説明

充電システムおよびそれを搭載する車両、ならびに充電装置の制御方法

【課題】外部充電が可能な車両において、電源電圧が変動した場合であっても、機器の保護を図りつつ満充電状態まで充電動作を継続させ、蓄電装置の電力を用いて走行可能な距離を確保する。
【解決手段】車両100は、外部電源500からの電力を変換して、搭載した蓄電装置110を充電装置200により充電することが可能である。充電装置200は、スイッチング素子を含む力率改善(PFC)回路210を含み、PFC回路210は外部電源500からの交流電力を直流電力に変換するとともに力率を改善する。ECU300は、外部電源500の交流電圧の変動幅に応じて、PFC回路210のスイッチング素子を制御することによって、外部電源500から充電装置200に供給される入力電流を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電システムおよびそれを搭載する車両、ならびに充電装置の制御方法に関し、より特定的には、外部電源からの電力を用いて充電が可能な車両の充電制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。このような車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。そして、これらの車両に搭載される蓄電装置を発電効率の高い商用電源により充電する技術が提案されている。
【0003】
ハイブリッド車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源(以下、単に「外部電源」とも称する。)から車載の蓄電装置の充電(以下、単に「外部充電」とも称する。)が可能な車両が知られている。たとえば、家屋に設けられたコンセントと車両に設けられた充電口とを充電ケーブルで接続することにより、一般家庭の電源から蓄電装置の充電が可能ないわゆる「プラグイン・ハイブリッド車」が知られている。これにより、ハイブリッド自動車の燃料消費効率を高めることが期待できる。
【0004】
外部電源としては、上記のような家庭用のコンセントや複数台の車両を充電するための充電スタンドがあるが、他の電気機器の消費電力や他の車両への充電電力が大きい場合には、外部電源の電源電圧が変動する場合がある。車両において蓄電装置を充電する場合には、このような電圧変動による影響が生じないようにすることが必要とされる。
【0005】
特開2000−125477号公報(特許文献1)は、外部充電器からの電圧により電池セルを充電する充電回路において、外部充電器からの電圧が基準値以上の場合には充電経路を遮断することにより、過電圧による機器や素子の破損等を防止する構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−125477号公報
【特許文献2】特開平07−254440号公報
【特許文献3】特開2010−220299号公報
【特許文献4】特開2009−060759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外部電源の電圧変動が大きい場合には、それに対応して、外部電源からの入力電流も変動する場合がある。外部電源が交流の場合には、力率を改善するための力率改善(Power Factor Correction:PFC)回路が充電装置内に備えられることがあるが、このPFC回路においては、入力される交流電圧の位相に入力電流の位相を合わせるように制御が行なわれるため、交流電圧変動によりPFC回路における交流電流の変動が大きくなる場合がある。そうすると、充電装置が許容可能な電流容量を超過した過電流状態となるおそれがある。これにより、充電装置内の機器や素子の劣化や故障の要因となったり、充電装置に内蔵された保護回路により充電が停止されたりする可能性がある。そうすると、満充電状態まで適切に充電動作が実行されず、蓄電装置からの電力により走行可能な距離が確保されないおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、外部充電が可能な車両において、電源電圧が変動した場合であっても、機器の保護を図りつつ満充電状態まで充電動作を継続させ、蓄電装置の電力を用いて走行可能な距離を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による充電システムは、充電装置と、充電装置を制御するための制御装置とを備え、外部電源からの電力を用いて車両に搭載された蓄電装置を充電する。充電装置は、スイッチング素子のスイッチング制御によって外部電源からの交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器を含み、蓄電装置に充電電力を供給する。制御装置は、外部電源の交流電圧の変動を示す信号に応じて、外部電源からの入力電流を調整するように、AC/DC変換器のスイッチング素子を制御する。
【0010】
好ましくは、制御装置は、交流電圧の変動量が所定のしきい値を上回った場合には、入力電流を減少させるようにスイッチング素子を制御して、交流電圧の変動量が所定のしきい値を下回るようにする。
【0011】
好ましくは、制御装置は、交流電圧の変動量が所定のしきい値を上回った場合には、交流電圧の変動量が大きくなるにつれて、入力電流を漸減させるようにスイッチング素子を制御する。
【0012】
好ましくは、制御装置は、交流電圧の変動量が所定のしきい値を上回った場合には、交流電圧の変動量が大きくなるにつれて、入力電流を階段状に減少させるようにスイッチング素子を制御する。
【0013】
好ましくは、AC/DC変換器は、リアクトルおよびコンデンサを含んで構成されるフィルタ部をさらに含む。制御装置は、外部電源からフィルタ部へ供給される交流電力と、フィルタ部から出力される交流電力との比較に基づいて、交流電圧の変動量を演算する。
【0014】
好ましくは、AC/DC変換器は、リアクトルおよびコンデンサを含んで構成されるフィルタ部をさらに含む。制御装置は、リアクトルに流れる電流の指令値と、リアクトルに実際に流れる電流の検出値との比較に基づいて、交流電圧の変動量を演算する。
【0015】
好ましくは、AC/DC変換器は、スイッチング素子を有し、外部電源からの交流電力を直流電力に変換する機能および力率改善機能を有する力率改善回路を含む。
【0016】
好ましくは、AC/DC変換器は、力率改善回路からの直流電圧を、蓄電装置の充電に適した直流電圧に調整するためのDC/DC変換回路をさらに含む。
【0017】
本発明による車両は、外部電源からの電力を用いて搭載された蓄電装置の充電が可能な車両であって、スイッチング素子のスイッチング制御によって外部電源からの交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器を含み蓄電装置に充電電力を供給する充電装置と、充電装置を制御するための制御装置とを備える。制御装置は、外部電源の交流電圧の変動を示す信号に応じて、外部電源からの入力電流を調整するように、AC/DC変換器のスイッチング素子を制御する。
【0018】
本発明による充電装置の制御方法は、外部電源からの電力を用いて車両に搭載された蓄電装置の充電を行なうための充電装置の制御方法である。充電装置は、スイッチング素子を有し、スイッチング素子のスイッチング制御によって外部電源からの交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器を含む。制御方法は、外部電源の交流電圧の変動量を取得するステップと、交流電圧の変動量に応じて外部電源からの入力電流を設定するステップと、設定された入力電流となるようにAC/DC変換器のスイッチング素子を制御するステップとを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外部充電が可能な車両において、電源電圧が変動した場合であっても、機器の保護を図りつつ満充電状態まで充電動作を継続させ、蓄電装置の電力を用いて走行可能な距離を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に従う車両の全体ブロック図である。
【図2】図1におけるPFC回路の詳細についての第1の例を示す図である。
【図3】図2のPFC回路の動作を説明するための図である。
【図4】図1におけるPFC回路の詳細についての第2の例を示す図である。
【図5】図1におけるPFC回路の詳細についての第3の例を示す図である。
【図6】入力電圧変動の一例を示す図である。
【図7】本実施の形態において、ECUで実行される充電制御を説明するためのフローチャートである。
【図8】入力電圧変動に応じた入力電流を設定する際に用いられるマップの一例を示す図である。
【図9】入力電圧変動に応じた入力電流を設定する際に用いられるマップの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
図1は、本実施の形態に従う車両100の全体ブロック図である。図1を参照して、車両100は、蓄電装置110と、システムメインリレーSMR115と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ130と、動力伝達ギア140と、駆動輪150と、制御装置であるECU(Electronic Control Unit)300とを備える。
【0023】
蓄電装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池あるいは鉛蓄電池などの二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
【0024】
蓄電装置110は、電力線PL1,NL1を介してPCU120に接続される。そして、蓄電装置110は、車両100の駆動力を発生させるための電力をPCU120に供給する。また、蓄電装置110は、モータジェネレータ130で発電された電力を蓄電する。蓄電装置110の出力はたとえば200V程度である。
【0025】
蓄電装置110には、いずれも図示しないが、蓄電装置110の電圧を検出するための電圧センサ160、入出力電流を検出するための電流センサ170が設けられる。検出された電圧VBおよび電流IBは、ECU300へ出力される。ECU300は、これらの検出値に基づいて、蓄電装置110の充電状態(State of Charge:SOC)を演算する。
【0026】
SMR115に含まれるリレーは、蓄電装置110と電力線PL1,NL1との間に接続される。そして、SMR115は、ECU300からの制御信号SE1に基づいて、蓄電装置110とPCU120との間での電力の供給と遮断とを切換える。
【0027】
PCU120は、いずれも図示しないが、コンバータ、インバータなどが含まれる。コンバータは、ECU300からの制御信号PWCにより制御されて蓄電装置110からの電圧を変換する。インバータは、ECU300からの制御信号PWIにより制御されて、コンバータで変換された電力を用いてモータジェネレータ130を駆動する。
【0028】
モータジェネレータ130は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
【0029】
モータジェネレータ130の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギア140を介して駆動輪150に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ130は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪150の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU120によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
【0030】
なお、図1においては、モータジェネレータおよびインバータのペアが1つ設けられる構成が示されるが、モータジェネレータおよびインバータの数はこれに限定されない。2つより多くのモータジェネレータおよびインバータのペアが設けられる構成であってもよい。
【0031】
なお、図1においては、車両100が電気自動車である場合を例として説明するが、本実施の形態における車両100は、車両駆動力発生用の電動機を搭載する車両を示すものであり、電気自動車の他に、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車や、燃料電池を搭載した燃料電池自動車などが含まれる。
【0032】
ハイブリッド自動車である場合には、モータジェネレータ130は、動力伝達ギア140を介して図示しないエンジンにも結合される。そして、ECU300は、エンジンおよびモータジェネレータ130を協調的に動作させることによって、必要な車両駆動力が得られるようにする。この場合、エンジンの回転による発電電力を用いて、蓄電装置110を充電することも可能である。
【0033】
車両100は、外部電源500からの電力によって蓄電装置110を充電するための構成として、さらに、充電装置200と、インレット240と、充電リレーCHR250とを含む。なお、充電装置200とECU300との組み合わせが、本発明における「充電システム」に対応する。
【0034】
インレット240は、車両100の外表面に設けられる。インレット240には、充電ケーブル400のコネクタ410が接続される。そして、外部電源500からの電力が、充電ケーブル400を介して車両100に伝達される。
【0035】
充電ケーブル400は、コネクタ410に加えて、外部電源500のコンセント510に接続するためのプラグ420と、コネクタ410およびプラグ420とを電気的に結ぶ電線部430とを含む。また、図1には示さないが、電線部430には、外部電源500からの電力の供給および遮断を切換えるための充電回路遮断装置(Charging Circuit Interrupt Device:CCID)が含まれてもよい。
【0036】
充電装置200は、電力線ACL1,ACL2を介して、インレット240に接続される。また、充電装置200は、電力線PL2,NL2によって、CHR250を介して蓄電装置110に接続される。
【0037】
CHR250は、ECU300からの制御指令SE2によって制御され、充電装置200から蓄電装置110への電力の供給と停止とを切換える。
【0038】
充電装置200は、力率改善(PFC)回路210と、DC/DCコンバータ220と、コンデンサC1と、リアクトルL1とを含む。
【0039】
PFC回路210は、交流電力を直流電力に整流するとともに、回路に流れる交流電流を電源からの交流電圧の正弦波に近づけることによって力率を改善するための回路である。
【0040】
PFC回路210の詳細な構成の一例を図2に示す。PFC回路210は、リアクトルおよびコンデンサを含んで構成されるACフィルタ212と、整流回路218と、コンデンサC20と、電流センサ214と、電圧センサ216とを含む。整流回路218は、スイッチング素子Q22,Q24と、ダイオードD21〜D24とを含む。
【0041】
ダイオードD21およびスイッチング素子Q22は、電力線PL3,NL3の間に直列に接続され、ダイオードD22はスイッチング素子Q22に逆並列に接続される。また、ダイオードD23およびスイッチング素子Q24は、電力線PL3,NL3の間に直列に接続され、ダイオードD24はスイッチング素子Q24に逆並列に接続される。
【0042】
ACフィルタ212は、外部電源500からの交流電力を受け、この交流電力に含まれるノイズを除去する。ACフィルタ212の出力の一方端は、ダイオードD21とスイッチング素子Q22との接続ノードに接続される。ACフィルタ212の出力の他方端は、ダイオードD23とスイッチング素子Q24との接続ノードに接続される。
【0043】
ACフィルタ212を介して供給される交流電力は、ダイオードD21〜D24によって直流電力に整流される。しかしながら、ACフィルタ212に含まれるコンデンサによって、一般的に、ACフィルタ212から出力される交流電流波形は、正弦波からずれたものとなる。PFC回路210は、ECU300からの制御信号PWEによってスイッチング素子Q22,Q24が制御され、整流回路218に入力される交流電流の波形を正弦波に近づける。
【0044】
コンデンサC20は、電力線PL3,NL3の間に接続され、整流回路218から出力される直流電圧の変動を低減する。
【0045】
電圧センサ216は、整流回路218への入力電圧(すなわち、ACフィルタ212の出力電圧)Vinを検出し、その検出値をECU300へ出力する。電流センサ214は、整流回路218への入力電流ILを検出し、その検出値をECU300へ出力する。
【0046】
図3は、PFC回路210の動作を説明するための図である。図3を参照して、外部電源500からの電源電圧VACは、所定の電源周波数の交流電圧である。PFC回路210においては、スイッチング素子Q22あるいはQ24がオンの期間には、リアクトルに流れる電流ILが増加する一方で、スイッチング素子Q22あるいはQ24がオフの期間には電流ILが減少する。このため、電流センサ214により検出されるリアクトル電流ILに基づいてスイッチング素子Q22,Q24をスイッチング制御することによって、リアクトル電流IL(図3中のW10)を、電源電圧VACと同位相の目標電流(図3中のW11)に一致するように制御する。これによって、電源電圧VACと電源電流IACとの積で表わされる瞬時電力VAが常に正値となるので、瞬時電力の平均値である有効電力が大きくなり、外部電源500から供給される電力の力率を1に近づけることができる。
【0047】
ここで、リアクトル電流ILの絶対値の積分値は、コンデンサC20に供給される電荷に相当するので、目標電流の振幅IL_refを制御することによって外部電源500からの入力電流を調整して、出力される直流電圧VDCを調整することができる。
【0048】
なお、PFC回路の構成は、図3に示される構成に限定されるものではなく、たとえば、図4,5に示されるような構成とすることも可能である。
【0049】
図4のPFC回路210Aは、ダイオードブリッジにより構成される整流回路218Aで整流した直流電圧を、リアクトルL10およびコンデンサC10で構成されるLCフィルタを介して電力線PL3,NL3へ出力する。このとき、コンデンサC10に並列に接続されたスイッチング素子Q10をスイッチング制御して力率を改善する。
【0050】
また、図5のPFC回路210Bは、図2のPFC回路210における整流回路218が、スイッチング素子Q31〜Q34のフルブリッジ構成とされた整流回路218Bに置き換わったものである。
【0051】
PFC回路210,210A,210Bのいずれの回路においても、回路に含まれるスイッチング素子のデューティを制御することによって、力率を改善しつつ入力電流を調整することができる。
【0052】
再び図1を参照して、DC/DCコンバータ220は、スイッチング素子Q1〜Q4およびダイオードD1〜D4により構成されるフルブリッジ回路221と、スイッチング素子Q5〜Q8およびダイオードD5〜D8により構成されるフルブリッジ回路222と、これら2つのフルブリッジ回路221,222に結合されたトランスTR1とを含む。
【0053】
フルブリッジ回路222は、PFC回路210から供給される直流電圧を交流電圧に変換し、この変換した交流電圧をトランスTR1の一次巻線に供給する。
【0054】
トランスTR1は、フルブリッジ回路221から供給される交流電圧を、一次巻線と二次巻線との巻線比によって定められる電圧に変換する。
【0055】
フルブリッジ回路222は、トランスTR1で変換された交流電圧を直流電圧に変換する。
【0056】
DC/DCコンバータ220のフルブリッジ回路221,222の各スイッチング素子は、ECU300からの制御信号PWDにより制御される。これによって、DC/DCコンバータ220は、蓄電装置110の充電に適した所望の電圧を出力する。
【0057】
リアクトルL1およびコンデンサC1は、DC/DCコンバータ220の出力端子に接続され、一緒になってLCフィルタを形成する。このLCフィルタは、DC/DCコンバータ220から出力される直流電流に含まれる、スイッチングによって生じるリプル成分を除去する。そして、コンデンサC1の両端が電力線PL2,NL2に結合される。
【0058】
ECU300は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両100および各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0059】
このような構成の車両において外部充電を行なう場合、電力が供給される外部電源としては、家庭のコンセントや充電スタンドなどが考えられる。このとき、たとえば、家庭内で消費電力の大きい電気機器が使用された場合や、充電スタンドにおいて複数の車両で充電が行なわれた場合には、外部電源の電源電圧が変動するおそれがある。
【0060】
図1で示したようなPFC回路210を有する充電装置200により充電を行なう場合に、外部電源500からの入力電圧が変動すると、PFC回路210のACフィルタ212に含まれるリアクトルおよびコンデンサによる共振回路、ならびにスイッチング素子の制御周波数の影響により、図2における整流回路218への入力電圧Vinが、図6に示すように変動する場合がある(図6中の曲線W21)。
【0061】
このように入力電圧Vinが変動すると、それに伴って、入力電流ILも同様に変動する。そうすると、入力電流のピーク値が、スイッチング素子などの回路を構成する部品の許容電流を超過し過電流状態となってしまい、素子の破損や故障の要因となったり、あるいは、充電装置の保護回路によってスイッチング動作が停止され充電動作が停止したりするおそれがある。
【0062】
これによって、蓄電装置110の充電が中断されてしまうために、ユーザが車両を運転しようとした場合に、十分な充電量が蓄電装置110に蓄えられていない状態となり得る。そして、電力を用いた走行が制限され、電気自動車においては走行距離が確保できなくなり、ハイブリッド車両においてはエンジンを用いることによって燃費の悪化を招くおそれがある。
【0063】
そこで、本実施の形態においては、PFC回路を有する充電装置を用いた外部充電の際に、PFC回路への入力電圧(あるいは、入力電流)の変動が生じた場合に、PFC回路のスイッチング素子を制御して入力電流を低減させることによって、過電流の発生を防ぐ充電制御を実行する。これによって、外部充電中に、外部電源の電源電圧が変動することによって充電動作が停止してしまうことが防止でき、電力を用いて走行可能な距離を確保することが可能となる。
【0064】
図7は、本実施の形態において、ECU300で実行される充電制御処理を説明するためのフローチャートである。図7に示すフローチャートは、ECU300に予め格納されたプログラムを所定周期で実行することによって実現される。あるいは、一部またはすべてのステップを、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0065】
図1および図7を参照して、ECU300は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、図2の電圧センサ216によって検出されたPFC回路210への入力電圧Vinを取得する。
【0066】
そして、ECU300は、S120にて、図示されない他の電圧センサで検出された外部電源500の電源電圧VACからの変動幅FLCを演算する。この変動幅FLCは、電源電圧VACと入力電圧Vinとの差の絶対値(変動量)を採用してもよいし、電源電圧VACに対する電源電圧VACと入力電圧Vinとの差の比率を採用してもよい。
【0067】
そして、ECU300は、S120にて、たとえば図8または図9に示されるようなマップを用いて、変動幅FLCに応じた入力電流指令値IL_refを設定する。
【0068】
図8のマップにおいては、変動幅FLCがA1となるまでは、入力電流指令値IL_refはα1(A)に設定され、変動幅FLCがA1を上回ると、変動幅FLCが増加するにつれて漸減するように入力電流指令値IL_refが設定される(図8中の曲線W30)。なお、入力電流指令値IL_refの減少は、図8のように直線的な変化に限られず、曲線的な変化であってもよい。
【0069】
また、図9のマップにおいては、変動幅FLCがA1を上回ると、変動幅FLCが増加するにつれて階段状に減少するように入力電流指令値IL_refが設定される(図9中の曲線W40)。すなわち、変動幅FLCがA1になるまでは、入力電流指令値IL_refはα1(A)に設定され、変動幅FLCがA1を超えてA2になるまでは入力電流指令値IL_refはα2(A)に設定され、変動幅FLCがA2を超えてA3になるまでは入力電流指令値IL_refはα3(A)に設定される。
【0070】
入力電流指令値IL_refの設定マップは、図8および図9のいずれのマップを用いてもよいが、たとえば、図8のマップは図9のマップに比べると、同じ変動幅における入力電流指令値が大きく設定されているため、充電時間がより短くできるという利点がある。一方、図9のマップを用いた場合は、変動幅の小さな変化では入力電流指令値が変動しないため、ハンチング等を防止することができ制御安定性が高いという利点がある。
【0071】
S120にて入力電流指令値IL_refが設定されると、ECU300は、S130にて、この入力電流指令値IL_refに従って充電装置200を制御し、蓄電装置110の充電を実行する。
【0072】
なお、上記の説明においては、入力電圧Vinの変動に基づいて入力電流指令値IL_refを設定する構成を例として説明したが、図2の電流センサ214で検出された入力電流ILの変動幅に基づいて、入力電流指令値IL_refを設定するようにしてもよい。
【0073】
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、充電実行時に外部電源からの交流電圧が変動した場合であっても、それに応じて充電装置の入力電流が低減されるので、充電装置において過電流状態が生じることを低減できる。これによって、充電動作が中断されることが抑制されるので、満充電状態となるまで充電動作を継続することができ、その結果、蓄電装置からの電力を用いて走行可能な距離を確保することができる。
【0074】
なお、本実施の形態における「DC/DCコンバータ220」は、本発明における「DC/DC変換回路」の一例である。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
100 車両、110 蓄電装置、115 SMR、120 PCU、130 モータジェネレータ、140 動力伝達ギア、150 駆動輪、160,216 電圧センサ、170,214 電流センサ、200 充電装置、210,210A,210B PFC回路、212 ACフィルタ、218,218A,218B 整流回路、220 DC/DCコンバータ、221,222 フルブリッジ回路、240 インレット、250 CHR、300 ECU、400 充電ケーブル、410 コネクタ、420 プラグ、430 電線部、500 外部電源、510 コンセント、ACL1,ACL2,PL1〜PL3,NL1〜NL3 電力線、C1,C10,C20,C30 コンデンサ、D1〜D8,D10,D11,D21〜D24,D31〜D34 ダイオード、L1,L10 リアクトル、Q1〜Q8,Q10,Q22,Q24,Q31〜Q34 スイッチング素子、TR1 トランス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの電力を用いて車両に搭載された蓄電装置を充電するための充電システムであって、
スイッチング素子のスイッチング制御によって前記外部電源からの交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器を含み、前記蓄電装置に充電電力を供給する充電装置と、
前記充電装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記外部電源の交流電圧の変動を示す信号に応じて、前記外部電源からの入力電流を調整するように、前記AC/DC変換器の前記スイッチング素子を制御する、充電システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記交流電圧の変動量が所定のしきい値を上回った場合には、前記入力電流を減少させるように前記スイッチング素子を制御して、前記交流電圧の変動量が前記所定のしきい値を下回るようにする、請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記交流電圧の変動量が前記所定のしきい値を上回った場合には、前記交流電圧の変動量が大きくなるにつれて、前記入力電流を漸減させるように前記スイッチング素子を制御する、請求項2に記載の充電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記交流電圧の変動量が前記所定のしきい値を上回った場合には、前記交流電圧の変動量が大きくなるにつれて、前記入力電流を階段状に減少させるように前記スイッチング素子を制御する、請求項2に記載の充電システム。
【請求項5】
前記AC/DC変換器は、
リアクトルおよびコンデンサを含んで構成されるフィルタ部をさらに含み、
前記制御装置は、前記外部電源から前記フィルタ部へ供給される交流電力と、前記フィルタ部から出力される交流電力との比較に基づいて、前記交流電圧の変動量を演算する、請求項2に記載の充電システム。
【請求項6】
前記AC/DC変換器は、
リアクトルおよびコンデンサを含んで構成されるフィルタ部をさらに含み、
前記制御装置は、前記リアクトルに流れる電流の指令値と、前記リアクトルに実際に流れる電流の検出値との比較に基づいて、前記交流電圧の変動量を演算する、請求項2に記載の充電システム。
【請求項7】
前記AC/DC変換器は、
前記スイッチング素子を有し、前記外部電源からの交流電力を直流電力に変換する機能および力率改善機能を有する力率改善回路を含む、請求項1に記載の充電システム。
【請求項8】
前記AC/DC変換器は、
前記力率改善回路からの直流電圧を、前記蓄電装置の充電に適した直流電圧に調整するためのDC/DC変換回路をさらに含む、請求項7に記載の充電システム。
【請求項9】
外部電源からの電力を用いて搭載された蓄電装置の充電が可能な車両であって、
スイッチング素子のスイッチング制御によって前記外部電源からの交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器を含み、前記蓄電装置に充電電力を供給する充電装置と、
前記充電装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記外部電源の交流電圧の変動を示す信号に応じて、前記外部電源からの入力電流を調整するように、前記AC/DC変換器の前記スイッチング素子を制御する、車両。
【請求項10】
外部電源からの電力を用いて車両に搭載された蓄電装置の充電を行なうための充電装置の制御方法であって、
前記充電装置は、スイッチング素子を有し、前記スイッチング素子のスイッチング制御によって前記外部電源からの交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器を含み、
前記制御方法は、
前記外部電源の交流電圧の変動量を取得するステップと、
前記交流電圧の変動量に応じて前記外部電源からの入力電流を設定するステップと、
設定された前記入力電流となるように、前記AC/DC変換器の前記スイッチング素子を制御するステップとを備える、充電装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−34307(P2013−34307A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169109(P2011−169109)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】