説明

光スイッチング装置

【課題】複数の光変調素子に照射する光の利用効率を向上する。
【解決手段】電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子8を備えた複数のチップ9を所定状態に配置して有する空間光変調手段4に光源2から光源光を照射すると共に、前記複数の光変調素子8を駆動制御して前記空間光変調手段4の射出光をオン・オフする光スイッチング装置1であって、前記空間光変調手段4は、前記光源光をPBS6により偏波面が直交する二つの直線偏光に分離し、該二つの直線偏光を前記複数のチップ9に照射させる構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を備えた複数のチップを所定の配列ピッチで二列に並べて有する光スイッチング装置に関し、詳しくは、複数の光変調素子に照射する光の利用効率を向上しようとする光スイッチング装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光スイッチング装置は、電気光学結晶材料から成る基板上に設けた一対の電極に電圧を印加して電界を発生させることで、上記基板に複屈折を生じさせ、前段に配置した偏光子を通じて光変調素子に入射した光を90°偏光させて、射出した光を検光子を通過させる一方、電界が発生していない場合に、偏光子を通過した光が偏光されることなく光変調素子を透過した後、検光子で遮られるようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−55321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の光スイッチング装置においては、ランダム偏光の光源光のうち偏光子を透過した直線偏光を光スイッチング素子に入射させるようになっていたため、光源光の略半分が無駄に捨てられており、光変調素子に照射する光の利用効率が悪かった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、複数の光変調素子に照射する光の利用効率を向上しようとする光スイッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による光スイッチング装置は、電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を備えた複数のチップを所定状態に配置して有する空間光変調手段に光源から光源光を照射すると共に、前記複数の光変調素子を駆動制御して前記空間光変調手段の射出光をオン・オフする光スイッチング装置であって、前記空間光変調手段は、前記光源光を偏光ビームスプリッタにより偏波面が直交する二つの直線偏光に分離し、該二つの直線偏光を前記複数のチップに照射させる構成としたものである。
【0007】
このような構成により、光源光を偏光ビームスプリッタにより偏波面が直交する二つの直線偏光に分離し、該二つの直線偏光を、電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を備えた複数のチップを所定状態に配置して有する空間光変調手段の各チップに照射させる一方、上記複数の光変調素子を駆動制御して空間光変調手段の射出光をオン・オフする。
【0008】
また、前記複数のチップは、所定の配列ピッチで二列に並べて配置されており、前記分離された二つの直線偏光は、前記二列に並んだ複数のチップに夫々照射するものである。これにより、所定の配列ピッチで二列に並べて配置された複数のチップにて、各列のチップに対して分離された二つの直線偏光を夫々照射する。
【0009】
さらに、前記二列に並んだ複数のチップは、前記並び方向に互い違いに配置されると共に、各チップに備えた複数の光変調素子が前記並び方向に所定の配列ピッチで並ぶように配置されたものである。これにより、二列に並んだ複数のチップを並び方向に互い違いに配置すると共に、各チップに備えた複数の光変調素子が上記並び方向に所定の配列ピッチで並ぶようにして射出光をオン・オフする。
【0010】
さらにまた、前記空間光変調手段に入射する光源光の光路上に、該光源光を横断面細線状の光ビームに整形する光ビーム整形手段を配設したものである。これにより、空間光変調手段に入射する光源光の光路上に配設した光ビーム整形手段で光源光を横断面細線状の光ビームに整形する。
【0011】
そして、前記偏光ビームスプリッタにより分離された二つの直線偏光のうち一方の直線偏光の光路上に偏波面を90°回転させる波長板を配置したものである。これにより、偏光ビームスプリッタにより分離された二つの直線偏光のうち一方の直線偏光の光路上に配置した波長板で一方の直線偏光の偏波面を90°回転して、他方の直線偏光の偏波面に揃える。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、光源光を偏光ビームスプリッタにより偏波面が直交する二つの直線偏光に分離し、各直線偏光を所定状態に配置された複数のチップに照射するようにしているので、光源光の略全てを利用することができ、従来技術におけるよりも光の利用効率を向上することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、二列に並べて配置された複数のチップにて、各列のチップに対して分離された二つの直線偏光を夫々照射するようにしているので、分離された二つの直線偏光を列状に並んだ複数のチップに対応した形状に絞って、列毎に照射させることができ、光の利用効率をより向上することができる。
【0014】
さらに、請求項3に係る発明によれば、例えば被露光体を上記複数のチップの並び方向と略直交する方向に搬送しながら、該被露光体上に空間光変調手段の各光変調素子の駆動を制御して光を照射すれば、被露光体の搬送方向手前側にある複数のチップの間を搬送方向奥側にある複数のチップで補完して露光することができ、緻密な露光パターンを形成することができる。
【0015】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、空間光変調手段に入射する光源光を直交二軸の一軸方向に絞って横断面細線状の光ビームに整形しているので、二列に並んだ複数のチップのチップ列毎に光を効率よく照射することができる。
【0016】
そして、請求項5に係る発明によれば、分離された二つの直線偏光のうち一方の直線偏光の光路上に偏波面を90°回転させる波長板を配置して各チップ列に入射する直線偏光の偏波面が同じ向きになるようにしているので、検光子を共通化することができる。したがって、空間光変調手段の製造が容易になる。また、隣のチップ列に入射する光の漏れ光によるノイズ成分の発生がなく、スイッチング特性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による光スイッチング装置の実施形態を示す正面図である。
【図2】上記スイッチング装置に使用されるシャッタデバイスの示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面図である。
【図3】上記シャッタデバイスの動作を示す説明図であり、(a)はオン駆動状態を示し、(b)はオフ駆動状態を示している。
【図4】本発明の光スイッチング装置により形成される一パターン例を示す説明図である。
【図5】本発明のスイッチング装置を適用した露光装置の構成を示す概要図である。
【図6】上記露光装置の制御手段を示すブロック図である。
【図7】上記露光装置により形成される一露光パターン例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による光スイッチング装置の実施形態を示す正面図である。この光スイッチング装置1は、電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を備えた複数のチップを所定の配列ピッチで二列に並べて有するもので、光の進行方向上流側から下流側に向かって、光源2と、光ビーム整形手段3と、空間光変調手段4とをこの順に配置して構成されている。
【0019】
上記光源2は、例えば紫外線等のランダム偏光や円偏光を放射するものであり、例えばランプやマルチモードファイバー出力のレーザ光源である。
【0020】
上記光ビーム整形手段3は、光源2から入射する光を光軸に直交する方向に延びた横断面細線状の光ビームを生成するもので、シリンドリカルレンズ等の光学部品を含んで構成されている。この横断面細線状に整形された光ビームは、本実施形態においては、図1の手前から奥に向かって長手の形状となっている。
【0021】
上記空間光変調手段4は、入射光をオン・オフ制御して射出するものであり、シャッタデバイス5と、偏光子としての偏光ビームスプリッタ6、検光子としての偏光板7とを備えている。
【0022】
ここで、上記シャッタデバイス5は、図2に示すように、電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子8を備えた複数のチップ9を所定の配列ピッチで二列に並べて有するものであり、各チップ9は引出線10を形成した配線基板11上に位置決め配置して固定されている。この場合、シャッタデバイス5は、複数のチップ9の並び方向が横断面細線状に整形された光ビームの長軸方向と合致するように配置されている。なお、以下、同図において右側に位置するチップ9の列を「第1のチップ列12A」といい、左側に位置するチップ9の列を「第2のチップ列12B」という。
【0023】
このようなシャッタデバイス5は、例えば次のようにして形成することができる。即ち、電気光学結晶材料から成る所定厚みの短冊状の基板の長軸に平行な両端縁部をダイシングソー等を使用して所定幅で所定深さだけ切除する。次に、この切除部の側面に導電膜を公知の技術により被着させる。続いて、上記長軸に交差し、上記切除部の深さよりも深さが深く、所定幅の複数の分離溝を所定ピッチで形成する。これにより、対向面に電極13を形成した柱状の複数の光変調素子8が互いに電気的に分離された状態で、上記基板の長軸上に所定ピッチで並べて形成されることになる。この場合、上記切除部の底部に位置する電極13は、引出線10と電気的に接続するための電極パッド14となる。
【0024】
一方、図2に示すように、所定厚みの短冊状の例えば石英等の透明な基板15に、上記チップ9に備える複数の光変調素子8を挿通可能な大きさの平面視長方形状の複数の貫通孔16を上記基板15の長軸方向に互い違いの二列状態に形成する。ここで、各貫通孔16の形成位置は、各貫通孔16に挿通された複数の光変調素子8が基板15の長軸方向に所定の配列ピッチで並ぶように設定される。さらに、上記基板15の一面には、各貫通孔16の長軸に平行な両端縁部から両側方に延びると共に、各貫通孔16に挿通される複数の光変調素子8の上記配列ピッチと同じ配列ピッチで複数の引出線10を形成して配線基板11が形成される。この場合、該複数の引出線10のうち、上記基板15の内方に延びる引出線10は、基板15の長軸に沿って延びて形成され、一端部を基板15の短軸に平行な一方端部に形成された接地電極パッド17に接続した共通配線18に接続される。
【0025】
そして、複数の光変調素子8の各電極パッド14上に例えば半田ボールを配置した上記各チップ9を、複数の光変調素子8側から配線基板11の各貫通孔16に挿通し、さらに、これら全体を加熱して半田ボールを溶融させ、各光変調素子8の電極パッド14と配線基板11の引出線10とを電気的に接続する。これにより、シャッタデバイス5が形成される。この場合、二列に並んだ複数の光変調素子8の一対の電極13のうち、列の外側に面した電極13が駆動電極19となり、列の内側に面した電極13が接地電極20となる。
【0026】
上記シャッタデバイス5の光入射側には、偏光ビームスプリッタ(以下、「PBS」という)6が配置されている。このPBS6は、入射するランダム偏光Rを入射面に平行であり反射面6aを透過する直線偏光(以下、「P波」という)と、入射面に直交し反射面6aで反射する直線偏光(以下、「S波」という)に分離するものであり、分離された二つの直線偏光をシャッタデバイス5の第1及び第2のチップ列12A,12Bに夫々入射させるようになっている。なお、本実施形態においては、S波の光路上に波長板21(λ/2板)が配置されており、該波長板21によりS波の偏波面を90°回転して、偏波面をP波に揃えている。
【0027】
上記シャッタデバイス5の光射出側には、偏光板7が配置されている。この偏光板7は、S波の直線偏光を透過させ、P波の直線偏光を遮断するものであり、偏光軸をS波の偏波面に合致させて配置されている。なお、図1において、符号22は、光路を直角方向に折り曲げる平面反射ミラーである。
【0028】
次に、このように構成された光スイッチング装置1の動作について説明する。
先ず、光源2から放射されたランダム偏光Rは、光ビーム整形手段3により図1において手前から奥に延びた横断面細線状の光ビームに整形される。
【0029】
光ビーム整形手段3を射出した光ビームは、空間光変調手段4のPBS6に入射し、PBS6の反射面6aにおいてこれを透過するP波と、ここで反射されるS波に分離される。
【0030】
PBS6により分離された二つの直線偏光のうち、反射面6aを透過したP波は、シャッタデバイス5の第1のチップ列12Aに入射する。
【0031】
一方、PBS6の反射面6aで反射されたS波は、波長板21により偏波面が90°回転されてP波の偏波面に揃えられる。そして、平面反射ミラーで反射されて、シャッタデバイス5の第2のチップ列12Bに入射する。
【0032】
シャッタデバイス5の第1及び第2のチップ列12A,12Bにそれぞれ入射する二つのP波は、各チップ列12A,12Bに備える複数の光変調素子8のオン・オフ駆動状態に応じて偏波面が90°回転され、又は偏波面が回転されることなく各光変調素子8を射出する。
【0033】
この場合、図3(a)に示すように、オン駆動された光変調素子8に入射したP波は、偏波面が90°回転されてS波となって光変調素子8を射出する。そして、光変調素子8を射出したS波は、偏光軸をS波の偏波面に合致させて配置された偏光板7を透過して照射対象物23上に到達し、光変調素子8の横断面形状に対応する照射ピクセルを形成する。
【0034】
一方、図3(b)に示すように、オフ駆動された光変調素子8に入射したP波は、偏波面が回転されることなくP波のまま光変調素子8を射出する。そして、光変調素子8を射出したP波は、偏光軸をS波の偏波面に合致させて配置された偏光板7で遮断される。このようにして、照射対象物23上には、例えば図4に示すように、複数の光変調素子8の駆動状態に応じて複数のピクセル24が形成されることになる。なお、図4において、黒く塗りつぶしたピクセル24aは、オン駆動の光変調素子8に対応し、光が照射されたピクセル(照射ピクセル)であり、白抜きのピクセル24bは、オフ駆動の光変調素子8に対応し光が遮断されたピクセルである。
【0035】
図5は、本発明の光スイッチング装置1を適用した露光装置の構成を示す概要図である。この露光装置は、被露光体25を一定方向に搬送しながら露光するものであり、光スイッチング装置1と、搬送手段26と、撮像手段27と、結像レンズ28と、制御手段29とを備えている。
【0036】
上記光スイッチング装置1は、紫外線を放射する光源2としてレーザ光源を備え、シャッタデバイス5の第1のチップ列12Aを矢印Aで示す被露光体25の搬送方向手前側とし、第2のチップ列12Bを搬送方向奥側として配置している。このとき、各チップ列12A,12Bの各光変調素子8の矢印A方向の幅はwに、また第1及び第2のチップ列12A,12Bの中心線間距離は、nw(nは正の整数)に設定されている。
【0037】
上記光スイッチング装置1に対向して搬送手段26が設けられている。この搬送手段26は、上面に被露光体25を載置して矢印Aで示す方向に一定速度で搬送するものであり、例えば上面と被露光体25との間に空気層を形成して被露光体25を所定量だけ浮上させた状態で搬送するようになっている。そして、図示省略の速度センサーと、位置センサーとを備えている。
【0038】
上記光スイッチング装置1の被露光体25の搬送方向手前側には、撮像手段27が設けられている。この撮像手段27は、被露光体25に形成された基準パターンを撮像して露光位置を検出するためのものであり、搬送手段26の上面に平行な面内にて被露光体25の搬送方向(A方向)に略直交する方向に複数の受光素子を一直線状に並べたラインカメラである。そして、光スイッチング装置1のシャッタデバイス5の二列のチップ列12A,12Bのうち、被露光体25の搬送方向手前側に位置する第1のチップ列12Aによる光照射位置に対して搬送方向手前側に距離Lだけ離隔した位置を撮像するように設けられている。
【0039】
上記光スイッチング装置1と搬送手段26との間には、結像レンズ28が配設されている。この結像レンズ28は、搬送されてくる被露光体25表面にシャッタデバイス5の複数の光変調素子8の端面像を結像するものである。
【0040】
上記光スイッチング装置1のシャッタデバイス5と、撮像手段27と、搬送手段26に接続して制御手段29が設けられている。この制御手段29は、シャッタデバイス5の複数の光変調素子8を夫々個別に駆動して、光スイッチング装置1の空間光変調手段4を射出する光により被露光体25上に所定の露光パターンを形成させるものであり、画像処理部30と、CADデータ記憶部31と、比較器32と、ビットマップデータ作成部33と、搬送手段駆動制御部34とを備えている。
【0041】
ここで、画像処理部30は、撮像手段27で撮像された被露光体25表面の画像を処理して画像データを生成するものである。また、CADデータ記憶部31は、被露光体25表面上の露光位置に対応して露光する全露光パターンのCADデータを記憶するもので、メモリ又はCD−ROM等である。さらに、比較器32は、画像処理部30で生成された画像データと、該画像データに対応してCADデータ記憶部31から読み出されたCADデータとを比較するもので、両画像データのずれ量を検出する機能も果たす。また、ビットマップデータ作成部33は、上記ずれ量に応じてシャッタデバイス5に備える複数の光変調素子8の配列ピッチのゼロを含む整数倍だけ、被露光体25の搬送方向と略直交する方向にシフトさせたビットマップデータを作成してシャッタデバイス5に転送するものである。そして、搬送手段駆動制御部34は、被露光体25を所定速度で矢印A方向に搬送するように搬送手段26の駆動を制御すると共に、搬送手段26に備えた位置センサーの出力に基づいて、撮像手段27により被露光体25の基準パターン上の最初の露光位置が撮像されてから被露光体25が光変調素子8の被露光体25の搬送方向の幅wに等しい距離だけ搬送される度に、CADデータ記憶部31から順次所定のCADデータを比較器32に転送させるように動作する。
【0042】
次に、このように構成された露光装置の動作について説明する。
先ず、光スイッチング装置1の光源2が点灯された後、被露光体25を矢印A方向に搬送しながら撮像手段27で被露光体25表面に形成された基準パターン上の露光位置の画像を撮像する。撮像された画像は、制御手段29の画像処理部30で画像処理されて画像データに変換される。そして、この画像データは、CADデータ記憶部31から読み出された対応するCADデータと比較器32で比較され両画像データの搬送方向に略直交する方向のずれ量が検出される。
【0043】
この場合、上記ずれ量がmP(Pは光変調素子8の配列ピッチ、mはゼロを含む整数)であるとき、ビットマップデータ作成部33において、被露光体25の搬送方向に略直交する方向にmPだけシフトしたビットマップデータを作成してシャッタデバイス5の第1のチップ列12Aに転送する。なお、ビットマップデータの転送は、撮像手段27により最初の露光位置が検出されてから被露光体25が矢印A方向に距離Lだけ搬送され、上記露光位置が上記第1のチップ列12Aの下側に到達したタイミングで行われる。又は、上記露光位置が上記第1のチップ列12Aの下側に到達する前にシャッタデバイス5に備える図示省略のメモリに転送しておき、到着時にメモリからビットマップデータを読み出して第1のチップ列12Aの複数の光変調素子8を駆動してもよい。こうして、第1のチップ列12Aの複数の光変調素子8が上記ビットマップデータに応じて駆動されて、被露光体25上には、図7に示す露光ピクセル34が形成されることになる。この場合、第1のチップ列12Aに転送されるビットマップデータのうち、隣接するチップ9間のビットマップデータは脱落した状態となる。また、後述する第2のチップ列12Bに転送されるビットマップデータにおいても同様である。
【0044】
以後、被露光体25が距離wだけ搬送される度に、ビットマップデータ作成部33からシャッタデバイス5の第1のチップ列12Aに所定のビットマップデータが転送され、該ビットマップデータに基づいて第1のチップ列12Aの各光変調素子8が駆動されて所定のパターンが生成され、該所定のパターンが被露光体25の所定位置に露光される。
【0045】
一方、シャッタデバイス5の第2のチップ列12Bには、n回前に第1のチップ列12Aに転送されたビットマップデータと同じビットマップデータが転送される。これにより、図7に示すように、第1のチップ列12Aによりn回前に露光された複数の露光ピクセル34と同じ列上に第2のチップ列12Bによる露光ピクセル35を形成することができる。この場合、第1及び第2のチップ列12A,12Bの各チップ9は、互い違いに配置されているので、第1のチップ列12Aによる未露光部分を第2のチップ列12Bにより補完して露光し、図7に示すような完全な露光パターンを形成することができる。ここで、結像レンズ28の高さ位置を調整して、露光ピクセル34,35の解像度を若干落としてやれば、複数の露光ピクセル34,35間の部分も露光することができる。
【0046】
なお、上記実施形態においては、PBS6で分離されたS波の光路上に波長板21を配設した場合について説明したが、波長板21はP波の光路上に配設してもよい。
【0047】
また、波長板21は無くてもよい。この場合、偏光板7は、第1のチップ列12Aに対応する偏光板と、第2のチップ列12Bに対応する偏光板の二つの偏光板に分離し、且つ各偏光板の偏光軸が互いに直交するように配置するとよい。又は、共通の偏光板7を一つ配置してもよい。この場合、第1のチップ列12Aと第2のチップ列12Bとは、互いに反転したビットマップデータにより駆動されることになる。
【0048】
さらに、上記実施形態においては、偏光板7の偏光軸がS波の偏波面に合致している場合について説明したが、本発明はこれに限られず、偏光板7の偏光軸は、P波の偏波面に合致させてもよい。この場合、第1及び第2のチップ列12A,12Bは、上記実施形態のビットマップデータとは反転したビットマップデータにより駆動されることになる。
【0049】
そして、上記実施形態においては、シャッタデバイス5の配線基板11側が上になるようにシャッタデバイス5を配置した場合について説明したが、シャッタデバイス5は、上下面を反転して配置してもよい。
【0050】
以上の説明においては、複数のチップが二列に並んで配置されている場合について述べたが、本発明はこれに限られず、所定状態に配置されているならば、例えば一直線や斜め線に沿った状態又はマトリクス状等の如何なる状態に配置されていてもよい。この場合、一直線状に並んだ複数のチップに対して、細線状に整形されPBS6で二つの直線偏光に分離された光ビームを照射するためには、上記二つの直線偏光が略一直線状に並ぶように光ビーム整形手段3、PBS6及び反射ミラー22を配置するとよい。
【符号の説明】
【0051】
1…光スイッチング装置
2…光源
3…光ビーム整形手段
4…空間光変調手段
6…PBS(偏光ビームスプリッタ)
8…光変調素子
9…チップ
12A…第1のチップ列
12B…第2のチップ列
21…波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を備えた複数のチップを所定状態に配置して有する空間光変調手段に光源から光源光を照射すると共に、前記複数の光変調素子を駆動制御して前記空間光変調手段の射出光をオン・オフする光スイッチング装置であって、
前記空間光変調手段は、前記光源光を偏光ビームスプリッタにより偏波面が直交する二つの直線偏光に分離し、該二つの直線偏光を前記複数のチップに照射させる構成としたことを特徴とする光スイッチング装置。
【請求項2】
前記複数のチップは、所定の配列ピッチで二列に並べて配置されており、
前記分離された二つの直線偏光は、前記二列に並んだ複数のチップに夫々照射することを特徴とする請求項1記載の光スイッチング装置。
【請求項3】
前記二列に並んだ複数のチップは、前記並び方向に互い違いに配置されると共に、各チップに備えた複数の光変調素子が前記並び方向に所定の配列ピッチで並ぶように配置されたことを特徴とする請求項2記載の光スイッチング装置。
【請求項4】
前記空間光変調手段に入射する光源光の光路上に、該光源光を横断面細線状の光ビームに整形する光ビーム整形手段を配設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光スイッチング装置。
【請求項5】
前記偏光ビームスプリッタにより分離された二つの直線偏光のうち一方の直線偏光の光路上に偏波面を90度回転させる波長板を配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光スイッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−204508(P2010−204508A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51564(P2009−51564)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】