説明

光スポット位置制御装置、光スポット位置制御方法

【課題】第1の光の照射により記録再生を行い位置制御情報記録層に形成されたトラックのピッチに依らぬにずに第2の光の照射により記録再生位置の制御を行う。
【解決手段】1)半径方向において同一幅によるグルーブとランドとが交互に形成された記録媒体を用いる。2)3分割した第2の光の各ビームスポットの半径方向における間隔が、記録媒体のトラックピッチの1/3となるようにする。3)3分割した各ビームをそれぞれ個別に受光して各ビームのスポット位置ごとのトラッキング誤差信号とその反転信号とによる計6つのトラッキング誤差信号を生成し、トラッキング誤差信号に対し予め定められた鋸歯状波によるオフセットを与えつつ、メインビームスポットが隣接関係にあるサーボ対象位置間における所定位置に至るタイミングごとにサーボ対象位置をそれまで対象としていた位置の外側に隣接する位置に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状記録媒体に照射した光のスポット位置を制御する光スポット位置制御装置、及びその方法に関し、特に、情報の記録/再生光とは別途に照射した光に基づき情報の記録/再生位置の制御が行われる場合に好適な光スポット位置制御装置、及びその方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2005−250038号公報
【特許文献2】特開2007−79438号公報
【背景技術】
【0003】
例えば上記各特許文献にあるように、信号光と参照光との干渉縞によりデータ記録を行うホログラム記録再生システムが知られている。このホログラム記録再生システムにおいて、記録時には、記録データに応じた空間光変調(例えば光強度変調)を与えた信号光と、この信号光とは別の参照光とをホログラム記録媒体に対して照射し、それらの干渉縞をホログラム記録媒体に形成することでデータ記録を行う。
また再生時には、ホログラム記録媒体に対して参照光を照射する。このように参照光が照射されることで、上記のようにしてホログラム記録媒体に形成された干渉縞に応じた回折光が得られる。すなわち、これによって記録データに応じた再生光(再生信号光)が得られる。このようにして得られた再生光を例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサによって検出することで、記録データを再生するようにされる。
【0004】
ここで、ホログラム記録再生システムとしても、例えばCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの従来の光ディスクの記録再生システムと同様に、記録媒体上に形成されたトラックに沿ってデータを記録することが考えられている。すなわち、従来の光ディスクの場合と同様に上記トラックを対象としたトラッキングサーボなどの記録/再生位置制御を行うことで、ディスク上の然るべき位置にデータの記録を行っていくというものである。
【0005】
このような記録再生位置の制御を行う場合に用いられるホログラム記録媒体の構造の一例を、図22の断面構造図を用いて説明する。
この図22においては、反射膜を有する反射型のホログラム記録媒体100の構造例を示している。
図示されるように、ホログラム記録媒体100には、上述した信号光と参照光との干渉縞によるホログラムの記録が行われる記録層(106)と、基板110上の凹凸断面構造により位置制御のためのアドレス情報等の記録が行われた位置制御情報記録層とがそれぞれ別々に形成されたものとなっている。
【0006】
具体的に、ホログラム記録媒体100には、上層から順にカバー層105、記録層106、反射膜107、中間層108、反射膜109、基板110が形成されている。
記録層106の下層に形成される反射膜107は、再生時においてホログラムの再生のためのレーザ光(上述した参照光)が照射され、上記記録層106に記録されたホログラムに応じた再生像が得られた際に、これを反射光として装置側に戻すために設けられる。
また、上記基板110には、スパイラル状又は同心円状に、上記記録層106におけるホログラムの記録/再生位置を案内するためのトラックが形成されている。例えばトラックは、ピット列によるアドレス情報等の情報記録が行われることにより形成される。
基板110の上層に形成された反射膜109は、上記ピット列に応じた反射光を得るために設けられる。なお、中間層108は、例えばレジンなどの接着材料である。
【0007】
上記のような断面構造を有するホログラム記録媒体100に対しては、記録層106におけるホログラムの記録再生を行うのための記録再生光と、位置制御情報記録層からの反射光を得るための位置制御光とをそれぞれ別々に照射するということが行われる。
ここで仮に、1つの光のみを用いてこれをホログラムの記録再生と位置制御とに兼用しようとすると、再生時において、ホログラムの再生像に対して基板110(反射膜109)上の凹凸断面形状に応じた成分がノイズとして重畳してしまい、それによって再生性能を悪化させてしまう虞がある。このために、ホログラム記録再生システムにおける位置制御には、ホログラムの記録再生光と共に、上記位置制御情報記録層からの反射光を得るための位置制御光を別途に照射するようにされている。
【0008】
また、このようにホログラムの記録再生光と別途の位置制御光とを照射する場合においては、それぞれ波長帯の異なる光を用いるようにされる。これは、位置制御光と記録再生光として同波長帯の光を用いた場合には、位置制御光の照射によっても記録層106が感光してしまう虞があり、その防止を図るためである。
例えばホログラムの記録再生光としては波長λ=405nm程度の青紫色レーザ光が、また位置制御光としては例えば波長λ=650nm程度の赤色レーザ光が用いられる。
【0009】
ここで、上記位置制御光の照射により位置制御情報記録層からの反射光を得るためには、基板110の凹凸断面形状が反映された反射膜109に上記位置制御光が到達しなければならない。つまり、位置制御光は、上記反射膜109よりも上層側に形成されている反射膜107を透過する必要があることになる。
一方で、上記反射膜107としては、記録層106に記録されたホログラムに応じた再生像が反射光として装置側に戻されるべく、ホログラムの記録再生光は反射する必要がある。
【0010】
これらの点を考慮し、上記反射膜107には、上記記録再生用の青紫色レーザ光は反射し、位置制御用の赤色レーザ光は透過するという、波長選択性を有する反射膜が用いられる。このことで、位置制御光が反射膜109に到達して位置制御のための反射光が装置側に適正に戻されるようにすると共に、記録層106に記録されたホログラムの再生像が反射膜107にて反射されて適正に装置側に戻されるようにすることができる。
【0011】
ここで確認のために述べておくと、上記のようにホログラムの記録再生光とは別途の光を用いて記録再生位置の制御を行う場合、記録再生装置側では、次の図23に示すようにして、ホログラムの記録再生光と位置制御光とが同一光軸上に配置されるようにして合成し、該合成光をホログラム記録媒体100に対して照射するようにされている。そしてその上で、位置制御光の反射光に基づくトラッキングサーボ制御を行うようにされている。
このようにホログラムの記録再生光と位置制御光とを同一光軸上に合成してホログラム記録媒体100に照射するようにした上で、位置制御光の反射光に基づく位置制御を行うことにより、ホログラムの記録再生位置を、ホログラム記録媒体100に形成されたトラック(ピット列)に沿った位置に制御するようにされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、ホログラムの記録を行うとき、スパイラルピッチとしては比較的大きなピッチが要求される場合がある。例えば現状において、位置制御情報記録層に形成されるトラックのピッチは、およそ1.2μm程度とされている。これに対し、ホログラム記録において最適とされるトラックピッチは、数十μm程度(例えば40μm〜60μm程度)とされている。
【0013】
例えばこのようにして、位置制御情報記録層に形成されるトラックのピッチ(スパイラルピッチ)と、実際に要求されるスパイラルピッチとが異なるケースが生じ得る。
本発明の課題は、上記により説明したホログラム記録再生システムのように、第1の光による情報の記録再生が行われる情報記録層と、該情報記録層における情報記録再生位置を案内するためのトラックが形成された記録媒体について、上記位置制御情報記録層に上記第1の光とは異なる第2の光を照射して記録再生位置の制御を行う場合において、上記位置制御情報記録層に形成されたトラックのピッチとは異なる任意のスパイラルピッチで上記情報記録層における記録再生を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題に鑑み、本発明では光スポット位置制御装置として以下のように構成することとした。
つまり、第1の光源と第2の光源とを備える。
また、上記第2の光源から出射された光をメインビーム光、第1サブビーム光、第2サブビーム光の3ビームに分割するビーム分割部を備える。
また、半径方向において同一幅によるグルーブとランドとが交互に形成されるようにして上記グルーブがスパイラル状又は同心円状に形成されたディスク状記録媒体に対して、上記第1の光源から出射された第1の光と、上記ビーム分割部により生成された3つのビーム光とを共通の対物レンズを介して照射する光学系であって、上記3つのビーム光の上記ディスク状記録媒体上でのそれぞれの照射スポットの上記半径方向における間隔が、上記グルーブの形成に伴い上記ディスク状記録媒体に形成されるトラックのピッチの1/3となるようにして上記3つのビーム光を照射する光学系を備える。
また、上記対物レンズを介して照射される光の光軸と上記ディスク状記録媒体との上記半径方向における相対的な位置関係を変化させて、上記対物レンズを介して照射される光についてのトラッキング制御を行うように構成されたトラッキング制御機構を備える。
また、上記対物レンズを介して照射され上記ディスク状記録媒体を介した上記メインビーム光、上記第1サブビーム光、上記第2サブビーム光をそれぞれ個別に受光する受光部を備える。
また、上記受光部により得られるそれぞれの受光信号に基づき、上記ディスク状記録媒体に形成された上記トラックに対する上記メインビーム光、第1サブビーム光、第2サブビーム光のスポット位置の上記半径方向における位置誤差をそれぞれ表す誤差信号を生成する誤差信号生成部を備える。
また、上記誤差信号生成部により生成された上記誤差信号のうちから1の誤差信号を選択する誤差信号選択部を備える。
また、上記誤差信号選択部により選択された上記誤差信号に基づき、上記対物レンズを介して照射される光についてのトラッキングサーボが行われるように上記トラッキング制御機構を制御するサーボ制御部を備える。
また、所定のタイミングごとに、上記誤差信号選択部が選択する誤差信号が予め定められた順序で切り換えられるように指示を行う切り換え指示部を備える。
また、上記誤差信号の切り換え周期に応じた波形周期を有する鋸歯状波を生成する鋸歯状波生成部を備える。
さらに、上記鋸歯状波生成部により生成される上記鋸歯状波に従って、トラッキングサーボループに対してオフセットを与えるオフセット付与部を備えるようにした。
【0015】
ここで、スポット位置をスパイラル状に変位させる手法としては、トラッキングサーボループに対して実現すべきスパイラルピッチに応じた傾きを有するオフセットを与えるという手法が考えられる。
しかしながら、このように単にオフセットを与える手法はいわゆるオープンループ制御であり、精度に欠くものとなってしまう。
そこで本発明では、
1)半径方向において同一幅によるグルーブとランドとが交互に形成されたディスク状記録媒体を用いる
2)3分割した第2の光の各照射スポットの半径方向における間隔が、上記ディスク状記録媒体のトラックピッチの1/3となるようにする
3)3分割した第2の光の各ビームをそれぞれ個別に受光して、各ビームのスポット位置のトラックに対する上記半径方向における位置誤差をそれぞれ表す誤差信号を生成すると共に、それらの反転信号を生成して計6つの誤差信号を生成する
4)生成した上記誤差信号のうちから1の誤差信号を選択し、該選択した誤差信号に基づいてトラッキングサーボをかける
ものとしている。
ここで、上記1)2)の条件が満たされることにより、或るトレース位置を対象としてトラッキングサーボをかけているときに、同時に他のトレース位置についてのトラッキング誤差信号を得ることができるようになる。そして上記3)による誤差信号の生成が行われることで、上記ランド又はグルーブの形成ピッチとなるトラックピッチを6等分するそれぞれの位置についてのトラッキング誤差信号を得ることができる。このとき、上記のように他のトレース位置についてのトラッキング誤差信号を同時に得ることができるということは、トラッキングサーボに用いるトラッキング誤差信号の切り換えによってトレース位置の切り換えを行うことができるということを意味する。従って上記本発明によれば、トレース位置の選択は、トラッキングサーボを継続しながらいわばクローズドループ制御で行うことができる。
そして、本発明では、スパイラル状の変位を実現するための連続的なスポット移動を可能とするために、所定のタイミングごとにトラッキングサーボに用いるトラッキング誤差信号を順次切り換えつつ(つまりサーボ対象とする位置を順次切り換えつつ)、これと並行して、上記トラッキング誤差信号(サーボ対象位置)の切り換え周期に応じた周期を有するように生成した鋸歯状波に基づいてトラッキングサーボループに対するオフセットの付与を行うものとしている。
つまりこれにより、上記オフセットの付与により外周側に連続的に移動するスポットは、同時にトラッキングサーボにより記録媒体(トラック)に対する相対的な位置関係が制御された状態にあるようにでき、結果、任意のスパイラルピッチを、クローズドループ制御により実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えばホログラム記録再生システムの場合のように、第1の光による情報の記録再生が行われる情報記録層と、該情報記録層における情報記録再生位置を案内するためのトラックが形成された記録媒体について上記位置制御情報記録層に上記第1の光とは異なる第2の光を照射して記録再生位置の制御を行う場合において、上記位置制御情報記録層に形成されたトラックのピッチとは異なる任意のスパイラルピッチで上記情報記録層における記録再生を行うことができる。
【0017】
また本発明は、所定のタイミングごとにトラッキングサーボに用いるトラッキング誤差信号の切り換えを行いつつ(つまりサーボ対象位置を切り換えつつ)、これと並行して上記トラッキング誤差信号の切り換え周期に応じた周期を有するように生成した鋸歯状波に基づきトラッキングサーボループに対するオフセットの付与を行うものとしたことで、任意のスパイラルピッチを実現するために必要な光スポットの位置制御を、クローズドループ制御で実現できる。
この結果、オープンループ制御とする場合と比較してより高精度な位置制御とすることができ、結果、任意のスパイラルピッチをより高精度に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態としてのディスク状記録媒体の断面構造図である。
【図2】実施の形態のディスク状記録媒体に形成される位置制御情報記録層の表面を一部拡大して示した図(平面図)である。
【図3】位置制御情報記録層の一部の断面斜視図である。
【図4】アドレス情報のフォーマットについて説明するための図である。
【図5】第1の実施の形態としての記録再生装置の主にホログラムの記録再生系、及び位置制御のための光学系の構成について示したブロック図である。
【図6】空間光変調(SLM)に設定される各エリアについて説明するための図である。
【図7】3つのビーム光(メインビーム光,第1サブビーム光、第2サブビーム光)の各照射スポット位置とディスク状記録媒体に形成されるランド・グルーブとの関係を示した図である。
【図8】メインビームスポット、第1サブビームスポット、第2サブビームスポットの組が半径方向に移動したときの様子と、該半径方向への移動に伴って得られる各ビームスポットごとのトラッキング誤差信号との関係を示した図である。
【図9】反転信号も含めた計6種のトラッキング誤差信号を示した図である。
【図10】6種のトラッキング誤差信号のそれぞれを選択した場合の各スポット位置を示した図である。
【図11】第1の実施の形態としての任意スパイラルピッチ実現のための具体的な手法について説明するための図である。
【図12】第1の実施の形態としての任意スパイラルピッチの実現手法を6種のトラッキング誤差信号の波形上において模式的に示した図である。
【図13】スポットの半径位置とアドレス読出に用いるスポットとの関係を示した図である。
【図14】第1の実施の形態の記録再生装置の内部構成(主に位置制御を実現するための信号処理系の構成のみを抽出)を示した図である。
【図15】サーボ対象ピット列の切り換え制御処理の手順を示したフローチャートである。
【図16】第2の実施の形態としての任意スパイラルピッチの実現手法について説明するための図である。
【図17】隣接関係にある各組のサーボ対象位置間の中間点において、選択中のトラッキング誤差信号(TE−x)と次に選択されるべきトラッキング誤差信号(TE−x+1)の振幅の絶対値が同値となることを表した図である。
【図18】第2の実施の形態の記録再生装置の内部構成(主に位置制御を実現するための信号処理系の構成のみを抽出)を示した図である。
【図19】中間点検出回路の内部構成を示したブロック図である。
【図20】5つのスポットを用いる変形例について説明するための図である。
【図21】5つのスポットを用いた場合の誤差信号波形を示した図である。
【図22】従来例としてのホログラム記録媒体の断面構造を示した図である。
【図23】ホログラム記録媒体に照射される記録再生光と位置制御光との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。

〜第1の実施の形態〜
<1.記録媒体の構成>
[1-1.断面構造]
[1-2.位置制御情報記録層の構造]
[1-3.アドレス情報のフォーマット]
<2.記録再生装置の構成>
[2-1.ホログラムの記録再生系及び位置制御のための光学系]
[2-2.任意スパイラルピッチの実現手法]
[2-3.スポット位置制御のための構成]
<3.第1の実施の形態のまとめ>
〜第2の実施の形態〜
<4.第2の実施の形態の手法>
<5.第2の実施の形態の構成>
〜変形例〜
【0020】
〜第1の実施の形態〜
<1.記録媒体の構成>
[1-1.断面構造]

図1は、本発明で用いるディスク状記録媒体の一実施形態としてのホログラム記録媒体HMの断面構造を示している。
先ず、本実施の形態のホログラム記録媒体HMは、反射型の記録媒体とされ、図示されるように反射膜L3と反射膜L5とを有している。また、このホログラム記録媒体HMには、ホログラムの記録/再生が行われる記録層L2と、図中の基板L6上の凹凸断面構造により位置制御のためのアドレス情報等の記録が行われた位置制御情報記録層とがそれぞれ別々に形成されている。
また、本実施の形態のホログラム記録媒体HMは、ディスク状の記録媒体とされる。
【0021】
図示するようにホログラム記録媒体HMには、上層から順にカバー層L1、記録層L2、反射膜L3、中間層L4、反射膜L5、基板L6が形成されている。
上記カバー層L1は、例えばプラスチック基板やガラス板などで構成され、記録層L2の保護のために設けられている。
【0022】
上記記録層L2は、その材料として例えばフォトポリマーが選定され、後の図5にて説明する第1レーザ2を光源とする青紫色レーザ光(例えば波長λ=405nm程度)によるホログラムの記録/再生が行われることになる。
また、反射膜L3は、再生時において上記青紫色レーザ光による参照光が照射され上記記録層L2に記録された干渉縞(データ)に応じた再生光が得られた際に、これを反射光として記録再生装置側に戻すために設けられる。
【0023】
基板L6と反射膜L5は、記録/再生位置制御のために設けられている。
基板L6には、スパイラル状又は同心円状に、上記記録層L2におけるホログラムの記録/再生位置を案内するためのピット列が形成されている。この場合、上記ピット列は、後述するようにしてピットの形成有無のパターンによってアドレス情報等の情報記録が行われることにより形成される。
【0024】
上記基板L6における上記ピット列が形成された面(表面)に対しては、反射膜L5が、例えばスパッタリングや蒸着などによって成膜される。この反射膜L5と上述した反射膜L3との間に形成される中間層L4は、例えばレジンなどの接着材料とされる。
【0025】
ここで、後述もするように、本実施の形態では、図5に示す第2レーザ20を光源とする赤色レーザ光(例えば波長λ=650nm程度)をホログラム記録媒体HMに照射し、これにより上記反射膜L5から得られる反射光を利用した位置制御(トラッキングサーボ制御など)を行うことで、上記青紫色レーザ光によるホログラムの記録/再生位置の制御が行われる。
【0026】
この場合において、適正に位置制御が行われるようにするためには、上記赤色レーザ光が、位置制御のための凹凸断面形状が与えられた反射膜L5まで到達しなければならい。すなわち、上記赤色レーザ光は、上記反射膜L5よりも上層に形成される反射膜L3を透過する必要がある。
一方で、反射膜L3としては、記録層L2に記録されたホログラムに応じた再生光が反射光として記録再生装置側に戻されるべく、青紫色レーザ光を反射する必要がある。
これらの点から、上記反射膜L3としては、ホログラムの記録/再生のための青紫色レーザ光は透過し、位置制御用の赤色レーザ光は透過するという、波長選択性を有する反射膜を用いるようにされている。すなわち、上記青紫色レーザ光としての特定の波長帯による光は反射し、それ以外の波長帯の光は透過するという波長選択性を有するものである。
このような波長選択性を有する反射膜L3とされることで、赤色レーザ光が適正に反射膜L5に到達して位置制御のための反射光が記録再生装置側にて適正に検出されると共に、記録層L2に記録されたホログラムの再生光が記録再生装置にて適正に検出されるように図られている。
【0027】
[1-2.位置制御情報記録層の構造]

図2は、ホログラム記録媒体HMにおける位置制御情報記録層(基板L6上の凹凸が反射膜L5に反映されて形成される)の表面を一部拡大して示した図(平面図)である。
この図2において、紙面の横方向はホログラム記録媒体HMの半径方向であり、後述するグルーブGの形成に伴って形成されることになる、スポット位置をガイドするためのトラックの配列方向となる。
また、上記半径方向と直交する方向(紙面の縦方向)は、上記トラックの形成方向(トラック形成方向:周回方向)を表す。上述した位置制御のための赤色レーザ光のスポットは、ホログラム記録媒体HMの回転駆動に伴い、当該トラック形成方向に平行な方向に移動する。
【0028】
この図2に示されるように、ホログラム記録媒体HMの位置制御情報記録層では、半径方向において、グルーブGとランドLとが交互に配列されるものとなっている。具体的に、位置制御情報記録層には、上記グルーブGがスパイラル状、又は同心円状に形成されており、これに伴い半径方向においてはグルーブG、ランドLが交互に形成される。
【0029】
そして、本実施の形態では、上記グルーブGとランドLとが同じ幅nを有するようにしている。換言すれば、上記幅nによるグルーブGを、半径方向における形成ピッチが2nとなるようにしてスパイラル状又は同心円状に形成しているものである。
【0030】
また、本実施の形態では、ピットの形成によるアドレス情報の記録は、ランドL側を対象として行うものとしている。なお、本実施の形態の場合におけるアドレス情報の具体的な記録手法については後述する。
ここで、ランドLの形成ピッチは、上記グルーブGの形成ピッチ=2nと等しくなる。このことからも理解されるように、この場合においてトラックの形成ピッチ(トラックピッチ)は2nとなる。
【0031】
図3は、ホログラム記録媒体HMの基板L6の一部を断面斜視図により拡大して示している。
ここで、位置制御情報記録層に対する再生波長(この場合は上述した赤色レーザ光の波長となる)をλとすると、本実施の形態においては、図のようにグルーブGの深さはλ/8、ピットの深さはλ/4に設定するものとしている。
後述するように、本実施の形態では、トラッキング誤差信号としてPush Pull信号を生成するが、当該Push Pull信号は、その信号振幅に関して、深さλ/8の設定が最も有利となり、また深さλ/4の設定が最も不利となる。
後述もするが、このようなグルーブGとピットの深さの設定により、安定したトラッキングサーボを実現できる。
【0032】
ここで、図2及び図3に示したような構造による位置制御情報記録層の形成にあたり、基板L6に対するカッティングは、2ビームカッティングで行うことができる。具体的に、この場合におけるカッティングとしては、光軸の間隔をnとしたグルーブG形成用のレーザビームとピット形成用のレーザビームとを用いるものとし、グルーブG形成側のレーザパワー:ピット形成側のレーザパワー=1:2として2ビームのカッティングを行うものとすればよい。
【0033】
[1-3.アドレス情報のフォーマット]

続いて、図4により、位置制御情報記録層に記録するアドレス情報のフォーマットの一例について説明する。
図4において、図4(a)は、ランドLに対するピットの形成手法について説明するための図である。
先ず前提として、本実施の形態では、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などのように、ピット/スペースの長さにより情報を記録するという手法は採らずに、予め定められたピットの形成可能位置におけるピットの形成有無のパターンによって情報記録を行うものとしている。
具体的に、先ず本実施の形態では、ピットがトラッキング誤差信号に与える影響を最小限に抑えるため、ピットの長さを最短長に設定するものとしている。本例の場合、位置制御情報記録層に対する記録再生条件はDVDの場合と同様(波長λ=650nm程度、開口数NA=0.60程度)としているので、最短ピット長は3Tとしている。
そして、本実施の形態では、このような最短ピット長を1つの単位区間長として、複数の単位区間ごとに1つのピット形成可能位置を設定するものとしている。具体的にこの場合は、6つの単位区間ごと(つまり5つの単位区間おき)にピット形成可能位置を設定するものとしている。
図4(a)では、「*」マークがピット形成可能位置としての上記単位区間を表しており、「*」マークの間の各「0」がピット形成可能位置ではない上記単位区間を表している。
【0034】
その上で、本実施の形態では、ピット形成可能位置におけるピットの形成有無により、チャネルデータの「0」「1」を表現するフォーマットを採用するものとしている。すなわち、1つのピット形成可能位置が、1チャネルビット分の情報を担うものである。
【0035】
本実施の形態では、このようなチャネルビットの複数個による「0」「1」のデータパターンにより、データビットの1ビットを表現するものとしている。
具体的に本例では、図4(b)に示されるように、チャネルビット4つ分でデータビットの「0」「1」を表現するものとし、例えば4チャネルビットのパターン「1011」がデータビット「0」、4チャネルビットのパターン「1101」がデータビット「1」を表すものとしている。
【0036】
このとき重要であるのは、チャネルビット「0」が連続しないという点である。つまり、記録再生装置側では、ピットの形成周期に応じたクロックを生成することになるが、このときチャネルビット「0」が連続してしまう(つまりピットが形成されていないピット形成可能位置が連続してしまう)場合には、適正なクロックを得ることができなくなってしまう虞がある。このために本実施の形態では、例えば上記のようなデータビットの定義により、チャネルビット「0」が連続しないという条件が満たされるようにしている。すなわち上記のようなデータビットの定義により、クロックの信頼性低下の抑制を図るようにしているものである。
【0037】
図4(c)は、シンクパターンの一例を示している。
例えばシンクパターンについては、図示するように12チャネルビットで表現するものとし、前半の8ビットを上記データビットの定義に当てはまらないチャネルビットパターン「11111111」とし、その後の4チャネルビットのパターンでシンクの別(種類)を表すものとしている。具体的に、上記8ビットに続く4チャネルビットのパターンが「1011」であればSync1、「0111」であればSync2としている。
【0038】
本実施の形態のホログラム記録媒体HMにおいては、アドレス情報が、上記のようなシンクの後に続けて記録されている。
ここでアドレス情報としては、少なくとも半径位置の情報、及び角度位置の情報を記録する。
【0039】
<2.記録再生装置の構成>
[2-1.ホログラムの記録再生系及び位置制御のための光学系]

図5は、上記により説明した実施の形態としてのホログラム記録媒体HMに対応してホログラムの記録再生を行う記録再生装置の内部構成として、主にホログラムの記録再生系、及び位置制御のための光学系の構成のみを抽出して示した図である。
【0040】
先ず、本実施の形態の記録再生装置は、ホログラム記録再生方式として、いわゆるコアキシャル方式を採用する。すなわち、信号光と参照光とを同一軸上に配置し、それらを共に所定位置にセットされたホログラム記録媒体HMに照射して干渉縞による情報記録を行い、また再生時には参照光をホログラム記録媒体HMに対して照射することで干渉縞により記録された情報の再生を行うものである。
【0041】
図5において、記録再生装置内には、ホログラム記録媒体HMを回転駆動するためのスピンドルモータ29が設けられている。記録再生装置内にホログラム記録媒体HMが装填されると、上記スピンドルモータ29によってホログラム記録媒体HMが回転駆動可能な状態に保持される。
このように保持されるホログラム記録媒体HMに対して、図中の第1レーザ2を光源とするレーザ光が照射されることによってホログラムページの記録/再生が行われることになる。
【0042】
上記第1レーザ2は、例えば外部共振器付きレーザダイオードとされ、波長λ=405nm程度による青紫色レーザ光を出力する。以下、当該第1レーザ2を光源とするレーザ光は、記録再生用レーザ光、或いは第1レーザ光とも称する。
【0043】
上記第1レーザ2から出射された記録再生用レーザ光は、アイソレータ3を介してIS(イメージスタビライズ)機能部4内に備えられるAOM(音響光学変調器)4A→AOD(音響光学偏向器)4Bを介した後、エキスパンダ5で所要のビーム径に調整され、ミラー6→ミラー7を介してSLM(空間光変調器)8に入射する。
なお、IS機能部4については後述する。
【0044】
SLM8は、入射される記録再生光に対し、上述した参照光と信号光を生成するための空間光変調を行う。このSLM8としては、例えば複数の微少ミラーを配列した回折型の空間光変調器や、液晶パネルを用いたものなど、画素単位で空間光変調を施す素子が選定される。このことで、記録データを反映した信号光や、所定の強度パターンを有する参照光を生成することができる。
【0045】
ここで、ホログラム記録再生方式としてコアキシャル方式が採用される場合、SLM8においては、次の図6に示されるような各エリアが設定される。
この図6に示されるように、SLM8においては、その中心部に円形による信号光エリアA2が形成され、その外周部分には輪状のギャップエリアA3を介して、同じく輪状による参照光エリアA1が設定される。上記信号光エリアA2は信号光の生成領域として設定されたエリアである。同様に上記参照光エリアA1は、参照光の生成領域として設定されたエリアである。
なお、上記ギャップエリアA3は、参照光エリアA1と信号光エリアA2を介した光が互いに干渉してノイズとなってしまうことを防止するための、緩衝領域として設定されるものである。
【0046】
図5に戻り、上記SLM8は、図中の変調制御部27からの駆動信号DSに基づき、記録時に上記信号光と参照光、再生時には参照光を生成するようにされる。
上記変調制御部27は、記録時には、SLM8における信号光エリアA2内の画素パターン(例えば各画素ごとのON/OFFパターン)が、入力される記録データに応じたパターンとなるようにして画素ごとの駆動信号値を設定する。また、これと共に、参照光エリアA1内の画素パターンは予め定められた所定のパターンとなるようにし、さらにギャップエリアA3を含むそれ以外のエリアは全てOFFとするような画素ごとの駆動信号値を設定する。そして、このようにして設定した値による駆動信号DSを、SLM8に供給する。これにより、記録時においてSLM8からは、記録データに応じた光強度パターンを有する信号光と、所定の光強度パターンを有する参照光とが生成される。
また再生時には、参照光エリアA1内の画素パターンのみが予め定められた所定のパターンとなるようにし、それ以外のエリアは全てOFFとするような駆動信号値を設定してSLM8の各画素を駆動することで、SLM8から参照光のみが出力されるようにする。
【0047】
上記SLM8にて空間光変調が施された光は、図示するようにして偏光ビームスプリッタ9に入射する。偏光ビームスプリッタ9は、このようにSLM8から入射した記録再生用レーザ光を透過する。
【0048】
上記偏光ビームスプリッタ9を透過したレーザ光は、リレーレンズ10→リレーレンズ11によるリレーレンズ系を介した後、ダイクロイックミラー12に入射する。
【0049】
ダイクロイックミラー12は、波長選択性を有し、上記リレーレンズ系を介して入射する記録再生用レーザ光は透過し、後述する第2レーザ20を光源とする位置制御用レーザ光は反射するように構成されている。
従って上記リレーレンズ系を介した記録再生用レーザ光は、当該ダイクロイックミラー12を透過する。
【0050】
ダイクロイックミラー12を透過した記録再生用レーザ光は、図示するようにミラー13でその光軸が90°折り曲げられて1/4波長板14に入射する。そして1/4波長板14を介した記録再生用レーザ光は、対物レンズ15を介してホログラム記録媒体HMに照射される。
【0051】
対物レンズ15は、フォーカスアクチュエータ16Bによってフォーカス方向(ホログラム記録媒体HMに接離する方向)に変位可能に保持される。また、[対物レンズ15・フォーカスアクチュエータ16B・1/4波長板14・ミラー13]は、トラッキングアクチュエータ16Aにより一体的にトラッキング方向(ホログラム記録媒体HMの半径方向)に変位可能とされている。
トラッキングアクチュエータ16A、フォーカスアクチュエータ16Bに対しては、後述するサーボ回路38(図14を参照)からのトラッキングドライブ信号TD、フォーカスドライブ信号FDがそれぞれ供給される。これにより、対物レンズ15を介してホログラム記録媒体HMに照射される光とホログラム記録媒体HMとのトラッキング方向における相対位置関係の制御、及び対物レンズ15を介してホログラム記録媒体HMに照射される光のフォーカシング制御が行われ、フォーカス・トラッキングの各サーボ動作やトラックジャンプなどの動作が実現されるようになっている。
なお、図示の都合により省略したが、実際には、上記対物レンズ15を含む図中の光学ピックアップOPとホログラム記録媒体HMとのトラッキング方向における位置関係を変化させるためのスライド機構も設けられるものとなる。
【0052】
ここで、先に説明したSLM8による記録時の空間光変調によっては、第1レーザ2を光源とする記録再生用レーザ光に基づき信号光と参照光とが生成されることになる。すなわち、記録時においては、これら信号光と参照光とがホログラム記録媒体HMに対して照射され、これに応じホログラム記録媒体HM(記録層L2)には、これら信号光と参照光との干渉縞(ホログラム)によってデータが記録されることになる。
【0053】
また、再生時には、SLM8によって参照光のみが生成され、これが上記により説明した光路によってホログラム記録媒体HMに対して照射されることになる。このようにホログラム記録媒体HMに対して参照光が照射されることに応じては、上記干渉縞に応じた回折光(再生像)が得られる。このようにして得られた再生像は、ホログラム記録媒体HMに形成された反射膜L3からの反射光として装置側に戻されるようになる。
この戻り光は、対物レンズ15を介して平行光となるようにされた後、1/4波長板14→ミラー13を経てさらにダイクロイックミラー12→リレーレンズ11→リレーレンズ10を介した後、偏光ビームスプリッタ9に入射する。
【0054】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ9に入射したホログラム記録媒体HMからの戻り光は、1/4波長板14とホログラム記録媒体HMに形成された反射膜(L3)との作用により、往路において偏光ビームスプリッタ9を透過した直線偏光とは偏光方向が直交する直線偏光となっている。このことで、上記ホログラム記録媒体HMからの戻り光は、偏光ビームスプリッタ9を反射する。
偏光ビームスプリッタ9で反射された上記戻り光は、図示するようにしてリレーレンズ17→リレーレンズ18によるリレーレンズ系を介してイメージセンサ19に入射する。
【0055】
イメージセンサ19は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどとされ、上記のようにして入射されるホログラム記録媒体HMからの戻り光(再生像)を受光し、これを電気信号に変換して画像信号を得る。このようにして得られた画像信号は、記録時に信号光に対して与えた光強度パターン(つまり「0」「1」パターン)を反映したものとなる。すなわち、このようにしてイメージセンサ19で検出される画像信号が、ホログラム記録媒体HMに対して記録されたデータの読出信号となる。
なお、イメージセンサ19にて得られた上記読出信号(画像信号)は、読出信号D-imgとする。
【0056】
データ再生部28は、上記イメージセンサ19にて得られた読出信号D-imgを入力し、所定の信号処理(デコード処理)を行うことで、「0」「1」の2値の組み合わせから成る記録データの再生を行う。
なお、このような「0」「1」による記録データを再生するにあたっては、イメージセンサ19による読出信号D-imgについて、SLM8のデータピクセル単位で「0」「1」のデータ識別を行うための信号処理が行われる。このようにイメージセンサ19の出力から「0」「1」の記録データを再生するための再生信号処理の手法としては各種が存在し、ここで特に限定されるべきものではない。
【0057】
ここで、上記により説明したホログラムの記録/再生手法を踏まえた上で、先に触れたIS機能部4について説明しておく。
本実施の形態の場合のようにホログラム記録媒体HMを回転駆動してホログラムの記録/再生を行うとした場合には、記録再生用レーザ光が記録媒体上の同じ位置に対して所定時間照射され続けるようにするために、記録再生用レーザ光を一定間隔ごとにスキャンするといったことが行われる。すなわち、このようなレーザ光のスキャンを行うことで、例えば記録時には干渉縞の形成がより確実に行われるように図ることができ、また再生時には検出光量を増大してより確実な読み出しが行われるように図ることができる。このようにして、所定時間だけ記録再生用レーザ光が記録媒体上の同じ位置に対して照射されるようにして上記のような一定間隔ごとのスキャンを行う機能は、IS(イメージスタビライズ)機能と呼ばれる。
【0058】
図5において、IS機能部4には、図のようにAOM4AとAOD4B、及びこれらを駆動制御するためのIS制御部4Cが設けられる。
AOM4Aは、例えば百数十MHz程度の高周波信号により駆動され、当該高周波信号の振幅の変化に応じ透過率が変化する素子(音響光学媒体)を備えて構成される。すなわち、このような透過率の変化により、シャッタとしての機能を実現する。
【0059】
また、AOD4Bは、AOM4Aと同様に高周波信号により駆動されるが、高周波信号の周波数の変化に応じて、光の偏向角度を変化させるように構成された音響光学媒体を備えて構成される。AOD4Bは、このような偏向角度の制御により、入射するレーザ光を走査させる。
【0060】
ここで、IS機能としてレーザ光を順次各位置に一定時間照射するためには、レーザスポットを或る位置から次の位置に移動させる間の、ブランキング期間が必要となる。そして、このブランキング期間において、レーザ光が照射され続けてしまうと、少なからず記録材料が反応してしまうため、特に記録時には、記録済みのホログラム(回折格子)にレーザスポットの移動に伴う残像が付加されるなどして、ノイズの原因となってしまう。
このためにIS機能の実現にあたっては、レーザ光を走査させるための手段(AOD4B)と共に、上記ブランキング期間においてレーザ光の透過率を著しく低下させて記録材料の反応を防止するためのシャッタ(AOM4A)とが必要となるものである。
【0061】
IS機能部4において、IS制御部4Cは、上述したイメージスタビライズ機能を実現するためのレーザ光の偏向角度・透過率の変化が与えられるようにして、AOM4A、AOD4Bを駆動制御する。具体的に、AOD4Bに対しては、上述した一定間隔ごとのスキャン動作が得られるようにするための鋸歯状波形による駆動信号を供給し、一方、AOM4Aに対しては、AOD4Bによるスキャン期間にはレーザ光が透過し、該スキャン期間の合間のブランキング期間にはレーザ光が遮断されるようにするための矩形波形による駆動信号を供給する。これによりIS機能が実現される。
なお図示もしているように、上記AOM4Aに代えてメカシャッタを用いることもできる。
【0062】
続いて、記録再生用レーザ光による記録/再生位置の制御を行うための光学系について説明する。
図5において、このような位置制御のための光学系は、第2レーザ20、グレーティング21、コリメーションレンズ22,偏光ビームスプリッタ23、集光レンズ24、レンズ25、及び受光部26で構成される。
【0063】
上記第2レーザ20は、第1レーザ2を光源とする記録再生用レーザ光とは波長の異なるレーザ光を出力するように構成される。具体的にこの場合は、上述した波長650nm程度の赤色レーザ光を出力するように構成されている。
【0064】
第2レーザ20からの出射光(位置制御用レーザ光)は、グレーティング21→コリメーションレンズ22を介して偏光ビームスプリッタ23に入射する。
上記グレーティング21は、上記第2レーザ20からの出射光をメインビーム光、第1サブビーム光、第2サブビーム光の3ビームに分割する。上記コリメーションレンズ22に対してはこれら3つのビームが入射することになる。
なお、図5では図示の都合上、これら3ビームによる位置制御用レーザ光を1つの光束にまとめて示している。
【0065】
上記偏光ビームスプリッタ23に入射した位置制御用レーザ光は、当該偏光ビームスプリッタ23を透過してダイクロイックミラー12に入射する。
先にも述べたように、ダイクロイックミラー12は、第2レーザ20からの位置制御用レーザ光は反射するように構成されている。ダイクロイックミラー12で反射された位置制御用レーザ光は、先に説明した記録再生用レーザ光の場合と同様に、ミラー13→1/4波長板14→対物レンズ15を介してホログラム記録媒体HMに照射される。
【0066】
ここで、本実施の形態の記録再生装置では、上記ダイクロイックミラー12により、上記3つのビーム光のうち中央に配置されるメインビーム光の光軸が記録再生用レーザ光の光軸と一致するようにして光学系の調整が為されている。
なおこの説明からも理解されるように、上記ダイクロイックミラー12は、記録再生用レーザ光と上記メインビーム光とが同一光軸上に合成されてホログラム記録媒体HMに対して照射させるために設けられた素子となる。
【0067】
上記のようにして対物レンズ15を介してホログラム記録媒体HMに対して照射された位置制御用レーザ光は、先に説明した反射膜L3が波長選択性を有することで、その下層側に設けられた反射膜L5(位置制御情報記録層)に到達する。つまりこれにより、位置制御情報記録層に形成された凹凸(グルーブGやピット)を反映した反射光が得られる。反射膜L5からの上記反射光(戻り光)は、対物レンズ15を介して装置側に戻される。
【0068】
対物レンズ15を介した位置制御用レーザ光の戻り光は、1/4波長板14→ミラー13を介してダイクロイックミラー12に入射する。ダイクロイックミラー12では、上記位置制御用レーザ光の戻り光が反射され、その反射光は偏光ビームスプリッタ23に入射する。先の偏光ビームスプリッタ9の場合と同様に、偏光ビームスプリッタ23では、このようにして入射した戻り光が反射されることになる。この結果、位置制御用レーザ光の戻り光は、図のように集光レンズ24→レンズ25を介して受光部26の受光面に対して照射されることになる。
【0069】
受光部26は、上記のようにして照射された位置制御用レーザ光の戻り光を受光して、ホログラム記録媒体HMにおける位置制御情報記録層の凹凸に応じた受光信号D-pdを得る。
ここで、本実施の形態では、上記のように位置制御用レーザ光は3ビームに分割されており、これに対応して上記受光部26は、後述もするようにこれら3ビームのそれぞれの反射光を個別に受光するための3つのディテクタ(フォトディテクタ26M,26S1,26S2)を備えている。このことに応じ、受光部26による上記受光信号D-pdとしては、これらそれぞれのディテクタからの個別の受光信号D-pdM,D-pdS1、D-pdS2が得られる。
【0070】
上記のようにして受光部26で得られた位置制御用レーザ光の受光信号(反射光信号)D-pdに基づき、以下において説明するような任意スパイラルピッチ実現のためのスポット位置制御や、アドレス情報の検出などを行うことができる。
なお、実施の形態としてのスポット位置制御及びアドレス情報の検出等を行うための具体的な構成については後に改めて説明する。
【0071】
[2-2.任意スパイラルピッチの実現手法]

上記による記録再生装置の構成の説明を踏まえた上で、以下、本実施の形態としての任意スパイラルピッチの実現手法について説明する。
先ずは図7〜図10を参照して、実施の形態としての任意スパイラルピッチの実現手法に必要な前提事項について説明しておく。
【0072】
〜サーボ対象位置の選択〜

先ず図7は、図5にて説明した3つのビーム光(メインビーム光,第1サブビーム光、第2サブビーム光)の各照射スポット位置とホログラム記録媒体HMに形成されるランドL・グルーブGとの関係を示している。
ここで、以下の説明において、上記メインビーム光の位置制御情報記録層に対する照射スポットについてはメインビームスポットMと表記する。また、上記第1サブビーム光の位置制御情報記録層に対する照射スポットは第1サブビームスポットS1、上記第2サブビーム光の位置制御情報記録層に対する照射スポットは第2サブビームスポットS2と表記する。
【0073】
この図7に示されるように、メインビームスポットM、第1サブビームスポットS1、第2サブビームスポットS2は、上記メインビームスポットMが中央に、上記第1サブビームスポットS1が上記メインビームスポットの左側に、また上記第2サブビームスポットS2が上記メインビームスポットMの右側に配置される。すなわち、上記第1サブビームスポットS1、上記第2サブビームスポットS2は、上記メインビームスポットMから半径方向のそれぞれ異なる方向に離れた位置に配置されている。
【0074】
そして本実施の形態では、これら3つのビームスポットの半径方向におけるそれぞれの間隔が、所定の間隔となるようにしている。具体的には、これら3つのビームスポットの半径方向におけるそれぞれの間隔が、トラックピッチ(この場合はランドLの形成ピッチ)の1/3となるようにして設定している。
この場合、トラックピッチは2nであるので、図のようにメインビームスポットMに対する第1サブビームスポットS1、第2サブビームスポットS2のそれぞれの半径方向配置間隔は「2n/3」となる。
【0075】
ここで確認のために述べておくと、図5に示した記録再生装置においては、このようなメインビームスポットM、第1サブビームスポットS1、第2サブビームスポットS2の配置間隔が実現されるようにして光学系の調整が行われることになる。
【0076】
本実施の形態では、上記のような配置間隔としたメインビームスポットM、第1サブビームスポットS1、第2サブビームスポットS2に関して、それぞれのスポット位置でのトラッキング誤差信号を個別に生成するものとしている。
具体的には、上記メインビームスポットMでの反射光に基づくトラッキング誤差信号TE−m、上記第1サブビームスポットS1での反射光に基づくトラッキング誤差信号TE−s1、第2サブビームスポットS2での反射光に基づくトラッキング誤差信号TE−s2をそれぞれ生成するものである。
【0077】
図8は、図5に示したトラッキングアクチュエータ16Aの駆動に伴い、メインビームスポットM、第1サブビームスポットS1、第2サブビームスポットS2の組が位置制御情報記録層上の半径方向に移動したときの様子(図8(a))と、このような半径方向への移動に伴って得られる上記トラッキング誤差信号TE−m,TE−s1,TE−s2(図8(b))との関係を示している。
なお図8(a)では、半径方向に移動するスポットM,S1,S2の組が各移動位置にある状態を一紙面上に同時に示している。
またこの図8以降において、スポットM,S1,S2の形状は、図示の都合上楕円形状により示している。
【0078】
ここで、或る1つのスポットの反射光に基づき生成したトラッキング誤差信号TEについて考えてみると、当該トラッキング誤差信号TEは、上記スポットの中心がランドLの中心と一致する状態では振幅値が0となり、上記スポットがランドL/グルーブGの境界→グルーブGの中心にかけて移動することに応じて振幅値が最大ピーク→0に推移することになる。さらに、上記スポットがグルーブG/ランドLの境界→ランドL中心にかけて移動することに応じては、振幅値が最小ピーク→0に推移する。
つまりこの場合のトラッキング誤差信号TEは、ランドL間の1回の横断(1トラックの横断)で1つの波形周期が得られるものとなる。
【0079】
このとき、トラッキング誤差信号TEの1波形周期を位相0°〜360°で表すと、上記のようにトラッキング誤差信号TEの振幅値が最大ピークとなるランドL/グルーブGの境界は、位相90°の位置であると定義できる。同様にして、トラッキング誤差信号TEの振幅値が再度0となるグルーブGの中心、トラッキング誤差信号TEの振幅値が最小ピークとなるグルーブG/ランドLの境界は、それぞれ位相180°の位置、位相270°の位置と定義することができる。
このようにして、ランドLの間の各位置は、位相0°〜360°の何れかの位置として定義できる。このようにトラッキング誤差信号TEの位相に基づき定義できるランドL(トラック)の間の各位置の位相0°〜360°を、以下、「トラック位相」と称する。例えばトラック位相0°(=360°)はランドLの中心、トラック位相180°はグルーブGの中心を表すことになる。
【0080】
ここで本実施の形態において、各ビームスポットM,S1,S2は、半径方向においてトラックピッチ(ランドLの形成ピッチ)の1/3ずつ離間されている。つまり、上記トラック位相で表現すれば、これら3つのビームスポットはトラック位相120°ずつずれて配置されていると定義できる。
このことに伴い、図8(a)のようにビームスポットM,S1,S2の組が半径方向に移動したときのトラッキング誤差信号TE−m,TE−s1,TE−s2としては、図8(b)に示されるように、それぞれの位相が120°ずつずれたものとなる。
具体的に、図8(a)ではビームスポットM,S1,S2の組が紙面の右方向に移動しているので、メインビームスポットMの左側に配置される第1サブビームスポットS1のトラッキング誤差信号TE−s1は、トラッキング誤差信号TE−mに対して位相が120°遅れており、またメインビームスポットMの右側に配置される第2サブビームスポットS2のトラッキング誤差信号TE−s2はトラッキング誤差信号TE−mに対して位相が120°進むものとなる。
【0081】
また、上記のように各ビームスポットM,S1,S2がトラック位相120°ずつずれていることによっては、以下のような作用が得られる。
ここで、図8(a)では、半径方向の移動に伴い、メインビームスポットMの中心がトラック位相0°の位置、120°の位置、240°の位置、360°の位置にある状態をそれぞれ示しているが、上記のようにビームスポットM,S1,S2がそれぞれトラック位相120°ずつずれた位置に配置されることで、メインビームスポットMがトラック位相120°の位置(つまりトラックピッチの1/3の位置)にある状態では、第1サブビームスポットS1の中心がトラック位相0°の位置、すなわちランドLの中心と一致した状態となる。また、メインビームスポットMがトラック位相240°の位置(トラックピッチの2/3の位置)にある状態では、第2サブビームスポットS2の中心がトラック位相360°(=0°)の位置、すなわちランドLの中心と一致した状態となる。
【0082】
このような関係からも理解されるように、本実施の形態では、第1サブビームスポットS1の反射光から生成したトラッキング誤差信号TE−s1に基づいて当該第1サブビームスポットS1中心がランドL中心と一致するようにトラッキングサーボをかけることで、メインビームスポットMの位置が、トラック位相120°の位置上をトレースする状態を得ることができる。
同様にして、第2サブビームスポットS2の反射光から生成したトラッキング誤差信号TE−s2に基づいて当該第2サブビームスポットS2中心がランドL中心と一致するようにトラッキングサーボをかけることで、メインビームスポットMの位置が、トラック位相240°の位置上をトレースする状態を得ることができる。
なお、メインビームスポットMの反射光から生成したトラッキング誤差信号TE−mに基づくトラッキングサーボを行えば、メインビームスポットM中心がランドL中心をトレースすることは言うまでもない。
【0083】
この結果、上記3つのビームスポットM,S1,S2の反射光からそれぞれ3種のトラッキング誤差信号TE−m,TE−s1,TE−s2を生成し、これらのトラッキング誤差信号TEから1のトラッキング誤差信号TEを選択し、該選択したトラッキング誤差信号TEに基づきトラッキングサーボをかけるという手法を採ることで、メインビームスポットMのトレース位置を、トラックピッチを3等分するそれぞれの位置のうちの任意の位置に選択することができる。
【0084】
〜反転信号を含めた計6種のトラッキング誤差信号の生成〜

上記のような3種のトラッキング誤差信号TE−m,TE−s1,TE−s2の選択によるサーボ対象位置の選択を基本とした上で、本実施の形態では、さらに、次の図9に示されるようにこれら3種のトラッキング誤差信号TE−m,TE−s1,TE−s2のそれぞれの反転信号を生成することで、計6種のトラッキング誤差信号TEを得るものとする。そして、これら6種のトラッキング誤差信号TEのうちから1のトラッキング誤差信号TEを選択してトラッキングサーボを行うことで、トラックピッチを6等分するそれぞれの位置を対象としたサーボ位置の選択が可能となるようにする。
【0085】
この図9に示されるように、上記トラッキング誤差信号TE−mの反転信号は、トラッキング誤差信号TE−moとする。また、上記トラッキング誤差信号TE−s1の反転信号はトラッキング誤差信号TE−s1o、上記トラッキング誤差信号TE−s2の反転信号はトラッキング誤差信号TE−s2oとする。
【0086】
ここで、これらの反転信号は、元信号と位相が反転する関係となる。つまり元信号からの位相差が180°となる。
このことからも理解されるように、上記トラッキング誤差信号TE−moに基づくトラッキングサーボを行えば、メインビームスポットM1の位置は、元信号であるトラッキング誤差信号TE−mに基づくトラッキングサーボを行った場合のトラック位相0°の位置からトラック位相180°だけずれた位置とすることができる。
また、上記トラッキング誤差信号TE−s1oに基づくトラッキングサーボを行えば、メインビームスポットMの位置は、元信号であるトラッキング誤差信号TE−s1に基づくトラッキングサーボを行った場合のトラック位相120°の位置から180°だけずれた、トラック位相300°の位置とすることができる。
同様に、上記トラッキング誤差信号TE−s2oに基づくトラッキングサーボを行えば、メインビームスポットMの位置は、元信号であるトラッキング誤差信号TE−s2に基づくトラッキングサーボを行った場合のトラック位相240°の位置から180°だけずれたトラック位相60°の位置とすることができる。
【0087】
図10は、上記6種のトラッキング誤差信号TEのそれぞれを選択した場合の各スポット位置を示している。
この図10に示されるようにして、上記6種のトラッキング誤差信号TEのうちから1の誤差信号TEを選択してトラッキングサーボを行うことによっては、メインビームスポットMの位置を、トラック位相0°(360°)、60°、120°、180°、240°、300°の6つの位置から選択できる。
具体的には、
・トラッキング誤差信号TE−mの選択によりトラック位相0°(360°)の位置
・トラッキング誤差信号TE−s2oの選択によりトラック位相60°の位置
・トラッキング誤差信号TE−s1の選択によりトラック位相120°の位置
・トラッキング誤差信号TE−moの選択によりトラック位相180°の位置
・トラッキング誤差信号TE−s2の選択によりトラック位相240°の位置
・トラッキング誤差信号TE−s1oの選択によりトラック位相300°の位置
をそれぞれ選択することができる。
【0088】
〜第1の実施の形態としての任意スパイラルピッチの実現手法〜

図11は、第1の実施の形態としての任意スパイラルピッチ実現のための具体的な手法について説明するための図として、任意スパイラルピッチを実現するためにトラッキングサーボループに対して与えるオフセット、選択すべきトラッキング誤差信号TE、ホログラム記録媒体HMの位置制御情報記録層におけるメインビームスポットMの移動軌跡の関係を示している。
なおこの図11において、メインビームスポットMの移動軌跡はトラック位相0°〜360°までの範囲(つまり1トラック分の範囲)のみを示している。
【0089】
この図11からも明らかなように、トラックピッチによらぬ任意のスパイラルピッチを実現するにあたっては、ホログラム記録媒体HMの回転に伴い移動するビームスポットが、トラッキング誤差信号TEの選択によって選択可能なサーボ対象位置(0°,60°,120°,180°,240°,300°,360°)を順次跨いでいく(渡っていく)ようにすればよい。すなわち、このように誤差信号TEの選択により選択可能な1トラック間の各サーボ対象位置(仮想トラックとも表現できる)を渡っていく間隔を、実現したいスパイラルピッチに応じて予め定めておくことで、任意のスパイラルピッチを実現することができるものである。
【0090】
具体的に本実施の形態では、トラッキングサーボをオンとした状態で、時間経過と共にその値が上昇していくオフセットをトラッキングサーボループに対して与えることで、ビームスポットが半径方向に徐々に移動していくようにする。そして、ビームスポットが或るサーボ対象位置から半径方向に或る程度離間したところで、トラッキングサーボに用いるトラッキング誤差信号TEを切り換えることで、サーボ対象位置を上記或るサーボ対象位置に隣接するサーボ対象位置に切り換える。
このようなことを繰り返すことで、トラッキングサーボが継続された状態を維持しつつ、オフセットの付与によるビームスポットの外周側への移動を行うことができる。すなわち、任意スパイラルピッチの実現のための光スポット位置制御を、クローズドループ制御で行うことができるものである。
このとき、トラッキングサーボループに与える上記オフセットの傾きの設定により、スパイラルピッチを任意に設定することができる。
【0091】
ここで、上記のようにオフセットの付与によって光スポット位置を連続的に外周方向に移動させつつ、それと並行してサーボ対象位置を順次切り替えていくという手法を採る場合には、当然のことながら、サーボ対象位置の切り換え位置(タイミング)を予め定めておく必要がある。
本実施の形態において、サーボ対象位置の切り換え位置は、隣接関係にあるサーボ対象位置間の中間点となる位置(半径方向における)に設定するものとしている。
【0092】
ここで、或るスパイラルピッチを実現しようとしたとき、そのスパイラルピッチの実現のために光スポットをディスク上のどの位置を通過させていけばよいかは、位置制御情報記録層のフォーマットから予め計算により求めておくことができる。つまりこのことからも理解されるように、上記のように光スポットが隣接関係にあるサーボ対象位置間の中間点に至る位置は、予め計算によって求めておくことができるものとなる。
本実施の形態においては、このようにして予め計算などにより求められた上記中間点としての位置(どのアドレスブロックの何クロック目)に至ったことに応じて、サーボ対象位置をそれまで対象としていた位置に対し外側隣接する位置に切り換えを行う。換言すれば、上記予め定められた中間点としての位置に至ったことに応じて、トラッキングサーボに用いる誤差信号TEを、それまで選択していた誤差信号TEから次に選択すべき誤差信号TE(上記外側隣接する位置に対応した誤差信号TE)に切り換えるものである。
これまでの説明からも理解されるように、選択中の誤差信号TEの次に選択すべき誤差信号TEは、「誤差信号TE−m→TE−s2o→TE−s1→TE−mo→TE−s2→TE−s1o→TE−m」の順で予め定められているものである。
【0093】
なお、確認のために述べておくと、この場合において任意スパイラルピッチ実現のために与えるオフセットとしては、図示するような鋸歯状波によるオフセットを与えることになる。
具体的に、この場合におけるオフセットは、上述のように光スポットが隣接関係にあるサーボ対象位置間の中間点に至るタイミングごとに順次サーボ対象位置の切り換えを行う関係から、上記中間点ごとに極性が変化する波形となる。つまり、上記中間点となる位置に光スポットを移動させるために必要なオフセット量は、例えばトラック位相0°による位置を対象としたサーボ時には「+α」、これと外側隣接するトラック位相60°による位置を対象としたサーボ時には「−α」となるので、上記中間点に至るタイミングとしてのサーボ対象位置の切り換えタイミングにおいては、上記オフセットの極性を反転させる必要がある。この点から、この場合において与えるべきオフセットの波形は、図のような鋸歯状波による波形となるものである。
【0094】
上述もしたように、このようなオフセットの傾きの設定により、スパイラルのピッチ設定が可能となる。確認のために述べておくと、このオフセットの波形形状(波形周期及び傾き)としても、実現しようとするスパイラルピッチの情報と位置制御情報記録層のフォーマットの情報とに基づき予め計算などにより求めておくことになる。
【0095】
ここで、スパイラル状のトレースを実現するためには、上記オフセットの値の上昇により光スポットが外周側に移動されるべきものとなる。
本実施の形態では、オフセットの付与は、トラッキング誤差信号TEを対象として行うものとしている(図14を参照)。従って図11に示す波形によるオフセットについては、その極性を反転させた上でトラッキング誤差信号TEに対して加算することになる。すなわち、「誤差信号TE−オフセット」による演算によりオフセットの付与を行うものである。
【0096】
図12は、上記のような本実施の形態としての任意スパイラルピッチの実現手法を、先の図9に示した6種のトラッキング誤差信号の波形上において模式的に示している。
この図12では、図11に示したオフセットを太線矢印により示しているが、このような鋸歯状波によるオフセットがトラッキング誤差信号TEに対して与えられることによっては、光スポットの位置が実際に外周側に移動されることに伴って、各トラッキング誤差信号TEとしても上記太線矢印になぞられる部分のようにその振幅値が変化していくことになる。具体的に、トラック位相0°の位置を対象としたトラッキングサーボ時において、与えられるオフセット値が徐々に上昇していくことによっては、トラッキング誤差信号TE−mの振幅値としても与えられたオフセットと同じ傾きにより上昇していくことになる。
同様にして、上記トラック位相0°の位置からトラック位相60°の位置への切り換え後におけるオフセットの付与によっては、トラッキング誤差信号TE−s2oの振幅値は与えられたオフセットと同じ傾きで上昇していくことになる。
【0097】
また、この図12からも明らかなように、上記により説明した本実施の形態の手法、すなわち、6種のトラッキング誤差信号TEを生成してトラックピッチを6等分する各サーボ対象位置の選択を可能とした上で、隣接関係にあるサーボ対象位置間の中間点となる位置でサーボ対象位置の切り換えを行うという手法を採ることによっては、トラッキング誤差信号TEに対してオフセットが付与される区間は、デトラック量(位置誤差)に応じた振幅値の変化がほぼ線形となる区間に合わせることができる。換言すれば、そのトラッキング誤差信号TEの選択によりトラッキングサーボの対象とされるサーボ対象位置(波形的には負→正のゼロクロス点)を基準として、そこからの位置誤差が小さい区間に合わせることができるものである。
これにより上記本実施の形態の手法によれば、鋸歯状波によるオフセットの付与とサーボ対象位置の切り換えとによる任意スパイラルピッチ実現のための位置制御を、より安定的に行うことができる。
【0098】
〜アドレス読出に用いるスポットの選択〜

ここで、上記により説明したような任意スパイラルピッチ実現のための手法を採る場合においては、光スポットは時間経過と共に徐々に外周側に移動していくことになるので、1つのスポットを使用して継続的にアドレス情報の読み出しを行うといったことはできず、従って時間経過と共にアドレス読出に最適とされる位置にあるスポットを適宜選択するということが必要となってくる。
【0099】
図13は、スポットの半径位置とアドレス読出に用いるスポットとの対応関係を示している。
この図13においては、オフセットの付与に応じて半径方向に移動する各スポットM,S1,S2のトラックに対する位置関係を示すと共に、図中の色付きのスポットによりアドレス情報の読み出しに用いるべきスポットを表している。
なおこの図では、オフセットの付与に伴い半径方向に移動する各ビームスポットM,S1,S2について、中央のメインビームスポットMがトラック位相0°〜330°の間におけるトラック位相30°ずつずれた位置にそれぞれあるときの各ビームスポットM,S1,S2の様子を示している。
【0100】
この図13に示されるように、メインビームスポットMがトラック位相330°以上60°以下の範囲内にあるときは、アドレス情報の読み出しにはメインビームスポットMを用いる。
またメインビームスポットMがトラック位相60°より大で且つトラック位相150°以下の範囲内にあるときは、アドレス読出には第1サブビームスポットS1を用いる。
また、メインビームスポットMがトラック位相150°より大で且つトラック位相210°未満の範囲内にあるときは、アドレス読出には第1サブビームスポットS1又は第2サブビームスポットS2の何れかを用いる。
また、メインビームスポットMがトラック位相210°以上270°以下の範囲内にあるときは、アドレス読出には第2サブビームスポットS2を用いる。
また、メインビームスポットMがトラック位相270°より大で且つトラック位相330°未満の範囲内にあるときは、アドレス読出にはメインビームスポットM又は第2サブビームスポットS2の何れかを用いる。
【0101】
このようなスポットの半径位置とアドレス読出に用いるスポットとの対応関係を予め定めておく。
本実施の形態の記録再生装置では、このように予め定められた対応関係の情報に基づいて各スポットM,S1,S2の反射光信号(後述するsum信号)のうちの1の反射光信号を選択し、該選択した反射光信号に基づいてアドレス情報の読み出し(及びクロックの生成)を行う。
なお、図13に示す対応関係においては、アドレス読出に用いるべきスポットが2つ定められているところがあるが、このようにアドレス読出に用いるべきスポットが2以上とされる場合には、それら2つのスポットの反射光信号のうち信号品質が良好とされる方の信号をアドレス読出(及びクロック生成)に用いるものとする。
【0102】
ここで、メインビームスポットMの位置がトラック位相0°〜360°の間の何れに位置しているかは、或る基準位置からの経過時間の情報で特定することができる。これは上述もしたように、任意スパイラルピッチ実現のために光スポット位置をディスク上にてどのように移動させるかは、予め計算で求めておくことができることによる。
例えば本実施の形態では、トラック位相0°の位置を基準位置として、メインビームスポットMの中心が当該トラック位相0°の位置と一致した時点からの経過時間(クロック数)によってメインビームスポットMの半径方向における位置(トラック位相)を特定する。
そしてこれに対応して、上記のような対応関係情報としては、このような基準位置と一致する時点からの経過時間により上記の各トラック位相範囲を表した各期間の情報と、その期間内にて選択されるべきスポット(反射光信号)との対応関係を定めた情報としておく。
【0103】
[2-3.スポット位置制御のための構成]

続いて、上記により説明した第1の実施の形態としての任意スパイラルピッチ実現のためのスポット位置制御を実現するための構成について説明する。
図14は、第1の実施の形態の記録再生装置の内部構成のうち、主に上記スポット位置制御を実現するための信号処理系の構成のみを抽出して示している。
【0104】
先ず、図14においては、先の図5に示した光学ピックアップOP内の受光部26も示されているが、図示するようにこの受光部26には、メインフォトディテクタ26M、第1サブフォトディテクタ26S1、第2サブフォトディテクタ26S2が設けられている。上記メインフォトディテクタ26Mは、ホログラム記録媒体HMに照射されたメインビーム光の反射光を受光する。また、上記第1サブフォトディテクタ26S1はホログラム記録媒体HMに照射された第1サブビーム光の反射光を受光し、上記第2サブフォトディテクタ26S2は同じくホログラム記録媒体HMに照射された第2サブビーム光の反射光を受光する。
本実施の形態において、これらメインフォトディテクタ26M、第1サブフォトディテクタ26S1、第2サブフォトディテクタ26S2としては、それぞれ4分割ディテクタを用いる。
【0105】
上記光学ピックアップOPの外部には、上記メインフォトディテクタ26Mからの受光信号D-pdMが入力されるメイン信号生成回路30、上記第1サブフォトディテクタ26S1からの受光信号D-pdS1が入力される第1信号生成回路31、及び第2サブフォトディテクタ26S2からの受光信号D-pdS2が入力される第2信号生成回路32が設けられる。
さらに、上記光学ピックアップOPの外部には、反転回路33,反転回路34,反転回路35、セレクタ36、アドレス検出・クロック生成回路37、サーボ回路38,制御部39、加算器40、及び鋸歯状波生成回路41が設けられている。
【0106】
上記メイン信号生成回路30は、上記受光信号D-pdMとしての、メインフォトディテクタ26Mの各受光素子からの受光信号に基づき、アドレス情報の生成及びクロックの生成に必要なsum信号と共に、トラッキング誤差信号TE、及びフォーカスエラー信号FEを生成する。
具体的に、上記sum信号は上記各受光素子による受光信号の和信号となる。また、上記トラッキング誤差信号TEとしては、Push Pull信号を生成する。
【0107】
先の説明からも理解されるように、上記メイン信号生成回路30にて生成されたトラッキング誤差信号TEは、トラッキング誤差信号TE−mとなる。図示するように当該トラッキング誤差信号TE−mは、セレクタ36と反転回路33とに供給される。
【0108】
また、上記メイン信号生成回路30にて生成された上記sum信号については、sum−M信号と称する。当該sum−M信号はアドレス検出・クロック生成回路37に対して供給される。
【0109】
また、上記フォーカスエラー信号FEはサーボ回路38に対して供給される。
【0110】
上記第1信号生成回路31は、上記受光信号D-pdS1としての、第1フォトディテクタ26S1の各受光素子からの受光信号に基づき、上記sum信号、及び上記トラッキング誤差信号TEを生成する。
この第1信号生成回路31にて生成された上記トラッキング誤差信号TEは、先に説明したトラッキング誤差信号TE−s1となる。図示するように当該トラッキング誤差信号TE−s1はセレクタ36と反転回路34とに供給される。
【0111】
また、第1信号生成回路31にて生成された上記sum信号は、sum−S1信号と称する。当該sum−S1信号はアドレス検出・クロック生成回路37に対して供給される。
【0112】
上記第2信号生成回路32は、上記受光信号D-pdS2としての上記第2フォトディテクタ26S2の各受光素子からの受光信号に基づき、上記sum信号、及び上記トラッキング誤差信号TEを生成する。
第2信号生成回路32にて生成された上記トラッキング誤差信号TEは先に説明したトラッキング誤差信号TE−s2となり、当該トラッキング誤差信号TE−s2はセレクタ36と反転回路35とに供給される。
また、第2信号生成回路32にて生成された上記sum信号は、sum−S2信号と称し、当該sum−S2信号はアドレス検出・クロック生成回路37に対して供給される。
【0113】
反転回路33、34、35は、上記のようにして供給されたトラッキング誤差信号TE−m、TE−s1、TE−s2の極性を反転してそれぞれセレクタ36に供給する。これにより上記セレクタ36に対しては、トラッキング誤差信号TE−m、TE−mo、TE−s1、TE−s1o、TE−s2、TE−s2oの計6種のトラッキング誤差信号TEが供給されることになる。
【0114】
上記セレクタ36は、上記6種のトラッキング誤差信号TEのうちから、制御部39より指示された1のトラッキング誤差信号TEを選択出力する。当該セレクタ36により選択出力されたトラッキング誤差信号TEは、加算器40に対して入力される。
【0115】
上記加算器40に対しては、上記トラッキング誤差信号TEと共に、鋸歯状波生成回路41の出力信号(オフセット値)が入力される。加算器40は、上記トラッキング誤差信号TEに対して上記鋸歯状波生成回路41の出力信号を加算し、その結果をサーボ回路38に対して出力する。
ここで、上述もしたように、オフセット値の上昇に応じて光スポットを外周側に移動させるためには、トラッキング誤差信号TEに対しては、極性を反転させたオフセット値を加算することになる。つまり上記加算器40は、「トラッキング誤差信号TE−オフセット値」による演算を行う減算器として機能させるものである。
【0116】
上記鋸歯状波生成回路41は、先の図11にて説明したようにして予め計算により求めることのできる任意のスパイラルピッチ実現のための鋸歯状波を生成する。
この鋸歯状波生成回路41には、予め求められた任意のスパイラルピッチ実現のための鋸歯状波を生成するための情報として、クロック単位でトラッキング誤差信号TEに対して与える(この場合は減算)すべき値の情報が設定されている。鋸歯状波生成回路41はこのようにクロック単位で設定された値を順次、上記加算器40に対して出力する。
【0117】
サーボ回路38は、上記加算器40によってオフセットが付与されたトラッキング誤差信号TEに基づくサーボ演算を行ってトラッキングサーボ信号を生成すると共に、該トラッキングサーボ信号に基づき生成したトラッキングドライブ信号TDを、光学ピックアップOP内のトラッキングアクチュエータ16A(図5参照)に対して供給する。
このようなトラッキングドライブ信号TDに基づき上記トラッキングアクチュエータ16Aが駆動制御されることで、メインビームスポットMが、先の図11に示したようなトラックピッチを6分割する各位置のうちの何れか1つの位置から、付与されたオフセットに応じた分だけ外周側に離れた位置にあるように制御されることになる。
【0118】
また、サーボ回路38は、制御部39からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、上記トラッキングドライブ信号TDとしてジャンプパルスを出力することで、トラック間(この場合はランドL間)のジャンプ動作を実行させることもできる。
【0119】
また、サーボ回路38は、上述したメイン信号生成回路30から供給されるフォーカスエラー信号FEに基づくサーボ演算を行ってフォーカスサーボ信号を生成し、これに応じたフォーカスドライブ信号FDを光学ピックアップOP内のフォーカスアクチュエータ16Bに与えることで、フォーカスサーボ制御を行う。
【0120】
なお、図示は省略したが、先にも述べたように実際には光学ピックアップOP全体をトラッキング方向に移動させるためのスレッド機構が設けられ、これに対応してサーボ回路38は、トラッキング誤差信号TEに基づき生成したスレッドエラー信号や制御部39からのシーク動作制御などに基づき、上記スレッド機構を駆動制御して、光学ピックアップOP全体をトラッキング方向へ移動させるといったことも行う。
【0121】
アドレス検出・クロック生成回路37は、上述したsum−m信号、sum−S1信号、sum−S2信号に基づき、ホログラム記録媒体HMの位置制御情報記録層に記録されたアドレス情報の検出(読出)、及びクロックの生成を行う。
アドレス情報の検出及びクロックの生成は、上記sum−m信号、sum−S1信号、sum−S2信号のうちから、制御部39からの指示に基づく1のsum信号を選択し、該選択したsum信号に基づき行うことになる。
ここで、先の図4を参照して説明したように、本実施の形態の場合、アドレス情報は、ランドL上の所定間隔ごとに設定されたピット形成可能位置におけるピット形成有無を1チャネルビットの情報として記録されている。これに応じアドレス検出・クロック生成回路37は、上記選択したsum信号における、上記所定間隔ごとの上記ピット形成可能位置でのピットの有無の識別(H/Lの識別)を行うことで、1チャネルビットの「0」「1」のデータ識別を行う。そしてその結果に基づき、先の図4で説明したフォーマットに従ったアドレスデコード処理を行うことで、記録されたアドレス情報の検出(読出)を行う。アドレス検出・クロック生成回路37で得られたアドレス情報は、制御部39に対して供給される。
また、上記クロックの生成は、上記選択した1のsum信号を入力信号(基準信号)としたPLL処理を行って生成することになる。図示は省略したが、アドレス検出・クロック生成回路37にて生成された上記クロックは、必要な各部の動作クロックとして供給される。
【0122】
制御部39は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に格納されたプログラムに基づく各演算処理・制御処理を実行することで、記録再生装置の全体制御を行う。
【0123】
具体的に、上記制御部39は、任意スパイラルピッチの実現のためのサーボ対象位置の切り換え制御を行う。
【0124】
図15は、制御部39が行うサーボ対象位置の切り換え制御処理の手順を示している。
先ず、図中のステップS101とステップS102の処理によっては、所定の切り換えタイミングに至った、又は記録(又は再生)終了の何れかの条件が満たされるまで待機するようにされる。
先に説明したように、本実施の形態では予めディスク上の所定位置(どのアドレスブロックの何クロック目)がサーボ対象位置の切り換え位置としてそれぞれ設定されている。このためステップS101における所定の切り換えタイミングに至ったか否かの判別は、アドレス検出・クロック生成回路37にて検出されるアドレス情報とクロックとによって特定される現在の光スポット位置が、予め定められた上記所定位置と一致したか否かを判別することで行う。
このステップS101において、所定の切り換えタイミングに到達したとして肯定結果が得られた場合は、ステップS103に進み、現在選択中のトラッキング誤差信号TEの次に選択すべきトラッキング誤差信号TEの選択指示を行う。つまり、先に説明したように本実施の形態では6種のトラッキング誤差信号TEについての選択順序が予め定められていることから、この選択順序の情報に従って、セレクタ36に対し、現在選択中のトラッキング誤差信号TEの次に選択すべきトラッキング誤差信号TEの選択指示を行う。
このステップS103の処理を実行すると、図のようにステップS101に戻るようにされる。
【0125】
また、上記ステップS102において、記録(又は再生)が終了したとして肯定結果が得られた場合には、この図15に示す処理動作は終了となる。
【0126】
説明を図14に戻す。
制御部39は、上記のようなサーボ対象位置の切り換えのための制御と共に、アドレス検出・クロック生成回路37に対し、現在の光スポットの半径位置に応じたsum信号を選択させるための指示も行う。
制御部39には、先の図13にて説明したような、スポットの半径位置とアドレス読出に用いるスポットとの対応関係を定めた対応関係情報が設定されている。具体的には、基準位置(トラック位相0°の位置)と一致する時点からの経過時間により光スポットが位置する範囲を表した各期間の情報と、その期間内にて選択されるべきスポット(sum信号)との対応関係を定めた情報である。
制御部39は、アドレス検出・クロック生成回路37からのクロック(及びアドレス情報)と上記対応関係情報とに基づき、図13に示した各範囲のうちでメインビームスポットMが現在位置している範囲に対応するsum信号の選択をアドレス検出・クロック生成回路37に対して指示する。
【0127】
なお、先にも述べたように、メインビームスポットMが位置する範囲によっては、選択すべきスポット(sum信号)が2つ存在する場合があり、従ってその場合、制御部39はこれら2つのsum信号の選択をアドレス検出・クロック生成回路37に指示することになる。
アドレス検出・クロック生成回路37は、このように2つのsum信号が指示された場合は、それらのうち信号品質の良好な方を選択する。具体的に、アドレス検出・クロック生成回路37は、指示された2つのsum信号をモニタリングして信号品質が良好な1のsum信号を選択する。
【0128】
<3.第1の実施の形態のまとめ>

以上で説明してきたように本実施の形態では、
1)半径方向において同一幅によるグルーブとランドとが交互に形成されたホログラム記録媒体HMを用いる
2)3分割した位置制御用レーザ光の各ビームスポットの半径方向における間隔が、上記ホログラム記録媒体HMのトラックピッチの1/3となるようにする
3)3分割した位置制御用レーザ光の各ビームをそれぞれ個別に受光して、各ビームのスポット位置ごとのトラッキング誤差信号(TE−m,TE−s1,TE−s2)と、それらの反転信号(TE−mo,TE−s1o,TE−s2o)とによる計6種のトラッキング誤差信号を生成する
ものとしている。
上記1)2)の条件が満たされることにより、或るトレース位置を対象としてトラッキングサーボをかけているときに、同時に他のトレース位置についてのトラッキング誤差信号TEを得ることができるようになる。そして上記3)によるトラッキング誤差信号の生成により、上記ランド又はグルーブの形成ピッチとなるトラックピッチを6等分するそれぞれの位置についてのトラッキング誤差信号TEを得ることができる。このとき、上記のように他のトレース位置についてのトラッキング誤差信号TEを同時に得ることができるということは、トラッキングサーボに用いるトラッキング誤差信号TEの切り換えによってトレース位置の切り換えを行うことができるということを意味する。つまりこれにより本実施の形態では、トレース位置の選択(サーボ対象位置の選択)を、トラッキングサーボを継続しながらいわばクローズドループ制御で行うことができるようにしている。
【0129】
その上で本実施の形態では、トラッキングサーボに用いるトラッキング誤差信号TEに対し、予め定められた鋸歯状波によるオフセットを与えつつ、メインビームスポットMが、隣接関係にあるサーボ対象位置間における予め定められた所定位置に至るタイミングごとに、サーボ対象位置をそれまで対象としていた位置の外側に隣接する位置に切り換えるものとしている。
これにより、任意のスパイラルピッチが実現されるように光スポットの位置を制御することができる。
【0130】
また、本実施の形態において、任意のスパイラルピッチを実現するための光スポット位置制御は、トラッキングサーボがオン状態のまま行われるものであり、従ってこの場合の位置制御はクローズドループによる制御で行われるものとなる。
この点より本実施に形態によれば、任意のスパイラルピッチを実現するために必要な光スポット位置の制御を、例えばオフセットの付与のみで行うようなオープンループ制御で行う場合と比較してより高精度に行うことができる。
【0131】
また、本実施の形態では、位置制御光の波長をλとしたとき、ピットの深さをλ/4、グルーブGの深さをλ/8に設定するものとしているが、これによりトラッキング誤差信号TEの振幅を大きくすると共にその信号品質の向上を図ることができる。
つまりこの結果、より安定したトラッキングサーボを実現できる。
【0132】
また、本実施の形態では、アドレス情報を、トラック形成方向(周回方向)の所定間隔ごとの位置をピット形成可能位置とした上で当該ピット形成可能位置におけるピットの形成有無のパターンによって記録するものとしたが、このようにすることで、例えばピット/スペースの長さの組み合わせて情報記録を行う場合と比較して、短いピットが分散して形成されるようにでき、結果、ピット通過時にトラッキング誤差信号TEに対して与えられるノイズ成分を大幅に低減できる。つまりこれにより、トラッキング誤差信号TEの品質向上を図ることができ、トラッキングサーボの安定化が図られる。
【0133】
〜第2の実施の形態〜
<4.第2の実施の形態の手法>

続いて、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、光学系や記録媒体の個体ごとのバラツキに起因してトラッキング誤差信号TEの振幅にバラツキが生じる場合にも適正に任意スパイラルピッチ実現のための光スポット位置制御が行われるように図るものである。
【0134】
図16は、第2の実施の形態としての任意スパイラルピッチの実現手法について説明するための図である。
この図16において、図16(a)、図16(b)の各図ではトラッキング誤差信号TEに対して与えられるオフセットの波形(鋸歯状波形)について、或るサーボ対象位置からその隣接サーボ対象位置への切り換えタイミング付近での波形を示している。
ここで、第2の実施の形態においては、選択中のトラッキング誤差信号TEの符号は「TE−x」と表記し、当該選択中のトラッキング誤差信号TE−xの次に選択されるべきトラッキング誤差信号TEの符号は「TE−x+1」と表記する。
先の第1の実施の形態での説明からも理解されるように、計6種のトラッキング誤差信号TEを生成し且つ「中間点」でサーボ対象位置の切り換えを行う場合は、サーボ対象位置の切り換え(トラッキング誤差信号TEの切り換え)前のトラッキング誤差信号TE−xの波形(傾き)は、付与されるオフセットの波形(傾き)と一致するものとなる。同様に、サーボ対象位置の切り換え後のトラッキング誤差信号TE−x+1の波形としても付与されるオフセットの波形と一致するものとなる。図中における括弧書きの「TE−x」「TE−x+1」はこのことを表しているものである。
【0135】
第1の実施の形態にて説明したように、実施の形態においては、トラッキング誤差信号TEに与えるオフセットの波形が、実現しようとするスパイラルピッチに応じて予め定められる。図16(a)に示されるオフセットの波形は、このようにして予め定められた波形を示している。
【0136】
但し、ここで注意すべき点は、光学系の個体差やホログラム記録媒体HMの個体差などにより、トラッキング誤差信号TEの振幅にバラツキが生じる可能性が皆無ではないことである。
このように光学系やホログラム記録媒体HMの個体差に起因してトラッキング誤差信号TEの振幅にバラツキが生じる場合には、予め定められた波形によるオフセットを与えたのでは、理想通りのピッチによるスパイラルを描くように光スポット位置を制御することができなくなってしまう。
【0137】
例えば、オフセットの波形設定時において、光スポットを隣接関係にあるサーボ対象位置間の中間点に移動させるために必要なオフセット量をαと見積もったとする。これに対し、上記のようなトラッキング誤差信号TEのバラツキが生じることに起因して、光スポットを上記中間点に移動させるために必要なオフセット量が、実際には上記αよりも小さなβであったとする。
この場合には、設定されたオフセットの傾きは、実際に必要な傾きよりも大きなもとなってしまうので、図示するようにして、実際に光スポットが上記中間点に至るタイミングは、予め設定された上記中間点に至る理想的なタイミング(計算で求められた中間点に至るタイミング)よりも早まってしまうことになる(図中の誤差ΔT)。
【0138】
このことからも理解されるように、光学系やホログラム記録媒体HMの個体差などによりトラッキング誤差信号TEの振幅にバラツキが生じる場合には、先の第1の実施の形態で説明した手法でスポット位置制御を行ったとしても、実現しようとするスパイラルピッチで光スポットを移動させることができなくなってしまう。
【0139】
そこで第2の実施の形態では、以下で説明するようなスポット位置制御手法を採ることで、トラッキング誤差信号TEの振幅がばらつく場合にも正確に任意スパイラルピッチが実現できるようにする。
【0140】
先ず、第2の実施の形態では、図16(b)中の<1>と示すように、実際の中間点でサーボ対象位置の切り換えを行うものとしている。すなわち、光スポットが隣接関係にあるサーボ対象位置間の中間点に至った実際のタイミングを検出し、該検出した実際の中間点タイミングでサーボ対象位置の切り換えを行うものである。
【0141】
ここで、このように光スポットが実際に中間点に至るタイミングの検出は、選択中のトラッキング誤差信号TE−xの振幅値と、当該選択中のトラッキング誤差信号TE−xの次に選択されるべきトラッキング誤差信号TE−x+1の振幅値のそれぞれの絶対値の一致点を検出することで行うことができる。
例えば図16の例において、光スポットが現在選択中のサーボ対象対象位置とその外側隣接のサーボ対象位置との間の中間点に位置する状態では、選択中のトラッキング誤差信号TE−xの振幅値は上述したβとなり、次に選択されるべきトラッキング誤差信号TE−x+1の振幅値は−βとなる。
【0142】
図17は、オフセットの付与と上記中間点でのサーボ対象位置の切り換えを行う任意スパイラルピッチの実現手法を、先の図12と同様に6種のトラッキング誤差信号TEの波形上において模式的に示した上で、各サーボ対象位置の切り換えタイミングにおけるトラッキング誤差信号TEの振幅値を示している。
この図17からも明らかなように、本例の場合は、6種のトラッキング誤差信号TEのすべてについて、隣接関係にある各組のサーボ対象位置間の中間点におけるトラッキング誤差信号TE−xとトラッキング誤差信号TE−x+1の振幅の絶対値が同値となるものである。
【0143】
このようにして、光スポットが実際に上記中間点に至るタイミングの検出は、選択中のトラッキング誤差信号TE−xと次に選択されるべきトラッキング誤差信号TE−x+1の振幅の絶対値の一致点を検出することで行うことができる。
【0144】
説明を図16(b)に戻す。
第2の実施の形態では、先の<1>のように実際の中間点でサーボ対象位置の切り換えを行うとした上で、図中の<2>と示すようにして、理想タイミングからの誤差ΔTに応じて、オフセットの傾き補正を行う。
すなわち、上記<1>で検出した実際の中間点のタイミングと、該中間点に至るタイミングとして予め定められた理想タイミングとの間の誤差ΔTを求め、該誤差ΔTに応じてオフセットの傾き補正を行うものである。
具体的に、このような誤差ΔTに応じたオフセットの傾き補正は、実際の中間点に至るタイミングが理想タイミングよりも早い場合には上記誤差ΔTの量に応じた分だけオフセットの傾きが小となるようにし、逆に実際の中間点に至るタイミングが理想タイミングよりも遅い場合には上記誤差ΔTの量に応じた分だけオフセットの傾きが大となるようにして行う。
【0145】
このようなオフセットの傾き補正によれば、該補正後における実際の中間点に至るタイミングと理想タイミングとが一致するようにオフセットの傾きを補正することができる。つまりこれにより、上述のようなトラッキング誤差信号TEの振幅のバラツキを吸収することができ、結果、このようなトラッキング誤差信号TEの振幅バラツキが生じる場合においても、設定したスパイラルピッチが正確に実現されるようにできる。
【0146】
<5.第2の実施の形態の構成>

図18は、上記により説明した第2の実施の形態としてのスポット位置制御手法を実現するための、第2の実施の形態としての記録再生装置の内部構成(主に位置制御のための信号処理系の構成のみを抽出)を示した図である。
なお、第2の実施の形態においても記録再生装置におけるホログラムの記録再生系及び位置制御のための光学系の構成は先の図5に示したものと同様となるので改めての説明は省略する。
また図18において、既にこれまでで説明した部分と同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0147】
この図18と先の図14とを比較して分かるように、第2の実施の形態の記録再生装置は、第1の実施の形態の記録再生装置の構成と比較して、中間点検出回路42、位相比較回路43、及びゲイン調整回路44が追加された点が異なる。
また図中には反映されていないが、第2の実施の形態の場合、制御部39が行う処理内容が第1の実施の形態の場合から変更されるものとなる。
【0148】
先ず、中間点検出回路42には、6種のトラッキング誤差信号TE(TE−m,TE−s2o,TE−s1,TE−mo,TE−s2,TE−s1o)が入力される。
中間点検出回路42は、これら入力される6種のトラッキング誤差信号TEのうちから制御部39により指示された2つのトラッキング誤差信号TEを選択し、該選択した2つのトラッキング誤差信号TEの振幅値に基づきメインビームスポットMが中間点に至ったタイミングを検出する。
【0149】
図19は、上記中間点検出回路42の内部構成を示している。
図示するように中間点検出回路42内部には、セレクタ50、反転回路51、及びコンパレータ52が備えられている。
中間点検出回路42においては、上記セレクタ50に対し、上記6種のトラッキング誤差信号TEが入力される。このセレクタ50に対しては、制御部39より、選択中のトラッキング誤差信号TE−xと次に選択されるべきトラッキング誤差信号TE−x+1を選択出力させるための指示が行われる。セレクタ50は、上記入力される6種のトラッキング誤差信号TEのうちから、上記制御部39からの指示により特定される2つのトラッキング誤差信号TEを選択出力する。
【0150】
上記セレクタ50により選択出力されたトラッキング誤差信号TE−xは、コンパレータ52に対して入力される。
また上記セレクタ50により選択出力されたトラッキング誤差信号TE−x+1は、反転回路51にてその極性が反転された上でコンパレータ52に対して入力される。
コンパレータ52は、上記のように入力されたトラッキング誤差信号TE−xの振幅値とトラッキング誤差信号TE−x+1の振幅値の反転値とが同値となることに応じて、光スポット(メインビームスポットM)が実際に上記中間点に至ったことを表す中間点検出信号を出力する。
【0151】
図18に戻り、上記のようにして中間点検出回路42にて得られる中間点検出信号は、制御部39と位相比較回路43とにそれぞれ供給される。
【0152】
この場合の制御部39は、サーボ対象位置の切り換え制御処理として、セレクタ36に対し理想タイミングでの切り換え指示を行うのではなく、上記中間点検出回路42にて検出された実際の中間点のタイミングで切り換え指示を行う。すなわち、先の図15においては、ステップS101の判別処理として、予め定められた切り換えタイミングとしての理想タイミングに至ったか否かを判別するものとしたが、この場合の制御部39は、当該ステップS101における所定の切り換えタイミングに至ったか否かの判別処理として、上記中間点検出回路42から上記中間点検出信号が入力されたか否かを判別する点が第1の実施の形態の場合とは異なる。
【0153】
また、この場合の制御部39は、位相比較回路43に対して、予め定められた理想タイミングを逐次指示する処理も行うものとなる。つまり、制御部39には、予め定められた、光スポットが隣接サーボ対象位置間の中間点に至る位置の情報が設定されているので、該情報が示す位置と、アドレス検出・クロック生成回路37からのアドレス情報とクロックとによって特定される現在の光スポット位置とが一致するタイミングを逐次上記位相比較回路43に対して指示することで、上記理想タイミングの指示を行う。
【0154】
位相比較回路43は、中間点検出回路42から供給される中間点検出信号により示されるタイミングと、上記制御部39から指示された上記理想タイミングとの位相差を検出する。すなわち、先の図16(b)にて説明した誤差ΔTを検出するものである。
位相比較回路43は、このようにして検出した実際の中間点タイミングと理想タイミングとの誤差ΔTに応じた値をゲイン調整回路44に与える。
【0155】
ゲイン調整回路44は、上記位相比較回路43から供給される上記誤差ΔTに応じた値に基づき、鋸歯状波生成回路41のゲインを調整する。
具体的に、上記ゲイン調整回路44は、実際の中間点に至るタイミングが理想タイミングよりも早かった場合(つまり上記誤差ΔTの値が正の値となる場合)には、上記誤差ΔTの値に応じた分だけ小としたゲインを上記鋸歯状波生成回路41に対して与える。逆に、実際の中間点に至るタイミングが理想タイミングよりも遅かった場合(上記誤差ΔTの値が負の値となる場合)には、上記誤差ΔTの値に応じた分だけ大としたゲインを上記鋸歯状波生成回路41に対して与える。
【0156】
上記のようなゲイン調整により、実際の中間点に至るタイミングが理想タイミングよりも早い(つまり予め設定された傾きが大きかった)場合には、鋸歯状波(オフセット)の傾きを小とするように補正が行われ、また実際の中間点に至るタイミングが理想タイミングよりも遅い(予め設定された傾きが小さかった)場合には、鋸歯状波の傾きを大とするように補正が行われるようにすることができる。
これにより、実際の中間点が理想の中間点と一致するように補正を行うことができ、結果、トラッキング誤差信号TEの振幅にバラツキが生じる場合にも、設定したスパイラルピッチが正確に実現されるようにできる。
【0157】
〜変形例〜

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、これまでの説明では、アドレス情報の記録をランドLを対象として行う場合を例示したが、アドレス情報の記録はグルーブGを対象として行うこともできる。
【0158】
またこれまでの説明では、鋸歯状波によるオフセットをトラッキング誤差信号TEに対して与えるものとしたが、鋸歯状波によるオフセットは、例えばトラッキングドライブ信号TDに与えてもよく、上記オフセットは、少なくともトラッキングサーボループ内において与えるようにすればよい。
但し、第2の実施の形態においては、中間点検出回路42にて、選択中のトラッキング誤差信号TE−xと次に選択されるべきトラッキング誤差信号TE−x+1の振幅値に基づいて実際の中間点の検出を行うため、この場合においては、上記2種のトラッキング誤差信号TEのうち一方にのみオフセットが付与されているという状態は避けられる必要性がある。従って第2の実施の形態においては、このような状態を避けるようにして上記オフセットを与える位置を設定する必要がある。
また確認のために述べておくと、トラッキングドライブ信号TDに対してオフセット付与を行う場合には、加算するオフセット値の極性を、トラッキング誤差信号TEに対してオフセット付与する場合とは異なるものとすることになる。
【0159】
また、これまでの説明では、フォーカスサーボは、中央のメインビーム光の反射光から生成したフォーカスエラー信号FEを用いて行うものとしたが、より高精度なフォーカスサーボを行うとした場合などには、フォーカスサーボループに対し、トラックを分割する各位置に応じたオフセットを与えるもとすればよい。
つまり、中央のメインビーム光についてのフォーカスエラー信号FE単体を用いたフォーカスサーボを行う場合には、トラック中心(トラック位相0°)となる位置以外では実際のフォーカス点と理想フォーカス点とに誤差が生じる虞があるので、例えばその場合には、トラック中心以外の位置ではその位置に応じて予め定められたオフセットをフォーカスサーボループに対して与えるものとすればよい。
【0160】
また、本発明の範囲からは逸脱するが、任意スパイラルピッチの実現のために用いるビームスポットの数は、3つとするのではなく、図20に示されるようにして5つとすることもできる。
具体的にこの場合は、グレーティングにより得られる0次光(メインビームスポット)と各1次光(各サイドビームスポット)と共に、さらに2次光も利用する。5つの各ビームスポットについては、内周側から順にビームスポットSL2、SL1、M(メイン)、SR1、SR2とおく。なお図中では各ビームスポットの中心(黒丸)を示している。
この場合、5つのビームスポットのそれぞれの半径方向の間隔は、図のようにトラックピッチ=2nとしたとき「2n/5」となるようにしておく。
【0161】
このように2n/5の間隔で配列された5つのスポットを用いる場合において、オフセットの付与に伴う半径方向への移動が行われた際の各トラッキング誤差信号の波形を図21に示す。図21において、トラッキング誤差信号TE−m,TE−sl1,TE−sl2,TE−sr1,TE−sr2は、それぞれビームスポットM,SL2,SL1,SR1,SR2での反射光を個別に受光して生成したものである。また、図中では黒太線により付与されるオフセットの波形を示している。
図のようにこの場合の各トラッキング誤差信号TEの位相差は、360°÷5=72°となる。
この場合も各トラッキング誤差信号の位相差は90°以内となり、従ってオフセットが付与される区間は、この場合もトラッキング誤差信号の振幅値の変化がほぼ線形となる区間(つまりデトラック量が少ない区間)に合わせることができる。つまりこの場合も、任意スパイラルピッチ実現のための位置制御は安定的に行うことができる。
【0162】
この場合、任意スパイラルピッチ実現のために行うトラッキング誤差信号TEの切り換えは、図示するようにして「TE−m→TE−sl1→TE−sl2→TE−sr2→TE−sr1→TE−m・・・」の順で行う。
ここで、このことからも理解されるように、鋸歯状波によるオフセットの付与とトラッキング誤差信号の切り換えとを並行して行って任意スパイラルピッチ実現のためのスポット位置制御を行う場合においては、トラッキング誤差信号TEの切り換えは、内周側に隣接するスポットの誤差信号に順次切り替えを行っていき、最も内周側に配置されるスポットの誤差信号を選択した後は、最も外周側に配置されるスポットの誤差信号を選択し、以降は再び内周側に隣接するスポットの誤差信号を順次選択する、ということを繰り返せばよい。
【0163】
ここで確認のために述べておくと、この場合も各ビームスポットごとのsum信号を生成する点、及び時間経過に応じてアドレス読出に用いるスポット(sum信号)を順次選択する点は実施の形態の場合と同様となる。また、隣接サーボ対象位置間の中間点などの所定のタイミングでトラッキング誤差信号TEの切り換えを行う点についても同様である。
この場合においてもトラッキング誤差信号TEの切り換えタイミングは、第1の実施の形態のように理想タイミングとすることもできるし、或いは第2の実施の形態のように実際のタイミングとすることもできる。例えば実際の中間点でトラッキング誤差信号TEの切り換えを行うとしたときは、この場合も選択中の誤差信号と次に選択すべき誤差信号の振幅値(絶対値)が同値となったタイミングで切り換えを行えばよい。
【0164】
また、上記のように5つのスポットを用いる場合においても、反転信号を用いる手法を適用できる。具体的に、この場合は反転信号を含めた計10種のトラッキング誤差信号を用いることになる。
この場合は、トラックピッチを10等分した各位置をトラッキングサーボによって選択可能となる(トラック位相で言えば72°÷2=36°ごとという細かさでサーボ対象位置の選択が可能となる)。また、この場合の各トラッキング誤差信号TEの位相差は36°となるので、オフセットの付与が行われる区間は、トラッキング誤差信号における振幅値の変化がより線形に近い状態となる区間(デトラック量がより少ない区間)に合わせることができ、従って任意スパイラルピッチ実現のためのスポット位置制御はより安定的且つ高精度とすることができる。
ここで、トラッキング誤差信号TE−m,TE−sl1,TE−sl2,TE−sr1,TE−sr2のそれぞれの反転信号をトラッキング誤差信号TE−mo,TE−sl1o,TE−sl2o,TE−sr1o,TE−sr2oとおくと、計10種のトラッキング誤差信号TEの位相は、トラッキング誤差信号TE−mの位相を0°としたとき,TE−sr2o=36°,TE−sl1=72°,TE−sr1o=108°,TE−sl2=144°,TE−mo=180°,TE−sr2=216°,TE−sl1o=252°,TE−sr1=288°,TE−sl2o=324°となる。
このことからも理解されるように、この場合のトラッキング誤差信号TEの切り換えは、「TE−m→TE−sr2o→TE−sl1→TE−sr1o→TE−sl2→TE−mo→TE−sr2→TE−sl1o→TE−sr1→TE−sl2o→TE−m・・・」の順で行うことになる。
【0165】
またこれまでの説明では、本発明の光スポット位置制御装置がホログラムの記録再生装置に適用される場合を例示したが、本発明のスポット位置制御装置としては、第1の光の照射により情報の記録(及び再生)を行うと共に、第2の光を照射した結果に基づき上記第1の光による情報の記録(及び再生)位置を制御するように構成されるものであれば、他の装置にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0166】
HM ホログラム記録媒体、L1 カバー層、L2 記録層、L3,L5 反射膜、L4 中間層、L6 基板、2 第1レーザ、3 アイソレータ、4 IS(イメージスタビライズ)機能部、4A AOM、4B AOD、4C IS制御部、5 エキスパンダ、6,7,13 ミラー、8 SLM(空間光変調器)、9,23 偏光ビームスプリッタ、10,11,17,18 リレーレンズ、12 ダイクロイックミラー、14 1/4波長板、15 対物レンズ、16A トラッキングアクチュエータ、16B フォーカスアクチュエータ、19 イメージセンサ、20 第2レーザ、21 グレーティング、22 コリメーションレンズ、24 集光レンズ、25 レンズ、26 受光部、26M メインフォトディテクタ、26S1 第1サブフォトディテクタ、26S2 第2サブフォトディテクタ、OP 光学ピックアップ、27 変調制御部、28 データ再生部、29 スピンドルモータ、30 メイン信号生成回路、31 第1信号生成回路、32 第2信号生成回路、33,34,35,51 反転回路、36,50 セレクタ、37 アドレス検出・クロック生成回路、38 サーボ回路、39 制御部、40 加算器、41 鋸歯状波生成回路、42 中間点検出回路、43 位相比較回路、44 ゲイン調整回路、52 コンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光源と、
第2の光源と、
上記第2の光源から出射された光をメインビーム光、第1サブビーム光、第2サブビーム光の3ビームに分割するビーム分割部と、
半径方向において同一幅によるグルーブとランドとが交互に形成されるようにして上記グルーブがスパイラル状又は同心円状に形成されたディスク状記録媒体に対して、上記第1の光源から出射された第1の光と、上記ビーム分割部により生成された3つのビーム光とを共通の対物レンズを介して照射する光学系であって、上記3つのビーム光の上記ディスク状記録媒体上でのそれぞれの照射スポットの上記半径方向における間隔が、上記グルーブの形成に伴い上記ディスク状記録媒体に形成されるトラックのピッチの1/3となるようにして上記3つのビーム光を照射する光学系と、
上記対物レンズを介して照射される光の光軸と上記ディスク状記録媒体との上記半径方向における相対的な位置関係を変化させて、上記対物レンズを介して照射される光についてのトラッキング制御を行うように構成されたトラッキング制御機構と、
上記対物レンズを介して照射され上記ディスク状記録媒体を介した上記メインビーム光、上記第1サブビーム光、上記第2サブビーム光をそれぞれ個別に受光する受光部と、
上記受光部により得られるそれぞれの受光信号に基づき、上記ディスク状記録媒体に形成された上記トラックに対する上記メインビーム光、第1サブビーム光、第2サブビーム光のスポット位置の上記半径方向における位置誤差をそれぞれ表す誤差信号を生成すると共に、それらの反転信号を生成して計6つの誤差信号を生成する誤差信号生成部と、
上記誤差信号生成部により生成された上記誤差信号のうちから1の誤差信号を選択する誤差信号選択部と、
上記誤差信号選択部により選択された上記誤差信号に基づき、上記対物レンズを介して照射される光についてのトラッキングサーボが行われるように上記トラッキング制御機構を制御するサーボ制御部と、
所定のタイミングごとに、上記誤差信号選択部が選択する誤差信号が予め定められた順序で切り換えられるように指示を行う切り換え指示部と、
上記誤差信号の切り換え周期に応じた波形周期を有する鋸歯状波を生成する鋸歯状波生成部と、
上記鋸歯状波生成部により生成される上記鋸歯状波に従って、トラッキングサーボループに対してオフセットを与えるオフセット付与部と
を備える光スポット位置制御装置。
【請求項2】
上記ディスク状記録媒体においては、
上記グルーブ又は上記ランドの何れか一方における周回方向の所定間隔おきの位置がピットの形成可能位置として設定された上で、当該ピットの形成可能位置におけるピットの形成有無のパターンによってアドレス情報の記録が行われており、
上記受光部により得られた受光信号に基づき上記ピットの有無を反映したピット有無反映信号を生成するピット有無反映信号生成部と、
上記ピット有無反映信号に基づいて上記ピットの形成可能位置における上記ピットの形成有無のパターンを検出することで、上記アドレス情報の検出を行うアドレス検出部とをさらに備える
請求項1に記載の光スポット位置制御装置。
【請求項3】
上記ピット有無反映信号生成部は、
上記受光部により得られたそれぞれの受光信号から上記メインビーム光、第1サブビーム光、第2サブビーム光のそれぞれのスポット位置での上記ピットの有無を反映するピット有無反映信号をそれぞれ生成し、
上記アドレス検出部は、
予め定められた上記メインビーム光のスポットの半径位置とアドレス読出に用いるべき上記ピット有無反映信号との対応関係を表す対応関係情報に基づき、上記ピット有無反映信号生成部により生成された上記ピット有無反映信号のうちから1のピット有無反映信号を選択し、該選択したピット有無反映信号に基づいて上記アドレス情報の検出を行う
請求項2に記載の光スポット位置制御装置。
【請求項4】
上記誤差信号生成部により生成された誤差信号のうち、上記誤差信号選択部にて選択中の誤差信号と、当該選択中の誤差信号の次に上記誤差信号選択部にて選択されるべき誤差信号とを入力し、これらの誤差信号に基づき、上記オフセット付与部によるオフセットの付与に伴い上記半径方向に移動する上記対物レンズを介した照射光のスポットの位置が、上記選択中の誤差信号に基づくトラッキングサーボによりサーボ対象とされる選択中サーボ対象位置と上記次に選択されるべき誤差信号に基づくトラッキングサーボによりサーボ対象とされる次選択サーボ対象位置との間の所定位置に到達したタイミングを検出するタイミング検出部をさらに備えると共に、
上記切り換え指示部は、
上記タイミング検出部により検出されたタイミングで上記誤差信号選択部が選択する誤差信号の切り換え指示を行い、
さらに、上記アドレス検出部で検出される上記アドレス情報に基づき特定される、上記スポットが上記所定位置に至る理想タイミングと、上記タイミング検出部により検出された上記スポットが上記所定位置に到達したタイミングとの誤差を検出し、当該検出した誤差に基づき上記鋸歯状波生成部が生成する上記鋸歯状波の傾きを補正する傾き補正部をさらに備える
請求項2に記載の光スポット位置制御装置。
【請求項5】
上記タイミング検出部は、
上記選択中の誤差信号と上記次に選択されるべき誤差信号との絶対値が同値となったタイミングを検出することで、上記スポットが上記選択中サーボ対象位置と上記次選択サーボ対象位置との間の中間点に到達したタイミングを検出する
請求項4に記載の光スポット位置制御装置。
【請求項6】
第1の光源と、第2の光源と、上記第2の光源から出射された光をメインビーム光、第1サブビーム光、第2サブビーム光の3ビームに分割するビーム分割部と、半径方向において同一幅によるグルーブとランドとが交互に形成されるようにして上記グルーブがスパイラル状又は同心円状に形成されたディスク状記録媒体に対して、上記第1の光源から出射された第1の光と、上記ビーム分割部により生成された3つのビーム光とを共通の対物レンズを介して照射する光学系であって、上記3つのビーム光の上記ディスク状記録媒体上でのそれぞれの照射スポットの上記半径方向における間隔が、上記グルーブの形成に伴い上記ディスク状記録媒体に形成されるトラックのピッチの1/3となるようにして上記3つのビーム光を照射する光学系と、上記対物レンズを介して照射される光の光軸と上記ディスク状記録媒体との上記半径方向における相対的な位置関係を変化させて、上記対物レンズを介して照射される光についてのトラッキング制御を行うように構成されたトラッキング制御機構とを備える光スポット位置制御装置における光スポット位置制御方法であって、
上記対物レンズを介して照射され上記ディスク状記録媒体を介した上記メインビーム光、上記第1サブビーム光、上記第2サブビーム光をそれぞれ個別に受光する受光手順と、
上記受光手順により得られるそれぞれの受光信号に基づき、上記ディスク状記録媒体に形成された上記トラックに対する上記メインビーム光、第1サブビーム光、第2サブビーム光のスポット位置の上記半径方向における位置誤差をそれぞれ表す誤差信号を生成すると共に、それらの反転信号を生成して計6つの誤差信号を生成する誤差信号生成手順と、
上記誤差信号生成手順により生成した上記誤差信号のうちから、所定のタイミングごとに予め定められた順序で1の誤差信号を選択し、当該選択した1の誤差信号に基づき上記対物レンズを介して照射される光についてのトラッキングサーボが行われるように上記トラッキング制御機構を制御すると共に、上記誤差信号の切り換え周期に応じた波形周期を有する鋸歯状波に従ってトラッキングサーボループに対してオフセットを与えるサーボ対象位置切換・オフセット付与手順と
を有する光スポット位置制御方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図17】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−250867(P2010−250867A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95989(P2009−95989)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(306025075)ソニーオプティアーク株式会社 (46)
【Fターム(参考)】