説明

光ピックアップ装置

【課題】 装置構成を単純化し、回折素子および光源の位置調整を容易にし、かつサーボ信号を安定して得ることのできる光ピックアップ装置を提供することである。
【解決手段】 光ピックアップ装置10においてフォーカス回折領域21は、光源12が出射可能な光の種類と同数の種類のフォーカス領域22を備える。フォーカス領域22の種類は、光の各種類に対応し、各種類のフォーカス領域22は、対応する種類の光をフォーカス受光領域17の同一位置に向けて回折させる。また各種類のフォーカス領域22は、複数のフォーカス細分領域によって構成される。各種類のフォーカス領域22の複数のフォーカス細分領域は、フォーカス回折領域21において周期的に分布し、かつ少なくともその一部が異なる種類の光のフォーカス細分領域と隣接して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学記録媒体に記録される情報を読取るために、光学記録媒体に光を照射し光学記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、第1の従来技術に係る光ピックアップ装置110の構成を表す図である。図10は、第1の従来技術における回折素子としての第1のホログラム素子111と、回折素子としての第2のホログラム素子112と、受光素子113との平面図である。図11は、第1の従来技術における第1および第2のホログラム素子111,112と、これによって回折した光が到達する各受光領域との関係を表す図である。図11(a)は、第1の波長の光を用いる場合の現象を図示しており、図11(b)は、第2の波長の光を用いる場合の現象を図示している。
【0003】
第1の従来技術に係る光ピックアップ装置110は、第1の波長の光の発光点114、および第2の波長の光の発光点115を有する光源116と、第1のホログラム素子111と、第2のホログラム素子112と、受光素子113とを含む。第1のホログラム素子111は、第1の発光点114からの出射光である光ビームと第2の波長の光の発光点115からの出射光である光ビームとを回折させる。第2のホログラム素子112は、第2の波長の光の発光点115からの光ビーム(二点鎖線で示す)を回折させて受光素子113に導き、第1の波長の光の発光点114からの光ビーム(実線で示す)を透過させる。第1の波長は、第2の波長よりも短く、回折領域の第1の波長の光に対する回折効率は、第2の波長の光に対する回折効率よりも低い(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
図12は、第2の従来技術に係る光ピックアップ装置120の構成を表す図である。図13は、第2の従来技術に係る光ピックアップ装置120の回折素子121および受光素子122を表す平面図である。図14は、第2の従来技術における回折素子121と受光素子122とによる受光状態を示す平面図である。
【0005】
第1の波長の光の発光点123からの発振波長は、第2の波長の光の発光点124からの発振波長よりも短波長であり、回折素子121による第1の波長の光の発光点123からの光ビーム(実線で示す)の回折角度は、第2の波長の光の発光点124からの光ビーム(二点鎖線で示す)の回折角度よりも小さくなる。これらの回折角度の差異に応じて、受光素子122には後述の受光領域125が3列に並んで形成される。
【0006】
第1の波長の光の発光点123からの光ビームは、3列の受光領域125のうち、小さい回折角度に対応する列の受光領域125aと、中央の列の受光領域125bとに入射する。このとき、フォーカスエラー信号は、中央の列の受光領域125bのうち予め定める一部の受光領域からの出力を用いて、ナイフエッジ法によって検出される。
【0007】
第2の波長の光の発光点124からの光ビームは、3列の受光領域125のうち、大きい回折角度に対応する列の受光領域125cと、中央の列の受光領域125bとに入射する。このとき、フォーカスエラー信号は、第1の波長の光の発光点123を用いるときと同様に、中央の列の受光領域125bのうち予め定める一部の受光領域からの出力を用いて、ナイフエッジ法によって検出される。(たとえば特許文献2参照)。
【0008】
第1の波長の光の発光点123による記録媒体からの反射光と第2の波長の光の発光点124による記録媒体からの反射光とでは、回折素子121に入射する光ビームの位置が完全に一致することはない。また第1および第2の波長の光の発光点123,124の回折素子121に対する姿勢を、いずれの光ピックアップ装置においても同じ位置に調整するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−92933号公報
【特許文献2】特開2007−287278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
第1の従来技術では、複数の回折素子が必要となるので、装置構成が複雑化するという問題点がある。また両方の回折素子の位置決めが必要となるので、部品の位置調整が煩雑であり、かつ調整時間も要するという問題点がある。さらに、部品点数が多くコストがかかり、小型化が困難という問題点がある。
【0011】
第2の従来技術では、第1および第2波長の光の発光点123,124の位置の差異によって、または第1および第2波長の光の発光点123,124の回折素子121に対する姿勢の差異によって、回折素子121に入射する光ビームの位置が回折素子121に対して変化すると、受光素子125の受光面に入射する光の光強度が変化するので、安定したサーボ信号を得ることができないという問題点がある。
【0012】
本発明の目的は、装置構成を単純化し、回折素子および光源の位置調整を容易にし、かつサーボ信号を安定して得ることのできる光ピックアップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、光学記録媒体に照射されるべき光であって、波長の異なる複数種類の光を出射可能な光源と、
複数の受光領域が形成される受光素子であって、複数の受光領域の一部は、フォーカスサーボに用いられるフォーカス受光領域として用いられる受光素子と、
前記光源から出射して、前記光学記録媒体で反射した反射光の少なくとも一部を前記フォーカス受光領域に向けて回折させるフォーカス回折領域を有し、
前記フォーカス回折領域には、前記光源が出射可能な光の種類と同数の種類のフォーカス領域を備えるとともに、
前記フォーカス領域の各種類は、前記光の各種類に対応し、それぞれ対応する種類の光を前記フォーカス受光領域に向けて回折させ、
前記各種類のフォーカス領域は、周期的に分散して配置される複数のフォーカス細分領域を含み、各フォーカス細分領域は、少なくとも一部が異なる種類の光のフォーカス細分領域と隣接して配置される回折素子とを含むことを特徴とする光ピックアップ装置である。
【0014】
また本発明は、前記フォーカス回折領域の外縁の予め定める一部は、直線となるナイフエッジ部によって規定され、前記ナイフエッジ部は、光学記録媒体からの反射光がいずれの種類の光であるときにも前記反射光が回折素子において入射する入射領域に対して交差し、
前記フォーカス回折領域は、平行に並ぶ複数の平行分割線によって複数のフォーカス細分領域に分割され、
前記複数の平行分割線は、前記ナイフエッジ部に対して垂直もしくは傾斜することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記平行分割線は、前記ナイフエッジ部に対して、30度以上150度以下の角度を成すことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、各フォーカス細分領域には、複数の回折溝が平行かつ周期的に並んで形成され、
各フォーカス細分領域を、各フォーカス細分領域の回折溝に垂直に交差する仮想平面には、前記回折溝が5本以上交差することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記複数の受光領域は、前記光学記録媒体のトラックに対するトラッキングサーボに用いられるトラッキング受光領域を有し、
前記回折素子は、
前記反射光の少なくとも一部を前記トラッキング受光領域に向けて回折させるトラッキング回折領域を有し、
前記トラッキング回折領域は、前記光源が出射可能な光の種類と同数の種類のトラッキング領域を有し、
前記トラッキング領域の各種類は、前記光の各種類に対応し、
前記各トラッキング領域は、対応する種類の光を前記トラッキング受光領域の同一位置もしくはその近傍に向けて回折させ、前記各種類のトラッキング領域は、複数のトラッキング細分領域によって構成され、
各種類のトラッキング領域の複数のトラッキング細分領域は、前記トラックの接線方向に対応する前記トラッキング回折領域における方向において、周期的に分散し、かつ少なくともその一部が異なる種類の光のトラッキング細分領域と隣接して配置することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記トラッキング受光領域は、トラッキングサーボに用いられる第1トラッキング受光領域および第2トラッキング受光領域を有し、
前記各トラッキング細分領域は、前記反射光の一部を前記第1トラッキング受光領域に向けて回折させる第1種回折領域と、前記反射光の一部を前記第2トラッキング受光領域に向けて回折させる第2種回折領域とを有し、
前記各種類のトラッキング領域に含まれる複数のトラッキング細分領域を第1種回折領域および第2種回折領域に分割する複数の分割線は、前記トラックの接線方向に対応する前記トラッキング回折領域における方向に延びる直線上に配置され、
前記各種類のトラッキング領域における前記各直線の位置は、前記トラックの接線方向に垂直なラジアル方向に関して、各トラッキング領域が対応する種類の光を出射する光源の位置に応じて決定されることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記トラッキング受光領域は、前記複数種類のうち1種類のトラッキング領域において回折した光を、前記反射光の光の種類に応じて択一的に受光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光ピックアップ装置において光源は、波長の異なる複数種類の光を出射可能である。回折素子は、フォーカス回折領域を有する。フォーカス回折領域は、光源から出射され光学記録媒体で反射した反射光の少なくとも一部を受光素子のフォーカス受光領域に向けて回折させる。フォーカス回折領域は、光源が出射可能な光の種類と同数の種類のフォーカス領域を備える。フォーカス領域の種類は、光の各種類に対応し、各種類のフォーカス領域は、それぞれ対応する種類の光をフォーカス受光領域に向けて回折させる。また各種類のフォーカス領域には、複数のフォーカス細分領域が均等に分散して配置される。
【0021】
これによって、フォーカス受光領域を、波長の異なる複数種類の光の使用において共用することができる。また各種類のフォーカス領域の複数のフォーカス細分領域は、フォーカス回折領域において均等に分散して配置されるので、複数種類のフォーカス領域のいずれかのフォーカス領域に、光ビームのうち光強度の強い部分または光強度の弱い部分が偏って入射することを防止することができる。
【0022】
また回折素子に入射する光ビームの入射位置が、回折素子上において位置ずれする場合があっても、この位置ずれによって各種類のフォーカス領域に入射する光の強度が変化することを抑制することができる。したがって、回折素子に入射する光ビームの入射位置に位置ずれが生じる場合であっても、フォーカスサーボを安定して行うことができる。これによって、回折素子を複数設ける必要がないので、装置構成を単純化することができる。また回折素子に対する光源の位置の差異によって、各種類のフォーカス領域に入射する光の光強度が大きな影響を受けないので、各構成部品の位置調整を容易にすることができる。
【0023】
また本発明によれば、フォーカス回折領域の外縁の予め定める一部は、直線状に形成されるナイフエッジ部によって規定される。ナイフエッジ部は、光学記録媒体からの反射光がいずれの種類の光であるときにも、反射光が回折素子において入射する入射領域に対して交差する。フォーカス回折領域は、平行に並ぶ複数の平行分割線によって複数のフォーカス細分領域に分割される。複数の平行分割線は、ナイフエッジ部に対して傾斜する。
【0024】
これによって、ナイフエッジ部近傍におけるフォーカス細分領域の形状を、先細状に形成することができる。したがって、回折素子に入射する光ビームの径が変化した場合に、光ビームが入射する範囲に入るフォーカス細分領域の部分、および光ビームが入射する範囲から外れるフォーカス細分領域の部分が、複数種類のフォーカス領域のいずれか一部の種類に偏ることを抑制することができる。これによって、回折素子に入射する光ビームの径が変化した場合であっても、各種類のフォーカス領域に入射する光の光強度が急激な変化となることを防止し、滑らかな変化を実現することができる。したがって、フォーカスサーボを安定して行うことができる。
【0025】
また本発明によれば、平行分割線は、ナイフエッジ部に対して30度以上150度以下の角度を成す。これによって、回折素子に入射する光ビームの径が変化した場合であっても、光ビームが入射する範囲に入るフォーカス細分領域の部分の面積、および光ビームが入射する範囲から外れるフォーカス細分領域の部分の面積を、複数種類のフォーカス領域に効果的に分散することができる。したがって、フォーカスサーボを安定して行うことができる。
【0026】
また本発明によれば、各フォーカス細分領域には、複数の回折溝が平行かつ周期的に並んで形成される。各フォーカス細分領域を、各フォーカス細分領域の回折溝に垂直に交差する仮想平面には、回折溝が5本以上交差する。これによって、各フォーカス細分領域における回折溝が、回折溝に垂直な方向において並ぶ数を、効率よく回折を行うために最低限必要な数以上とすることができる。したがって、各フォーカス細分領域における回折を、効率よく行うことができる。
【0027】
また本発明によれば、複数の受光領域の一部は、トラッキング受光領域を有し、トラッキング受光領域は、光学記録媒体のトラックに対するトラッキングサーボに用いられる。回折素子は、トラッキング回折領域を有し、トラッキング回折領域は、反射光の少なくとも一部をトラッキング受光領域に向けて回折させる。トラッキング回折領域は、光源が出射可能な光の種類と同数の種類のトラッキング領域を有する。トラッキング領域の各種類は、光の各種類に対応する。各トラッキング領域は、対応する種類の光をトラッキング受光領域に向けて回折させ、複数のトラッキング細分領域によって構成される。各種類のトラッキング領域の複数のトラッキング細分領域は、前記トラックの接線方向に対応するトラッキング回折領域における方向において、均等に分布する。
【0028】
これによって、トラッキング受光領域を、波長の異なる複数種類の光の使用において共用することができる。またトラックの接線方向に対応する回折素子上における方向に、回折素子に入射する光ビームの入射位置が変位する場合であっても、複数種類のトラッキング領域に光ビームを入射させることができる。したがって、複数種類のいずれの光を用いる場合であっても、トラッキングサーボを行うことができる。またトラッキング受光領域を、複数種類のトラッキング領域において回折した複数種類の光が入射する位置に定めることによって、トラッキング受光領域を小さくすることが可能となる。したがって、受光素子を小形化することができる。またトラッキング受光領域を小さくすることによって、トラッキングサーボにおける応答速度を速くすることができる。
【0029】
また本発明によれば、トラッキング受光領域は、第1トラッキング受光領域および第2トラッキング受光領域を有する。第1および第2トラッキング受光領域は、トラッキングサーボに用いられる。各トラッキング細分領域は、第1種回折領域と第2種回折領域とを有する。第1種回折領域は、反射光の一部を第1トラッキング受光領域に向けて回折させる。第2種回折領域は、反射光の一部を第2トラッキング受光領域に向けて回折させる。
【0030】
各種類のトラッキング領域に含まれる複数のトラッキング細分領域を第1種回折領域および第2種回折領域に分割する複数の区分線は、トラックの接線方向に対応するトラッキング回折領域における方向に延びる直線上に配置される。各種類のトラッキング領域における各直線の位置は、ラジアル方向に関して、各トラッキング領域が対応する種類の光を出射する光源の位置に応じて決定される。ラジアル方向は、トラックの接線方向と回折素子の厚み方向とに垂直な方向である。
【0031】
これによって、複数の光源の位置に差異があっても、第1および第2トラッキング受光領域に入射する光の光強度が、第1および第2トラッキング受光領域のいずれか一方に偏ることを防止することができる。したがって、トラッキングサーボを高い精度で行うことができる。
【0032】
また本発明によれば、トラッキング受光領域は、複数種類のうち1種類のトラッキング領域において回折した光を、反射光の光の種類に応じて択一的に受光する。
【0033】
これによって、トラッキング受光領域を小形化することができる。したがって、トラッキングサーボにおける応答速度を速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光ピックアップ装置10の構成を表す図である。
【図2】本発明の第1実施形態における回折素子16および受光素子6を表す平面図である。
【図2A】平行分割線27をナイフエッジ部26に対して垂直にした回折素子16および受光素子6を、光軸方向から見た配置関係を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における回折素子16と、これによって回折した光が到達する各受光領域との関係を表す図である。
【図4】本発明の第1実施形態における回折素子16の平面図と、出力されるフォーカスエラー信号R1とを表す図である。
【図5】比較例における回折素子16の平面図と、出力されるフォーカスエラー信号R2とを表す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る光ピックアップ装置10の構成を表す図である。
【図7】本発明の第2実施形態における回折素子16および受光素子6を表す平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態における回折素子16と、これによって回折した光が到達する各受光領域との関係を表す図である。
【図9】第1の従来技術に係る光ピックアップ装置110の構成を表す図である。
【図10】第1の従来技術における第1のホログラム素子111と、第2のホログラム素子112と、受光素子113との平面図である。
【図11】第1の従来技術における第1および第2のホログラム素子111,112と、これによって回折した光が到達する各受光領域との関係を表す図である。
【図12】第2の従来技術に係る光ピックアップ装置120の構成を表す図である。
【図13】第2の従来技術に係る光ピックアップ装置120の回折素子121および受光素子122を表す平面図である。
【図14】第2の従来技術における回折素子121と、受光素子122との平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略す場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。またそれぞれの実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ピックアップ装置10の構成を表す図である。図2および図2Aは、本発明の第1実施形態における回折素子16および受光素子6を、光軸方向から見た配置関係を表す平面図である。両図において、回折領域19は複数の分割線によってフォーカス回折領域21とトラッキング回折領域36とに分割されており、複数の分割線のうちの1つであって、回折領域19の中心点P0を通り、ラジアル方向Xに延びて配置されている分割線を以降「ナイフエッジ部」(26)として説明する。図2Aは、平行分割線27をナイフエッジ部26に対して垂直にした回折素子16および受光素子6を、光軸方向から見た配置関係を示す平面図である。図3は、本発明の第1実施形態における回折素子16と、これによって回折した光が到達する各受光領域との関係を表す図である。第1実施形態において光ピックアップ装置10は、光学記録媒体11に記録される情報を読取るために、光学記録媒体11に光を照射し、光学記録媒体からの反射光18を受光する装置である。
【0037】
第1実施形態において、光ピックアップ装置10は、光源12と、受光素子6と、回折素子16とを含んで構成される。光源12は、波長の異なる複数種類の光を出射可能であり、光学記録媒体11に照射されるべき光を出射する。受光素子6には、複数の受光領域が形成される。複数の受光領域の一部は、フォーカス受光領域17として用いられる。フォーカス受光領域17は、フォーカスサーボに用いられる。
【0038】
回折素子16には、光学記録媒体11からの反射光18が入射する。回折素子16は、複数に分割された回折領域19を有し、その一部は、反射光18を受光素子6に向けて回折させるフォーカス回折領域21として用いられる。フォーカス回折領域21は、反射光18の少なくとも一部をフォーカス受光領域17に向けて回折させる。フォーカス回折領域21は、光源12が出射可能な光の種類と同数の種類のフォーカス領域22を備える。フォーカス領域22の種類は、光の各種類に対応し、各種類のフォーカス領域22は、対応する種類の光をフォーカス受光領域17に向けて回折させる。また各種類のフォーカス領域22は、複数のフォーカス細分領域によって構成される。各種類のフォーカス領域22の複数に分割されたフォーカス細分領域は、フォーカス回折領域21において分散して配置される。
【0039】
フォーカス回折領域21の外縁の予め定める一部は、直線状に形成されるフォーカス規定分割線として設定されたナイフエッジ部26によって規定される。ナイフエッジ部26は、光学記録媒体からの反射光18がいずれの種類の光であるときにも、反射光18が回折素子16において入射する入射領域に対して交差する。フォーカス回折領域21は、平行に並ぶ複数の平行分割線27によって複数のフォーカス細分領域に分割される。複数の平行分割線27は、ナイフエッジ部26に対して所定の角度を有する。
【0040】
平行分割線27は、ナイフエッジ部26に対して30度以上150度以下の角度を成す。各フォーカス細分領域には、複数の回折溝が平行かつ周期的に並んで形成される。各フォーカス細分領域を、各フォーカス細分領域の回折溝に垂直に交差する仮想平面には、回折溝が5本以上交差する。
【0041】
情報の記録または再生が可能な光学記録媒体11としては、コンパクトディスク(compact disk, 略称「CD」)、デジタルバーサタイルディスク(digital versatile disk, 略称「DVD」)およびブルーレイディスク(blu-ray disk, 略称「BD」:登録商標)などを挙げることができる。第1実施形態では、これらのうちのいずれか2種類であればよい。CDでは、情報の記録および再生に、780nm近傍の赤外領域の波長の光を用いる。DVDでは、情報の記録および再生に、650nm近傍の波長の赤色の光を用いる。BDでは、情報の記録および再生に、405nm近傍の青紫色の波長の光を用いる。また光学記録媒体11は、複数の記録層を重ねたさらに大容量のものであってもよい。複数の光学記録媒体11の記録および再生の少なくとも一方を行うために、1つの光ピックアップ装置10内には、2種または3種の波長の光を出射する光源12が配置される。図1には、光学記録媒体11の1種11aを用いる場合と、この光学記録媒体11aとは用いる波長が異なる他の1種11bを用いる場合とを図示している。
【0042】
光学記録媒体11の情報の再生および記録は、その媒体のデータ記録面にレーザー光を照射し、その反射光を受光素子6上の受光領域で受光して行われる。
【0043】
光学記録媒体11に対するフォーカスサーボおよびトラッキングサーボを行うために、受光素子6上の受光領域で受光した光の光信号から電気信号に変換して、サーボ信号を検出する。フォーカスサーボおよびトラッキングサーボは、それらのサーボ信号の検出結果に基づいて行われる。フォーカスサーボには、ナイフエッジ法および非点収差法などが使用される。また、ラジアルサーボ制御には、DPD法(differential phase detection)、差動プッシュプル法(differential push-pull method, 略称「DPP」)などを、光学記録媒体11の種類に応じて使い分ける。
【0044】
第1実施形態において光ピックアップ装置10は、さらに光源12から出射された光を平行光にするためのコリメートレンズ28と、コリメートレンズ28によって平行光となった光ビームを光学記録媒体11に向けて集光する対物レンズ29とを含んで構成される。対物レンズ29は、図示しないアクチュエータに支持されている。光源12は半導体レーザー素子によって実現され、第1波長の光を出射する第1発光点32と、第2波長の光を出射する第2発光点33の2つの発光点を備える。第1発光点32からの第1波長の光と、第2発光点33からの第2波長の光とは、ほぼ同一の向きに出射される。互いに異なる2種類の波長のうち、短い方の波長を第1波長とし、長い方の波長を第2波長とする。
【0045】
この半導体レーザー素子は、1チップ内に異なる波長の発光点を持つモノリシック型であるが、それに限定されることはなく、1チップ単一波長のレーザー光を近接して配置したハイブリッド型であってもよい。
【0046】
図1において、光源12からの出射光34を光学記録媒体11に導く複数の光学部品の光軸は、1つの直線上に配置される。以下、第1発光点32からの出射光34の光軸方向を「光軸方向」(Z)とし、対物レンズ29とコリメートレンズ28の中心を通るように配置される。図3は、回折素子16および受光素子6を光軸方向Zに見て図示している。
【0047】
光源12からの出射光34が光学記録媒体11の記録面35上において集光される集光点は、記録面35に形成されるトラック上に位置する。このトラックの集光点における接線方向を、「タンジェンシャル方向」(Y)とする。またトラックの集光点における接線方向に対応する回折素子16および受光素子6における方向も、同様に「タンジェンシャル方向」(Y)として説明する。また光軸方向Zに垂直で、かつタンジェンシャル方向Yに垂直な方向を「ラジアル方向」(X)とする。
【0048】
受光素子6は、光源12からラジアル方向Xに離れた位置に配置される。ラジアル方向Xのうち、受光素子6に関して光源12に向かう向きを負の方向(以下、「−方向」と記す)とし、ラジアル方向Xのうち、−Xとは反対側の向きを正の方向(以下、「+方向」と記す)とする。
【0049】
受光素子6は、第1受光領域6a〜第6受光領域6fの6つの受光領域を備えている。これらのうち第1受光領域6aおよび第2受光領域6bは、タンジェンシャル方向Yに互いに隣接して配置され、第1および第2受光領域6a,6bに集光されて入射する光の光信号は、フォーカスサーボに用いられる。第1および第2受光領域6a,6bよりもラジアル方向Xの−方向には、第3受光領域6cが配置され、第1および第2受光領域6a,6bよりもラジアル方向Xの+方向には、第4受光領域6dが配置される。第3受光領域6cおよび第4受光領域6dのそれぞれは、タンジェンシャル方向Yにおける第1および第2受光領域6a,6bと同じ位置に配置される。
【0050】
第5受光領域6eおよび第6受光領域6fは、第1〜第4受光領域6a〜6dよりもタンジェンシャル方向Yの+方向とタンジェンシャル方向Yの−方向とに配置される。ラジアル方向Xにおける第5受光領域6eおよび第6受光領域6fの位置は、第1、第2および第4受光領域6a,6b,6dのラジアル方向Xと、同じ位置に配置される。
【0051】
第1受光領域6aおよび第2受光領域6bのラジアル方向Xの寸法は、互いに等しく設定され、第3および第4受光領域6c,6dのそれぞれのラジアル方向Xの寸法も、第1および第2受光領域6a,6bのラジアル方向Xの寸法におおよそ同等か、第3受光領域6cのラジアル方向Xが短くなるように、さらに第4受光領域6dのラジアル方向Xが長くなるように寸法に設定される。第5および第6受光領域6e,6fのそれぞれのラジアル方向Xの寸法は、第1または第2受光領域6a,6bのラジアル方向Xの寸法と、第4受光領域6dのラジアル方向Xの寸法とを足した寸法におよそ同等に設定される。
【0052】
第3〜第6受光領域6c〜6fのそれぞれのタンジェンシャル方向Yの寸法は、およそ同等に設定され、この寸法に比べて、第1受光領域6aおよび第2受光領域6bのタンジェンシャル方向Yの寸法は、およそ半分の寸法に設定される。第3および第4受光領域6c,6dのそれぞれのタンジェンシャル方向Y中央を通り、ラジアル方向Xに延びる仮想的な直線は、第1受光領域6aと第2受光領域6bとの中央を通る。
【0053】
第1,第2,第5および第6受光領域6a,6b,6e,6fのラジアル方向Xの−方向の端の位置は、タンジェンシャル方向Yに延びる1つの直線にほぼ一致し、第4,第5および第6受光領域6d,6e,6fのラジアル方向Xの+方向の端の位置は、タンジェンシャル方向Yに延びる他の1つの直線に一致する。第1、第2、第5および第6受光領域6a,6b,6e,6fの4つの受光領域は、第1波長および第2波長の両方の光を受光する。第3受光領域6cは第1波長の光を受光し、第4受光領域6dは、第2波長の光を受光する。
【0054】
回折素子16に形成される回折領域19は、光学記録媒体11からの反射光18をそれぞれ信号検出用の受光領域6a〜6fに向けて、+1次回折光を回折する。回折領域19を成す回折格子には、回折溝が形成されている。回折領域19を光軸方向Zに見ると、回折領域19の外形は、円状をしており、その中心点P0は、光ピックアップ装置10の光軸34を通る位置に配置される。
【0055】
回折領域19は、複数の分割線によって、フォーカス回折領域21とトラッキング回折領域36とに分割される。複数の分割線のうちの1つは、回折領域19の中心点P0を通り、ラジアル方向Xに延びて配置される。この分割線を「ナイフエッジ部」(26)と称する。回折領域19のうち、ナイフエッジ部26よりもタンジェンシャル方向Yの+方向の領域が、フォーカス回折領域21であり、タンジェンシャル方向Yの−方向の領域が、トラッキング回折領域36である。フォーカス回折領域21とトラッキング回折領域36の配置は、ナイフエッジ部26を対称軸として、逆にしても構わない。
【0056】
フォーカス回折領域21およびトラッキング回折領域36は、それぞれ半円形状に形成され、トラッキング回折領域36は、さらに第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとに分割される。トラッキング回折領域36を、第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとに分割する分割線は、中心点P0を通り、タンジェンシャル方向Yに延びて配置される。これによって第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fのそれぞれは、円周と、互いに直交する2つの半径線とによって囲繞される扇形の形状となる。
【0057】
フォーカス回折領域21は、さらに光の種類の数に応じて複数のフォーカス領域22に分割される。第1実施形態では、フォーカス回折領域21は、フォーカス回折領域21の半円内で、ナイフエッジ部26に対して角度αだけ傾斜し、かつ互いに平行な、幅Waと幅Wbで交互に繰り返し離れた複数の平行分割線27によって、複数の細長い形状細分領域に分割される幅Waの平行分割線27と、外縁を規定する円弧およびナイフエッジ部26の双方もしくはどちらか一方に囲まれた複数のフォーカス細分領域は、第1フォーカス領域Aを構成し、これらを除く残余の幅Wbからなる複数のフォーカス細分領域は、第2フォーカス領域Bを構成する。第1フォーカス領域Aを成すフォーカス細分領域と、第2フォーカス領域Bを成すフォーカス細分領域とは、平行分割線27に垂直な方向において、それぞれ1つずつ交互に隣接して配置される。
【0058】
これによって、第1フォーカス領域Aを成すフォーカス細分領域と、第2フォーカス領域Bを成すフォーカス細分領域とは、フォーカス回折領域21内において、周期的に分散して配置される。したがって、第1フォーカス領域Aと第2フォーカス領域B内の各フォーカス細分領域は、1本または2本の平行分割線27と、ナイフエッジ部26と、回折領域19の外縁を規定する円弧の一部とによって規定される。
【0059】
第1フォーカス領域Aは、入射した第1波長の光が、受光素子6の第1および第2受光領域6aと6bの境界線上に集光するような回折格子が形成されており、第2フォーカス領域Bは、入射した第2波長の光が、受光素子6の第1および第2受光領域6aと6bの境界線上に集光するような回折格子が形成されている。
【0060】
第1波長を「λ1」とし、第2波長を「λ2」とする。第1波長の光が第1フォーカス領域Aに入射する入射角を「θA1i」とし、この入射によって生じる回折における、+1次回折光の回折角度を「θA1d」とする。第2波長の光が第1フォーカス領域Aに入射する入射角を「θA2i」とし、この入射によって生じる回折における、+1次回折光の回折角度を「θA2d」とする。第1波長の光が第2フォーカス領域Bに入射する入射角を「θB1i」とし、この入射によって生じる回折における、+1次回折光の回折角度を「θB1d」とする。第2波長の光が第2フォーカス領域Bに入射する入射角を「θB2i」とし、この入射によって生じる回折における、+1次回折光の回折角度を「θB2d」とする。
【0061】
第1フォーカス領域Aの回折溝のピッチを「dA」とし、第2フォーカス領域Bの回折溝のピッチを「dB」とすると、次の式(1)〜(4)が成り立つ。
領域A+波長λ1 : sinθA1i−sinθA1d=λ1/dA…(1)
領域B+波長λ1 : sinθB1i−sinθB1d=λ1/dB…(2)
領域A+波長λ2 : sinθA2i−sinθA2d=λ2/dA…(3)
領域B+波長λ2 : sinθB2i−sinθB2d=λ2/dB…(4)
【0062】
図3(a)に示すように、回折領域19の第1フォーカス領域Aに第1波長の光が入射したときには、第1フォーカス領域Aにおいて回折した光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離「PX1」分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光される。受光素子6の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX1ラジアル方向Xの+方向に離隔した集光スポット9aの集光位置を通りタンジェンシャル方向Yに延びる直線を第1直線L1とする。
【0063】
受光素子6の受光面上における集光スポット9aは、第1受光領域6aと第2受光領域6bとの境界線上に点状もしくはそれに近い形状で集光される。受光素子6の受光面上において第1直線L1は、第1、第2、第5および第6受光領域6a,6b,6e,6fを通過する。回折領域19の第1トラッキング領域Eに入射した第1波長の回折光は、第1直線L1上の、集光スポット9aからタンジェンシャル方向Yの−方向に距離PYの第5受光領域6eに、集光スポット9eとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。第2トラッキング領域Fに入射した第1波長の回折光は、第1直線L1上の、集光スポット9aからタンジェンシャル方向Yの+方向に距離PYの第6受光領域6fに、集光スポット9fとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。
【0064】
回折領域19の第2フォーカス領域Bに第1波長の光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離「PX2」分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9cとして集光される。距離PX2は、距離PX1よりも短い。受光素子6の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX2離隔した集光スポット9cの集光位置を通りタンジェンシャル方向Yに延びる直線を第2直線L2とする。第1波長の光が第2フォーカス領域Bにおいて回折された受光領域6c上の集光スポット9cの集光スポット形状は、第1波長の光が第1フォーカス領域Aにおいて回折された受光領域6aと6bの境界上の集光スポット9aの集光スポット形状よりも、若干大きくなる。
【0065】
図3(b)に示すように、回折領域19の第2フォーカス領域Bに第2波長の光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離「PX1」分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光される。これは、上述の第1波長の光が第1フォーカス領域Aにおいて回折した光が、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離「PX1」分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光された位置と同一である。したがって、第1フォーカス領域Aにおける平行分割線27上の任意の点における第1波長の光の回折角度と、第2フォーカス領域Bにおける平行分割線27上の前記同一の任意の点における第2波長の光の回折角度とは、同じ値に設定される。
【0066】
回折領域19の第1フォーカス領域Aに第2波長の光が入射したときには、第1フォーカス領域Aにおいて回折した光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離「PX3」分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9dとして集光される。距離PX3は、距離PX1よりも長い。受光素子6の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX3離隔した集光スポット9dの集光位置を通り、タンジェンシャル方向Yに延びる直線を第3直線L3とする。受光素子6の受光面上において第3直線L3は、第4〜第6受光領域6d〜6fを通過する。
【0067】
回折領域19の第1トラッキング領域Eに入射した第2波長の光は、第3直線L3上の第5受光領域6eに集光される。第2トラッキング領域Fに入射した第2波長の光は、第1直線L1上の第6受光領域6fに集光される。
【0068】
上述のように、第1フォーカス領域Aにおける第1波長の光の回折角度と、第2フォーカス領域Bにおける第2波長の光の回折角度とは、同じ値に設定されることによって、式(1)と式(4)における回折角度θA1dとθB2dが等しくなるという関係式が成り立つ。光源12における第1発光点32と第2発光点33とは、互いに位置が異なるけれども、簡易的に説明を行うため、発光点を同一とし、それぞれの回折素子16に対する入射角も零度とすると、
λ1/dA=λ2/dB …(5)
が成り立つ。そのとき、領域Bに第1波長の光が入射した場合の回折角度θB1dは、式(2)と式(5)から、次の式(6)が成り立つ。
sinθB1d=(λ1/λ2)・sinθA1d …(6)
【0069】
したがって、第1波長と第2波長とでは、「λ1<λ2」の関係が成立つので、回折角度はθB1d<θA1dとなり、第1基準位置9eよりも、光軸に近い第2基準位置9cの位置に向けて回折され、図3(a)に示すように、第3受光領域6c内の集光点9cのような位置となる。
【0070】
同様に、領域Aに第2波長の光が入射した場合の回折角度θA2dを求めると、
sinθA2d=(λ2/λ1)・sinθB2d …(7)
が成り立ち、θA2d>θB2dとなり、第1基準位置9aよりも、光軸から離れた第1基準位置9dに向けて回折され、図3bに示すように第4受光領域6d内の集光点9dのような位置となる。
【0071】
回折領域19の第1フォーカス領域Aおよび第2フォーカス領域Bの回折格子の溝方向は、タンジェンシャル方向Yもしくはそれに近い曲線状に形成される。第1フォーカス領域Aと第2フォーカス領域Bの回折溝のピッチは、λ1<λ2および式(5)から、dA<dBの関係となるため、平行分割線27に垂直な方向においてピッチの広い領域とピッチの狭い領域とが交互に配置される。
【0072】
また、回折領域19の第2トラッキング領域Fに落射した第1波長の光は、第6受光領域6fに向けて回折され、中心点P0からラジアル方向Xの+方向に距離PX1、さらにタンジェンシャル方向Yの+方向に距離「PY」の集光スポット9fに集光されるため、第2トラッキング領域Fの溝方向は、図2の中心点P0と集光スポット9fを結ぶ直線に直交する方向もしくはそれに近い曲線状に形成される。
【0073】
さらに、第1トラッキング領域Eに落射した第1波長の光は、第5受光領域6eに向けて回折され、中心点P0からラジアル方向Xの+方向に距離PX1、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離PYの集光スポット9eに集光されるため、第1トラッキング領域Eの溝方向は、図2の中心点P0と集光点9eを結ぶ直線に直交する方向もしくはそれに近い曲線状に形成される。
【0074】
第1および第2トラッキング領域E,Fに、第2波長の光が落射したときの回折角度は、第1および第2フォーカス領域A,Bの場合と同様に、λ1<λ2の関係によって回折角度は、第1波長の光の回折角度より大きくなり、第1波長の光の集光点9f,9eより+X方向に離れて、中心点P0からラジアル方向Xの+方向に距離PX3、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離PYの近傍の集光スポット9f,9eとなる。
【0075】
回折領域19は、透明硝子基板であればフォトリソグラフィー法を使い製造することができ、透明樹脂基板であれば、2P法や金型成型を使い製造することができる。
【0076】
次に、光ピックアップ装置10の動作原理について説明する。各受光領域から得られた光信号は、図示しない後段のサーボ信号生成部により、フォーカスエラー信号およびラジアルエラー信号を生成し、それらのサーボ信号により、図示しないサーボ信号処理部により、フォーカスサーボ制御およびラジアルサーボ制御を行い、光学記録媒体11の所定トラックに対して対物レンズ29による集光点を追従するように、図示しないアクチュエータを搭載した対物レンズ29のフォーカス方向およびトラック方向の位置制御を行う。それらは図示しないサーボ信号生成部、サーボ信号処理部およびアクチュエータを制御する駆動制御部によって実現される。
【0077】
具体的には、フォーカスエラー信号を「FES」とすると、フォーカスエラー信号FESは、回折領域19の第1フォーカス領域Aもしくは第2フォーカス領域Bから回折された光信号を受けた第1受光領域6aおよび第2受光領域6bで検出された電気信号Sa,Sbの差FESが、
FES=Sa−Sb …(8)
として得られる。これは、回折領域19上のナイフエッジ部26を境界としたナイフエッジを利用して、ナイフエッジ法によりフォーカスサーボ制御を行う。特に、ナイフエッジにより集光する光が、点状もしくはそれに近い形状の集光スポットの1つだけであるので、受光素子6の姿勢が、光軸方向Zに垂直な平面内でXY方向にずれていたり回転した場合でも、回折素子16を同様に光軸方向Zに垂直な平面内でXY方向および回転させて調整することで補正することができる。したがって、常にフォーカスエラー信号FESを検出でき、安定してフォーカスサーボ制御を行うことができる。以下、第1〜第6受光領域6a〜6fから検出結果として出力される電子信号の値を、それぞれSa,Sb,Sc,Sd,Se,Sfとする。1つのフォーカス領域22が、1つの1種類の光に対応することは、1種類の光を、予め定める受光領域上の点、ここでは第1および第2受光領域6a,6bの境界線近傍に定められる点9aに入射させることを意味する。
【0078】
また、ラジアルエラー信号を「RES」とすると、ラジアルエラー信号RESを、プッシュプル法で、第5および第6受光領域6e,6fで検出された電気信号Se,Sfから演算することによって、
RES=Se−Sf …(9)
として得られる。また、これとは異なる方式であるDPD法では、
RES=Phase(Se−Sf) …(10)
の演算を行うことで得られ,安定したサーボ制御を行うことができ、光学記録媒体111の所望のトラックに光を集光させることができる。
【0079】
DPD法を用いる場合には、少なくとも第5および第6受光領域6e,6fでは、入射する光の位相を検出する。上記の式(10)において「Phase(Se−Sf)」は、第5および第6受光領域6e,6fから得られる光の位相差を表す。
【0080】
再生信号を「RF」と表すと、
RF=Sa+Sb+Sc+Sd+Se+Sf …(11)
の演算を行うことで、トラックの再生信号RFを安定して再生することができる。
【0081】
また、第1実施形態では、第1フォーカス領域A、第2フォーカス領域Bの平行分割線27の幅Wa、Wbは、回折格子の広い領域BのピッチdBの5ピッチ幅以上とし、かつWaとWbの幅の比率を1:1とした。ただしこれらのピッチの比率については、1:1に限定しない。たとえば、第1波長を用いるとき、および第2波長を用いるときに、出力されるサーボ信号の信号強度を調整するために、これらの比率を変化させて調整してもよい。
【0082】
具体的には、たとえば、第1波長の光に対する受光感度が、第2波長の光に対する感度よりも低いときには、第1フォーカス領域Aの面積割合を、第2フォーカス領域Bに対して大きく設定することによって、第1波長の光に対するRF信号やフォーカスエラー信号FESの信号振幅を大きくすることができる。これによって、S/N比(signal to noise ratio)を向上させることができ、信号品質を向上させることができる。このように、第1フォーカス領域Aと第2フォーカス領域Bとの面積割合を、波長の異なる各種類の光に対する各受光領域の受光感度を考慮して決定してもよい。
【0083】
また、第1の実施形態では、受光素子6上に落射する集光スポット9eおよび9fの位置を、直線L1,L3上とし、かつ第5および第6受光領域6eおよび6fのラジアル方向Xの範囲を、受光領域6aおよび6bのラジアル方向Xの寸法と、第4受光領域6dのラジアル方向Xの寸法を足した寸法とおよそ同等であると設定したが、それに限定されることはなく、集光スポット6eおよび6fの集光位置に応じて、第1波長および第2波長の光を受光できるように受光領域6eおよび6fをラジアルおよびタンジェンシャル方向の寸法に決めてやればよい。
【0084】
図4は、本発明の第1実施形態における回折素子16の平面図と、回折素子16への入射光の強度分布と、出力されるフォーカスエラー信号とを表す図である。図5は、比較例における回折素子16の平面図と、回折素子16への入射光の強度分布と、出力されるフォーカスエラー信号とを表す図である。図4(a)には、第1実施形態において、ナイフエッジ部26と平行分割線27とが成す角度αを45度に設定した回折素子16と、それに入射する光の中心点P0を通るX、Y方向での強度分布を縦軸に光強度とし、横軸に回折領域19のX方向、Y方向の寸法とを表している。ただし、説明を簡略化するために、光学記録媒体11からの光としては、トラックが形成されていないミラー面に集光した場合の反射光として表す。実際には、光学記録媒体11にはトラックやピットが形成されており、それに応じて反射された光の強度分布は変動するが、ここでは説明を省略する。図4(b)には、アクチュエータを一定の時間間隔で上下振動させたときの第1実施形態における回折素子16を用いて出力されるフォーカスエラー信号FESを、横軸を時間、縦軸をフォーカスエラー信号FESとしたときの特性R1を表している。図5(a)には、比較例において、ナイフエッジ部26と平行分割線27とが成す角度αを15度に設定した回折素子16と、それに入射する光の中心点P0を通るX、Y方向での強度分布を縦軸に光強度とし、横軸に回折領域19のX方向、Y方向の寸法とを表している。図5(b)には、アクチュエータを一定の時間間隔で上下振動させたときの比較例における回折素子16を用いて出力されるフォーカスエラー信号FESを、横軸を時間、縦軸をフォーカスエラー信号FESとしたときの特性R2を表している。上下方向は、対物レンズ29が光学記録媒体に近接および離隔する方向であって、振動によってフォーカスエラーの値が変化する方向である。
【0085】
ナイフエッジ部26と平行分割線27とが成す角度αについては、30度以上150度以下とすることが望ましい。第1実施形態では、45度に設定した。これによって、対物レンズ29の上下移動によって回折領域19上に入射する光ビーム30の直径が拡大縮小した場合であっても、光強度分布の変化を少なくすることができる。
【0086】
たとえば、光源12から出射される光強度分布の向きが、図4(a)で表した光強度分布のようにタンジェンシャル方向Yに長く、ラジアル方向Xに短い場合、光強度分布の短手方向、すなわちラジアル方向Xに対して、角度αを45度にしておくことによって、光ビームが拡大縮小した場合であっても、光強度分布の強い領域が、第1フォーカス領域Aおよび第2フォーカス領域Bから外れることがない。したがって、フォーカスエラー信号FESのアクチュエータの駆動量に対する依存性R1が、滑らかな形状となり、安定してフォーカスサーボ制御を行うことができる。
【0087】
これに対し、図5(a)のように、ナイフエッジ部26と平行分割線27とが成す角度αが30度未満、たとえば比較例のように15度に設定されると、対物レンズ29の上下移動によって回折領域19上に落射する光ビームが拡大縮小したときに、光強度分布の強い領域が、第1フォーカス領域Aおよび第2フォーカス領域Bから外れる場合が発生する。これによって、受光素子6上の受光領域に入射する光の光量の変動が大きくなる。したがって、フォーカスエラー信号FESは、階段型の形状となってしまうため、安定したフォーカス制御を行うことができない。ナイフエッジ部26と平行分割線27とが成す角度αは、45度に限定するものではないけれども、滑らかなフォーカスエラー信号のアクチュエータの駆動量に対する依存性R1の形状を滑らかな形状とするためには、角度αを30度以上150度以下とすることが望ましい。また、図2Aのように、角度αは90°、つまりナイフエッジ部26に対して垂直になっていてもよい。この場合、フォーカスエラー信号FESを取得する際、対物レンズ29が光軸方向Zに動くため、回折領域19に入射する光学記録媒体11からの反射光のスポット形状が小さくなる。光源12は半導体レーザー素子であるため、その遠視野像は楕円型の正規分布となる光強度分布をもっている。その楕円の長軸方向が、タンジェンシャルY方向と一致する場合、ナイフエッジ部26と同一方向となるため、回折領域19に入射する反射光スポットの大小方向移動量に対する、第1および第2受光領域6aおよび6bに入射する光信号強度も線形性を保つことができ、フォーカスエラー信号FESも安定して検出することができる。
【0088】
第1実施形態によれば、光ピックアップ装置10においてフォーカス回折領域21は、光源12が出射可能な光の種類と同数の種類のフォーカス領域22を備える。フォーカス領域22の種類は、光の各種類に対応し、各種類のフォーカス領域22は、対応する種類の光をフォーカス受光領域17に向けて回折させる。また各種類のフォーカス領域22は、複数のフォーカス細分領域によって構成される。各種類のフォーカス領域22の複数のフォーカス細分領域は、フォーカス回折領域21において周期的に分布する。
【0089】
これによって、フォーカス受光領域17を、波長の異なる複数種類の光の使用において共用することができる。また各種類のフォーカス領域22の複数のフォーカス細分領域は、フォーカス回折領域21において周期的に分布するので、複数種類のフォーカス領域22のいずれかのフォーカス領域22に、光ビームのうち光強度の強い部分または光強度の弱い部分が偏って入射することを防止することができる。
【0090】
また回折素子16に入射する光ビーム30の入射位置が、回折素子16上において位置ずれする場合があっても、この位置ずれによって各種類のフォーカス領域22に入射する光の強度が変化することを抑制することができる。したがって、回折素子16に入射する光ビーム30の入射位置に位置ずれが生じる場合であっても、フォーカスサーボを安定して行うことができる。これによって、回折素子16を複数設ける必要がないので、装置構成を単純化することができる。また回折素子16に対する光源12の位置の差異によって、各種類のフォーカス領域22に入射する光の光強度が大きな影響を受けないので、各構成部品の位置調整を容易にすることができる。
【0091】
また第1実施形態によれば、フォーカス回折領域21の外縁の予め定める一部は、直線状に形成されるナイフエッジ部26によって規定される。ナイフエッジ部26は、光学記録媒体からの反射光18がいずれの種類の光であるときにも、反射光18が回折素子16において入射する入射領域に対して交差する。フォーカス回折領域21は、平行に並ぶ複数の平行分割線27によって複数のフォーカス細分領域に分割される。複数の平行分割線27は、ナイフエッジ部26に対して傾斜する。
【0092】
これによって、ナイフエッジ部26近傍におけるフォーカス細分領域の形状を、先細状に形成することができる。したがって、回折素子16に入射する光ビーム30の径が変化した場合に、光ビームが入射する範囲に入るフォーカス細分領域の部分、および光ビームが入射する範囲から外れるフォーカス細分領域の部分が、複数種類のフォーカス領域22のいずれか一部の種類に偏ることを抑制することができる。これによって、回折素子16に入射する光ビーム30の径が変化した場合であっても、各種類のフォーカス領域22に入射する光の光強度が急激な変化となることを防止し、滑らかな変化を実現することができる。したがって、フォーカスサーボを安定して行うことができる。
【0093】
また第1実施形態によれば、平行分割線27は、ナイフエッジ部26に対して30度以上150度以下の角度を成す。これによって、回折素子16に入射する光ビーム30の径が変化した場合であっても、光ビームが入射する範囲に入るフォーカス細分領域の部分の面積、および光ビームが入射する範囲から外れるフォーカス細分領域の部分の面積を、複数種類のフォーカス領域22に効果的に分散することができる。したがって、フォーカスサーボを安定して行うことができる。
【0094】
また第1実施形態によれば、各フォーカス細分領域には、複数の回折溝が平行かつ周期的に並んで形成される。各フォーカス細分領域を、各フォーカス細分領域の回折溝に垂直に交差する仮想平面には、回折溝が5本以上交差する。これによって、各フォーカス細分領域における回折溝が、回折溝に垂直な方向において並ぶ数を、効率よく回折を行うために最低限必要な数以上とすることができる。したがって、各フォーカス細分領域における回折を、効率よく行うことができる。
【0095】
また第1実施形態では、第3および第4受光領域6c,6dを搭載し、第1および第2波長の光を受光するよう配置したが、それに限定されることなく、第1および第2受光領域6a,6bで受光量が十分満足できれば、第3および第4受光領域6c,6dは省略してもよい。その場合、タンジェンシャル方向に隣接した第5および第6受光領域6e,6fのラジアル方向の寸法も、第1および第2受光領域6a,6bと同等またはこれに近い寸法でもよい。
【0096】
また第1実施形態では、第1および第2受光領域6a,6bの境界線は、ラジアル方向に平行な直線で配置したが、それに限定されることなく、傾斜していてもよい。これは、波長公差を考慮した場合、受光する光スポット形状が、第1基準位置9aを境に変わるため、デフォーカスが発生する場合があり、それを補正するために傾斜させることもある。同様に、その他受光領域の形状、ラジアル方向およびタンジェンシャル方向の寸法についても、前述の実施形態は一例であり、それに限定されることはない。
【0097】
また第1実施形態では、第1および第2受光領域6a,6bの境界に受光する光スポットが、第1波長光および第2波長光ともに、集光スポット9aがおおよそ同じ位置に集光するように回折領域の溝ピッチを設定したが、それに限定されることなく、第6受光領域6aおよび6bからはみ出さない程度あれば、第1波長光による集光位置と、第2波長光による集光位置とを若干ずらしてもよい。
【0098】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る光ピックアップ装置10の構成を表す図である。図7は、本発明の第2実施形態における回折素子16および受光素子6を表す平面図である。図8は、本発明の第2実施形態における回折素子16と、これによって回折した光が到達する各受光領域との関係を表す図である。第2実施形態に係る光ピックアップ装置10は、第1実施形態に係る光ピックアップ装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第2実施形態の相違点を中心に説明する。
【0099】
複数の受光領域は、トラッキング受光領域を有し、トラッキング受光領域は、光学記録媒体11のトラックに対するトラッキングサーボに用いられる。回折素子16は、分割線39;40a,40bによって複数に分割されたトラッキング回折領域36を有し、トラッキング回折領域36は、光学記録媒体からの反射光18の少なくとも一部をトラッキング受光領域に向けて回折させる。トラッキング回折領域36は、光源12が出射可能な光の種類と同数の種類のトラッキング領域38を有する。トラッキング領域38の各種類は、光の各種類に対応する。各トラッキング領域38は、対応する種類の光をトラッキング受光領域に向けて回折させ、複数のトラッキング細分領域によって構成される。各種類のトラッキング領域38の複数に分割されたトラッキング細分領域は、前記トラックの接線方向に対応するトラッキング回折領域36における方向もしくはそれに近い方向において、周期的に分散して配置される。
【0100】
トラッキング受光領域は、第1トラッキング受光領域および第2トラッキング受光領域を有する。第1および第2トラッキング受光領域は、トラッキングサーボに用いられる。各トラッキング領域38を構成する複数の各トラッキング細分領域は、第1種回折領域41と第2種回折領域42とを有する。第1種回折領域41は、光学記録媒体からの反射光18の一部を第1トラッキング受光領域に向けて回折させる。第2種回折領域42は、反射光18の一部を第2トラッキング受光領域に向けて回折させる。各種類のトラッキング領域38に含まれる複数のトラッキング細分領域を第1種回折領域41および第2種回折領域42に分割する複数の分割線40aおよび40bは、トラックの接線方向に対応するトラッキング回折領域36における方向に延びる直線上に配置される。各種類のトラッキング領域38における各直線の位置は、ラジアル方向Xに関して、各トラッキング領域38が対応する種類の光を出射する光源12の位置に応じて決定される。ラジアル方向Xは、トラックの接線方向に垂直な方向である。
【0101】
トラッキング受光領域は、複数種類のうち1種類のトラッキング領域38において回折した光を、光学記録媒体からの反射光18の光の種類に応じて択一的に受光する。
【0102】
受光素子6は、第1〜第10受光領域6a〜6jの10箇所の受光領域を備えており、第3受光領域6cで第1波長の光を受光し、第4受光領域6dで第2波長の光を受光する。また第1、第2、第5〜第10受光領域6a,6b,6e,6f,6g,6h,6i,6jの8つの受光領域で、第1波長および第2波長の光を受光する。第1〜第4受光領域6a〜6dの配置は、第1の実施形態と同一であるため、説明を省略する。第5および第6受光領域6e、6fは、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PXラジアル方向Xの+方向に離隔して配置される。第5受光領域6eは、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離PY離隔した位置に配置され、第6受光領域6fは、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離PY離隔した位置に配置される。
【0103】
第5受光領域6eに対し、タンジェンシャル方向Yの−方向に隣接した位置に第7受光領域6gが配置され、第5受光領域6eに対し、タンジェンシャル方向Yの+方向に隣接した位置に第8受光領域6iが配置される。第6受光領域6fに対し、タンジェンシャル方向Yの−方向に隣接した位置に第9受光領域6hが配置され、第6受光領域6fに対し、タンジェンシャル方向Yの+方向に隣接した位置に第10受光領域6jが配置される。第5および第6受光領域6e、6fのラジアル方向Xの寸法は、第1および第2受光領域6a、6bのラジアル方向Xの寸法と同等とする。
【0104】
第2実施形態において光ピックアップ装置10は、光源12と回折領域19との間に、第1発光点32および第2発光点33からの出射光を3ビームに分割する光分割素子46が配置される。光分割素子46は、回折格子によって実現され、光源12からの出射光を0次回折光と±1次回折光の3つに分割することによって、3ビームを形成する。
【0105】
光分割素子46を透過した光源12からの出射光は、光学記録媒体11の主トラックおよび副トラックに集光される。また光分割素子46に形成される直線状の複数の回折溝は、主トラックにおける0次回折光の理想的な集光位置と、副トラックにおける±1次回折光の理想的な集光位置とを結んだ直線に対して、垂直に設定される。光分割素子46は、回折素子16と同様に、透明硝子基板であればフォトリソグラフィー法、透明樹脂であれば2P法や金型成型で形成が可能である。これによって光分割素子46は、主ビームとなる0次回折光と、副ビームとなる±1次回折光とを生成する。
【0106】
回折領域19に形成されたフォーカス回折領域21は、第1実施形態におけるフォーカス回折領域21と同様である。ナイフエッジ部26よりもタンジェンシャル方向Yの−方向に配置された半円形状のトラッキング回折領域36は、第1種回折領域41と第2種回折領域42とに分割される。第1種回折領域41は、入射した第1波長の光を受光領域に向けて回折させる回折格子として形成され、第2種回折領域42は、入射した第2波長の光を受光領域に向けて回折させる回折格子として形成される。第1種回折領域41は、回折領域19の中心点P0を通るタンジェンシャル方向Yの−方向に複数分割される。この分割線を「第1種トラッキング規定分割線」(40a)と称する。さらに第2種回折領域42は、回折領域19の中心点P0からラジアル方向Xの+方向に距離βだけずれた点P1を通るタンジェンシャル方向Yの−方向に複数分割される。この分割線を「第2種トラッキング規定分割線」(40b)と称する。第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fのそれぞれは、波長の異なる光の種類に数に応じた数のトラッキング領域38に分割され、ここでは2つのトラッキング領域38が形成される。第1トラッキング領域Eに含まれるトラッキング領域38を「第1種第1トラッキング領域」(E1)および「第1種第2トラッキング領域」(E2)とし、第2トラッキング領域Fに含まれるトラッキング領域38を「第2種第1トラッキング領域」(F1)および「第2種第2トラッキング領域」(F2)とする。
【0107】
第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fは、ラジアル方向Xに互いに平行な、幅Wcと幅Wdで交互に繰り返し離れた複数の分割線39によって、複数の細長い形状の細分領域に分割される。第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fにおいて、複数のトラッキング細分領域は、タンジェンシャル方向Yに並びかつラジアル方向Xに平行な第1種トラッキング規定分割線40aか、第2種トラッキング規定分割線40bのいずれかにより分離して形成される。第1トラッキング領域Eに含まれる複数のトラッキング細分領域のうちの幅Wcの平行分割線39と、外縁を規定する円弧と、第1種トラッキング規定分割線40aに囲まれた複数のトラッキング細分領域は、第1種第1トラッキング領域E1を構成し、第1トラッキング領域Eに含まれる複数のトラッキング細分領域のうちの幅Wdの平行分割線39と、外縁を規定する円弧と、第2種トラッキング規定分割線40bに囲まれた複数のトラッキング細分領域は、第1種第2トラッキング領域E2を構成する。第2トラッキング領域Fに含まれる複数のトラッキング細分領域のうちの幅Wcの平行分割線39と、外縁を規定する円弧と、第1種トラッキング規定分割線40aに囲まれた複数のトラッキング細分領域は、第2種第1トラッキング領域F1を構成し、第2トラッキング領域Fに含まれる複数のトラッキング細分領域のうちの幅Wdの平行分割線39と、外縁を規定する円弧と、第2種トラッキング規定分割線40bに囲まれた複数のトラッキング細分領域は、第2種第2トラッキング領域F2を構成する。第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fにおいては、いずれの1つのトラッキング領域38も、複数のトラッキング細分領域によって構成され、いずれか一方の波長の光に対応する。
【0108】
第1種第1トラッキング領域E1は、タンジェンシャル方向Yには、それぞれ周期的に分散して配置され、第2種第1トラッキング領域F1よりもラジアル方向Xの+方向に配置される。第1種第1トラッキング領域E2は、タンジェンシャル方向Yには、それぞれ周期的に分散して配置され、第2種第2領域トラッキングF2よりもラジアル方向Xの+方向に配置される。第2種第1トラッキング領域F1は、タンジェンシャル方向Yには、それぞれ周期的に分散して配置され、第1種第1トラッキング領域E1よりもラジアル方向Xの−方向に配置される。第2種第2トラッキング領域F2は、タンジェンシャル方向Yには、それぞれ周期的に分散して配置され、第1種第2トラッキング領域E2よりもラジアル方向Xの−方向に配置される。
【0109】
第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fにおいて、同一の種類の光に対応するトラッキング細分領域は、互いにラジアル方向Xに隣接して配置される。これによって、第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとを回折した後の光を受光した受光領域は、トラッキングエラーを検出することが可能となる。
【0110】
第1波長の光を用いる場合、第1種第1トラッキング領域E1に入射した光分割素子46による0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34からラジアル方向Xの+方向に距離PX離れ、かつタンジェンシャル方向Yの−方向に距離PY離れた第5受光領域6eの点9eに向けて回折され集光される。第2種第1トラッキング領域F1に入射した光分割素子46による0次回折光は、光源12からの出射光の光軸34からラジアル方向Xの+方向に距離PX、かつタンジェンシャル方向Yの+方向に距離PY離れた第6受光領域6fの点9fに向けて回折され集光される。1つのトラッキング領域38が、1つの1種類の光に対応することは、1種類の光を、予め定める受光領域、ここでは光分割素子46による第1波長の光の0次回折光の場合、第5受光領域6eおよび第6受光領域6fに入射させることを意味する。
【0111】
第1波長の光を用いる場合において、第1種第1トラッキング領域E1に入射し回折した光分割素子46による±1次回折光は、第5受光領域6eに対してタンジェンシャル方向に隣接する第7受光領域6gと第8受光領域6iとに入射する。第2種第1トラッキング領域F1に入射し回折した光分割素子46による±1次回折光は、第6受光領域6fに対してタンジェンシャル方向に隣接する第9受光領域6hと第10受光領域6jとに入射する(図8(a)参照)。
【0112】
第2波長の光を用いる場合、回折素子16の第1種第2トラッキング領域E2に入射した光分割素子46による0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34からラジアル方向Xの+方向に距離PX離れ、かつタンジェンシャル方向Yの−方向に距離PY離れた第5受光領域6eの点9eに向けて回折され集光される。回折素子16の第2種第2トラッキング領域F2に入射した光分割素子46による0次回折光は、光源12からの出射光の光軸34からラジアル方向Xの+方向に距離PX、かつタンジェンシャル方向Yの+方向に距離PY離れた第6受光領域6fの点9fに向けて回折され集光される。
【0113】
第2波長の光を用いる場合において、第1種第2トラッキング領域E2に入射し回折した光分割素子46による±1次回折光は、第5受光領域6eに対してタンジェンシャル方向に隣接する第7受光領域6gと第8受光領域6iとに入射する。第2種第2トラッキング領域F2に入射し回折した光分割素子46による±1次回折光は、第6受光領域6fに対してタンジェンシャル方向に隣接する第9受光領域6hと第10受光領域6jとに入射する(図8(b)参照)。
【0114】
第1種第1トラッキング領域E1、第1種第2トラッキング領域E2、第2種第1トラッキング領域F1および第2種第2トラッキング領域F2における複数の回折溝のピッチを、dE1,dE2,dF1およびdF2とする。第1波長λ1と第2波長λ2が、第1の実施形態と同様、λ1<λ2であれば、「dE1<dE2、dF1<dF2」の大小関係が成立する。したがって、第1種第1トラッキング領域E1および第2種第1トラッキング領域F1に光分割素子46による第2波長の光の0次回折光が入射する場合、第2波長の光が入射するときの回折角度は、第1波長の光が入射するときの回折角度よりも大きくなる。したがって、第2波長の光が入射すると、図8(b)に示すように、第1波長の光が受光素子6の受光面において集光する集光点9e,9fよりもラジアル方向Xの+方向に離れて第5および第6受光領域6e,6fから外れた位置に集光される。また光分割素子46による±1次回折光についても同様で、それぞれ集光スポットは、第7〜第10受光領域6g〜6jから外れた位置に集光される。
【0115】
また、第1種第2トラッキング領域E2および第2種第2トラッキング領域F2に光分割素子46による0次回折光が入射する場合、第1波長の光が入射するときの回折角度は、第2波長の光が入射するときの回折角度よりも小さくなる。したがって、第1波長の光が入射すると、図8(a)に示すように、第2波長の光が受光素子6の受光面において集光する集光点9e,9fよりもラジアル方向Xの−方向に離れて第5および第6受光領域6e,6fから外れた位置に集光される。また光分割素子46による±1次回折光についても同様で、それぞれ集光スポットは、第7〜第10受光領域6g〜6jから外れた位置に集光される。
【0116】
回折角度、波長、回折領域19の回折溝のピッチの関係式は、本発明の第1実施形態と同様であり、またフォーカスサーボ信号FESの算出についても、本発明の第1実施形態と同様である。
【0117】
第1〜第10受光領域6a〜6jによって検出された電気信号をSa〜Sjとし、ラジアルエラー信号を「RES」とすると、ラジアルエラー信号RESは、
RES=(Se−Sf)−K・{(Sg+Sh)−(Si+Sj)} …(12)
(K:定数)
の演算を行うことで、DPP法によって検出することができる。
【0118】
このとき、半導体レーザー素子の発光点は、第1波長と第2波長でラジアル方向Xに異なり、特に第2波長の発光点位置が光源12の第1波長の光の第1発光点32からの出射光の光軸34からラジアル方向Xの+方向にずれて配置されている。これによって、光学記録媒体からの反射光18の、回折領域19上に落射するスポットの強度分布中心は、ラジアル方向Xの+方向にずれる。
【0119】
仮に、回折領域19のナイフエッジ部26と第1種および第2種トラッキング規定分割線40aおよび40bとの交点が、第1種回折領域41においても第2種回折領域42においても同一の中心点P0であった場合、第2波長の光が、入射すると、第5受光領域6eと第6受光領域6fとによって検出される電気信号の特に直流成分に、系統的な非対称性が生じるため、ラジアルエラー信号RESにオフセットが発生する。
【0120】
第2実施形態では、回折領域19の第2種回折領域のうちE2とF2間の第2種トラッキング規定分割線40bを、中心点P0からラジアル方向Xの+方向に距離βずらした補正点P1を通りタンジェンシャル方向Yに延びる一直線上に配置する。中心点P0は、回折領域19に入射する第1波長の光学記録媒体からの反射光18の強度分布中心もしくはそれに近い位置となる点であり、補正点P1は、回折領域19に入射する第2波長の光学記録媒体からの反射光18の強度分布中心もしくはそれに近い位置となる点である。これによって、第1発光点32と第2発光点33との位置の差異に基づいて、第1および第2波長の光がそれぞれ発光した場合、受光素子上の受光領域から出力される電気信号に含まれるラジアルエラー信号RESへの残留オフセットを、低減することができる。
【0121】
光源12からの出射光34の光軸と発光点が合致する第1波長の光が、回折領域19に入射した場合、その光の強度分布中心は、中心点P0もしくはその近傍となるため、第1種回折領域41のうちE1とF1間の第1種トラッキング規定分割線40aは、中心点P0を通りタンジェンシャル方向Yに延びる直線上に配置したままとする。これによって、第1波長の光に基づくラジアルエラー信号RESに、オフセットが発生しにくい構造となっている。
【0122】
さらに、領域E1、F1、E2、F2の境界線の一部は、ラジアル方向Xに一致する。これによって、対物レンズ29の位置のシフトによるラジアルエラー信号RESがラジアルエラーの量に対して線形性を保つことができる。再生信号RFは、分割素子46による0次回折光を利用し、±1次回折光の利用を回避することから、本発明の第1の実施形態と同様、式11の演算を行うことで、再生信号RFを安定して検出することができる。
【0123】
また、第2実施形態では、第1の実施形態と同様、第1種第1トラッキング領域E1および第2種第1トラッキング領域F1、および第1種第1領域トラッキング領域E2および第2種第2トラッキング領域F2のタンジェンシャル方向Yの幅寸法Wc,Wdは、回折溝の広い方のトラッキング領域、具体的には第2トラッキング領域E2およびF2におけるピッチdE2,dF2の、5ピッチ幅以上とした。またこれらの幅寸法Wc,Wdの比率を1:1としたけれども、これらの幅寸法の比率については、これに限定しない。これらの幅寸法および比率については、第1実施形態の説明とともに前述した他の実施形態と同様に決定することができる。
【0124】
本発明の第1および第2実施形態では、回折領域19による+1次回折光を利用してサーボ信号を検出することを上述したが、これに限定されることはない。他の実施形態では、−1次回折光側にも、同様の受光領域6a,6b,・・・を配置し、±1次回折光の両方を使って、ダブルナイフエッジ法を使ったフォーカスエラー信号FES検出することもできる。またこの他の実施形態の構成によって、トラッキングサーボのサーボ信号を検出することも可能である。
【0125】
光源12、受光素子6および回折素子16を一体化した集積ユニット、いわゆるホログラムレーザーを使用することで、これらを一体化しない場合に比べて、光ピックアップ装置10を小形化することができる。この場合においても、他の効果については、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0126】
また、第1および第2実施形態では、用いられる光が、互いに波長の異なる2種類の光としたけれども、2種類に限定するものではない。たとえば他の実施形態において用いられる光は、3種類以上の波長の光であってもよい。その場合には、フォーカス領域22は3種類以上となり、トラッキング回折領域36におけるトラッキング領域38も、3種類以上となる。ただし第1種回折領域41と第2種回折領域42とは、ラジアルエラー信号の検出に用いるための区分されるものであるので、これらの種類の数は、光の波長の種類に対応するものではない。
【0127】
また第1および第2実施形態では、フォーカス領域におけるフォーカス細分領域は、平行な複数の平行分割線27によって分割されるものとしたけれども、光の種類に対応するそれぞれのフォーカス領域22が、いずれの種類のフォーカス領域22においても、フォーカス領域の全体にわたって、分散して配置されていれば、足りる。たとえば中心点P0を通り放射状に形成される分割線によって分割されていてもよい。
【0128】
また平行な複数の分割線によって分割されるフォーカス細分領域およびトラッキング細分領域は、各種類のフォーカス領域22およびトラッキング領域38において複数形成されればよい。最低個数は2とし、各種類において個数が多ければ多いほど、均一に分散させて配置することが可能となる。
【0129】
また、第1波長の第1発光点32からの出射光の光軸を、コリメートレンズ28および対物レンズ29の光学系の光軸中心と合致させたが、それに限定されることなく、例えば、第2波長の第2発光点33の出射光の光軸を、前記光学系の光軸中心と合致させることも可能であり、さらに第1波長の第1発光点32と第2波長の第2発光点33の中点を、前記光学系の光軸中心と合致させてもよい。それらの場合、第1種および第2種トラッキング規定分割線40aおよび40bのラジアル方向Xでの位置は、対応する発光点に合わせて適宜移動させることで対応できる。
【0130】
また、本発明は、フォーカスサーボ制御にはナイフエッジ法、トラッキングサーボ制御にはDPP法について説明したが、それに限定されることなく、回折素子を使った光ピックアップ装置であれば、フォーカスサーボ制御には非点収差法やビームサイズ法、トラッキングサーボ制御にはDPD法や3ビーム法等にも、対応する受光領域を備えた受光素子を用意することで同様に適用することができる。
【0131】
また、本発明は、ナイフエッジ法を使うため、ナイフエッジとなるナイフエッジ部26を光軸34の中央を通る直線で構成したが、それに限定されることなく、光軸34の中央から外れたポイントを通る直線や、さらに曲線であってもナイフエッジとして機能する構造であれば同様に対応可能である。
【0132】
また、本発明では、3ビームを生成する光分割素子46は、2波長共、3ビームの生成に限定することなく、波長選択性を備え、一方の波長のみ3ビームを生成し、他方の波長の光は透過していてもよく、特定の波長のみ3ビームを生成し、他波長では透過して1ビームとして使用しても良い。
【0133】
また、本発明では、光源となる半導体レーザと、受光素子とを近接して配置したもので構成されたものであるが、それに限定されることなく、半導体レーザから出射される往路光に対して、光記録媒体からの反射された復路光の光路途中でビームスプリッター等の分岐光学素子で、光を分岐させて復路光軸を折り曲げ、集光レンズと受光素子を設けた光ピックアップ装置でも、その復路光路内に、本発明の回折素子を入れることで、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0134】
6 受光素子
10 光ピックアップ装置
11 光学記録媒体
12 光源
16 回折素子
17 フォーカス受光領域
18 光学記録媒体からの反射光
19 回折領域
21 フォーカス回折領域
22 フォーカス領域
26 ナイフエッジ部
27 平行分割線
29 対物レンズ
30 光ビーム
32 第1発光点
33 第2発光点
34 光源12からの出射光
35 記録面
36 トラッキング回折領域
38 トラッキング領域
40a 第1種トラッキング規定分割線
40b 第2種トラッキング規定分割線
41 第1種回折領域
42 第2種回折領域
46 光分割素子
R1 依存性(図4)
R1 依存性(図5)
X ラジアル方向
Y タンジェンシャル方向
Z 光軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学記録媒体に照射されるべき光であって、波長の異なる複数種類の光を出射可能な光源と、
複数の受光領域が形成される受光素子であって、複数の受光領域の一部は、フォーカスサーボに用いられるフォーカス受光領域として用いられる受光素子と、
前記光源から出射され、前記光学記録媒体で反射した反射光の少なくとも一部を前記フォーカス受光領域に向けて回折させるフォーカス回折領域を有し、
前記フォーカス回折領域には、前記光源が出射可能な光の種類と同数の種類のフォーカス領域を備えるとともに、
前記フォーカス領域の各種類は、前記光の各種類に対応し、それぞれ対応する種類の光を前記フォーカス受光領域の同一位置もしくはその近傍に向けて回折させ、
前記各種類のフォーカス領域は、周期的に分散して配置される複数のフォーカス細分領域を含み、各フォーカス細分領域は、少なくとも一部が、異なる種類の光のフォーカス細分領域と隣接して配置される回折素子と
を含むことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記フォーカス回折領域の外縁の予め定める一部は、直線となるナイフエッジ部によって規定され、前記ナイフエッジ部は、光学記録媒体からの反射光がいずれの種類の光であるときにも前記反射光が回折素子において入射する入射領域に対して交差し、
前記フォーカス回折領域は、平行に並ぶ複数の平行分割線によって複数のフォーカス細分領域に分割され、
前記複数の平行分割線は、前記ナイフエッジ部に対して垂直もしくは傾斜することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記平行分割線は、前記ナイフエッジ部に対して、30度以上150度以下の角度を成すことを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
各フォーカス細分領域には、複数の回折溝が平行かつ周期的に並んで形成され、
各フォーカス細分領域を、各フォーカス細分領域の回折溝に垂直に交差する仮想平面には、前記回折溝が5本以上交差することを特徴とする請求項2または3に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記複数の受光領域は、前記光学記録媒体のトラックに対するトラッキングサーボに用いられるトラッキング受光領域を有し、
前記回折素子は、
前記反射光の少なくとも一部を前記トラッキング受光領域に向けて回折させるトラッキング回折領域を有し、
前記トラッキング回折領域は、前記光源が出射可能な光の種類と同数の種類のトラッキング領域を有し、
前記トラッキング領域の各種類は、前記光の各種類に対応し、
前記各トラッキング領域は、対応する種類の光を前記トラッキング受光領域の同一位置もしくはその近傍に向けて回折させ、前記各種類のトラッキング領域は、複数のトラッキング細分領域によって構成され、
各種類のトラッキング領域の複数のトラッキング細分領域は、前記トラックの接線方向に対応する前記トラッキング回折領域における方向において、周期的に分散し、かつ少なくともその一部が異なる種類の光のトラッキング細分領域と隣接して配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記トラッキング受光領域は、トラッキングサーボに用いられる第1トラッキング受光領域および第2トラッキング受光領域を有し、
前記各トラッキング細分領域は、前記反射光の一部を前記第1トラッキング受光領域に向けて回折させる第1種回折領域と、前記反射光の一部を前記第2トラッキング受光領域に向けて回折させる第2種回折領域とを有し、
前記各種類のトラッキング領域に含まれる複数のトラッキング細分領域を第1種回折領域および第2種回折領域に分割する複数の分割線は、前記トラックの接線方向に対応する前記トラッキング回折領域における方向に延びる直線上に配置され、
前記各種類のトラッキング領域における前記各直線の位置は、前記トラックの接線方向に垂直なラジアル方向に関して、各トラッキング領域が対応する種類の光を出射する光源の位置に応じて決定されることを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記トラッキング受光領域は、前記複数種類のうち1種類のトラッキング領域において回折した光を、前記反射光の光の種類に応じて択一的に受光することを特徴とする請求項5または6に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−258301(P2011−258301A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93201(P2011−93201)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】