説明

光スイッチ

【課題】部品の数を減らすことができ、これにより小型化が容易な光スイッチを提供する。
【解決手段】波長多重された光を入力する1以上の入力ポート及び1以上の出力ポートを構成するn本のファイバからなるファイバアレイと、ファイバアレイの各ファイバにそれぞれ対応するn個のレンズからなるレンズアレイと、レンズアレイからの光を各波長に分光する分光素子と、分光された各波長を受光し、波長毎に独立に偏向可能な複数の偏向素子により、各波長毎に出力ポート選択せしめる偏向手段と、を備え、ファイバアレイのファイバは一列に配列されており、ファイバアレイの各ファイバにそれぞれ入射又は出射する光が交差する領域を交差位置Cとし、ファイバアレイのファイバと平行で、かつ、交差位置Cを通る軸を軸Zとしたとき、ファイバのコアとこれに対応するレンズの光軸との距離δは、軸Zからの距離Sに応じて異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すマルチプレクサのような光スイッチでは、ファイバアレイからの光束をマイクロレンズアレイで平行光とし、以降の光学系に導いている。平行となった光束は、例えば図5では、2枚のレンズで拡大されて分光素子に導れ、その後集光されてミラーアレイに導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6657770号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような構成の光スイッチでは、入出力ポートから出射した光をレンズアレイで平行とした後、様々な光学素子を用いて偏向手段に集光し、再び入出力ポートに光を戻す必要があるため、小型化が難しく、また、各光学素子の特性と、調整誤差の総和によって最終的な品質が劣化するおそれがある。また、光学素子の数が多ければ多いほど理想的な状態からの乖離が大きくなることは避けられなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、部品の数を減らすことができ、これにより小型化が容易な光スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光スイッチは、波長多重された光を入力する1以上の入力ポート及び1以上の出力ポートを構成するn本のファイバからなるファイバアレイと、ファイバアレイの各ファイバにそれぞれ対応するn個のレンズからなるレンズアレイと、レンズアレイからの光を各波長に分光する分光素子と、分光された各波長を受光し、波長毎に独立に偏向可能な複数の偏向素子により、各波長毎に出力ポート選択せしめる偏向手段と、を備え、ファイバアレイのファイバは一列に配列されており、ファイバアレイの各ファイバにそれぞれ入射又は出射する光が交差する領域を交差位置Cとし、ファイバアレイのファイバと平行で、かつ、交差位置Cを通る軸を軸Zとしたとき、ファイバのコアとこれに対応するレンズの光軸との距離δは、軸Zからの距離Sに応じて異なっていることを特徴としている。
【0007】
本発明の光スイッチにおいては、ファイバアレイのファイバ間のピッチをP1とし、レンズアレイのレンズ間のピッチをP2とし、ファイバアレイの端面から交差位置Cまでの距離をL1とし、レンズアレイの中心から交差位置Cまでの距離をL2としたとき、次式(1)が成り立つことが好ましい。
P2/L2=P1/L1 ・・・(1)
【0008】
本発明の光スイッチにおいて、上述の交差位置Cは、収差補正に対応する有限の幅をもった領域であることが好ましい。
【0009】
本発明の光スイッチにおいて、上述の交差位置Cは、レンズアレイに対して偏向手段側にあることが好ましい。
【0010】
本発明の光スイッチにおいて、上述の交差位置Cは、レンズアレイに対してファイバ側にあることが好ましい。
【0011】
本発明の光スイッチにおいて、上述の距離Sは、ファイバの配列方向と平行な方向への距離であることが好ましい。
この場合、軸Zからm番目のファイバのコアと、これに対応するレンズの光軸と、の距離をδmとしたとき、次式(2)が成り立つことが好ましい。
δm+1>δm・・・(2)
【0012】
本発明の光スイッチにおいては、軸Zに最も近いファイバに対応する距離δ0は略ゼロであることが好ましい。
【0013】
本発明の光スイッチにおいて、上述の距離Sは、ファイバの配列方向と直交する方向への距離であることが好ましい。
この場合、軸Zからm番目のファイバのコアと、これに対応するレンズの光軸と、の距離をδmとしたとき、次式(3)が成り立つことが好ましい。
δm+1>δm・・・(3)
【0014】
本発明の光スイッチにおいて、上述の偏向手段は、角度調整機能を有する複数のミラーがファイバの配列方向と直交する方向に配列して構成されていることが好ましい。
【0015】
本発明の光スイッチにおいて、上述の偏向手段は、角度調整機能を有する複数のミラーがファイバの配列方向と平行な方向に配列して構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光スイッチは、部品の数を減らすことができ、これにより小型化が容易となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光スイッチの全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る光スイッチの全体構成を示す側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る光スイッチにおけるファイバアレイとレンズアレイとの位置関係を示す正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るファイバアレイ、レンズアレイ、及び交差位置の位置関係を示す平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る光スイッチの全体構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る光スイッチの全体構成を示す側面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るファイバアレイ、レンズアレイ、及び交差位置の位置関係を示す平面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る光スイッチにおけるファイバアレイとレンズアレイとの位置関係を示す正面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る光スイッチの全体構成を示す平面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る光スイッチの全体構成を示す側面図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る光スイッチにおけるファイバアレイとレンズアレイとの位置関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る光スイッチの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光スイッチ10の全体構成を示す平面図である。図2は、第1実施形態に係る光スイッチ10の全体構成を示す側面図である。図3は、第1実施形態に係る光スイッチ10におけるファイバアレイ20とレンズアレイ30との位置関係を示す正面図である。図4は、第1実施形態に係るファイバアレイ20、レンズアレイ30、及び交差位置の位置関係を示す平面図である。
【0020】
図1、図2に示すように、第1実施形態に係る光スイッチ10は、ファイバアレイ20と、レンズアレイ30と、光学素子40と、分光素子としての回折格子50と、偏向手段としてのミラーアレイ60と、を備える。
【0021】
ファイバアレイ20は、入力ポートを構成する1本の入力ファイバと、出力ポートを構成するn本の出力ファイバと、からなる。レンズアレイ30は、ファイバアレイ20の各入出力ファイバに対応した複数のマイクロレンズを備える。入力ファイバは、波長多重された光を入力する。ここで、図1から図4においては、ファイバアレイ20を構成するファイバ、及び、レンズアレイ30を構成するマイクロレンズは、一部のみを表示している。
【0022】
光学素子40は、レンズアレイ30から入射した光を平行光に変換するために、例えば、レンズ、凹面鏡を用いる。回折格子50(グレーティング)は、分光方向が光スイッチ10の高さ方向(図2の上下方向)となるように配置され、光学素子40から入射した光を各波長に分光する。分光素子としては、回折格子のほか、プリズムその他の素子を使用することも可能である。
【0023】
ミラーアレイ60は、互いに独立して動作可能な角度調整機能を備え、ファイバアレイ20の各ファイバの配列方向と直交する方向に配列された、複数のマイクロミラーを備える。マイクロミラーは、回折格子50によって分光された各波長の光をそれぞれ受光し、波長ごとに独立に偏向可能であり、これにより、波長ごとに出力ポートを選択できる。
【0024】
図3及び図4に示すように、ファイバアレイ20を構成するファイバ21、22、23、24、25、26、27、28の各コア間のピッチP1と、レンズアレイ30を構成するマイクロレンズ31、32、33、34、35、36、37、38の各頂点間のピッチP2と、が同一でない。さらに、図1、図2に示すように、ファイバアレイ20の各ファイバから出力された光束がレンズアレイ30を通過した後に点C1(交差位置C)で交わるように、ファイバアレイ20のそれぞれのファイバ及びレンズアレイ30のそれぞれのマイクロレンズが配置されている。ここで、交差点C1は、レンズアレイ30に対して、偏向手段としてのミラーアレイ60側にある。
【0025】
次に、光スイッチ10での光の伝播について図1、図2を用いて説明する。ファイバアレイ20の各入力ポートから出力された光束はレンズアレイ30の対応するマイクロレンズにより集光される。レンズアレイ30によって集光された光束は、点C1(交差位置C)で交わった後に、集光作用を有する光学素子40に入射する。この入射光は光学素子40によって平行光に変換された後に回折格子50に入射する。
【0026】
回折格子50に入射した光束は、集光作用を有する光学素子40に再び入射した後に、波長毎にミラーアレイ60に入射する。ミラーアレイ60によって角度が変化したそれぞれの光束は、逆の経路をたどり、ファイバアレイ20の任意の出力ファイバに結合される。結合される出力ファイバの位置は、ミラーアレイ60によって制御された偏向角によって選ばれる。
【0027】
ここで、図4を参照して、ファイバアレイ20を構成する各ファイバと、レンズアレイ30を構成する各マイクロレンズと、の位置関係について説明する。
図4において、ファイバアレイ20は、ファイバ20c、20n、20n+1を備え、レンズアレイ30は、ファイバ20c、20n、20n+1にそれぞれ対応する、マイクロレンズ30c、30n、30n+1を備える。
【0028】
ファイバ20c、20n、20n+1は、それぞれ一定のピッチP1をおいて、一列に配置されている。ファイバ20cは、そのコアが、ファイバ20c、20n、20n+1(マイクロレンズ30c、30n、30n+1)に入射又は出射する光が交差する点C1を通る軸Z上に載るように配置されている。ファイバアレイ20の各ファイバの配列方向に平行な方向、すなわち光スイッチ10の幅方向(図1、図4の上下方向)において、軸Zとファイバ20nとの距離はSnであり、軸Zとファイバ20n+1との距離はSn+1である。また、ファイバ20c、20n、20n+1は、レンズアレイ30側の端面と点C1との距離がそれぞれL1となっている。
【0029】
マイクロレンズ30c、30n、30n+1は、それぞれ一定のピッチP2をおいて、互いに平行に順に配置されている。マイクロレンズ30cは、その光軸が軸Z上に載るように配置されている。ファイバ20nのコアとマイクロレンズ30nの光軸との距離はδnであり、ファイバ20n+1のコアとマイクロレンズ30n+1の光軸との距離はδn+1である。また、マイクロレンズ30c、30n、30n+1は、その光学的中心と点C1との距離がそれぞれL2となっている。なお、図4に示す例に限らず、軸Zに最も近いファイバに対応する距離δは略ゼロであることが好ましい。この「略ゼロ」はゼロを含む。
【0030】
光スイッチ10においては、距離L1、距離L2、ファイバアレイ20のピッチP1、レンズアレイ30のピッチP2との間に以下の式(1)で示される関係が成り立つ。
P2/L2=P1/L1 ・・・(1)
【0031】
また、光スイッチ10においては、次式(2)で示される関係が成立する。
δm+1>δm ・・・(2)
ここで、δmは、軸Zからm番目のファイバのコアと、これに対応するレンズの光軸と、の距離である。
δm+1は、軸Zから(m+1)番目のファイバのコアと、これに対応するレンズの光軸と、の距離となる。ここでδmおよびδm+1はファイバのコアとこれに対応するレンズの光軸との距離δの一例である。
【0032】
本発明の光スイッチにおいては、レンズアレイのピッチP2は、ファイバアレイのピッチP1と異なっており、第1実施形態の光スイッチ10では、レンズアレイ30のピッチP2がファイバアレイ20のピッチP1よりも小さくなっている。このため、レンズアレイ30を構成するそれぞれのマイクロレンズは、ファイバアレイ20から出射、ないしはファイバアレイ20に入射する光の広がり角を変えるだけではなく、ファイバアレイ20の光軸を、ファイバ毎に異なる角度で変更させる機能を有している。したがって、ひとつのレンズアレイで、あたかも、従来のレンズアレイともう一つの光学素子とを組み合わせた場合と同じ機能を持つことができる。これにより、部品点数を減らすことができ、小型化も可能となる。
【0033】
なお、第1実施形態の光スイッチ10では、ファイバアレイ20の各ファイバ間のピッチ、及び、レンズアレイ30の各マイクロレンズ間のピッチ、をそれぞれ等間隔としている。レンズアレイ30を構成する個々のレンズが無収差と見なせる範囲ならば、レンズアレイ30は等ピッチでも一点に集光させることが可能である。しかし、完全に一点に集光させるためにはレンズアレイ30を構成する各レンズの軸外収差を考慮し、等間隔からずらした、最適化されたピッチとすることがより有効である。同様にレンズアレイ20を構成する各ファイバの間隔を等間隔からずらした、最適化されたピッチとしてもよい。
【0034】
ここで、特許文献1記載の光スイッチでは、ファイバアレイとレンズアレイを通った光束は平行なまま分光素子であるグレーティングに入射している。このような構成の場合、各光束の径をサブミリ以下の小さな物にするとビーム径が広がってしまい、互いに干渉を生じるため、ポート間隔を数ミリメートル程度とる必要があり、多ポートの波長選択スイッチを構成することはできない。これに対して、第1実施形態の光スイッチ10では、ファイバアレイ20とレンズアレイ30との位置関係により、ファイバアレイ20のそれぞれのポート(ファイバ)の光軸を傾けることができるので、ポート間の干渉が無く、多ポートの波長選択スイッチを実現することができる。
【0035】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る光スイッチ110の全体構成を示す平面図である。図6は、第2実施形態に係る光スイッチ110の全体構成を示す側面図である。
第2実施形態の光スイッチ110では、分光素子としての回折格子150(グレーティング)の分光方向をファイバアレイ120の各ファイバの配列方向と同じ方向としている。すなわち、回折格子150の分光方向を、光スイッチ110の幅方向(図5における上下方向)としている。これにより、ファイバアレイ120の各ファイバの配列方向とミラーアレイ160の各ミラーの配列方向も同じ方向になるため、非常にコンパクトな光学系を得ることができる。
【0036】
第2実施形態に係る光スイッチ110は、ファイバアレイ120と、レンズアレイ130と、光学素子140と、分光素子としての回折格子150と、偏向手段としてのミラーアレイ160と、を備え、回折格子150の分光方向をファイバアレイ120の各ファイバの配列方向と同じ方向にした以外は、第1実施形態の光スイッチ10と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。ここで、図5、図6に示すように、ファイバアレイ120の各ファイバから出力された光束は、レンズアレイ130を通過した後に点C2(交差位置C)で交わる。
【0037】
第2実施形態の光スイッチ110では、第1実施形態の光スイッチ10が奏する作用効果に加え、側面側のサイズ(高さ方向のサイズ)を非常に小さくすることが可能になるため、コンパクトな光学系を提供することが可能になる。
また、ファイバアレイ120の各ファイバの配列方向、レンズアレイ130の各レンズの配列方向、及び、ミラーアレイ160のミラーの配列方向がすべて同じになるため、光軸がほぼ同一平面上になり、組立性に優れた光スイッチの提供が可能となる。
【0038】
なお、図6に示すように、第2実施形態の光スイッチ110では、ファイバアレイ120とミラーアレイ160の高さ方向の位置が完全には同一ではないが、ファイバアレイ120をミラーアレイ160の横に並べて配置することにより、完全に同一平面上に配置することが可能である。
【0039】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係るファイバアレイ220、レンズアレイ230、及び、交差位置C3(交差位置C)の位置関係を示す平面図である。図7では、第3実施形態の光スイッチが備えるファイバアレイ220、レンズアレイ230、及び、レンズアレイ230から出射する光束のみを示している。これ以外の構成は、第1実施形態の光スイッチ10と同様である。
【0040】
第3実施形態のファイバアレイ220とレンズアレイ230では、レンズアレイ230の各マイクロレンズから出た光束は、第1実施形態及び第2実施形態のように1点では交わるのではなく、一定の幅を持った領域としての交差位置C3を通る。このための構成として、交差位置C3の中心を通る軸に対する、ファイバアレイ220の各ファイバの位置に応じて、レンズアレイ230の各レンズの光軸の位置が異なるようにレンズアレイ230を配置している。
【0041】
このような構成のファイバアレイ220とレンズアレイ230を用いて光スイッチを構成することにより、交差位置C3の後の光学系で生じる非点収差、像面湾曲収差を完全に補正することが可能になる。従来の光スイッチでは、レンズアレイより出射された光束が球面よりなる光学素子に入射した場合、球面光学素子の軸の外側に行くほど、光束の焦点は近くにずれてしまう。これに対して、第3実施形態のような構成を取ることにより、この収差を完全に補正することが可能となる。
すなわち、交差位置C3は収差補正に対応する有限の幅とすることが好ましく、ファイバアレイ220とレンズアレイ230の組み合わせだけで、ファイバアレイ220とレンズアレイ230に加え、光学特性に優れた非球面レンズを用いた場合と同様の光学的作用を実現することができる。これによって、パスバンド特性と挿入損失特性の非常に優れた光スイッチを提供することが可能となる。
【0042】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態に係る光スイッチにおけるファイバアレイ320とレンズアレイ330との位置関係を示す正面図である。図8では、光スイッチを構成するファイバアレイ320と、レンズアレイ330とを、光線の出射方向から見た場合の、ファイバアレイ320の各ファイバのコアの位置と、レンズアレイ330の各レンズの光軸の位置と、を示している。
【0043】
第4実施形態のファイバアレイ320とレンズアレイ330は、ファイバアレイ320の各アレイ、すなわちファイバ321、322、323、324、325、326、327、328の配列方向(図8の左右方向)と直交する方向(図8の上下方向)のピッチが互いに異なっている。さらに、レンズアレイ320の各マイクロレンズ331、332、333、334、335、336、337、338らの光軸は、第1、第2、及び第3実施形態のように直線上に配置されているのではなく、円弧上に配置されている。これ以外の構成は、第1実施形態の光スイッチ10と同様である。
【0044】
第4実施形態の光スイッチにおいては、次式(2)で示される関係が成立する。
δm+1>δm ・・・(2)
ここで、δmは、軸Zからm番目のファイバのコアと、これに対応するレンズの光軸と、の距離である。
δm+1は、軸Zから(m+1)番目のファイバのコアと、これに対応するレンズの光軸と、の距離となる。
【0045】
以上の構成のファイバアレイ320とレンズアレイ330を用いて光スイッチを構成することにより、レンズアレイ330を出たそれぞれの光束がファイバアレイ320の各ファイバが配列された方向を含む面内だけでなく、ファイバアレイ320の各ファイバの配列方向と垂直な方向(図8の上下方向)にも角度を変更させることが可能となる。
これによって、レンズアレイ330の後に配置される光学素子に入射する角度の補正なども可能となるため、光学設計の自由度を飛躍的に増大することができ、よりコンパクトで高性能な光スイッチの提供が可能となる。
【0046】
なお、第4実施形態ではファイバアレイ320のファイバ321、322、323、324、325、326、327、328を一直線上に並べ、レンズアレイ330のマイクロレンズ331、332、333、334、335、336、337、338を円弧上に並べたが、逆にファイバアレイのファイバを円弧上に、レンズアレイのマイクロレンズを直線上に並べても同様の効果が得られる。さらに、ファイバアレイとレンズアレイを双方とも曲線状に配置しても同様の効果が得られる。
【0047】
また、レンズアレイは、第4実施形態では円弧上に配置したが、光学系の構成によっては円弧ではなく、放物線、楕円、指数曲線、正弦波、あるいは任意の曲線をとることによって最適の光学性能を得ることができる。
【0048】
(第5実施形態)
図9は、第5実施形態に係る光スイッチ410の全体構成を示す平面図である。図10は、第5実施形態に係る光スイッチ410の全体構成を示す側面図である。図11は、第5実施形態に係る光スイッチ410におけるファイバアレイ420とレンズアレイ430との位置関係を示す正面図である。
【0049】
第5実施形態の光スイッチ410では、ファイバアレイ420の各ファイバ421、422、423、424、425、426、427、428のコアのピッチと、レンズアレイ430の各マイクロレンズ431、432、433、434、435、436、437、438の光軸間のピッチとが同一でない。
【0050】
さらに、各ファイバ421、422、423、424、425、426、427、428から出力された光束がレンズアレイ420の後ろの一点C5(交差位置C)で交わるように、それぞれのファイバ421、422、423、424、425、426、427、428及びマイクロレンズ431、432、433、434、435、436、437、438が配置されている。
言い換えれば、交差位置Cとしての集光点C5は、レンズアレイ430に対してファイバアレイ420側にある。したがって、レンズアレイに対して回折格子(偏向手段)側に集光点があった第1、第2、第3、及び第4実施形態の光スイッチとは異なる。
【0051】
これら以外の構成は、第1実施形態の光スイッチ10と同様である。すなわち、第4実施形態に係る光スイッチ410は、ファイバアレイ420と、レンズアレイ430と、光学素子440と、分光素子としての回折格子450と、偏向手段としてのミラーアレイ460と、を備える。
【0052】
ここで、ファイバアレイ420の各ファイバのレンズアレイ430側の端面と交差点C5との距離をL3、レンズアレイ430の各マイクロレンズの光学的中心と交差点C5との距離をL4、ファイバアレイ420のピッチをP1、レンズアレイ430のピッチをP2、とすると、第1実施形態の式(1)と同様の次式(3)が成り立つ。
P2/L4=P1/L3 ・・・(3)
【0053】
第5実施形態の光スイッチでは、ファイバアレイ420とレンズアレイ430の組み合わせだけで、従来のファイバアレイとレンズアレイに加え、凹レンズを用いた場合と同様の光学的作用を奏することが可能となる。
また、ファイバアレイ420とレンズアレイ430を上述のように構成することで凹レンズと同様の作用を持たせしめたことにより、凸レンズの作用を持たせた場合に比べ、ファイバアレイ420からなる入出力ポートと光学素子440との距離を小さくすることが可能となり、よりコンパクトな波長選択スイッチを提供することが可能となった。
【0054】
以上説明したように、本発明に係る光スイッチは、ファイバアレイの各入出力ポートとレンズアレイの各マイクロレンズのピッチを一致させていない構成としている。レンズアレイのピッチを入出力ポートのピッチと異なるものとすることにより、レンズアレイに各ファイバの光軸を独立に偏向する手段としての機能を持たせることができる。これにより、構成部品の少ない光スイッチを実現することができ、従って光スイッチとして非常に重要な特性である、パスバンド、及び挿入損失に優れた光スイッチを提供することができる。
【0055】
また、本発明の光スイッチによれば、ファイバアレイ、レンズアレイ、凹面鏡、グレーティング、及び、マイクロミラー以外の光学部品を一切使わず、波長選択スイッチを構成することができる。波長選択スイッチの光学系は部品点数が多く、組立調整に大きな工数がかかる。構成部品の点数を減らすことにより、調整部が少なくなるので組立調整が簡単となり、低コストの実現が期待できる。さらに、性能的にも、部品が少ないので挿入損失特性及びパスバンド特性に優れた光スイッチが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明に係る光スイッチは、部品点数の削減及び小型化が要求される用途に適している。
【符号の説明】
【0057】
10 光スイッチ
20 ファイバアレイ
20、20、20n+1 ファイバ
21、22、23、24、25、26、27、28 ファイバ
30 レンズアレイ
30、30、30n+1 マイクロレンズ
31、32、33、34、35、36、37、38 マイクロレンズ
40 光学素子
50 回折格子
60 ミラーアレイ
110 光スイッチ
120 ファイバアレイ
130 レンズアレイ
140 光学素子
150 回折格子
160 ミラーアレイ
220 ファイバアレイ
230 レンズアレイ
320 ファイバアレイ
321、322、323、324、325、326、327、328 ファイバ
330 レンズアレイ
331、332、333、334、335、336、337、338 マイクロレンズ
410 光スイッチ
420 ファイバアレイ
421、422、423、424、425、426、427、428 ファイバ
430 レンズアレイ
431、432、433、434、435、436、437、438 マイクロレンズ
440 光学素子
450 回折格子
460 ミラーアレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重された光を入力する1以上の入力ポート及び1以上の出力ポートを構成するn本のファイバからなるファイバアレイと、
前記ファイバアレイの各ファイバにそれぞれ対応するn個のレンズからなるレンズアレイと、
前記レンズアレイからの光を各波長に分光する分光素子と、
前記分光された各波長を受光し、波長毎に独立に偏向可能な複数の偏向素子により、各波長毎に出力ポート選択せしめる偏向手段と、を備え、
前記ファイバアレイのファイバは一列に配列されており、
前記ファイバアレイの各ファイバにそれぞれ入射又は出射する光が交差する領域を交差位置Cとし、
前記ファイバアレイのファイバと平行で、かつ、前記交差位置Cを通る軸を軸Zとしたとき、
前記ファイバのコアとこれに対応する前記レンズの光軸との距離δは、前記軸Zからの距離Sに応じて異なっていることを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】
前記ファイバアレイのファイバ間のピッチをP1とし、
前記レンズアレイのレンズ間のピッチをP2とし、
前記ファイバアレイの端面から前記交差位置Cまでの距離をL1とし、
前記レンズアレイの中心から前記交差位置Cまでの距離をL2としたとき、
次式(1)が成り立つことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
P2/L2=P1/L1 ・・・(1)
【請求項3】
前記交差位置Cは、収差補正に対応する有限の幅をもった領域であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項4】
前記交差位置Cは、前記レンズアレイに対して前記偏向手段側にあることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項5】
前記交差位置Cは、前記レンズアレイに対して前記ファイバ側にあることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項6】
前記距離Sは、前記ファイバの配列方向と平行な方向への距離であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項7】
前記軸Zからm番目のファイバのコアと、これに対応するレンズの光軸と、の距離をδmとしたとき、次式(2)が成り立つことを特徴とする請求項6に記載の光スイッチ。
δm+1>δm ・・・(2)
【請求項8】
前記軸Zに最も近いファイバに対応する距離δ0は略ゼロであることを特徴とする請求項7に記載の光スイッチ。
【請求項9】
前記距離Sは、前記ファイバの配列方向と直交する方向への距離であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項10】
前記軸Zから前記m番目のファイバのコアと、これに対応するレンズの光軸と、の距離をδmとしたとき、次式(3)が成り立つことを特徴とする請求項9に記載の光スイッチ。
δm+1>δm・・・(3)
【請求項11】
前記偏向手段は、角度調整機能を有する複数のミラーが前記ファイバの配列方向と直交する方向に配列して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項12】
前記偏向手段は、角度調整機能を有する複数のミラーがファイバの配列方向と平行な方向に配列して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−64721(P2011−64721A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212704(P2009−212704)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】