説明

光コネクタ、それを用いた光モジュールおよびその製造方法

【課題】光導波路を光コネクタに挿着する際に光ファイバの長さを調節することが困難である。
【解決手段】光コネクタは、基板に光導波路を配置するための第1の溝と、第1の溝と交差する第2の溝とが配置され、第1の溝は基板の一端から他端にわたって配置され、第2の溝は、第2の溝を構成する壁面が第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して配置され、基板に入力する光または基板から出力する光が第2の溝を介して光導波路と結合するように、第1の溝と第2の溝とが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ、それを用いた光モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の発展に伴い、光通信に求められる通信容量は増加の一途をたどっている。
【0003】
このような通信容量の増加に対応するために、複数の光素子を並列に用いて通信を行う装置が実用化されている。そして、この装置の多くにはアレイ型光素子が用いられている。アレイ型光素子とは複数の面型光素子を有するチップをいう。
【0004】
複数の光素子を並列に用いる装置では、複数の光ファイバをまとめて挿抜できるコネクタ、例えばMTコネクタが用いられている。
【0005】
面型素子の場合、光信号が基板に対して垂直に入出力される。そのため、通常、光ファイバは基板に実装された面型光素子に対して垂直に挿入しなくてはならない。しかし、光ファイバを面型光素子に対して垂直に挿入すると、MTコネクタの大きさや光ファイバの曲げ半径の制約から、面型光素子の周囲に大きな空間が必要になるという問題がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、面型光素子から入出力される光信号の光路をミラーなどで基板面に対して直角に変換するコネクタが提案されており、その一例が特許文献1に記載されている。
【0007】
特許文献1に記載された光コネクタ500は、図14に示すように、光ファイバが通る光ファイバ穴502と、光ファイバから放出される光を反射する反射面506を有する。この光コネクタ500は、図15に示すように、嵌合ピン517を用いて、光電気複合基板518と嵌合する。光ファイバ512は光ファイバ穴502に挿入され、光コネクタに接続される。光ファイバ512から放出される光は反射面506で反射され、その光路は図面下方向に変更される。そして、光は光素子519に受光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−058848号公報(段落(0015)〜(0021)、図1、図7)
【特許文献2】特開2003−004991号公報(段落(0026)、(0027)、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された光コネクタにおいては、光ファイバを光コネクタに挿着するときに、その場で光ファイバの長さを調整することが困難であるという問題があった。すなわち、光ファイバを光コネクタに挿着するとき、図15に示すように、光ファイバの端部を光コネクタの内部に押し当てて固定する必要があったため、光ファイバを光コネクタに挿着する際に、光ファイバの長さを調節することが困難であった。また、光ファイバを光コネクタに挿着した後に余分な長さの光ファイバが生じる場合は、煩雑なファイバ余長処理が必要であった。
【0010】
本発明の目的は、上述した課題である光ファイバを光コネクタに挿着する際に光ファイバの長さを調節することが困難である、という課題を解決する光コネクタ、及びそれを用いた光モジュール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光コネクタは、基板に光導波路を配置するための第1の溝と、第1の溝と交差する第2の溝とが配置され、第1の溝は基板の一端から他端にわたって配置され、第2の溝は、第2の溝を構成する壁面が第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して配置され、基板に入力する光または基板から出力する光が第2の溝を介して光導波路と結合するように、第1の溝と第2の溝とが配置されたものである。
【0012】
また、本発明の別の光コネクタは、第1の基板要素部と第2の基板要素部とを有し、第1の基板要素部と第2の基板要素部の少なくとも一方の一端から他端にわたって光導波路を配置するための第1の溝が配置され、第1の基板要素部と第2の基板要素部の少なくとも一方に第2の接続部を有し、第2の接続部は反射部と光導波路を切断できる切断部とを備え、反射部は、第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して配置され、第1の基板要素部もしくは第2の基板要素部に入力する光または第1の基板要素部もしくは第2の基板要素部から出力する光が、第2の接続部を介して光導波路と結合するように、第1の溝と第2の接続部とが配置されたものである。
【0013】
また、本発明の光モジュールの製造方法は、基板の一端から他端にわたって光導波路を配置するための第1の溝を形成する工程と、基板に、第1の溝と交差して第2の溝を形成する工程と、第1の溝の少なくとも一部に光導波路を配置する工程と、光導波路を第2の溝の壁面に沿って切断する工程と、を有し、第2の溝を形成する工程は、基板に入力する光または基板から出力する光が第2の溝を介して光導波路と結合するように、第2の溝を構成する壁面を第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して形成する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の別の光モジュールの製造方法は、第1の基板要素部と第2の基板要素部の少なくとも一方の一端から他端にわたって光導波路を配置するための第1の溝を形成する工程と、第1の基板要素部と第2の基板要素部の少なくとも一方に第2の溝を形成する工程と、第1の溝の少なくとも一部に光導波路を配置する工程と、第1の基板要素部と第2の基板要素部とで光導波路を挟み、第1の基板要素部と第2の基板要素部を嵌合する工程と、嵌合する工程後に、光導波路を第2の溝の壁面に沿って切断する工程と、を有し、第2の溝を形成する工程は、第1の基板要素部もしくは第2の基板要素部に入力する光または第1の基板要素部もしくは第2の基板要素部から出力する光が第2の溝を介して光導波路と結合するように、第2の溝を構成する壁面を第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して形成する工程を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の別の光モジュールの製造方法は、第1の基板要素部と第2の基板要素部の少なくとも一方の一端から他端に光導波路を配置するための第1の溝を形成する工程と、第1の基板要素部と第2の基板要素部の少なくとも一方に反射部と光導波路を切断できる切断部とを有する第2の接続部を形成する工程と、第1の溝の少なくとも一部に光導波路を配置する工程と、第1の基板要素部と第2の基板要素部との間に光導波路を挟み、切断部で光導波路を切断する切断工程と、を有し、第2の接続部を形成する工程は、第1の基板要素部もしくは第2の基板要素部に入力する光または第1の基板要素部もしくは第2の基板要素部から出力する光が第2の接続部を介して光導波路と結合するように、反射部を第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して形成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光コネクタによれば、光ファイバを挿着するときに、その場で光ファイバの長さを容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタの(a)斜視図、(b)上面図、および(c)上面図(b)の1c−1c線断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る別の光コネクタの断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るさらに別の光コネクタの斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る光コネクタの(a)斜視図、(b)底面図、および(c)底面図(b)の4c−4c線断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る別の光コネクタの(a)第1の接続部の斜視図、(b)別の第1の接続部の斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るさらに別の光コネクタの断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る光コネクタの(a)斜視図、(b)上面図、(c)上面図(b)の8c−8c線断面図、(d)底面図(b)の8d−8d線断面図、および(e)嵌合した状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る別の光コネクタの断面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る光コネクタの(a)斜視図、(b)底面図、(c)底面図(b)の11c−11c線断面図、(d)底面図(b)の11d−11d線断面図、および(e)嵌合した状態を示す斜視図である。
【図12】本発明の第6の実施形態に係る別の光コネクタの断面図である。
【図13】本発明の第7の実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図14】特許文献1に記載の光コネクタの斜視図である。
【図15】特許文献1に記載の光コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ100の斜視図である。図1(b)は、光コネクタ100の上面図である。図1(c)は、図1(b)の光コネクタ100の1c−1c線断面図である。第1の実施形態に係る光コネクタ100は、基板101と、基板の一端から他端にわたって配置された第1の溝102と、第1の溝と交差する第2の溝103とを有する。第1の溝102は光導波路を設置するための溝である。第2の溝103の壁面は、第1の溝102の延伸方向に垂直な面に対して傾斜している。第1の溝102と第2の溝103とは、基板101に入力する光または基板101から出力する光が第2の溝103を介して第1の溝に設置される光導波路と結合するように配置されている。
【0020】
第1の溝102に設置される光導波路は第2の溝103に沿った切断面を有する。また、第2の溝103には光導波路のコア構造と異なる屈折率を有するものが含まれる。そのため、光導波路を伝播して光コネクタに入力した光は、光導波路と第2の溝103との屈折率の相違により一部が反射される。第2の溝には、例えば、空気などが含まれる。
【0021】
本実施形態に係る光コネクタは上述した構成を有することで、光コネクタに入射した光の進む方向を所望の方向に変えることができる。光導波路を伝播して光コネクタに入力した光は、第2の溝に到達した後に所定の方向に反射する。反射した光は、例えば、基板を構成する材料を反射光に対して透明な材料とすることによって光コネクタから効率良く取り出せる。また、光導波路以外の箇所から光コネクタに入力した光は第2の溝に到達した後に反射され、反射した光は光導波路に結合し、光導波路を伝播して光コネクタから出力される。
【0022】
ここで、光導波路には例えば光ファイバを用いることができる。以下では、光導波路として光ファイバを用いた場合について説明する。
【0023】
本実施形態に係る光コネクタを用いると、光ファイバを光コネクタに挿着するときに光ファイバの長さをその場で容易に調整することが可能となる。すなわち、本実施形態に係る光ファイバにおいては、第1の溝が貫通しているので、長さ調整が必要な光ファイバの先端を含む光ファイバの一部を光コネクタに通すことができ、さらに光ファイバを第2の溝に沿って切断できるので、光ファイバの長さ調整が容易となる。光ファイバを切断した後には、第2の溝と第1の溝とが交わる箇所で光ファイバの端面が形成される。そして、この端面から光を取り出すことができる。
【0024】
特許文献1に記載された光コネクタにおいては第1の溝に相当する光ファイバ穴(図14、符号502)が基板を貫通していない。そのため、光ファイバをこの光コネクタに挿着する際には、光ファイバの端部を第1の溝の端に押し当てて固定する必要がある。そのため、光コネクタを挿着するときに光ファイバの長さ調節を行うことは困難である。
【0025】
また、本発明に関連する光モジュールの技術として特許文献2には、光ファイバを基板に配置した後にファイバ埋め込み基板にスリットを形成し、スリットの形成にあわせて光ファイバを切断して、光ファイバの長さを調節することが開示されている。このスリットは基板を切断して形成されるため、スリットの形成にはダイシングソーなどの大規模な装置が必要となる。そのため、このような光モジュールでは光ファイバの長さ調整をその場で行うのが困難である。
【0026】
それに対して、本実施形態に係る光コネクタを用いる場合、光コネクタ自体に予め特許文献2のスリットに相当する第2の溝が配置されているので、光ファイバを第1の溝の所望の位置に配置した後に光ファイバだけを切断すれば良い。よって、簡易な切断道具を用いることができる。この結果、光ファイバを光コネクタに挿着するときに、その場で光ファイバの長さを容易に調節することができる。
【0027】
上述したとおり、本実施形態に係る光コネクタを用いると、光ファイバの長さは光ファイバを光コネクタに挿着するときに調節できる。そのため、光コネクタ挿着後の光ファイバの余長処理が不要になる。
【0028】
上記説明では、光導波路を伝播して光コネクタに入力した光を例にとって本実施形態に係る光コネクタを説明したが、本実施形態に係る光コネクタは、光導波路以外の箇所から光コネクタに入力させた光を第2の溝を介して光導波路と結合させ、光導波路を伝播させて光コネクタから出力することも可能である。
【0029】
光導波路は、光を導波できるものであれば、その構造は特に限定されない。光導波路として例えば、スラブ型、埋め込み型、リッジ型を用いることが出来る。光導波路は光ファイバやポリマー光導波路でも良い。
【0030】
基板は、第1の溝を複数有しても良い。その場合、それぞれの第1の溝の間隔は250マイクロメートルまたは125マイクロメートルが望ましい。これらの間隔にすることで、光ファイバを容易に整列させることができる。また、光ファイバに挿着された本実施形態に係る光コネクタを一般的なMTコネクタと結合できる。
【0031】
第1の溝の形状は、特に限定されるものではない。円筒でも良いし、平板でも良い。第1の溝は、第2の溝を交差し且つ第2の溝を越えるように基板に配置される。
【0032】
また、光コネクタ100は、図2に示すように、基板101の表面と第2の溝103との間に導波部104を有していても良い。導波部104を設けることで、第2の溝で反射された光は散乱されることなく導波部104を導波するので、さらに効率良く光を取り出すことができる。また、光コネクタは外部からの光を導波部から入力することができ、入力された光を第2の溝を介して第1の溝に設置される光導波路と結合させ、光導波路を伝播させて光コネクタから出力させることができる。また、光導波路から伝播して光コネクタに入力した光を第2の溝を介して、導波部から出力することができる。
【0033】
導波部の材料は、光導波路としての光ファイバの屈折率と近い材料、たとえば樹脂や石英ガラスであることが望ましい。このような材料を用いることで、光の放射角を小さく抑えることができ、その結果、光導波路と導波部との光の結合効率を高められる。導波部は空気によって構成されていても良い。
【0034】
さらに、光コネクタは、図3に示すように、光導波路をコネクタに接着させるための接着剤が加えられる接着穴105を有していても良い。
【0035】
接着剤は、光導波路が第1の溝102に設置された後に、接着穴105に加えられる。これによって、光導波路を基板101に固定することができる。光導波路を基板に固定することで、光導波路を高い精度で切断でき、さらに、信頼性の高い光コネクタを提供することができる。また、光導波路の他に第1の接続部も接着剤を用いて基板に固定しても良い。第1の接続部を基板に固定することで、信頼性の高い光コネクタを提供することができる。
【0036】
基板の材料は特に限定されない。例えば、エポキシ樹脂を用いることが出来る。
【0037】
光コネクタは、光コネクタに接続される他の光装置と位置合わせするためのガイド穴を有していても良い。光コネクタが有するガイド穴と、他の光装置が有するガイドピンを嵌合させることで、光コネクタと他の光装置の位置合わせが可能となる。
【0038】
[第2の実施形態]
次に本発明の第2の実施形態に係る光コネクタについて説明する。
【0039】
図4(a)は、第2の実施形態に係る光コネクタ100の斜視図である。図4(b)は、光コネクタ100の底面図である。図4(c)は、図4(b)の4c−4c線断面図である。第2の実施形態に係る光コネクタ100は、基板101と、基板の一端から他端にわたって配置された第1の溝102と、第1の溝と交差する第2の溝103とを有する。第1の溝102は光導波路を設置するための溝である。第2の溝103の壁面は、第1の溝102の延伸方向に垂直な面に対して傾斜している。第1の溝102と第2の溝103とは、基板101に入力する光または基板101から出力する光が第2の溝103を介して第1の溝に設置される光導波路と結合するように配置されている。
【0040】
第2の実施形態に係る光コネクタ100は、図4に示すように、第2の溝に配置される第1の接続部106を有することを特徴とする。第1の接続部106はその表面が金属などでコーティングされた反射部を有している。これにより、第2の溝に到達した光を所望の方向に反射することができ、さらに反射率を上げることができる。
【0041】
第1の接続部が有する反射部は、全反射ミラーでも良いしハーフミラーでも良い。また、波長選択性を有する誘電体多層膜などのフィルターでも良い。ハーフミラーや波長選択性を有するフィルターを用いると、所望の比率で光取出しが可能となる。また、光を合分波できるという利点が得られる。
【0042】
第1の接続部106は、図4に示すように、さらに、光導波路を切断可能な切断部107を有していても良い。その場合、後に述べるように、光モジュールの製造工程が容易になる。
【0043】
第1の接続部106は、図5(a)に示すように、光を反射する反射面を有する反射部109と、その反射部109を保持するミラーホルダー108とを組み合わせたものでも良い。ミラーホルダー108は第2の溝に挿入される側に、切断部107を有する。この切断部107が、第1の接続部106を第2の溝に配置する際に光導波路を切断する。また、反射部109の反射面は、平滑な面となるように加工するのが望ましい。反射面としては、反射率の高い金属、例えば金を蒸着したものを用いるのが望ましい。切断部107に光導波路の切断機能を持たせるために、切断部にはステンレス鋼やコバール等の硬い金属を用いるのが望ましい。
【0044】
さらに、図5(b)に示すように、ミラーホルダー108の光導波路が突き当たる部分には光を透過するための穴である光透過穴110を設けても良い。この場合、反射部109に特定の反射率を持つハーフミラーを用いることとしても良い。ハーフミラーを用いると反射部に到達した光の少なくとも一部を反射し、残りを透過させることができ、所望の比率での光取出しが可能となる。また、反射部109に波長選択性を有するフィルターを用いても良い。
【0045】
第1の接続部の厚さは第2の溝の幅よりも数ミクロン程度薄いと良い。さらに、表面が平らであるのが望ましい。第1の接続部がこのような特徴を有することにより、第1接続部を第2の溝にスムーズに挿入できるからである。
【0046】
光コネクタは、図6に示すように、導波部を二つ以上有していても良い。この場合、光は基板の上面と第2の溝の間に設けられた導波部111と、基板の下面と第2の溝の間に設けられた導波部104を導波することができる。このように複数の導波部を基板に設けることで、複数の光の方向を同時に変えられる。例えば、図6に示す光コネクタの場合、光導波路の両端からコネクタに入力した光の一方を上方向、もう一方を下方向に出力することができる。または、光コネクタの上面と下面に設置される光素子から出射される光を光コネクタに入力して、その入力した光を光導波路に結合することができる。
【0047】
導波部は2つに限定されるものではない。導波部は3つ以上あっても良い。
【0048】
導波部の位置は、第2の溝と上面の間、第2の溝と下面の間に限定されるものではない。導波部の位置やその構造は、第2の溝における反射角度に応じて適宜決めて良い。
【0049】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る光モジュールの製造方法について、図7を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態に係る光コネクタを用いた。本明細書では、光導波路が光コネクタに挿着されたものを光モジュールと呼ぶ。本実施形態では、光導波路として光ファイバを用いた場合について説明する。
【0050】
はじめに、図7(a)に示すように、光ファイバ112を光コネクタ100の一端から挿入し、第1の溝102に配置する。光ファイバ112は、図7(b)に示すように、第2の溝103を貫通して第1の溝102に配置され、接着剤等を用いて固定される。
【0051】
次に、図7(c)に示すように、カッター部113を第2の溝に挿入して、光ファイバ112を第2の溝103の壁面に沿って切断する。これにより、光ファイバ112は第2の溝103において分断される。第2の溝を構成する壁面は、第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して形成されている。
【0052】
光ファイバ112を切断した後に、図7(d)に示すように、カッター部113を第2の溝103から取り出す。
【0053】
以上により、図7(e)に示すように、本実施形態に係る光モジュールが完成する。光ファイバ112から光コネクタ100に入力された光の進行方向は、図7(e)の破線矢印で示すように、第2の溝103を介して下方向に変わる。
【0054】
本実施形態に係る光モジュールは上述した製造工程を有することで、光ファイバを光コネクタに挿着するときに光ファイバの長さをその場で容易に調整することが可能となる。
【0055】
光ファイバの切断方法は特に限定されるものではない。一般的なカッター部材など簡易な道具を用いることができる。
【0056】
図7(e)の光モジュールの第2の溝に、さらに、反射部を有する第1の接続部を配置させても良い。これにより、第2の溝を介して、第2の溝に入射した光を反射させることが可能となる。
【0057】
図7(c)に示す工程で、カッター部113の代わりに、反射部と光ファイバを切断可能な切断部とを有する第1の接続部を配置させても良い。これにより、一度、第2の溝に配置させた第1の接続部を後に取り出す必要がなくなる。これにより、反射部の設置とファイバの切断を同一工程で行うことができるため、結果として、製造工程を減らすことができる。また、光導波路の切断面と第1の接続部の反射面との密着性が高くなるため、反射した光の広がりが抑えられ、光と光素子との結合性が高くなる。
【0058】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る光コネクタについて説明する。
【0059】
図8(a)は、第4の実施形態に係る光コネクタ200の斜視図である。図8(b)は、第2の実施形態に係る光コネクタ200の上面図である。図8(c)は、図8(b)の8c−8c線断面図である。図8(d)は、図8(b)の8d−8d線断面図である。図8(e)は、第4の実施形態に係る光コネクタ200の第1の基板要素部214と第2の基板要素部215とが嵌合した状態を表す斜視図である。第4の実施形態に係る光コネクタ200は、第1の基板要素部214と第2の基板要素部215とを有する。図8(e)に示すように、第1の基板要素部214と第2の基板要素部215は嵌合して基板となる。第1の基板要素部214は第1の基板要素部214の一端から他端にわたって配置された第1の溝202と、第1の溝と交差する第2の溝203とを有する。第1の溝202は光導波路を設置するための溝である。第2の溝203の壁面は、第1の溝202の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して形成されている。第1の溝202と第2の溝203とは、基板に入力する光または基板から出力する光が第2の溝203を介して第1の溝に設置される光導波路と結合するように配置されている。
【0060】
第4の実施形態に係る光コネクタ200は、図8に示すように、基板が第1の基板要素部214と第2の基板要素部215とからなることを特徴とする。これにより、光導波路を第1の基板要素部214と第2の基板要素部215で挟んで第1の溝に配置することが可能となる。すなわち、光導波路の先端を第1の溝に通すことが不要となるため、光導波路の両端が固定されているものに対しても、本実施形態に係る光コネクタを用いることができる。
【0061】
本実施形態に係る光コネクタを用いると、光導波路を光コネクタに挿着するときに光導波路の長さをその場で容易に調整することが可能となる。さらに、本実施形態に係る光コネクタを用いると、その両端が固定化された光導波路に容易に挿着することが可能となる。これは、基板が複数の基板要素部に分かれていて、その複数の基板要素部で光導波路を挟み、その後に光導波路を切断するからである。
【0062】
なお、第1の溝は、第1の基板要素部214と第2の基板要素部215のいずれかに配置されていれば良い。または、図9に示すように、第1の基板要素部214,第2の基板要素部215のそれぞれに溝を設け、第1の基板要素部214と第2の基板要素部215を嵌合することによって第1の溝が作られるようにしても良い。
【0063】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係る光モジュールの製造方法について、図10を参照して説明する。本実施形態では、第4の実施形態に係る光コネクタを用いた。本実施形態では、光導波路として光ファイバを用いた場合について説明する。
【0064】
はじめに、図10(a)(b)に示すように、第1の基板要素部214と第2の基板要素部215は光ファイバ212を挟んで、嵌め合わされる。光ファイバ212は第1の基板要素部214に配置された第1の溝に設置される。
【0065】
次に、図10(c)に示すように、光ファイバ212を第2の溝203の壁面に沿って切断する。光ファイバ212を切断する方法は特に限定されず、例えば、カッター部213を用いて切断することができる。
【0066】
そして、図10(d)に示すように、光ファイバ212を切断した後にカッター部213を第2の溝203から取り出す。
【0067】
以上により、図10(e)に示すように、本実施形態に係る光モジュールが完成される。
【0068】
光ファイバ212から光コネクタ200に入力された光の進行方向は、図10(e)の破線矢印で示すように、第2の溝203を介して下方向に変わる。
【0069】
本実施形態に係る光モジュールの製法は、第1の基板要素部と第の2の基板要素部が光導波路を挟み、嵌め合わされることを特徴とする。これにより、光ファイバの両端が固定されているものに対しても、本実施形態に係る光コネクタを用いて光モジュールを製造することができる。
【0070】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態に係る光コネクタについて説明する。
【0071】
図11(a)は、第6の実施形態に係る光コネクタ300の斜視図である。図11(b)は、第6の実施形態に係る光コネクタ300の底面図である。図11(c)は、図11(b)の11c−11c線断面図である。図11(d)は、図11(b)の11d−11d線断面図である。図11(e)は、第6の実施形態に係る光コネクタ300の第1の基板要素部314と第2の基板要素部315とが嵌合した状態を表す斜視図である。第6の実施形態に係る光コネクタ300は、第1の基板要素部314と第2の基板要素部315とを有する。図11(e)に示すように、第1の基板要素部314と第2の基板要素部315は嵌合して基板となる。図11に示すように第2の基板要素部315は第2の基板要素部315の一端から他端にわたって配置された第1の溝302を有する。第1の溝302は光導波路を設置するための溝である。第1の溝302と第2の溝303とは、基板に入力する光または基板から出力する光が第2の溝303を介して第1の溝302に設置される光導波路と結合するように配置されている。第1の基板要素部314には、図11に示すように、光導波路を切断できる切断部を有する第2の接続部316が配置されている。第2の接続部316は、その表面に金属などでコーティングされて光を反射することが可能な反射面を有する。反射面は第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して配置されている。第2の接続部316は、第1の基板要素部314と第2の基板要素部315が嵌合した際に第1の溝302に設置される光導波路を切断する位置に配置される。
【0072】
第4の実施形態に係る光コネクタは、図11に示すように、基板が第1の基板要素部314と第2の基板要素部315とからなり、さらに、第2の接続部316を有することを特徴とする。このように基板が複数の部品から構成されることで、光導波路を第1の基板要素部314と第2の基板要素部315で挟んで第1の溝302に配置することが可能となる。すなわち、光導波路の先端を第1の溝に通すことが不要となるため、光導波路の両端が固定されているものに対しても、本実施形態に係る光コネクタを用いることができる。さらに、第2の接続部316を所定の位置に有することで、光導波路を第1の基板要素部314と第2の基板要素部315で挟むと同時に光導波路を切断することができ、より簡便に挿着することができる。
【0073】
本実施形態に係る光コネクタを用いると、光導波路を光コネクタに挿着するときに光ファイバの長さをその場で容易に調整することが可能となる。これは、基板を貫通する第1の溝に光導波路を通して光導波路の長さを自由に調整でき、その後、光導波路を第2の溝に沿って容易に切断できるからである。
【0074】
また、本実施形態に係る光コネクタを用いると、その両端が固定化された光ファイバに容易に挿着することが可能となる。これは、光導波路が有する基板が複数の基板要素部に分かれていて、その複数の基板要素部で光導波路を挟むからである。
【0075】
なお、第2の接続部は、第1の基板要素部、第2の基板要素部の少なくともいずれか一方にあれば良い。例えば、図12に示すように第1の基板要素部314と第2の基板要素部315の両方に第2の接続部が配置されていても良い。
【0076】
[第7の実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態に係る光モジュールの製造方法について、図13を参照して説明する。本実施形態では、第6の実施形態に係る光コネクタを用いた。本実施形態では、光導波路として光ファイバを用いた場合について説明する。
【0077】
はじめに、図13(a)に示すように、第1の基板要素部314と第2の基板要素部315は光ファイバ312を所望の位置で挟み嵌め合わせて固定される。光ファイバ313は第1の基板要素部314に配置された第1の溝302に設置される。
【0078】
このとき、図13(b)に示すように、第2の接続部316は第1の溝に配置された光ファイバ312を切断する。第2の接続部316はその表面に反射面を有するため、光ファイバ312を伝播して第2の接続部316に到達した光を反射することができる。
【0079】
以上により、図13(b)に示すように、本実施形態に係る光モジュールが完成される。光ファイバ312から光コネクタ300に入力された光の進行方向は、図13(b)の破線矢印で示すように、第2の接続部316を介して下方向に変わる。
【0080】
本実施形態に係る光モジュールの製造方法は、第1の基板要素部と第2の基板要素部が光導波路を挟み、嵌め合わされ、さらに、この嵌合時に光ファイバが第2の接続部によって切断されることを特徴とする。これにより、光ファイバを光コネクタに挿着する動作と光ファイバを切断する動作を同じ工程で行うことができるため、製造工程を減らすことができる。
【0081】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0082】
100、200、300 光コネクタ
101 基板
102、202、302 第1の溝
103、203、303 第2の溝
104 導波部
105 接着穴
106 第1の接続部
107 切断部
108 ミラーホルダー
109 反射部
110 光透過穴
111 導波部
112、212、312 光ファイバ
113、213 カッター部
214、314 第1の基板要素部
215、315 第2の基板要素部
316 第2の接続部
500 光コネクタ
502 光ファイバ穴
506 反射面
512 光ファイバ
517 嵌合ピン
518 光電気複合基板
519 光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光導波路を配置するための第1の溝と、前記第1の溝と交差する第2の溝とが配置され、
前記第1の溝は前記基板の一端から他端にわたって配置され、
前記第2の溝は、前記第2の溝を構成する壁面が前記第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して配置され、
前記基板に入力する光または前記基板から出力する光が前記第2の溝を介して前記光導波路と結合するように、前記第1の溝と前記第2の溝とが配置された光コネクタ。
【請求項2】
第1の接続部をさらに有し、前記第1の接続部は反射部を備え、前記第2の溝に配置されることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記第1の接続部は、前記光導波路を切断できる切断部を有することを特徴とする請求項2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記反射部が、前記反射部に到達した光の少なくとも一部を反射し、一部を透過させることを特徴とする請求項2または3に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記基板の表面と前記第2の溝との間に導波部をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記導波部を2以上有することを特徴とする請求項5に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記基板は第1の基板要素部と第2の基板要素部とを有し、
前記第1の基板要素部と前記第2の基板要素部とが嵌合して前記第1の溝と前記第2の溝とが構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項8】
第1の基板要素部と第2の基板要素部とを有し、
前記第1の基板要素部と前記第2の基板要素部の少なくとも一方の一端から他端にわたって光導波路を配置するための第1の溝が配置され、
前記第1の基板要素部と前記第2の基板要素部の少なくとも一方に第2の接続部を有し、前記第2の接続部は反射部と前記光導波路を切断できる切断部とを備え、
前記反射部は、前記第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して配置され、
前記第1の基板要素部もしくは前記第2の基板要素部に入力する光または前記第1の基板要素部もしくは前記第2の基板要素部から出力する光が、前記第2の接続部を介して前記光導波路と結合するように、前記第1の溝と前記第2の接続部とが配置された光コネクタ。
【請求項9】
前記第1の基板要素部の表面または前記第2の基板要素部の表面と、前記第2の接続部との間に導波部をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の光コネクタ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の光コネクタの前記第1の溝に光導波路が配置され、前記光導波路は前記第2の溝によって分断されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項11】
基板の一端から他端にわたって光導波路を配置するための第1の溝を形成する工程と、
前記基板に、前記第1の溝と交差して第2の溝を形成する工程と、
前記第1の溝の少なくとも一部に光導波路を配置する工程と、
前記光導波路を前記第2の溝の壁面に沿って切断する工程と、を有し、
前記第2の溝を形成する工程は、前記基板に入力する光または前記基板から出力する光が前記第2の溝を介して前記光導波路と結合するように、前記第2の溝を構成する壁面を前記第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して形成する工程を含むことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項12】
第1の基板要素部と第2の基板要素部の少なくとも一方の一端から他端にわたって光導波路を配置するための第1の溝を形成する工程と、
前記第1の基板要素部と前記第2の基板要素部の少なくとも一方に第2の溝を形成する工程と、
前記第1の溝の少なくとも一部に光導波路を配置する工程と、
前記第1の基板要素部と前記第2の基板要素部とで前記光導波路を挟み、前記第1の基板要素部と前記第2の基板要素部を嵌合する工程と、
前記嵌合する工程後に、前記光導波路を前記第2の溝の壁面に沿って切断する工程と、を有し、
前記第2の溝を形成する工程は、前記第1の基板要素部もしくは前記第2の基板要素部に入力する光または前記第1の基板要素部もしくは前記第2の基板要素部から出力する光が前記第2の溝を介して前記光導波路と結合するように、前記第2の溝を構成する壁面を前記第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して形成する工程を含むことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項13】
前記第2の溝に、反射部を備えた第1の接続部を配置する工程をさらに有することを特徴とする請求項11または12に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記第1の接続部を配置する工程は、前記光導波路を切断できる切断部をさらに有する第1の接続部を用いて前記光導波路を切断する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項15】
第1の基板要素部と第2の基板要素部の少なくとも一方の一端から他端に光導波路を配置するための第1の溝を形成する工程と、
前記第1の基板要素部と前記第2の基板要素部の少なくとも一方に反射部と前記光導波路を切断できる切断部とを有する第2の接続部を形成する工程と、
前記第1の溝の少なくとも一部に光導波路を配置する工程と、
前記第1の基板要素部と前記第2の基板要素部との間に前記光導波路を挟み、前記切断部で前記光導波路を切断する切断工程と、を有し、
前記第2の接続部を形成する工程は、前記第1の基板要素部もしくは前記第2の基板要素部に入力する光または前記第1の基板要素部もしくは前記第2の基板要素部から出力する光が前記第2の接続部を介して前記光導波路と結合するように、前記反射部を前記第1の溝の延伸方向に垂直な面に対して傾斜して形成する工程を含むことを特徴とする光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−7955(P2011−7955A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150109(P2009−150109)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】