説明

側突用エアバッグ装置、車両用シート、インフレータのガス整流器、ガス整流器のインフレータへの組み付け方法

【課題】ボルト付きインフレータへの筒状部材の組み付け性を簡易な構成で向上する。
【解決手段】インフレータ20は、ケーシング18に固定するための固定ボルト44を一体的に有するボルト付きインフレータである。またスリーブ40は、インフレータ20の長手方向にそって延出した舌片部40bを有しており、この舌片部40bにインフレータ20の長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部48a及びこの長孔部48aと略直角となるように形成された短孔部48bを有する挿通孔48が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の側面衝突時等に乗員を拘束するための側突用エアバッグ装置及びこれを備えた車両用シート、並びにインフレータのガス整流器及びこのガス整流器のインフレータへの組み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の側面衝突や車体横転時等に、インフレータによって側突用エアバッグを乗員の側部に膨張させ、乗員の身体を拘束する側突用エアバッグ装置が知られている。この側突用エアバッグ装置は、例えばシートの背もたれ部に内蔵されており、側面衝突時等には、側突用エアバッグがインフレータから噴射されるガスによって背もたれ部から乗員と車両のボディの側壁部との間に膨張展開する。
【0003】
このような側突用エアバッグにおいて、例えば乗員の上半身のうち胸部を受け止めるための上側チャンバと腰部を受け止めるための下側チャンバとの2室に区画されているエアバッグ等、内部に複数のチャンバを有するものがある。このような構成のエアバッグでは、例えば外部からの衝撃に弱い胸部を受け止める上側チャンバの圧力を、腰部を受け止める下側チャンバの圧力より低くする等、膨張展開時の各チャンバの圧力比を調整したり、一方側のチャンバを他方側のチャンバより早く膨張させる等、膨張展開時の各チャンバの展開挙動を異ならせる場合がある。このような場合、インフレータから各チャンバに供給されるガスの流量を調整する必要がある。
【0004】
従来、このようなガスの流量調整手段を有する側突用エアバッグ装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術では、インフレータのガス噴出側を覆うように筒状部材が設けられている。この筒状部材は、絞り部によってインフレータから噴出されるガスの流路を絞る。これにより、特定のチャンバへ供給されるガスの流量を絞ると共に絞った分の流量をその他のチャンバに分配して複数のチャンバへのガスの流量を調整し、膨張展開時の各チャンバの圧力比を調整したり、膨張展開時の各チャンバの展開挙動を異ならせることを可能としている。
【0005】
筒状部材は、インフレータに係止するための延出部(係合部)を有している。一方、インフレータは固定ボルト(ボルト)を有するクリップによって支持されており、固定ボルトがケーシングに締結されることによってインフレータがケーシングに固定される。そして、上記延出部にはクリップの固定ボルトを挿通させるための挿通孔が設けられている。この挿通孔に固定ボルトが挿通されることにより、筒状部材はインフレータの噴出側を覆う状態でインフレータに組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−18925号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術では、固定ボルトをインフレータの所定位置に固定した状態では、構造上、筒状部材をインフレータの噴出側に被せた状態で延出部の挿通孔に固定ボルトを挿通しようとしても延出部が持ち上がらず挿通できない、あるいは、延出部の挿通孔に固定ボルトを挿通させた状態で筒状部材をインフレータの噴出側に被せようとしても届かず被せられない等により、筒状部材をインフレータに組み付けできないおそれがある。よって、特許文献1には特に記載されていないが、次のような手順にて組み付けることが考えられる。
【0008】
すなわち、まずクリップを緩め、固定ボルトをインフレータの長手方向に移動可能とする。その後、固定ボルトをインフレータの噴出側に寄せた状態で、筒状部材の延出部の挿通孔に固定ボルトを挿通させる。そして、クリップを固定ボルトに係合した筒状部材と共にインフレータの噴出側と反対方向に移動させ、筒状部材がインフレータの噴出側を覆う状態となる所定位置において、クリップを締めて固定ボルトをインフレータに固定する。このように、クリップを緩めて固定ボルトをインフレータ長手方向に移動可能とすることにより、筒状部材をインフレータに適切に組み付けることが可能である。
【0009】
ここで、近年、部品点数やコストの削減を図る観点から、上記固定ボルトを一体的に有するボルト付きのインフレータが提唱されている。このようなインフレータに上記従来技術の筒状部材を適用する場合、固定ボルトが所定位置に固定されているため、上述したように筒状部材をインフレータへ組み付けることが困難となるおそれがあった。
【0010】
本発明の目的は、ボルト付きインフレータへの筒状部材の組み付け性を簡易な構成で向上できる側突用エアバッグ装置及びこれを備えた車両用シート、並びにインフレータのガス整流器及びこのガス整流器のインフレータへの組み付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1発明の側突用エアバッグ装置は、車両のボディの側壁部とシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグと、前記側突用エアバッグ内に収納され、膨張展開用のガスを長手方向一方側から噴出する略円筒形状のインフレータと、前記インフレータの長手方向一方側を覆う状態で前記インフレータに組み付けられた筒状部材と、を有する側突用エアバッグ装置であって、前記インフレータは、被取付部材に固定するための固定ボルトを一体的に有し、前記筒状部材は、前記インフレータの長手方向に沿って延出し前記固定ボルトが挿通される挿通孔が形成された延出部を有し、前記挿通孔は、前記インフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部を有していることを特徴とする。
【0012】
車両の側面衝突時等の緊急時には、インフレータが起動され、このインフレータから噴出されるガスによって、側突用エアバッグが乗員と車両のボディの側壁部との間に膨張展開する。このとき、インフレータのガス噴出側である長手方向一方側を覆う状態で組み付けられた筒状部材が、噴出されたガスを受け止めその整流を行う。
【0013】
このとき本願第1発明においては、インフレータが、被取付部材に固定するための固定ボルトを一体的に有したボルト付きインフレータである。また筒状部材は、インフレータの長手方向に沿って延出した延出部を有しており、この延出部にはインフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部を有する挿通孔が形成されている。
【0014】
このような構成により、筒状部材をインフレータに組み付ける際、作業者は次のような手順を取ることが可能である。すなわち、まず固定ボルトを長孔部の長手方向他方側端部に挿通させる。これにより、長孔部の長さを適宜の値に設定しておけば、筒状部材がインフレータの噴出側に被さらない状態において固定ボルトを延出部の挿通孔に容易に挿通可能である。その後、固定ボルトが長孔部の反対側である長手方向一方側端部に移動するように、筒状部材をインフレータの長手方向他方側へ移動させる。これにより、筒状部材がインフレータの噴出側を覆う状態となり、筒状部材をインフレータに適切に組み付けできる。
【0015】
このように、本願第1発明によれば、筒状部材の延出部に長孔状の挿通孔を形成するといった簡易な構成で、筒状部材をボルト付きのインフレータに適切に組み付け可能である。したがって、ボルト付きインフレータへの筒状部材の組み付け性を簡易な構成で向上できる。
【0016】
第2発明の側突用エアバッグ装置は、上記第1発明において、前記挿通孔は、前記長孔部の長手方向一方側端部に接続され、前記長孔部と略直角となるように形成された短孔部を有していることを特徴とする。
【0017】
本願第2発明においては、挿通孔が、長孔部の長手方向一方側端部に接続され長孔部と略直角となるように形成された短孔部を有した構成とする。これにより、筒状部材をインフレータに組み付ける際に、固定ボルトを長孔部の長手方向他方側端部に挿通させ、固定ボルトが長孔部の反対側である長手方向一方側端部に移動するように筒状部材をインフレータの長手方向他方側へ移動させた上で、さらに固定ボルトが短孔部に移動するように筒状部材をインフレータの周方向に回転させるという手順を取ることが可能となる。これにより、固定ボルトが長孔部に対し略直角な短孔部に挿通された状態となるため、筒状部材のインフレータ長手方向への移動が規制され、インフレータが筒状部材から抜けることを防止できる。したがって、筒状部材がボルト付きのインフレータに適切に組み付けられた状態を保持できる。
【0018】
第3発明の側突用エアバッグ装置は、上記第2発明において、前記短孔部は、前記長孔部との接続部近傍に、開口内側に向かって突出する突起部を有することを特徴とする。
【0019】
本願第3発明においては、短孔部が、長孔部との接続部近傍に開口内側に向かって突出する突起部を有する構成とする。これにより、筒状部材のインフレータへの組み付け時において、筒状部材をインフレータの周方向に回転させて固定ボルトを長孔部から短孔部に移動させた際に、突起部が固定ボルトに接触して当該固定ボルトの長孔部への戻りを抑制することができる。その結果、組み付け完了後の筒状部材のインフレータ周方向への回転が抑制されるので、筒状部材がボルト付きのインフレータに適切に組み付けられた状態を安定して保持できる。
【0020】
上記目的を達成するために、第4発明の車両用シートは、上記第1乃至第3発明のいずれかの側突用エアバッグ装置を備えたことを特徴とする。
本願第4発明によれば、ボルト付きインフレータへの筒状部材の組み付け性を向上させた側突用エアバッグ装置を備えた車両用シートを提供できる。
【0021】
上記目的を達成するために、第5発明のインフレータのガス整流器は、車両のボディの側壁部とシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグの膨張展開用のガスを長手方向一方側から噴出する略円筒形状のインフレータのガスを整流するインフレータのガス整流器であって、前記インフレータの長手方向に沿って延出した延出部と、前記延出部に形成され、前記インフレータを被取付部材に固定するために前記インフレータに一体的に設けられた固定ボルトが挿通される挿通孔と、前記挿通孔に備えられ、前記インフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部と、を有し、前記インフレータの長手方向一方側を覆う状態で前記インフレータに組み付けられる筒状部材であることを特徴とする。
【0022】
車両の側面衝突時等の緊急時には、インフレータが起動され、このインフレータから噴出されるガスがガス整流器で整流されチャンバに供給されることによって、側突用エアバッグが乗員と車両のボディの側壁部との間に膨張展開する。
【0023】
このとき本願第5発明においては、インフレータが、被取付部材に固定するための固定ボルトを一体的に有したボルト付きインフレータである。またガス整流器を、インフレータの長手方向に沿って延出した延出部を有し、この延出部にインフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部を備え固定ボルトが挿通される挿通孔が形成された筒状部材として構成する。
【0024】
このような構成により、筒状部材をインフレータに組み付ける際、次のような手順を取ることが可能である。すなわち、まず固定ボルトを長孔部の長手方向他方側端部に挿通させる。これにより、長孔部の長さを適宜の値に設定しておけば、筒状部材がインフレータの噴出側に被さらない状態において固定ボルトを延出部の挿通孔に容易に挿通可能である。その後、固定ボルトが長孔部の反対側である長手方向一方側端部に移動するように、筒状部材をインフレータの長手方向他方側へ移動させる。これにより、筒状部材がインフレータの噴出側を覆う状態となり、筒状部材をインフレータに適切に組み付けできる。
【0025】
このように、本願第5発明によれば、筒状部材の延出部に長孔状の挿通孔を形成するといった簡易な構成で、ガス整流器としての筒状部材をボルト付きのインフレータに適切に組み付け可能である。したがって、ボルト付きインフレータへの筒状部材の組み付け性を簡易な構成で向上できる。
【0026】
上記目的を達成するために、第6発明のガス整流器のインフレータへの組み付け方法は、車両のボディの側壁部とシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグの膨張展開用のガスを長手方向一方側から噴出する略円筒形状のインフレータのガスを整流するガス整流器であって、前記インフレータの長手方向に沿って延出した延出部と、前記延出部に形成され、前記インフレータを被取付部材に固定するために前記インフレータに一体的に設けられた固定ボルトが挿通される挿通孔と、前記挿通孔に備えられ、前記インフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部、及び前記長孔部の長手方向一方側端部に前記長孔部と略直角となるように形成された短孔部と、を有し、前記インフレータの長手方向一方側を覆う状態で前記インフレータに組み付けられる筒状部材であるガス整流器のインフレータへの組み付け方法であって、前記固定ボルトを前記長孔部の長手方向他方側端部に挿通させる第1手順と、前記固定ボルトが前記長孔部の長手方向一方側端部に移動するように、前記筒状部材を前記インフレータの長手方向他方側へ移動させる第2手順と、前記固定ボルトが前記短孔部に移動するように、前記筒状部材を前記インフレータの周方向に回転させる第3手順と、を有することを特徴とする。
【0027】
車両の側面衝突時等の緊急時には、インフレータが起動され、このインフレータから噴出されるガスがガス整流器で整流されチャンバに供給されることによって、側突用エアバッグが乗員と車両のボディの側壁部との間に膨張展開する。
【0028】
このとき本願第6発明においては、インフレータが、被取付部材に固定するための固定ボルトを一体的に有したボルト付きインフレータである。またガス整流器を、インフレータの長手方向に沿って延出した延出部を有し、この延出部にインフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部を備え固定ボルトが挿通される挿通孔が形成された筒状部材として構成する。
【0029】
このような構成により、筒状部材をインフレータに組み付ける際、次のような手順を取ることが可能である。すなわち、まず第1手順において固定ボルトを長孔部の長手方向他方側端部に挿通させる。これにより、長孔部の長さを適宜の値に設定しておけば、筒状部材がインフレータの噴出側に被さらない状態において固定ボルトを延出部の挿通孔に容易に挿通可能である。次に第2手順において、固定ボルトが長孔部の反対側である長手方向一方側端部に移動するように、筒状部材をインフレータの長手方向他方側へ移動させる。これにより、筒状部材がインフレータの噴出側を覆う状態となる。そして第3手順において、固定ボルトが短孔部に移動するように、筒状部材をインフレータの周方向に回転させる。これにより、固定ボルトが短孔部に挿通された状態となり、筒状部材のインフレータ長手方向への移動が規制されるため、インフレータが筒状部材から抜けることを防止できる。
【0030】
このように、本願第6発明によれば、筒状部材の延出部に長孔状の挿通孔を形成するといった簡易な構成を利用して、ガス整流器としての筒状部材をボルト付きのインフレータに上述した手順により容易に組み付け可能である。したがって、ボルト付きインフレータへの筒状部材の組み付け性を簡易な構成で向上できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ボルト付きインフレータへの筒状部材の組み付け性を簡易な構成で向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態の側突用エアバッグ装置を備えた自動車のシートの概略側面図である。
【図2】平面状に展開した状態における側突用エアバッグの全体構造を表す側面図及びチャンバ接続部近傍の部分拡大図である。
【図3】インフレータに設けられるスリーブの全体構造を表す斜視図である。
【図4】スリーブのインフレータへの組み付け手順を説明するための図である。
【図5】折り畳まれた側突用エアバッグがケーシング内に収納された状態を表すケーシングの断面図である。
【図6】単数のチャンバからなる側突用エアバッグに適用した場合のエアバッグの全体構造を表す側面図である。
【図7】単数のチャンバからなる側突用エアバッグに適用した場合のスリーブの全体構造を表す斜視図である。
【図8】挿通孔の変形例の形状を概念的に表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の側突用エアバッグ装置の一実施の形態を備えた自動車のシートの概略側面図であり、図1(a)は平常時、図1(b)はエアバッグの膨張時を示している。
【0034】
この図1において、シート10上に乗員12が着座している。シート10(車両用シート)は座部10Aを有し、この座部10Aから背もたれ部10Bが上方に突出している。この背もたれ部10Bの頂部には、ヘッドレスト10Cが取り付けられている。
【0035】
シート10は、事故による側面衝突又は車体横転時等に乗員12の上半身の移動を規制するための側突用エアバッグ装置14を背もたれ部10B内に装備している。この側突用エアバッグ装置14は、自動車のボディの側壁部(図示せず。図1では紙面手前側に位置する)とシート10に着座した乗員12との間に膨張展開する側突用エアバッグ16と、この側突用エアバッグ16が折り畳まれた状態で収納される例えば樹脂製のケーシング18(被取付部材)と、側突用エアバッグ16内に収納され、膨張展開用のガスを供給する略円筒形状のインフレータ20(後述の図3等参照)を備えている。このインフレータ20は、図示しないインフレータ制御回路によって点火される。
【0036】
図1(a)に示すように、平常時には、側突用エアバッグ16は、ケーシング18内に折り畳まれた状態でシート10の背もたれ部10B内に収納されている。一方、例えば自動車が側面衝突等した場合には、上記インフレータ制御回路がインフレータ20のイニシエータを起動させる。これによりインフレータ20が点火され、図1(b)に示すように、側突用エアバッグ16が膨張してシート10から(本実施形態では背もたれ部10Bの前面の布地とボディ側壁部側の横面の布地の図示しない縫製ラインを割って)飛び出し、自動車のボディの側壁部と乗員12との間に展開する。このとき、側突用エアバッグ16は上側に位置する第1バッグ部16Aと下側に位置する第2バッグ部16Bとから構成されており、上記第1バッグ部16Aにより乗員12の胸部を受け止めて衝撃を吸収し、第2バッグ部16Bにより乗員12の腰部の車両側部方向への移動を規制する。
【0037】
図2は、平面状に展開した状態における側突用エアバッグ16の全体構造を表す側面図であり、併せてチャンバ接続部近傍の部分拡大図を示している。
【0038】
この図2において、側突用エアバッグ16は、ほぼ同一形状に形成された第1パネル22Aと第2パネル22B(図2では図示せず)とがその外縁部に沿って全周に亘り縫製結合されることにより、袋体として構成されている。図中24はその縫製結合部を示しており、袋体の外縁部に沿う部分においては全て2重に縫製されている(なお、必ずしも二重にする必要はなく、一重でもよい)。上記第1パネル22Aは、車幅方向一方側(例えば乗員側)に配置され、第2パネル22Bは、車幅方向他方側(例えば自動車のボディの側壁側)に配置される。なお、この図2は車幅方向一方側から見た側面図であり、第1パネル22Aのみを図示している。
【0039】
側突用エアバッグ16の内部は、上側から膨張方向先端側(図2中右側)にかけて形成される第1チャンバ28Aと、膨張方向基端側(図2中左側)から下側にかけて形成される第2チャンバ28Bとの2室に区画されている。これら第1チャンバ28Aと第2チャンバ28Bとは、内周側に向かって設けられた縫製結合部24aにより区画されているが、膨張方向基端側(図2中左側)に設けられたチャンバ接続部28Cにおいて接続されている。このような構成である第1・第2チャンバ28A,28Bは、前述した第1・第2バッグ部16A,16B内にそれぞれ設けられる。
【0040】
上記チャンバ接続部28Cは、上記縫製結合部24aの先端部に設けられた略円環状の円環縫製部24bと側突用エアバッグ16の基端側(図2中左側)に設けられた略円環状の円環縫製部24cとの間に形成されており、これら円環縫製部24b,24cの頂点をつき合わせた部位である嵌合部70にスリーブ40が嵌合される(図2中部分拡大図参照)。このとき、上記円環縫製部24cの上記嵌合部70側の頂点は後述するシール材部30の内側(図2中右側、嵌合部70側)に位置するように設けられており、これにより嵌合部70の内径L1が上記スリーブ40の外径L2とほぼ等しくなるように設定されている(図2中部分拡大図参照)。その結果、スリーブ40を嵌合部70に対し締り嵌めにより強固に取り付けることができると共に、スリーブ40の外周面と嵌合部70の内周面との隙間の気密性を良好に保持できる。また、本実施形態のように嵌合部70の両側(又は一方側でもよい)に円環縫製部を設ける構成とすることにより、円環縫製部の頂点部分における内径がスリーブ40の外径と略同等である構成とすることができる。これにより、両側を直線状に縫製してその内径がスリーブ40の外径と略同等である嵌合部を形成し、その嵌合部に対しスリーブ40を挿入する場合に比べ、挿入時の摩擦を低減でき、スリーブ40の嵌合部への取付性を向上することができる。
【0041】
上記嵌合部70に挿入されるスリーブ40は、インフレータ20のガスを吐出する凸部20a側に設けられ、この凸部20aから噴出されるガスを第1・第2チャンバ28A,28Bに所定の流量比率で分配する流量分配機能を有している(詳細は後述)。
【0042】
上記縫製結合部24のうち、第2チャンバ28Bの外縁を構成する部分(すなわち、チャンバ接続部28Cの膨張方向基端側から側突用エアバッグ16の下側を通り、内周側に向かって設けられた縫製結合部24aの先端に到るまでの部分)には、縫製結合部24をシールするためにこの縫製結合部24に沿ってシリコンゴム等の適宜のシール材からなるシール材部30が設けられている。このシール材部30は、2重に設けた縫製結合部24の両方をシールできるように、2重の縫製結合部24よりも幅広に設けられている(図2中部分拡大図参照)。これにより、第2チャンバ28Bを有する第2バッグ部16Bの気密性を向上でき、乗員12の腰部の移動を規制する第2バッグ部16B内の圧力を長時間高圧に保持することが可能である。
【0043】
側突用エアバッグ16(詳細には第1バッグ部16A)は、その膨張方向先端側(図2中右側)のバッグ外縁部32における乗員12の肘部12a(図1参照)に対応する位置に、略円弧形状である凹部34を有している。この凹部34は、予め外縁部の対応する位置に凹部が形成されるように裁断された第1・第2パネル22A,22Bを縫製結合して袋状にすることによって形成される。なお、凹部34を設けない構成としてもよい。
【0044】
なお、第1パネル22Aには、側突用エアバッグ16にインフレータ20及びスリーブ40を挿入するための図示しないスリットが設けられており、さらにこのスリットを一方側(図2中下側)から覆う覆い部36及び上記スリットを他方側(図2中上側)から覆う覆い部38がそれぞれ設けられている。これら覆い部36,38は、第1パネル22Aの表面に縫製により一体的に設けられた適宜の当て布の一部により構成されている。上記スリットを介してインフレータ20及びスリーブ40を挿入した後、覆い部36,38を折り重ねてスリットを覆うことにより、側突用エアバッグ16の気密性を向上できる。
【0045】
図3は、インフレータ20に設けられる上記スリーブ40の全体構造を表す斜視図である。
【0046】
この図3において、スリーブ40は、筒軸方向一方側(図3中左側。第2チャンバ28B側)端部に絞り部40aを有すると共に、筒軸方向他方側(図3中右側。第1チャンバ28A側)にこのスリーブ40をインフレータ20に係止するための舌片部40b(延出部)を有する円筒状の部材である。一方、インフレータ20は長手方向一方側(図3中左側。以下「噴出側」と記載する)に上述した凸部20aを有しており、この凸部20aにはガスを噴出するための複数の噴出孔42が設けられている。このインフレータ20は固定ボルト44を一体的に有するボルト付きインフレータであり、固定ボルト44がケーシング18に締結されることによって、インフレータ20がケーシング18に固定される。なお、図3に示す例ではインフレータ20が固定ボルト44を2本有しているが、1本でもよいし、3本以上有する構成としてもよい。
【0047】
上記スリーブ40の舌片部40bは、インフレータ20の長手方向に沿って長手方向他方側(図3中右側。以下「噴出反対側」と記載する)に延出している。この舌片部40bには、上記固定ボルト44を挿通させるための挿通孔48が設けられている。挿通孔48は略L字型形状に形成されており、インフレータ20の長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部48aと、この長孔部48aの長手方向一方側(図3中左側。以下「絞り部側」と記載する)端部に接続され、長孔部48aと略直角となるように形成された短孔部48bとを有している。長孔部48a及び短孔部48bはいずれも固定ボルト44の外径よりもやや大きな孔幅を有しており、挿通された固定ボルト44が長孔部48a及び短孔部48b内を摺動しつつ移動することが可能である。このような構成である挿通孔48において、まず固定ボルト44が長孔部48aに挿通され、次に短孔部48b内に移動されることにより、スリーブ40はインフレータ20の噴出側を覆う状態でインフレータ20に組み付けられる。この組み付け手順の詳細については後述するが、図3は組み付けが完了した状態を示している。
【0048】
スリーブ40の内径はインフレータ20の外径よりも所定量大きくなるように形成されており、スリーブ40の内周面とインフレータ20の外周面との間には噴出されたガスが第1チャンバ28A側に流れる流路(図中矢印50で示す)の隙間が確保される。これにより、スリーブ40はインフレータ20の凸部20aより周囲方向に噴出されたガスを受け、ガスの流れ方向をインフレータ20の噴出側及び噴出反対側に整流するガス整流器として機能する。また、噴出される高温ガスが第1・第2パネル22A,22Bに対して直接的に衝突するのを防止し、高温ガスによる基布及び縫製の劣化を低減できる効果もある。
【0049】
さらに、スリーブ40はガスの分配機能も有している。すなわち、上記スリーブ40の絞り部40aは、開口52を有する環状部材(本実施形態では円環状の部材)である。この開口52の口径は、側突用エアバッグ16を構成する第1バッグ部16A及び第2バッグ部16Bが所望の展開挙動を行うように、または第1バッグ部16A及び第2バッグ部16B内の圧力がそれぞれ所望の値となるようにするために、それら第1バッグ部16Aの第1チャンバ28Aと第2バッグ部16Bの第2チャンバ28Bとにインフレータ20の噴出ガスが適切な流量比率で分配されるように予め算出された適宜の値に設定されている。例えば本実施形態では、乗員12の腰部を規制する第2バッグ部16B内の圧力が胸部側を規制する第1バッグ部16A内の圧力よりも高圧になるように、開口52の口径が設定される。これにより、インフレータ20から噴出されたガスが予め設定された所定の流量に調整されて第2チャンバ28B側に供給される(その流路を図中矢印54で示す)。
【0050】
図4は、スリーブ40のインフレータ20への組み付け手順を説明するための図である。
【0051】
図4(a)に示すように、まずインフレータ20の噴出側(図4中左側)の固定ボルト44を、スリーブ40の挿通孔48における長孔部48aの長手方向他方側(図4中右側。以下「インフレータ側」と記載する)端部に挿通させる。本実施形態では、この状態においてスリーブ40がインフレータ20の噴出側に被さらない(言い換えれば凸部20aのみに被さる)ように長孔部48aの長さが設定されている。これにより、例えば挿通孔48が単なる円形の孔である場合には、構造上、スリーブ40がインフレータ20の噴出側に被さった状態では挿通孔48に固定ボルト44を挿通しようとしても舌片部40bが持ち上がらず挿通できないおそれがあるのに対し、挿通孔48が長孔部48aを有することによってそのような事態を防止でき、固定ボルト44を長孔部48aに容易に挿通することが可能である。
【0052】
次に図4(b)に示すように、固定ボルト44が長孔部48aの絞り部側の端部に移動するように、スリーブ40をインフレータ20の噴出反対側へ移動させる。これにより、スリーブ40がインフレータ20の噴出側を覆う状態となる。その後図4(c)に示すように、固定ボルト44が長孔部48aから短孔部48bに移動するように、スリーブ40をインフレータ20の周方向に回転させる。これにより、固定ボルト44が短孔部48bに挿通された状態となり、スリーブ40のインフレータ長手方向への移動が規制される。その結果、インフレータ20がスリーブ40から抜けることを防止でき、スリーブ40がインフレータ20に適切に組み付けられた状態を保持できる。この図4(c)に示す状態がスリーブ40のインフレータ20への組み付けが完了した状態であり、前述の図3に示す状態と同等である。
【0053】
図5は、折り畳まれた側突用エアバッグ16がケーシング18内に収納された状態を表すケーシング18の断面図である。なお、この図5ではスリーブ40の図示を省略している。
【0054】
この図5に示すように、前述した固定ボルト44がケーシング18に締結されることにより、インフレータ20がケーシング18に対し固定されている。また、側突用エアバッグ16の膨張方向基端側(図5中上側)の端部はインフレータ20とケーシング18との間に挟まれることにより固定されている。そして、側突用エアバッグ16は、例えばその膨張方向基端側が蛇腹折りによって折り畳まれ(図中64で示す部分)、膨張方向先端側(図5中下側)がロール折りによって折り畳まれ(図中66で示す部分)、膨張方向先端側の端部が内折りされた状態で(図中68で示す部分)、ケーシング18内に収納されている。
【0055】
以上のような構成である側突用エアバッグ装置14が搭載される自動車には、当該自動車が衝突(側突等を含む)した際や横転した際に、それらの発生(若しくは発生の予測)を検知する各種センサが設けられている。そして、側面衝突時等の緊急時には、これらのセンサがこれを検知し、インフレータ制御回路がこれらのセンサからの検知信号に基づいてインフレータ12のイニシエータを起動させる。これにより、インフレータ20が作動され、エアバッグ膨張用のガスが噴出されて側突用エアバッグ16が自動車のボディの側壁部と乗員12との間に膨張展開する。
【0056】
以上説明した実施形態の側突用エアバッグ装置14によれば、以下の効果が得られる。すなわち、本実施形態においては、インフレータ20が、ケーシング18に固定するための固定ボルト44を一体的に有したボルト付きインフレータであり、またスリーブ40がインフレータ20の長手方向にそって延出した舌片部40bを有しており、この舌片部40bにインフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部48aを有する挿通孔48が形成されている。このような構成により、スリーブ40をインフレータ20に組み付ける際、作業者は次のような手順を取ることができる。すなわち、まず固定ボルト44を長孔部48aのインフレータ側端部に挿通させる。これにより、長孔部48aの長さを適宜の値に設定しておけば、スリーブ40がインフレータ20の噴出側に被さらない状態において固定ボルト44を長孔部48aに容易に挿通可能である。その後、固定ボルト44が長孔部48aの絞り部側の端部に移動するように、スリーブ40をインフレータ20の噴出反対側へ移動させる。これにより、スリーブ40がインフレータ20の噴出側を覆う状態となり、スリーブ40をインフレータ20に適切に組み付けできる。
【0057】
このように、本実施形態によれば、スリーブ40に長孔状の長孔部48aを有する挿通孔48を形成するといった簡易な構成で、スリーブ40をインフレータ20に適切に組み付け可能である。したがって、ボルト付きインフレータ20へのスリーブ40の組み付け性を簡易な構成で向上できる。
【0058】
また、本実施形態では特に、挿通孔48が、長孔部48aの絞り部側端部に接続され当該長孔部48aと略直角となるように形成された短孔部48bを有した構成とする。これにより、スリーブ40をインフレータ20に組み付ける際に、固定ボルト44を長孔部48aのインフレータ側端部に挿通させ、固定ボルト44が長孔部48aの反対側である絞り部側端部に移動するようにスリーブ40をインフレータ20の噴出反対側へ移動させた上で、さらに固定ボルト44が短孔部48bに移動するようにスリーブ40をインフレータ20の周方向に回転させるという手順を取ることができる。これにより、固定ボルト44が長孔部48aに対し略直角な短孔部48bに挿通された状態となるため、スリーブ40のインフレータ長手方向への移動が規制され、インフレータ20がスリーブ40から抜けることを防止できる。したがって、スリーブ40がボルト付きのインフレータ20に適切に組み付けられた状態を保持できる。その結果、スリーブ40はガス分配機能を精度良く安定して発揮できる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0060】
(1)単数のチャンバからなる側突用エアバッグの場合
上述した実施形態では、複数のチャンバを有する側突用エアバッグを例にとって説明したが、単数のチャンバからなる側突用エアバッグでもよい。図6は本変形例の側突用エアバッグ76の平面状に展開した状態における全体構造を表す側面図であり、図7は本変形例のスリーブ78の全体構造を表す斜視図である。なお、これら図6及び図7において前述の図2及び図3と同様の部分には同符号を付し説明を省略する。
【0061】
図6に示すように、本変形例の側突用エアバッグ76は、ほぼ同一形状に形成された第1パネル80Aと第2パネル80B(図6では図示せず)とがその外縁部に沿って全周に亘り縫製結合されることにより、袋体として構成されている。図中82はその縫製結合部を示しており、袋体の外縁部に沿って2重に縫製されている。側突用エアバッグ76の内部は、単一のチャンバ84で構成されている。上記以外の側突用エアバッグ76の構成は、前述の側突用エアバッグ16と同様である。
【0062】
図7に示すように、本変形例のスリーブ78は、インフレータ20の長手方向に沿って噴出反対側に延出した舌片部78b(延出部)を有している。この舌片部78bには、前述した実施形態と同様の挿通孔48が設けられている。一方、スリーブ78は筒軸方向一方側(図7中左側)端部に絞り部を有していない。これにより、スリーブ78は、前述したようにインフレータ20の凸部20aより周囲方向に噴出されたガスの流れ方向を噴出側(図中矢印54側)及び噴出反対側(図中矢印50側)に整流するガス整流器としては機能するが、絞り部を有していないため、前述の実施形態と異なりガスの流量を調整して適宜の比率に分配する分配機能は有していない。上記以外のスリーブ78の構成は前述のスリーブ40と同様である。またスリーブ78のインフレータ20への組み付け手順も前述の図4に示すものと同様であるので説明を省略する。
【0063】
本変形例においても、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(2)短孔部48bに突起部を設ける場合
以上では設けなかったが、短孔部48bに固定ボルト44の戻り抑制用の突起部を設けてもよい。図8は、本変形例の挿通孔の形状を概念的に表す平面図である。なお、図8では挿通された固定ボルト44の組み付け時における各位置を一点鎖線にて示している。
【0065】
図8(a)には、前述の実施形態の挿通孔48の形状を比較のために示している。この図8(a)に示すように、挿通孔48では、長孔部48a及び短孔部48bは一定の孔幅となるように形成されている。一方、図8(b)に示す変形例の挿通孔48Aでは、短孔部48bは、長孔部48aとの接続部近傍における内側となる辺に、開口内側に向かって山状に突出する突起部72を有している。また図8(c)に示す変形例の挿通孔48Bでは、短孔部48bは、長孔部48aとの接続部近傍における外側となる辺に、開口内側に向かって円弧状に突出する突起部74を有している。
【0066】
これにより、スリーブ40のインフレータ20への組み付け時において、スリーブ40をインフレータ22の周方向に回転させて固定ボルト44を長孔部48aから短孔部48bに移動させた際に、突起部72,74が固定ボルト44に接触して当該固定ボルト44の長孔部48aへの戻りを抑制することができる。その結果、組み付け完了後のスリーブ40のインフレータ周方向への回転が抑制されるので、スリーブ40がボルト付きのインフレータ20に適切に組み付けられた状態を安定して保持できる。
【0067】
(3)その他
以上では、スリーブ40を円筒形状としたが、これに限られず、インフレータ20の噴出側を覆うことが可能な筒状の部材であれば、例えば四角形等の多角形形状としてもよい。同様に、絞り部40aを円環状としたが、これに限られず、例えば開口の形状が四角形等の多角形形状である環状部材としてもよい。
【0068】
また以上においては、エアバッグの内部が2つのチャンバに区画されることにより、2つのバッグ部で構成されている側突用エアバッグを例にとって説明したが、これに限られず、例えばエアバッグ内が3以上のチャンバに区画され、3以上のバッグ部で構成されている側突用エアバッグに本発明を適用してもよい。
【0069】
また以上においては、前述したように、第1パネル22Aと第2パネル22Bとを縫製結合して側突用エアバッグ16を構成するようにしたが、これに限られず、例えば第1パネル22Aと第2パネル22Bとを袋織りする等、他の結合手段により結合させて側突用エアバッグ16を構成するようにしてもよい。また例えば、1枚のパネルを半分に折り、その折り部以外の周囲を縫製結合することにより袋体として構成してもよい。
【0070】
また以上においては、シート10の背もたれ部10B内に装備されたいわゆるシートマウントタイプの側突用エアバッグ装置に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば自動車のドアに装備されたいわゆるドアマウントタイプの側突用エアバッグ装置に本発明を適用してもよい。
【0071】
また以上においては、シート10からボディ側壁部と乗員12との間に(すなわち乗員12に対し衝突側に)膨張展開するサイドエアバッグに対し本発明を適用した例を説明したが、これに限られず、乗員12に対しボディ側壁部とは反対側に(すなわち乗員12に対し衝突側とは反対側に)膨張展開し乗員12を拘束するサイドエアバッグ(いわゆるファーサイドエアバッグ)に対し、本発明を適用してもよい。
【0072】
また以上においては、複数のチャンバを有するエアバッグに絞り部を有するガス整流器を、単数のチャンバからなるエアバッグに絞り部を有しないガス整流器を用いるようにしたが、エアバッグに要求される性能に応じて、反対に、複数のチャンバを有するエアバッグに絞り部を有しないガス整流器を、単数のチャンバからなるエアバッグに絞り部を有するガス整流器を用いてもよい。
【0073】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0074】
10 シート(車両用シート)
12 乗員
14 側突用エアバッグ装置
16 側突用エアバッグ
18 ケーシング(被取付部材)
20 インフレータ
40 スリーブ(筒状部材、ガス整流器)
40b 舌片部(延出部)
44 固定ボルト
48 挿通孔
48a 長孔部
48b 短孔部
48A 挿通孔
48B 挿通孔
72 突起部
74 突起部
76 側突用エアバッグ
78 スリーブ(筒状部材、ガス整流器)
78b 舌片部(延出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディの側壁部とシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグと、
前記側突用エアバッグ内に収納され、膨張展開用のガスを長手方向一方側から噴出する略円筒形状のインフレータと、
前記インフレータの長手方向一方側を覆う状態で前記インフレータに組み付けられた筒状部材と、を有する側突用エアバッグ装置であって、
前記インフレータは、被取付部材に固定するための固定ボルトを一体的に有し、
前記筒状部材は、前記インフレータの長手方向に沿って延出し前記固定ボルトが挿通される挿通孔が形成された延出部を有し、
前記挿通孔は、前記インフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部を有している
ことを特徴とする側突用エアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1記載の側突用エアバッグ装置において、
前記挿通孔は、
前記長孔部の長手方向一方側端部に接続され、前記長孔部と略直角となるように形成された短孔部を有している
ことを特徴とする側突用エアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2記載の側突用エアバッグ装置において、
前記短孔部は、
前記長孔部との接続部近傍に、開口内側に向かって突出する突起部を有する
ことを特徴とする側突用エアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の側突用エアバッグ装置を備えたことを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
車両のボディの側壁部とシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグの膨張展開用のガスを長手方向一方側から噴出する略円筒形状のインフレータのガスを整流するインフレータのガス整流器であって、
前記インフレータの長手方向に沿って延出した延出部と、
前記延出部に形成され、前記インフレータを被取付部材に固定するために前記インフレータに一体的に設けられた固定ボルトが挿通される挿通孔と、
前記挿通孔に備えられ、前記インフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部と、を有し、
前記インフレータの長手方向一方側を覆う状態で前記インフレータに組み付けられる筒状部材である
ことを特徴とするインフレータのガス整流器。
【請求項6】
車両のボディの側壁部とシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグの膨張展開用のガスを長手方向一方側から噴出する略円筒形状のインフレータのガスを整流するガス整流器であって、前記インフレータの長手方向に沿って延出した延出部と、前記延出部に形成され、前記インフレータを被取付部材に固定するために前記インフレータに一体的に設けられた固定ボルトが挿通される挿通孔と、前記挿通孔に備えられ、前記インフレータの長手方向に沿って長孔状に形成された長孔部、及び前記長孔部の長手方向一方側端部に前記長孔部と略直角となるように形成された短孔部と、を有し、前記インフレータの長手方向一方側を覆う状態で前記インフレータに組み付けられる筒状部材であるガス整流器のインフレータへの組み付け方法であって、
前記固定ボルトを前記長孔部の長手方向他方側端部に挿通させる第1手順と、
前記固定ボルトが前記長孔部の長手方向一方側端部に移動するように、前記筒状部材を前記インフレータの長手方向他方側へ移動させる第2手順と、
前記固定ボルトが前記短孔部に移動するように、前記筒状部材を前記インフレータの周方向に回転させる第3手順と、
を有することを特徴とするガス整流器のインフレータへの組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−121469(P2011−121469A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280689(P2009−280689)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】