説明

光デバイスウエーハの加工方法

【課題】エッチャントのハンドリングや管理、回収、廃棄等がより容易で環境負荷が低い光デバイスウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】複数の分割予定ラインと該分割予定ラインで区画された各領域に形成された光デバイスを有する光デバイスウエーハWの加工方法で、光デバイスウエーハの表面を保護膜98で被覆する保護膜被覆ステップと、該保護膜が被覆された光デバイスウエーハの該分割予定ラインに沿って分割起点溝102を形成する溝形成ステップと、該分割起点溝が形成された光デバイスウエーハにドライエッチングを施し、該分割起点溝の側面をエッチングするエッチングステップと、該エッチングステップを実施した後、光デバイスウエーハに外力を付与し該分割起点溝を起点に光デバイスウエーハを個々のチップへと分割する分割ステップと、該分割ステップを実施する前又は後に該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に格子状に形成された複数の分割予定ラインと、該分割予定ラインで区画された各領域に形成された光デバイスとを有する光デバイスウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイスの製造プロセスでは、サファイア基板や炭化珪素基板等の結晶成長用基板の表面に格子状に形成された複数の分割予定ラインで区画される各領域に発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の発光素子を形成して、光デバイスウエーハを製造する。
【0003】
その後、光デバイスウエーハの結晶成長用基板側を研削装置で研削して所定の厚みまで薄化し、更に電極を形成した後、分割予定ラインに沿って分割することで、個々の光デバイス(チップ)を製造している。
【0004】
光デバイスウエーハの分割には、例えば特開2003−124151号公報に開示される切削装置や、スクライブ装置が用いられる。光デバイスウエーハ表面に切削装置やスクライブ装置で溝を形成した後、この溝を起点に個々のチップへと分割する。
【0005】
一方、近年では、光デバイスウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザビームをウエーハに照射することでレーザ加工溝を形成し、このレーザ加工溝を分割起点としてブレーキング装置でウエーハを割断してチップへと分割する方法が提案されている(例えば、特開平10−305420号公報参照)。
【0006】
レーザ加工装置によるレーザ加工溝の形成は、ダイサーによるダイシング方法に比べて加工速度を早くすることができるとともに、サファイアやSiC等の硬度の高い結晶成長用基板を有する光デバイスウエーハであっても比較的容易に加工することができる。また、加工溝を例えば10μm以下等の狭い幅とすることができるので、ダイシング方法で加工する場合に対してウエーハ1枚当たりのデバイス取り量を増やすことができる。
【0007】
切削、スクライブ又はレーザ加工で形成された加工溝の側面に歪が形成されるが、ブレーキング装置で光デバイスウエーハを割断して個々のチップへと分割する前に、この歪を除去するために、光デバイスウエーハにはウェットエッチングが施される。ウェットエッチングにより歪を除去することで、製造される光デバイスの輝度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−124151号公報
【特許文献2】特開平10−305420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、結晶成長用基板に用いられるサファイア基板や炭化珪素基板等が、一般にエッチング性が悪く、ウェットエッチングには主にリン酸が用いられる。リン酸はハンドリングや管理に細心の注意が必要な上、使用後の回収や廃棄にも多くの手間や費用がかかり、環境負荷が高いという問題がある。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エッチャントのハンドリングや管理、回収、廃棄等がより容易で環境負荷が低い光デバイスウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、表面に形成された複数の分割予定ラインと該分割予定ラインで区画された各領域に形成された光デバイスとを有する光デバイスウエーハの加工方法であって、光デバイスウエーハの表面を保護膜で被覆する保護膜被覆ステップと、該保護膜が被覆された光デバイスウエーハの該分割予定ラインに沿って分割起点溝を形成する溝形成ステップと、該分割起点溝が形成された光デバイスウエーハにドライエッチングを施して、該分割起点溝の側面をエッチングするエッチングステップと、該エッチングステップを実施した後、光デバイスウエーハに外力を付与して該分割起点溝を起点に光デバイスウエーハを個々のチップへと分割する分割ステップと、該分割ステップを実施する前又は後に該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、を具備したことを特徴とする光デバイスウエーハの加工方法が提供される。
【0012】
好ましくは、前記保護膜は水溶性保護膜から構成され、前記溝形成ステップは、光デバイスウエーハの表面側から光デバイスウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザビームを照射することで前記分割起点溝を形成し、前記保護膜除去ステップでは、水を用いて該保護膜を除去する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光デバイスウエーハの加工方法では、ドライエッチングによって分割起点溝の側面がエッチングされる。酸を使用しないため、エッチャントのハンドリングや管理、回収、廃棄等がより容易で環境負荷が低い光デバイスウエーハの加工方法が提供される。
【0014】
更に、水溶性の保護膜が使用できるため、保護膜の被覆や除去が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】レーザ加工装置の外観斜視図である。
【図2】ダイシングテープを介して環状フレームに支持された光デバイスウエーハを示す斜視図である。
【図3】レーザビーム照射ユニットのブロック図である。
【図4】保護膜被覆装置の一部破断斜視図である。
【図5】スピンナテーブルが上昇されて光デバイスウエーハがスピンナテーブルに保持された状態の保護膜被覆装置の縦断面図である。
【図6】光デバイスウエーハ表面に水溶性樹脂を塗布する状態の保護膜被覆装置の縦断面図である。
【図7】保護膜が被覆された光デバイスウエーハの拡大断面図である。
【図8】レーザ加工ステップを示す断面図である。
【図9】エッチングステップを示す断面図である。
【図10】保護膜除去ステップを示す保護膜被覆装置の縦断面図である。
【図11】分割ステップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の光デバイスウエーハの加工方法で分割起点溝を形成するのに適したレーザ加工装置2の外観が示されている。
【0017】
レーザ加工装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作手段4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像手段によって撮像された画像が表示されるCRT等の表示手段6が設けられている。
【0018】
図2に示すように、加工対象の光デバイスウエーハWの表面においては、第1のストリートS1と第2のストリートS2とが直交されて形成されており、第1のストリートS1と第2のストリートS2とによって区画された領域に多数の光デバイスDが形成されている。
【0019】
ウエーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周縁部は環状フレームFに貼着されている。これにより、ウエーハWはダイシングテープTを介して環状フレームFに支持された状態となり、図1に示したウエーハカセット8中にウエーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウエーハカセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置される。
【0020】
ウエーハカセット8の後方には、ウエーハカセット8からレーザ加工前のウエーハWを搬出するとともに、加工後のウエーハをウエーハカセット8に搬入する搬出入手段10が配設されている。
【0021】
ウエーハカセット8と搬出入手段10との間には、搬出入対象のウエーハが一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12にはウエーハWを一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段14が配設されている。
【0022】
30は保護膜被覆装置であり、この保護膜被覆装置30は加工後のウエーハを洗浄する洗浄装置を兼用する。35は保護膜被覆装置30の蓋である。仮置き領域12の近傍には、ウエーハWと一体となったフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段16が配設されている。
【0023】
仮置き領域12に搬出されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されて保護膜被覆装置30に搬送される。保護膜被覆装置30では、後で詳細に説明するようにウエーハWの加工面に保護膜が被覆される。
【0024】
加工面に保護膜が被覆されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、チャックテーブル18に吸引されるとともに、複数の固定手段(クランプ)19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0025】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハWのレーザ加工すべきストリートを検出するアライメント手段20が配設されている。
【0026】
アライメント手段20は、ウエーハWの表面を撮像する撮像手段22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によってレーザ加工すべきストリートを検出することができる。撮像手段22によって取得された画像は、表示手段6に表示される。
【0027】
アライメント手段20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWに対してレーザビームを照射するレーザビーム照射ユニット24が配設されている。レーザビーム照射ユニット24はY軸方向に移動可能である。
【0028】
レーザビーム照射ユニット24のケーシング26中には後で詳細に説明するレーザビーム発振手段等が収容されており、ケーシング26の先端にはレーザビームを加工すべきウエーハ上に集光する集光器(レーザヘッド)28が装着されている。
【0029】
レーザビーム照射ユニット24のケーシング26内には、図3のブロック図に示すように、レーザビーム発振手段34と、レーザビーム変調手段36が配設されている。レーザビーム発振手段34としては、YAGレーザ発振器或いはYVO4レーザ発振器を用いることができる。レーザビーム変調手段36は、繰り返し周波数設定手段38と、レーザビームパルス幅設定手段40と、レーザビーム波長設定手段42を含んでいる。
【0030】
レーザビーム変調手段36を構成する繰り返し周波数設定手段38、レーザビームパルス幅設定手段40及びレーザビーム波長設定手段42は周知の形態のものであり、本明細書においてはその詳細な説明を省略する。
【0031】
次に、光デバイスウエーハWの表面上に保護膜を被服する保護膜被覆装置30について図4乃至図6を参照して説明する。まず図4を参照すると、保護膜被覆装置30の一部破断斜視図が示されている。
【0032】
保護膜被覆装置30は、スピンナテーブル機構44と、スピンナテーブル機構44を包囲して配設された洗浄水受け機構46を具備している。スピンナテーブル機構44は、スピンナテーブル(保持テーブル)48と、スピンナテーブル48を回転駆動する電動モータ50と、電動モータ50を上下方向に移動可能に支持する支持機構52とから構成される。
【0033】
スピンナテーブル48は多孔性材料から形成された吸着チャック(保持面)48aを具備しており、吸着チャック48aが図示しない吸引手段に連通されている。従って、スピンナテーブル48は、吸着チャック48aにウエーハを載置し図示しない吸引手段により負圧を作用させることにより、吸着チャック48a上にウエーハを吸引保持する。
【0034】
スピンナテーブル48には振り子タイプの一対のクランプ49が配設されており、スピンナテーブル48が回転されるとこのクランプ49が遠心力で揺動して図2に示す環状フレームFをクランプする。
【0035】
スピンナテーブル48は、電動モータ50の出力軸50aに連結されている。支持機構52は、複数の(本実施形態においては3本)の支持脚54と、支持脚54にそれぞれ連結され電動モータ50に取り付けられた複数(本実施形態においては3本)のエアシリンダ56とから構成される。
【0036】
このように構成された支持機構52は、エアシリンダ56を作動することにより、電動モータ50及びスピンナテーブル48を図5に示す上昇位置であるウエーハ搬入・搬出位置と、図6に示す下降位置である作業位置に位置付け可能である。
【0037】
洗浄水受け機構46は、洗浄水受け容器58と、洗浄水受け容器58を支持する3本(図4には2本のみ図示)の支持脚60と、電動モータ50の出力軸50aに装着されたカバー部材62とから構成される。
【0038】
洗浄水受け容器58は、図5に示すように、円筒状の外側壁58aと、底壁58bと、内側壁58cとから構成される。底壁58bの中央部には、電動モータ50の出力軸50aが挿入される穴51が設けられており、内側壁58cはこの穴51の周辺から上方に突出するように形成されている。
【0039】
また、図4に示すように、底壁58bには廃液口59が設けられており、この廃液口59にドレンホース64が接続されている。カバー部材62は円盤状に形成されており、その外周辺から下方に突出するカバー部62aを備えている。
【0040】
このように構成されたカバー部材62は、電動モータ50及びスピンナテーブル48が図6に示す作業位置に位置付けられると、カバー部62aが洗浄水受け容器58を構成する内側壁58cの外側に隙間を持って重なるように位置付けられる。
【0041】
保護膜被覆装置30は、スピンナテーブル48に保持された加工前のウエーハWに水溶性樹脂を塗布する塗布手段66を具備している。塗布手段66は、スピンナテーブル48に保持された加工前のウエーハの加工面に向けて水溶性樹脂を供給する水溶性樹脂供給ノズル68と、水溶性樹脂供給ノズル68を支持する概略L形状のアーム70と、アーム70に支持された水溶性樹脂供給ノズル68を揺動する正転・逆転可能な電動モータ72とから構成される。水溶性樹脂供給ノズル68はアーム70を介して図示しない水溶性樹脂供給源に接続されている。
【0042】
保護膜被覆装置30はレーザ加工後のウエーハを洗浄する洗浄装置を兼用する。よって、保護膜被覆装置30は、スピンナテーブル48に保持された加工後のウエーハを洗浄するための洗浄水供給手段74及びエア供給手段76を具備している。
【0043】
洗浄水供給手段74は、スピンナテーブル48に保持された加工後のウエーハに向けて洗浄水を噴出する洗浄水ノズル78と、洗浄水ノズル78を支持するアーム80と、アーム80に支持された洗浄水ノズル78を揺動する正転・逆転可能な電動モータ82とから構成される。洗浄水噴射ノズル78はアーム80を介して図示しない洗浄水供給源に接続されている。
【0044】
エア供給手段76は、スピンナテーブル48に保持された洗浄後のウエーハに向けてエアを噴出するエアノズル84と、エアノズル84を支持するアーム86と、アーム86に支持されたエアノズル84を揺動する正転・逆転可能な電動モータ(図示せず)を備えている。エアノズル84はアーム86を介して図示しないエア供給源に接続されている。
【0045】
次に、このように構成された保護膜被覆装置30の作用について説明する。ウエーハ搬送手段16の旋回動作によって加工前のウエーハが保護膜被覆装置30のスピンナテーブル48に搬送され、図5に示すように吸着チャック48aにより吸引保持される。
【0046】
この時、水溶性樹脂供給ノズル68、洗浄水ノズル78及びエアノズル84は図4及び図5に示すように、スピンナテーブル48の上方から隔離した待機位置に位置付けられている。
【0047】
スピンナテーブル48でウエーハWを吸引保持したならば、ウエーハWの加工面である表面に水溶性樹脂を塗布して保護膜を被覆する保護膜被覆ステップを実施する。保護膜被覆ステップを実施するには、スピンナテーブル48を図6に示すように10〜100rpm(好ましくは30〜50rpm)で回転させながら、ウエーハWの加工面の中央領域に水溶性樹脂供給ノズル68から水溶性樹脂69を滴下する。
【0048】
スピンナテーブル48が回転されているため、滴下された水溶性樹脂69はウエーハWの加工面にスピンコーティングされ、図7に示すようにウエーハWの加工面に保護膜98が形成される。
【0049】
保護膜98を形成する液状樹脂としては、PVA(ポリ・ビニール・アルコール)PEG(ポリ・エチレン・グリコール)、PEO(酸化ポリエチレン)等の水溶性のレジストが望ましい。
【0050】
保護膜被覆ステップによって半導体ウエーハWの表面に保護膜98が被覆されたならば、スピンナテーブル48を図5に示すウエーハ搬入・搬出位置に位置付けるとともに、スピンナテーブル48に保持されているウエーハの吸引保持を解除する。
【0051】
そして、スピンナテーブル48上のウエーハWは、ウエーハ搬送手段16によってチャックテーブル18に搬送され、チャックテーブル18により吸引保持される。さらに、チャックテーブル18がX軸方向に移動してウエーハWは撮像手段22の直下に位置付けられる。
【0052】
撮像手段22でウエーハWの加工領域を撮像して、レーザビームを照射するレーザビーム照射ユニット24の集光器28とストリートSとの位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理が実行され、レーザビーム照射位置のアライメントが遂行される。
【0053】
このようにして、チャックテーブル18上に保持されているウエーハWのストリートS1又はS2を検出し、レーザビーム照射位置のアライメントが行われたならば、チャックテーブル18をレーザビームを照射する集光器28が位置するレーザビーム照射領域に移動し、ウエーハWのストリートS1又はS2に沿って集光器28からレーザビームを保護膜98を通して照射して、分割起点溝となるレーザ加工溝を形成する。
【0054】
レーザ加工溝形成ステップにおいては、図8に示すようにレーザビームを照射するレーザビーム照射ユニット24の集光器28からウエーハWの加工面である表面側から保護膜98を通して所定のストリートSに向けてパルスレーザビームを照射しながら、チャックテーブル18をX軸方向に所定の送り速度(例えば100mm/秒)で移動する。
【0055】
尚、レーザ加工条件は例えば以下の通りである。
【0056】
光源 :YAGレーザ
波長 :355nm(YAGレーザの第3高調波)
出力 :3.0W
繰り返し周波数 :20kHz
集光スポット径 :1.0μm
送り速度 :100mm/秒
【0057】
レーザ加工溝形成ステップを実施することによって、ウエーハWにはストリートSに沿ってレーザ加工溝102が形成される。この時、図8に示すようにレーザビームの照射によりデブリ100が発生しても、このデブリ100は保護膜98によって遮断され、デバイスDの電子回路及びボンディングパッド等に付着することはない。
【0058】
このようにして、ウエーハWにレーザ加工溝102を形成したら、チャックテーブル18は最初にウエーハWを吸引保持した位置に戻され、ここでウエーハWの吸引保持を解除する。
【0059】
次いで、環状フレームFに支持された光デバイスウエーハWをレーザ加工装置2から取り出し、図9に示すように、プラズマエッチング装置104のチャンバー内に搬入する。そして、矢印Aに示すようにSF6又はCF4を用いたプラズマエッチングを光デバイスウエーハWに施し、分割起点溝(レーザ加工溝)102の側面102aをエッチングして、側面102aから歪を除去する。光デバイスウエーハWの表面(デバイス形成面)は保護膜98で被覆されているため、デバイスDがエッチングされることはない。
【0060】
プラズマエッチング終了後、光デバイスウエーハWをレーザ加工装置2のチャックテーブル18上に再び載置し、光デバイスウエーハWを搬送手段32によって保護膜形成装置30のスピンナテーブル40まで搬送し、吸着チャック48aにより吸引保持する。
【0061】
この時、水溶性樹脂供給ノズル68、洗浄水ノズル78及びエアノズル84は、図4及び図5に示すようにスピンナテーブル48の上方から隔離した待機位置に位置づけられている。
【0062】
そして、図10に示すように純水源とエア源に接続された洗浄水ノズル78から純水とエアとからなる洗浄水を噴射しながらウエーハWを低速回転(例えば300rpm)させることによりウエーハWを洗浄する。
【0063】
その結果、ウエーハWの表面に被覆されていた保護膜98は水溶性の樹脂によって形成されているので、保護膜98を容易に洗い流すことができるとともに、レーザ加工時に発生したデブリ100も除去される。
【0064】
洗浄工程が終了したら、乾燥工程を実行する。即ち、洗浄水ノズル78を待機位置に位置付けるとともに、エアノズル84の噴出口をスピンナテーブル48上に保持されたウエーハWの外周部上方に位置付ける。
【0065】
そして、スピンナテーブル48を例えば3000rpmで回転しつつエアノズル84からスピンナテーブル48に保持されているウエーハWに向けてエアを噴出する。この時、エアノズル84から噴出されたエアがスピンナテーブル48に保持されたウエーハWの外周部に当たる位置から中心部に当たる位置までの揺動範囲で揺動される。その結果、ウエーハWの表面が乾燥される。
【0066】
ウエーハWを乾燥させた後、搬送手段16によりウエーハWを吸着して仮置き領域12に戻し、更に搬出入手段10によりウエーハカセット8の元の収納場所にウエーハWは戻される。
【0067】
このように保護膜98を光デバイスウエーハWの表面から除去した後、図11に示すようなブレーキング装置106を用いて、分割起点溝102を起点に光デバイスウエーハWを個々のチップ(デバイス)Dに分割する分割ステップを実施する。
【0068】
この分割ステップでは、ブレーキング装置106の円筒108の載置面上に環状フレームFを載置して、クランプ110で環状フレームFをクランプする。そして、バー形状の分割治具112を円筒108内に配設する。
【0069】
分割治具112は上段保持面114aと下段保持面114bとを有しており、下段保持面114bに開口する真空吸引路116が形成されている。ここで、分割治具112の詳細構造は、特許第4361506号公報に開示されているので参照されたい。
【0070】
分割治具112による分割ステップを実施するには、分割治具112の真空吸引路116を矢印118で示すように真空吸引しながら、分割治具112の上段保持面114a及び下段保持面114bを下側からダイシングテープTに接触させて、分割治具112を矢印A方向に移動する。即ち、分割治具112を分割しようとするストリートS1と直交する方向に移動する。
【0071】
これにより、分割起点溝102が分割治具112の上段保持面114aの内側エッジの真上に移動すると、分割起点溝102を有するストリートS1の部分に曲げ応力が集中して発生し、この曲げ応力で光デバイスウエーハWはストリートS1に沿って割断される。
【0072】
全ての第1のストリートS1に沿っての分割が終了すると、分割治具112を90度回転して、或いは円筒108を90度回転して、第1のストリートS1に直交する第2のストリートS2を同様に分割する。これにより光デバイスウエーハWは個々の光デバイスDに分割される。
【0073】
上述した実施形態では、保護膜除去ステップを実施してから分割ステップを実施しているが、光デバイスウエーハWを個々の光デバイスDに分割した後、保護膜除去ステップを実施するようにしてもよい。
【0074】
このように上述した実施形態では、ドライエッチングの一種であるプラズマエッチングにより分割起点溝102の側面102aをエッチングして歪を除去している。酸を使用しないため、エッチャントのハンドリングや管理、回収、廃棄等がより容易で環境負荷が低い光デバイスウエーハの加工方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
2 レーザ加工装置
18 チャックテーブル
24 レーザビーム照射ユニット
28 集光器
30 保護膜被覆装置
48 スピンナテーブル
66 水溶性樹脂塗布手段
68 水溶性樹脂供給ノズル
74 洗浄手段
78 洗浄水ノズル
98 保護膜
100 デブリ
102 分割起点溝
102a 分割起点溝の側面
104 プラズマエッチング装置
106 ブレーキング装置
112 分割治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成された複数の分割予定ラインと該分割予定ラインで区画された各領域に形成された光デバイスとを有する光デバイスウエーハの加工方法であって、
光デバイスウエーハの表面を保護膜で被覆する保護膜被覆ステップと、
該保護膜が被覆された光デバイスウエーハの該分割予定ラインに沿って分割起点溝を形成する溝形成ステップと、
該分割起点溝が形成された光デバイスウエーハにドライエッチングを施して、該分割起点溝の側面をエッチングするエッチングステップと、
該エッチングステップを実施した後、光デバイスウエーハに外力を付与して該分割起点溝を起点に光デバイスウエーハを個々のチップへと分割する分割ステップと、
該分割ステップを実施する前又は後に該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、
を具備したことを特徴とする光デバイスウエーハの加工方法。
【請求項2】
前記保護膜は水溶性保護膜から構成され、
前記溝形成ステップは、光デバイスウエーハの表面側から光デバイスウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザビームを照射することで前記分割起点溝を形成し、
前記保護膜除去ステップでは、水を用いて該保護膜を除去する請求項1記載の光デバイスウエーハの加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−23085(P2012−23085A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157754(P2010−157754)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】