説明

偏光状態取得装置、偏光状態取得方法、および、プログラム

【課題】偏光状態を高精度に測定すること。
【解決手段】偏光状態取得装置は、入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量を複数の画素毎に取得する受光量取得部と、入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量が、予め定められた受光量の範囲内にあるか否かを判定する受光量判定部と、受光量取得部が取得した受光量のうち範囲内にあると判定された受光量を用いて、入射光の偏光状態を複数の画素毎に取得する偏光状態取得部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光状態取得装置、偏光状態取得方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の受光素子のそれぞれの入射面の近傍に偏光方向の異なる偏光フィルタを設けることで、複数の受光素子の出力信号から入射光の偏光方向を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−026353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入射光の偏光状態を測定するためには、入射光から偏光成分を分離して定量する必要がある。入射光から偏光成分を分離すると、撮像対象物の輝度が十分であっても、一部の偏光成分の信号強度が不十分になってしまう場合がある。例えば、楕円偏光の光を検出する場合に、楕円の短軸方向の検光子を通じて得られた信号は、長軸方向の検光子を通じて得られた信号と比較して強度は小さくなる。特に、生体のように撮像対象物が光を比較的に大きく散乱・吸収する性質を有している場合には、信号強度が著しく小さくなってしまう。信号強度が著しく小さくなるとノイズの影響を大きく受けてしまい、偏光状態を高精度に測定することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様においては、複数の受光素子による入射光の受光量に基づいて入射光の偏光状態を取得する偏光状態取得装置であって、入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量を複数の画素毎に取得する受光量取得部と、入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量が、予め定められた受光量の範囲内にあるか否かを判定する受光量判定部と、受光量取得部が取得した受光量のうち範囲内にあると判定された受光量を用いて、入射光の偏光状態を複数の画素毎に取得する偏光状態取得部とを備える。
【0006】
全ての偏光成分の受光量が範囲内にあると判定された画素において、偏光状態取得部が取得した偏光状態を示す画素値を持ち、少なくとも一部の偏光成分の受光量が範囲内にないと判定された画素において、範囲内にないと判定された旨を示す画素値を持つ画像を生成する画像生成部をさらに備えてよい。
【0007】
画像生成部は、範囲内にないと判定された受光量が取得された画素の画素値を、予め定められた色成分を含む色の画素値としてよい。画像生成部は、範囲内にないと判定された受光量が取得された画素の画素値を、範囲内にあると判定された受光量を用いて取得された偏光状態を示す色に、予め定められた色成分の色を重ねた色の画素値としてよい。範囲内にないと判定された受光量が取得された画素において、予め定められた色成分を含む画素値を持つ第1画像と、範囲内にあると判定された受光量を用いて取得された偏光状態を示す色の画素値を持つ第2画像とを、切り替えて出力してもよい。
【0008】
偏光状態取得部は、一部の偏光成分について範囲内にないと判定された受光量が取得された画素の偏光状態を、範囲内にあると判定された他の偏光成分の受光量を用いて取得してよい。
【0009】
受光量取得部は、異なる方位に偏光した複数の直線偏光成分のそれぞれの受光量を、複数の画素毎に取得してよい。
【0010】
偏光状態取得部は、複数の画素毎に、範囲内にあると判定された複数の直線偏光成分のそれぞれの受光量に、偏光方位を変数とする正弦関数をフィッティングし、フィッティングされた正弦関数に基づいて入射光の偏光状態を取得してよい。偏光状態取得部は、複数の画素毎に、フィッティングされた正弦関数に基づいて偏光方位および偏光強度の少なくとも一方を取得してよい。
【0011】
入射光は、物体に照射された照射光による物体からの戻り光であってよい。
【0012】
照射光を発光する光源をさらに備えてよい。複数の受光素子を有する受光部をさらに備えてよい。
【0013】
複数の受光素子のそれぞれに、入射光に含まれる複数の偏光成分を順次に受光させる受光制御部をさらに備え、受光量取得部は、複数の受光素子のそれぞれが順次に受光した入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量を、複数の受光素子毎に取得してよい。
【0014】
特定方位の直線偏光成分を透過する偏光フィルタをさらに備え、受光制御部は、偏光フィルタの回転角を順次に変えて複数の受光素子に順次に受光させることにより、回転角に応じた異なる方位の直線偏光成分を順次に複数の受光素子に受光させてよい。
【0015】
受光部は、それぞれ複数の受光素子により形成される複数の受光素子ユニットを有し、偏光状態取得装置は、複数の受光素子ユニットにそれぞれ対応して設けられ、対応する受光素子ユニットを形成する複数の受光素子にそれぞれ対応して設けられた複数の偏光フィルタによりそれぞれ形成される複数の偏光フィルタユニットを有する偏光フィルタ部をさらに備え、複数の偏光フィルタユニットがそれぞれ有する複数の偏光フィルタは、それぞれ異なる偏光成分を透過して、それぞれ対応する受光素子に受光させ、受光量取得部は、複数の受光素子ユニットをそれぞれ形成する複数の受光素子のそれぞれの受光量を、複数の受光素子ユニット毎に取得してよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る撮像システム10の全体構成を示す図である。
【図2】解析装置150のブロック構成の一例を示す図である。
【図3】信頼範囲の一例を、輝度値の受光量依存性とともに示す図である。
【図4】輝度値の回転角依存性の一例を示す図である。
【図5】信頼範囲に基づく良否判定の一例を示す図である。
【図6】解析装置150における処理フローの一例を示す図である。
【図7】複数の偏光成分画像から生成された1以上の偏光パラメータ画像およびエラー情報画像の一例を示す図である。
【図8】第2実施形態における撮像システム10の動作概念を示す図である。
【図9】露光条件の決定処理の動作概念の一例を示す図である。
【図10】制御部270のブロック構成の一例を示す図である。
【図11】撮像システム10の処理フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る撮像システム10の全体構成を示す。撮像システム10は、撮像装置140で物体120を撮像して、偏光特性を示す画像を生成して表示装置160に表示する。撮像システム10は、光源100、偏光子110、検光子130、撮像装置140、解析装置150、および、表示装置160を備える。
【0020】
光源100は、物体120に向かう光を発光する。光源100は、LEDなどの半導体発光デバイスであってよい。光源100は、一例として可視光領域の光を発光してよいが、それに限られない。光源100が発光した光は、偏光子110に入射する。
【0021】
偏光子110は、入射した光に含まれる特定方位の直線偏光成分を通過する。偏光子110は、光源100から物体120への照射軸の回りに回転可能に設けられた回転型の偏光板であってよい。物体120には、偏光子110の回転角に応じた方位に直線偏光した光が照射される。ここでは物体120に直線偏光の光を照射するとしたが、それに限られず、任意の偏光成分であってよい。例えば、物体120に照射される光は、円偏光成分または楕円偏光成分であってよい。物体120に照射される光は、偏光していなくてもよい。
【0022】
物体120に照射された照射光は、一部は物体120の表面で反射されるが、一部は物体120の内部まで進入する。物体120の内部まで進入した光は、物体120の内部で散乱等の相互作用をした後、再び物体120の外部に出る。物体120の内部まで進入した光は、物体120の内部の情報を有しているといえる。撮像装置140は、このような物体120からの戻り光を受光することで、物体120を撮像する。
【0023】
ここで、戻り光とは、光源100からの光が照射された物体120からの光であり、上述した内部散乱光を含む。また、物体120が、光源100からの光により発行する発光体を内部に含んでいる場合には、当該発光体が発光し外部に出た光も戻り光とみなすことができる。発光体としては、蛍光体を例示することができるが、それに限られない。
【0024】
物体120からの戻り光は、検光子130を通過して撮像装置140に入射する。検光子130は、入射した光に含まれる特定方位の偏光成分を通過する偏光フィルタの一例である。検光子130は、撮像装置140の光軸回りに回転可能に設けられた回転型の偏光板であってよい。撮像装置140には、戻り光のうち、検光子130の回転角に応じた方位に直線偏光した光が入射する。
【0025】
撮像装置140は、フィルタ部142および受光部144を有する。検光子130を通過した光は、フィルタ部142を通過して、受光部144に入射する。フィルタ部142は、特定波長領域の光をカットするフィルタであってよい。例えば、フィルタ部142としては、赤外の波長領域の光をカットする赤外カットフィルタを例示することができる。フィルタ部142は、上記のフィルタ以外の種々のフィルタであってよいが、入射した光の偏光状態を実質的に変化させないことが望ましい。フィルタ部142は設けられていなくてもよい。
【0026】
受光部144は、検光子130およびフィルタ部142を通過した光により露光される。受光部144は、面状に配列された複数の受光素子を有しており、各受光素子は検光子130を通過した光により露光される。受光部144が有する複数の受光素子は、入射光の受光量に応じた強さの信号を出力する。受光部144は、複数の受光素子の出力信号を輝度信号として出力する。撮像装置140は、当該輝度信号を画像情報に変換して解析装置150に出力する。
【0027】
解析装置150は、光源100、偏光子110、検光子130、および、撮像装置140を制御して撮像装置140に物体120を撮像させる。そして解析装置150は、撮像装置140から受け取った画像情報を処理して、戻り光の偏光状態を示す画像を生成して、表示装置160に出力する。表示装置160は、解析装置150が生成した戻り光の偏光状態に応じた画像を表示する。
【0028】
例えば、解析装置150は、光源100を発光させるとともに偏光子110の回転角を制御することにより、物体120に向かう光の偏光状態を制御する。また、解析装置150は、検光子130の回転角を制御することにより、受光部144に受光させる偏光成分を制御する。A部は検光子130を撮像装置140の光軸方向から見た状態を示す。解析装置150は、検光子130の回転角θを制御することで受光部144に受光させる偏光成分を制御する。解析装置150は、特定の回転角に検光子130を保持した状態で撮像装置140に撮像させることで、回転角に応じた方位の直線偏光成分の強度を示す偏光成分画像が得られる。解析装置150は、検光子130を異なる角度に回転させた状態で撮像装置140に順次撮像させることで、複数の偏光成分画像を取得する。
【0029】
図2は、解析装置150のブロック構成の一例を示す。解析装置150は、受光量取得部210、受光量判定部220、受光量データ処理部230、偏光状態取得部240、画像生成部250、画像出力部260、制御部270、および、指示取得部280を有する。
【0030】
受光量取得部210は、入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量を複数の画素毎に取得する。具体的には、受光量取得部210は、撮像装置140により異なる偏光成分でそれぞれ撮像された偏光成分画像を取得する。すなわち、各偏光成分画像の輝度値により偏光成分のそれぞれの受光量が示される。
【0031】
受光量判定部220は、入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量が、予め定められた受光量の範囲内にあるか否かを判定する。予め定められた受光量の範囲とは、予め定められた値より高い精度の受光量データとみなすことができる輝度値の範囲を例示することができる。以後の説明において、この範囲のことを信頼範囲と呼ぶ。受光量判定部220における判定結果は、偏光成分画像を示す輝度情報とともに受光量データ処理部230に供給される。
【0032】
受光量データ処理部230は、輝度情報に対して所定の処理を施す。受光量データ処理部230は、各偏光成分の強度を示す輝度値が、戻り光に含まれる各偏光成分の強度に実質的に比例した値になるよう補正してよい。例えば、撮像装置140が有するレンズ系およびフィルタ部142の透過度が偏光方位依存を有している場合に、受光量データ処理部230は、当該透過度に応じた輝度値の補正処理をしてよい。また、受光部144が有する受光素子の受光感度が偏光方位依存性を有している場合に、受光量データ処理部230は、受光素子の受光感度に応じた輝度値の補正処理をしてよい。
【0033】
ここで、受光量データ処理部230は、受光量取得部210が取得した受光量のうち信頼範囲内にあると判定された受光量を示す輝度値を補正して、信頼範囲内にないと判定された受光量を示す輝度値は補正しなくてよい。受光量データ処理部230が処理した輝度情報は、受光量判定部220における判定結果とともに偏光状態取得部240に供給される。
【0034】
偏光状態取得部240は、受光量取得部210が取得した受光量のうち信頼範囲内にあると判定された受光量を用いて、入射光の偏光状態を複数の画素毎に取得する。具体的には、偏光状態取得部240は、受光量データ処理部230から供給された判定結果に基づき、輝度値が信頼範囲内にあると判定されたか否かを判断する。そして偏光状態取得部240は、受光量データ処理部230により処理された、信頼範囲内にあると判定された受光量を示す輝度情報を用いて、入射光の偏光状態を複数の画素毎に算出する。偏光状態としては、偏光強度、偏光主軸方位などの偏光パラメータを例示することができるが、これらに限られない。偏光状態取得部240の具体的な処理の一例については後述する。なお、偏光状態取得部240は、戻り光の偏光状態だけでなく、物体120に入射する光の偏光状態を変化させ、入射光と戻り光とに基づいてミューラー行列を求めて、物体120の偏光特性を求めてよく、当該偏光特性を求める場合も同様の手法を適用することができる。
【0035】
画像生成部250は、偏光状態取得部240が算出した偏光状態を示す画像を生成する。例えば、偏光強度、偏光主軸方位などの偏光パラメータ毎に画像を生成する。以下の説明では、偏光状態を示す画像のことを偏光パラメータ画像と呼ぶ。
【0036】
例えば、画像生成部250は、偏光状態取得部240が算出した偏光強度に応じた256階調のグレースケールの画素値を算出する。一例では、画像生成部250は、全ての偏光成分の受光量について信頼範囲内にあると判定された画素において、偏光状態取得部240が算出した偏光状態を示す画素値を持つ偏光パラメータ画像を生成する。また、画像生成部250は、少なくとも一部の偏光成分の受光量が信頼範囲内にないと判定された画素において、信頼範囲内にないと判定された旨を示す画素値を持つ偏光パラメータ画像を生成する。
【0037】
ここで、信頼範囲内にないと判定された旨を示す画素値とは、予め定められた色成分を含む色の画素値であって良い。例えば、予め定められた色成分とは、赤色成分など、上記256階調のグレースケールの画素値が示す色成分以外の色成分であってよい。画像生成部250が生成した偏光パラメータ画像は、画像出力部260に供給される。
【0038】
画像出力部260は、画像生成部250が生成した偏光パラメータ画像を外部に出力する。具体的には、画像出力部260は、偏光パラメータ画像を表示装置160に出力する。他にも、画像出力部260は、偏光パラメータ画像をハードディスク装置などの記憶装置に記録してよく、偏光パラメータ画像をネットワーク回線を通じて外部に送信してもよい。
【0039】
指示取得部280は、撮像システム10における撮像動作に係る指示および解析装置150における解析処理に係る指示を外部から取得する。具体的には、撮像システム10における撮像動作に係る指示としては、偏光子110および検光子130の回転角度を指定する指示、光源100の発光動作を指定する指示、光源100の発光強度を指定する指示、撮像装置140に対する撮像指示などを例示することができる。解析装置150における解析処理に係る指示としては、受光量データ処理部230における補正処理の指示、画像出力部260が出力する偏光パラメータ画像を指定する指示などを例示することができる。
【0040】
なお、解析装置150の機能は、コンピュータにより実装されてよい。具体的には、解析装置150の機能を実装するプログラムをコンピュータにインストールすることで、コンピュータを、受光量取得部210、受光量判定部220、受光量データ処理部230、偏光状態取得部240、画像生成部250、画像出力部260、制御部270、および、指示取得部280として機能させてよい。当該プログラムは、CD−ROM、ハードディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され、当該記憶媒体をコンピュータに読み込ませることで、コンピュータに提供されてよい。また、当該プログラムは、ネットワークを通じてコンピュータに提供されてもよい。
【0041】
図3は、信頼範囲の一例を、輝度値の受光量依存性とともに示す。受光素子の受光量は、受光素子の出力である輝度値により定量される。しかしながら、受光量が小さいほど輝度値に混入するノイズの割合が大きくなるので、当該輝度値を用いて算出される偏光状態の信頼度は低下する。また、輝度値と受光量とが比例関係にない場合にも、補正をしない限り、当該輝度値を用いて算出した偏光状態の信頼度は低くなる。また、受光素子が飽和したり撮像装置140のダイナミックレンジ外となる量の光を受光素子が受光した場合には補正もできず、受光素子の出力値を用いて算出した偏光状態は全く信頼できない。
【0042】
一実施形態では、基準となる偏光光を撮像装置140で計測した結果を用いて、信頼範囲を定める。具体的には、グラントムソンプリズムなどの基準偏光板により得られた偏光光を撮像装置140で計測して、偏光強度、偏光方位などの偏光パラメータを測定する。そして測定された偏光パラメータと基準偏光板により得られた偏光光の偏光パラメータとの誤差を算出する。そして、算出した偏光パラメータの誤差が許容値以下となる輝度値の下限値T1および上限値T2を、信頼範囲を決定する。受光量判定部220は、決定された信頼範囲を記憶しておき、記憶している信頼範囲内に偏光成分画像の輝度値があるか否かを画素毎に判定する。なお、撮像装置140のダイナミックレンジを、信頼範囲としても良い。
【0043】
図4は、輝度値の回転角依存性の一例を示す。各偏光方位の成分は、偏光方位を変数とする正弦関数で表すことができる。具体的には、偏光状態取得部240は、画素毎に、検光子130の回転角を変数とする正弦関数を、受光量を示す輝度値にフィッティングする。そして、偏光状態取得部240は、正弦関数の振幅および初期位相から、それぞれ戻り光の偏光強度および戻り光の偏光方位角を偏光状態の一例として算出する。
【0044】
このように、一実施形態において、偏光方位による輝度値の変調により、偏光パラメータが測定される。たとえ合計の輝度が十分であったとしも、強度がより小さい偏光成分の測定値はノイズの影響を受けやすい。特に、物体120からの戻り光の光強度は、物体120の光散乱特性、光吸収特性により大きく影響を受ける。例えば、物体120が生体組織である場合には、血液などによる光吸収によって戻り光強度は低くなる。光強度が低くなると、特に偏光成分の強度が小さくなる位相角ではノイズの影響を大きく受けてしまう。その結果、フィッティングで得られる正弦関数の振幅および初期位相の誤差が大きくなってしまう。
【0045】
本実施形態では、全回転角で上記信頼区間内の輝度値が得られた画素では、偏光パラメータを信頼できる精度で得られると判断する。本図の例では、一部の回転角で輝度値が信頼区間外となるので、その回転角の画素値を用いて算出すると偏光パラメータは低精度になると判断する。そこで、画像生成部250は、一部の回転角で画素値が信頼区間外となった画素では、偏光パラメータ画像の画素値を観察者が明確に識別できる色にする。これにより、偏光パラメータ画像の観察者が、低精度の偏光パラメータに基づき誤った理解をしてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0046】
図5は、信頼範囲に基づく良否判定の一例を示す。符号500aで示す画素では、全ての回転角で輝度値は信頼範囲内であるので、偏光パラメータを高精度に算出できると判断する。符号500bの回転角依存性が得られた画素では、一部の回転角で画素値が信頼範囲の下限値T1を下回っているので、偏光パラメータは比較的に低精度にしか算出されない判断する。符号500cの回転角依存性が得られた画素では、一部の回転角で画素値が信頼範囲の上限値T2を上回っているので、偏光パラメータは比較的に低精度にしか算出されないと判断する。
【0047】
図6は、解析装置150における処理フローの一例を示す。解析装置150は、撮像装置140に、検光子130の回転角を変えながら順次に物体120を撮像させる(S602)、複数の偏光成分画像を取得する。偏光状態取得部240は、偏光状態を算出する算出対象の1画素を選択して(S604)、選択した画素において、全回転角にわたり画素値が信頼範囲内にあるか否かを判断する(S606)。
【0048】
全回転角にわたり画素値が信頼範囲内にある場合には、偏光状態取得部240は各画素値を正弦関数でフィッティングして(S608)、偏光強度・偏光主軸方位などの偏光状態を算出する(S610)。画像生成部250は、偏光パラメータ画像における上記選択された画素の画素値として、偏光状態に応じた値を決定する(S612)。
【0049】
そして、偏光状態取得部240は、偏光状態を算出していない画素が存在するか否かを判断する(S614)。偏光状態を算出していない画素が存在すればS604に処理を移行して、新たな画素を選択して偏光状態の算出処理を繰り返す。偏光状態を算出していない画素がなければ、処理を終了する。
【0050】
S606において、一部の回転角で信頼範囲外の輝度値が得られている場合に、偏光状態取得部240は、信頼範囲内の輝度値のデータが予め定められた数以上の回転角で得られているか否かを判断する(S622)。予め定められた数以上の回転角で信頼範囲内のデータが得られている場合、信頼範囲外の輝度値が得られていることを示すエラー画素値を決定する(S624)。ここで決定するエラー画素値は、一部の回転角で信頼範囲外であったものの十分な数のデータが得られた旨を示す第1エラー画素値である。そして、S608のフィッティング処理に進む。S608では、信頼範囲外となった回転角の輝度値を用いずに、信頼範囲内の輝度値だけを用いてフィッティングを行う。
【0051】
このように、偏光状態取得部240は、一部の偏光成分について信頼範囲内にないと判定された受光量が取得された画素の偏光状態を、信頼範囲内にあると判定された他の偏光成分の受光量を用いて取得することができる。一方で、第1エラー画素値も決定するので、一部の偏光成分のデータを用いずに偏光状態が算出されていることを観察者に認識させることができる。
【0052】
S622において、予め定められた数以上の回転角で信頼範囲内のデータが得られていないと判断された場合に、偏光状態取得部240は、信頼範囲外の輝度値が得られた回転角の輝度値データを、周辺画素の輝度値を用いた補間により算出できるか否かを判断する(S632)。一例として、周辺画素においても信頼範囲内の輝度値が得られている場合に、補間により算出できると判断してよい。補間により算出できる場合、画像生成部250は、エラー画素値を決定する(S634)。ここで決定するエラー画素値は、信頼範囲内の十分な数のデータが得られなかったものの周辺画素の輝度値を用いた補間により輝度値を算出できた旨を示す第2エラー画素値である。そして、S608のフィッティング処理に進む。S608では、信頼範囲内の輝度値と、周辺画素の補間で得られた輝度値を用いてフィッティングを行う。
【0053】
S632において、補間によっても算出できないと判断された場合、偏光状態取得部240は、周辺画素で算出された偏光状態を補間することで、選択画素の偏光状態を算出できるか否かを判断する(S642)。一例として、周辺画素の偏光状態が信頼範囲内の輝度値を用いて算出できている場合に、偏光状態の補間により算出できると判断してよい。偏光状態の補間により偏光状態を算出できる場合、画像生成部250は、エラー画素値を決定する(S644)。ここで決定するエラー画素値は、周辺画素の輝度値の補間をできなかったものの周辺画素の偏光状態を補間することで偏光状態を算出できた旨を示す第3エラー画素値である。そして、S612の偏光パラメータ画像の画素値決定処理に進む。S612では、周辺画素で得られている偏光状態を補間することで、選択画素の偏光状態を算出する。
【0054】
S642において、偏光状態の補間によっても算出できないと判断された場合、画像生成部250は、第4エラー画素値を決定して、S614に処理を移行する。第4エラー画素値は、周辺画素の偏光状態の補間によっても偏光状態を算出できなかった旨を示す。
【0055】
S652で決定されたエラー画素値は、偏光パラメータ画像の画素値となる。S624、S634、S644で決定されたエラー画素値は、画像生成部250が生成するエラー情報画像の画素値となる。
【0056】
図7は、複数の偏光成分画像から生成された1以上の偏光パラメータ画像およびエラー情報画像の一例を示す。解析装置150において、画像生成部250は、異なる回転角で得られたn個の偏光成分画像700から、偏光強度の画像である偏光パラメータ画像710−1および偏光主軸方位の画像である偏光パラメータ画像710−2を生成する。
【0057】
図6に関連して説明したように、全回転角で輝度値が信頼範囲内であった画素では、偏光パラメータ画像710は偏光状態に応じた画素値を有している。また、一部の回転角で輝度値が信頼範囲外であった画素では、信頼範囲外の輝度値だけを用いて偏光状態を算出できたか、他画素からの補間等により偏光状態を算出できたことを条件として、偏光状態に応じた画素値を有している。一方、他画素からの補間等によっても偏光状態を算出できなかった画素では、偏光パラメータ画像710は、偏光状態を算出できなかったことを示す第4エラー画素値(例えば、赤色)を有している。本図において偏光パラメータ画像710の領域750内の画素が、他の画素の画素値と明瞭に区別できる色合いの第4エラー画素値となっている。
【0058】
また、図6において説明したように、画像生成部250は、エラー情報画像720を生成する。エラー情報画像720は、一部の回転角で輝度値が信頼範囲外であった画素であり、信頼範囲外の画素値だけを用いるか他画素からの補間等によって、偏光状態を算出できたことを示す色の画素値を有する。
【0059】
具体的には、エラー情報画像720は、信頼範囲外の画素値だけを用いて偏光状態を算出できた画素において第1エラー画素値(例えば、青色)を有している。本図においてエラー情報画像720の領域751内の画素が、偏光パラメータ画像710内のいずれの画素の画素値とも明瞭に区別できる色合いの第1エラー画素値となっている。
【0060】
エラー情報画像720は、信頼範囲外の画素値を周辺画素を用いて補間することで偏光状態を算出できた画素において、第2エラー画素値(例えば、緑色)を有している。本図においてエラー情報画像720の領域752内の画素が、エラー情報画像720内の他の画素の画素値とも、偏光パラメータ画像710内のいずれの画素の画素値とも明瞭に区別できる色合いの第2エラー画素値となっている。
【0061】
また、エラー情報画像720は、偏光状態そのものを周辺画素を用いて補間することで偏光状態を算出できた画素において、第3エラー画素値(例えば、黄色)を有している。本図においてエラー情報画像720の領域753内の画素が、エラー情報画像720内の他の画素の画素値とも、偏光パラメータ画像710内のいずれの画素の画素値とも明瞭に区別できる色合いの第3エラー画素値となっている。このように、エラー情報画像720は、信頼性の程度に応じた画素値を有している。
【0062】
画像出力部260は、偏光パラメータ画像710およびエラー情報画像720を合成したエラー情報合成画像と、偏光パラメータ画像710とを、表示装置160に出力してよい。例えば、指示取得部280は、いずれの画像を表示装置160に表示させるかを選択する指示を、観察者などのユーザから取得してよい。制御部270は、指示取得部280が取得した指示に応じて、いずれの画像を表示装置160に表示させるかを決定して、決定した画像を画像出力部260に出力させてよい。これにより、表示装置160は、偏光パラメータ画像とエラー情報合成画像とを、切り替えて表示することができる。なお、エラー情報合成画像は、画素値の加重平均などにより偏光パラメータ画像710にエラー情報画像720を重畳した画像であってよく、偏光パラメータ画像710をエラー情報画像720で上書きした画像であってもよい。
【0063】
このようにして、画像生成部250は、信頼範囲内にないと判定された受光量が取得された画素において、偏光状態取得部240が取得した偏光状態を示す画素値を持ち、範囲内にないと判定された受光量が取得された画素において、範囲内にないと判定された旨を示す画素値を持つ画像を生成することができる。また、画像生成部250は、信頼範囲内にないと判定された受光量が取得された画素の画素値を、信頼範囲内にあると判定された受光量を用いて取得された偏光状態を示す色に、予め定められた色成分の色を重ねた色の画素値とすることで、エラー情報合成画像を生成することができる。
【0064】
撮像システム10によれば、生体組織である物体120を撮像して、偏光パラメータ画像を提供することができる。観察者は、偏光パラメータ画像を、生体構造を特定したり、病変部位・病変の種類を特定したりすることに用いることができる。撮像システム10の上記制御により、観察者は、偏光パラメータ画像710内のどの画素が比較的に信頼性の低い画素であるかを容易に特定することができる。このため、生体構造を見誤ったり、病変部位・病変の種類を特定し損ねたりしてしまう可能性を低減することができる。
【0065】
図8は、第2実施形態における撮像システム10の動作概念を示す。本実施形態の撮像システム10は、受光部144への露光量を制御することで、信頼範囲外となるデータ数を減少させることができ、場合によっては全回転角で信頼範囲内の輝度値を得ることができるシステムを提供する。
【0066】
露光条件を固定した場合は、輝度値の回転角依存性は符号800aで示される。符号800aで例示した回転角依存性の最大の輝度値に、全回転角の輝度値が一致するよう各回転角での露光条件を制御すれば、符号800bで示すように、回転角によらず輝度値を一定にすることができる。このように露光量を高めて偏光成分画像を撮像することにで、ノイズの影響をより低減することができる。そして、受光量データ処理部230では、各回転角での露光条件の違いを補正する処理をすることで、戻り光に含まれる偏光成分の強度に応じた輝度値のデータを得ることができる。
【0067】
図9は、露光条件の決定処理の動作概念の一例を示す。ここでは、2つの画素の輝度値データから露光条件を決定する場合について説明する。同一露光条件で露光した場合に、第1画素において符号900aで示される回転角依存性が得られ、第2画素において符号900bで示される回転角依存性が得られたとする。解析装置150は、いずれの画素においてもノイズがより少ない輝度値が得られるよう、露光条件を回転角毎に決定する。
【0068】
一例として、解析装置150は、第1画素の輝度値が、信頼範囲の上限値T2より小さい所定の上限値T2'に一致するよう、露光条件を設定する。この露光条件で露光すると、第2画素の輝度値は図示した矢印で示した大きさ増加する。これにより、全回転角の輝度値を、信頼範囲の下限値T1より大きい所定の下限値T1'を上回る値にすることができる。このように、解析装置150は、いずれの回転角においても、全画素の輝度値が信頼範囲となるよう、受光部144への露光条件を回転角毎に制御する。全画素にわたって輝度値を所定の輝度範囲内に収めるとすることができない場合には、複数回に分けて露光量を異ならせて撮像させればよい。
【0069】
第2実施形態における撮像システム10は、第1実施形態における撮像システム10の各機能ブロックと同様の構成を有する。各機能ブロックは、第1実施形態で説明した機能ブロックと同一または類似の機能および動作を有する。このため、以下の説明では、その相違点を説明して、同様の機能については説明を省略する。
【0070】
図10は、制御部270のブロック構成の一例を示す。制御部270は、露光制御部272および露光条件決定部274を有する。制御部270は、戻り光に異なる強度で含まれる複数の偏光成分を異なる露光条件で受光部144に露光させることにより、同じ露光条件で露光させる場合と比較して、複数の偏光成分による信号の強さの差を小さくする。露光条件とは、受光部144が有する受光素子の感度、物体120への照射光の強度、露光時間の長さ、撮像装置140の絞りなどを例示することができる。
【0071】
露光条件として感度を制御する場合、制御部270は、戻り光により小さい強度で含まれる偏光成分を、より高い感度で受光部144に露光させる。感度は、撮像装置140のゲインを指標とすることができる。また、物体120への光強度を制御する場合、制御部270は、戻り光により小さい強度で含まれる偏光成分を受光部144に受光ささせる場合に、より大きい強度の光を光源100に発光させる。また、露光条件として露光時間の長さを制御する場合、制御部270は、戻り光により小さい強度で含まれる偏光成分を、より長い期間、受光部144に受光させる。これらの露光条件は、露光制御部272により制御される。
【0072】
受光量データ処理部230は、受光部144に複数の偏光成分をそれぞれを露光したときの露光条件に基づき、受光部144が出力した信号を、戻り光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの強度に応じた強さの信号に補正する。これにより、受光量データ処理部230は、単位面積あたりの戻り光強度に実質的に比例した強度の輝度値に補正することができる。
【0073】
偏光状態取得部240は、受光量データ処理部230により補正された、戻り光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの強度に応じた強さの信号に基づいて、戻り光の偏光状態を取得する。偏光状態は、第1実施形態で説明した方法と同じ方法で算出することができる。すなわち、偏光状態取得部240は、受光量データ処理部230により補正された信号の強さが示す複数の直線偏光成分のそれぞれの強度に、偏光方位を変数とする正弦関数をフィッティングして、フィッティングされた正弦関数に基づいて戻り光の偏光状態を取得する。同様に、画像生成部250は、フィッティングされた正弦関数に基づき、偏光主軸方位および偏光強度の少なくとも一方を算出してよい。
【0074】
なお、受光量データ処理部230は、複数の受光素子がそれぞれ出力した信号を、複数の受光素子毎に補正する。そして、偏光状態取得部240は、複数の受光素子毎に補正された信号に基づき、複数の受光素子のそれぞれに入射した戻り光の偏光状態を取得する。画像生成部250は、偏光状態取得部240が取得した複数の受光素子のそれぞれの偏光状態に基づき、戻り光の偏光状態に応じた画素値を有する偏光パラメータ画像を生成することができる。
【0075】
各回転角での露光条件は、露光条件決定部274により決定される。具体的には、露光制御部272は、所定の露光条件で複数の偏光成分を受光部144に露光させる。露光条件決定部274は、受光量取得部210から偏光成分画像の各画素の輝度値を、所定の露光条件における受光素子の信号の強さとして取得する。そして、露光条件決定部274は、所定の露光条件で得られた信号の強さに基づき、異なる露光条件を決定する。図9に関連して説明したように、全受光素子の輝度信号を信頼範囲内とすべく、回転角毎に露光条件を決定する。
【0076】
図11は、撮像システム10の処理フローを説明する。露光制御部272の制御により、撮像装置140は所定の露光条件で物体120をプレ撮像する(S1102)。露光条件決定部274は、プレ撮影で得られた複数の偏光成分画像から、ある回転角の偏光成分画像を選択する(S1104)。露光条件決定部274は、選択した偏光成分画像から、輝度値の最大値および輝度値の最小値を特定する(S1106)。露光条件決定部274は、選択した回転角で露光すべき露光量を決定する(S1108)。
【0077】
このとき露光条件決定部274は、上限T2より小さい所定の上限値(例えば、上限値T2の90%の値)と、下限値T1より大きく、当該所定の上限値より小さい所定の下限値(例えば、下限値T1の110%の値)との間に、全画素の輝度値が収まるよう、露光量を決定する。信頼範囲より狭い範囲に輝度値が収まるように露光量を決定することで、後の本撮影で得られる輝度値が信頼範囲内に確実に収めることができる。
【0078】
例えば、輝度値の最小値が所定の下限値より小さく、輝度値の最大値が所定の上限値より小さい場合を考える。この場合、露光条件決定部274は、所定の下限値を輝度値の最小値で除して得られた第1の値を、所定の露光条件で得られる露光量に乗じ、得られた値を後の本撮影で露光すべき露光量として決定する。ここで、所定の上限値を輝度値の最大値で除して得られた第2の値が第1の値以上であれば、本撮影で得られる輝度値は、全画素・全回転角で輝度値が所定の下限値以上、所定の上限値以下になりことが期待できる。一方、第2の値が第1の値より小さい場合、決定した露光量で本撮影すると、所定の上限値を超える輝度値となる回転角が生じてしまう。この場合は、露光条件を変えて複数回の本撮像を行い、所定の下限値以上、所定の上限値以下の輝度値を選択して偏光状態を算出することにしてよい。他にも、本撮像で得られる偏光成分画像とともに、上記プレ撮像で得られた輝度値データを用いて偏光状態を算出することにしてもよい。
【0079】
露光条件決定部274は、S1108で決定した露光量が得られる露光条件を決定する(S1110)。露光条件決定部274は、撮像装置140の感度を、光源100の発光量および露光時間より優先して制御してよい。具体的には、露光条件決定部274は、撮像装置140の感度を調整しても輝度値を所定の下限値以上とならないことを条件として、光源100の発光量および露光時間の少なくとも一方を調整してよい。具体的には、感度を調整することで輝度値を所定の下限値以上となれば、光源100の発光量、露光時間などの他の露光条件は調整しなくてもよい。
【0080】
露光条件決定部274は、全回転角の露光条件を決定したか否かを判断する(S1112)。全回転角の露光条件を決定していない場合には、S1104に処理を移行させる。全回転角の露光条件を決定するまで、決定していない回転角の偏光成分画像をS1104で選択して、S1104〜S1110の処理を繰り返す。
【0081】
全回転角の露光条件を決定すると、露光条件決定部274は、決定した露光条件を検光子130の回転角度に対応づけて記憶する。そして、S1114の本撮影では、制御部270は検光子130の回転角を順次変えて受光部144に受光させることにより、異なる方位に偏光した複数の偏光成分を順次に受光部144に露光させる。このとき、露光制御部272は、露光条件決定部274が決定し回転角に対応づけて記憶している露光条件で受光部144に露光する。
【0082】
本撮影後、受光量データ処理部230は、露光条件決定部274が記憶している露光条件を取得して、取得した露光条件により定まる回転角毎の露光量に基づき、偏光成分画像の輝度値を回転角毎に補正する(S1116)。
【0083】
そして、偏光状態取得部240は、S1116で補正された輝度値に基づき、偏光状態を算出して、算出された偏光状態に応じた画素値を有する偏光パラメータ画像を画像生成部250が生成する(S1118)。偏光成分パラメータ画像は、図6のS608、S610、S612などで説明した方法と同様にして生成することができる。
【0084】
本図で説明した処理フローでは、プレ撮影の結果を用いて本撮影用の露光条件を決定するとした。物体120のおよその偏光特性が予め分かっており露光条件を当該偏光特性に基づき決定することができる場合には、プレ撮影を行わなくてよい。具体的には、露光条件決定部274が、撮像対象の物体の種類に対応づけて、回転角毎の露光条件を予め記憶しておく。露光条件決定部274は、指示取得部280を通じて指定された物体120の種類に対応づけて記憶している露光条件を、S1114での本撮影用の露光条件として決定する。
【0085】
以上第2実施形態における撮像システム10によれば、信号ノイズにロバストであり、広ダイナミックレンジで偏光成分を撮像することができる。これにより、物体120の戻り光の偏光状態を高精度に測定することができる。
【0086】
第1実施形態における撮像システムと、第2実施形態における撮像システムとを組み合わせることもできる。例えば、図11のS1102ではプレ撮影として説明したが、図6のS602の撮像をプレ撮影と見なすことができる。すなわち、図6で説明した処理フローで偏光成分画像から偏光パラメータ画像を一旦生成するとともに、当該偏光成分画像を用いて図7で説明した露光条件を決定する。その後、決定した露光条件で次の撮像を行う。また、決定した露光条件で撮像しても信頼範囲外の輝度値が得られた場合、当該露光条件に基づき、さらに後に撮像の露光条件を決定してよい。この組み合わせにより、露光条件を順次に適応させながら撮像をすることができる。この適応過程で偏光状態を高精度に算出できない画素が生じたとしても、観察者にその画素の存在をエラー情報画像により確実に認識させることができる。
【0087】
また、上記実施形態において、回転型の偏光子110および検光子130を例示したが、回転型の偏光子110および検光子130に替えて、通過する偏光方位が可変な液晶パネルを適用することもできる。他にも、検光子130の回転角を順次に変えて時分割で偏光成分を受光部144に受光させるとしたが、異なる偏光成分を空間分割で受光部144に受光させてもよい。
【0088】
具体的には、検光子130に替えて、受光部144の複数の受光素子に対応して配列された複数の偏光フィルタを、受光部144の直近に設ける。具体的には、受光部144は、それぞれ複数の受光素子により形成される複数の受光素子ユニットを有しているとする。ここで、受光素子ユニットが1画素に対応する。この場合に、受光部144の直近の偏光フィルタは、複数の受光素子ユニットにそれぞれ対応して設けられ、対応する受光素子ユニットを形成する複数の受光素子にそれぞれ対応して設けられた複数の偏光フィルタによりそれぞれ形成される複数の偏光フィルタユニットを有する。各偏光フィルタユニット中の複数の偏光フィルタは、それぞれ異なる偏光成分を透過して、それぞれ対応する受光素子に受光させる。この場合に、受光量取得部210は、複数の受光素子ユニットをそれぞれ形成する複数の受光素子のそれぞれの受光量を、複数の受光素子ユニット毎に取得する。
【0089】
本方式のようにマトリクス状に偏光フィルタを設けて偏光成分を分離することで、例えば4つの異なる偏光成分を別個の受光素子に受光させることができれば、偏光状態を表す正弦関数を算出するための最小限の数のデータを得ることができる。時分割で多くの偏光成分を分離する場合と比べて、計測データの冗長度は比較的に低下するものの、時間分解は比較的に向上することが期待できる。
【0090】
また、マトリクス状に配列した偏光フィルタに替えて、異なる偏光成分を透過する複数の偏光板を設け、偏光板に対応して設けられた受光部144を複数設ける方式も適用できる。いわゆる多板式で撮像を行う方式であり、複数の偏光板がそれぞれ透過した偏光成分を、対応して設けられた受光部144がそれぞれ別個に受光する。本方式によっても、時分割で多くの偏光成分を分離する場合と比べて、計測データの冗長度は比較的に低下するものの、時間分解は比較的に向上することが期待できる。
【0091】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0092】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0093】
10 撮像システム、100 光源、110 偏光子、120 物体、130 検光子、140 撮像装置、142 フィルタ部、144 受光部、150 解析装置、160 表示装置、210 受光量取得部、220 受光量判定部、230 受光量データ処理部、240 偏光状態取得部、250 画像生成部、260 画像出力部、270 制御部、272 露光制御部、274 露光条件決定部、280 指示取得部、700 偏光成分画像、710 偏光パラメータ画像、720 エラー情報画像 、750、751、752、753 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子による入射光の受光量に基づいて前記入射光の偏光状態を取得する偏光状態取得装置であって、
前記入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量を複数の画素毎に取得する受光量取得部と、
前記入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量が、予め定められた受光量の範囲内にあるか否かを判定する受光量判定部と、
前記受光量取得部が取得した受光量のうち前記範囲内にあると判定された受光量を用いて、前記入射光の偏光状態を前記複数の画素毎に取得する偏光状態取得部と
を備える偏光状態取得装置。
【請求項2】
全ての偏光成分の受光量が前記範囲内にあると判定された画素において、前記偏光状態取得部が取得した偏光状態を示す画素値を持ち、少なくとも一部の偏光成分の受光量が前記範囲内にないと判定された画素において、前記範囲内にないと判定された旨を示す画素値を持つ画像を生成する画像生成部
をさらに備える請求項1に記載の偏光状態取得装置。
【請求項3】
前記画像生成部は、前記範囲内にないと判定された受光量が取得された画素の画素値を、予め定められた色成分を含む色の画素値とする
請求項2に記載の偏光状態取得装置。
【請求項4】
前記画像生成部は、前記範囲内にないと判定された受光量が取得された画素の画素値を、前記範囲内にあると判定された受光量を用いて取得された偏光状態を示す色に、前記予め定められた色成分の色を重ねた色の画素値とする
請求項3に記載の偏光状態取得装置。
【請求項5】
前記範囲内にないと判定された受光量が取得された画素において、前記予め定められた色成分を含む画素値を持つ第1画像と、前記範囲内にあると判定された受光量を用いて取得された偏光状態を示す色の画素値を持つ第2画像とを、切り替えて出力する画像出力部
をさらに備える請求項3または4に記載の偏光状態取得装置。
【請求項6】
前記偏光状態取得部は、一部の偏光成分について前記範囲内にないと判定された受光量が取得された画素の偏光状態を、前記範囲内にあると判定された他の偏光成分の受光量を用いて取得する
請求項1から5のいずれかに記載の偏光状態取得装置。
【請求項7】
前記受光量取得部は、異なる方位に偏光した複数の直線偏光成分のそれぞれの受光量を、複数の画素毎に取得する
請求項1から6のいずれかに記載の偏光状態取得装置。
【請求項8】
前記偏光状態取得部は、前記複数の画素毎に、前記範囲内にあると判定された複数の直線偏光成分のそれぞれの受光量に、偏光方位を変数とする正弦関数をフィッティングし、フィッティングされた正弦関数に基づいて前記入射光の偏光状態を取得する
請求項7に記載の偏光状態取得装置。
【請求項9】
前記偏光状態取得部は、前記複数の画素毎に、前記フィッティングされた正弦関数に基づいて偏光方位および偏光強度の少なくとも一方を取得する
請求項8に記載の偏光状態取得装置。
【請求項10】
前記入射光は、物体に照射された照射光による前記物体からの戻り光である
請求項1から9のいずれかに記載の偏光状態取得装置。
【請求項11】
前記照射光を発光する光源
をさらに備える請求項10に記載の偏光状態取得装置。
【請求項12】
前記複数の受光素子を有する受光部
をさらに備える請求項1から11のいずれかに記載の偏光状態取得装置。
【請求項13】
前記複数の受光素子のそれぞれに、前記入射光に含まれる複数の偏光成分を順次に受光させる受光制御部
をさらに備え、
前記受光量取得部は、前記複数の受光素子のそれぞれが順次に受光した前記入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量を、前記複数の受光素子毎に取得する
請求項12に記載の偏光状態取得装置。
【請求項14】
特定方位の直線偏光成分を透過する偏光フィルタ
をさらに備え、
前記受光制御部は、前記偏光フィルタの回転角を順次に変えて前記複数の受光素子に順次に受光させることにより、回転角に応じた異なる方位の直線偏光成分を順次に前記複数の受光素子に受光させる
請求項13に記載の偏光状態取得装置。
【請求項15】
前記受光部は、それぞれ複数の受光素子により形成される複数の受光素子ユニットを有し、
前記偏光状態取得装置は、
前記複数の受光素子ユニットにそれぞれ対応して設けられ、対応する受光素子ユニットを形成する複数の受光素子にそれぞれ対応して設けられた複数の偏光フィルタによりそれぞれ形成される複数の偏光フィルタユニットを有する偏光フィルタ部
をさらに備え、
前記複数の偏光フィルタユニットがそれぞれ有する複数の偏光フィルタは、それぞれ異なる偏光成分を透過して、それぞれ対応する受光素子に受光させ、
前記受光量取得部は、前記複数の受光素子ユニットをそれぞれ形成する複数の受光素子のそれぞれの受光量を、前記複数の受光素子ユニット毎に取得する
請求項12に記載の偏光状態取得装置。
【請求項16】
複数の受光素子による入射光の受光量に基づいて前記入射光の偏光状態を取得する偏光状態取得方法であって、
前記入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量を複数の画素毎に取得する受光量取得段階と、
前記入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量が、予め定められた受光量の範囲内にあるか否かを判定する受光量判定段階と、
前記受光量取得段階において取得された受光量のうち前記範囲内にあると判定された受光量を用いて、前記入射光の偏光状態を前記複数の画素毎に取得する偏光状態取得段階と
を備える偏光状態取得方法。
【請求項17】
複数の受光素子による入射光の受光量に基づいて前記入射光の偏光状態を取得する偏光状態取得装置用のプログラムであって、コンピュータを、
前記入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量を複数の画素毎に取得する受光量取得部、
前記入射光に含まれる複数の偏光成分のそれぞれの受光量が、予め定められた受光量の範囲内にあるか否かを判定する受光量判定部、
前記受光量取得部が取得した受光量のうち前記範囲内にあると判定された受光量を用いて、前記入射光の偏光状態を前記複数の画素毎に取得する偏光状態取得部
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−133361(P2011−133361A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293224(P2009−293224)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】