説明

光ファイバへの光結合手段とカプラ製造方法

【課題】光結合手段が低光学損失である光カプラとその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明はポンプカプラ(2)とその製造方法に関する。ポンプカプラ(2)は、光ポンプエネルギーを出力する少なくとも1本の出力信号ファイバ(50)と、信号ファイバ(50)に光エネルギーを入力する多数のポンプファイバ(31)と、信号ファイバ(50)にポンプファイバ(31)の光エネルギーを結合する結合構造(40)とを備える。信号貫通ファイバ(32)は結合構造(40)を通り抜ける。本発明に記載の結合構造(40)は、第一の幅広端部(65)と第二の幅狭端部(70)を有するテーパーキャピラリ管(40)であり、ポンプファイバ(31)は、キャピラリ管(40)の幅広端部(65)に接続され、少なくともキャピラリ管(40)の幅狭端部(70)は、信号貫通ファイバ(32)の周囲に縮径される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分に記載の光カプラに関するものである。
【0002】
また本発明は、光カプラの製造方法にも関するものである。
【背景技術】
【0003】
ファイバレーザーは、さまざまな産業上の利用に適応する多数の魅力的な性質を持っている。これらの性質は、良好なビーム品質、容易な温度管理、小型、良好な効率性を備えている。そのためファイバレーザーは、固体レーザーおよびガスレーザーなどの、より従来型のレーザーから市場シェアを継続的に獲得してきている。ファイバレーザーは、優れたビーム品質の光出力を数kW台で生成することができる。したがって、これらのレーザーは、金属の溶接あるいは切断のようなマクロ的機械加工の適用に使用することができる。さらにファイバレーザーは、モード同期方法により超短パルスの動作に役立ち、同様にマイクロ的機械加工の適用に使用することができるようにしている。
【0004】
以下の説明において、本明細書の読者は光ファイバ構造の基礎知識があると仮定される。したがって、ファイバコア、クラッドおよび被覆の概念は、詳述しない。ファイバレーザーによって生成されたレーザー放射は、ここでは信号と呼ばれる、直径が一般的に数ミクロンと数十ミクロンの間であるファイバのコア内に伝播すると述べるにとどめておく。いわゆるダブルクラッドファイバは、コアと、前記コアに信号光を閉じ込めてポンプ光(励起光)を導く第一クラッドと、前記第一クラッドに前記ポンプ光を閉じ込める第二クラッドとから成る。前記コアは、一般的にドープ溶融石英で作製され、前記第一クラッドは溶融石英で作製され、前記第二クラッドは低屈折率ポリマーあるいはドープ溶融石英で作製される。ポンプ光の意味については後に説明する。
【0005】
後の参照のために、ファイバ加工に関連したいくつかのさらなる用語あるいは概念もまた、ここで簡潔に説明される。接合は、ファイバ光学の技術分野において周知の用語である。それは、接合部に近接した2つのガラス部分を高温に加熱してガラスを軟質にして、次に2つのガラス部分を互いに物理的接触するように押し付けて、少なくとも2つのガラス部分を接合することである。故に、密接で透明な接触部は、2つのガラス部分の間で形成される。接合の熱源は、例えば電気アーク、熱フィラメントあるいはCOレーザーであることができる。切断加工は、ガラス接触部分に対して平らな面を形成するように、ガラス部分を切断することを意味する。光ファイバにおいて、切断面は通常、ファイバの光軸とは本質的に垂直に存在する(垂直切断)。また本質的に垂直でないものも存在する(角度切断)。特に明記しない限り、本明細書では切断加工は、垂直切断を作成することを意味する。ファイバの先端に平らな面を得る等価手段は、より困難ではあるが、周知の機械研磨方法である。切断加工は、硬質材料で作製された鋭利な刃でファイバに傷を付け、ファイバに張力を加えて切断することによって、あるいはレーザーによって切断する、機械的手段で実行できる。光ファイバの良好な切断は、高品質な接合を可能にする。ストリッピング(被覆剥き)は、通常ファイバの末端から数センチの距離で、ファイバからポリマー被覆を除去することを意味する。本明細書では縮径は、軟質にして、表面張力及び/又は断片の内外領域間の圧力差によって収縮するために、キャピラリ管などの、ガラスからなる中空状の断片を加熱することである。加熱は、接合と同じ方法で実行できる。
【0006】
如何なるレーザーでもファイバレーザーは、利得媒体、光共振器、前記利得媒体へのエネルギー結合手段、および前記光共振器から光を取り出す手段から成る。ファイバレーザーの利得媒体は、光ファイバと、一般的に溶融石英で作製されたアクティブファイバから成り、そのアクティブファイバのコアは、希土類原子Er(エルビウム)あるいはYb(イッテルビウム)などの、光学活性原子を添加している。光共振器は、アクティブファイバに対して正確に位置あわせされたときに、活性原子によって放出された光の一部に、利得媒体を通りミラー間で跳ね返させて、増幅された光を得るミラーで、利得媒体を囲むことで形成される。ミラーは、大きな光ミラーであるか、それとも光ファイバ内に直接加工できる。後者の場合では、ミラーはファイバブラッググレーティング(FBR)であるが、ファイバをベースとしたミラーもまた存在する。ファイバをベースとしたミラーは、極めて低光損失の他のファイバに直接接続されるか、または接合されることができるので、魅力的である。ミラー、または一般に2つのミラーのうちの1つだけが、光共振器から光を取り出す手段を提供するために、一部分だけの反射を持たせる。ファイバレーザーでは、取り出された光は、加工物などの、興味のある点に近接して光ファイバを使ってさらに導波されることができる。したがって取り出された光は、最終用途で用いることができるレーサー光線を形成する。
【0007】
利得媒体、すなわちファイバレーザーにおけるアクティブファイバは、電気絶縁体である。したがって、エネルギーを電力形式でアクティブファイバに直接供給することができない。しかし活性原子は、吸収帯と呼ばれるある波長範囲内で光放射を吸収する。この特性は、光形式で利得媒体にエネルギーを入れる、あるいは「ポンピングする」ことで、ファイバレーザーに利用される。この光はポンプ光と呼ばれ、ポンプレーザーダイオードによって通常作り出され、好ましくはファイバ結合される。したがってファイバレーザーにおいて、前記ポンプ光をアクティブファイバに結合する手段が存在しなければならない。さらに好ましくは、その結合手段が低光学損失を有すること、すなわちポンプエネルギーのほとんどが、利得媒体に結合できることである。さらに好ましくは、その結合手段は、レーザー信号が低光学損失で通過できる信号貫通を有することである。後者の特性は、レーザーキャビティ構造に大いに役立ち、産業分野のファイバレーザーの好適な前提条件である。
【0008】
米国特許第5854865号明細書、米国特許第6529657号明細書、特開2007−156097号公報に示された光通信など、自由空間光通信を用いてポンプカプラを作製する多くの方法がある。これらの取り組み方法は、溶融型全ガラスカプラである本発明とは根本的に異なる。したがって以下の説明は、溶融型全ガラスの実施を有する先行技術に集中している。
【0009】
米国特許第5864644号明細書(特許文献1)では、信号ファイバを含むことのできる入力ファイバは、共に単に束ねられ、共にファイバを溶融するためにテーパーにされる。次に溶融された束は、ウエスト部から切断され、出力ファイバに接合される。この取り組み方法もまた、ポンプファイバも信号ファイバもテーパーにするのを含む。信号ファイバのコア径は、その過程で減少される。さらに出力ファイバは、低接合損失に対し、同一の減少コア径を有することが必要である。したがってこのカプラは、入力および出力で異なるコア径を避けられなく有する。
【0010】
米国特許第5999673号明細書(特許文献2)では、カプラはポンプファイバをテーパーにして、ポンプ光を従って信号ファイバに結合することができるようにするテーパー部から信号伝送中央ファイバにそのポンプファイバを溶融することで、作製される。ポンプファイバは、ゼロの厚さでテーパーにすることができないので、ポンプ光のある損失がこの取り組み方法で予期される。さらに、その延伸長さに沿って信号ファイバに多数のポンプファイバを直接溶融することは、信号ファイバを屈曲して、信号光にマイクロベンド損失を引き起こす危険性がある。各ポンプファイバは、多数のポンプファイバを含む構造に対して面倒な工程の極小の厚さでテーパーにする必要もある。
【0011】
米国特許出願公開第2005/105866号明細書(特許文献3)は、ポンプファイバは、ファイバの縦軸に沿ってアクティブファイバと本質的に光接触した状態にあるカプラを記載している。この実施では、ポンプファイバが、例えばポリマー被覆で構造全体を被覆するか、あるいは縦軸に沿ってファイバを溶融することで、ファイバ間で光接触して保持するために、アクティブファイバと同じファイバ線引き工程で製造する必要がある。さらにこの取り組み方法は、信号ファイバのコアが信号ファイバ長に沿ってポンプ放射を吸収しているときのみ、パワーの効率的結合が達成できるので、アクティブファイバであるためには信号ファイバを必要とする。この取り組み方法は、信号のビーム品質を十分に保持するが、ポンプパワーでは限られた拡張性を有し、アクティブファイバであるためには信号ファイバを実際に必要とし、ポンプファイバと信号ファイバとの間で光接触を達成するためには、複雑な方法を必要とする。
【0012】
米国特許出願公開第2005/105854号明細書(特許文献4)では、一束のポンプファイバは、中央のファイバの周囲に形成され、最初に共に溶融される。次にその束は、出力ファイバに直接接合される。信号ファイバのコアと出力ファイバのコアとの慎重な位置合わせ、および出力ファイバにすべてのポンプファイバとの良好な接触をすることもまた必要とするので、このような接合を実行することは、極めて挑戦的である。
【0013】
米国特許出願公開第2006/251367号明細書(特許文献5)は、非ガイドコアを備える少なくとも第一の入力光ファイバと、少なくとも1つの出力光ファイバを有する光ファイバカプラを記載している。この発明は、カプラの本質的特性である実結合領域の構造を実際には詳細に記載していないことにおいては、極めて漠然としている。請求項9にのみ、結合領域がファイバのテーパー束であることを述べており、したがって本発明の結合領域とは根本的に異なる。したがって、この特許は疑わしい実用性にある。結合領域の詳細な説明は何も与えられていないので、このようなカプラを実際に構成するための基準として使用することはできない。さらにそれは、非ガイド入力ファイバに限定される。
【0014】
国際公開第2007/090272号(特許文献6)は、多数のテーパーポンプファイバがマルチクラッドシングルファイバに側面に沿って結合される構造を有するマルチモードファイバカプラを記載している。溶融工程では、テーパーポンプファイバと中央ファイバとの束にひねりを加え加熱し延伸して、その束においてさらにウエスト部を備えたテーパーを形成する。次に溶融された束は、ウエスト部から切断され、別のマルチクラッドファイバに接合される。カプラを作製するこの取り組み方法の欠点は、各ポンプファイバが別々にテーパーにする必要があるという点である。
【0015】
さらにひねりと溶融された束の形成過程で、中心信号伝送ファイバもまた、特にそのコアの大きさに変形されてテーパーにされる。このことは、信号パワーに対する避けることのできない被った損失のために、信号光に対する低下したモード品質のために、およびコア材料に対するレーザー損傷閾値に到達する危険性のために、ハイパワーファイバレーザーで用いられるカプラには好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5864644号明細書
【特許文献2】米国特許第5999673号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/105866号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/105854号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/251367号明細書
【特許文献6】国際公開第2007/090272号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、ポンプ光を光ファイバに結合する実用的手段と、その製造方法を記載している。このことから、用語「ポンプカプラ」は、その結合手段に用いられる。本発明のカプラは、如何なるポンプファイバにもテーパー部を有するものでもないし、信号ファイバにテーパー部を有するものでもないが、その結合は、テーパーのキャピラリ管を用いて実行され、ポンプファイバと信号ファイバは、そのキャピラリ管に結合される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、本発明の装置は、請求項1の特徴部分に記載されていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、本発明の方法は、請求項5の特徴部分に記載されていることを特徴とする。
【0020】
以下の恩恵は、本発明によって得られるものである。
【0021】
本発明では、ポンプカプラは、ファイバレーザーによって生成されるレーザー放射に対して低損失な信号貫通を有する特性を持っている。さらに、本発明の手順で作製された信号貫通は、その信号貫通ファイバを通って移動するレーザー放射に対するビーム品質の最小限の低下を引き起こすだけである。最後に本発明のカプラ構造を備えることで、出力ファイバに極めて高いポンプ結合効率を得ることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に関連して用いることができるファイバレーザーの一例を概略的に示す。
【図2】本発明に関連して用いることができるファイバレーザーの第二例を概略的に示す。
【図3】本発明に関連して用いることができるファイバレーザーの第三例を概略的に示す。
【図4】本発明に関連して用いることができるファイバレーザーの第四例を概略的に示す。
【図5a】本発明に記載の1つのポンプカプラの部分横断面の側面図を示す。
【図5b】図5aの横断面Aを示す。
【図6】本発明に記載の方法で用いることができる6本のポンプファイバと1本の信号貫通ファイバを備えた典型的な光ファイバ束の横断面を示す。
【図7】図6の光ファイバ束の側面図を示す。
【図8】本発明に記載の方法の図6、図7の次の段階の構造の側面図を示す。
【図9】本発明に記載の方法の図6、図7、図8の次の段階の構造の側面図を示す。
【図10】本発明に記載の方法の方法ステップに関連したポンプカプラの予備構造の側面図を示す。
【図11】本発明に記載の方法の図10の次の段階の構造の側面図を示す。
【図12】本発明に記載の方法の図10、図11の次の段階の構造の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、ファイバレーザーの構成の一例を示している。それは、ファイバをベースとしたレーザー共振器1で構成され、アクティブファイバ11と、高反射ファイバブラッググレーティング(HR FBG)ミラー12と、低反射ファイバブラッググレーティング(LR FBG)ミラー13とから成る。低反射ファイバブラッググレーティング(LR FBG)は、100%より大幅に小さな光反射率を有することで、レーザー共振器1からレーザー放射を取り出す手段をさらに提供する。高反射(HR)および低反射(LR)ファイバブラッググレーティング(FBR)の標準反射率は、それぞれ>90%および10%である。図1は、ポンプカプラ2もまた表している。そのポンプカプラ2はそれぞれ、ポンプファイバ31を通ってポンプ光源に接合し、信号貫通ファイバ32を通って外界に接合し、出力信号ファイバ50を通ってファイバレーザー共振器に接合している。図1のファイバレーザーキャビティは、ポンプ光と出力信号光が逆向き伝播している、いわゆる逆向きポンプ構造を有する。さらに図1の例でポンプカプラ2は、レーザー共振器1の外側に位置する。図1のバツ印は、異なるファイバ間の接合部を表す。
【0024】
図2は、図1と同じ意味を有する表記の、ファイバレーザーの別例を示している。図1の共振器に対する唯一の違いは、ポンプカプラ2が現在レーザー共振器1の内側、すなわち高反射(HR)ミラー12と低反射(LR)ミラー13との間にある、という点である。図2の構造において、ポンプカプラがレーザー共振器1の光学的損失に直接寄与しているので、ポンプカプラが低損失の信号貫通を有することは必要である。
【0025】
図3は、ファイバレーザーのさらに別の構造を示している。本例においてファイバレーザー共振器は、レーザー共振器1の両端から2つのポンプカプラ2a、2bでポンプされる。示された構造の拡張あるいは変更によって、他の構造が構築されることができることは明らかである。
【0026】
各ポンプカプラのパワー結合能力が限定されるように、ハイパワーファイバレーザーは、アクティブファイバの複数の区分とポンプカプラを連結することによって構築されることができる。図4は、2つのアクティブファイバ区分11a、11bに接続された4つのポンプカプラ2a、2b、2c、2dを有するファイバレーザーの一例を示す。区分11aは、ポンプカプラ2a、2bで両端からポンプされ、さらにアクティブファイバ区分11bは、ポンプカプラ2c、2dで両端からポンプされる。高反射(HR)ミラー12と低反射(LR)ミラー13は、それぞれポンプカプラ2a、2dの信号貫通ファイバに取り付けられている。
【0027】
上述例は、柔軟性のあるパワー拡張可能なファイバレーザーが、低損失のポンプカプラで製造できる、ということを示している。本発明は、低損失のポンプカプラの概念と、このようなポンプカプラを製造する方法を説明している。
【0028】
図5aは、ポンプカプラ2の一実施例を示している。カプラ2は、光軸が本質的に平行であり、切断端部あるいは研磨端部が、カプラ2の光軸22に垂直な同一平面上にあるように本質的に配置された多数のポンプファイバ31から成る。ここで注目することは、2つのポンプファイバ31だけがこの切断面で描かれているが、当然のことながら、ポンプファイバの数がそれより多い、例えば4あるいは6つである。1つの限定減縮は、ポンプファイバ束の中央にポンプファイバが位置しないことである。ポンプファイバ31は、次に先頭外径Dで内径Dを有するテーパー状キャピラリ管40の切断端部あるいは研磨端部に接合される。本実施例においてキャピラリのテーパー部40は、周知のガラスの線引き方法で形成される。従って、キャピラリのテーパー部40の外径および内径いずれも、テーパーに沿って変化するが、それらの割合は、本質的に一定のままである。カプラ2のポンプ光の低光学損失に関し、ポンプ光の入口端部でのキャピラリ管の壁厚Wは、ポンプファイバの直径Dに好ましくは等しいか、あるいはより大きい。これは、ポンプファイバからのポンプ光がすべてキャピラリ管40のガラス部分と結合できることを確実にする。キャピラリのテーパー部40は、好ましくは断熱であり、管の横寸法が、テーパー状キャピラリに沿って進む光の輝度が本質的に一定であるようにキャピラリの長さに沿ってゆっくりと変化するという意味がある。本明細書の輝度は、テーパー部の内部の任意の長手方向の位置における、キャピラリの壁厚と光の開口数(NA)の積を意味する。キャピラリ40は、外径Dおよび内径Dの幅広の第一端部65と、外径Dおよび内径Dの幅狭の第二端部70を有する。ポンプファイバ束の中央およびキャピラリのテーパー部40の中心孔の内部に、信号貫通ファイバ32が配置される。信号貫通ファイバ32の直径Dは、テーパー状キャピラリ管40の内孔径Dよりもわずかに小さい。この限定減縮は、信号貫通ファイバ32の全長に適用する必要がないが、キャピラリのテーパー部40のウエスト領域に固定される部分のみに適用しなければならないということを明らかにすべきである。キャピラリ管40が長さLの領域45内で信号貫通ファイバ32にまで縮径されて、したがってキャピラリ40と信号貫通ファイバ32を融合するように作製して、前記領域45で固体ガラスを形成する。縮径領域45は、テーパー部の端部まで高品質切断の作製を容易にする。テーパー部の切断は、ファイバ切断で用いられたいずれかの方法で行われる。テーパー部40の前記切断端部70は、出力信号ファイバ50、好ましくはダブルクラッドファイバに接合され、その結果信号ファイバ32のコア33は、出力信号ファイバ50のコア53と本質的に位置合わせされる。ファイバ32、50のコア径と開口数は、本質的に同一に好ましくは選択される。これは、レーザー放射あるいは信号が、パワーおよびビーム質の損失を最小限に抑えてカプラ2を貫通できることを確実にする。カプラ2を通じた良好なポンプ光の伝送に関し、キャピラリのテーパー部40のウエスト径Dは、出力信号ファイバ50の直径Dと本質的に等しいか、あるいはより小さく選択される。
【0029】
図5bは、信号ファイバ32の周囲に、全部で8本のポンプファイバ31を示す図5aの方向Aに沿った横断面を示す。ポンプファイバ31の数は、一般的に6本から8本である。
【0030】
図9は、本発明のポンプカプラ2の他の実施例を示している。本実施例において、キャピラリのテーパー部40は、キャピラリ管40の外面を化学的にエッチングすることによって形成される。したがってその外径のみが、キャピラリのテーパー部40に沿って変化し、内孔径D=Dである。本実施例における他の特徴は、図5aのものと本質的に類似している。
【0031】
ファイバの開口数(NA)は、第一近似において、放射の円錐形がファイバから空気中に出射する際、ファイバ軸で作成する最大角に等しい。当業者が上記説明から容易に理解できるように、ポンプファイバ31からキャピラリのテーパー部40に入射しているポンプ光の開口数NAは、第一近似において、キャピラリのテーパー部40により、NA=NA*D/Dの式に従って開口数の値NAまで増加するだろう。したがってカプラ2は、NAが出力信号ファイバ50のポンプ導波路の最大開口数NAを超えないように設計されるべきである。ダブルクラッド出力信号ファイバに関し、NAの値は一般的に約0.46であり、低屈折率のポリマー被覆によって達成される。したがって、設計基準NA≦NAを守ることで、ポンプファイバ31から出力信号ファイバ50への良好な伝送を備えたカプラが実現できる。これはカプラ2の第一の課題である。第二の課題は、最小損失とビーム品質の最小劣化を備えたカプラを通じて信号貫通ファイバ32と出力信号ファイバ50のコア内部で進むレーザー放射を伝送することである。これはコア径と開口数が本質的に同一であるようにファイバ32、50を選択することで、好ましくは達成される。
【0032】
図6の記載において、本発明に記載の第一の方法は、信号ファイバ32にポンプファイバ31を束ねることから始まる。図7から示されるように、ポンプファイバ31の切断端部は、同一平面で面一になるように位置合わせされる。
【0033】
キャピラリ管のウエスト部は、キャピラリ管40の外径だけが縮小し、キャピラリの内径が同じままであるように、エッチングすることで形成される。
【0034】
図7のこの構造は、図8に記載の、例えば接合によって、キャピラリ管40とさらに接続される。キャピラリ管40の領域45は、次にウエスト部から信号ファイバ32まで縮径される。
【0035】
図9の記載において、キャピラリ管40は縮径部45から切断され、別のダブルクラッド出力信号ファイバ50は、信号ファイバのコアと位置あわせされるように、切断されたキャピラリ管40に接合される。
【0036】
本発明に記載の第二の方法は、図10−12に関連して説明される。この解法では、キャピラリ管40の内径も外径も共に、テーパー部で減少している。
【0037】
図10の記載において、ポンプファイバ31のファイバ束は、束にする補助ファイバ60の周囲に形成され、その補助ファイバ60の直径は、キャピラリ管40の内径とほぼ同一である。束にする補助ファイバ60は、ポンプファイバ31の範囲までは拡張しない。ポンプファイバ31はキャピラリ管40に接合され、補助ファイバ60は取り除かれ、少なくともキャピラリ管40のウエスト部を通って押し出される部分において、補助ファイバ60よりも小さい直径を一般的に備えた信号貫通ファイバ32に置き換えられる。補助ファイバ60は、ファイバ以外の構造、例えば金属線であってもよい。したがって、用語「補助具」もまたこれに関連して用いることができる。信号貫通ファイバ32をキャピラリ管40に適合させる第一の実施において、信号貫通ファイバ32の外面は、キャピラリ管40の直径Dの内孔を丁度通り抜けることができるように、化学的にエッチングされる。信号貫通ファイバ32をキャピラリ管40に適合させる別の実施において、ファイバ32はDよりもわずかに小さいその元の直径を有するように設計される。
【0038】
図11に示すように、キャピラリ管40はテーパーウエスト部45から信号貫通ファイバ32まで縮径される。
【0039】
図12の記載において、キャピラリ管は、縮径ウエスト部45の部分から切断され、ダブルクラッド出力信号ファイバ50は、切断されたキャピラリ管40に接合される。
【符号の説明】
【0040】
2 ポンプカプラ
22 光軸
31 ポンプファイバ
32 信号貫通ファイバ
33 コア
40 キャピラリ管(テーパー部)
45 縮径領域
50 出力信号ファイバ
53 コア
65 第一端部(幅広)
70 第二端部(幅狭)
幅広側の外径
幅広側の内径
幅狭側の外径
幅狭側の内径
ポンプファイバの直径
信号貫通ファイバの直径
出力信号ファイバの直径
縮径領域
壁厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ポンプエネルギーを出力する少なくとも1本の出力信号ファイバ(50)と、
前記信号ファイバ(50)に光エネルギーを結合する結合構造(40)と、
前記結合構造(40)に光エネルギーを入力する多数のポンプファイバ(31)と、
前記結合構造(40)を通って信号放射を貫通する信号貫通ファイバ(32)と、
を備えるポンプカプラ(2)において、
前記結合構造(40)は、第一の幅広端部(65)と第二の幅狭端部(70)を有するテーパーキャピラリ管(40)であり、
前記ポンプファイバ(31)は、前記キャピラリ管(40)の前記幅広端部(65)に接続され、
少なくとも前記キャピラリ管(40)の前記幅狭端部(70)は、前記信号貫通ファイバ(32)の周囲に縮径される、
ことを特徴とするポンプカプラ(2)。
【請求項2】
前記結合構造(40)の前記第二の幅狭端部(70)は、前記出力ファイバ(50)に接続され、前記幅狭端部(70)の外径(D)は、前記出力信号ファイバ(50)の直径(D)と本質的に等しいか、あるいはより小さいことを特徴とする請求項1に記載のポンプカプラ(2)。
【請求項3】
前記出力信号ファイバ(50)は、ダブルクラッドファイバか、あるいはマルチクラッドファイバであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプカプラ(2)。
【請求項4】
前記ポンプカプラ(2)は、
NA≦NA
で設計され、ここでNAは、前記キャピラリ管(40)の前記第二の幅狭端部(70)でのポンプ放射の開口数であり、NAは、前記出力信号ファイバ(50)のポンプ導波路の開口数であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のポンプカプラ(2)。
【請求項5】
光ポンプエネルギーを出力する少なくとも1本の出力信号ファイバ(50)と、
前記信号ファイバ(50)に光エネルギーを結合する結合構造(40)と、
前記結合構造(40)に光エネルギーを入力する多数のポンプファイバ(31)と、
前記結合構造(40)を通って信号放射を貫通する信号貫通ファイバ(32)と、
を備えるポンプカプラ(2)の製造方法において、
第一の幅広端部(65)と第二の幅狭端部(70)を有するテーパー状の空洞結合構造(40)を形成し、
前記ポンプファイバ(31)を、前記結合構造(40)の前記幅広端部(65)の端面と接続し、
前記信号貫通ファイバ(32)の周囲に、少なくとも前記結合構造管(40)の前記幅狭端部(70)を縮径する、
ことを特徴とするポンプカプラ(2)の製造方法。
【請求項6】
前記テーパー構造は、前記結合構造(40)の外面をエッチングすることで形成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記テーパー構造は、前記結合構造(40)を引っ張ることで形成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ポンプファイバを前記結合部品(40)と結合する前に、補助具(60)は、前記ポンプファイバを束ねるのに用いられることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2011−507251(P2011−507251A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537478(P2010−537478)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050690
【国際公開番号】WO2009/077636
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(507348746)
【Fターム(参考)】