説明

光ファイバセンサー貼付装置および貼付方法

【課題】過剰な重量負荷を掛けない連続固定敷設用の貼付方法や、ロール52非装着でもローラ22〜28で張力を安定付与できる貼付装置10を実現する。
【解決手段】案内ローラ15,16をトロリー線40に係合させ、取込ローラ22,23にて弱い負荷トルクを掛けながら剥離紙付センサー53を取り込み、軸回転自在な転向ローラ24にて装置内順送経路20を前方へ転向させ、強い負荷トルクの張力付与ローラ25にて装置内順送経路20を前方から後方へ更に転向させ、貼付ローラ27,28にて押し付け貼付を行う。このような光ファイバセンサー貼付装置10をトロリー線40に沿って走行させながら、センサー供給具52から剥離紙付センサー53を光ファイバセンサー貼付装置10へ順次送り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバセンサー貼付装置および光ファイバセンサー貼付方法に関し、詳しくは、トロリー線などの長尺被検体に対して粘着テープ状の光ファイバセンサーを貼り付けるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
施設保全などのために温度や歪の分布を測定したい長尺被検体の典型例として架線や,レール,橋梁などが挙げられ、架線の典型例としてトロリー線が挙げられる(例えば特許文献1参照)。
また、テープ状の長尺支持体に光ファイバ素線を貼着や埋蔵するとともに片面に粘着剤を塗布して連続的に光ファイバセンサー本体を作り、それで出来上がった部分から順次その本体の粘着面に剥離紙を貼り合わせた資材の形に仕上げながら巻き取ることにより、粘着テープ状の光ファイバセンサーを取り扱い易いロール状に丸める手法も開発されている(例えば特許文献2,3参照)。
さらに、温度や歪の分布の正確な測定のためには、光ファイバセンサーが一定張力の掛かった状態で敷設されていることが望まれる(例えば特許文献2,3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平07−300032号公報
【特許文献2】特開2005−326511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[特許文献3] 特願2005−324967号
【0005】
粘着テープ状の光ファイバセンサーは、被検体への固定箇所が連続的にする連続固定敷設が可能なので、点々と離れた箇所において掴持等により固定する謂わば散点固定敷設と比較すると、異常発生箇所の位置特定分解能に優れている。そして、それ以上に、被検体への取付が極めて容易である。
しかしながら、張力を付与した状態での敷設については問題が残されている。というのは、敷設に際しての張力の付与は、被検体にセンサーを弛みなく沿わせるために、或いは、温度分布や歪分布の正確な測定のために、大なり小なり必要となるからである。
【0006】
その点、散点固定敷設では、敷設の1区間毎に所望の張力を付与した状態で固定する操作を次々に行うことで全長均等に張力を付与することが容易であり、また、固定が確実に行えている限り張力の均等性は維持される。
一方、連続固定敷設では事情が異なってくる。それは、散点固定敷設における静的なバッチ作業による張力付加とちがって、張力付加操作と固定操作とを流れ作業的に同時進行させることとなり、敷設後張力の均等性が区間毎に保証される形で逐次確保されて行くものではないということである。
【0007】
特に、トロリー線のように、吊下支持位置毎の敷設作業の一時中断を余儀なくされるケースでは、作業中断前と作業再開後の張力を一致させ且つ中断位置に測定の傷害となるような弛みを生じさせないということが保証の限りでなくなる。因に、敷設後張力のムラは、正確な測定にとって好ましくない上、粘着界面における剪断応力を伴うことから、このムラの経時緩和と同時に粘着界面のすべりによる劣化が進行するという問題を孕んでいる。すなわち、粘着テープ状センサーを張力付加が好適になされた形で敷設する作業に関して手作業には限界があり、要部操作の機械化が望まれる。
【0008】
また、粘着テープ状センサーは、長い測定区間に対応した長尺体であり、通常はロール巻き体をリールから繰り出しつつ敷設に供することとなる。ところが、長尺体ゆえに、ロール巻き体の重量がリールまで含めるとセンサー1km当り10kgといった重さになる。これを、例えばリュックサックで担ぎ、センサーを順次引き出しながら敷設を進めて行くというのでは、労働負荷が大きいばかりでなく、好ましい張力付加を行う上の傷害ともなる。かと云って前記機械化を上記センサー資材まで取込んだ形にすると、トロリー線への敷設等の高所を含めたフィールド作業において望まれるハンドリング適性が、重量と嵩の両面で減殺されてしまう。
ついては、粘着テープ状の光ファイバセンサーの長尺被検体への張力付加を行いながらの連続固定敷設を、高所を含むフィールド作業をも対象として行うことのできる、要部操作が機械化された貼付技術の提供が第一の技術課題となる。
【0009】
そして、光ファイバセンサー貼付装置の軽量化・小型化のためにはリールに光ファイバセンサーのロール巻き体が搭載されたセンサーテープ供給系を光ファイバセンサー貼付装置から外すことが考えられるが、そうすると、光ファイバセンサー貼付装置における光ファイバセンサーの取り込み状態が安定しなくなる。このため、張力付与ローラを配設し、貼着部との間の全区間に亘って所要の張力を光ファイバセンサーに掛けると、張力が不所望に変動したり、光ファイバセンサーの順送りが円滑に行えなくなったりもする。
そこで、センサーテープ供給系の位置取り等に左右されずにローラで張力を安定付与できる連続固定敷設用の光ファイバセンサー貼付装置を実現することが第二の技術課題となる。
【0010】
さらに、長尺被検体がトロリー線などの場合、所々で吊架線とハンガーにて接続されているので、その分離や再接続の作業のため光ファイバセンサー貼付装置の進行がしばしば止められる。そして、このような間欠走行によっても光ファイバセンサーの順送りが円滑でなくなり、さらには、光ファイバセンサーを長尺被検体に押し付けて貼り付けるときの付加張力や押し付け力が不所望に変動したり、その貼り付け位置で光ファイバセンサーが不所望に緩んだり変位したりすることもある。
そこで、間欠走行でも付加張力や押し付け状態が安定する連続固定敷設用の光ファイバセンサー貼付装置を実現することが第三の技術課題となる。
【0011】
また、粘着面に剥離紙の付いている光ファイバセンサーを付設するに際しては、長尺被検体への押し付け貼付に先立って光ファイバセンサーから剥離紙を引き剥がさなければならないが、剥離紙が引剥時や排出時に切れることもあり、そのことに作業者が気づかないまま敷設作業が続けられると大変な事態になってしまう。すなわち、剥離紙が付いたまま粘着せずに設置されていくということである。そして、多くの場合、不具合部分をタッチアップしただけでは済まなくなる。特に、トロリー線のように電車不通過時間帯内という絶対的な作業時間制約の存在するケースでは、既設部分と不具合部分を制約時間内に撤収するという厳しい作業を余儀なくされ、そのあと、敷設を一からやり直すこととなるのである。
そこで、剥離紙の切断を防止すべく剥離を円滑に行うとともに、万一切断したときには速やかに気づくよう剥離機構等に工夫を凝らすことが、第四の技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光ファイバセンサー貼付方法(請求項1)は、上述した第一の技術課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、トロリー線などの長尺被検体に粘着テープ状の光ファイバセンサーを押圧貼付する光ファイバセンサー貼付方法であって、前記光ファイバセンサーを長手方向に順次取り込んで張力を付与した状態で前記長尺被検体に押しつける光ファイバセンサー貼付装置を前記長尺被検体に沿って走行させながら、前記光ファイバセンサーに剥離紙が付けられた剥離紙付センサーを前記光ファイバセンサー貼付装置の近くに侍らせた伴走台車上のリールから前記光ファイバセンサー貼付装置へ順次送り込み、前記剥離紙を順次剥がす過程を経て前記押圧貼付に順次供することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付装置(請求項2)は、上述した第一,第二の技術課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、トロリー線などの長尺被検体に対してその長手方向へ走行しうる状態で係合する案内手段と、光ファイバセンサーを長手方向に順次取り込む取込ローラと、前記光ファイバセンサーに係る取り込み後の装置内順送経路を取り込んだ方向から概ね反転させる軸回転自在な転向ローラと、前記装置内順送経路を再び概ね反転させるとともに軸回転に負荷トルクの掛かる張力付与ローラと、前記装置内順送経路の後尾のところで前記光ファイバセンサーを前記長尺被検体に押し付けて貼り付ける押圧部材とを備えた光ファイバセンサー貼付装置であって、前記取込ローラが軸回転に前記張力付与ローラより弱い負荷トルクの掛かるものであることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の光ファイバセンサー貼付装置(請求項3)は、上述した第一〜第三の技術課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、上記の請求項2記載の光ファイバセンサー貼付装置であって更に、前記押圧部材が、前側に配された押し付け力の弱い仮貼ローラと、後側に配された押し付け力の強い貼付ローラとを具えたものである、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付装置(請求項4)は、上述した第一〜第三の技術課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、上記の請求項3記載の光ファイバセンサー貼付装置であって更に、装置走行について前進は許容するが後退は阻止する後退防止手段が設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付方法(請求項5)は、上述した第一〜第三の技術課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、上記の請求項4記載の光ファイバセンサー貼付装置を用いてトロリー線などの長尺被検体に粘着テープ状の光ファイバセンサーを押圧貼付する光ファイバセンサー貼付方法であって、前記光ファイバセンサー貼付装置を押進操作又は牽引操作により前記長尺被検体に沿って走行させながら、前記光ファイバセンサーに剥離紙が付けられた剥離紙付センサーを前記光ファイバセンサー貼付装置の近くに侍らせた伴走台車上のリールから前記光ファイバセンサー貼付装置へ順次送り込み、前記剥離紙を順次剥がす過程を経て前記押圧貼付に順次供することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付装置(請求項6)は、上述した第一〜第四の技術課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、上記の請求項4記載の光ファイバセンサー貼付装置であって更に、前記光ファイバセンサーの粘着面に予め付けられている剥離紙を引き剥がす剥離機構が前記装置内順送経路のうち前記取込ローラと前記転向ローラとの中間部分に臨んで設けられ、前記転向ローラが前記光ファイバセンサーの前記粘着面の粘着剤に対して非粘着性を示すものからなり、装置走行を手動で行うための手掛ハンドルが前記押圧部材側に偏倚した位置に配設されている、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付方法(請求項7)は、上述した第1〜4課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、上記の請求項6記載の光ファイバセンサー貼付装置を用いてトロリー線などの長尺被検体に粘着テープ状の光ファイバセンサーを押圧貼付す光ファイバセンサー貼付方法であって、前記手掛ハンドルを力点とする押進操作又は牽引操作により前記光ファイバセンサー貼付装置を前記長尺被検体に沿って走行させながら、前記光ファイバセンサーに剥離紙が付けられた剥離紙付センサーを前記光ファイバセンサー貼付装置の近くに侍らせた伴走台車上のリールから前記光ファイバセンサー貼付装置へ順次送り込み、前記剥離機構により前記剥離紙を順次剥がす過程を経て前記押圧貼付に順次供するとともに、前記剥離機構にて前記光ファイバセンサーから引き剥がされた剥離紙を前記装置内順送経路が含まれる面位から遠ざける方向へ横送りして排出することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付装置(請求項8)は、上述した第一,第二,第四の技術課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、上記の請求項2〜請求項4記載の光ファイバセンサー貼付装置であって更に、前記光ファイバセンサーの粘着面に予め付けられている剥離紙を引き剥がす剥離機構が前記装置内順送経路のうち前記取込ローラと前記転向ローラとの中間部分に臨んで設けられ、前記転向ローラが前記光ファイバセンサーの前記粘着面の粘着剤に対して非粘着性を示すものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このような本発明の光ファイバセンサー貼付方法(請求項1)にあっては、光ファイバセンサー貼付装置を走行させることで簡便に連続固定敷設が遂行されるが、その際、光ファイバセンサーが光ファイバセンサー貼付装置の外から該装置へ込まれる。
このようにしたことにより、光ファイバセンサーのロール巻き体を搭載したセンサーテープ供給系が光ファイバセンサー貼付装置から外されるので、光ファイバセンサー貼付装置が人力駆動走行容易なレベルまで軽量・小型になる。
したがって、この発明によれば、第1課題が解決され、高所を含むフィールド作業も容易に行える連続固定敷設用の光ファイバセンサー貼付方法を実現するすることができる。
【0021】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付装置(請求項2)にあっては、案内手段にて長尺被検体に沿った走行が可能となっており、光ファイバセンサーの押し付け貼付に先立つ光ファイバセンサーの取込や張力付与が取込ローラや張力付与ローラにて簡便かつ安価に具現化されており、その張力付与ローラには軸回転に負荷トルクの掛かるものを採用したことにより張力の安定化・一定化が図られており、光ファイバセンサーの着脱ユニットが装備されていなくても装置外から光ファイバセンサーを取込ローラへ送り込めば走行と共に連続固定敷設を行うことができるものとなっている。
【0022】
しかも、取込ローラと張力付与ローラに加えて軸回転自在な転向ローラも設けられ、光ファイバセンサーの装置内順送経路が転向ローラのところでセンサー取込方向から概ね反転させられてから張力付与ローラのところで再び概ね反転させられるようになっている。
そのように装置内順送経路を曲がりくねらせたことにより、複数個のローラの配置状態がコンパクトになるうえ、光ファイバセンサーと張力付与ローラとの摩擦係合が強化されるので、張力付与ローラの負荷トルクが光ファイバセンサーに対して的確に伝達されて、張力が安定する。
【0023】
それに加え、取込ローラにも軸回転に負荷トルクの掛かるものを採用し、このトルクを張力付与ローラの負荷トルクより弱くしたことにより、光ファイバセンサーが転向ローラに軽く巻き付く状態で転向させられることから、取込ローラから張力付与ローラへ至る装置内順送経路における光ファイバセンサーの状態が安定するので、装置外から取込ローラへ送り込まれる光ファイバセンサーについてセンサー自体は装置に順次取り込まれるがその不安定状態の取り込みは断たれるとともに、張力付与ローラにて光ファイバセンサーに付与される張力が更に安定することとなる。
したがって、この発明によれば、第1〜2課題が共に解決され、センサーテープ供給系の位置取り等に左右されずにローラで張力を安定付与できる連続固定敷設用の光ファイバセンサー貼付装置を実現することができる。
【0024】
さらに、本発明の光ファイバセンサー貼付装置(請求項3)にあっては、第1〜2課題を解決した請求項2記載の装置構成が踏襲されており、そのうえで、貼付用の押し付け力を出す押圧部材まで簡便かつ安価なローラで具体化されている。しかも、その具体化に際して、基本的な貼付ローラに加えて、それより押し付け力の弱い仮貼ローラも導入され、この仮貼ローラが貼付ローラの前方に配置されている。
このように二段階の押し付けで貼付が行われるようにしたことにより、貼付ローラのところに位置する光ファイバセンサー部分の状態が走行時でも停止時でも安定するので、貼付ローラによる光ファイバセンサーの押し付け状態が安定することとなる。
したがって、この発明によれば、間欠走行でも押し付け状態の安定な連続固定敷設用の光ファイバセンサー貼付装置を実現することができ、第1〜3課題が総て解決される。
【0025】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付装置(請求項4)にあっては、第1〜3課題を解決した請求項3記載の装置構成が踏襲されており、そのうえで、装置走行について前進は許容するが後退は阻止する後退防止手段が設けられている。そのため、走行駆動を停止たときでも後退のおそれがないので、気軽に使用することができ、例えば手やウインチで押したり引いたりして走行させる場合でも停止時に安心して駆動を休止することができる。すなわち、本発明の光ファイバセンサー貼付方法(請求項5)にあっては、間欠走行でも気軽に実施することができる。
したがって、この発明によれば、第1〜3課題が総て解決されるうえ、連続固定敷設を気軽に行うことができる。
【0026】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付装置(請求項6)にあっては、第1〜3課題を解決したうえ使い易くなった請求項3記載の装置構成が踏襲されており、そのうえで、光ファイバセンサーから剥離紙を引き剥がすのが装置内順送経路のうち取込ローラと転向ローラとの間で行われるようになっている。しかも、転向ローラが光ファイバセンサーの粘着面に粘り着かないようにもなっている。ところで、負荷トルクの大きい張力付与ローラとの摩擦によって光ファイバセンサーの粘着面の損傷を避けるには、張力付与ローラには光ファイバセンサーの非粘着面を掛けることになり、それに伴って転向ローラには光ファイバセンサーの粘着面が掛けられる。
【0027】
そうすると、上述したように転向ローラより上流で光ファイバセンサーから剥離紙が引き剥がされるようにしたことにより、取込ローラの負荷トルクを掛けられた光ファイバセンサー本体と転向ローラ周面との間に剥離紙が巻き込まれて損傷するという不所望な事態の発生が確実に回避される。そのため剥離紙の剥離が円滑に行われ切断が防止される。
さらに、手掛ハンドルが設けられていて装置走行の駆動を手で容易に行えるようになっているが、その手掛ハンドルが剥離機構の後方に配置されていて、剥離紙の引き剥がし状況が自然に作業者の目につくので、剥離紙が切断したときには作業者がそのことに速やかに気づくこととなる。
したがって、この発明によれば、第1〜4課題を総て解決することができる。
【0028】
また、本発明の光ファイバセンサー貼付方法(請求項7)にあっては、第1〜4課題を解決した請求項6記載の装置を用いて連続固定敷設が遂行されるが、その際、剥離紙が手掛ハンドルより前方で装置内順送経路の配設側から不設側へ横送りして排出される。
これにより、引き剥がされた剥離紙が光ファイバセンサー本体に絡まるような不所望な事態の発生が簡便かつ的確に回避されるうえ、剥離紙の排出状態が目視しやすなって剥離紙の切断がより迅速に気づかれることとなる。
したがって、この発明によれば、第1〜4課題が総て解決されるうえ、第4課題は高い水準で解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の光ファイバセンサー貼付装置および貼付方法の一実施形態(第1形態)について、光ファイバセンサー貼付装置10の構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が光ファイバセンサー貼付装置10の右側面図、(b)がそのAA断面矢視図、(c)及び(d)が案内ローラ15とトロリー線40との係合部分の詳細図である。なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルトやナット等の締結具,ギヤやタイミングベルト等の伝動部材,スプリング等の付勢部材などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【0030】
この光ファイバセンサー貼付装置10は、トロリー線40上に立てて用いられその状態で装置内順送経路20と剥離紙順送経路30とが右側面に位置する基板11と、基板11の両面に突き出た手掛ハンドル12と、基板11の右側に片寄せて装着された案内手段13〜16とセンサ順送機構21〜28と剥離機構31〜33とを具えている。
基板11は、剛性のある平坦な鋼板が一般的であるが、防錆重視時にはステンレススチール等が用いられ、軽量化重視時にはアルミニウムプレートやハニカム構造プレート等が用いられる。
手掛ハンドル12は、手を掛けて押したり引いたりし易いよう、基板11を貫通している剛な金属パイプに柔らかいプラスチックグリップ等を被着させたものが良い。
【0031】
案内手段13〜16は、トロリー線40の上に光ファイバセンサー貼付装置10を乗せて走行させることができるよう、基板11の下辺に沿って前後に(即ち図1(a)では右から左に)並んだ何れも軸回転自在な案内ローラ13と案内ローラ14と案内ローラ15と案内ローラ16とからなる。案内ローラ13は基板11の前端部に一対が設けられていてトロリー線40を両脇から挟むようになっており、案内ローラ14は基板11の前半部に一個が設けられていてトロリー線40の上に乗るようになっており、案内ローラ15は基板11の後半部に一対が設けられていてトロリー線40を両脇から挟むようになっており、案内ローラ16は案内ローラ15の直ぐ後方に一対が設けられていてやはりトロリー線40を両脇から挟むようになっている。案内ローラ15は(図1(b)〜(c)参照)、案内ローラ16も同様であるが、両脇への離隔距離が調節可能になっており、離隔距離を縮めながらローラ鋭角端をトロリー線40の側面溝41に差し込むことにより、長手方向への走行を許容するが走行しても係合状態が維持されるものとなっている。
【0032】
センサ順送機構21〜28は、光ファイバセンサー(光ファイバセンサー本体54に粘着面セパレーターとして剥離紙55が付けられたもの又は光ファイバセンサー本体54だけのもの)を長手方向へ順送りするためのものであり、光ファイバセンサーに係る装置内順送経路20に沿って配置されている。装置内順送経路20は、装置コンパクト化のため及びセンサーへの張力付与をローラの摩擦力で行うため、前半部がZ形に折り畳まれている。具体的には、基板11の前端上部に付設され前方に突き出て装置内順送経路20の始端となる取込ガイド21と、そこから光ファイバセンサー正確には剥離紙付センサー53を長手方向に順次取り込むため基板11の前半部分に隣接配置された一対の取込ローラ22,23と、基板11の前後方向ほぼ中央に付設され光ファイバセンサーに係る取り込み後の装置内順送経路20を後ろ向きから前向きへ転向させることでセンサー取込方向から概ね反転させる軸回転自在な転向ローラ24と、転向ローラ24の前方に配置されていて装置内順送経路20を前方から後方へ更に転向させることで再び概ね反転させる張力付与ローラ25と、基板11の後半部分に付設されていて装置内順送経路20の後尾のところで光ファイバセンサー正確には剥離紙55引き剥がし後の光ファイバセンサー本体54をトロリー線40に押し付けて貼り付ける押圧部材26〜28とが、具わっている。
【0033】
押圧部材26〜28は、前側に配された押し付け力の弱い仮貼ローラ26と、後側に配された押し付け力の強い一対の貼付ローラ27,28とを具えている。
貼付ローラ27,28は、光ファイバセンサー本体54とトロリー線40を纏めて上下から挟めるよう、基板11の後端部かつ下辺部に配置され具体的には案内ローラ16の後方に設けられて、上下方向へ接離可能に且つ軸回転自在に支持されている。貼付ローラ27,28のうち何れか一方または双方が図示しないバネ等にて相互接近側に付勢されており、それに基づいて、貼付ローラ27,28は、挟み込んだ光ファイバセンサー本体54に対して、その粘着面をトロリー線40の上面にしっかり粘着させるのに足りる強い押し付け力を、掛けるものとなっている。
【0034】
貼付ローラ27,28の押し付け力は、図示しない調節ボルト等にて調整できるようになっており、調整範囲は例えば10N〜1000N又は圧力換算で例えば2MPa〜200MPaである。このような貼付ローラ27,28の何れか一方または双方には後退防止手段が付設されている。後退防止手段は、付設先ローラの回転軸に係合するバックラッシュのないカムクラッチ等で簡便かつ安価に具現化され、付設先ローラの順方向回転は自由に行わせるが逆回転は止めることで、装置走行について前進は許容するが後退は阻止するものとなっている。
仮貼ローラ26は、装置内でトロリー線40との相対位置が最も安定する部位である案内ローラ15,16の中間に配置され、軸回転自在に支持されており、そこで光ファイバセンサー本体54をトロリー線40上面に仮貼りする小さな押し付け力を出すため例えば柔らかいゴムローラで作られている。その押し付け力は、0.1N〜10N程度や圧力換算で0.02MPa〜2MPa程度である。
【0035】
張力付与ローラ25は、軸回転に負荷トルクが掛かるよう、トルク発生手段が付加されている。トルク発生手段は、電力供給のない磁力を利用したマグネット式ブレーキ等で具現化され、例えば基板11の裏面に装着されて、少なくとも張力付与ローラ25の回転時には所要の負荷トルクを掛けるようになっている。負荷トルクは、光ファイバセンサー本体54に適当な張力たとえば0.5%の伸び歪を生じさせる張力を付与するためなので、例えば0.05Nm〜0.2Nmの範囲で調節できるようになっている。
取込ローラ22,23は、取込ローラ22の外周部分が取込ローラ23の外周面の溝に入り込んでおり、剥離紙付センサー53を挟んで逃がさないようになっている。取込ローラ22,23のうち何れか一方または双方に対しても、軸回転に負荷トルクが掛かるよう、張力付与ローラ25のと同様の又は別構成のトルク発生手段が付加されているが、こちらの負荷トルクは、張力付与ローラ25より弱く、例えば0.01Nm〜0.05Nmの範囲で調節できるものとなっている。
【0036】
剥離機構31〜33は、剥離紙付センサー53から剥離紙55を引き剥がして排出するためのものであり、剥離紙順送経路30に沿って配置されている。剥離紙順送経路30は、張力付与ローラ25のところで装置内順送経路20から分岐して始まり、装置内順送経路20に絡まないよう装置前方へ延びている。具体的には、取込ローラ22,23に連動するよう取込ローラ22,23の下方に配置された一対の剥離ローラ31,32と、取込ガイド21の下方で基板11の前端に付設され前方に突き出て剥離紙順送経路30の終端となる排出ガイド33とが、具わっている。
剥離ローラ31,32は、隣接していて、剥離ローラ31の外周部分が剥離ローラ32の外周面の溝に入り込んでおり、剥離紙55を挟んで引っ張り而も逃がさないようになっている。
【0037】
この実施形態(第1形態)について、上記の光ファイバセンサー貼付装置10を使用して行う光ファイバセンサー貼付方法について、使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1は、(c)及び(d)が案内ローラ15とトロリー線40との係合部分の詳細図、(e)が作業現場の外観図である。
【0038】
剥離紙付センサー53は、例えば(特許文献2,3参照)、可撓性プラスチックテープに光ファイバ素線を貼着や埋蔵するとともに片面に粘着剤を付けた光ファイバセンサー本体54と、その粘着面を使用時まで保護するため該粘着面に軽く貼られた剥離紙55とからなり、ロール状に纏められている。
トロリー線40は(図1(e)参照)、側面溝41に下端を係合させたハンガー42を介して、上空の吊架線43により、高所に水平保持されているので、それに対する光ファイバセンサーの敷設作業(正確には剥離紙付センサー53を供給して光ファイバセンサー本体54だけを押圧貼付する敷設作業)は作業台50に乗って行う。
【0039】
作業台50は、図示しない軌陸車などの作業車にリフト51を介在させて搭載されており、作業車に随伴して水平移動し、リフト51にて昇降するようになっている。作業台50には、センサー供給具52が搭載され、作業者56が乗れるようになっている。作業者56は、図示のように一人でも良いが、光ファイバセンサー貼付装置10を送光させる者や、センサー供給具52から剥離紙付センサー53を引き出して光ファイバセンサー貼付装置10へ送り込む者、光ファイバセンサー貼付装置10から排出された剥離紙55を始末する者、前方のハンガー42を外す者、後方のハンガー42を付け直す者などで、作業を分担すると能率が良い。
【0040】
作業に先立って、作業者56は、光ファイバセンサー貼付装置10を積み込み、センサー供給具52に剥離紙付センサー53のロールを装着して、剥離紙付センサー53の先端をセンサー供給具52から引き出して光ファイバセンサー貼付装置10に掛け回す。具体的には(図1(a)参照)、装置内順送経路20に取込ガイド21から剥離紙付センサー53を送り込み、張力付与ローラ25のところで剥離紙55を引き剥がして剥離紙順送経路30へ分岐させる一方、光ファイバセンサー本体54は張力付与ローラ25以降の装置内順送経路20へ送り込む。これによって、光ファイバセンサーは、剥離紙付センサー53の状態でセンサー供給具52から解けて出て、自由状態で取込ガイド21に達し、取込ローラ22,23に挟持拘束され、転向ローラ24に剥離紙55側を当てて転向し、張力付与ローラ25には非粘着面側を擦りながら光ファイバセンサー本体54だけが再転向する。剥離紙55は、剥離ローラ31,32に挟持拘束され、排出ガイド33にて排出される。光ファイバセンサー本体54は、露出した粘着面を下にして、仮貼ローラ26の下を通り、さらに貼付ローラ27の下を通って、トロリー線40の上面に押し付けられる、という状態になる。
【0041】
それから、作業台50をトロリー線40の近くまで上昇させて(図1(e)参照)、作業台50上の作業者56は、案内ローラ15,16を両脇に離隔させ(図1(c)参照)、貼付ローラ27,28を一時的にバネ力に反して上下に離隔させ、手掛ハンドル12を持って、光ファイバセンサー貼付装置10を持ち上げ、さらに光ファイバセンサー貼付装置10をトロリー線40の上に乗せて(図1(e)参照)、案内ローラ15,16を接近させてトロリー線40の側面溝41に係合させ(図1(d)参照)、貼付ローラ27,28を接近させて押し付け力を出させる。これによって(図1(e)参照)、案内ローラ13がトロリー線40を両側から挟み、案内ローラ14がトロリー線40上を直に転動し、案内ローラ15,16がトロリー線40の側面溝41に両側から嵌合し、仮貼ローラ26及び貼付ローラ27が光ファイバセンサー本体54をトロリー線40の上面に押し付け、貼付ローラ28が貼付ローラ27と共にトロリー線40を上下から挟み、光ファイバセンサー貼付装置10がトロリー線40に沿って走行可能な状態になる。
【0042】
こうして、準備が調ったら、作業台50上の作業者56は手掛ハンドル12を押したり引いたりして光ファイバセンサー貼付装置10を前進させる(図1(e)大矢印を参照)。そうすると、光ファイバセンサー貼付装置10の進行に伴い、光ファイバセンサー本体54がトロリー線40上面へ仮貼ローラ26によって軽く押し付けられてから更に貼付ローラ27によって強く押し付けられて貼り付けられる。貼り付けられた光ファイバセンサー本体54はトロリー線40に固定されて光ファイバセンサー貼付装置10から取り残されるので、装置内順送経路20を後方へ相対移動することになり、これによって張力付与ローラ25が回転させられる。張力付与ローラ25の回転には強い負荷トルクが掛かるので、光ファイバセンサー本体54に張力が付与されて、光ファイバセンサー本体54が伸びるため、負荷トルクの設定に応じた所望の初期歪が付与された状態で光ファイバセンサー本体54が敷設される。初期歪が不要な場合は光ファイバセンサー本体54の変形矯正に足りる程度に張力付与ローラ25の負荷トルクが下げられる。
【0043】
張力付与ローラ25より上流の装置内順送経路20においては、光ファイバセンサー本体54に剥離紙55が付いていて光ファイバセンサーが未だ剥離紙付センサー53の状態であるが、そこでも剥離紙付センサー53が順送りされて相対移動する。その際、取込ローラ22,23の回転には軽い負荷トルクが掛かるため、剥離紙付センサー53は弛んだり踊ったりしないで転向ローラ24及び張力付与ローラ25にピッタリ巻き付くので、張力付与ローラ25が非粘着面との摩擦にて力伝達を行うものであっても安定動作し、ひいては自由状態の剥離紙付センサー53が簡便な取込ガイド21を介して取込ローラ22,23に安定状態で取り込まれる。また、取込ローラ22,23に連動して剥離ローラ31,32が回転するが、それによって、剥離紙55が、張力付与ローラ25のところの剥離紙付センサー53から引き剥がされるとともに、排出ガイド33へ送り出されて、排出される。
【0044】
こうして、光ファイバセンサー貼付装置10の走行に伴って、トロリー線40のうち光ファイバセンサー貼付装置10の通過したところに光ファイバセンサー本体54が貼り付けられるとともに、未だ貼り付けられていない剥離紙付センサー53が光ファイバセンサー貼付装置10の外に置かれたセンサー供給具52から光ファイバセンサー貼付装置10へ順次送り込まれる。
その連続固定敷設実行中に、前方のハンガー42の取り外しや,後方のハンガー42の付け直しが間に合わなくなったときには、その付随作業が終了するまで、光ファイバセンサー貼付装置10の走行を止めて一時停止させるが、光ファイバセンサー貼付装置10は後退や逆走しないようになっているので、光ファイバセンサー貼付装置10の走行を担当している作業者56は手掛ハンドル12に掛けている手を気軽に緩めることができる。
【0045】
本発明の光ファイバセンサー貼付装置および貼付方法の他の実施形態(第2形態)について、光ファイバセンサー貼付装置60の構成を、図面を引用して説明する。図2は、(a)が光ファイバセンサー貼付装置60の右側面図、(b)がそのAA断面矢視図である。これらの図示に際しても発明の説明に必要なものや関連するものだけを図示した。
【0046】
この光ファイバセンサー貼付装置60が上述した光ファイバセンサー貼付装置10と相違するのは、剥離ローラ31,32が配置換えされて装置内順送経路20の上方に来ている点と、排出ガイド33が省かれて代わりに切欠状の排出溝61が基板11の上辺に形成されている点と、転向ローラ24が光ファイバセンサー本体54の粘着面の粘着剤に対して非粘着性を示すものになっている点である。
【0047】
剥離ローラ31,32は、装着位置が換わっても依然として、光ファイバセンサー本体54の粘着面に予め付けられている剥離紙55を引き剥がす剥離機構であるが、装置内順送経路20のうち取込ローラ22,23と転向ローラ24との中間部分のうち取込ローラ22寄りのところに臨んでおり、そのため、取込ローラ22の近くで光ファイバセンサー本体54から剥離紙55を引き剥がして上側後方へ送り出すようになっている。
排出溝61は、その剥離紙55送出先に位置しており、剥離紙55が円滑に通り抜けるよう、溝内の表面が滑らかに仕上げられ、溝の角部が丸く面取りされている。
これにより、光ファイバセンサー貼付装置60は、その左右のうち装置内順送経路20の配設された右側から不設側の左方へ横送りして剥離紙55を排出するものとなっている。
【0048】
これらの排出溝61及び剥離ローラ31,32は、装置走行を手動で行うための手掛ハンドル12の前方に位置しており、言い換えれば、手掛ハンドル12が、取込ローラ22の近くから剥離ローラ31,32を経て排出溝61を横切る剥離紙順送経路30の後方に、位置している。
転向ローラ24は、光ファイバセンサー本体54との接触面が光ファイバセンサー本体54の粘着剤に粘着しないよう、例えばポリアセタールや超高分子量ポリエチレンからなる。
【0049】
この実施形態(第2形態)について、上記の光ファイバセンサー貼付装置60を使用して行う光ファイバセンサー貼付方法について、使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図2(c)は作業時のAA断面矢視図である。
全体の作業内容や装置動作は上述したのと大差ないので、以下、上例との相違点を述べる。
【0050】
準備段階で相違するのは、光ファイバセンサーを光ファイバセンサー貼付装置60に掛け回す際に、取込ローラ22,23と転向ローラ24との間で、剥離紙付センサー53から剥離紙55を分岐させて剥離ローラ31,32に挟んでから排出溝61を通して基板11の裏側へ抜くとともに(図2(c)参照)、光ファイバセンサー本体54を半回転捩って、転向ローラ24には光ファイバセンサー本体54の粘着面を当て、取込ローラ23には剥離紙付センサー53の非粘着面を当て、取込ローラ22には剥離紙付センサー53の剥離紙55側を当てる、という点である。
【0051】
そして、準備が調ったら上述したのと同様にして作業者56が手掛ハンドル12を押したり引いたりして光ファイバセンサー貼付装置60をトロリー線40上で前進させると、上述したのと同様にして光ファイバセンサー本体54がトロリー線40上面に貼り付けられる。一方、剥離紙55は、装置内順送経路20における転向ローラ24の下流でなく上流で剥離ローラ31,32によって光ファイバセンサー本体54から引き剥がされ、排出溝61へ送り出される。そして、排出溝61を通過して基板11の裏側を垂れ下がって降りるが、この排出溝61の辺りは手掛ハンドル12に手を掛けている作業者の目に付きやすいところなので、剥離紙55が切断したり絡まって排出不調になったときには、そのことが直ちに判明する。
【0052】
また、このように装置内順送経路20からの剥離紙順送経路30の分岐点が転向ローラ24より上流に移ったことによって、転向ローラ24の外周面には光ファイバセンサー本体54の粘着剤が直に接触することになるが、転向ローラ24が非粘着性を示すので、転向ローラ24に粘着剤が付くおそれがなく、転向ローラ24の自由回転ひいては光ファイバセンサー本体54の自然な転向が確保される。この好ましい状態は、装置内順送経路20における転向ローラ24近傍で光ファイバセンサー本体54に掛かる張力を多少なら増大させても、維持される。
【0053】
ところで、剥離紙55が転向ローラ24の上流で剥離せずに光ファイバセンサー本体54に付いていて転向ローラ24に直接接触するようになっている場合、取込ローラ22,23の負荷トルクを増すと、早々に、剥離紙55が皺よったり切れたりする。そして、その影響で粘着剤が不所望に変形してしまう。
これに対し、光ファイバセンサー貼付装置60にあっては、転向ローラ24のところで剥離紙55の損傷するのをおそれることなく、取込ローラ22,23の負荷トルクを増すことが許容される。
そのため、例えば、張力付与ローラ25での摩擦による光ファイバセンサー本体54への付与張力の増強や、取込ローラ22,23での剥離紙付センサー53の取り込み力の増強、取り込み後の剥離紙付センサー53の静定力の増強などを目的として、取込ローラ22,23の負荷トルクを調整する際、その調整が広範囲に亘って許容され而も気軽に行える。
【0054】
[その他]
上記の各実施形態では、長尺被検体が空中に架け渡されたトロリー線40であったが、長尺被検体は、案内走行の可能な長尺物であれば、本発明の光ファイバセンサー貼付装置および光ファイバセンサー貼付方法を適用することができる。
上記の各実施形態では、人手だけで光ファイバセンサー貼付装置の走行駆動を行っていたが、例えばウインチ等を併用しても良い。
上記の各実施形態では、装置内順送経路20が基板11の右側に配置されていたが、装置内順送経路20は左側にあっても良い。
上記の各実施形態では、光ファイバセンサー本体54の粘着面に剥離紙55を仮付けして剥離紙付センサー53を巻き取っていたが、剥離紙としての役目を果たせれば紙である必要はないので、剥離紙55に代えて、例えば薄い不織布やプラスチックフィルムなどからなる剥離紙状部材を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態(第1形態)について、(a)が光ファイバセンサー貼付装置の右側面図、(b)がそのAA断面矢視図、(c)及び(d)が案内ローラとトロリー線との係合部分の詳細図、(e)が作業現場の外観図である。
【図2】本発明の他の実施形態(第2形態)について、(a)が光ファイバセンサー貼付装置の右側面図、(b)がそのAA断面矢視図、(c)が作業時のAA断面矢視図である。
【符号の説明】
【0056】
10…光ファイバセンサー貼付装置、11…基板、
12…手掛ハンドル、13,14,15,16…案内ローラ、
20…装置内順送経路、21…取込ガイド、
22,23…取込ローラ、24…転向ローラ、25…張力付与ローラ、
26…仮貼ローラ(押圧部材)、27,28…貼付ローラ(押圧部材)、
30…剥離紙順送経路、31,32…剥離ローラ、33…排出ガイド、
40…トロリー線(長尺被検体)、41…側面溝、42…ハンガー、43…吊架線、
50…作業台、51…リフト、52…センサー供給具、
53…剥離紙付センサー、54…光ファイバセンサー本体、
55…剥離紙(粘着面セパレーター)、56…作業者、
60…光ファイバセンサー貼付装置、61…排出溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロリー線などの長尺被検体に粘着テープ状の光ファイバセンサーを押圧貼付する光ファイバセンサー貼付方法であって、前記光ファイバセンサーを長手方向に順次取り込んで張力を付与した状態で前記長尺被検体に押しつける光ファイバセンサー貼付装置を前記長尺被検体に沿って走行させながら、前記光ファイバセンサーに粘着面セパレーターとして貼付されている剥離紙が付けられた剥離紙付センサーを前記光ファイバセンサー貼付装置の近くに侍らせた伴走台車上のリールから前記光ファイバセンサー貼付装置へ順次送り込み、前記剥離紙を順次剥がす過程を経て前記押圧貼付に順次供することを特徴とする光ファイバセンサー貼付方法。
【請求項2】
トロリー線などの長尺被検体に対してその長手方向へ走行しうる状態で係合する案内手段と、光ファイバセンサーを長手方向に順次取り込む取込ローラと、前記光ファイバセンサーに係る取り込み後の装置内順送経路を取り込んだ方向から概ね反転させる軸回転自在な転向ローラと、前記装置内順送経路を再び概ね反転させるとともに軸回転に負荷トルクの掛かる張力付与ローラと、前記装置内順送経路の後尾のところで前記光ファイバセンサーを前記長尺被検体に押し付けて貼り付ける押圧部材とを備えた光ファイバセンサー貼付装置であって、前記取込ローラが軸回転に前記張力付与ローラより弱い負荷トルクの掛かるものであることを特徴とする光ファイバセンサー貼付装置。
【請求項3】
前記押圧部材が、前側に配された押し付け力の弱い仮貼ローラと、後側に配された押し付け力の強い貼付ローラとを具えたものである、ことを特徴とする請求項2記載の光ファイバセンサー貼付装置。
【請求項4】
装置走行について前進は許容するが後退は阻止する後退防止手段が設けられていることを特徴とする請求項3記載の光ファイバセンサー貼付装置。
【請求項5】
請求項4記載の光ファイバセンサー貼付装置を用いてトロリー線などの長尺被検体に粘着テープ状の光ファイバセンサーを押圧貼付する光ファイバセンサー貼付方法であって、前記光ファイバセンサー貼付装置を押進操作又は牽引操作により前記長尺被検体に沿って走行させながら、前記光ファイバセンサーに粘着面セパレーターとして貼付されている剥離紙が付けられた剥離紙付センサーを前記光ファイバセンサー貼付装置の近くに侍らせた伴走台車上のリールから前記光ファイバセンサー貼付装置へ順次送り込み、前記剥離紙を順次剥がす過程を経て前記押圧貼付に順次供することを特徴とする光ファイバセンサー貼付方法。
【請求項6】
前記光ファイバセンサーに粘着面セパレーターとして貼付されている剥離紙を引き剥がす剥離機構が前記装置内順送経路のうち前記取込ローラと前記転向ローラとの中間部分に臨んで設けられ、前記転向ローラが前記光ファイバセンサーの前記粘着面の粘着剤に対して非粘着性を示すものからなり、装置走行を手動で行うための手掛ハンドルが前記押圧部材側に偏倚した位置に配設されている、ことを特徴とする請求項4記載の光ファイバセンサー貼付装置。
【請求項7】
請求項6記載の光ファイバセンサー貼付装置を用いてトロリー線などの長尺被検体に粘着テープ状の光ファイバセンサーを押圧貼付す光ファイバセンサー貼付方法であって、前記手掛ハンドルを力点とする押進操作又は牽引操作により前記光ファイバセンサー貼付装置を前記長尺被検体に沿って走行させながら、前記光ファイバセンサーに粘着面セパレーターとして貼付されている剥離紙が付けられた剥離紙付センサーを前記光ファイバセンサー貼付装置の近くに侍らせた伴走台車上のリールから前記光ファイバセンサー貼付装置へ順次送り込み、前記剥離機構により前記剥離紙を順次剥がす過程を経て前記押圧貼付に順次供するとともに、前記剥離機構にて前記光ファイバセンサーから引き剥がされた前記剥離紙を前記装置内順送経路が含まれる面位から遠ざける方向へ横送りして排出することを特徴とする光ファイバセンサー貼付方法。
【請求項8】
前記光ファイバセンサーに粘着面セパレーターとして貼付されている剥離紙を引き剥がす剥離機構が前記装置内順送経路のうち前記取込ローラと前記転向ローラとの中間部分に臨んで設けられ、前記転向ローラが前記光ファイバセンサーの前記粘着面の粘着剤に対して非粘着性を示すものである、ことを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載された光ファイバセンサー貼付装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−164555(P2008−164555A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55(P2007−55)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(591019656)理研電線株式会社 (12)
【出願人】(000208695)第一高周波工業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】