説明

偽造判定システム、および、個体識別情報読取方法

【課題】本発明の課題は、包装された医薬品を錠剤・カプセル・内包の単位で正規品と偽造品の判別を行うシステムを提供することである。
【解決手段】一意に決まる個体識別情報が記録された錠剤から前記個体識別情報を読取る個体識別情報読取装置と、前記個体識別情報を記録する薬剤識別サーバ装置と、前記錠剤から個体識別情報を前記個体識別情報読取装置で読取った個体識別情報と、薬剤識別サーバ装置に記録されている個体識別情報と一致するかを判定する偽造判定手段とを具備することを特徴とする偽造判定システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装された医薬品において、医薬品が正規品であることを判定するシステム、および、その方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、錠剤やカプセル剤や内包等の医薬品に識別コードやロゴをプリントすることによって、製薬のタイプ、投薬量(用量)、供給元の識別が可能なようにしてきた。また、それよって異種薬剤の混入を発見できるようにしている。

ここで、識別コードとは、錠剤やカプセルや内包に直接に印刷または刻印される文字や絵文字情報であって、会社コードと製品コードから構成される。会社コードは、日本薬連に登録された識別情報である。製品コードは、会社が管理するために用いる特定情報である。
【0003】
たとえば、特許文献1では、製薬にあたって、可視光の元では不可視な画像を食用インクを用いて錠剤にマーキングする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−89741号公報(段落0014−段落0030、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の技術では、錠剤に医薬品を特定する情報をマーキングしてから包装するまでのあいだに偽造品混入する恐れがあるという欠点があった。
あるいは、悪意をもった人が、偽造した医薬品を包装あるいは瓶詰めして市場に流通させてもこれを発見できないという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような点を解決するためになされたものであって、本発明の課題は、包装された医薬品を錠剤・カプセル・内包の単位で正規品と偽造品の判別を行うシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。すなわち、請求項1の発明は、一意に決まる個体識別情報が記録された錠剤から前記個体識別情報を読取る個体識別情報読取装置と、前記個体識別情報を記録する薬剤識別サーバ装置と、前記錠剤から個体識別情報を前記個体識別情報読取装置で読取った個体識別情報と、薬剤識別サーバ装置に記録されている個体識別情報と一致するかを判定する偽造判定手段とを具備することを特徴とする偽造判定システムである。
【0007】
ここで、錠剤に記録した個体識別情報により、個々の錠剤の正規品、偽造品を判定することが可能である。
【0008】
請求項2の発明は、前記個体識別情報が、文字列・符号列、もしくは、バーコード、もしくは、二次元コードであることを特徴とする請求項1に記載の偽造判定システムである。
【0009】
請求項3の発明は、前記個体識別情報が、レーザーを用いて錠剤に刻印することを特徴とする請求項1に記載の偽造判定システムである。
【0010】
請求項4の発明は、前記錠剤が、レーザーでの熱によるダメージで錠剤表面が溶けて、刻印が判別しにくくなることを抑止するようにフィルムコートすることを特徴とする請求項3に記載の偽造判定システムである。
【0011】
請求項5の発明は、前記錠剤に記録される前記個体識別情報が、インクジェットを用いて記録することを特徴とする請求項1に記載の偽造判定システムである。
【0012】
請求項6の発明は、前記個体識別情報が印字された錠剤を包装識別情報が記録された包装材に包装し、前記薬剤識別サーバには、包装識別情報と個体識別情報が対応付けられて記録されており、前記錠剤のから前記個体識別読取装置で読取った個体識別情報と前記錠剤を包装している前記包装識別情報の対が、前記薬剤識別サーバに記録されている包装識別情報と個体識別情報の対に一致するかを判定する偽造判定手段からなることを特徴とする請求項1から請求項5に記載の偽造判定システムである。
【0013】
請求項7の発明は、錠剤表面の曲面上に、印字あるいは刻印された錠剤を一意に識別する個体識別情報を読み取る方法において、前記個体識別情報の位置を探索する位置探索工程と、撮像した錠剤表面の個体識別情報撮影画像を明暗で二値化する二値化工程と、二値化画像から個体識別情報のサイズ情報と、向き情報を含む歪み情報を算出する歪み情報算出工程と、その歪み情報に基づき正規化処理を施す正規化処理工程と、を含んだ手順でなされることを特徴とする個体識別情報読取方法である。
【0014】
請求項8の発明は、前記位置探索を局部パターンを用いて実施し、その後の歪の計測を印字パターンの周囲を探索することで入手し、その周囲の歪み量から補正ベクトルを算出し、それを均等に内部に補間して割り当てることで内部も含めた歪補正を行う歪補正工程を含んだ手順でなされることを特徴とする請求項7に記載の個体識別情報読取方法である。
【0015】
請求項9の発明は、前記二値化画像にモホロジー処理を行い、雑音除去して印字パターンの内部を埋めてしまい、二値化画像の重心を求めて、二値化画像の中心のおよその位置を決めることで、二値化画像の処理範囲を限定する工程と、を含んだ手順でなされることを特徴とする請求項7に記載の個体識別情報読取方法である。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、錠剤・カプセル・内包の単位で医薬品を一意に個体識別して偽造品、正規品の判定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施の形態について、更に詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明による偽造判定システムの概要を説明する図である。偽造判定システム1は、薬剤識別サーバ装置100と、個体識別錠報情報読取装置200と薬剤(錠剤、カプセル、内包)801から構成される。薬剤(錠剤、カプセル、内包)801には、薬剤801の個体を一意に識別する個体識別情報が記録されている。薬剤識別サーバ装置100と個体識別情報読取装置200はネットワークに接続され、個体識別情報読取装置100は、薬剤(錠剤、カプセル、内包)801に記録されている個体識別錠報を読取り、薬剤識別サーバ装置100に記録されている個体識別情報と一致するかどうかによって、薬剤801が偽造品か正規品かを判定する。
【0019】
薬剤識別サーバ装置100は、コンピュータプログラムによって制御されるサーバコンピュータである。薬剤識別サーバ装置100は、個体識別情報が記憶されている。
【0020】
図2は、薬剤(錠剤、カプセル、内包)801に個体識別情報を記録する方法を説明する図である。
薬剤識別サーバ装置100と、薬剤製造検査装置300と、薬剤包装装置500とがネットワーク900接続されて構成される。
【0021】
薬剤製造検査装置300は、電子制御される製造機械である。薬剤製造検査装置300は、個体識別情報(以下、個体ID)が記録された薬剤801(錠剤、カプセル、内包)を製造する。
【0022】
薬剤包装装置500は、電子制御される包装機械である。薬剤包装装置500は、個体IDが記録された薬剤801の包装(たとえば、錠剤のPTP包装)を行う。
【0023】
錠剤の包装800には、包装物単位で識別をおこなうための包装識別情報を記録する。
【0024】
図3は、本発明による薬剤製造検査装置300の詳細な構成図である。
薬剤製造検査装置300は、印字制御装置310と、印字装置320と、錠剤製造装置330と、錠剤印字面整列機構装置340と、錠剤搬送制御装置350と、タイミング制御装置360と、検査装置380と、選別装置370と、搬送コンベア390から構成される。
錠剤製造装置330と、錠剤印字面整列機構装置340と、印字装置320と、検査装置380と、選別装置370とは、搬送コンベア390で接続されている。
【0025】
印字制御装置310は、データベースI/O部311と、印字データリスト用記憶部312と、印字タイミング制御部313と、印字パターン変換処理部314と、印字指示発行部315とを備える。
【0026】
印字データリスト用記憶部312は、ロット管理データベース301と、印字用データベース302とを保持する。
【0027】
錠剤製造装置330は、薬品成分用ホッパー332と、表面コーティング材料用ホッパー333とを備える。
薬品成分用ホッパー332は、薬品成分334を供給する。
表面コーティング材料用ホッパー333は、表面コーティング材料331を供給する。
タイミング制御装置360は、搬送位置読出部361と、印字用タイミング情報生成部362とを備える。
【0028】
錠剤製造装置330は、錠剤を製造して、その錠剤に識別コードを印刷または刻印する。
印字装置320は、錠剤に個体IDを記録する。
錠剤印字面整列機構装置340は、識別コードが記録されていない錠剤の面(以下、裏面)を表にして、搬送コンベア390に乗せる。
【0029】
なお、その錠剤は、印字装置320への搬送コンベア390にのせる前に表裏反転する必要がある。従来の錠剤製造方法では、これは必要ではなく、PTP包装物を見ても、必ずしもすべての面で識別コードが上を向いているわけではなく、それを成り行きでブリスターパッケージに格納している場合が多い。
【0030】
ところで、錠剤は、印字するときには、短い時間ではあるが静止している必要がある。
そこで、タイミング制御装置360の搬送位置読出部361は、錠剤搬送制御装置350から搬送位置情報を受け取るか、もしくは搬送コンベア390から位置情報を受けとる。
そして、印字用タイミング情報生成部362は、正確に印字位置で静止するように錠剤搬送制御装置350に命令を出す。
同時に、印字用タイミング情報生成部362は、識別コード印字済みの錠剤の移動を搬送コンベア390の移動停止時間に合わせて制御するようにタイミング情報を錠剤印字面整列装置340に送る。
さらに印字用タイミング情報生成部362は、印字制御装置310にも、そのタイミング情報を送る。
【0031】
印字制御装置310では、変換処理部314が、たとえば、個体IDを含む印字データから、2次元コード印字パターンやバーコードの印字パターン等の図形データに変換して、印字指示発行部315がこれをキャッシュしている。タイミング制御装置360からタイミング情報を受理した印字指示発行部315は、キャッシュしている印字パターンデータと印字指示を印字装置320に送って印字を実行させる。
【0032】
それと同時に、印字装置320の印字中に、次の印字の準備をする。印字データリスト記憶部312が印字データを変換部314に送り、変換処理部314は、これを受信して、変換処理が開始される。
【0033】
正常印字がされた旨の信号が印字装置320から返された場合には、次の印字処理の準備のために変換処理部314から変換終了した印字パターンデータを印字指示発行部315のキャッシュに配置する。
【0034】
そして、処理終了した時点で、データI/O部311は、印字用データベース302および必要に応じてロット管理データベース301から一定量のデータ(たとえば、ブロック単位などネットワーク転送に適した単位)を読み出してきて、印字用データとして印字データリスト用記憶部312に記憶させる。
【0035】
検査装置380は、錠剤に印字した個体IDの印刷状態を検査する。
選別装置370は、検査結果に従って、個体IDの印刷状態が良好であれば良品に選別して、個体IDの印刷状態が不良であれば不良品に選別する。
【0036】
図4は、本発明による錠剤印字面整列機構装置340の動作説明図である。
(a)は、錠剤印字面整列機構装置340を錠剤の表裏反転の動きを進行方向側面から見た説明図である。
まず、錠剤印字面整列機構装置340の錠剤搬送路は、表面に識別コード印刷を終えた錠剤の搬送路の幅が序々に絞られて、錠剤801を一列の直列に並べる。(図示せず)
そして、錠剤印字面整列機構装置の錠剤搬送路の底面342は、傾きが次第に大きくなるように形成されているので、直列に並べられた錠剤801が錠剤搬送路342を進むに従って、次第に傾きが大きくなり、最後に、錠剤801が反転させられて、裏返しとなり、裏面を上にさせる。
その反転した錠剤801を搬送コンベア390に乗せて次の工程に送る。
【0037】
なお、錠剤801の反転が失敗して、裏面が上にならなかった場合には、もう一度、錠剤印字面整列機構装置340の錠剤搬送路の初めに戻せばよい。
(b)は、錠剤印字面整列機構装置340を、進行方向正面から見た説明図である。
【0038】
図5は、本発明による検査装置380の詳細な構成図である。
検査装置380は、処理指示部381と、手順記憶部382と、データ通信部383と、誤り訂正処理部384と、認識処理部385と、パラメータ記憶部386と、照合パターン記憶部387と、画像記憶部388と、正規化処理部389と、照合処理部3870と、二値化処理部3871と、閾値設定部3872と、ノイズ除去部3873と、フィルタ処理部3874と、撮像素子3876と、レンズ3877と、から構成される。
【0039】
像素子3876は、CCDあるいはCMOSである。
撮像素子3876は、レンズ3877により拡大して錠剤表面にある印字パターン802を撮影して、画像データを画像記憶部388に記憶する。
なお、この読み取りに際しては、撮影中心が錠剤表面の中央となるようにし、印字が中央位置からズレが大きい場合には、印字不良としてはじくことが望ましい。
【0040】
閾値設定部3872は、画像記憶部388から、撮影されたままの画像データを読み出し、たとえば画像全体の画素値のヒストグラムを取り、判別分析を用いて閾値を設定する。
あるいは、閾値設定部3872は、撮影時の照度から定まる既定値で閾値を設定する。
【0041】
二値化処理部3871は、閾値設定部3872が設定した閾値を用いて、画像記録部388から撮影されたままの画像データを読み出して、それに対する閾値による2値化処理をここで行う。
【0042】
ノイズ除去部3873は、2値化処理を施した画像データに、モホロジー処理して、ごみを除去する。
【0043】
照合パターン記憶部387は、二次元コードやバーコードの印字パターンに応じた識別図形を記憶する。
識別図形とは、たとえば、QRコードであれば、3方隅の配置位置確定パターンである正方形が相当する。データマトリックスであれば二次元コードの矩形の途切れがない2辺の直線が相当する。
【0044】
照合処理部3870は、照合パターン記憶部387から読み出した識別図形と、2値化処理された画像データとを照合して、サイズと向きの情報を算出して、次に、照合結果からパターンの輪郭走査により歪み情報を算出する。
【0045】
ここで注意すべきは、錠剤表面の湾曲により歪みが生じている可能性があることである。従ってデータマトリックスにおいては識別図形の直線全体をいきなりパターンと採用するのではなく、その角近辺の特徴部を取り出して局部的パターンで照合するのが望ましい。
【0046】
正規化処理部389は、照合処理部3870が算出した歪み情報をもとに、入手画像を正規化する。正規化処理の詳細を説明する。
図形の歪みによる曲線を直線に戻さなくてはならないので、周囲の歪み量から補正ベクトルを定めて、それを均等に内部に補間して各点の補正ベクトルを定め、それに従って正規化の補正を行う。
【0047】
なお、正規化の補正は、2値化後の図形に対して行ってもよい。
あるいは、各画素の値から2値化後の図形を作成することが困難な場合には、2値化前の画像からパターン部の切り出しを行った画像に正規化処理を施してから、2値化処理を行ってもよい。
尚、上記の処理でパターンデータ照合処理において、2次元コードを読取り、モホロジー処理を施して印字パターンの詳細をつぶしてから、その重心を用いて、およその中心として、走査範囲を決めて、再度読取りをおこなってもよい。
そして雑音抑制のために、2値化前画像に対してフィルタ処理(たとえばメディアンフィルタ)を用いて行ってもよい。
【0048】
認識処理部385は、2値パターンデータの表現単位(=二次元コードの矩形)を求めて、二次元コードのサイズを算出して、2値パターンデータの各要素(白/黒のセル)の識別を行って2値表現データの推測値を求める。
【0049】
誤り訂正処理部384は、認識処理部385から得られた推測値に対して誤り訂正処理部384にて誤り訂正処理を施し、結果をデータ通信部383に送る。
【0050】
図6は、2次元コードを印刷した錠剤の例である。
錠剤の表面には、一般的に、識別コード(=製薬会社コードと製品コードの組み合わせ情報)が印刷されているので、錠剤の裏面に、個体IDを含む2次元コード802を印刷する。
2次元コード802は、インクジェット印刷、あるいは、レーザー刻印等を用いて錠剤に記録することが可能である。
【0051】
なお、インクジェット印刷による2次元コード802では、食紅のような可食性インクを用いる。
【0052】
レーザーで刻印する方式では、刻印した個体識別情報に、照明光を斜め方向から照射することで、刻印の明暗をはっきりと浮きださせて、カメラによる画像認識率が向上する。
また、レーザーで刻印する方式では、錠剤がコーティングされていることが必要である。
錠剤としてフィルムコート錠を利用することでレーザーの熱によるダメージを抑止できる。具体的には、フィルコート錠であれば、レーザーをあてた錠剤の表面が糖衣錠のように溶けて刻印が判別しにくくなることを抑止することが可能である。
たとえば、CO2レーザーを用いて刻印するテストを実施したところ、特にフィルムコート錠においては、良好な印字結果が得られている。なお、2次元コードの代わりに、バーコードを使用してもよい。
【0053】
図7は、PTP包装物800の説明図である。
PTP包装800には、2次元コード803が記録されている。
2次元コードは、PTP包装を識別あるいは特定する情報を含む情報が符号化されている。
なお、PTP包装される錠剤801には、個体IDを含む2次元コード802が記録されている。
PTP包装される錠剤801は、図10に例示したように、個体IDが露出しないように個体ID記録面を隠して包装してもよい。そうすることによって、偽造品を作る場合にPTP包装から錠剤を取りださなければ2次元コードを確認できないようにできる。
【0054】
PTP包装を識別あるいは特定する情報(包装識別情報)と、錠剤801の個体IDとは対応付けられている。従って、必要に応じて流通卸小売段階で、抜き取りチェックして偽造品が混入していないかを確認することができる。
【0055】
PTP包装の2次元コード803に符号化されているPTP包装を識別あるいは特定する情報は、錠剤に印字されている個体IDの組み合わせ情報から生成した計算可能な数値を用いてもよい。
たとえば、暗合化キー値をデータベースに格納しておき、そのキー値を用いて個体IDを組合せて個々のある暗号化処理を施した結果にハッシュをとったものを対応するPTP包装フィルムに印字することとしてもよい。
この方法では、キー値が分かっていれば、錠剤の個体IDを用いて値を算出して、PTP包装の2次元コード803の復号値と比較して、一致するか否かを判定することで、真贋判定して、偽造物を発見することができる。
【0056】
なお、PTP包装物はさらにパッケージ箱に収められる。そしてそのパッケージ箱は段ボールに梱包され、それがパレットに積載されて流通(卸)へと納入される。同様にバルク瓶に関しても、それが段ボールに詰められて、さらにパレットに積載されて流通(卸)へと納入される。
そのパッケージ箱や段ボール、パレットには2次元コードが印刷されたり、RFIDが添付されたりすることで、卸の搬入時にその確認ができる。
【0057】
図8は、個体IDの印字処理フローチャートである。
(1)個体IDのデータセットを受け取り、それを元に印字用データを生成し、それを印字用データベース302に格納する。(ステップS201)
このとき、個体IDにロット管理データベース301のデータを付加して、錠剤とロットとの関連付けておけば製造管理や不良時のリコール対策が可能である。
(2)薬品成分330と表面コーティング材料331を、それぞれ錠剤製造装置330の薬品成分用ホッパー332と、表面コーティング材料用ホッパー333に供給して、錠剤を製造する。(ステップS202)
(3)製造された錠剤に、識別コードを刻印する。(ステップS203)
(4)錠剤印字面整列機構装置340は、識別コードが刻印された錠剤の面を裏返す。(ステップS204)
(5)印字装置320は、裏返された錠剤に個体IDを用いて符号化した2次元コードを印字する。(ステップS205)
このとき、印字用の2次元コードの画像データをタイミングを合わせて生成してデータを印字インクジェットヘッドあるいはレーザー刻印照射ヘッドに送信する。
(6)個体IDを検査照合データとして保持する。(ステップS206)
【0058】
図9は、錠剤印字結果検査工程のフローチャートである。
(1)撮像素子3876は、レンズ3877を用いて錠剤表面にある二次元コードに焦点を合わせて撮影して、画像データを画像記憶部388に記憶する。(ステップS101)
この読み取りに際しては撮影中心が錠剤表面の中央となるようにし、印字の中心位置のズレが大きい場合には、印字不良としてはじくことが望ましい。
(2)次に、2値化処理部3871は、画像記憶部388から撮影されたままの画像データを読み出して、明暗情報の二値化を行う。(ステップS102)このとき、たとえば画像全体の画素値のヒストグラムを取り、判別分析を用いて閾値を設定してもよい。あるいは、撮影時の照度から定まる既定値で閾値を設定してもよい。そして、設定された閾値を2値化処理部3871に送り、2値化処理部3871は、画像記録部388から撮影されたままの画像データを読み出して、送られた閾値を用いて、2値化処理をここで行ってもよい。尚、2値化処理を施したのちに雑音除去のためにモホロジー処理などのごみ除去処理を加えてもよい。その処理はノイズ除去部3873にて行ってもよい。
二次元コードは、錠剤のほぼ中心に印字されているが、回転されており、微妙に中心がずれているケースがあることが想定できる。そのために次のステップで、印字位置の概算探索処理をして、回転を戻す処理と中心位置の決定を行う。
(3)照合処理部3870は、照合パターン記憶部387からその印字パターンに応じた識別図形を取り出して、画像データと照合して印字位置を算出する。(ステップS103)
ここで注意すべきは、錠剤表面の湾曲により歪みが生じている可能性があることである。従ってデータマトリックスにおいても直線全体をいきなりパターンと採用するのではなく、その角近辺の特徴部を取り出して局部的パターンで照合するのが望ましい。
(4)照合化処理部3870は、照合結果から、パターンの輪郭走査により、サイズ情報と向き情報を含む歪み情報を算出する。(ステップS104)
(5)正規化処理398は、得られた歪み情報を用いて、画像データの歪みを正す。(ステップS105)
ここで、曲線を直線に戻さなくてはならないので、周囲の歪み量から補正ベクトルを定めてそれを均等に内部に補間して各点の補正ベクトルを定め、それに従って補正を行う。
補正は、2値化後の画像データに対して行ってもよし、画像記憶部388の画像データに正規化処理を施し、再度2値化処理を行ってもよい。尚、上記の正規化処理では、パターンデータ照合をモホロジー処理を一旦施して印字パターンの詳細を一旦つぶして、2次元コードの重心を求めておよその中心を定めて、二次元コードの読取領域を決めて、再度読取をおこなうことも出来る。そして雑音抑制のために最初の2値化前画像に対してフィルタ処理(たとえばメディアンフィルタ)をフィルタ処理部3874を用いて行っても構わない。
(6)次にモードに従った画像からの情報のデコード処理607について述べる。(ステップS107)
認識処理部385は、2値画像パターンを求めて、サイズを算出して、得られたサイズから各要素の白/黒の識別を行って2値表現データを推測する。そして得られた2値表現データに対して誤り訂正処理部384にて誤り訂正処理を施す。
選別装置370は、認識処理結果を、保持された検査照合データと照合して、一致しているか否かを確認して、一致すれば良品として搬送コンベアに乗せて、一致しなければ不良ならば不良品として除去する。
【0059】
次にこれを包装する工程に関して説明する。
図10は、錠剤PTP包装工程のフローチャートである。
PTP包装のシートもしくはバルクの瓶詰めの際のラベルに振られたコードと錠剤印字コードとを対応付けおくことは、偽造防止上有効な措置である。
(1)選別装置370にて選別したあとで、その印字状態が良好と判定された錠剤をPTP包装単位に分ける処理を行う。(ステップS401)
(2)錠剤の二次元コードを撮影できるように、二次元コードが記録される面を表にする。(ステップS402)
(3)二次元コードを撮影できるように面を表にした錠剤を撮影して、個体IDを復号する。(ステップS403)
(4)PTP包装される錠剤の個体IDを用いて、PTP包装の識別情報を作成して、両者を対応付ける。(ステップS404)
(5)PTP包装の識別情報を印刷するか否かを判定する。(ステップS405)
(6)そしてPTPパッケージ印字を行う場合には、PTP包装される各錠剤の個体IDに対応付けられたPTP包装の識別情報を、PTP包装材に印字する。(ステップS406)
(7)PTP包装の識別情報を印字されたPTP包装材を用いて、対応する錠剤を包装する。(ステップS407)このとき、錠剤の面は、PTP包装したときに、二次元コードが隠れるように面を揃える。これは、外から観察したのでは二次元コードの情報を読み取れないようにするためである。従って、PTP包装を開封しなくては、完全な偽造物を作ることは出来ないことを実現できる。
【0060】
図11は、バルク瓶詰め工程のフローチャートである。
同様にバルク瓶詰めに関しては、錠剤の瓶単位選別工程501で瓶に封入する錠剤をまとめて、さらにバルク瓶を識別する情報をラベル、RFIDに記録する。
(1)選別装置370にて選別したあとで、その印字状態が良好と判定された錠剤を瓶詰め単位に分ける処理を行う。(ステップS501)
(2)錠剤の二次元コードを撮影できるように、二次元コードが記録される面を表にする。(ステップS502)
(3)二次元コードを撮影できるように面を表にした錠剤を撮影して、個体IDを復号する。(ステップS503)
(4)瓶詰めされる錠剤の個体IDを用いて、瓶詰め識別情報を作成して、両者を対応付ける。(ステップS504)
(5)瓶詰め識別情報をラベル印刷するか否かを判定する。(ステップS505)
(6)ラベルにその印字を行う場合には、ラベル印字する。(ステップS506)
(7)瓶詰め識別情報をRFIDに記録するか否かを判定する。(ステップS507)
(8)RFIDに記録する場合には、瓶詰め識別情報をRFIDに記録する。(ステップS508)
(9)錠剤を瓶詰めする。(ステップS509)
(10)印刷したラベルを薬瓶に貼り、RFIDを取り付ける。(ステップS510)なお、ラベル印字に変えて、もしくはラベル印字と並行して、RFIDへのデータ格納工程508により、RFIDにその紐付けられた情報を格納するという方法をとることも出来る。なお、ラベル印字とRFIDの一方だけを実施してもよい。ここでは、最後に薬瓶にラベルを貼っているが工程上瓶詰めをあとに持ってくるなどの工程入れ替えは適宜可能である。
【0061】
(実施例1)
図12は、二次元コードを錠剤の側面に記録した例である。
錠剤801の側面に、個体IDを含む二次元コード802を記録した例である。
【0062】
(実施例2)
図13は、異なる表裏反転方式の錠剤印字面整列機構装置340の動作説明図である。
この方式では、錠剤801の片側を押し上げるバー903を用いて錠剤を反転させて、搬送コンベア902に裏返して乗せている。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による偽造判定システム1の概要を説明する図
【図2】本発明による個体識別情報記録方法を示す図
【図3】本発明による薬剤製造検査装置300の詳細な構成図
【図4】本発明による錠剤印字面整列機構装置340の動作説明図
【図5】本発明による検査装置380の詳細な構成図
【図6】二次元コードを印刷した錠剤の例
【図7】PTP包装物800の説明図
【図8】個体IDの印字処理フローチャート
【図9】錠剤印字結果検査工程のフローチャート
【図10】錠剤PTP包装工程のフローチャート
【図11】は、バルク瓶詰め工程のフローチャート
【図12】(実施例1)二次元コードを錠剤の側面に記録した例
【図13】(実施例2)異なる表裏反転方式の錠剤印字面整列機構装置340の動作説明図
【符号の説明】
【0064】
1 偽造判定システム
100 薬剤識別サーバ装置
200 個体識別情報読取装置
300 薬剤製造検査装置
301 ロット管理データベース
302 印字用データベース
310 印字制御装置
311 データベースI/O部
312 印字データリスト用記憶部
313 印字タイミング制御部
314 印字パターン変換処理部
315 印字指示発行部
320 印字装置
330 錠剤製造装置
340 錠剤印字面整列機構装置
342 錠剤搬送路の底面
350 錠剤搬送制御装置
360 タイミング制御装置
361 搬送位置読出部
362 印字用タイミング情報生成部
370 選別装置
380 検査装置
381 処理指示部
382 手順記憶部
383 データ通信部
384 誤り訂正処理部
385 認識処理部
386 パラメータ記憶部
387 照合パターン記憶部
3870 照合処理部
3871 二値化処理部
3872 閾値設定部
3873 ノイズ除去部
3874 フィルタ処理部
3876 撮像素子
3877 レンズ
388 画像記憶部
389 正規化処理部
390 搬送コンベア
500 薬剤包装装置
800 錠剤の包装、錠剤のPTP包装
801 個体IDが記録された薬剤



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一意に決まる個体識別情報が記録された錠剤から前記個体識別情報を読取る固体識別情報読取装置と、
前記個体識別情報を記録する薬剤識別サーバ装置と、
前記錠剤から個体識別情報を前記固体識別情報読取装置で読取った固体識別情報と、薬剤識別サーバ装置に記録されている固体識別情報が一致するかを判定する偽造判定手段と
を具備することを特徴とする偽造判定システム。
【請求項2】
前記個体識別情報は、文字列・符号列、バーコード、もしくは、二次元コードであることを特徴とする請求項1に記載の偽造判定システム。
【請求項3】
前記個体識別情報は、レーザーを用いて錠剤に刻印することを特徴とする請求項1に記載の偽造判定システム。
【請求項4】
前記錠剤は、レーザーでの熱によるダメージで錠剤表面が溶けて、刻印が判別しにくくなることを抑止するようにフィルムコートすることを特徴とする請求項3に記載の偽造判定システム。
【請求項5】
前記錠剤に記録される前記個体識別情報は、インクジェットを用いて記録する
ことを特徴とする請求項1に記載の偽造判定システム。
【請求項6】
前記個体識別情報が印字された錠剤を包装識別情報が記録された包装材に包装し、
前記薬剤識別サーバには、包装識別情報と個体識別情報が対応付けられて記録されており、前記錠剤のから前記個体識別読取装置で読取った個体識別情報と前記錠剤を包装している前記包装識別情報の対が、前記薬剤識別サーバに記録されている包装識別情報と個体識別情報の対に一致するかを判定する偽造判定手段からなることを特徴とする請求項1から請求項5に記載の偽造判定システム。
【請求項7】
錠剤表面の曲面上に、印字あるいは刻印された錠剤を一意に識別する個体識別情報を読み取る方法において、
前記個体識別情報の位置を探索する位置探索工程と、
撮像した錠剤表面の個体識別情報撮影画像を明暗で二値化する二値化工程と、
二値化画像から個体識別情報のサイズ情報と、向き情報を含む歪み情報を算出する歪み情報算出工程と、
その歪み情報に基づき正規化処理を施す正規化処理工程と、を含んだ手順でなされることを特徴とする個体識別情報読取方法。
【請求項8】
前記位置探索を局部パターンを用いて実施し、その後の歪の計測を印字パターンの周囲を探索することで入手し、その周囲の歪み量から補正ベクトルを算出し、それを均等に内部に補間して割り当てることで内部も含めた歪補正を行う歪補正工程
を含んだ手順でなされることを特徴とする請求項7に記載の個体識別情報読取方法。
【請求項9】
前記二値化画像にモホロジー処理を行い、雑音除去して印字パターンの内部を埋めてしまい、二値化画像の重心を求めて、二値化画像の中心のおよその位置を決めることで、二値化画像の処理範囲を限定する工程と、
を含んだ手順でなされることを特徴とする請求項7に記載の個体識別情報読取方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−279060(P2008−279060A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125724(P2007−125724)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】