説明

像担持体駆動機構および画像形成装置

【課題】カラー画像の色ずれ発生を有効に抑えた上で、フライホイルの過装備を解消して部品コストの低減化に寄与することができるとともに、装置のコンパクト化に逆行することがないようにする。
【解決手段】カラー印刷用として複数の感光体ドラム121を備えた画像形成装置10に適用される感光体ドラム駆動機構20であって、各感光体ドラム121のそれぞれに対応した各専用の駆動モータ30と、各駆動モータ30の駆動力を、各感光体ドラム121のドラム軸121a回りの回転に伝達するギヤ機構40と、各ドラム軸121aに同心で付設された回転均し部材としての複数のフライホイル50とを備えて構成されている。そして、フライホイル50は、トナーの色に応じてその大きさを変化させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像情報に基づき周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ったトナー像を形成させるべく並設された複数の像担持体に駆動力を伝達する像担持体駆動機構およびこの機構が適用されたカラー印刷用の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー印刷用の画像形成装置は、各色に応じて並設され、ドラム心回りに回転可能とされた複数の感光体ドラム(像担持体)と、各感光体ドラムの周面に一様な電荷を付与する複数の帯電装置と、帯電処理が施された各感光体ドラムの周面に画像情報に応じた光を照射して当該各周面に静電潜像を形成させる露光装置と、回転している各感光体ドラムの周面に対応した色のトナーを供給して当該周面に各色のトナー像を形成させる複数の現像装置と、周回することにより表面に各感光体ドラムの周面の各色のトナー像が塗り重ね状態で転写される転写ベルトとを備えている。
【0003】
転写ベルト上に形成されたカラーのトナー画像は、用紙貯留部から搬送されてきた用紙に転写された後、定着装置で加熱による定着処理が施され、これにより得られたカラー印刷済みの用紙は、排紙トレイへ排出される。
【0004】
このような画像形成装置おいて、複数の感光体ドラムを同期回転させるべく、像担持体駆動機構が採用されている。この駆動機構は、各感光体ドラムを一括して回転させる1台の駆動モータ、あるいは各感光体ドラム毎に対応して設けられる複数の駆動モータと、この駆動モータと各感光体ドラムとの間に介設されるギヤ機構と、各感光体ドラムのドラム軸に付設された回転均し部材としての円盤状の複数のフライホイルとを備えている。
【0005】
各感光体ドラムは、ギヤ機構におけるギヤ歯のかみ合わせの不調等によって生じる円滑でない回転動作が、フライホイルの回転による慣性力によって吸収され、結果として各感光体ドラムは、ムラなく円滑に回転することができ、ひいては感光体ドラムの周面のトナー画像が適正に転写ローラに転写されることになる。このようなフライホイルについては、例えば、特許文献1および2に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−218192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載されたフライホイルは、4つの感光体ドラム(シアン用、マゼンタ用、イエロー用およびブラック用感光体ドラム)のいずれに付設されたものも、全て同一形状および同一重量に設定されている。
【0008】
しかしながら、4つの感光体ドラムの内でブラック用感光体ドラムについては、視覚性が強烈なブラックトナーの画像が形成されるものであるため、回転ムラのない均一な回転が要求されるのに対し、シアン用、マゼンタ用およびイエロー用感光体ドラムについては、これらの色のトナーの視覚性が穏やかであって、画像に少々の位置狂いが存在しても視覚的に訴えかける力が弱いため、それ程精密に回転ムラを均す必要がない。
【0009】
それに拘わらず、従来は、ブラック用の感光体ドラム以外の4つの感光体ドラムのいずれに対してもブラックドラムの例に倣って同一形状および同一重量のフライホイルが適用されていたため過装備になっており、結果として分部品コストが嵩むばかりか、装置のコンパクト化に逆行するという問題点が存在した。
【0010】
本発明は、従来のかかる問題点を解消するためになされたものであって、カラー画像の色ずれ発生を有効に抑えた上で、フライホイルの過装備を解消して部品コストの低減化に寄与することができるとともに、装置のコンパクト化に逆行することがない像担持体駆動機構およびこの機構が適用されたカラー印刷用の画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明(像担持体駆動機構)は、画像情報に基づき周面に各色のトナーのトナー像をそれぞれ形成させる軸心回りに回転可能な複数の像担持体が並設されてなるカラー印刷が可能な画像形成装置に適用される像担持体駆動機構であって、所定の駆動モータの駆動力を、駆動軸を介して前記各像担持体の各軸心回りの回転にそれぞれ伝達するギヤ機構と、前記各軸心または前記駆動軸に同心で付設された回転均し部材としての複数のフライホイルとを備えて構成され、前記フライホイルは、前記トナーの色に応じてその大きさを変化させていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明において、「フライホイルの大きさを変化させる」とは、形状的に大きさを変化させることはもちろんであるが、形状の大小に拘わらず材質的に回転の慣性力の大きさを変化させることも含まれる。
【0013】
かかる構成によれば、表面に形成されたトナー像の位置ずれが最も目立ち易い(すなわち視覚性が最も強い)トナーが使用される像担持体を対象としたフライホイルを最も大きく設定するとともに、視覚性の強さの順にフライホイルの大きさを順次小さくしていくなど、トナーの色に応じてその大きさを変化させることによって、従来のように最も目立ち易い種類のトナーに準じて全てのフライホイルの大きさを一定に設定する場合に比較し、カラー画像の色ずれを全体的に見立たせないようにした上で、フライホイルの大きさを従来より小さくし得たことで部品コストの低減化に貢献することができるとともに、装置のコンパクト化に逆行するような不都合の発生が有効に回避される。
【0014】
請求項2記載の発明(像担持体駆動機構)は、請求項1記載の発明において、前記像担持体は、マゼンタトナー用、シアントナー用、イエロートナー用およびブラックトナー用の4種類が採用されるとともに、前記フライホイルは、前記各像担持体にそれぞれ対応してマゼンタトナー用、シアントナー用、イエロートナー用およびブラックトナー用の4種類が採用され、前記ブラックトナー用のフライホイルがマゼンタトナー用、シアントナー用およびイエロートナー用フライホイルより大きく設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
かかる構成によれば、最も視覚性が強いブラックトナー用のフライホイルが他のものに比べて大きく設定されることにより、ブラックトナー用の像担持体は、最も効果的にムラのない均一回転が確保されるため、像担持体上に位置ずれが目立たないトナー画像が形成される。
【0016】
請求項3記載の発明(像担持体駆動機構)は、請求項2記載の発明において、前記ブラックトナー用のフライホイルを除く他のフライホイルは、その大きさがマゼンタトナー用、シアントナー用およびイエロートナー用の順番で漸次小さく設定されていることを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、ブラックトナー用のフライホイルを除いてトナーの視覚性の大きさの順で、各フライホイルの大きさが漸次小さくされているため、部品コストをさらに抑えた上で、像担持体上のカラー画像は、さらに位置ずれや色ずれ目立たなくなる。
【0018】
請求項4記載の発明(像担持体駆動機構)は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記フライホイルは、ブラックトナー用、マゼンタトナー用、シアントナー用およびイエロートナー用のものが互いに干渉し合わないように前記軸心または前記駆動軸への装着位置が設定されていることを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、他のフライホイルの大きさに制約されることなく、各フライホイルの大きさを設定することができるため、フライホイル設計の自由度が向上する。
【0020】
請求項5記載の発明(画像形成装置)は、画像情報に基づき周面に各色のトナーのトナー像をそれぞれ形成させる軸心回りに回転可能な複数の像担持体が並設されてなる画像形成装置であって、請求項1乃至4のいずれかに記載の像担持体駆動機構が適用されていることを特徴とするものである。
【0021】
かかる構成によれば、画像形成装置は、像担持体駆動機構が備えた作用効果を享受し得るものになり、結果として色ずれのない適正な用紙上の印刷画像を確保し得た上で、装置コストの高騰および装置の大型化が回避される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る像担持体駆動機構によれば、従来のように最も目立ち易い種類のトナーに準じて全てのフライホイルの大きさを一定に設定する場合に比較し、カラー画像の色ずれを全体的に見立たせないようにした上で、フライホイルの大きさを全体的に従来より小さくすることができるため、部品コストの低減化に貢献することができるとともに、装置のコンパクト化に逆行するような不都合の発生を有効に回避することができる。
【0023】
本発明に係る画像形成装置によれば、当該画像形成装置を本発明に係る像担持体駆動機構が備えた作用効果を享受し得るものにすることができ、結果として色ずれのない適正な用紙上の印刷画像を確保し得た上で、装置コストの高騰および装置の大型化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る感光体ドラム駆動機構が適用された画像形成装置の内部構造の一実施形態を説明するための正面断面視の説明図である。
【図2】本発明に係る感光体ドラム駆動機構の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明に係る感光体ドラム駆動機構(像担持体駆動機構)20が適用された画像形成装置10の内部構造の一実施形態を説明するための正面断面視の説明図である。なお、図1においてX方向を左右方向といい、特に−Xを左方、+Xを右方という。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置10は、プリンタとして使用されるものであり、箱形を呈した装置本体11と、この装置本体11の側面に対して開閉可能に付設されたカバー体19とを備えている。
【0027】
前記装置本体11には、コンピュータ等の外部機器から伝送された画像情報に基づき画像を形成する画像形成部12と、この画像形成部12によって形成され、用紙Pに転写されたトナー画像に定着処理を施す定着部13と、転写用の用紙を貯留する用紙貯留部14と、画像形成部12へトナーを補給するトナー補給部15が内装されているとともに、当該装置本体11の上部に定着処理後の用紙Pが排出される用紙排出部16が形成されている。
【0028】
前記装置本体11の上面適所には、用紙Pの出力条件等を入力操作するための図略の操作パネルが設けられている。この操作パネルには、図略の電源キーやスタートボタン、さらには出力条件を入力するための各種のキー等が設けられている。
【0029】
前記画像形成部12は、用紙貯留部14から給紙された用紙Pにトナー画像を形成させる部分であり、本実施形態では、上流側(図1における左側)から下流側へ向けて順次配設された、マゼンタ色のトナー(現像剤)を用いるマゼンタ用ユニット12Mと、シアン色のトナーを用いるシアン用ユニット12Cと、イエロー色のトナーを用いるイエロー用ユニット12Yと、ブラック色のトナーを用いるブラック用ユニット12Kとが備えられている。
【0030】
そして、前記各ユニット12M,12C,12Y,12Kには、感光体ドラム(像担持体)121および現像装置122がそれぞれ備えられている。感光体ドラム121は、周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ったトナー像を形成させるためのものである。そして、各感光体ドラム121は、図1において時計方向へ向けて回転しつつ対応した現像装置122からトナーの供給を受ける。各現像装置122には、前記トナー補給部15からトナーが補給される。このような各感光体ドラム121(マゼンタ用〜ブラック用感光体ドラム121M、121C、121Y、121K)は、後述の感光体ドラム駆動機構20(図2)によって回転される。
【0031】
各感光体ドラム121の直下位置には帯電装置123がそれぞれ設けられているとともに、各帯電装置123のさらに下方位置には露光装置124が設けられている。そして、各感光体ドラム121は、前記帯電装置123によって周面が一様に帯電され、コンピュータ等から入力された画像データに基づく各色に対応したレーザー光が前記露光装置124から帯電後の感光体ドラム121の周面に照射される。これにより、各感光体ドラム121の周面に静電潜像が形成される。かかる静電潜像に現像装置122からトナーが供給されることにより、感光体ドラム121の周面にトナー像が形成される。
【0032】
感光体ドラム121の上方位置には、当該各感光体ドラム121に当接するように駆動ローラ125aおよび従動ローラ125b間に張設された転写ベルト125が設けられている。この転写ベルト125は、各感光体ドラム121に対応して設けられた転写ローラ126によって感光体ドラム121の周面に押し付けられた状態で各感光体ドラム121と同期しながら駆動ローラ125aと従動ローラ125bとの間を周回する。
【0033】
従って、転写ベルト125が周回することによりその表面に対しマゼンタ用ユニット12Mの感光体ドラム121によるマゼンタトナーのトナー像の転写が行なわれ、ついで転写ベルト125の同一位置にシアン用ユニット12Cの感光体ドラム121によるシアントナーのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、ついで転写ベルト125の同一位置にイエロー用ユニット12Yの感光体ドラム121によるイエロートナーのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、最後のブラック用ユニット12Kの感光体ドラム121によるブラックトナーのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、これによって転写ベルト125の表面にカラーのトナー像が形成される。この転写ベルト125の表面に形成されたカラーのトナー像が用紙貯留部14から搬送されてきた用紙Pに転写されることになる。
【0034】
そして、各感光体ドラム121の図1における左方位置には当該感光体ドラム121の周面の残留トナーを除去して清浄化するクリーニング装置127が設けられている。クリーニング装置127によって清浄化処理された感光体ドラム121の周面は、新たな帯電処理のために帯電装置123へ向かうことになる。
【0035】
クリーニング装置127で感光体ドラム121の周面から取り除かれた廃トナーは、所定の経路を通って図略のトナー回収ボトルに回収され、貯留される。
【0036】
画像形成部12の図1における右方位置には、前記カバー体19の左面に沿うように上下方向に延びた用紙搬送路111が形成されている。この用紙搬送路111には、適所に搬送ローラ対112が設けられ、用紙貯留部14から繰り出された用紙は、この搬送ローラ対112の駆動で駆動ローラ125aに掛け回されている転写ベルト125へ向けて搬送される。
【0037】
かかる用紙搬送路111には、駆動ローラ125aと対向した位置に転写ベルト125の表面と当接した第2転写ローラ113が設けられ、用紙搬送路111を搬送されつつある用紙Pが転写ベルト125と第2転写ローラ113とに押圧挟持されることによって転写ベルト125上のトナー像が当該用紙Pに転写される。
【0038】
前記定着部13は、画像形成部12で転写された用紙上のトナー像に対し定着処理を施すものである。かかる定着部13は、内部にハロゲンランプ等の通電発熱体が設けられた定着ローラ131と、右方でこの定着ローラ131と対向配置された加圧ローラ132とを備えている。
【0039】
そして、転写ベルト125と第2転写ローラ113との間のニップ部を通過することにより転写ベルト125上のトナー像が転写された状態の用紙Pは、定着部13で定着ローラ131と加圧ローラ132との間のニップ部を通過され、このとき定着ローラ131からの熱を得て定着処理が施される。
【0040】
定着処理の完了したカラー画像付の用紙Pは、定着部13の上部から延設された排紙搬送路114を通って装置本体11の頂部に設けられた用紙排出部16の排紙トレイ161へ向けて排出されることになる。
【0041】
前記用紙貯留部14は、装置本体11内における露光装置124より下方位置に挿脱可能に装着された用紙トレイ141を備えている。用紙トレイ141には用紙束が貯留される。
【0042】
かかる用紙トレイ141は、上面が全面開口の箱体を備えて構成され、複数枚の用紙Pが積層されてなる用紙束P1が貯留可能になっている。かかる用紙トレイ141に貯留された用紙束P1の最上位の用紙Pは、下流端(図1における右端)の上面が用紙束P1からピックアップローラ142の駆動で用紙搬送路111へ向けて繰り出されるようになっており、1枚ずつ繰り出され用紙Pは、搬送ローラ対112の駆動で用紙搬送路111を通って画像形成部12における第2転写ローラ113と転写ベルト125との間のニップ部へ向けて送り込まれる。
【0043】
前記トナー補給部15には、画像形成部12の各ユニット12M,12C,12Y,12Kにそれぞれ対応して4台のトナーカートリッジ151(マゼンタ用カートリッジ151M、シアン用カートリッジ151C、イエロー用カートリッジ151Yおよびブラック用カートリッジ151K)が設けられている。そして、各ユニット12M,12C,12Y,12Kの現像装置122には、残量が少なくなると対応した各カートリッジ151M,151C,151Y,151Kからトナーが補給される。
【0044】
前記カバー体19は、閉止姿勢S1(図1に実線で表示)と開放姿勢S2との間で姿勢変更することにより画像形成部12、定着部13および用紙貯留部14の図1における右面側に対して開閉可能とされている。かかるカバー体19は、普段、閉止姿勢S1に姿勢設定され、これによって画像形成部12の図1における右面との間に用紙貯留部14からの用紙を第2転写ローラ113へ向けて搬送するための用紙搬送路111が形成される。
【0045】
そして、搬送ローラ対112や定着部13で紙詰りが発生したときカバー体19が開放され(すなわち、閉止姿勢S1から開放姿勢S2へ姿勢変更され)、これによって外部に露出した画像形成部12および定着部13から詰まった用紙を容易に取り除くことができる。
【0046】
このようなカバー体19は、用紙搬送路111および排紙搬送路114に沿うように図1における正面視の形状が逆S字状に形成されているとともに、下端部が装置本体11の所定のフレームに支持された支持軸191回りに回動可能とされ、閉止姿勢S1と開放姿勢S2との間で姿勢変更する。
【0047】
なお、カバー体19には、その内部に第2転写ローラ113を通過した用紙Pを反転させた後、用紙搬送路111へ戻して裏面側にも印刷処理を施すための両面印刷用の反転搬送路が設けられているが、その説明は省略する。
【0048】
図2は、本発明に係る感光体ドラム駆動機構20の一実施形態を示す斜視図である。なお、図2においてX方向を左右方向、Y方向を前後方向といい、特に−Xを左方、+Xを右方、−Yを前方、+Yを後方という。
【0049】
図2に示すように、感光体ドラム駆動機構20は、マゼンタ用、シアン用、イエロー用およびブラック用感光体ドラム121M,121C,121Y,121Kのそれぞれを対象として基本的に同一の構成(正確には、後述のフライホイル50の大きさを除いて同一の構成)で形成された、マゼンタ用駆動機構20M、シアン用駆動機構20C、イエロー用駆動機構20Yおよびブラック用駆動機構20Kを有している。
【0050】
各感光体ドラム駆動機構20(マゼンタ用〜ブラック用駆動機構20M,20C,20Y,20Kのそれぞれ)は、前後方向に延びるように横置きされた駆動モータ30と、この駆動モータ30と前記感光体ドラム121との間に介設されたギヤ機構40と、前記駆動モータ30の駆動軸31に同心で一体回転可能に取り付けられたフライホイル50とを備えて構成されている。
【0051】
前記駆動モータ30は、各感光体ドラム121(マゼンタ用、シアン用、イエロー用およびブラック用感光体ドラム121M,121C,121Y,121K)の後方の若干上部位置において、前後方向に延びるように横置きで据え付けられている。かかる駆動モータ30の駆動軸31は、当該駆動モータ30の前面および後面からそれぞれ外方に向かって突設されている。そして、駆動モータ30の前面から前方へ向けて突出された駆動軸31の先端に前記ギヤ機構40が接続されているとともに、駆動モータ30の後面から後方へ向けて突出された駆動軸31に前記フライホイル50が同心で一体回転可能に取り付けられている。
【0052】
前記ギヤ機構40は、駆動モータ30の前端に同心で一体回転可能に取り付けられた駆動ギヤ41と、この駆動ギヤ41に噛合する左右一対のアイドルギヤ42と、これら一対のアイドルギヤ42に噛合して回転を感光体ドラム121に伝達する各1つの目標ギヤ43とを備えている。
【0053】
前記各一対のアイドルギヤ42は、それぞれ同一径寸法でかつ同一歯数に設定されている。かかる各アイドルギヤ42は、駆動ギヤ41より大径に設定され、駆動ギヤ41の左右においてそれぞれアイドルギヤ軸411回りに回転可能に軸支されている。かかるアイドルギヤ42の歯数は、駆動ギヤ41の歯数の整数倍に設定されている。
【0054】
こうすることで、駆動ギヤ41の各歯が噛合するアイドルギヤ42の歯列を数種類とすることができ、これによって駆動ギヤ41の任意の歯は、アイドルギヤ42の複数の歯列におけるそれぞれ決まった歯と常に噛み合うことになるため(具体的には、例えばアイドルギヤ42の歯数が駆動ギヤ41の歯数の3倍であった場合、駆動ギヤ41の任意の歯が噛合するアイドルギヤ42の歯は3種類のみとなるため)、アイドルギヤ42の歯数が駆動ギヤ41の歯数の整数倍になっていない場合(すなわち、駆動ギヤ41の各歯が噛合するアイドルギヤ42の歯列が回転に応じて変化する場合)に比較し、駆動ギヤ41の駆動力をより安定した状態でアイドルギヤ42に伝達することができる。
【0055】
前記目標ギヤ43は、一対のアイドルギヤ42の直下位置において、これら一対のアイドルギヤ42にそれぞれ噛合されている。かかる目標ギヤ43は、前後方向に延びる目標ギヤ軸431回りに同心で一体回転可能に軸支されている。かかる目標ギヤ軸431は、目標ギヤ43の中心位置から前方に向かって突設され、その前端にジョイント部432が設けられている。前記各感光体ドラム121には、このジョイント部432およびドラム軸121aを介して目標ギヤ軸431の回転が伝達される。
【0056】
本実施形態に係るこのような構成のギヤ機構40によれば、感光体ドラム121に回転を伝達する目標ギヤ43は、駆動ギヤ41に噛合した一対のアイドルギヤ42に噛合されている。従って、従来のように、アイドルギヤ42と目標ギヤ43との間において単に1個所のみで噛合されている場合に比較し、目標ギヤ43およびアイドルギヤ42は互いに相手方から受ける負荷がそれぞれ軽減されるため、ギヤ歯の破損を防止することができ、結果としてギヤ機構の寿命を延ばすことができる。
【0057】
また、目標ギヤ43が複数のアイドルギヤ42に噛合されていることにより、感光体ドラム121は、当該ギヤ機構40を介して安定した状態で回転することができる。
【0058】
前記フライホイル50は、ギヤ機構40における各ギヤのギヤ歯のかみ合わせの不調等によって生じる円滑でない駆動軸31の回転動作、および感光体ドラム121のドラム軸121aのムラがある円滑でない回転動作を、当該フライホイルの回転による慣性力によって吸収させるためのものであり、鉛、亜鉛、鉄等の比重の大きな金属材料によって円盤状に形成されている。
【0059】
かかるフライホイル50は、マゼンタ用感光体ドラム121Mに対応したマゼンタ用フライホイル50Mと、シアン用感光体ドラム121Cに対応したシアン用フライホイル50Cと、イエロー用感光体ドラム121Yに対応したイエロー用フライホイル50Yと、ブラック用感光体ドラム121Kに対応したブラック用フライホイル50Kとの4種類が採用されている。
【0060】
そして、本実施形態においては、これら各フライホイル50の厚み寸法が同一に設定された上で、ブラック用フライホイル50Kの径寸法が他の3つに比べて最大に設定され(すなわち、最も大きく設定され)、マゼンタ用フライホイル50M、シアン用フライホイル50Cおよびイエロー用フライホイル50Yの順で径寸法が漸減されている。
【0061】
このようにされるのは、ブラックトナーによって形成される黒色のトナー像は、視覚性が非常に強く、ブラック用感光体ドラム121K上でトナー画像に僅かな位置ずれが生じていても目立ち易い。そこで、ブラックトナーのトナー像の位置ずれを確実に防止するべくブラック用フライホイル50Kの径寸法を4つのフライホイル50の中で最大にし、その大きな回転の慣性力をブラック用感光体ドラム121Kに作用させている。
【0062】
これに対し、イエロートナーによるトナー像は、たとえイエロー用感光体ドラム121Y上で位置ずれがあっても最も目立ち難いため、イエロー用感光体ドラム121Yの回転ムラを厳密に抑える必要性は少ない。そこで、イエロー用フライホイル50Yの径寸法を4つのフライホイル50の中で最小に設定している。
【0063】
なお、マゼンタトナーによるトナー像の視覚性は、ブラックトナーのトナー像の視覚性より弱く、シアントナーのトナー像の視覚性はマゼンタトナーのトナー像の視覚性よりさらに弱いがイエロートナーのトナー像のそれより強い。因みに、これらの視覚性の強弱については、多くの官能試験の結果に基づいて導き出されている。
【0064】
結果として、フライホイル50の径寸法は、ブラック用フライホイル50K、マゼンタ用フライホイル50M、シアン用フライホイル50C、イエロー用フライホイル50Yの順で小さくなっている。
【0065】
以上詳述したように、本実施形態に係る感光体ドラム駆動機構20は、カラー印刷用として複数の感光体ドラム121を備えた画像形成装置10に適用されるものであり、各感光体ドラム121(マゼンタ用、シアン用、イエロー用およびブラック用感光体ドラム121M,121C,121Y,121K)のそれぞれに対応した各専用の駆動モータ30と、各駆動モータ30による駆動軸31の駆動回転を、各感光体ドラム121のドラム軸121a回りの回転に伝達するギヤ機構40と、各駆動軸31に同心で付設された回転均し部材としての複数のフライホイル50とを備えて構成されている。そして、フライホイル50は、トナーの色に応じてその大きさを変化させている。
【0066】
具体的には、視覚性の強さの順に従い、その大きさ(本実施形態では径寸法)がブラックトナー用、マゼンタトナー用、シアントナー用およびイエロートナー用の順番で小さくされている。
【0067】
かかる構成によれば、表面に形成されたトナー像の位置ずれが最も目立ち易い、すなわち視覚性が最も強いブラックトナーが使用されるブラック用感光体ドラム121Kを対象としたブラック用フライホイル50Kを最も大きく設定するとともに、視覚性の強さの順にフライホイル50の大きさを順次小さくしているため、従来のようにブラック用フライホイル50Kに準じて全てのフライホイル50の大きさを一定に設定する場合に比較し、カラー画像の色ずれを全体的に見立たせないようにした上で、フライホイル50の大きさを従来より小さくし得たことにより部品コストの低減化に貢献することができるとともに、画像形成装置10のコンパクト化に逆行するような不都合の発生を有効に回避することができる。
【0068】
そして、このような感光体ドラム駆動機構20が採用された画像形成装置10は、感光体ドラム駆動機構20が備えた作用効果を享受し得るものになり、結果として用紙上において色ずれのない適正な印刷画像を確保し得た上で、画像形成装置10の装置コストの高騰および装置の大型化を回避することができる。
【0069】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0070】
(1)上記の実施形態においては、画像形成装置10としてプリンタを例に挙げて説明したが、プリンタに限定されるものではなく、複写機であってもよいし、ファクシミリ装置であってもよい。
【0071】
(2)上記の実施形態においては、フライホイル50が駆動モータ30の駆動軸31に設けられているが、本発明は、フライホイル50が駆動軸31に設けられることに限定されるものではなく、感光体ドラム121のドラム軸121aに設けてもよい。
【0072】
(3)上記の実施形態においては、マゼンタ用、シアン用、イエロー用およびブラック用感光体ドラム121M,121C,121Y,121Kのそれぞれに専用の駆動モータ30が採用されているが、こうする代わりに1つの駆動モータの駆動により所定のギヤ機構を介して全ての感光体ドラム121を回転させるようにしてもよいし、ブラック用感光体ドラム121Kについては専用の駆動モータを採用し、残りの3つの感光体ドラム121M,121C,121Yについては、1つの駆動モータを共用させるようにし、合計2台の駆動モータを採用するようにしてもよい。但し、1台の駆動モータで複数の感光体ドラム121に駆動力を伝達するような場合は、フライホイル50は、駆動モータの駆動軸ではなく、感光体ドラム121のドラム軸121aに設けることが好ましい。
【0073】
(4)上記の実施形態において、各フライホイル50の半径寸法が、マゼンタ用〜ブラック用駆動機構20M,20C,20Y,20Kのピッチ量より大きい場合は、各フライホイル50が互いに干渉し合わないようにドラム軸121aにおける各フライホイル50の位置を互いにずらせるようにすればよい。
【0074】
(5)上記の実施形態においては、マゼンタ用〜ブラック用フライホイル50M,50C,50Y,50Kは、全て異なった大きさとされているが、全て異ならせることに限定されるものではなく、ブラック用フライホイル50Kのみ他のものより大きくし、その他は同一の大きさにするなど、各種の組み合わせでフライホイル50の大きさを設定してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 画像形成装置 11 装置本体
111 用紙搬送路 112 搬送ローラ対
113 転写ローラ 114 排紙搬送路
12 画像形成部 12M マゼンタ用ユニット
12C シアン用ユニット 12Y イエロー用ユニット
12K ブラック用ユニット
121 感光体ドラム(像担持体)
121M マゼンタ用感光体ドラム
121C シアン用感光体ドラム
121Y イエロー用感光体ドラム
121K ブラック用感光体ドラム
121a ドラム軸 122 現像装置
123 帯電装置 124 露光装置
125 転写ベルト 125a 駆動ローラ
125b 従動ローラ 126 転写ローラ
127 クリーニング装置 13 定着部
131 定着ローラ 132 加圧ローラ
14 用紙貯留部 141 用紙トレイ
142 ピックアップローラ 15 トナー補給部
151 トナーカートリッジ
151C シアン用カートリッジ
151K ブラック用カートリッジ
151M マゼンタ用カートリッジ
151Y イエロー用カートリッジ
16 用紙排出部 161 排紙トレイ
19 カバー体 191 支持軸
20 感光体ドラム駆動機構(像担持体駆動機構)
20M マゼンタ用駆動機構
20C シアン用駆動機構
20Y イエロー用駆動機構
20K ブラック用駆動機構
30 駆動モータ 31 駆動軸
40 ギヤ機構 41 駆動ギヤ
411 アイドルギヤ軸 42 アイドルギヤ
43 目標ギヤ 431 目標ギヤ軸
432 ジョイント部 50 フライホイル
50M マゼンタ用フライホイル 50C シアン用フライホイル
50Y イエロー用フライホイル 50K ブラック用フライホイル
P 用紙 P1 用紙束
S1 閉止姿勢 S2 開放姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に基づき周面に各色のトナーのトナー像をそれぞれ形成させる軸心回りに回転可能な複数の像担持体が並設されてなるカラー印刷が可能な画像形成装置に適用される像担持体駆動機構であって、
所定の駆動モータの駆動力を、駆動軸を介して前記各像担持体の各軸心回りの回転にそれぞれ伝達するギヤ機構と、
前記各軸心または前記駆動軸に同心で付設された回転均し部材としての複数のフライホイルとを備えて構成され、
前記フライホイルは、前記トナーの色に応じてその大きさを変化させていることを特徴とする像担持体駆動機構。
【請求項2】
前記像担持体は、マゼンタトナー用、シアントナー用、イエロートナー用およびブラックトナー用の4種類が採用されるとともに、前記フライホイルは、前記各像担持体にそれぞれ対応してマゼンタトナー用、シアントナー用、イエロートナー用およびブラックトナー用の4種類が採用され、
前記ブラックトナー用のフライホイルがマゼンタトナー用、シアントナー用およびイエロートナー用フライホイルより大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の像担持体駆動機構。
【請求項3】
前記ブラックトナー用のフライホイルを除く他のフライホイルは、その大きさがマゼンタトナー用、シアントナー用およびイエロートナー用の順番で漸次小さく設定されていることを特徴とする請求項2記載の像担持体駆動機構。
【請求項4】
前記フライホイルは、ブラックトナー用、マゼンタトナー用、シアントナー用およびイエロートナー用のものが互いに干渉し合わないように前記軸心または前記駆動軸への装着位置が設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の像担持体駆動機構。
【請求項5】
画像情報に基づき周面に各色のトナーのトナー像をそれぞれ形成させる軸心回りに回転可能な複数の像担持体が並設されてなる画像形成装置であって、
請求項1乃至4のいずれかに記載の像担持体駆動機構が適用されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−43740(P2011−43740A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193016(P2009−193016)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】