説明

光パルス試験器

【課題】被測定光ファイバ内を伝送している信号光のモニタを可能にした光パルス試験器を提供する。
【解決手段】OTDRモードと信号光モニタモードの2つの測定モードを設け、OTDRモードの場合には、波長可変光源1から所定の波長に固定された連続光が出力されるように波長可変光源1を制御し、パルス信号を発生して光スイッチ3に出力し、光スイッチ3に出力される上記パルス信号に対応づけて第1のタイミング信号を発生して処理手段5に出力するようにし、また信号光モニタモードの場合には、波長可変光源1から所定の波長範囲にわたって掃引された連続光が出力されるように波長可変光源1を制御し、上記パルス信号の光スイッチ3への出力を断にし、波長可変光源1の掃引に対応づけて第2のタイミング信号を発生して処理手段5に出力するようにして、OTDR法に基づいたファイバ特性の測定と信号光の光強度の測定とを切り換えて行えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OTDR(Optical Time Domain Reflectometry)法に基づいて被測定光ファイバの特性を測定する、すなわち光パルスを被測定光ファイバに入射し、その後方散乱及びフレネル反射に起因する戻り光を受光して被測定光ファイバの特性を測定するコヒーレント検波技術を用いた光パルス試験器に関し、特に被測定光ファイバ内を伝送している信号光のモニタを可能にした光パルス試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
海底光ファイバ通信システムのような超長距離光中継システムでは、それぞれ光中継器と光ファイバとが多段に縦続接続されている上り回線と下り回線との間に設けられたループバックパスを利用して、OTDR法に基づいた障害の監視が行われている。このようなOTDR法に基づいて超長距離光中継システムの障害の監視を行う装置として、従来、OTDR法に基づいて被測定光ファイバの特性を測定するコヒーレント検波技術を用いた光パルス試験器があった。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開平9−236513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光パルス試験器においては、コヒーレント検波技術を用いるとともに、WDM(波長多重)方式の各チャネル(波長グリッド)に対応させて測定(監視)光パルスの波長を可変できるようにして、被測定光ファイバ(測定対象)としての超長距離光中継システム(例えば海底光ファイバ通信システム、WDM方式の海底光ファイバ通信システム等)の障害監視をインサービス状態で行えるようにしている。しかしながら、従来の光パルス試験器は、本来OTDR法に基づいて測定対象の障害監視を行う装置であるために、例えばWDM方式の1つのチャネルの送信器に異常が発生したような場合にはそれを発見することができない。そのために、光パルス試験器とは別に光スペクトラムアナライザを用いて、通信システム内を伝送する信号光をモニタする必要があった。
【0005】
本発明は、本来の光パルス試験器のOTDR法に基づいたファイバ特性を測定する機能のほかに、光スペクトラムアナライザの信号光の光強度を測定する機能を備える(すなわち信号光の一部を波長掃引されたローカル光によってコヒーレント検波してその光強度を検出する)ことによって、これらの課題を解決し、被測定光ファイバ内を伝送している信号光のモニタを可能にした光パルス試験器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の光パルス試験器では、所定波長の連続光を発生して出力する波長可変光源(1)と、該波長可変光源からの連続光を測定光とローカル光とに分岐して出力する光分岐器(2)と、所定のパルス幅及び所定の繰り返し周期を有するパルス信号が入力されている間のみ、前記光分岐器から入力される前記測定光を該パルス信号でパルス変調し、得られた光パルスを被測定光ファイバに出力する光スイッチ(3)と、該光スイッチが前記光パルスを前記被測定光ファイバに出力している間は、該被測定光ファイバの各位置から戻ってくる戻り光を前記光分岐器から入力される前記ローカル光によってコヒーレント検波し、得られた検波信号を第1の電気信号として出力し、かつ、該光スイッチが前記光パルスを前記被測定光ファイバに出力していない間は、前記被測定光ファイバ内を伝送している信号光の一部をモニタ光として受け、該モニタ光を前記光分岐器から入力される前記ローカル光によってコヒーレント検波し、得られた検波信号を第2の電気信号として出力する光ヘテロダイン検波回路(4)と、該光ヘテロダイン検波回路から前記第1の電気信号を受けたときは、第1のタイミング信号に基づいて該第1の電気信号のデータ処理を行って前記被測定光ファイバの特性を求め、かつ、前記光ヘテロダイン検波回路から前記第2の電気信号を受けたときは、第2のタイミング信号に基づいて該第2の電気信号のデータ処理を行って前記ローカル光の波長に対する前記モニタ光の光強度を求める処理手段(5)と、OTDRモード及び信号光モニタモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を受け、該モード指定信号がOTDRモードを指定している場合には、前記波長可変光源から所定の波長に固定された連続光が出力されるように当該波長可変光源を制御するとともに前記パルス信号を発生して前記光スイッチに出力し、更に前記光スイッチに出力される前記パルス信号に対応づけて前記第1のタイミング信号を発生して前記処理手段に出力し、かつ、前記モード指定信号が信号光モニタモードを指定している場合には、前記波長可変光源から所定の波長範囲にわたって掃引された連続光が出力されるように当該波長可変光源を制御するとともに前記パルス信号の前記光スイッチへの出力を断にし、更に前記波長可変光源の掃引に対応づけて前記第2のタイミング信号を発生して前記処理手段に出力する制御手段(6)とを備えた。
【0007】
また、本発明の請求項2の光パルス試験器では、上述した請求項1の光パルス試験器において、前記処理手段は、前記被測定光ファイバ内を伝送している前記信号光に異常がなかったときの前記モニタ光の光強度に基づく所定の値を基準光強度として前記ローカル光の波長に対応づけて記憶して、該基準光強度とその後に求められた前記モニタ光の光強度とを比較し、その後に求められた該モニタ光の各光強度のうちの少なくとも1つが該基準光強度以下であると判定した場合には判定信号を出力するようにした。
【0008】
また、本発明の請求項3の光パルス試験器では、上述した請求項2の光パルス試験器において、前記制御手段は、前記処理手段から前記判定信号を受けた場合には、前記信号光モニタモードから前記OTDRモードに切り換え、OTDR法に基づいて少なくとも異常のあった前記信号光の波長における前記被測定光ファイバの特性を求めるようにした。
【0009】
また、本発明の請求項4の光パルス試験器では、上述した請求項1の光パルス試験器において、前記処理手段は、前記第1のタイミング信号に基づいて、前記光ヘテロダイン検波回路からの前記第1の電気信号のデータ処理を行って前記被測定光ファイバの特性を求めるファイバ特性検出手段(5a)と、前記第2のタイミング信号に基づいて、前記光ヘテロダイン検波回路からの前記第2の電気信号のデータ処理を行って前記ローカル光の波長に対する前記モニタ光の光強度を求めるモニタ光強度検出手段(5b)とを含み、前記制御手段は、前記モード指定信号を受け、該モード指定信号がOTDRモードを指定している場合には、前記波長可変光源から所定の波長に固定された連続光が出力されるように、かつ、前記モード指定信号が信号光モニタモードを指定している場合には、前記波長可変光源から所定の波長範囲にわたって掃引された連続光が出力されるように該波長可変光源を制御する発振波長制御手段(6a)と、前記モード指定信号を受け、該モード指定信号がOTDRモードを指定している場合には、前記パルス信号を発生して前記光スイッチに出力し、かつ、前記モード指定信号が信号光モニタモードを指定している場合には、前記パルス信号の前記光スイッチへの出力を断にするパルス信号発生手段(6b)と、前記波長制御信号、前記パルス信号及び前記モード指定信号を受け、該モード指定信号がOTDRモードを指定している場合には、前記ファイバ特性検出手段が前記被測定光ファイバの特性を求めるために必要な前記第1のタイミング信号を前記パルス信号に基づいて発生して該ファイバ特性検出手段に出力し、かつ、前記モード指定信号が信号光モニタモードを指定している場合には、前記モニタ光強度検出手段が前記ローカル光の波長に対する前記モニタ光の光強度を求めるために必要な前記第2のタイミング信号を前記波長制御信号に基づいて発生して該モニタ光強度検出手段に出力するタイミング信号発生手段(6c)とを含むようにした。
【0010】
また、本発明の請求項5の光パルス試験器では、上述した請求項4の光パルス試験器において、前記処理手段は、更に、前記モニタ光強度検出手段から出力されるモニタ光の光強度情報及び前記第2のタイミング信号を受け、該モニタ光の光強度情報が前記被測定光ファイバ内を伝送している前記信号光に異常がなかったときの情報である場合には、当該モニタ光の光強度情報である光強度に基づく所定の値を、前記第2のタイミング信号に基づいて、前記ローカル光の波長に対応づけて基準光強度として記憶する基準光強度記憶手段(5d)と、該基準光強度記憶手段からの前記基準光強度と前記モニタ光強度検出手段からのモニタ光の光強度情報とを比較し、該モニタ光の各光強度のうちの少なくとも1つが前記基準光強度以下であると判定した場合には判定信号を出力する比較判定手段(5c)とを含むようにした。
【0011】
また、本発明の請求項6の光パルス試験器では、上述した請求項5の光パルス試験器において、前記発振波長制御手段は、前記比較判定手段から前記判定信号を受けたときは、前記波長制御信号により、前記波長可変光源から所定の波長に固定された連続光が出力されるように該波長可変光源を制御し、前記パルス信号発生手段は、前記比較判定手段から前記判定信号を受けたときは、前記パルス信号を発生して前記光スイッチに出力し、前記タイミング信号発生手段は、前記比較判定手段から前記判定信号を受けたときは、前記ファイバ特性検出手段が前記被測定光ファイバの特性を求めるために必要な前記第1のタイミング信号を発生して該ファイバ特性検出手段に出力するようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1及び4の光パルス試験器では、OTDRモード及び信号光モニタモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を設け、このモード指定信号がOTDRモードを指定している場合には、波長可変光源から所定の波長に固定された連続光が出力されるように波長可変光源を制御するとともにパルス信号を発生して光スイッチに出力し、更に光スイッチに出力される上記パルス信号に対応づけて第1のタイミング信号を発生して処理手段に出力し、かつ、そのモード指定信号が信号光モニタモードを指定している場合には、波長可変光源から所定の波長範囲にわたって掃引された連続光が出力されるように波長可変光源を制御するとともに上記パルス信号の光スイッチへの出力を断にし、更に波長可変光源の掃引に対応づけて第2のタイミング信号を発生して処理手段に出力するようにしたので、OTDR法に基づいたファイバ特性の測定と信号光の光強度の測定とを切り換えて行うことができる。したがって、従来は、信号光をモニタするための光スペクトラムアナライザを別に必要としたが、本発明の光パルス試験器の場合には不要となる。
【0013】
本発明の請求項2及び5の光パルス試験器では、被測定光ファイバ内を伝送している信号光に異常がなかったときのモニタ光の光強度に基づく所定の値を基準光強度としてローカル光の波長に対応づけて記憶して、この基準光強度とその後に求められたモニタ光の光強度とを比較し、その後に求められたモニタ光の各光強度のうちの少なくとも1つがその基準光強度以下であると判定した場合には判定信号を出力するようにしたので、判定信号から障害の発生箇所を特定することが可能となる。WDM信号光を伝送している回線を構成している光ファイバ等の障害(破断、損失増大等)と、回線以外(例えばその特定波長のチャネルのWDM送信器)の障害とを切り分けて特定することができる。信号光モニタモードで特定の波長の信号光が異常と判断されたときには、その波長を使ったOTDR測定を実行することにより、障害原因の特定を回線の通信を妨げることなく迅速に行うことができる。
【0014】
本発明の請求項3及び6の光パルス試験器では、モニタ光の各光強度のうちの少なくとも1つがその基準光強度以下であると判定した場合には、測定のモードを信号光モニタモードからOTDRモードに自動的に切り換えて、OTDR法に基づいて少なくとも異常のあった信号光の波長における被測定光ファイバの特性を求めるようにしたので、その被測定光ファイバの長手方向の障害位置を速やかに特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態の光パルス試験器の構成を図1に示す。なお、被測定光ファイバ10としてWDM方式の海底光ファイバ通信システムを測定対象とする場合について説明する。このWDM方式の海底光ファイバ通信システムは、例えば、WDM送信器(Tx)、WDM受信器(Rx)、それぞれ光中継器と光ファイバとが多段に縦続接続されている上り回線と下り回線、及びそれらの回線間に設けられたループバックパスで構成されており、それぞれの回線上を異なる複数の波長を持つWDM信号光がWDM送信器から出力されてWDM受信器に向かって伝送される。
【0016】
波長可変光源1は、例えば波長可変レーザであり、制御手段6から入力される波長制御信号aに基づいて、所定の波長に固定された連続光あるいは所定の波長範囲にわたって掃引された連続光を発生して光カプラ2に出力する。光カプラ2は、波長可変光源1からの連続光を受けて2つに分岐し、一方の連続光を測定光として光スイッチ(光SW)3に出力し、他方の連続光をローカル光として光ヘテロダイン検波回路4に出力する。光スイッチ3は、例えばLN変調器のような電気光学光スイッチであり、所定のパルス幅と所定の繰り返し周期を有するパルス信号bが制御手段6から入力されている間のみ、光カプラ2から入力される測定光をこのパルス信号bでパルス変調し、得られた光パルスを被測定光ファイバ10の上り回線に出力する。
【0017】
光ヘテロダイン検波回路4は、光カプラ4a及び受光器(PD)4bで構成されており、光スイッチ3が上記光パルスを被測定光ファイバ10に出力している間は、被測定光ファイバ10の上り回線の各位置からループバックパス及び下り回線を経由して戻ってくる戻り光を、光カプラ2から入力されるローカル光によってコヒーレント検波し、得られた検波信号(ビート信号)を第1の電気信号として処理手段5に出力する。また、光スイッチ3が上記光パルスを被測定光ファイバ10に出力していない間は、被測定光ファイバ10の下り回線を伝送しているWDM信号光の一部をモニタ光として受け、このモニタ光を光カプラ2から入力されるローカル光によってコヒーレント検波し、得られた検波信号(ビート信号)を第2の電気信号として処理手段5に出力する。すなわち、光ヘテロダイン検波回路4を構成している光カプラ4aは、被測定光ファイバ10からの戻り光あるいはモニタ光と光カプラ2からのローカル光とを合波して受光器4bに出力する。また受光器4bは、その合波光をコヒーレンント検波して検波信号(ビート信号)を第1の電気信号あるいは第2の電気信号として処理手段5に出力する。
【0018】
処理手段5は、ファイバ特性検出手段5a、モニタ光強度検出手段5b、比較判定手段5c及び基準光強度記憶手段5dで構成されており、制御手段6から入力される第1のタイミング信号cに基づいて、上記第1の電気信号のデータ処理を行って被測定光ファイバ10の特性を求める。また、制御手段6から入力される第2のタイミング信号dに基づいて、上記第2の電気信号のデータ処理を行ってローカル光の波長(すなわちWDM信号光の波長)に対するモニタ光の光強度(すなわちWDM信号光の光強度)を求めるとともに、そのモニタ光の光強度と基準光強度記憶手段5dに記憶されている基準光強度とを比較して得られた判定信号eを出力する。
【0019】
すなわち、ファイバ特性検出手段5aは、制御手段6から入力される第1のタイミング信号cに基づいて、光ヘテロダイン検波回路4からの上記第1の電気信号の振幅をディジタル値に変換し、このディジタル値のデータ処理、すなわち加算平均化処理、対数変換等を行って、被測定光ファイバ10の上り回線の各位置に対応した戻り光の光強度から被測定光ファイバ10の特性を求める。
【0020】
モニタ光強度検出手段5bは、制御手段6から入力される第2のタイミング信号dに基づいて、光ヘテロダイン検波回路4からの上記第2の電気信号の振幅をディジタル値に変換し、このディジタル値のデータ処理、すなわち加算平均化処理、対数変換等を行って、ローカル光の波長(すなわちWDM信号光の波長)に対するモニタ光の光強度(すなわちWDM信号光の光強度)を求める。
【0021】
基準光強度記憶手段5dは、モニタ光強度検出手段5bから出力されるモニタ光の光強度情報を受け、このモニタ光の光強度情報が被測定光ファイバ10の下り回線を伝送しているWDM信号光に異常がなかったときの情報である場合には、このモニタ光の光強度情報に基づく所定の値を、制御手段6から入力される第2のタイミング信号dに基づいて、ローカル光の波長(すなわちWDM信号光の波長)に対応づけて基準光強度として記憶する。
【0022】
比較判定手段5cは、基準光強度記憶手段5dからの上記基準光強度と、この基準光強度の記憶後にモニタ光強度検出手段5bから出力されるモニタ光の光強度情報とを比較し、全てのモニタ光の光強度が、ローカル光の波長(すなわちWDM信号光の波長)の全般にわたって基準光強度以下であると判定した場合や、またモニタ光の光強度が、ローカル光の波長(すなわちWDM信号光の波長)の内の1つもしくは複数の波長で基準光強度以下であると判定した場合に、判定信号eをそれぞれ制御手段6に出力する。具体例を示すと、例えば、信号光に異常がなかったときのモニタ光の光強度Lr(図2(a))に基づく基準光強度が0.8Lrであるとして、モニタ光の光強度が図2(b)又は(c)に示すようなLmの場合、Lm<0.8LrもしくはLm=0.8Lrのときに判定信号eを出力し、また、基準光強度を0.5Lrとして、モニタ光の光強度が図2(d)に示すように、波長λ2の光強度のみLm<0.5LrもしくはLm=0.5Lrのときにも判定信号eを出力してもよい。
【0023】
制御手段6は、発振波長制御手段6a、パルス信号発生手段6b及びタイミング信号発生手段6cで構成されており、操作部(図示しない)から入力されるモード指定信号(OTDRモード又は信号光モニタモードを指定する)及び処理手段5から入力される判定信号eに基づいて、波長制御信号a、パルス信号b、第1のタイミング信号c及び第2のタイミング信号dを発生して出力する。
【0024】
すなわち、発振波長制御手段6aは、操作部(図示しない)からOTDRモードを指定するモード指定信号が入力されたとき、又は比較判定手段5cから判定信号eが入力されたときは、波長可変光源1から所定の波長に固定された連続光が出力されるように、また信号光モニタモードを指定するモード指定信号が入力されたときは、波長可変光源1から所定の波長範囲にわたって掃引された連続光が出力されるように、波長可変光源1を制御するための波長制御信号aを発生して出力する。
【0025】
パルス信号発生手段6bは、操作部(図示しない)からOTDRモードを指定するモード指定信号が入力されたとき、又は比較判定手段5cから判定信号eが入力されたときは、被測定光ファイバ10の測定距離、測定の距離分解能等によってそれらの値が決められる、所定のパルス幅と所定の繰り返し周期を有するパルス信号bを発生して光スイッチ3に出力する。また、信号光モニタモードを指定するモード指定信号が入力されたときは、パルス信号bの光スイッチ3への出力を断にする。
【0026】
タイミング信号発生手段6cは、操作部(図示しない)からOTDRモードを指定するモード指定信号が入力されたとき、又は比較判定手段5cから判定信号eが入力されたときは、ファイバ特性検出手段5aが光ヘテロダイン検波回路4からの第1の電気信号を処理して被測定光ファイバ10の特性を求めるために必要な第1のタイミング信号cをパルス信号bに基づいて発生してファイバ特性検出手段5aに出力する。また、信号光モニタモードを指定するモード指定信号が入力されたときは、モニタ光強度検出手段5bが光ヘテロダイン検波回路4からの第2の電気信号を処理してローカル光の波長(すなわちWDM信号光の波長)に対するモニタ光の光強度を求めるために必要な第2のタイミング信号dを波長制御信号aに基づいて発生してモニタ光強度検出手段5bに出力する。
【0027】
次に、モード指定信号がOTDRモードを指定する場合と信号光モニタモードを指定する場合、及び比較判定手段5cから判定信号eが制御手段6に入力される場合に分けて、制御手段6の制御内容とそれに伴って機能する各部の動作を説明する。
(1)モード指定信号がOTDRモードを指定する場合(又は比較判定手段5cから判定信号eが制御手段6に入力される場合):
制御手段6は、所定の波長に固定された連続光が出力されるように波長可変光源1を制御し、所定のパルス幅及び所定の繰り返し周期を有するパルス信号bを光スイッチ3に出力し、第1のタイミング信号cをファイバ特性検出手段5aに出力する。これによって、所定のパルス幅及び所定の繰り返し周期を有する所定の波長の光パルスが、光スイッチ3から被測定光ファイバ10に出力される。被測定光ファイバ10からの戻り光は光ヘテロダイン検波回路4に入力された後にローカル光によってコヒーレンント検波され、その検波信号が第1の電気信号として出力される。第1の電気信号はファイバ特性検出手段5aに入力された後に第1のタイミング信号cに基づいてデータ処理されて、被測定光ファイバ10の特性が求められる。
【0028】
(2)モード指定信号が信号光モニタモードを指定する場合:
制御手段6は、所定の波長範囲にわたって掃引された連続光が出力されるように波長可変光源1を制御し、光スイッチ3へのパルス信号bの出力を断にし、第2のタイミング信号dをモニタ光強度検出手段5bに出力する。これによって、上記光パルスが光スイッチ3から被測定光ファイバ10に出力されなくなる。被測定光ファイバ10を伝送しているWDM信号光の一部はモニタ光として光ヘテロダイン検波回路4に入力された後に、所定の波長範囲にわたって掃引されたローカル光(連続光)によってコヒーレンント検波され、その検波信号が第2の電気信号として出力される。第2の電気信号はモニタ光強度検出手段5bに入力された後に第2のタイミング信号dに基づいてデータ処理されて、ローカル光の波長(すなわちWDM信号光の波長)に対するモニタ光の光強度(すなわちWDM信号光の光強度)が求められる。
【0029】
ここで、モニタ光(WDM信号光)の光強度を測定する場合の具体例を示す。例えば、図3(a)に示すように、ローカル光(線幅約100kHz)の波長をWDM信号光の線幅(約1MHz)より細かい約200kHz間隔で掃引してコヒーレンント検波すると、WDM信号光の各チャンネルのスペクトラムを測定することができる。なお、波長可変光源1として外部共振型の波長可変レーザを用いる場合、その出力光の線幅は約100kHzであり、またWDM信号光の送信器は一般にDFBレーザが用いられており、その出力光の線幅は約1MHzである。また、図3(b)に示すように、ローカル光の波長をWDM信号光の波長グリッド間隔(100GHz)で掃引してコヒーレンント検波すると、WDM信号光の各チャンネルの異常の有無を速やかに検出することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、光スイッチ3としてLN変調器のような電気光学光スイッチを用いる場合について説明したが、音響光学変調器(AOM)を用いるようにしてもよい。その場合、AOMに入力される連続光の周波数をf0とし、パルス信号bでオン/オフされるAOMの駆動信号(超音波)の周波数をΔfとすると、AOMから出力される光パルスの周波数はf0+Δfとなる。そして、その光パルスの戻り光が光ヘテロダイン検波回路4に入力されてローカル光(周波数f0)によってコヒーレンント検波されると、受光器4bからは周波数Δfの検波信号(ビート信号)が出力される。したがって、光ヘテロダイン検波回路4に周波数Δfのローカル発振器とミキサとを備えて、受光器4bから出力される周波数Δfの検波信号を更にビートダウンして処理手段5に出力するようにする。
【0031】
また、上記実施形態では、測定対象としての被測定光ファイバ10が上り回線用と下り回線用の2本の光ファイバで構成される場合であったが、1本の光ファイバで構成されるような場合には、光スイッチ3と被測定光ファイバ10との間及び被測定光ファイバ10と光ヘテロダイン検波回路4との間に、共通の光カプラ(又は光サーキュレータ)を備え、この光カプラ(又は光サーキュレータ)を介して、光スイッチ3からの光パルスを被測定光ファイバ10に出力するとともに被測定光ファイバ10からの戻り光(又はモニタ光)を光ヘテロダイン検波回路4に入力するようにすればよい。
【0032】
また、信号光モニタモードで監視していて信号光に異常が発生したときにOTDRモードに切り換えるだけでなく、OTDRモードで監視していて信号光モニタモードに切り換えて、各信号光の異常を捜してもよい。その場合、異常を判断するための基準は異常のないときの光ファイバの特性である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す図
【図2】比較判定手段を説明するための図
【図3】モニタ光の光強度を測定する場合の具体例を示す図
【符号の説明】
【0034】
1・・・波長可変光源、2,4a・・・光カプラ、3・・・光スイッチ(光SW)、4・・・光ヘテロダイン検波回路、4b・・・受光器(PD)、5・・・処理手段、5a・・・ファイバ特性検出手段、5b・・・モニタ光強度検出手段、5c・・・比較判定手段、5d・・・基準光強度記憶手段、6・・・制御手段、6a・・・発振波長制御手段、6b・・・パルス信号発生手段、6c・・・タイミング信号発生手段。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長の連続光を発生して出力する波長可変光源(1)と、
該波長可変光源からの連続光を測定光とローカル光とに分岐して出力する光分岐器(2)と、
所定のパルス幅及び所定の繰り返し周期を有するパルス信号が入力されている間のみ、前記光分岐器から入力される前記測定光を該パルス信号でパルス変調し、得られた光パルスを被測定光ファイバに出力する光スイッチ(3)と、
該光スイッチが前記光パルスを前記被測定光ファイバに出力している間は、該被測定光ファイバの各位置から戻ってくる戻り光を前記光分岐器から入力される前記ローカル光によってコヒーレント検波し、得られた検波信号を第1の電気信号として出力し、かつ、該光スイッチが前記光パルスを前記被測定光ファイバに出力していない間は、前記被測定光ファイバ内を伝送している信号光の一部をモニタ光として受け、該モニタ光を前記光分岐器から入力される前記ローカル光によってコヒーレント検波し、得られた検波信号を第2の電気信号として出力する光ヘテロダイン検波回路(4)と、
該光ヘテロダイン検波回路から前記第1の電気信号を受けたときは、第1のタイミング信号に基づいて該第1の電気信号のデータ処理を行って前記被測定光ファイバの特性を求め、かつ、前記光ヘテロダイン検波回路から前記第2の電気信号を受けたときは、第2のタイミング信号に基づいて該第2の電気信号のデータ処理を行って前記ローカル光の波長に対する前記モニタ光の光強度を求める処理手段(5)と、
OTDRモード及び信号光モニタモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を受け、該モード指定信号がOTDRモードを指定している場合には、前記波長可変光源から所定の波長に固定された連続光が出力されるように当該波長可変光源を制御するとともに前記パルス信号を発生して前記光スイッチに出力し、更に前記光スイッチに出力される前記パルス信号に対応づけて前記第1のタイミング信号を発生して前記処理手段に出力し、かつ、前記モード指定信号が信号光モニタモードを指定している場合には、前記波長可変光源から所定の波長範囲にわたって掃引された連続光が出力されるように当該波長可変光源を制御するとともに前記パルス信号の前記光スイッチへの出力を断にし、更に前記波長可変光源の掃引に対応づけて前記第2のタイミング信号を発生して前記処理手段に出力する制御手段(6)とを備えたことを特徴とする光パルス試験器。
【請求項2】
前記処理手段は、前記被測定光ファイバ内を伝送している前記信号光に異常がなかったときの前記モニタ光の光強度に基づく所定の値を基準光強度として前記ローカル光の波長に対応づけて記憶して、該基準光強度とその後に求められた前記モニタ光の光強度とを比較し、その後に求められた該モニタ光の各光強度のうちの少なくとも1つが該基準光強度以下であると判定した場合には判定信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の光パルス試験器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記処理手段から前記判定信号を受けた場合には、前記信号光モニタモードから前記OTDRモードに切り換え、OTDR法に基づいて少なくとも異常のあった前記信号光の波長における前記被測定光ファイバの特性を求めるようにすることを特徴とする請求項2に記載の光パルス試験器。
【請求項4】
前記処理手段は、
前記第1のタイミング信号に基づいて、前記光ヘテロダイン検波回路からの前記第1の電気信号のデータ処理を行って前記被測定光ファイバの特性を求めるファイバ特性検出手段(5a)と、
前記第2のタイミング信号に基づいて、前記光ヘテロダイン検波回路からの前記第2の電気信号のデータ処理を行って前記ローカル光の波長に対する前記モニタ光の光強度を求めるモニタ光強度検出手段(5b)とを含み、
前記制御手段は、
前記モード指定信号を受け、該モード指定信号がOTDRモードを指定している場合には、前記波長可変光源から所定の波長に固定された連続光が出力されるように、かつ、前記モード指定信号が信号光モニタモードを指定している場合には、前記波長可変光源から所定の波長範囲にわたって掃引された連続光が出力されるように該波長可変光源を制御する発振波長制御手段(6a)と、
前記モード指定信号を受け、該モード指定信号がOTDRモードを指定している場合には、前記パルス信号を発生して前記光スイッチに出力し、かつ、前記モード指定信号が信号光モニタモードを指定している場合には、前記パルス信号の前記光スイッチへの出力を断にするパルス信号発生手段(6b)と、
前記波長制御信号、前記パルス信号及び前記モード指定信号を受け、該モード指定信号がOTDRモードを指定している場合には、前記ファイバ特性検出手段が前記被測定光ファイバの特性を求めるために必要な前記第1のタイミング信号を前記パルス信号に基づいて発生して該ファイバ特性検出手段に出力し、かつ、前記モード指定信号が信号光モニタモードを指定している場合には、前記モニタ光強度検出手段が前記ローカル光の波長に対する前記モニタ光の光強度を求めるために必要な前記第2のタイミング信号を前記波長制御信号に基づいて発生して該モニタ光強度検出手段に出力するタイミング信号発生手段(6c)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の光パルス試験器。
【請求項5】
前記処理手段は、更に、
前記モニタ光強度検出手段から出力されるモニタ光の光強度情報及び前記第2のタイミング信号を受け、該モニタ光の光強度情報が前記被測定光ファイバ内を伝送している前記信号光に異常がなかったときの情報である場合には、当該モニタ光の光強度情報である光強度に基づく所定の値を、前記第2のタイミング信号に基づいて、前記ローカル光の波長に対応づけて基準光強度として記憶する基準光強度記憶手段(5d)と、
該基準光強度記憶手段からの前記基準光強度と前記モニタ光強度検出手段からのモニタ光の光強度情報とを比較し、該モニタ光の各光強度のうちの少なくとも1つが前記基準光強度以下であると判定した場合には判定信号を出力する比較判定手段(5c)とを含むことを特徴とする請求項4に記載の光パルス試験器。
【請求項6】
前記発振波長制御手段は、前記比較判定手段から前記判定信号を受けたときは、前記波長制御信号により、前記波長可変光源から所定の波長に固定された連続光が出力されるように該波長可変光源を制御し、
前記パルス信号発生手段は、前記比較判定手段から前記判定信号を受けたときは、前記パルス信号を発生して前記光スイッチに出力し、
前記タイミング信号発生手段は、前記比較判定手段から前記判定信号を受けたときは、前記ファイバ特性検出手段が前記被測定光ファイバの特性を求めるために必要な前記第1のタイミング信号を発生して該ファイバ特性検出手段に出力することを特徴とする請求項5に記載の光パルス試験器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−93405(P2007−93405A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283706(P2005−283706)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】