説明

光ファイバセンサ

【課題】光干渉信号出力をセンサ信号とするセンサでは、光干渉信号方式としてホモダイン干渉方式があり、センサの構成は簡単であるが、安定な動作を得るには、使用部品に対し厳しい工作精度と熱膨張対策が必要であると共に、センサ信号として変動できる位相範囲は±90度以内に限られていた。
【解決手段】干渉計の入力を周期性光パルスとし、参照光パルスの前半と後半で位相を90度ずらせて、計測光パルスと干渉させることにより、2つの干渉出力i、jを得て、その参照光と計測光とから2つの余弦信号cosθi、cosθjを算出して余弦曲線上に位置を定め、その角度θi、θjを求めることにより、干渉光のレベル、位相変動の影響を除外するとともに、1周期前との角度の差分を積算して出力することにより、センサ信号として変動できる位相範囲が±90度を超えることを許容する光ファイバセンサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバが外圧により、そこを通過する光信号の位相に変化を及ぼす特性を利用した光ファイバセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバセンサは、電磁的影響を受けないことから、従来の電気信号センサに比べて、センサ信号を安定に長距離伝送することができる。光センサに利用される光干渉方式としては、同じ周波数の光を干渉させるホモダイン方式と、異なる周波数の光を干渉させるヘテロダイン方式がある。前者のホモダイン方式は構成が簡単、かつセンサ部分を無電源とすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のホモダイン方式では、干渉入力となる参照光と計測光の強度変動及び干渉出力の光の強度変動は干渉出力信号の誤差となる欠点があった。また、従来のホモダイン方式では、参照光と計測光の位相関係が、位相差90度に動作点を置くことが最も直線性の良い設定となるが、参照光と計測光の光路長を一定に保つには、高い工作精度を要すとともに、熱膨張に対しても一定関係を保つ必要があるなど、製造上の難しさがあった。さらに、従来のホモダイン方式では、参照光と計測光の位相差を90度に置き、位相変動の最大は±90度であり、これを超えることは原理上不可能であった。
【0004】
本発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、干渉させる光の強度変動及び干渉させた後の光の強度変動による干渉出力に与える影響を除外することが可能になると共に、センサ信号として変動できる位相範囲が±90度を超えることを許容する光ファイバセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、光干渉信号出力をセンサ信号とする光ファイバセンサに関するものであり、本発明の上記目的は、光パルス幅tの周期性光パルスを光分波器により参照光パルスと計測光パルスの2波に分波し、前記参照光パルスのパルス幅tの前半を0度、後半を90度位相変調してt時間遅延させた後の参照光パルスと前記計測光パルスとを光合波器により合波し、前方に計測光、後方に90度位相変調された参照光パルスが時分割光多重化された光パルスを計測用光多重パルスとして出力する計測用光信号発生部を備えることによって達成される。
【0006】
さらに、本発明の上記目的は、前記計測用光多重パルスを光分波器により2波に分波し、一方の分波にセンサ信号として取り込む位相変化を与えてt時間遅延させた後に他方の分波と合波することにより、前方に前記他方の分波の前半分(R)、中間に前記他方の分波の中の参照光前半(0度)部分と前記一方の分波の中の計測光部分とが重なった第1光干渉部分(I1)並びに前記他方の分波の中の参照光後半(90度)部分と前記一方の分波の中の計測光部分とが重なった第2光干渉部分(I2)、及び後方に前記一方の分波の後半分(S)を多重化させて、時分割多重光4信号(R、I1、I2、S)として出力するセンサ部を備えること、
前記時分割多重光4信号(R、I1、I2、S)を電気信号に変換し、電気信号値r、i1、i2、sを得て、干渉時の計測光と参照光との位相差をθとして、参照光位相0度におけるcosθ1=(i1−r−s)/2√(r・s)と参照光位相90度におけるcosθ2=(i2−r−s)/2√(r・s)を算出し、前記cosθ1と前記cosθ2との大きさ比較と、前記cosθ1と前記cosθ2との絶対値比較とにより、余弦曲線上に前記cosθ1及び前記cosθ2の位置を定め、角度変換によりθ1及びθ2を求め、1周期前に求めた角度変換をθ1a、θ2aとして、1周期前との前記位相差θの差分Δθ1=θ1−θ1a、Δθ2=θ2−θ2aを求めて、Δθ1とΔθ2のうち、前記cosθ1と前記cosθ2の絶対値比較で小さい方の差分をΔθとして選択し、毎周期の前記Δθの積算値θsをセンサ出力とする演算処理部を備えること、
によってそれぞれ一層効果的に達成される。
【0007】
本発明では、測定用の光信号として周期性光パルスを使用して、その周期ごとに参照光、計測光及びその干渉光から、参照光と計測光の位相差θとして、そのcosθを求める。
【0008】
本発明では、90度異なる2つの参照光と計測光との2つの干渉出力から、90度異なる2つのcosθを得る。また、本発明では、90度異なる参照光と計測光から2つのcosθが得られ、そのどちらかは常に直線性の良い領域(±1/√2以内)にある。そして、本発明では、90度異なる参照光と計測光との2つの干渉光より得られる2つのcosθの条件比較から、余弦曲線上に2つのcosθ位置が、正しく定められる。また、本発明では、1周期前の余弦曲線上のcosθとの位置の変化を位相差で求めることにより、その周期の間のおける位相変動分を検出する。さらに、本発明では、cosθの周期ごとの位相変動分を積算するとすることにより、±90度を超えた出力範囲とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前方に計測光、後方に90度位相変調された参照光パルスが時分割光多重化された光パルスを計測用光多重パルスとして出力する構成としているので、干渉させる光の強度変動及び干渉させた後の光の強度変動による干渉出力に与える影響を除外することが可能になる。そのため、センサ入力となる参照光と計測光のレベルが一定に保つことができると共に、干渉動作点を両光の位相差が90度に保つことができるなど、安定な動作を得ることが可能になる。さらに、センサ信号として変動できる位相範囲(許容範囲)を、±90度を超えた範囲とすることが可能となる。
【0010】
詳しくは、本発明によれば、干渉させる光の強度変動、干渉させた後の光の強度変動による干渉出力に与える影響はcosθを求めることにより、除外できる。また、本発明によれば、90度異なる2つの参照光と計測光との2つの干渉出力として、2つのcosθを得ることにより、参照光と計測光との位相差がどこにあっても、歪の少ない出力を選択できることから、干渉計を構成する部品の精度、熱膨張による光路長の変動などの許容範囲を広げることができるため、製造コストを安くできる。
【0011】
さらに、本発明によれば、周期ごとの位相変動分を積算して干渉出力にできるため、周期を短くすればするほど、積算数を増やすことができ、従来方式の±90度の限度を超えて位相変動範囲を広げることができる。また、本発明によれば、位相変動範囲を広げることにより、センサとしての感度を高めること、ダイナミックレンジを広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る光ファイバセンサの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る光ファイバセンサの動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、干渉計の入力を周期性光パルスとし、参照光パルスの前半と後半で位相を90度ずらせて、計測光パルスと干渉させることにより、2つの干渉出力i、jを得て、その参照光と計測光とから2つの余弦信号cosθi、cosθjを算出して余弦曲線上に位置を定め、その角度θi、θjを求めることにより、干渉光のレベル、位相変動の影響を除外するとともに、1周期前との角度の差分を積算して出力することにより、センサ信号として変動できる位相範囲が±90度を超えることを許容できるようにしている。
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る光ファイバセンサの構成例を示すブロック図であり、1は計測用光信号発生部、2はセンサ部、3は演算処理部を示している。
【0016】
本発明に係る光ファイバセンサは、パルス幅tの周期性光パルスの前半を0度,後半を90度位相変調してt時間遅延させた後の参照光パルスと上記光パルスを分波して得た計測光パルスとを合波した計測用光多重パルスf1を発生する計測用光信号発生部1と、計測用光多重パルスf1を第1分波と第2分波とに分波した後に、第2分波にセンサ信号として取り込む位相変化を与えると共にt時間遅延させた後の分波と第1分波とを合波した時分割多重光信号f2を出力するセンサ部2と、干渉時の計測光と参照光との位相差をθとして、時分割多重光信号f2から参照光位相0度における余弦信号cosθ1と参照光位相90度における余弦信号cosθ2とを算出して余弦曲線上での角度θ1とθ2とを算出し、算出したθ1とθ2を要素とする信号θsをセンサ出力とする演算処理部3と、を備えている。
【0017】
上記時分割多重光信号f2は、第1分波の前半分(R)、第1分波中の位相が0度の参照光部と第2分波中の計測光部分とが重なった第1光干渉部分(I1)、第1分波中の位相が90度の参照光部と第2分波中の計測光部分とが重なった第2光干渉部分(I2)、及び第2分波の後半分(S)を信号成分として含む時分割多重光4信号(R、I1、I2、S)であり、演算処理部3では、時分割多重光4信号の4つの成分値(r、i1、i2、s)を得て、後述の演算式(数1、数2)によりcosθ1とcosθ2を算出する形態としている。
【0018】
次に、図1に示される光ファイバセンサの各部1〜3の構成について詳細に説明する。
【0019】
先ず、計測用光信号発生部1の構成について説明する。
【0020】
計測用光信号発生部1は、電気信号パルスgと光パルス信号b(電気信号パルスaを変換した光パルス幅tの周期性光パルス)を発生するパルス信号発生手段としての「パルス信号発生器11及び電気−光変換器12」と、光パルス信号bを2波に分波し、一方を参照光パルスc12、他方を計測光パルスc11として送出する光分波手段としての「光分波器13」と、上記参照光パルスc12のパルス幅tの前半を0度、後半を90度位相変調する位相変調手段としての「位相変換器14」と、位相変調された参照光パルスe1をt時間遅延させる遅延手段としての「遅延ファイバ15」と、遅延させた後の参照光パルスd1と光分波器13により分波された計測光パルスc11とを合波して出力する光合波手段としての「光合波器16」と、を有して構成される。図1中の位相信号発生器17は、パルス信号発生器11からの電気信号パルスgを駆動信号(位相信号)g1として送出する位相信号発生手段であり、前述の位相変換器14は、位相信号発生器17からの駆動信号gにより駆動される構成としている。
【0021】
本実施の形態では、計測用光信号発生部1は、光合波器16により前述の参照光パルスd1と計測光パルスc11とを合波し、前方に計測光、後方に90度位相変調された参照光パルスを時分割光多重化して、計測用光多重パルスf1として出力する形態としている。
【0022】
次に、センサ部2の構成について説明する。
【0023】
センサ部2は、計測用光信号発生部1から出力される計測用光多重パルスf1を入力して一方と他方の2波c22、c21に分波する光分波手段としての「光分波器21」と、一方の分波c22にセンサ信号として取り込む位相変化を与える位相変調手段としての「位相変換器22」(及び「位相信号発生器25」)と、位相変化を受けた分波e2をt時間遅延させる遅延手段としての「遅延ファイバ23」と、遅延させた後の分波d2と他方の分波c21とを合波する光合波手段としての「光合波器24」と、を有して構成される。
【0024】
本実施の形態では、センサ部2は、光合波器24により、上記分波d2と分波c21とを合波することにより、前方に他方の分波c21の前半分(R)、中間に他方の分波c21の中の参照光前半部分(位相が0度の参照光部)と一方の分波c22の中の計測光部分とが重なった第1光干渉部分(I1)並びに他方の分波c21の中の参照光後半部分(位相が90度の参照光部)と一方の分波c22の中の計測光部分とが重なった第2光干渉部分(I2)、及び、後方に一方の分波c22の後半分(S)を含む「時分割多重光4信号f2(R、I1、I2、S)」として出力する形態としている。
【0025】
次に、演算処理部3の構成について説明する。
【0026】
演算処理部3は、センサ部2から出力される時分割多重光4信号f2(R、I1、I2、S)を電気信号h1に変換する光−電気変換手段としての「光−電気変換器31」と、変換された電気信号h1のデジタル値(r、i1、i2、s)をデジタル変換器(A/D変換器)32a〜32dから得て、ホモダイン干渉時の参照光と計測光との位相差をθ(位相0度での位相差θ1,位相90度での位相差θ2)として、参照光位相0度におけるcosθ1と参照光位相90度におけるcosθ2を算出する第1信号処理手段としての「余弦回路33」と、cosθ1とcosθ2との大きさ比較と、cosθ1とcosθ2との絶対値比較とにより、余弦曲線上にcosθ1とcosθ2の位置を定め、角度変換によりθ1とθ2を求め、1周期前に求めた角度変換をθ1a、θ2aとして、1周期前との位相差θの差分(変化分)Δθ1=θ1−θ1a、Δθ2=θ2−θ2aを求めて、Δθ1とΔθ2のうち、cosθ1とcosθ2の絶対値比較で小さい方の差分をΔθとして選択し、毎周期のΔθの積算値θs(θs=ΣΔθ)をセンサ出力とする第2信号処理手段としての「演算回路34」と、を有して構成される。
【0027】
本実施の形態では、第1信号処理手段としての余弦回路33では、前述のcosθ1とcosθ2を次の数1、数2によって算出する形態としている。
【0028】
(数1)
cosθ1=(i1−r−s)/2√(r・s)
【0029】
(数2)
cosθ2=(i2−r−s)/2√(r・s)
但し、上記数1、数2において、r、s、i1、i2は、時分割多重光4信号f2(R、I1、I2、S)のデジタル値であり、前述のように、rは、前述の分波c21の前半分(R)のデジタル値、sは、前述の分波c22の後半分(S)のデジタル値、i1は、前述の分波c21の中の参照光前半(0度)部分と分波c22の中の計測光部分とが重なった第1光干渉部分のデジタル値、i2は、前述の他方の分波c21の中の参照光後半(90度)部分と分波c22の中の計測光部分とが重なった第2光干渉部分のデジタル値をそれぞれ示している。
【0030】
次に、図1に示した光ファイバセンサの動作例を図2のタイムチャートを参照しながら説明する。以下、計測用光信号発生部1、センサ部2、及び演算処理部3の各動作について、順次説明する。
【0031】
先ず、計測用光信号発生部1の動作例について説明する。
【0032】
計測用光信号発生部1では、パルス信号発生器11より、電気信号パルスaを電気−光変換器12に、電気信号パルスgを位相信号発生器17に送る。
【0033】
電気信号パルスaは、電気−光変換器12でパルス幅tの光パルス信号bに変換され、光分波器13でc11(計測光パルス)とc12(参照光パルス)の2つに分波される。
【0034】
c11は光合波器16に入力し、c12は、位相信号発生器17からの駆動信号g1により位相変換器14でパルス幅tの前半が0度、後半が90度位相変調され、e1として遅延時間tの遅延ファイバ15を経て、d1として光合波器16に入る。
【0035】
光合波器16の出力は、図2中のf1の信号例に示すように、計測光c11と参照光d1が連なるパルス幅2tの時分割光多重パルスとなり、計測用光多重パルスf1として、一本の光ファイバを通してセンサ部2に送られる。
【0036】
次に、センサ部2の動作例について説明する。
【0037】
センサ部2では、計測用光信号発生部1から出力される上記計測用光多重パルスf1を入力する。その計測用光多重パルスf1は光分波器21においてc21とc22に分波され、c21は参照光として光合波器24に入力する。
【0038】
c22は、位相信号発生器25でセンサ信号を感知して、その出力g2により位相変換器22で光位相に変化を受け、e2として遅延時間tの遅延ファイバ23を経て、計測光d2となり、光合波器24に入る。
【0039】
光合波器24の出力は、図2中のf2の信号例に示すように、前方にc21の前半部分(R)、中間にc21の後半参照光部分とd2の前半計測光部分とが重なった、参照光0度との干渉部分(I1)と参照光90度との干渉部分(I2)、後方にd2の後半部分(S)が配置された、3t幅の時分割多重光4信号f2として、光ファイバを経て演算処理部3に送られる。なお、図2中のr,i1,i2,sは、上記時分割多重光4信号f2を構成する光信号R,I1,I2,Sのデジタル値(電気信号に変換した後、デジタル化した信号値)を示している。なお、時分割多重光4信号f2は、信号の成分として上記4つの光信号R,I1,I2,Sを含んでいれば良く、その配置順序が異なるものも本発明に含まれる。
【0040】
次に、演算処理部3の動作例について説明する。
【0041】
演算処理部3では、センサ部2から出力される時分割多重光4信号f2を入力する。その時分割多重光4信号f2は、光−電気変換器31において、包絡線検波され、電気信号h1としてR、I1、I2、S相当部分は各デジタル変換器32a、32b、32c、32dでデジタル値r、i1、i2、sに変換されて、余弦回路33に入る。
【0042】
余弦回路33において、r、i1、i2、sの入力から、ホモダイン干渉時の参照光と計測光との位相差をθとして、cosθ1とcosθ2を算出し(前述の演算式(数1、数2)を参照)、演算回路34に送る。
【0043】
演算回路34では、cosθ1とcosθ2を用いて次の(1)〜(7)の処理を実行する。
(1)cosθ1、cosθ2について、絶対値が0に近い方を識別する。
(2)cosθ1、cosθ2について、その大小を比較、識別する。
(3)cosθ1、cosθ2が参照光位相で90度離れていること、絶対値が0に近い側を基準として、2つの大小の条件から、余弦曲線上に2つの位置を定める。
(4)余弦曲線上の定められたcosθ1、cosθ2位置を角度変換によりその角度θ1、θ2を求める。
(5)1周期前のcosθ1、cosθ2の角度変換で得られた角度をθ1a、θ2aとする。
(6)1周期前との位相変化の差分ΔθをΔθ1=θ1−θ1a、Δθ2=θ2−θ2aとして求める。
(7)絶対値が0に近いとして基準とした側から求めたΔθを毎周期積算θs=ΣΔθとし、センサ信号出力θsとして出力する。
【0044】
なお、本発明では、センサ信号による位相変動速度は、計測用光パルス幅に比べて、十分遅く計測用光パルス内では、位相変動は無視できるものとする。
【0045】
(作用効果)
本発明では、1周期前との位相変化の差分Δθが±90度以内であれば、cosθ1、cosθ2は余弦曲線上に正しく位置を定めることができる。
【0046】
また、本発明では、周期の位相変化が±90度以内であれば、それを積算することにより、位相変化の総変化量が復元できることから、積算回数を増やすことにより、従来方式の±90度制限を超した位相変化量を出力でき、ダイナミックレンジを広げることができる。
【0047】
なお、上述した実施の形態においては、参照光を90度位相変化させる場合を例としたが、計測光を90度位相変化させても同様の効果が得られる。また、上述した実施の形態においては、参照光の位相変化を90度としたが、90度前後で一定であれば、同様の効果が得られる。さらに、上述した実施の形態においては、光パルス幅t、遅延ファイバの遅延時間tとしたが、近い値であれば同様の効果が得られる。
【0048】
また、本発明の計測用光信号発生部の構成では、光パルスを2つに分波し、それを合波して光多重する構成を例としたが、その出力が0°、90°に位相変化した部分と、位相が一定の部分とが連なる光信号を構成するものであれば、同様の効果を生むことができる。
【0049】
また、上述した実施の形態においては、センサ部における干渉計の構成は、マッハ・ツェンダー方式で説明したが、マイケルソン方式の干渉計で構成しても、同様の動作が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、海底地震観測など、離れた場所、電源供給ができない場所、電磁雑音の影響を受け易い場所、温度環境が厳しい場所などに設置するセンサシステムに適する。
【符号の説明】
【0051】
1 計測用光信号発生部
2 センサ部
3 演算処理部
11 パルス信号発生器
12 電気−光変換器
13,21 光分波器
14,22 位相変換器
15,23 遅延ファイバ
16,24 光合波器
17,25 位相信号発生器
31 光−電気変換器
32a,32b,32c,32d デジタル変換器(A/D変換器)
33 余弦回路
34 演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パルス幅tの周期性光パルスを光分波器により参照光パルスと計測光パルスの2波に分波し、前記参照光パルスのパルス幅tの前半を0度、後半を90度位相変調してt時間遅延させた後の参照光パルスと前記計測光パルスとを光合波器により合波し、前方に計測光、後方に90度位相変調された参照光パルスが時分割光多重化された光パルスを計測用光多重パルスとして出力する計測用光信号発生部を備えたことを特徴とする光ファイバセンサ。
【請求項2】
前記計測用光多重パルスを光分波器により2波に分波し、一方の分波にセンサ信号として取り込む位相変化を与えてt時間遅延させた後に他方の分波と合波することにより、前方に前記他方の分波の前半分(R)、中間に前記他方の分波の中の参照光前半(0度)部分と前記一方の分波の中の計測光部分とが重なった第1光干渉部分(I1)並びに前記他方の分波の中の参照光後半(90度)部分と前記一方の分波の中の計測光部分とが重なった第2光干渉部分(I2)、及び後方に前記一方の分波の後半分(S)を多重化させて、時分割多重光4信号(R、I1、I2、S)として出力するセンサ部を備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンサ。
【請求項3】
前記時分割多重光4信号(R、I1、I2、S)を電気信号に変換し、電気信号値r、i1、i2、sを得て、干渉時の計測光と参照光との位相差をθとして、参照光位相0度におけるcosθ1=(i1−r−s)/2√(r・s)と参照光位相90度におけるcosθ2=(i2−r−s)/2√(r・s)を算出し、前記cosθ1と前記cosθ2との大きさ比較と、前記cosθ1と前記cosθ2との絶対値比較とにより、余弦曲線上に前記cosθ1及び前記cosθ2の位置を定め、角度変換によりθ1及びθ2を求め、1周期前に求めた角度変換をθ1a、θ2aとして、1周期前との前記位相差θの差分Δθ1=θ1−θ1a、Δθ2=θ2−θ2aを求めて、Δθ1とΔθ2のうち、前記cosθ1と前記cosθ2の絶対値比較で小さい方の差分をΔθとして選択し、毎周期の前記Δθの積算値θsをセンサ出力とする演算処理部を備えることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバセンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−242383(P2011−242383A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30422(P2011−30422)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(508360903)白山工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】