分子量分布は、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0028】
樹脂のガラス転移温度は、好ましくは60〜200℃、より好ましくは100〜180℃である。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。 本発明に用いる樹脂は、顔料や染料などの着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤が適宜配合されたものであってもよい。
【0029】
本発明に用いる単層フィルムの成形方法は特に制限はなく、例えば、加熱溶融成形法、溶液流延法等の通常の成形方法を採用することができる。中でも、成形体中の揮発性成分を低減させることのできる加熱溶融成形法が好ましい。
加熱溶融成形法には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等があり、中でも、機械的強度及び表面精度等に優れるフィルムを得るためには、溶融押出成形法が好適である。
【0030】
(b)多層フィルム
本発明に用いる多層フィルムは、アクリル重合体、脂環式構造含有重合体、ポリカーボネートの中から選択される樹脂からなる層を、少なくとも片側の最表面に形成した多層フィルムである。発明の目的から偏光子側に、これらの樹脂層が形成されることが望ましい。
【0031】
本発明に用いる多層フィルムの平均厚みは、通常5μm〜1mm、好ましくは20〜200μmである。多層フィルムの厚みが厚過ぎたり薄過ぎたりすると加工性が悪くなり好ましくない。これらのうち、最表面に形成する層の樹脂としては、脂環式構造含有重合体が加工性の観点から好適である。
【0032】
本発明に用いる多層フィルムの中間層に用いる樹脂としては、透明性であれば特に制限は無く、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、脂環式構造重合体などが挙げられる。
本発明に用いる多層フィルムの最表面に用いる樹脂としては、単層フィルムで例示した樹脂を用いることができる。
本発明に用いる多層フィルムの成形方法は特に制限は無く、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出による成形方法、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、及び基材樹脂フィルムに対して樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形方法などの公知の方法を適宜利用することができる。中でも、製造効率などの観点から、共押出による成形方法が好ましい。
【0033】
本発明に用いる保護フィルムは、前記記載の単層フィルムまたは多層フィルムを延伸したフィルムを使用することができる。
単層フィルムまたは多層フィルムを延伸する方法は特に制限はなく、従来公知の方法が適用され得る。具体的には、ロール側の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法、テンターを用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔を開いての縦方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンターを用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;が挙げられる。
【0034】
延伸温度は、特に制限されないが、フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度Tgとすると、(Tg−10)(℃)〜(Tg+20)(℃)の範囲が好ましく、(Tg−5)(℃)〜(Tg+15)(℃)の範囲がさらに好ましい。なお、多層フィルムの場合は、最も厚い層を構成している樹脂のガラス転移温度を基準として考えることが好ましい。
ここで延伸倍率は、通常1.1〜30倍、好ましくは1.3〜10倍である。延伸倍率が、上記範囲を外れると、配向が不十分で屈折率異方性、ひいてはレターデーションの発現が不十分になったり、フィルムが破断したりするおそれがある。
【0035】
本発明に用いる保護フィルムには、偏光子と接着する前に表面処理を施すことが好ましい。表面処理としてはアルカリ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理などが挙げられ、好ましくはフィルム面の水滴の接触角で50°以下、さらに好ましくは40°以下の表面状態にするのが好ましい。
【0036】
(3)接着剤層
本発明で使用される接着剤層はポリビニルアルコール類と、ウレタン樹脂とを含有する接着剤組成物により形成される。ポリビニールアルコール類とは、ポリビニルアルコールとポリビニルアルコール誘導体をいう。
【0037】
使用されるポリビニルアルコール類としては、特に限定されるものではないが、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールがあげられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等があげられる。この中でも、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコールが接着力の点で好ましい。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独でまたは二種以上を併用することができる。
【0038】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は特に限定されないが、接着性の点からは、平均重合度100〜3000程度、好ましくは500〜3000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%である。
【0039】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂をジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等があげられる。またポリビニルアルコールにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法があげられる。
【0040】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はなない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不充分であり不適当である。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%程度、さらに好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは2〜7モル%である。アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
【0041】
本発明のウレタン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるウレタンポリマー、または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて水性分散体とすることによって製造される。これらのウレタン系重合体中には酸成分(酸残基)を含有させてもよい。
【0042】
なお、イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法によればよく、例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤成分とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させればよい。
【0043】
前記(i)成分の1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(1)ジオール化合物:エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等。
【0044】
(2)ポリエーテルジオール:前記のジオール化合物のアルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシドや環状エーテル(テトラヒドロフランなど)の開環(共)重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの(ブロックまたはランダム)共重合体、グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール等。
【0045】
(3)ポリエステルジオール:アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸(無水物)と上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物とを水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。具体的には、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール等が例示できる。
【0046】
(4)ポリエーテルエステルジオール:エーテル基含有ジオール(前記(2)のポリエーテルジオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記(3)で例示したような(無水)ジカルボン酸に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるもの、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物等。
【0047】
(5)ポリカーボネートジオール:一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ジオール残基、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物等。これらは、飽和脂肪族ジオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ジオールとホスゲンを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ジオールを反応させる方法などにより得ることができる。
【0048】
上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記(i)成分と反応させる(ii)多価イソシアネート成分としては、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物が使用できる。
【0049】
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0050】
また、ウレタン系重合体中に酸残基を含むものは、界面活性剤を使用せずにもしくはその量が少なくても水中に分散させることが可能となるので塗膜の耐水性が良くなることが期待される。酸残基の含有量としては、ウレタン系重合体の酸価として、25〜150(mgKOH/g)、好ましくは、30〜100(mgKOH/g)の範囲であるのが好適である。酸価が25未満では水分散性を不十分となりやすく、界面活性剤の併用が必要となることが多い、一方酸価が150より大きいと塗膜の耐水性が劣る傾向となる。
【0051】
ウレタン系重合体中に酸基を導入する方法は、従来から用いられている方法が特に制限なく使用できるが、例えばジメチロールアルカン酸を前記(2)から(4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって予めポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルエステルジオールなどにカルボキシル基を導入しておくことにより、酸基を導入する方法が好ましい。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などを挙げることができる。
【0052】
また、ウレタン系重合体中に残る酸成分を中和することにより、ウレタン樹脂の分散性を向上させることができるため、中和されていることが好ましい。酸成分を中和する中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基などを挙げることができる。
【0053】
本発明のウレタン樹脂としては、数平均分子量が1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上である。但し1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。
本発明のウレタン樹脂の水性樹脂分散体中のウレタン樹脂粒子の粒径は、0.01μm〜0.5μmが好ましい。また樹脂固形分が15〜70重量%であることが好ましい。液粘度は1〜10,000mPa・sが好ましい。
【0054】
上記ウレタン樹脂として、市販されている水性ウレタン樹脂をそのまま使用することも可能であり、例えば、ADEKA製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン製の「ソフラネート」シリーズ、花王製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業製の「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬製の「スーパーフレックス」シリーズ、ゼネカ製の「ネオレッツ」シリーズ等を用いることができる。
【0055】
接着剤を調整する場合、両方の樹脂の水溶液を均一になるまで混合することによって
調整される。調整する温度、攪拌方法、時間等は接着剤として機能が失われない限り、任意のものを選択することができる。
ポリビニルアルコール類と、ポリウレタン樹脂との混合比率について、特に限定はないが、好ましくはポリビニルアルコール類と、ポリウレタン樹脂との重量比が5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10である。さらに好ましくはポリビニルアルコール類:ポリウレタン樹脂が50:50〜20:80である。
【0056】
(接着剤の塗布)
前記接着剤の塗布は、透明保護フィルム、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。前記接着剤層の厚みが0.05〜5μm程度になるように行なうのが好ましい。
塗布操作は特に制限されず、ロール法、噴霧法、浸漬法等の各種手段を採用できる。塗布後のフィルムの貼り合わせ方法は特に制限されない。たとえば、透明保護フィルムと偏光子とを接着剤層を介して連続的に一対のロール間を通過させる方法等があげられる。
さらに、貼り合わせ後の偏光板は乾燥させることが望ましい。乾燥温度は、偏光板としての機能が損なわれず、実際の製造プロセスにおいて問題とならない範囲を選択することができ、好ましくは10〜200℃、さらに好ましくは20〜150℃である。乾燥時間について、乾燥温度に応じて適宜選択できるが、実際の製造プロセスを考慮して、10秒〜数時間の範囲である。
【0057】
(剥離強度)
剥離強度は、表面−界面切削法(SAICAS法)により測定される。SAICAS法(Surface And Interfacial Cutting Analysis System)による剥離強度は、大日本プラスチックス社、ダイプラ・ウィンテス社、メコン社、三ツワ理化学工業社などから販売されている、切り刃による塗膜の界面切削によってその切り刃が受ける抵抗力を圧力で検出し、その検出圧力の大きさにより塗膜の付着強度を測定する塗膜付着強度測定機(サイカス;商標名)により測定される。具体的には実施例記載の方法により評価する。
【0058】
本発明において好ましい剥離強度は0.1kN/m以上であり、さらに好ましくは、0.14kN/mである。
【実施例】
【0059】
本発明を実施例によってより詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されない。本発明における評価は以下の方法に従って行った。
【0060】
(接触角測定)
協和界面化学社の接触角計DM500を用い、表面処理を施したフィルムの水接触角を測定した。
(剥離強度測定)
作製した偏光板を5×20mmに切り出し、アロンアルファ201(東亞合成製)を用い、偏光子面がガラス板に接するようにガラス板上に貼り付け、測定用のサンプルとした。
前記サンプルを用い、表面−界面切削法(SAICAS法)により剥離強度を評価した。測定は、切刃は0.8mm幅、すくい角40°逃げ角10°の単結晶ダイヤモンド製のものを使用し、ダイプラ・ウィンテス社のサイカスCN−20型で測定を行った。水平速度2μm/秒、垂直速度1μm/秒で切削して測定した。切刃が透明保護フィルム、偏光子の界面まで切削したところで、垂直速度を0μm/分とし、切刃を基板に平行に動かして平行力FH[kN]を測定した。切刃の幅w[m]から剥離強度PをP[kN/m]=FH[kN]/w[m]の計算式から求めた。
(安定性試験)
水系接着剤作製後、3日静置し、40℃の環境下に3日間静置した。その後、振とう機で24時間振とうし、ゲル発生等の異常がないか調べた。
【0061】
製造例1
<水性ウレタン樹脂の製造>
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管の備えた2000mlの四つ口フラスコに、3−メチル−1,5−ペンタンジオール317.2g、テレフタル酸174g、アジピン酸146gを反応器に仕込み、常圧下、窒素ガスを通じつつ、200℃で生成する水を反応系外に留去しながらエステル化反応を行った。ポリエステルの酸価が1.0mgKOH/gになった時点で真空ポンプにより、徐々に真空度を上げて反応を完結させた。得られたポリエステルポリオールの水酸基価56.1mgKOH/g、酸価は0.2mgKOH/g、数平均分子量(水酸基価より算出した)は2000であった。
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管の備えた2000mlの四つ口フラスコに、前記ポリエステルポリオール840g、トリレンジイソシアネート119g、メチルエチルケトンを200g入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸を41gと、トリエチルアミン25gとを加え、75℃で反応させてプレポリマー溶液を得た。次いで、このプレポリマーを40℃まで冷却し、水1500部を加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下によりメチルエチルケトンを留去し、固形分40%の水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0062】
製造例2
<透明保護フィルム1の製造>
アクリル樹脂(パラペット、クラレ製)10gを酢酸ブチル40gに溶解し、アクリル樹脂塗布液を作製した。次いで、厚さ100μmのPETフィルム(A4100、東洋紡績製)の易接着面に、乾燥後のアクリル樹脂層の厚みが2μmになるようにアクリル樹脂塗布液を塗布し、60℃、20分乾燥することにより、表面がアクリル樹脂からなる多層フィルム(透明保護フィルム1)を作製した。
【0063】
製造例3
<透明保護フィルム2の製造>
ポリカーボネート(パンライト C−1400QJ、帝人化成製)10gをメチレンクロライド40gに溶解し20重量%のポリカーボネート塗布液を作製した。厚さ100μmのPETフィルム(A4100、東洋紡績製)の易接着面に、乾燥後のポリカーボネート層の厚みが2μmになるようにポリカーボネート塗布液を塗布し、40℃、30分乾燥することにより、表面がポリカーボネートからなる多層フィルム(透明保護フィルム2)を作製した。
【0064】
製造例4
<透明保護フィルム3の製造>
ノルボルネン系樹脂であるZEONOR1420(日本ゼオン(株)製)のペレットを100℃で5時間乾燥した後、常法によって該ペレットを押出し機に供給して250℃で溶融してダイから冷却ドラム上に吐出し、厚さ150μmの未延伸フィルム(透明保護フィルム3)を得た。
【0065】
製造例5
<透明保護フィルム4の製造>
ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、製造例4で作製した前記未延伸フィルムを143℃の温度で縦方向に1.2倍に延伸し、さらにこれを、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、150℃の温度で横方向に1.8倍に延伸し、厚さ70μmの2軸延伸フィルム(透明保護フィルム4)を得た。
【0066】
実施例1
(偏光子の調製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフイルムを0.3%のヨウ素水溶液中で染色した後、4%のホウ酸水溶液、2%のヨウ化カリウム水溶液中で5倍まで延伸した後、50℃で4分間乾燥させて偏光子を得た。
(水系接着剤の調製)
ポリビニルアルコール樹脂であるPVA103(クラレ製)100gを純水900gに溶解した溶液を作製した。次いで、作製したPVA溶液200gと製造例1で作製した水溶性ウレタン樹脂50gを溶液が均一になるまで混合することにより、水溶性接着剤1を作製した。水系接着剤1の評価結果を表に示す。
(偏光板の作成)
製造例2で作製した透明保護フイルム1を、40℃の2.5M水酸化ナトリウム水溶液で60秒間アルカリ処理した後、3分間水洗してアルカリ処理を実施した。アルカリ処理した透明保護フィルム1のアクリル樹脂層側の水接触角は41°であった。
次いで、アルカリ処理した透明保護フィルム1のアクリル樹脂層側に、作製した水溶性接着剤1を塗布した後、作製した偏光子にロールラミネーターを用いて貼りあわせ、70℃で10分間乾燥することにより、偏光板1を得た。作製した偏光板1の評価結果を表に示す。
【0067】
実施例2
(水系接着剤の調製)
実施例1の(水系接着剤の調製)において、ポリビニルアルコール樹脂であるPVA130をゴーセファイマーLW−300(日本合成化学工業製、ケン化度53〜60)に変えた以外は実施例1の(水系接着剤の調製)と同様の手法により水系接着剤2を作製した。水系接着剤2の評価結果を表に示す。
(偏光板の作製)
実施例1の(偏光板の作製)において、透明保護フィルム1を製造例3で作製した透明保護フィルム2に、また水系接着剤1を水系接着剤2に変えた以外は実施例1の(偏光板の作製)と同様の手法により偏光板2を作製した(偏光子と接する側はポリカーボネート層側である)。なお、アルカリ処理した透明保護フィルム2のポリカーボネート層側の水接触角は50°であった。作製した偏光板2の評価結果を表1に示す。
【0068】
実施例3
(水系接着剤の調製)
実施例1の(水系接着剤の調製)において、ポリビニルアルコール樹脂であるPVA130をゴーセファイマーZ210(日本合成化学工業製、アセトアセチル基を含有PVA)に変え、接着剤中の樹脂の配合比を変えた以外は実施例1の(水系接着剤の調製)と同様の手法により水系接着剤3を作製した。水系接着剤3の評価結果を表1に示す。
(偏光板の作製)
製造例4で作製した透明保護フイルム3を、高周波発信機(コロナジェネレータHV05−2、Tamtec社製)を用いて、出力電圧100%、出力250Wで、直径1.2mmのワイヤー電極で、電極長240mm、ワーク電極間1.5mmの条件で3秒間コロナ放電処理を実施した。コロナ処理した透明保護フィルム3の水接触角は27°であった。
次いで、コロナ処理した透明保護フィルム3のコロナ処理面側に、作製した水溶性接着剤3を塗布した後、作製した偏光子にロールラミネーターを用いて貼りあわせ、70℃で10分間乾燥することにより、偏光板3を得た。作製した偏光板3の評価結果を表1に示す。
【0069】
実施例4
(水系接着剤の調製)
実施例3の(水系接着剤の調製)において、接着剤中の樹脂の配合比を変えた以外は実施例3の(水系接着剤の調製)と同様の手法により水系接着剤4を作製した。水系接着剤4の評価結果を表に示す。
(偏光板の作製)
実施例3の(偏光板の作製)において、接着剤3を接着剤4に変えた以外は実施例3の(偏光板の作製)と同様の手法により偏光板4を作製した。作製した偏光板4の評価結果を表1に示す。
【0070】
実施例5
(水系接着剤の調製)
実施例1の(水系接着剤の調製)において、ポリビニルアルコール樹脂であるPVA130をゴーセファイマーZ220(日本合成化学工業製、アセトアセチル基を含有PVA)に変えた以外は実施例1の(水系接着剤の調製)と同様の手法により水系接着剤5を作製した。水系接着剤5の評価結果を表1に示す。
(偏光板の作製)
実施例3の(偏光板の作製)において、透明保護フィルム3を製造例5で作製した透明保護フィルム4に、接着剤3を接着剤5に変えた以外は実施例3の(偏光板の作製)と同様の手法により偏光板5を作製した。作製した偏光板5の評価結果を表1に示す。
【0071】
比較例1
(水系接着剤の調製)
ポリビニルアルコール樹脂であるPVA103(クラレ製)100gを純水900gに溶解することにより、比較例水系接着剤1を作製した。比較例水系接着剤1の評価結果を表1に示す。
(偏光板の作製)
実施例3の(偏光板の作製)において、接着剤3を比較例接着剤1に変えた以外は実施例3の(偏光板の作製)と同様の手法により比較例偏光板1を作製した。作製した比較例偏光板1の評価結果を表に示す。
【0072】
比較例2
(偏光板の作製)
実施例3の(偏光板の作製)において、接着剤3を製造例1で作製した水性ウレタン樹脂に変えた以外は実施例3の(偏光板の作製)と同様の手法により比較例偏光板2を作製した。作製した比較例偏光板2の評価結果を表に示す。
【0073】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子(A)と、
アクリル系重合体、脂環式構造含有重合体、またはポリカーボネートのいずれかの材質のフィルムが少なくとも偏光子側の最表面に形成された保護フィルム(B)とを含む偏光板であって、
偏光子(A)と保護フィルム(B)の間に接着剤層が存在し、
接着剤層がポリビニルアルコール類とウレタン樹脂とを含有する接着剤組成物により形成されていることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
ポリビニルアルコール類が変性ポリビニルアルコール樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の偏光板。
【請求項3】
保護フィルム(B)が、延伸されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板。
【請求項4】
前記偏光子(A)と保護フィルム(B)の間に、ポリビニルアルコール類とウレタン樹脂を含む水溶液を介在させて、圧着させて製造することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項5】
ポリビニールアルコール類とウレタン樹脂を含む水溶液を介在させる前の、前記保護フィルム(B)の表面の水接触角が50度以下である請求項4の製造方法。

【公開番号】特開2009−169333(P2009−169333A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10137(P2008−10137)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】